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特許異議申立

2024-700263

インクジェット捺染用ブラックインク組成物及び疎水性繊維の捺染方法

審判番号
2024-700263
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-531276
登録番号
7349431
請求日
2024年03月22日
審決日
2025年03月04日
公報発行日
2025年06月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】日本化薬株式会社
  • 【権利者代理人】落 直之
  • 【異議申立人】柏木 里実
審判長/審判官
  • 審判長 関根 裕
  • 審判官 長谷川 真一
  • 審判官 瀬下 浩一
分類
P1652.113-YAA(C09D) / P1652.121-YAA(C09D) / P1652.537-YAA(C09D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第120条の8第1項
データ出所
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特許第7349431号発明「インクジェット捺染用ブラックインク組成物及び疎水性繊維の捺染方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7349431号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第7349431号の請求項1、4-6、8に係る特許を維持する。 特許第7349431号の請求項2、3、9についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許に係る出願は、2019年(令和元年)7月11日(優先権主張 平成30年7月19日 (JP)日本国)を国際出願日とする出願であって、令和5年9月13日に特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行され、その後、令和6年3月22日に柏木 里実(以下「申立人」という。)により、その請求項1~6、8、9に係る特許について特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年6月11日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年7月12日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、その請求による訂正を「本件訂正」という。)を行い、当審は、同年8月6日付けで手続補正指令書(方式)を通知し、特許権者は、同年9月3日及び同年同月12日に手続補正書を提出し、当審は、特許権者から訂正の請求があったことを同年10月1日付けで申立人に通知したところ、申立人は、同年11月1日に意見書を提出したものである。 第2 本件訂正の適否についての判断 1 本件訂正の内容 本件訂正は、以下の訂正事項1~9からなる。訂正箇所に下線を付した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物。」と記載されているのを、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、 前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であり、前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである、インクジェット捺染用ブラックインク組成物。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5~8も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に、「前記分散剤が、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択される分散剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用ブラックインク組成物。」と記載されているのを、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であり、前記分散剤が、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択される分散剤である、インクジェット捺染用ブラックインク組成物。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5~8も同様に訂正する)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に、「前記水溶性有機溶剤が、グリセリン又はジグリセリンから選択される少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用ブラックインク組成物。」と記載されているのを、「前記水溶性有機溶剤が、グリセリン又はジグリセリンから選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は4のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用ブラックインク組成物。」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に、「樹脂エマルションを含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用ブラックインク組成物。」と記載されているのを、「樹脂エマルションを含有する、請求項1、4又は5のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用ブラックインク組成物。」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に、「請求項1~6のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用ブラックインク組成物と、インクジェット捺染用イエローインク組成物と、インクジェット捺染用マゼンタインク組成物と、インクジェット捺染用シアンインク組成物とを備えるインクジェット捺染用インクセット。」と記載されているのを、「請求項1、4~6のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用ブラックインク組成物と、インクジェット捺染用イエローインク組成物と、インクジェット捺染用マゼンタインク組成物と、インクジェット捺染用シアンインク組成物とを備えるインクジェット捺染用インクセット。」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に、「請求項1~6のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用ブラックインク組成物、又は請求項7に記載のインクジェット捺染用インクセットが備える各インク組成物をインクとして用い、該インクの液滴をインクジェットプリンタにより中間記録媒体に付着させ、記録画像を得るプリント工程と、 前記中間記録媒体における前記インクの付着面に疎水性繊維を接触させ、熱処理することにより前記記録画像を前記疎水性繊維に転写する転写工程と、 を含む疎水性繊維の捺染方法。」と記載されているのを、「請求項1、4~6のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用ブラックインク組成物、又は請求項7に記載のインクジェット捺染用インクセットが備える各インク組成物をインクとして用い、該インクの液滴をインクジェットプリンタにより中間記録媒体に付着させ、記録画像を得るプリント工程と、 前記中間記録媒体における前記インクの付着面に疎水性繊維を接触させ、熱処理することにより前記記録画像を前記疎水性繊維に転写する転写工程と、 を含む疎水性繊維の捺染方法。」に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 2 訂正事項が全ての訂正要件に適合している事実の説明 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1において、 「分散剤」を、「スチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである」ものに限定するものである。すなわち、訂正事項1は、設定登録時の特許請求の範囲の「分散剤」の範囲を減縮するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記ア記載のとおりに、訂正事項1は、「分散剤」について、その範囲を減縮したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としてしたものである。従って、訂正事項1は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 訂正事項1の「分散剤」を、「スチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである」ものに限定する本訂正は、訂正前の請求項3の記載や、段落【0019】~【0022】において「前記分散剤がススチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである」との記載に基づく限定である。従って、訂正事項1は、特許請求の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2、3、9 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、請求項2を削除するというものであり、訂正事項3は、請求項3を削除するというものであり、訂正事項9は、請求項9を削除するというものであるから、当該訂正事項2、3、9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、請求項2を削除するというものであり、訂正事項3は、請求項3を削除するというものであり、訂正事項9は、請求項9を削除するというものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 訂正事項2は、請求項2を削除するというものであり、訂正事項3は、請求項3を削除するというものであり、訂正事項9は、請求項9を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (3)訂正事項4 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項4において、 「前記分散剤が、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択される分散剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用ブラックインク組成物。」と記載されているのを、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であり、前記分散剤が、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択される分散剤である、インクジェット捺染用ブラックインク組成物。」に訂正するものである。 この訂正は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1~3のいずれか一項の記載を引用する記載であったものを、引用請求項を削減した上で、請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項4を独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び4に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記ア記載のとおり、訂正事項4は、引用請求項を削減した上で、請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項4を独立形式請求項へ改めるための訂正である。従って、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 訂正事項4は、引用請求項を削減した上で、請求項間の引用関係を解消し、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項4を独立形式請求項へ改めるための訂正である。従って、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (4)訂正事項5、6、8 ア 訂正の目的について 訂正事項5、6、8は、訂正前の請求項5~8が請求項2および3の記載を引用する記載であるところ、請求項2および3を引用しないものとするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項5、6、8は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 訂正事項5、6、8は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (5)訂正事項7 ア 訂正の目的について 訂正事項7は、訂正前の請求項5~8が請求項2および3の記載を引用する記載であるところ、請求項2および3を引用しないものとするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項7は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 新規事項の有無 訂正事項7は、実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (6)独立特許要件 ア 請求項1~6、8、9 本件においては、訂正前の請求項1~6、8、9について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~6、8、9により訂正される訂正後の請求項1~6、8、9に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 イ 請求項7 訂正事項7による訂正後の請求項7に係る発明は、新規性、進歩性、明確性要件、サポート要件及び実施可能要件ならびにその他の全ての特許要件を満たすと認定されたうえで特許査定及び登録された本件特許の請求項7に対し、さらに「分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである」なる発明特定事項による減縮を加えるものに該当し、このような訂正後の請求項7発明は、後記第5~第9で検討するとおり、新規性、進歩性、明確性要件、サポート要件及び実施可能要件ならびにその他の全ての特許要件を満たすものである。 したがって、訂正事項7により訂正される訂正後の請求項7に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、この訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に適合するものである。 (7)一群の請求項について 訂正前の請求項1~9について、請求項2~9はそれぞれ請求項1を直接または間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 よって、本件訂正は、一群の請求項である訂正前の請求項1~9についてされたものであるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。 4 小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~9に係る発明は、令和6年9月3日及び同年同月12日の手続補正書により補正された令和6年7月12日の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載されたとおりのものであって、それらのうち、特許異議の申立てのされた請求項1~6、8、9に記載された事項により特定される発明(以下「本件特許発明1」等、まとめて「本件特許発明」ともいう。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 水溶性有機溶剤、分散剤、及び少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、 前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であり、前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである、インクジェット捺染用ブラックインク組成物。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 水溶性有機溶剤、分散剤、及び少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、 前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であり、前記分散剤が、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択される分散剤である、インクジェット捺染用ブラックインク組成物。 【請求項5】 前記水溶性有機溶剤が、グリセリン又はジグリセリンから選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は4に記載のインクジェット捺染用ブラックインク組成物。 【請求項6】 樹脂エマルションを含有する、請求項1、4又は5に記載のインクジェット捺染用ブラックインク組成物。」 「【請求項8】 請求項1、4~6のいずれか一項に記載のインクジェット捺染用ブラックインク組成物、又は請求項7に記載のインクジェット捺染用インクセットが備える各インク組成物をインクとして用い、該インクの液滴をインクジェットプリンタにより中間記録媒体に付着させ、記録画像を得るプリント工程と、 前記中間記録媒体における前記インクの付着面に疎水性繊維を接触させ、熱処理することにより前記記録画像を前記疎水性繊維に転写する転写工程と、 を含む疎水性繊維の捺染方法。 【請求項9】 (削除)」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 令和6年6月11日付けで通知した取消理由の概要は、次の理由1~3である。 理由1(新規性)本件特許の請求項1、2、5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第01号証の1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2(進歩性)本件特許の請求項1、2、5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第01号証の1、甲第01号証の2、甲第03号証、甲第06号証、甲第07号証、甲第08号証の1及び甲第09号証の1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 甲第01号証の1:特開2014-94993号公報 甲第01号証の2:特開2022-152141号公報 甲第03号証:国際公開第2014/129322号 甲第06号証:特開2015-93956号公報 甲第07号証:特開2011-21133号公報 甲第08号証の1:特開2017-171907号公報 甲第09号証の1:特開2016-175995号公報 理由3(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の(1)及び(2)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項3~6、8、9に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 (1) 本件特許発明3~6、8、9 本件特許発明4は、前記分散剤が、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択される分散剤であると特定され、本件特許発明3を引用するものであるところ、本件特許発明3は、前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gであると特定され、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩を含まないから、本件特許発明4と本件特許発明3は含まれる分散剤の点で整合していない。 そうすると、本件特許発明3及び本件特許発明4、並びに、それらを引用する本件特許発明5、6、8は不明確である。 (2) 本件特許発明9 本件特許発明9は、「請求項8に記載の疎水性繊維の捺染方法により得られる、染色された疎水性繊維。」であるから、「物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合」(いわゆる「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」)に該当する。 そして、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である(最二小判平成27年6月5日 平成24年(受)1204号、同2658号)。 しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、本願明細書等には記載がなく、また、請求人から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。 第5 第4の理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について 1 甲号証について 甲第01号証の1、甲第01号証の2、甲第03号証、甲第06号証、甲第07号証、甲第08号証の1及び甲第09号証の1は前記第4のとおり。 甲第02号証:中国特許出願公開第107722724号公報 甲第04号証:特開2018-70743号公報 甲第05号証:特開2018-70744号公報 甲第08号証の2:特開2013-194122号公報 甲第08号証の3:特開2017-25322号公報 甲第08号証の4:特開2017-31252号公報 甲第08号証の5:特開2018-106058号公報 甲第09号証の2:特開2017-155109号公報 甲第10号証:国際公開第2013/137314号 甲第11号証:国際公開第2014/073549号 甲第12号証:国際公開第2014/073550号 甲第13号証:特開2015-158560号公報 甲第14号証:特許第6250218号公報 甲第15号証:国際公開第2017/073069号 2 甲号証の記載について (1)甲第01号証の1(以下、「甲1の1」という。) 1a「【請求項1】 水と、分散染料と、グリコール類と、アルコールアミンと、を含有することを特徴とするインク組成物。 【請求項2】 複数の上記分散染料を配合することを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。 【請求項3】 複数の上記分散染料を配合することによりブラックを構成することを特徴とする請求項2に記載のインク組成物。」 1b「【0020】 <インク組成物> 本発明に係るインク組成物は、水と、分散染料と、グリコール類と、アルコールアミンと、を含有する。インク組成物(インク)は、例えば、インクジェットプリンタのヘッドから印刷対象物に吐出され、画像を形成するために用いられる。」 1c「【0022】 〔分散染料〕 本発明に係るインク組成物は、分散染料を含んでいる。分散染料とは、加熱することにより昇華する染料である。また、分散染料は、水等の溶媒にほとんど溶解せず、分散している。 【0023】 分散染料としては、インク組成物の用途等に応じて、適宜定めればよく、例えば、C.I.ディスパースイエロー3:1、23、42、54、64、82、114、119、163、211等、C.I.ディスパースオレンジ13、25、29、30、31、42、44、44:1、45、61、61:1、62、73、76、288等、C.I.ディスパースレッド13、17、50、54、60、73、74、82、118、135、145、152、153、167、177、205、278、311、343等、C.I.ディスパースブルー60、73、102、148、149、165、165:1、183:1、257、281、284、291:1、301、321、354、359、366、367等、C.I.ディスパースブラウン1、1:1、19、19:1等、C.I.ディスパースグリーン9等が挙げられる。また、分散染料の調製に市販の分散液を用いてもよく、市販の分散液としては、例えば、御国色素株式会社製のハイミクロンKイエローA1013、ハイミクロンKレッドA1115、ハイミクロンKブルーA1119等が挙げられる。また、分散染料の調製に用いる分散液は、公知の技術に基づくものであってもよい。 【0024】 分散染料の含有量は、インク組成物の用途等に応じて適宜定めればよく、例えば、0.5重量%以上、10重量%以下であることが好ましく、1重量%以上、8重量%以下であることがさらに好ましい。 【0025】 また、本発明に係るインク組成物において、複数の分散染料を配合してもよい。例えば、色の異なる分散染料を複数配合し、ブラックを構成してもよい。」 1d「【0027】 〔グリコール類〕 本発明に係るインク組成物は、グリコール類を含んでいる。グリコール類は、インク組成物の保湿剤として機能し、乾燥を抑制するために添加される。 【0028】 本明細書において、グリコール類とは、2つ以上の水酸基が相異なる炭素原子に結合した脂肪族化合物を指す。グリコール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレングリコールのモノエーテル誘導体、ジエチレングリコールのモノエーテル誘導体、トリエチレングリコールのモノエーテル誘導体等のグリコールエーテル類、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2、4-ヘキサンジオール等が挙げられる。これらは1種でもよく、複数種を混合してもよい。」 1e「【0036】 〔分散剤〕 本発明に係るインク組成物において、分散染料を分散させるための分散剤を添加してもよい。 【0037】 分散剤としては、インクの用途等に応じて適宜定めることができ、例えば、SOLSPERSE43000、SOLSPERSE44000、Disperbyk-190、Disperbyk-194、Disperbyk-2015号等が挙げられる。」 1f「【0041】 〔インク組成物の調製〕 実施例1として、インク組成物を次のように調製した。すなわち、インク全量を100重量%とし、水を22.11重量%、ハイミクロンKイエローA1013(御国色素株式会社製 昇華染料分散液)を9.44重量%、ハイミクロンKレッドA1115(御国色素株式会社製 昇華染料分散液)を9.30重量%およびハイミクロンKブルーA1119(御国色素株式会社製 昇華染料分散液)を37.60重量%、プロピレングリコールを14.90重量%、1,3-ブチレングリコールを5重量%、MDAを0.01重量%、サーフィノール465を1.50重量%、ならびに、プロキセルXL2を0.1重量%混合した。 【0042】 実施例2~5に係るインク組成物の組成は、下記に示す表2に記載されているため、その記載を省略する。なお、サーフィノール465は界面活性剤、プロキセルXL2は防腐剤である。 【0043】 比較例として、まずインク組成物に添加する分散液を調製した。分散液全量を100重量%とし、Yellow54を22.5重量%、SOLSPERSE43000を10重量%、SOLSPERSE44000を10重量%、プロピレングリコールを4.5重量%およびプロキセルXL2を0.1重量%混合した。そして、上記混合物をビーズミルにて、24時間微粒子化して、分散液1を作成した(直径0.3mmのジルコニアビーズを使用)。 【0044】 また、分散液2~4の組成は、下記に示す表1に記載されているため、その記載を省略する。なお、表1に記載のSOLSPERSE43000、SOLSPERSE44000およびDisperbyk-190は、分散剤としてインク組成物に添加したものである。 【0045】 【表1】 [図:0001423481000001.jpg] 【0046】 次に、上記分散液1~4を用いて、比較例1及び2となるインク組成物を調製した。各比較例におけるインク組成物の組成は、表2に記載のとおりであるため、その記載を省略する。 【0047】 〔インク組成物の評価〕 各実施例及び比較例に係るインク組成物について、保存安定性、pH値及び吐出安定性(連続安定性)を評価した。 【0048】 保存安定性については、調製したときのインク組成物に対して、60℃で、24時間後のインク組成物の粘度及び粒径がどれだけ変化したか、によってそれぞれ評価した。初期値からの変化率が10%以下であれば丸、10%より大きく、15%以下であれば三角、15%より大きく、20%以下であればバツとした。 【0049】 pH値については、調製したときのインク組成物についてそれぞれ評価した。pH値が9未満であれば丸、9以上、10未満であれば三角、10以上であればバツとした。なお、pH値の値が小さいほど、インク組成物がノズルへ与える影響が小さいことを示す。 【0050】 吐出安定性については、調製したインク組成物をノズルから吐出する際に、吐出性が損なわれることなく、どの程度まで連続して吐出することが可能であるかをそれぞれ評価した。連続して吐出可能な量が10m2以上であれば丸、5m2以上、10m2未満であれば三角、5m2未満であればバツとした。 【0051】 〔結果〕 実施例及び比較例を含む実験結果について、インク組成物の評価の結果を表2に示す。 【0052】 【表2】 [図:0001423481000002.jpg] 【0053】 〔結論〕 表2に示されるように、アルコールアミンを添加した実施例1~5においては、いずれも吐出安定性に優れていることがわかった。また、MDAの含有量を調整することにより、保存安定性がより向上し、かつpH値の値が適切なインク組成物を調製することができた。 【0054】 本発明に係るインク組成物は、インクジェットプリンタによる印刷に利用することができる。」 (2)甲第01号証の2(以下。「甲1の2」という。) 1f「【請求項1】 捺染に供される、水酸基を有する繊維を含む布帛に付着させて用いる処理液組成物であって、 オキサゾリン基含有ポリマーと、 芳香族カルボン酸類と、を含有する、処理液組成物。 ・・・ 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の処理液組成物と、 染料および水を含有するインクジェット染料捺染インク組成物と、を備える、組成物セット。 【請求項10】 前記染料が、分散染料である、請求項9に記載の組成物セット。 【請求項11】 請求項1ないし8のいずれか1項に記載の処理液組成物を、水酸基を有する繊維を含む布帛に付着させる処理液付着工程を含む、処理方法。 【請求項12】 中間転写媒体に、染料および水を含有するインクジェット染料捺染インク組成物をインクジェット法で付与し、画像を形成するインク組成物付着工程と、 前記中間転写媒体と、水酸基を有する繊維を含む布帛に請求項1ないし8のいずれか1項に記載の処理液組成物を用いた処理を施すことにより得られた処理済み布帛とを対向させた状態で加熱して、前記画像を前記処理済み布帛に転写させる転写工程と、を有する、捺染方法。」 1g「【0084】 インクジェット染料捺染インク組成物は、本発明の処理液組成物により処理された布帛に対して、直接、インクジェット法により付与されるものであってもよいし、インクジェット法により中間転写媒体に付与された後、当該中間転写媒体に形成された画像を転写することにより、本発明の処理液組成物により処理された布帛に対して、間接的に付与されるものであってもよい。 【0085】 [2-1-1]染料 本発明の組成物セットを構成するインクジェット染料捺染インク組成物は、染料を含んでいる。 【0086】 染料としては、例えば、分散染料、酸性染料、塩基性染料、直接染料、反応性染料等が挙げられる。 【0087】 分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースイエロー3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232;C.I.ディスパースオレンジ1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142;C.I.ディスパースレッド1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328;C.I.ディスパースバイオレット1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77;C.I.ディスパースグリーン9;C.I.ディスパースブラウン1、2、4、9、13、19;C.I.ディスパースブルー3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、359、360;C.I.ディスパースブラック1、3、10、24が挙げられる。」 1h「【0135】 [3-1]布帛 以下、本発明の処理液組成物が付着させられる布帛について説明する。 【0136】 布帛は、水酸基を有する繊維を含むものであればよい。このような繊維としては、例えば、ポリエステル繊維等の合成繊維、アセテート繊維等の半合成繊維、レーヨン等のセルロース繊維等の再生繊維、木綿、絹、羊毛等の天然繊維等が挙げられ、これらから選択される2種以上を用いた混紡品であってもよい。また、水酸基を有する繊維と水酸基を有さない繊維との混紡品を用いてもよい。水酸基を有する繊維としては、特に木綿であることが好ましい。水酸基を有する繊維が木綿である場合、本発明の処理液組成物を用いることで、特に、分散染料の木綿に対する染着性が向上し、発色性を優れたものとすることができる。 【0137】 布帛としては、例えば、平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織等の各種織物を用いることができる。 【0138】 また、布帛を構成する繊維の太さは、例えば、10d以上100d以下とすることができる。」 1i「【0198】 [6]インクジェット染料捺染インク組成物の調製 (調製例1) 分散染料としてのC.I.ディスパースブルー359:15.0質量部、アクリル-スチレン共重合樹脂(SOLSPERSE43000、ルーブリゾール社製)15.0質量部、純水70.0質量部を、0.3mmジルコニアビーズを用いてペイントシェーカーにて分散し、染料分散液を得た。」 (3)甲第02号証(以下、「甲2」という。) 摘記箇所の後に特許異議申立人による翻訳を掲載する。 2a「 [図:0001423481000003.jpg] 」 [0001] 本発明はデジタルインクジェットプリント分野に関し、具体的に水熱昇華性インク水およびその調製方法を開示した。 2b「 [図:0001423481000004.jpg] [図:0001423481000005.jpg] 」 [0040] 以下では本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。 [0041] 実施例1: [0042] 分散染料の分散液は、以下の重量%の組成分で製造される。 [0043] 分散染料30%; [0044] 第1分散剤(アクリル系分散剤、顔料親和性基を含有する変性ポリエーテル系分散剤、ポリアクリレート系分散剤、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニン分散剤およびアルキンジオール系分散剤、質量比は1:1:1:1:1:1である)20%; [0045] 第1保湿剤(エチレングリコール、1’2-プロパンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール600、質量比は1:1:1:1である)20%; [0046] 第1殺菌剤(1、2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン系殺菌剤)0.2%: [0047] 脱イオン水29.8%。 [0048] このうち分散染料は実際の色の必要性に応じて選択することができ、黄色の種類としてC.I.ディスパーズイエロー34、50、54、56、60、64、114、赤色の種類としてC.I.ディスパーズレッド5、60、75、121、146、179、189、202、青色の種類としてC.I.ディスパーズブルー3、43、54、56、60、83、96、165、295、359、360、黒色の種類としてC.I.ディスパーズブルー72、ディスパーズブルー359、ディスパーズブルー360,ディスパーズブラウン1、ディスパーズブラウンBR、ディスパーズブラウン27、ディスパーズブラウンBF、ディスパーズレッド60、ディスパーズイエロー54のうちの複数種類の混合染料を含む。 [0049] 第1分散剤、第1保湿剤、第1殺菌剤および脱イオン水を常温で均ーに撹拌して、混合液を得た。上記混合液中に分散染料を加えた後、ジルコニアのビーズミルで高速せん断粉砕を行って、せん断分散液を得た。更に、得られたせん断分散液中に粉砕媒体を加えて循環方式の粉砕を行って、分散染料の分散液を得た。 [0050] 実施例2 [0051] 分散染料の分散液は、以下の重量%の組成分で製造される。 [0052] 分散染料20%; [0053] 第1分散剤(顔料親和性基を含有する変性ポリエーテル系分散剤、ポリアクリレート分散剤、リグニン分散剤およびアルキンジオール系分散剤、質彙比は1:1:2:1である)25%; [0054] 第1保湿剤(ポリエチレングリコール600、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオールおよびジエチレングリコール、質量比は1:1:2:2である)25%; [0055] 第1殺菌剤(1、2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン系殺菌剤)0.2%: [0056] 脱イオン水29.5%。 [0057] このうち分散染料は実際の色の必要性に応じて選択することができ、黄色の種類としてC.I.ディスパーズイエロー34、50、54、56、60、64、114、赤色の種類としてC.I.ディスパーズレッド5、60、75、121、146、179、189、202、青色の種類としてC.I.ディスパーズブルー3、43、54、56、60、83、96、165、295、359、360、黒色の種類としてC.I.ディスパーズブルー72、ディスパーズブルー359、ディスパーズブルー360,ディスパーズブラウン1、ディスパーズブラウンBR、ディスパーズブラウン27、ディスパーズブラウンBF、ディスパーズレッド60、ディスパーズイエロー54のうちの複数種類の混合染料を含む。 [0058] 第1分散剤、第1保湿剤、第1殺菌剤および脱イオン水を常温で均一に撹拌して、混合液を得た。上記混合液中に分散染料を加えた後、ジルコニアのビーズミルで高速せん断粉砕を行って、せん断分散液を得た。更に、得られたせん断分散液中に粉砕媒体を加えて循環方式の粉砕を行って、分散染料の分散液を得た。 [0059] 実施例3 [0060] 分散染料の分散液は、以下の重量%の組成分で製造される。 [0061] 分散染料16%; [0062] 第1分散剤(顔料親和性基を含有する高分子ブロック共重合体型分散剤、アルキンジオール系分散剤、界面活性剤系分散剤、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、質量比は1:13である)23%; [0063] 第1保湿剤(ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール、質董比は1:1である)24%; [0064] 第1殺菌剤(1、2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン系殺菌剤)0.2%: [0065] 脱イオン水29.5%。 [0066] このうち分散染料は実際の色の必要性に応じて選択することができ、黄色の種類としてC.I.ディスパーズイエロー34、50、54、56、60、64、114、赤色の種類としてC.I.ディスパーズレッド5、60、75、121、146、179、189、202、青色の種類としてC.I.ディスパーズブルー3、43、54、56、60、83、96、165、295、359、360、黒色の種類としてC.I.ディスパーズブルー72、ディスパーズブルー359、ディスパーズブルー360,ディスパーズブラウン1、ディスパーズブラウンBR、ディスパーズブラウン27、ディスパーズブラウンBF、ディスパーズレッド60、ディスパーズイエロー54のうちの複数種類の混合染料を含む。 [0067] 第1分散剤、第1保湿剤、第1殺菌剤および脱イオン水を常温で均一に撹拌して、混合液を得た。上記混合液中に分散染料を加えた後、ジルコニアのビーズミルで高速せん断粉砕を行って、せん断分散液を得た。更に、得られたせん断分散液中に粉砕媒体を加えて循環方式の粉砕を行って、分散染料の分散液を得た。 (4)甲第03号証(以下、「甲3」という。) 3a「[請求項1] 水、昇華性染料、保湿剤及びアニオン性高分子分散剤を含有するインクジェット用昇華性染料インクであって、 前記アニオン性高分子分散剤は酸価160~250mgKOH/g、重量平均分子量8,000~20,000のスチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体であり、 さらに浸透剤として下記化学式(I) [化1] [図:0001423481000006.jpg] で示されるアセチレングリコール系化合物を含有することを特徴とするインクジェット用昇華性染料インク。 ・・・ [請求項11] 請求項1~10のいずれか1項に記載のインクジェット用昇華性染料インクを用いてシート状記録媒体にインクジェット印刷を行った後、前記記録媒体の印刷面を被染色対象物に重ね合わせ、加熱して昇華性染料を被染色対象物に昇華転写することを特徴とする昇華転写染色方法。」 3b「[0028] 本発明で使用する昇華性染料としては、昇華性を有する分散染料及び油溶性染料が好ましく、これらは、単独で使用しても混合されて使用してもよいが、分散性や染色性の点から特に分散染料が好ましく用いられる。 [0029] 昇華性染料の例としては、大気圧下、70~260℃で昇華又は蒸発する染料が好ましい。例えば、アゾ、アントラキノン、キノフタロン、スチリル、オキサジン、キサンテン、メチン、アゾメチン等の染料がある。これらの内、イエロー系分散染料の例としては、染料名"C.I.Disperse Yellow 51",54,60,64,65,71,82,98,114,119,160,201,211などが挙げられる。オレンジ系分散染料の例としては、"C.I.Disperse Orange 25",33,44,288などが挙げられる。レッド系分散染料の例としては、"C.I.Disperse Red 4",22,55,59,60,73,86,91,146,152,191,302,364などが挙げられる。ブルー系分散染料の例としては、"C.I.Disperse Blue 14",28,56,60,72,73,77,334,359,360,366などが挙げられる。その他の色成分としては、“C.I.Disperse Brown 27","C.I.Disperse Violet 26",27,28等が挙げられる。上記以外の油溶性染料としては、"C.I.Solvent Yellow 16",33,93,160,"C.I.Solvent Orange 60"、"C.I.Solvent Red 111",155,"C.I.Solvent Violet 31","C.I.Solvent Blue 35",36,59,63,97,104等が挙げられる。 [0030] これらの中でも、"C.I.Disperse Yellow 54",60,64,71,82,"C.I.Disperse Orange 25",288,"C.I.Disperse Red 4",22,55,60,146,302,364,"C.I.Disperse Blue 14",28,56,72,334,359,360,"C.I.Disperse Violet 28","C.I.Solvent Yellow 16",33,93,"C.I.Solvent Orange 60","C.I.Solvent Red 111",155, "C.I.Solvent Violet 31","C.I.Solvent Blue 35",36,59,63,97,104が好ましい。」 3c「[0050] 以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。尚、下記実施例において"部"は特に断らない限り"質量部"を、また"%"は特に断らない限り"質量%"を示す。 [0051] (実施例1) レッド分散染料原体(C.I.Disperse Red 60)100部、アニオン性高分子分散剤として"ジョンクリル63"( スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体アンモニア中和物の30%樹脂水溶液、重量平均分子量=12,500、酸価=213)100部、水300部からなる混合物に直径0.4mmのジルコンビーズ1500部を使用して、サンドミルにて35時間微粒子化して分散液を得た。 [0052] この分散液25部に、糖アルコールとして"ソルビトールS"(日研化学(株)製、D-ソルビトール70%水溶液)15部、化学式(I)のアセチレングリコール系化合物である"サーフィノール82" (日信化学工業(株)製)1部、ジグリセリン20部、さらに水を39部加え染料濃度を5%に調整したインクを作成した。染料の平均粒径は100nmであった。 [0053] (実施例2~4) "サーフィノール82"を0.2部、1.5部及び1.8部に変更する以外は実施例1と同様にして染料濃度を5%に調整し実施例2~4のインクを作成した。染料の平均粒径は100nmであった。 [0054] (実施例5) レッド分散染料原体に代えて、イエロー分散染料原体(C.I.Disperse Yellow 54)100部を使用する以外は実施例1と同様に微粒子化して分散液を得た。この分散液15部に、"ソルビトールS"15部、"サーフィノール82"1部、ジグリセリン20部、さらに水を49部加え染料濃度を3%に調整したインクを作製した。染料の平均粒径は110nmであった。 [0055] (実施例6) レッド分散染料原体に代えて、ブルー分散染料原体(C.I.Disperse Blue 72)100部を使用する以外は実施例1と同様に微粒子化して分散液を得た。こ の分散液25部に、 "ソルビトールS"15部、"サーフィノール82"1部、ジグリセリン20部、さらに水を39部加え染料濃度を5%に調整したインクを作製した。染料の平均粒径は110nmであった。 [0056] (実施例7) レッド分散染料原体に代えて、ブルー分散染料原体(C.I.Disperse Blue 359)100部を使用する以外は実施例1と同様に微粒子化して分散液を得た。この分散液25部に、"ソルビトールS"15部、"サーフィノール82"1部、ジグリセリン20部、さらに水を39部加え染料濃度を5%に調整したインクを作製した。染料の平均粒径は90nmであった。 [0057] (実施例8) "ジョンクリル63"67部、水333部を使用して微粒子化する以外は実施例1と同様にして、染料濃度を5%に調整したインクを作製した。染料の平均粒径は100nmであった。 [0058] (実施例9) 実施例1と同一の方法で作製した分散液5部に、"ソルビトールS"15部、"サーフィノール82"1部、ジグリセリン20部、さらに水を59部加え染料濃度を1%に調整したインクを作成した。染料の平均粒径は100nmであった。 [0059] (実施例10) レッド分散染料原体(C.I.Disperse Red 60)100部、"ジョンクリル63"133部、水267部からなる混合物に直径0.4mmのジルコンビーズ1500部を使用して、サンドミルにて35時間微粒子化して分散液を得た。 [0060] この分散液50部に、"ソルビトールS"15部、"サーフィノール82"1部、ジグリセリン20部、さらに水を14部加え染料濃度を10%に調整したインクを作成した。染料の平均粒径は100nmであった。 [0061] (実施例11) アニオン性高分子分散剤として"ジョンクリル61"( スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体アンモニア中和物の30.5%樹脂水溶液、重量平均分子量=12,000、酸価=195)98部、水302部を使用する以外は実施例1と同様に微粒子化して分散液を得た。この分散液25部に、"ソルビトールS"15部、"サーフィノール82"1部、ジグリセリン20部、さらに水を39部加え染料濃度を5%に調整したインクを作製した。染料の平均粒径は100nmであった。 [0062] (実施例12) アニオン性高分子分散剤として"ジョンクリル70"( スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体アンモニア中和物の30%樹脂水溶液、重量平均分子量=16,500、酸価=240)100部を使用する以外は実施例1と同様に微粒子化して分散液を得た。この分散液25部に、"ソルビトールS"15部、"サーフィノール82"1部、ジグリセリン20部、さらに水を39部加え染料濃度を5%に調整したインクを作製した。染料の平均粒径は100nmであった。 [0063] (実施例13) 実施例1と同一の方法で作製した分散液25部に、"ソルビトールS"15部、"サーフィノール82"1部、ジグリセリン20部、アニオン性界面活性剤として“デモールN”(花王(株)製、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩)1.5部 ,さらに水を37.5部加え染料濃度を5%に調整したインクを作製した。染料の平均粒径は100nmであった。 [0064] (実施例14) 実施例1と同一の方法で作製した分散液25部に、"ソルビトールS"15部、"サーフィノール82"1部、ジグリセリン20部、アニオン性界面活性剤として"デモール SNB"(花王(株)製、芳香族スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物)1.5部、さらに水を37.5部加え染料濃度を5%に調整したインクを作製した。染料の平均粒径は100nmであった。 [0065] (実施例15) 実施例1と同一の方法で作製した分散液25部に、"ソルビトールS"40部、"サーフィノール82"1部、さらに水を34部加え染料濃度を5%に調整したインクを作製した。染料の平均粒径は100nmであった。 [0066] (実施例16) 実施例1と同一の方法で作製した分散液25部に、"サーフィノール82"1部、ジグリセリン30部、さらに水を44部加え染料濃度を5%に調整したインクを作製した。染料の平均粒径は100nmであった。 [0067] (実施例17) 実施例1と同一の方法で作製した分散液25部に、"サーフィノール82"1部、プロピレングリコール30部、さらに水を44部加え染料濃度を5%に調整したインクを作製した。染料の平均粒径は100nmであった。 [0068] (実施例18~24) 実施例1と同一の方法で作製した分散液25部に、表1~2に記載の保湿剤を所定量、"サーフィノール82"1部、さらに水を加え染料濃度を5%に調整し、実施例18~24のインクを作製した。染料の平均粒径は100nmであった。 ・・・ [0074] また、上記実施例および比較例で作成したインクについて以下の試験を行った。試験結果を表1~3に示す。表1~3における各物質の数値は質量部を示す。表1~3における各試験の測定方法は次のとおりである。 (1)出射試験:上記実施例および比較例で作製したインクを市販の大判インクジェット用プロッター((株)ミマキエンジニアリング製"JV4-130")を使用して、360×540dpi、3パス、双方向、印字幅1200mmの条件下で、単色・塗りつぶし印刷を10時間行った。印刷後ノズルチェックを行い、全180ノズルのうちの正常出射していないノズルの数を確認した。 評価基準: A 正常出射していないノズルの数が0~2。 B 正常出射していないノズルの数が3~9。 C 正常出射していないノズルの数が10以上。 [0075] (2)昇華転写染色試験(煙状蒸気の発生状況):上記実施例および比較例で作製したインクを市販のインクジェット印刷用昇華転写紙(キモト株式会社製“CT-JET100”)に、前記大判インクジェット用プロッター(ピエゾ方式、(株)ミマキエンジニアリング製"JV4-130")により、360×540dpi、3パス、双方向の条件で、縦300mm、横400mmの単色・塗りつぶし印刷を行い、印字後ポリエステル布に重ねて、ホットプレートにて200℃で1分間加熱圧着し、転写染色を行った。その際の煙状蒸気の発生状況を目視にて確認した。 評価基準: A 煙状の蒸気の発生は認められない。 B 少し、煙状の蒸気の発生が認められる。 C かなり、煙状の蒸気の発生が認められる。 [0076] (3)昇華転写染色試験(濃度感):上記実施例および比較例で作製したインクを市販のインクジェット印刷用昇華転写紙(キモト株式会社製“CT-JET100”)に、前記大判インクジェット用プロッター(ピエゾ方式、(株)ミマキエンジニアリング製"JV4-130")により、360×540dpi、3パス、双方向の条件で、縦300mm、横400mmの単色・塗りつぶし印刷を行い昇華転写紙の印字濃度を目視で確認した。次いで前記昇華転写紙をポリエステル布に重ねて、ホットプレートにて200℃で1分間加熱圧着し、転写染色を行い、染色布の濃度感を目視にて確認した。 評価基準: A 昇華転写紙の印字濃度が高く、転写染色布の染色濃度が高い。 B 少し、昇華転写紙の印字濃度が低く、転写染色布の染色濃度が低い。 C かなり、昇華転写紙の印字濃度が低く、転写染色布の染色濃度が低い。 [0077] (4)昇華捺染染色試験(濃度感):上記実施例および比較例で作製したインクを市販のインクジェット印刷用前処理済みポリエステル布(株式会社大力製“大力スーパーポンジ”)に、大判インクジェット用プロッター(ピエゾ方式、(株)ミマキエンジニアリング製"TX2-160")により、360×540dpi、3パス、双方向の条件で、縦300mm、横400mmの単色・塗りつぶし印刷を行い、ホットプレートにて200℃で1分間加熱圧着し、染色を行った。得られた染色布の濃度感を目視にて確認した。 評価基準: A 染色布の染色濃度が高い。 B 少し、染色布の染色濃度が低い。 C かなり、染色布の染色濃度が低い。 [0078] (5)経時安定性確認試験 実施例および比較例で作成した昇華転写用インクジェット記録用インクを40℃で1ヶ月間保管して、凝集物(沈降物)の発生状況を目視で確認した。 評価基準: A 凝集物の発生なし。 B 少し、凝集物が発生している。 C 多量の凝集物が発生している。 [0079] [表1] [図:0001423481000007.jpg] [0080] [表2] [図:0001423481000008.jpg] ・・・ [0082] これらの試験結果から明らかなように、本発明の実施例1~24の“ジョンクリル63”及び“サーフィノール82”を含むインクは、安定した記録性能、インクの保存安定性、被記録媒体表面への高印字濃度、染色工程時の環境汚染の低減を兼ね備えたものであった。“サーフィノール82”を“サーフィノール104E”、“サーフィノール465”、“BYK-348”、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2-ヘキサンジオールに置き換えた比較例1乃至5のインクは、安定した記録性能は有していたが、被記録媒体に対して浸透した結果印字濃度が低く、またインクの保存安定性は悪いものであった。“ジョンクリル63”を低分子量の“ジョンクリル57”に置き換えた比較例6のインクはインクの保存安定性が十分ではなかった。“ジョンクリル63”を“デモールN”に置き換えた比較例7のインクは被記録媒体に対して浸透した結果印字濃度が低く、またインクの保存安定性は悪いものであった。“ジョンクリル63”を“デモールN”に置き換え、さらに“ユニトックス480”を添加した比較例8のインクは被記録媒体に対して浸透した結果印字濃度が低いものであった。保湿剤としてグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子量300)、ジプロピレングリコールを使用した比較例9乃至12のインクは安定した記録性能、インクの保存安定性、被記録媒体表面への高印字濃度は兼ね備えていたが、染色工程時の環境汚染の観点ではかなり劣るものであった。」 (5)甲第04号証(以下、「甲4」という。) 4a「【請求項1】 (B)スチレン-(メタ)アクリル共重合体、中和剤及び(C)下記式(1)で表される化合物を含有するエマルション組成物。 【化1】 [図:0001423481000009.jpg] [式(1)中、tは1乃至5を表す。]」 4b「【0024】 これら染料のうち、好ましくは分散染料、油溶性染料、及び建染染料であり、さらに好ましくは、C.I.ディスパースイエロー42、49、76、83、88、93、99、119、126、160、163、165、180、183、186、198、199、200、224、237、C.I.ディスパースオレンジ25、29、30、31、38、42、44、45、53、54、55、71、73、80、86、96、118、119、C.I.ディスパースレッド73、88、91、92、111、127、131、143、145、146、152、153、154、179、191、192、206、221、258、283、302、323、328、359、C.I.ディスパースバイオレット26、35、48、56、77,97、C.I.ディスパースブルー27、54、60、73、77、79、79:1、87、143、165、165:1、165:2、181、185、197、225、257、266、267、281、341、353、354、358、359、360、364、365、368等が挙げられ、熱転写適性のある染料としては C.I.ディスパースイエロー51、54、60、82、C.I.ディスパースオレンジ5、7、20、23、25、C.I.ディスパースレッド4、11、50、53、59、60、239、240、364、C.I.ディスパースバイオレット8、11、17、26、27、28、36、C.I.ディスパースブルー3、5、26、35、55、56、72、81、91、108、334、359、360、366、C.I.ディスパースブラウン27、C.I.ソルベントイエロー114、C.I.ソルベントオレンジ60、67、C.I.ソルベントレッド146、C.I.ソルベントブルー36、63、83、105、111等である。 このうち好ましくは、C.I.ディスパースオレンジ25、ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースバイオレット27、28、C.I.ディスパースブルー72、359、360、366である。 ・・・ 【0027】 前記の染料は配合しても良く、例えばブラックインクの調製においては、ブルー染料を主体にオレンジ染料、及びレッド染料を適宜配合してブラック色に調色し、これをブラック染料として用いることができる。また、例えばブルー、オレンジ、レッド、バイオレット、又はブラック等の色調を、より好みの色調に微調整する目的で複数の染料を配合しても良い。」 4c「【0032】 以上から、好ましい成分(B)のスチレン-(メタ)アクリル共重合体の具体例としては、Joncryl67(重量平均分子量=12,500、酸価=213)、678(重量平均分子量=8,500、酸価=215)、682(重量平均分子量=17,00、酸価=230)、683(重量平均分子量=8,000、酸価=160)、690(重量平均分子量=16,500、酸価=240)等である。 【0033】 本発明のエマルション組成物は、色素の分散時に2種類のスチレン-アクリル共重合体分散剤を使用して作製することが可能である。」 4d「【0058】 色素溶解剤としては、前記の成分(F)水溶性有機溶剤と同じ物を使用することもできる。例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等の(C1~C4)アルコール;C2~C8多価アルコール及び、ジ又はトリC2~C3 アルキレングリコール若しくは繰り返し単位が4以上で、分子量20,000程度以下のポリC2~C3アルキレングリコール、好ましくは液状のポリアルキレングリコール等が挙げられる。具体例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-及び/又は1,3-プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の多価アルコール類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。また、水に溶解して湿潤剤としての役割をする化合物等は、仮に室温では固体であっても便宜上、水溶性有機溶剤に含めるものとする。それらとしては例えば尿素、エチレン尿素及び糖類等が挙げられる。アミド類;ケトン又はケトアルコール;環状エーテルが挙げられる。1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等の4~9個の炭素原子を含むジオール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコールのエステル類が挙げられる。好ましい具体例としては、グリセリン、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。前記溶解剤のうち1種類を用いてもまた2種類以上を併用しても良い。布の種類や用途に合わせて組み合わせることも好ましく行われる。また、色素溶解剤は水性インク組成物中に含有するのが好ましい。」 4e「【0062】 本発明の水性インクは、各種分野において使用することができるが、筆記用水性インク、水性印刷インク、情報記録インク、捺染等に好適であり、インクジェット記録用インクとして用いることが特に好ましい。」 4f「【0063】 以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。実施例において部は質量部を、%は質量%をそれぞれ意味する。 【0064】 実施例1 48%水酸化ナトリウム(3.7部)、イオン交換水(96.3部)、プロピレングリコール(60部)へJoncryl 683(BASF社製、式(2)の構造を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=8,000、ガラス転移点=75℃、酸価=160mgKOH/g)40部を投入し、90-120℃に昇温して5時間撹拌することにより、Joncryl 683のエマルション液1を得た。 【0065】 実施例2 48%水酸化ナトリウム(4.1部)、イオン交換水(95.9部)、プロピレングリコール(60部)へJoncryl 690(BASF社製、式(3)の構造を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=16,500、ガラス転移点=102℃、酸価=240mgKOH/g)40部を投入し、90-120℃に昇温して5時間撹拌することにより、Joncryl 690のエマルション液2を得た。 【0066】 実施例3 Joncryl 690(BASF社製)40部をプロピレングリコール(60部)へ投入し、90-120℃に昇温して5時間撹拌することにより、Joncryl 690の40%溶解液を得た。その後70-90℃に温度を下げてそこへ水酸化ナトリウム(4.1部)、を投入し、1時間撹拌後イオン交換水(180部)、サーフィノール104(日信化学工業株式会社製)0.1を投入し、70-95℃に保って1時間撹拌することにより、Joncryl 690のエマルション液(A)を得た。得られたエマルション液(A)を0.2mm径ガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散化処理を行った。分散処理後、ガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径0.5μm)で濾過し、粒子サイズの大きい成分を除去したJoncryl 690のエマルション液3を得た。 【0067】 実施例1乃至3で得られたエマルション液を用い、下記記載の染料1乃至6を分散させたところ、各々安定なエマルション溶液を得た。 【0068】 染料1 Or25:ディスパースオレンジ25 染料2 B359:ディスパースブルー359 染料3 B360:ディスパースブルー360 染料4 Y54:ディスパースイエロー54 染料5 B77:ディスパースブルー77 染料6 R60:ディスパースレッド60 本発明のエマルション組成物は、染料を安定に分散することが可能であり、インクジェット用水性インクに用いるエマルション組成物として非常に有用である。」 (6)甲第05号証(以下、「甲5」という。) 5a「【請求項1】 (A)着色剤、(B)スチレン-(メタ)アクリル共重合体、(C)下記式(1)で表される化合物、及び(D)中和剤を含有する分散液組成物。 【化1】 [図:0001423481000010.jpg] [式(1)中、tは1乃至5を表す。] 【請求項2】 前記成分(A)が、分散染料、油溶性染料、及び建染染料から選ばれる少なくとも1種類の染料である請求項1に記載の分散液組成物。 【請求項3】 前記成分(A)が、C.I.ディスパースイエロー42、49、51、54、60、76、82、83、88、93、99、119、126、160、163、165、180、183、186、198、199、200、224、237、C.I.ディスパースオレンジ5、7、20、23、25、29、30、31、38、42、44、45、53、54、55、71、73、80、86、96、118、119、C.I.ディスパースレッド4,11、50、53、59、60、73、88、91、92、111、127、131、143、145、146、152、153、154、179、191、192、206、221、239、240、258、283、302、323、328、359、364、C.I.ディスパースバイオレット8、11、17、26、27、28、35、36、48、56、77,97、C.I.ディスパースブルー3、5、26、27、35、54、55、56、60、72、73、77、79、79:1、81、87、91、108、143、165、165:1、165:2、181、185、197、225、257、266、267、281、334、341、353、354、358、359、360、364、365、366、368、C.I.ディスパースブラウン27、C.I.ソルベントイエロー114、C.I.ソルベントオレンジ60、67、C.I.ソルベントレッド146、C.I.ソルベントブルー36、63、83、105、111から選ばれる少なくとも1種類の染料である請求項1又は2のいずれか一項に記載の分散液組成物。」 5b「【0032】 以上から、好ましい成分(B)のスチレン-(メタ)アクリル共重合体の具体例としては、Joncryl67(重量平均分子量=12,500、酸価=213)、678(重量平均分子量=8,500、酸価=215)、682(重量平均分子量=17,00、酸価=230)、683(重量平均分子量=4,900、酸価=215)、690(重量平均分子量=16,500、酸価=240)等である。 【0033】 本発明の分散液組成物は、色素の分散時に2種類のスチレン-アクリル共重合体分散剤を使用して作製することが可能である。」 5c「【0064】 本発明の水性インクは、各種分野において使用することができるが、筆記用水性インク、水性印刷インク、情報記録インク、捺染等に好適であり、インクジェット記録用インクとして用いることが特に好ましい。」 5d「【0065】 以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。実施例において部は質量部を、%は質量%をそれぞれ意味する。 【0066】 [エマルション液1の作製] 48%水酸化ナトリウム(3.7部)、イオン交換水(96.3部)、プロピレングリコール(60部)へJoncryl 683(BASF社製、式(2)の構造を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=8,000、ガラス転移点=75℃、酸価=160mgKOH/g)40部を投入し、90-120℃に昇温して5時間撹拌することにより、Joncryl 683のエマルション液1を得た。 【0067】 [エマルション液2の作製] 48%水酸化ナトリウム(4.1部)、イオン交換水(95.9部)、プロピレングリコール(60部)へJoncryl 690(BASF社製、式(3)の構造を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=16,500、ガラス転移点=102℃、酸価=240mgKOH/g)40部を投入し、90-120℃に昇温して5時間撹拌することにより、Joncryl 690のエマルション液2を得た。 【0068】 [エマルション液3の作製] Joncryl 690(BASF社製)40部をプロピレングリコール(60部)へ投入し、90-120℃に昇温して5時間撹拌することにより、Joncryl 690の40%溶解液を得た。その後70-90℃に温度を下げてそこへ水酸化ナトリウム(4.1部)、を投入し、1時間撹拌後イオン交換水(180部)、サーフィノール104(日信化学工業株式会社製)0.1を投入し、70-95℃に保って1時間撹拌することにより、Joncryl 690のエマルション液(A)を得た。得られたエマルション液(A)を0.2mm径ガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散化処理を行った。分散処理後、ガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径0.5μm)で濾過し、粒子サイズの大きい成分を除去したJoncryl 690のエマルション液3を得た。 【0069】 [実施例1~5]分散液組成物の調整 下記表1及び表2に記載の各成分の混合物に0.2mm径ガラスビーズを加え、サンドミルにて水冷下、約15時間分散処理を行った。得られた液にイオン交換水を加え、液の総質量中における染料の含有量が15%となるように調整した。得られた液をガラス繊維ろ紙GC-50(ADVANTEC社製)で濾過し、実施例の分散液組成物を得た。 【0070】 【表1】 [図:0001423481000011.jpg] 【0071】 【表2】 [図:0001423481000012.jpg] 【0072】 上記表1及び表2中の数字は「部数」であり、略号は、以下の通りである。 Or25:C.I.ディスパースオレンジ25 R60:C.I.ディスパースレッド60 B360:C.I.ディスパースブルー360 B359:C.I.ディスパースブルー359 Y54:C.I.ディスパースイエロー54 B77:C.I.ディスパースブルー77 10%SF104PG:サーフィノール104をプロピレングリコールで10%濃度に希釈したもの サーフィノール104:アセチレングリコール界面活性剤(エアープロダクツジャパン株式会社製) プロクセルGXL:防腐防黴剤(ロンザ社製) 【0073】 実施例1乃至11で得られた分散液組成物はいずれも着色剤を安定に分散することが可能であり、水性インクとして有用であることが示唆された。」 (7)甲第06号証(以下、「甲6」という。) 6a「【請求項1】 染料Aと染料Bとを含む昇華転写用インクジェットブラックインク組成物であって、 前記染料Aが、分子量380以下であり、かつ水溶性基を有するアントラキノン骨格を分子内に有する分散染料を含み、 前記染料Bが、分子量380以下である分散染料を含み、 前記昇華転写用インクジェットブラックインク組成物中において、前記染料Aの染料溶解度が、前記染料Bの染料溶解度より大きく、かつ前記染料Bの染料溶解度が10-3以下である、昇華転写用インクジェットブラックインク組成物。 ・・・ 【請求項5】 インクジェット法を用いて、請求項1~4のいずれか1項に記載の昇華転写用インクジェットブラックインク組成物を中間転写媒体に付与するインク付与工程と、 前記中間転写媒体の前記昇華転写用インクジェットブラックインク組成物が付与された面と、被記録媒体の染色面と、を対向させた状態で加熱し、前記昇華転写用インクジェットブラックインク組成物に含まれる分散染料を前記被記録媒体に転写させる転写工程と、を有する、染色物の製造方法。」 6b「【0014】 染料Aの具体例としては、特に限定されないが、例えば、Disperse Red 60、191、Disperse Blue 、26、35、56、72、77、91、359、Disperse Violet 28が挙げられる。 【0015】 染料Aの含有量は、特に限定されないが、昇華転写用インクジェットブラックインク組成物の総量に対して、好ましくは3.0質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以上8.0質量%以下である。染料Aの含有量が上記範囲内であることにより、得られる記録物の発色性がより優れる傾向にある。また、染料Aは実質的に単一種類で用いられることが好ましいが、不可避的に混合される程度の含有量(例えば0.1質量%未満)であれば複数種の染料であってもよい。 ・・・ 【0020】 イエロー分散染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.ディスパースイエロー3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232等が挙げられる。」 6c「【0036】 (分散剤) 昇華転写用インクジェットブラックインク組成物は分散剤を含むことができる。昇華転写用インクジェットブラックインク組成物が分散剤を含むことにより、昇華転写用インクジェットブラックインク組成物における分散染料の分散安定性がより優れる傾向にあり、昇華転写用インクジェットブラックインク組成物の保存安定性、昇華転写用インクの長期にわたる吐出安定性等がより優れる傾向にある。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤、高分子分散剤が挙げられる。 【0037】 アニオン系分散剤としては、特に限定されないが、例えば、芳香族スルホン酸の塩(例えばナトリウム塩。以下同様。)若しくはホルマリン縮合物、β-ナフタレンスルホン酸の塩若しくはホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸の塩若しくはホルマリン縮合物、及び、クレオソート油スルホン酸の塩若しくはホルマリン縮合物が挙げられる。 【0038】 上記芳香族スルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、クレオソート油スルホン酸、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、β-ナフトールスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸とβ-ナフトールスルホン酸との混合物、クレゾールスルホン酸と2-ナフトール-6-スルホン酸との混合物、リグニンスルホン酸等が挙げられる。」 6d「【0042】 (水溶性有機溶剤) 昇華転写用インクジェットブラックインク組成物は、水溶性有機溶剤をさらに含んでもよい。水溶性有機溶剤を含むことにより、長期放置時によるヘッドからの水分蒸発を効果的に抑制しつつ、中間記録媒体への濡れ性を高めて昇華転写用インクジェットブラックインク組成物の浸透性がより向上し、吐出安定性及び目詰まり回復性もより向上する傾向にある。そのような水溶性有機溶剤としては、通常のインクに水溶性有機溶剤として使用されている化合物を用いることができ、ポリオール化合物、グリコールエーテル、糖類、ベタイン化合物等が挙げられる。 【0043】 ポリオール化合物としては、例えば、分子内の炭素数が2以上6以下であり、かつ、分子内にエーテル結合を1つ有してもよいポリオール化合物(好ましくはジオール化合物)等が挙げられる。具体例としては、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6- ヘキサンジオール等が挙げられる。」 6e「【0076】 以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。 【0077】 [1.インク組成物用の材料] 下記の実施例及び比較例において使用したインク組成物用の主な材料は、以下の通りである。 〔色材〕 (染料A) DR60(Disperse Red 60、アミノ基及びヒドロキシル基を有するアントラキノン骨格を有する。) DR191(Disperse Red 191、アミノ基及びヒドロキシル基を有するアントラキノン骨格を有する。) DB359(Disperse Blue 359、アミノ基を有するアントラキノン骨格を有する。) DB72(Disperse Blue 72、ヒドロキシル基を有するアントラキノン骨格を有する。) (染料B) DO25(Disperse Orange 25、アゾ骨格を有する。) DY54(Disperse Yellow 54、キノリル骨格を有する。) DB14(Disperse Blue 14、水溶性基を有しないアントラキノン骨格を有する。) DB360(Disperse Blue 360、アゾ骨格を有する。) 〔界面活性剤〕 BYK-348(シリコーン系界面活性剤、ビックケミー・ジャパン社製) 〔分散剤〕 NS(β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物(アニオン系分散剤)) 〔水溶性有機溶剤〕 グリセリン プロピレングリコール 【0078】 [インク組成物の調製] 各材料を下記の表1に示す組成(質量%)で混合し、各インク組成物を得た。 【0079】 (染料溶解度の測定方法) 染料を添加しないこと以外はインク組成物と全く同じ組成で、溶解度測定液を作製した。この溶解度測定液を25℃に保ち、染料A又はBの染料粉体を0.1%添加し、5時間攪拌を行った。攪拌終了後、遠心分離器により未溶解の染料をすべて沈降させ、上澄の溶解部分を分取した。この染料が溶解した上澄部分に存在する染料の濃度をHPLCにて定量した。溶解度は通常用いられる様に、溶液100gあたりの溶質量(g)とした。 【0080】 【表1】 [図:0001423481000013.jpg] 【0081】 [昇華転写用インクジェットブラックインク組成物の評価:実施例1~8、比較例1~12] 〔高温放置後の目詰まり回復性〕 上記で得られた各インク組成物をインクジェットプリンタ(PX-G930、セイコーエプソン社製)にそれぞれ充填した。その後、プリンタのヘッドに昇華転写用インクを充填し、目詰まりしているノズルがなく、通常記録できることを確認した。その後、ホームポジション外の位置(ヘッドがプリンタに備えたキャップの位置からずれており、ヘッドにキャップがされていない状態)で40℃、20RH%の環境下に48時間放置した。放置後、再び全ノズルよりインク組成物を吐出し、初期と同等の印刷が可能となるまでに必要とされたクリーニングの回数を計測し、結果を以下の基準に基づいて判定した。 A:クリーニング3回以内で全ノズルから吐出可能となる。 B:クリーニング4回以上6回以内で全ノズルから吐出可能となる。 C:クリーニングを7回以上実施しても全ノズルの目詰まりが回復しない。 【0082】 〔吐出安定性〕 得られたインク組成物をインクジェットプリンタ(SC-F7000、セイコーエプソン社製)にそれぞれ充填した。その後、プリンタのヘッドに昇華転写用インクを充填し、目詰まりしているノズルがなく、通常記録できることを確認した。尚、プリンタの動作環境は25℃とした。次いで、中間転写媒体である44インチ幅のTransjet Sportline(Cham Paper社)上に、B0+サイズの風景及び人物を含めた自然画パターンを形成し、その後ノズル抜けがないかを確認した。パターンの記録とノズル抜けの確認を繰り返し、以下の評価基準で評価をした。 A:ノズル抜けが発生するまでのパターン記録数が20枚以上 B:ノズル抜けが発生するまでのパターン記録数が10枚以上20枚未満 C:ノズル抜けが発生するまでのパターン記録数が10枚未満 【0083】 〔混色時の彩度C*〕 得られたインク組成物をインクジェットプリンタ(PX-G930、セイコーエプソン社製)に充填した。その後、プリンタのヘッドに昇華転写用インクを充填し、目詰まりしているノズルがなく、通常記録できることを確認した。その後、中間転写媒体であるTRANSJET Sportline(Cham Paper社)上に、記録解像度1440×720dpiでベタパターンを付着させた。尚、プリンタの動作環境は25℃とした。 【0084】 その後、中間転写媒体の昇華転写用インク付着側を白色記録媒体である布帛(ポリエステル100%、アミーナ、東レ社製)と密着させ、この状態で、ヒートプレス機(TP-608M、太陽精機社製)を用いて200℃で60秒の条件で加熱し、昇華転写を行い、各記録物を得た。 【0085】 得られた各記録物について、彩度C*の評価を行った。具体的には、得られた各記録物について、測色機(Gretag Macbeth Spectrolino、X-Rite社製)を用いてa*値b*値の測色を行い、C*を算出し、以下の基準にて評価した。 A:C*が5未満であった。 B:C*が5以上10未満であった。 C:C*が10以上であった。」 (8)甲第07号証(以下、「甲7」という。) 7a「【請求項1】 分散染料及び油溶性染料から選ばれる少なくとも1種の昇華性染料、少なくとも2種類の分散剤、少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物、及び、少なくとも1種類のポリオール化合物を含有する昇華転写用の水性インクジェットインク、 【化1】 [図:0001423481000014.jpg] (式中、nは平均重合度を表し、2~12である)。 ・・・ 【請求項9】 昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー3、7、8、23、39、51、54、60、71、86;C.I.ディスパースオレンジ1、1:1、5、20、25、25:1、33、56、76;C.I.ディスパースブラウン2;C.I.ディスパースレッド11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、240;C.I.バットレッド41;C.I.ディスパースバイオレット8、17、23、27、28、29、36、57;C.I.ディスパースブルー19、26、26:1、35、55、56、58、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、359;C.I.ソルベントブルー36、63、105、111;よりなる群から選択される染料である、請求項1に記載の昇華転写用の水性インクジェットインク。 ・・・ 【請求項10】 請求項1乃至9のいずれか一項に記載の昇華転写用の水性インクジェットインクを用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて中間記録媒体に付与し、該中間記録媒体へ記録を行うインクジェット記録方法。」 7b「【0022】 本発明のインクに含有する分散剤としては、アニオン分散剤を少なくとも1種類、及びノニオン分散剤を少なくとも1種類、それぞれ含有するのが好ましい。アニオン分散剤及びノニオン分散剤の両者を含有することにより、良好な分散安定性が得られる。 【0023】 前記のアニオン分散剤としては、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物が好ましく挙げられる。 【0024】 前記のアニオン分散剤中、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物における「芳香族スルホン酸」としては、例えばクレオソート油スルホン酸、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、β-ナフトールスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸とβ-ナフトールスルホン酸の混合物、及びクレゾールスルホン酸と2-ナフトール-6-スルホン酸の混合物、リグニンスルホン酸等が挙げられる。 前記芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物は、市販品として入手する事もできる。市販品としては、例えばいずれも花王株式会社製の商品名で、デモールRTMN(β-ナフタレンスルホン酸)、デモールRTMSN-B(ブチルナフタレンスルホン酸);いずれも第一工業製薬株式会社製の商品名で、ラベリンRTMW-40(クレオソート油スルホン酸)、ラベリンRTMAN-40(メチルナフタレンスルホン酸);等が挙げられる。各商品名の後ろに付けた括弧書きは、前記「芳香族スルホン酸」の部分を表し、いずれもホルマリン縮合物である。 なお、本明細書において上付きの「RTM」は、登録商標を表す。 ・・・ 【0030】 本発明のインクに含有するポリオール化合物としては、総炭素数が2乃至6であり、且つ1分子中にエーテル結合を1つ有しても良いポリオール化合物(好ましくはジオール化合物)が挙げられる。 具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。 これらのうち、ノズルでの目詰まり防止として高い保湿性を有すること、及び昇華性染料に対する溶解性の点からは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオールが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールがより好ましい。これらは、単独でも2種類以上を併用して用いても良い。」 7c「【0055】 [実施例1] 昇華性染料としてカヤセットレッドB(日本化薬株式会社製、C.I.ディスパースレッド60)30部、アニオン分散剤としてラベリンRTMW-40(第一工業製薬株式会社製、クレオソート油スルホン酸塩のホルマリン縮合物の40%水溶液)45部、ノニオン分散剤としてNIKKOLRTMBPS-30(日光ケミカルズ株式会社製、フィトステロールのEO(エチレンオキサイド)30モル付加物)2部、イオン交換水23部からなる混合物を、0.2mm径ガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散化処理を行った。分散処理後、イオン交換水100部を加えて染料含有量が15%の水性分散液を調製した。次いで、該分散液をガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径0.5μm)で濾過し、粒子サイズの大きい成分を除去した水性分散液を得た。 ・・・ 【0063】 [実施例8] 昇華性染料として“カヤセットブルーA-2R”(日本化薬株式会社製、C.I.ディスパースブルー72)30部、アニオン分散剤としてラベリンAN-40(第一工業製薬株式会社製、メチルナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物の40%水溶液)45部、ノニオン分散剤としてNIKKOLRTMBPSH-25(日光ケミカルズ製、水添フィトステロールのEO25モル付加物)2部、イオン交換水23部からなる混合物を、0.2mmφガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散化処理を行った。分散処理後、イオン交換水100部を加えて染料含有量が15%の水性分散液を調製した。次いで、該分散液をガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径0.5μm)で濾過し、粒子サイズの大きい成分を除去した水性分散液を得た。 ・・・ 【0072】 (1)乾燥再分散性試験 インク1hをシャーレ(90mmφ)に採取し、シャーレ内部にインクを塗り広げた後、40℃の恒温乾燥機内部にて6時間乾燥させた。6時間後シャーレを恒温乾燥機から取り出し、水分が蒸発したインクにイオン交換水5gを滴下し状態を確認した。 評価基準: ○:凝集せずに綺麗に再分散する。 △:一部微小の凝集物は認められるが、概ね再分散する。 ×:全く再分散しない。 【0073】 (2)ロングラン吐出性試験 株式会社ミマキエンジニアリング製ワイドフォーマットインクジェットプリンタ、JV2-130にてロングランでの吐出安定性を評価した。印刷モードは、720dpi×72 0dpi、単方向、8PASS、単色100%印刷の条件で、横1m×縦10mのベタ印刷を行った後、ノズルの吐出不良部分をテストパターンにて確認した。 評価基準: ○:1ノズルも目詰まりを起していない。 △:1~3ノズルの目詰まりが発生。 ×:4ノズル以上の目詰まりが発生。 【0074】 (3)復帰吐出性 上記ロングラン印刷試験後、クリーニングを行い全ノズルの目詰まりを回復させた。そのまま24時間放置した後、テストパターンにてノズルの吐出不良部分を確認した。 評価基準: ○:1ノズルも目詰まりを起していない。 △:1~3ノズルの目詰まりが発生。 ×:4ノズル以上の目詰まりが発生。 【0075】 (4)昇華転写染色時の煙の発生 上記(2)ロングラン印刷試験で作成したベタ印刷物のインク付与面を所定の大きさに裁断し(35cm×40cm)、同サイズのポリエステル布(ポンジ)と重ね合わせた後、太陽精機株式会社製トランスファープレス機TP-600A2を用いて190℃×60秒の条件にて昇華転写を行った。転写作業始終において発生する蒸気の状況を確認した。 評価基準: ○:煙状の蒸気の発生は認められない。 △:少量の煙状の蒸気の発生が認められる。 ×:大量の煙状の蒸気の発生が認められる。 【0076】 下記表1中の数字は「部数」であり、略号は、以下の通りである。 Rd B:カヤセットレッドB Bl A-2R:カヤセットブルーA-2R W-40:ラベリンRTMW-40(アニオン分散剤) AN-40:ラベリンRTMAN-40(アニオン分散剤) BPS-30:NIKKOLRTMBPS-30(ノニオン分散剤) BPSH-25:NIKKOLRTMBPSH-25(ノニオン分散剤) DHC-30:NIKKOLRTMDHC-30(ノニオン分散剤) #310:ポリグリセリン#310 #750:ポリグリセリン#750 EG:エチレングリコール PG:プロピレングリコール DEG:ジエチレングリコール 1,5-PD:1,5-ペンタンジオール 1,6-HD:1,6-ヘキサンジオール TPG:トリプロピレングリコール 【0077】 なお、下記表1中、括弧書きで示したグリセリン及びTPGは、いずれも本発明のインクの範囲には含まれないものである。また、BYK-348は、前記の通り、ビックケミー・ジャパン株式会社製のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンである。 また水溶液を使用したものについては固形物換算値を記載し、水の部分については「イオン交換水」中に加算した。 【0078】 【表1】 [図:0001423481000015.jpg] 」 (9)甲第08号証の1(以下、「甲8の1」という。) 8a「【請求項1】 水、水性有機溶剤、非水溶性染料、分散剤、及び樹脂を含み、前記非水溶性染料及び前記樹脂が分散している、捺染用インクジェットインク。」 8b「【0013】 <(b)水性有機溶剤> 本発明の捺染用インクジェットインクは、水性有機溶剤を含む。 水性有機溶剤としては、25℃における水への溶解度として10g/100g-H2O以上であるものが好ましく、20g/100g-H2O以上であるものがより好ましく、水と任意の割合で混和するものが特に好ましい。水性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、ニトリル系溶剤が挙げられる。例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオ-ル、チオグルコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、1,5-ペンタンジオ-ル、1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトニトリルなどが挙げられる。好ましくはトリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、2-ピロリドン、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、エチレングリコールモノブチルエーテルであり、より好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、2-ピロリドン、エチレングリコールモノブチルエーテルであり、特に好ましくはエチレングリコール、グリセリン、2-ピロリドンである。」 8c「【0015】 <(c)非水溶性染料> 本発明の捺染用インクジェットインクは非水溶性染料を含む。 非水溶性染料とは、水に溶けない(水不溶性)染料である。本発明の捺染用インクジェットインクに含まれる非水溶性染料は1種でも良いし、2種以上でも良い。 非水溶性染料は、分散染料又は油溶性染料であることが好ましい。 昇華性分散染料とは、水不溶性の分散染料のうち、加熱により昇華する性質を有する染料である。ここで、水不溶性とは、25℃における水への溶解度が、1h/リットル以下、好ましくは500mg/リットル以下、より好ましくは100mg/リットル以下であることを意味する。 【0016】 本発明における非水溶性染料としては、上記性質を有する染料であれば特に限定はないが、特に以下の染料が好ましい。なお、「C.I.」は「カラーインデックス」の略である。また、「Disperse」と記載されているものは分散染料であり、「Solvent」と記載されているものは油溶性染料(昇華性分散染料ではない)である。 C.I.Disperse Yellow 3,7,8,23,39,51,54,60,71,86、 C.I.Solvent Yellow 2,14,16,21,33,43,44,56,82,85,93,98,114,131,135,157,160,163,167,176,179,185,189、 C.I.Disperse Red 11,50,53,55,55:1,59,60,65,70,75,93,146,158,190,190:1,207,239,240、 C.I.Solvent Red 8,23,24,25,49,52,109,111,119,122,124,135,146,149,150,168,169,172,179,195,196,197,207,222,227,312,313、 C.I.Disperse Blue 3,5,19,26,26:1,35,55,56,58,64,64:1,72,72:1,81,81:1,91,95,108,131,141,145,359,360、 C.I.Solvent Blue 3,4,5,35,36,38,45,59,63,67,68,70,78,83,97,101,102,104,105,111,122、 C.I.Disperse Orange 1,1:1,5,7,20,23,25,25:1,33,56,76、 C.I.Solvent Orange 3,14,54,60,62,63,67,86,107、 C.I.Disperse Violet 8,11,17,23,26,27,28,29,36,57、 C.I.Solvent Violet 8,9,11,13,14,26,28,31,36,59、 C.I.Solvent Green 3,5,7,28、 C.I.Disperse Brown 2、 C.I.Solvent Brown 53、 C.I.Solvent Black 3,5,7,27,29,34」 8d「【0020】 <(d)分散剤> 本発明の捺染用インクジェットインクは、分散剤を含む。 分散剤を用いることで、捺染用インクジェットインクにおける非水溶性染料の分散安定性に優れ、捺染用インクジェットインクの保存安定性、長期にわたる吐出安定性等を高めることが出来る。 分散剤としては、特に限定はなく、低分子型分散剤であっても、高分子型分散剤であってもよい。 低分子型分散剤としては、特に限定されないが、アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤が挙げられる。 アニオン系分散剤としては、特に限定されないが、例えば、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物、β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、及び、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物が挙げられる。 芳香族スルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、クレオソート油スルホン酸、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、β-ナフトールスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸、β-ナフタレンスルホン酸とβ-ナフトールスルホン酸との混合物、クレゾールスルホン酸と2-ナフトール-6-スルホン酸との混合物、リグニンスルホン酸等が挙げられる。 ノニオン系分散剤としては、特に限定されないが、例えば、フィトステロールのエチレンオキサイド付加物、コレスタノールのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。 高分子型分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミン、ポリアクリル酸塩、スチレン-アクリル酸共重合物、ビニルナフタレン-マレイン酸共重合物等が挙げられる。」 8e「【0022】 <(e)樹脂> 本発明の捺染用インクジェットインクは、分散した状態の樹脂(「(e)樹脂」ともいう)を含む。 なお、(e)樹脂は、(d)分散剤として用い得る高分子型分散剤とは異なる成分である。 (e)樹脂は、捺染用インクジェットインク中で単独で分散して存在するが、高分子型分散剤は、捺染用インクジェットインク中で非水溶性染料との混合物で分散して存在する。」 8f「【0044】 [実施例1] (昇華性分散染料分散物1の調製) C.I.Disperse Blue 359(「DB359」とも記載する)(15質量部)、デモールNL(花王株式会社製)(6質量部)、水(79質量部)、及び直径 0.1mmのジルコニアビーズを混合し、遊星型微粒子粉砕機(フリッチュ社製Pulverlsette7)を用いて、回転数400rpm(revolution per minute)で、10時間分散させて分散液を得た。得られた分散液からろ布を用いてジルコニアビーズを取り除き、昇華性分散染料分散物1を得た。 なお、DB359は昇華性分散染料であり、デモールNLは分散剤である。 【0045】 (捺染用インクジェットインク1の調製) 上記で得られた昇華性分散染料分散物1(30質量部)、グリセリン(10質量部)、プロピレングリコール(20質量部)、BYK-348(ビックケミー・ジャパン社製)(0.4質量部)、ポリエステル樹脂バイロナールMD-1480(「MD1480」とも記載する)(東洋紡株式会社製, 固形分30質量%(固形分以外は水)、体積平均粒子径(Mv):110nm)(30質量部)、及び水(9.6質量部)を混合し、メンブレンフィルター(孔径:0.8μm)でろ過し、捺染用インクジェットインク1を調製した。 なお、グリセリン及びプロピレングリコールは水性有機溶剤であり、BYK-348は界面活性剤である。 【0046】 (インクジェット捺染) 上記で得られた捺染用インクジェットインク1を、インクカートリッジに充填し、インクジェットプリンタ(PX-A720、セイコーエプソン株式会社製)を用いて、綿布帛(綿ブロード40、色染社製)、ポリエステル布帛(トロピカルK7572、色染社製)、綿及びポリエステル混紡布帛(綿65質量%ポリエステル35質量%, T/Cブロード65/35、色染社製)、並びにナイロン布帛(ナイロン6ジャージ、色染社製)にそれぞれパッチ画像を記録して着色布を得た。 【0047】 (加熱処理) 得られた着色布を20℃で12時間乾燥後、ヒートプレス機(卓上自動平プレス機AF-54TEN型,アサヒ繊維機械株式会社製)を用いて200℃、60秒の条件で加熱し、インクを定着させた。 【0048】 (評価方法) 実施例1で得た着色布の画像の染色特性を、測色機(Gretag Macbeth Spectrolino,X-Rite社製)を用いて評価した。色相、色濃度ともに良好な結果が得られた。 【0049】 <色相> 明度(L*)、色度(a*、b*)から算出した彩度C値により、OD(Optical Density)値1.0のときに、以下の基準で評価した。 A:L*>50且つC>40 B:L*>40且つ30<C≦40、又は、40<L*≦50且つC>30 C:L*≦40、又は、C≦30 【0050】 <色濃度> OD(Optical Density)値により以下の基準で評価した。 A:OD値 1.2以上 B:OD値 1.0以上1.2未満 C:OD値 1.0未満 ・・・ 【0059】 下記表1には、実施例1~9の捺染用インクジェットインク中の各成分の含有量(質量部)、及び昇華性分散染料の体積平均粒子径、昇華性分散染料の含有量に対する樹脂の含有量の比(質量比)を記載した。 【0060】 【表1】 [図:0001423481000016.jpg] 」 (10)甲第08号証の2(以下、「甲8の2」という。) 8g「【0129】 上記分散ポリマー溶液40質量部と、ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン顔料、クラリアント社製)30質量部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100質量部、及びメチルエチルケトン30質量部と、を混合し、ホモジナイザーで30分攪拌した。その後、イオン交換水を300質量部添加して、さらに1時間攪拌した。その後、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部とを留去し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで中和してpH9に調整してから0.3μmのメンブレンフィルターでろ過した。このようにして、固形分(分散ポリマーとシアン顔料)が20質量%であるシアン顔料分散液(以下、単に「C」とも言う。)を調製した。当該Cに含まれる分散ポリマーの分子量の分散度(Mw/Mn)は3.0であった。 (2.定着樹脂) ・タケラックWS-6021(三井化学社(Mitsui Chemicals、 Inc.)製商品名、アニオン性のウレタン樹脂エマルジョン、引張り強度50MPa、伸び率750%、固形分30%) (3.界面活性剤) ・BYK-348(BYK社製商品名、ポリシロキサン系界面活性剤) ・BYK-191(BYK社製商品名、アニオン性、顔料に親和性のある共重合物、酸価30、アミン価20、固形分98%) ・デモールNL(花王社製商品名、アニオン性、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、固形分41%) ・BYK-193(BYK社製商品名、ノニオン性、顔料に親和性のある共重合物、固形分40%) ・オルフィンE1010(日信化学社製商品名、ノニオン性、アセチレンジオール系界面活性剤) (4.保湿剤) ・グリセリン(阪本薬品工業社(Sakamoto Yakuhin Kogyo Co.、 Ltd.)製) ・トリエチレングリコール(関東化学社製商品名) (5.グリコールエーテル) ・ハイソルブDB(東邦化学工業社(TOHO Chemical Industry Co.、 Ltd.)製商品名)」 (11)甲第08号証の3(以下、「甲8の3」という。) 8h「【0129】 上記分散ポリマー溶液40質量部と、ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン顔料、クラリアント社製)30質量部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100質量部、及びメチルエチルケトン30質量部と、を混合し、ホモジナイザーで30分攪拌した。その後、イオン交換水を300質量部添加して、さらに1時間攪拌した。その後、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部とを留去し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで中和してpH9に調整してから0.3μmのメンブレンフィルターでろ過した。このようにして、固形分(分散ポリマーとシアン顔料)が20質量%であるシアン顔料分散液(以下、単に「C」とも言う。)を調製した。当該Cに含まれる分散ポリマーの分子量の分散度(Mw/Mn)は3.0であった。 (2.定着樹脂) ・タケラックWS-6021(三井化学社(Mitsui Chemicals、 Inc.)製商品名、アニオン性のウレタン樹脂エマルジョン、引張り強度50MPa、伸び率750%、固形分30%) (3.界面活性剤) ・BYK-348(BYK社製商品名、ポリシロキサン系界面活性剤) ・BYK-191(BYK社製商品名、アニオン性、顔料に親和性のある共重合物、酸価30、アミン価20、固形分98%) ・デモールNL(花王社製商品名、アニオン性、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、固形分41%) ・BYK-193(BYK社製商品名、ノニオン性、顔料に親和性のある共重合物、固形分40%) ・オルフィンE1010(日信化学社製商品名、ノニオン性、アセチレンジオール系界面活性剤) (4.保湿剤) ・グリセリン(阪本薬品工業社(Sakamoto Yakuhin Kogyo Co.、 Ltd.)製) ・トリエチレングリコール(関東化学社製商品名)(5.グリコールエーテル) ・ハイソルブDB(東邦化学工業社(TOHO Chemical Industry Co.、 Ltd.)製商品名)」 (12)甲第08号証の4(以下、「甲8の4」という。) 8i「【0084】 【表2】 [図:0001423481000017.jpg] 」 (13)甲第08号証の5(以下、「甲8の5」という。) 8j「【0050】 ポリウレタン樹脂粒子の分散液(Ib1)の市販品としては、例えば、「WBR」シリーズのポリエーテル系ポリウレタン「WBR-016U」、ポリカーボネート系ポリウレタン「WBR-2101」、ポリエステル系ポリウレタン「WBR-2122C」(以上、大成ファインケミカル株式会社製)、「スーパーフレックス」シリーズのポリエステル・ポリエーテル系ポリウレタン「150」、「170」、ポリエステル系ポリウレタン「210」、「500M」、「820」、ポリエーテル系ポリウレタン「870」(以上、第一工業製薬株式会社製)、「ユーコート」シリーズのポリエステル系ポリウレタン「UWS-145」、ポリカーボネート系ポリウレタン「UX-485」、「パーマリン」シリーズのポリエーテル系ポリウレタン「UA-200」、ポリカーボネート系ポリウレタン「UA-368T」(以上、三洋化成工業株式会社製)が挙げられる。」 (14)甲第09号証の1(以下、「甲9の1」という。) 9a「【請求項1】 分散染料、油溶性染料、及び建染染料から選ばれる少なくとも1種類の昇華性を有する染料、分散剤、少なくとも1種類の下記式(1)で表される化合物、少なくとも1種類の下記式(2)で表される化合物、及び、少なくとも1種類のポリオール化合物を含有する水性インク。 【化1】 [図:0001423481000018.jpg] [式(1)中、nは平均値で2~12を表す。] 【化2】 [図:0001423481000019.jpg] [式(2)中、R1~R4はそれぞれ独立にアルキル基を表し、m及びqの総和は平均値で1~90を表す。] ・・・ 【請求項8】 昇華性を有する染料が、C.I.ディスパースイエロー 3、7、8、23、51、54、60、71、86;C.I.ディスパースオレンジ 20、25、25:1、56、76;C.I.ディスパースブラウン 2;C.I.ディスパースレッド 11、53、55、55:1、59、60、65、70、75、146、190、190:1、207、239、240;C.I.バットレッド 41;C.I.ディスパースバイオレット 8、17、23、27、28、29、36、57;C.I.ディスパースブルー 26、26:1、55、56、58、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、359;及び、C.I.ソルベントブルー 36、63、105、111;よりなる群から選択される染料である、請求項1に記載の水性インク。 ・・・ 【請求項11】 請求項1~8のいずれか一項に記載のインクの液滴を、インクジェットプリンタにより中間記録媒体に付着させた後、該中間記録媒体のインクの液滴の付着面と、疎水性樹脂を含有する繊維、フィルム及びシートから選択される物質とを接触させて加熱することにより、中間記録媒体に付着した各インクの液滴中の染料を、物質に昇華転写させて染色を行う物質の染色方法。」 9b「【0018】 前記の分散染料、油溶性染料、及び建染染料から選択される、昇華性を有する染料としては、例えば「乾熱処理に対する染色堅ろう度試験方法[JIS L 0879:2005](2010年 確認、平成17年1月20日 改定、 財団法人日本規格協会 発行)」における、感熱処理試験(C法)汚染(ポリエステル)の試験結果が、好ましくは3-4級以下;より好ましくは3級以下;の染料が挙げられる。そのような染料のうち、C.I.番号を有する染料としては、例えば以下の染料が挙げられる。 イエロー染料としては、C.I.Disperse Yellow 3、7、8、23、39、51、54、60、71、82、86;C.I.Solvent Yellow 43、114、163;等が挙げられる。 オレンジ染料としては、C.I.Disperse Orange 1、1:1、5、20、25、25:1、33、56、76;等が挙げられる。 ブラウン染料としては、C.I.Disperse Brown 2;等が挙げられる。 レッド染料としては、C.I.Disperse Red 11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、240;C.I.Vat Red 41;等が挙げられる。 バイオレット染料としては、C.I.Disperse Violet 8、17、23、27、28、29、36、57;等が挙げられる。 ブルー染料としては、C.I.Disperse Blue 19、26、26:1、35、55、56、58、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、359;C.I.Solvent Blue 3、63、83、105、111;等が挙げられる。 前記の「C.I.」とは、「カラーインデックス」を意味する。 ・・・ 【0020】 前記の染料は配合することができる。例えば、ブラックインクの調製においては、ブルー染料を主体にオレンジ、レッド等の染料を適宜配合することにより、ブラック染料とすることができる。また、例えばブルー、オレンジ、レッド、バイオレット、又はブラック等の色調を、より好みの色調に微調製する目的で複数の染料を配合することもできる。」 9c「【0022】 分散剤の重量平均分子量は通常1,700~20,000、好ましくは8,000~20,000、より好ましくは10,000~18,000である。重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミッションクロマトグラフ)法で測定することができる。 【0023】 分散剤の酸価は通常160~250mgKOH/g、好ましくは200~250mgKOH/gである。樹脂の酸価は、樹脂1hを中和するのに要するKOHのmg数を表し、JIS-K3054に従って測定する。 分散剤は、公知の方法により合成することも、市販品として購入することもできる。市販品のうち、スチレン-アクリル共重合体の具体例としては、例えば、BASF社製の、ジョンクリル67、68、586、611、678、680、682、683、690等が挙げられる。これらの中ではジョンクリル67(重量平均分子量=12,500、酸価=213)、678(重量平均分子量=8,500、酸価=215)、682(重量平均分子量=1,700、酸価=238)、683(重量平均分子量=8,000、酸価=160)、690(重量平均分子量=16,500、酸価=240)が好ましい。」 9d「【0056】 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。また実施例中で使用した前記式(1)で表される化合物が不純物としてグリセリンを含有するときは、該式(1)で表される化合物を購入した際の試験成績表等に記載された、グリセリンの含有量(ガスクロマトグラフ法における面積%)を記載した。 また、プロクセルGXL(S)は、以下「プロクセルGXL」と記載する。 【0057】 [分散剤の水溶液の調製1] ジョンクリル67(25部)、水酸化ナトリウム(3.0部)、イオン交換水(71.8部),プロクセルGXL(0.1部)、サーフィノール104PG50(0.1部)を混合し、100~200℃に昇温して10時間撹拌することにより、分散剤であるジョンクリル67の25%水溶液を得た。これを「分散剤1」とする。 【0058】 [実施例1] (工程1) C.I.Disperse Red 60(30部)、分散剤1(40部)、プロクセルGXL(0.1部)、サーフィノール104PG50(0.1部)、イオン交換水(23部)からなる混合物、及び0.2mm径のガラスビーズをサンドミルに入れ、冷却下、約15時間分散化処理を行った。得られた液にイオン交換水100部を加えて染料含有量を15%に調整した後、ガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径0.5μm)で濾過することにより分散液を得た。 (工程2) 実施例1(工程1)で得た分散液(30部)に、nが2である式(1)で表される化合物としてジグリセリンS(グリセリン含有量0.5%;18部)、式(2)で表される化合物としてサーフィノール420(0.3部)、分散剤1(12部)、ポリオール化合物としてプロピレングリコール(8部)、80%トリエタノールアミン(純正化学株式会社製;0.1部)、プロクセルGXL(0.1部)、サーフィノールDF110D(0.1部)、及びイオン交換水を加えることにより、染料の含有量を4.5%に調整した実施例1の水性インクを調製した。 【0059】 [実施例2] ジグリセリンSの代わりに、nが4である式(1)で表される化合物としてポリグリセリン#310(グリセリン含有量7.1%;18部)を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例2の水性インクを調製した。 【0060】 [実施例3] ジグリセリンSの代わりに、nが10である式(1)で表される化合物としてポリグリセリン#750(グリセリン含有量0.1%;18部)を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例3の水性インクを調製した。 【0061】 [実施例4] プロピレングリコールの代わりに、ポリオール化合物としてエチレングリコール(8部)を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例4の水性インクを調製した。 【0062】 [実施例5] プロピレングリコールの代わりに、ポリオール化合物としてジエチレングリコール(8部)を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例5の水性インクを調製した。 【0063】 [実施例6] プロピレングリコールの代わりに、ポリオール化合物として1,5-ペンタンジオール(8部)を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例6の水性インクを調製した。 【0064】 [実施例7] プロピレングリコールの代わりに、ポリオール化合物として1,6-ヘキサンジオール(8部)を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例7の水性インクを調製した。 【0065】 [分散剤の水溶液の調製2] ジョンクリル690(25部)、水酸化ナトリウム(3.4部)、イオン交換水(71.4部)、プロクセルGXL(0.1部)、サーフィノール104PG50(0.1部)を混合し、100~200℃に昇温して10時間撹拌することにより、分散剤であるジョンクリル690の25%水溶液を得た。これを「分散剤2」とする。 【0066】 [実施例8] (工程1) 昇華性染料としてC.I.Disperse Red 60(30部)、分散剤2(40部)、プロクセルGXL(0.1部)、 サーフィノール104PG50(0.1部)、イオン交換水23部からなる混合物、及び0.2mm径ガラスビーズをサンドミルに入れ、冷却下、約15時間分散化処理を行った。得られた液にイオン交換水(100部)を加えて染料含有量を15%に調整した後、ガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径0.5μm)で濾過することにより、分散液を得た。 (工程2) 実施例8(工程1)で得た分散液(30部)に、nが2である式(1)で表される化合物としてジグリセリンS(グリセリン含有量0.5%;18部)、式(2)で表される化合物としてサーフィノール420(0.3部)、分散剤2(12部)、ポリオール化合物としてプロピレングリコール(8部)、80%トリエタノールアミン(純正化学株式会社製;0.1部)、プロクセルGXL(0.1部)、サーフィノールDF110D(0.1部)、及びイオン交換水を加えて染料の含有量を4.5%に調整することにより、実施例8の水性インクを調製した。 【0067】 [実施例9] 分散剤1の代わりに、分散剤2を使用した以外は実施例4と同様にして、実施例9の水性インクを調製した。 【0068】 実施例1~9の水性インクの組成を、下記表1に示す。表1中の各成分は、固形分換算値であり、数値は「部」である。水溶液を使用したときは、固形分以外の水を、表1中の「水」に含めた。 下記表1中の略号等は、以下の意味を有する。 DiR 60:C.I.Disperse Red 60。 JC67:ジョンクリル67。 JC690:ジョンクリル690。 DgS:ジグリセリンS。 #310:ポリグリセリン#310。 #750:ポリグリセリン#750。 SF420:サーフィノール420。 EG:エチレングリコール。 PG:プロピレングリコール。 DEG:ジエチレングリコール。 1,5-PD:1,5-ペンタンジオール。 1,6-HD:1,6-ヘキサンジオール。 SF110:サーフィノールDF110D。 TEA:トリエタノールアミン。 GXL:プロクセルGXL。 水:イオン交換水。 【0069】 【表1】 [図:0001423481000020.jpg] 【0070】 上記実施例1~9で調製したインクについて以下(1)~(4)の各評価試験を行った。試験結果を下記表2に示す。 【0071】 [(1)乾燥再分散性試験] 各インク1hをシャーレ(90mmφ)に採取し、シャーレ内部にインクを塗り広げた後、40℃の恒温乾燥機内部にて6時間乾燥させた。シャーレを恒温乾燥機から取り出し、水分が蒸発したインクにイオン交換水5gを滴下し、再分散の状態を確認した。 [評価基準] A:凝集せずに綺麗に再分散する。 B:一部微小の凝集物は認められるが、概ね再分散する。 C:全く再分散しない。 【0072】 [(2)ロングラン吐出性試験] 株式会社ミマキエンジニアリング製ワイドフォーマットインクジェットプリンタ、JV2-130にてロングランでの吐出安定性を評価した。印刷モードは、720dpi×720dpi、単方向、8PASS、単色100%印刷の条件で、横1m×縦10mのベタ印刷を行った後、ノズルの吐出不良部分の有無をテストパターンにて確認した。 [評価基準] A:1ノズルも目詰まりを起していない。 B:1~3ノズルの目詰まりが発生。 C:4ノズル以上の目詰まりが発生。 【0073】 [(3)復帰吐出性試験] 前記「(2)ロングラン吐出性試験」後、クリーニングを行い全ノズルの目詰まりを回復させた。そのまま24時間放置した後、テストパターンにてノズルの吐出不良部分の有無を確認した。 [評価基準] A:1ノズルも目詰まりを起していない。 B:1~3ノズルの目詰まりが発生。 C:4ノズル以上の目詰まりが発生。 【0074】 [(4)煙の発生試験] 前記「(2)ロングラン吐出性試験」で作成したベタ印刷物のインク付与面を所定の大きさに裁断し(35cm×40cm)、同サイズのポリエステル布(ポンジ)と重ね合わせた後、太陽精機株式会社製トランスファープレス機TP-600A2を用いて190℃×60秒の条件にて、ポリエステル布に対して昇華転写染色を行った。この染色において、煙の発生の有無を目視で確認した。 [評価基準] A:煙の発生は認められない。 B:少量の煙の発生が認められる。 C:大量の煙の発生が認められる。」 (15)甲第09号証の2(以下、「甲9の2」という。) 9e「【0060】 【表1】 [図:0001423481000021.jpg] ジグリセリンS:ジグリセリン(阪本薬品工業(株)社製) SC-P1000:ポリグリセリルエーテル(阪本薬品工業(株)社製) サーフィノール420:アセチレングリコール界面活性剤(エアープロダクツジャパン(株)社製) サーフィノールDF110D:アセチレングリコール界面活性剤(エアープロダクツジャパン(株)社製) プロクセルXL2(S):防腐防黴剤(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)社製)」 (16)甲第10号証(以下、「甲10」という。) 10a「[請求項1] 電子写真方式によってトナーを中間記録媒体に付着させ、該中間記録媒体に付着させたトナーに含有する染料を、被染色物に昇華転写させる染色方法であって、該中間記録媒体として、密度が1.00g/cm3より大きい中間記録媒体を用いる昇華転写染色方法。 ・・・ [請求項11] 被染色物が、疎水性繊維又はその構造物、疎水性樹脂からなるフィルムやシート、疎水性樹脂がコーティングされた布帛、ガラス、金属又は陶器から選択される請求項1に記載の昇華転写染色方法。」 10b「[0005] 一方、昇華転写法で繊維を染色する手段としては、一般的にインクジェット方式が主流とされている。 しかし、インクジェット方式の昇華転写染色は、インクを構成する成分の一つである有機溶剤が、染料を転写するときの熱によって揮発し、作業環境を汚染する等の問題がある。 これに対して電子写真方式は、トナー中に揮発成分が存在せず、作業環境を汚染しないこと;900mm幅まで出力可能な感光体ドラムの出現によって、染色できる繊維(又は、その構造物である布等)のサイズがスポーツアパレル分野にも対応可能となったこと;及び、単位時間当たりの染色面積がインクジェット方式(シリアルプリント方式)と比較して大きいこと;等の理由により、近年では注目が集まっている。」 10c「[0023] 前記の染料としては、昇華転写適性のある染料を選ぶことができる。 「昇華転写適性のある染料」とは、「乾熱処理に対する染色堅ろう度試験方法〔JIS L 0879:2005〕(2010年 確認、平成17年1月20日 改定、 財団法人日本規格協会 発行)」における、感熱処理試験(C法)汚染(ポリエステル)の試験結果が、好ましくは3-4級以下;より好ましくは3級以下;の染料を意味する。そのような染料のうち、公知の染料としては、例えば以下の染料が挙げられる。 イエロー染料としては、C.I.ディスパースイエロー3、7、8、23、39、51、54、60、71、86;C.I.ソルベントイエロー114、163;等が挙げられる。 オレンジ染料としては、C.I.ディスパースオレンジ1、1:1、5、20、25、25:1、33、56、76;等が挙げられる。 ブラウン染料としては、C.I.ディスパースブラウン2;等が挙げられる。 レッド染料としては、C.I.ディスパースレッド11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、240;C.I.バットレッド41;等が挙げられる。 バイオレット染料としては、C.I.ディスパースバイオレット8、17、23、27、28、29、36、57;等が挙げられる。 ブルー染料としては、C.I.ディスパースブルー19、26、26:1、35、55、56、58、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、359、360;C.I.ソルベントブルー3、63、83、105、111;等が挙げられる。 前記した染料は、いずれも単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。 [0024] 染料を併用する目的としては、例えばブラックトナーの調製等が挙げられる。すなわち、ブルー染料を主体にイエロー染料、及びレッド染料を適宜配合してブラック色に調色し、これをブラック染料として用いることができる。また、例えばブルー、イエロー、オレンジ、レッド、バイオレット、又はブラック等の色調を、より好みの色調に微調整する目的で複数の染料を配合しても良い。」 10d「[0027] 前記樹脂の中には、市販品として入手できるものもある。例えば、ポリエステルとしては三菱レイヨン株式会社製のダイヤクロンRTM FC-2232、ダイヤクロンRTM FC-1224等;スチレン-アクリル酸エステル共重合体としては三井化学株式会社製のCPR-100、CPR-250等;等が挙げられる。 ・・・ [0030] 前記ワックスの中には、市販品として入手できるものもある。例えば、カルナウバワックスとしては株式会社加藤洋行製のカルナウバワックスC1等;モンタンワックスとしてはクラリアント社製のLicowax KP等;等が挙げられる。 ・・・ [0032] 前記荷電制御剤の中には、市販品として入手できるものもある。例えば、ニグロシン系染料のボントロンRTM03、第四級アンモニウム塩のボントロンRTMP-51、含金属アゾ染料のボントロンRTMS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のボントロンRTME-82、サリチル酸系金属錯体のボントロンRTME-84、フェノール系縮合物のボントロンRTME-89(以上、オリエント化学工業社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業社製);第四級アンモニウム塩のコピーチャージRTMPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージRTMNEG VP2036、コピーチャージRTMNX VP434(以上、ヘキスト社製);LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製);銅フタロシアニン;ペリレン;キナクリドン;アゾ系顔料;又は、スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する、高分子系の化合物;等が挙げられる。 ・・・ [0035] 前記外添剤の中には、市販品として入手できるものもある。例えば、シリカとしては日本アエロジル株式会社製のAEROSILRTM R812、AEROSILRTM RX50、アルミナのAEROXIDERTM Alu C 805等;酸価チタンとしては日本アエロジル株式会社製のAEROXIDERTM TiO2 T805、AEROXIDERTM TiO2 NKT90等;チタン酸ストロンチウムとしてはチタン工業株式会社製のSW-100等;等が挙げられる。」 10e「[0053] 以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。実施例において特に断りがない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%をそれぞれ意味する。 実施例中、平均粒子径は、精密粒度分布測定装置「Mulitisizer RTM 3(ベックマン・コールター株式会社製)」を用いて測定した。 [0054] [トナー調製例1] (工程1) ダイヤクロンRTMFC-1224(100部)、カヤセットレッドB(日本化薬株式会社製、C.I.ディスパースレッド60:10部)、ボントロンRTM E-84(1部)、LicowaxRTM KP(4部)をヘンシェルミキサーに入れ、30m/秒の回転速度で10分間予備混合した後、二軸押出機により溶融混練した。得られた溶融混練物を粉砕・分級機を用いて粉砕・分級することにより、平均粒子径が8.4μmの粒子を得た。 [0055] (工程2) 前記トナー調製例1(工程1)で得られた粒子(100部)、AEROSILRTM R812(1部)、AEROSILRTM RX50(1部)、SW-100(1部)をヘンシェルミキサーに入れ、30m/秒の回転速度で10分間撹拌し、マゼンタトナーを得た。 [0056] [中間記録媒体へトナーを付着させる印刷機及び印刷条件の設定] (印刷機の設定例1) 電子写真方式印刷機「SateraRTM LBP5910」(キヤノン株式会社製)のトナーカートリッジ(Magenta)内部の純正トナーを抜き出し、調製例1[工程2]で得たマゼンタトナーを入れた。 次いで、アドビシステムズ株式会社製の画像処理ソフト「AdobeRTM Photoshop 7.0」を用いて、ドキュメントサイズ:A4、解像度:600pixel/inch、モード:RGBカラーのテーブルを作成して、マゼンタトナーの印刷出力が100%になるように、R:255、G:0、B:255の画像データ(マゼンタトナー100%出力A4ベタパターン)を作成し、100%出力A4ベタパターンを下記表1に示す印刷条件にて200部印刷して、ドラムカートリッジ内に残っていた純正トナーを、前記トナーの調製例1(工程2)で得たマゼンタトナーに置き換え、中間記録媒体へトナーを付着させる印刷機を設定した。 [0057] [表1] [図:0001423481000022.jpg] [0058] (印刷条件の設定例1) 画像処理ソフト「Adobe Photoshop 7.0」(アドビシステムズ株式会社製)を用いて、ドキュメントサイズ:A4、解像度:600pixel/inch、モード:RGBカラーのテーブルを作成して、下記表2に記載の条件でRGBの混色データを入力して印刷出力0%から100%のテストパターンを5%刻みで作成し、印刷条件を設定した。 [0059] [表2] [図:0001423481000023.jpg] [0060] [実施例1] 中間記録媒体として、密度が1.09g/cm3のトレーシングペーパー(コクヨ株式会社製、トレーシングペーパー A4 厚口 75g/m2)に、前記の印刷機の設定例1で設定した印刷機を用いて、前記の印刷条件の設定例1で設定した印刷条件で印刷を行い、トナーを付着させた中間記録媒体を得た。 得られた中間記録媒体のトナー付着面と、100%ポリエステル繊維で構成されているサテン(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することにより、本発明の昇華転写染色方法により染色された該サテンの染色物を得た。」 (17)甲第11号証(以下、「甲11」という。) 11a「[請求項1] 電子写真方式によってトナーを中間記録媒体に付着させ、該中間記録媒体に付着させたトナーが含有する染料を、被染色物に昇華転写させる染色方法であって、該トナーが少なくともスチレン-アクリル樹脂、昇華性染料、及び外添剤を含有し、且つ外添剤が少なくともチタン酸ストロンチウムを含有する、昇華転写染色方法。 ・・・ [請求項3] 被染色物が、疎水性繊維又はその構造物、疎水性樹脂からなるフィルムやシート、及び疎水性樹脂がコーティングされた布帛、ガラス、金属又は陶器からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の昇華転写染色方法。」 11b「[0005] 一方、昇華転写法で繊維を染色する手段としては、一般的にインクジェット方式が主流とされている。 しかし、インクジェット方式の昇華転写染色は、インクを構成する成分の一つである有機溶剤が、染料を転写するときの熱によって揮発し、作業環境を汚染する等の問題がある。 これに対して電子写真方式は、トナー中に揮発成分が存在せず、作業環境を汚染しないこと;900mm幅まで出力可能な感光体ドラムの出現によって、染色できる繊維(又は、その構造物である布等)のサイズがスポーツアパレル分野にも対応可能となったこと;及び、単位時間当たりの染色面積がインクジェット方式(シリアルプリント方式)と比較して大きいこと;等の理由により、近年では注目が集まっている。」 11c「[0025] 前記スチレン-アクリル樹脂の中には、市販品として入手できるものもある。例えば、三井化学株式会社製のアルマテックスCPR-100、CPR-250、CPR-390、CPR-400等が挙げられる。 [0026] 前記の昇華性染料としては特に限定されないが、昇華転写適性のある染料が好ましい。 「昇華転写適性のある染料」とは、「乾熱処理に対する染色堅ろう度試験方法[JIS L 0879:2005](2010年 確認、平成17年1月20日 改定、 財団法人日本規格協会 発行)」における、感熱処理試験(C法)汚染(ポリエステル)の試験結果が、通常3-4級以下、好ましくは3級以下の染料を意味する。そのような染料のうち、公知の染料としては、例えば以下の染料が挙げられる。 イエロー染料としては、C.I.ディスパースイエロー3、7、8、23、39、51、54、60、71、86;C.I.ソルベントイエロー114、163;等が挙げられる。 オレンジ染料としては、C.I.ディスパースオレンジ1、1:1、5、20、25、25:1、33、56、76;等が挙げられる。 ブラウン染料としては、C.I.ディスパースブラウン2;等が挙げられる。 レッド染料としては、C.I.ディスパースレッド11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、240;C.I.バットレッド41;等が挙げられる。 バイオレット染料としては、C.I.ディスパースバイオレット8、17、23、27、28、29、36、57;等が挙げられる。 ブルー染料としては、C.I.ディスパースブルー19、26、26:1、35、55、56、58、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、359、360;C.I.ソルベントブルー3、63、83、105、111;等が挙げられる。 前記した染料は、いずれも単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。 [0027] また、複数の染料を配合し、例えばブラックのように元の染料とは全く異なる色相を得ることも好ましく行われる。この時は、例えばブルー染料を主体にイエロー染料、及びレッド染料を適宜配合することによりブラック染料とすることができる。 さらに、例えばブルー、イエロー、オレンジ、レッド、バイオレット、又はブラック等の色調を、より好みの色調に微調整する目的;又は、中間色を得る目的;等により、複数の染料を配合しても良い。 [0028] 前記の外添剤は、一般にトナー粒子の流動性を高め、現像時の帯電特性を良好なものとする。外添剤としては、下記するように多種類のものが知られているが、白地汚染を抑制するためには、少なくともチタン酸ストロンチウムを含有させることが必要である。 外添剤の一次粒子径としては、通常5nm~2μm、好ましくは5nm~500nm、より好ましくは5nm~200nmである。また、外添剤のBET法による比表面積としては、20~500m2/gが好ましい。 チタン酸ストロンチウムは市販品として入手が可能である。具体的には、富士チタン社製のST、CT、HST-1、HPST-1、HPST-2;チタン工業株式会社製のSW-100、SW-50C、SW-100C、SW-200C、SW-320C等が挙げられる。 ・・・ [0030] 前記外添剤の中には、市販品として入手できるものもある。例えば、シリカとしては日本アエロジル株式会社製のAEROSILRTM R812、AEROSILRTM RX50、AEROSILRTM RX200、AEROSILRTM RX300、キャボットジャパン株式会社製のTG-6110G、TG-810G、TG-811F、クラリアントジャパン株式会社製のH2000/4、H2000T、H05TM、H13TM、H20TM、H30TM等;アルミナとしては日本アエロジル株式会社製のAEROXIDERTM Alu C 805等;酸価チタンとしてはチタン工業株式会社製のSTT-30A、EC-300、日本アエロジル株式会社製のAEROXIDERTM TiO2 T805、AEROXIDERTM TiO2 NKT90等が挙げられる。 ・・・ [0042] 前記荷電制御剤はその種類により、トナーが含有するスチレン-アクリル樹脂との相溶性が低く、トナーと荷電制御剤とが分散状態となるものもある。このため、トナーと荷電制御剤とを良好に分散できないときは、個々のトナー粒子の帯電量が均一とならず、トナーの帯電量分布が広がり、結果として白地汚染の原因となることがある。 このようなときは、荷電制御剤として荷電制御樹脂を用いるのが好ましい。荷電制御樹脂も荷電制御剤の1つであり、トナーとの相溶性が良好なスチレン-アクリル樹脂からなるものが知られている。このような荷電制御樹脂としては、負帯電性又は正帯電性トナーのいずれにも対応する樹脂があることが知られている。その具体例としてはアクリベースFCAシリーズ(藤倉化成株式会社製)が挙げられる。例えば、負帯電性トナーに用いる樹脂としてFCA-1001-NS等が、また、正帯電性トナーに用いる樹脂としてFCA-201-PS、FCA-207P等が好ましく挙げられる。」 11d「[0051] 以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。実施例においても特に断りがない限り、「部数」、及び「%」は質量基準である。また、1回の操作で目的とする物質の量が得られなかったときは、目的とする量の物質が得られるまで同じ操作を繰り返し行った。 実施例中、体積平均粒子径(D50 Vol.)は、精密粒度分布測定装置「MulitisizerRTM 4(ベックマン・コールター株式会社製)」を用いて測定した。 [0052] [実施例1] (工程1) アルマテックスCPR-390(96部)、C.I.ディスパースブルー359(14部)、FCA-1001-NS(2部)、カルナバワックスC1(3部)をヘンシェルミキサーにて30m/秒の回転速度で10分間予備混合した後、二軸押出機により溶融混練した。得られた溶融混練物を粉砕・分級機を用いて粉砕・分級することにより、体積平均粒子径が7.7μmのトナー母粒子を得た。 [0053] (工程2) 実施例1(工程1)で得られたトナー母粒子(100部)、RX50(1部)、R812(1部)、SW-100(1部)をヘンシェルミキサーに入れ、30m/秒の回転速度で10分間撹拌し、実施例1の本発明のシアントナーを得た。 ・・・ [0063] [染色物の白地汚染の評価] 下記[A.測色による評価]及び[B.目視による評価]に示す2つの方法にて、染色物の白地汚染の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。 [0064] [A.測色による評価] 乾式非磁性1成分現像方式印刷機(桂川電気株式会社製:KIPc7800)に、前記実施例及び比較例で得た各シアントナーをそれぞれ充填した。中間記録媒体としてA0判のボンド紙を用い、解像度:600pixel/inch、定着温度:135℃、現像バイアス:200Vの条件で印刷を行い、各シアントナーを付着させた4種類の中間記録媒体(ボンド紙)をそれぞれ得た。 得られた各中間記録媒体のトナー付着面と、被染色物として100%ポリエステル繊維で構成されているダブルピケ(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太 陽精機株式会社製:トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することにより、昇華転写染色方法により染色された該ダブルピケの染色物をそれぞれ得た。 得られた各染色物の白地部分を分光光度計「スペクトロアイ(グレタグマクベス社製)」を用いて測色し、白地汚染の程度を測定した。 なお、染色を行う前のダブルピケを同様に測色したとき、その測定値は0.06であった。従って、この数値は白地汚染が全く無いことを意味する。 [0065] [B.目視による評価] 前記[A.測色による評価]に用いた各染色物において、測色を行った白地部分の汚染具合を目視にて観察し、下記する4段階の基準で評価した。なお、測色値が0.10を超えると目視にて激しい白地汚染が認められ、実用的ではない。 A:白地汚染が観察されない。 B:白地汚染がごく僅かあるように観察される。 C:白地汚染されていることが明らかに観察される。 D:激しく白地汚染されていることが観察される。」 (18)甲第12号証(以下、「甲12」という。) 12a「[請求項1] 電子写真方式によってトナーを中間記録媒体に付着させ、該中間記録媒体に付着させたトナーが含有する染料を、被染色物に昇華転写させる染色方法であって、該トナーが少なくともポリエステル樹脂、昇華性染料、及び外添剤として少なくともチタン酸ストロンチウムを含有し、トナーの総質量に対する該チタン酸ストロンチウムの含有量が、0.3質量%より多く、3.0質量%より少ない含有量である、昇華転写染色方法。 ・・・ [請求項3] 被染色物が、疎水性繊維又はその構造物、疎水性樹脂からなるフィルムやシート、及び疎水性樹脂がコーティングされた布帛、ガラス、金属又は陶器からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の昇華転写染色方法。」 12b「【0005】 一方、昇華転写法で繊維を染色する手段としては、一般的にインクジェット方式が主流とされている。 しかし、インクジェット方式の昇華転写染色は、インクを構成する成分の一つである有機溶剤が、染料を転写するときの熱によって揮発し、作業環境を汚染する等の問題がある。 これに対して電子写真方式は、トナー中に揮発成分が存在せず、作業環境を汚染しないこと;900mm幅まで出力可能な感光体ドラムの出現によって、染色できる繊維(又は、その構造物である布等)のサイズがスポーツアパレル分野にも対応可能となったこと;及び、単位時間当たりの染色面積がインクジェット方式(シリアルプリント方式)と比較して大きいこと;等の理由により、近年では注目が集まっている。」 12c「[0024] 前記ポリエステル樹脂の中には、市販品として入手できるものもある。例えば、三菱レーヨン株式会社製のダイヤクロンRTM FC-611、ダイヤクロンRTM FC-684、ダイヤクロンRTM FC-1224、ダイヤクロンRTM FC-1233、ダイヤクロンRTM FC-1565、ダイヤクロンRTM FC-2232等が挙げられる。これらの中ではダイヤクロンRTM FC-1224、ダイヤクロンRTM FC-1233、ダイヤクロンRTM FC-2232が好ましい。 [0025] 前記の昇華性染料としては特に限定されないが、昇華転写適性のある染料が好ましい。 「昇華転写適性のある染料」とは、「乾熱処理に対する染色堅ろう度試験方法[JIS L 0879:2005](2010年 確認、平成17年1月20日 改定、 財団法人日本規格協会 発行)」における、感熱処理試験(C法)汚染(ポリエステル)の試験結果が、通常3-4級以下、好ましくは3級以下の染料を意味する。そのような染料のうち、公知の染料としては、例えば以下の染料が挙げられる。 イエロー染料としては、C.I.ディスパースイエロー3、7、8、23、39、51、54、60、71、86;C.I.ソルベントイエロー114、163;等が挙げられる。 オレンジ染料としては、C.I.ディスパースオレンジ1、1:1、5、20、25、25:1、33、56、76;等が挙げられる。 ブラウン染料としては、C.I.ディスパースブラウン2;等が挙げられる。 レッド染料としては、C.I.ディスパースレッド11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、240;C.I.バットレッド41;等が挙げられる。 バイオレット染料としては、C.I.ディスパースバイオレット8、17、23、27、28、29、36、57;等が挙げられる。 ブルー染料としては、C.I.ディスパースブルー19、26、26:1、35、55、56、58、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、359、360;C.I.ソルベントブルー3、63、83、105、111;等が挙げられる。 前記した染料は、いずれも単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。 [0026] また、複数の染料を配合し、例えばブラックのように元の染料とは全く異なる色相を得ることも好ましく行われる。この時は、例えばブルー染料を主体にイエロー染料、及びレッド染料を適宜配合することによりブラック染料とすることができる。 さらに、例えばブルー、イエロー、オレンジ、レッド、バイオレット、又はブラック等の色調を、より好みの色調に微調整する目的;又は、中間色を得る目的;等により、複数の染料を配合しても良い。 [0027] 前記の外添剤は、一般にトナー粒子の流動性を高め、現像時の帯電特性を良好なものとする。外添剤としては、下記するように多種類のものが知られているが、白地汚染を抑制するためには、少なくともチタン酸ストロンチウムを含有させることが必要である。これを含有しないときは、耐久性試験を行うと次第にトナーの帯電量が低下し、これに伴って中間記録媒体へのかぶりが増え、これを被記録媒体へ昇華転写したときの白地汚染が目立つようになる。耐久性試験における帯電量を安定させるためには、外添剤としてチタン酸ストロンチウムを添加すると効果があることがわかった。このメカニズムについては推測の域を出ないが、チタン酸ストロンチウムの粒子径はトナー粒子径の1/10程度と小さいため、シリカのように常にトナーに付着して挙動しているのではなく、例えば二成分現像剤におけるキャリアのようにトナーに付着したり離れたりしながら帯電を安定させる効果があると考えられる。 外添剤の一次粒子径としては、通常5nm~2μm、好ましくは5nm~500nm、より好ましくは5nm~200nmである。また、外添剤のBET法による比表面積としては、20~500m2/gが好ましい。 チタン酸ストロンチウムは市販品として入手が可能である。具体的には、富士チタン社製のST、CT、HST-1、HPST-1、HPST-2;チタン工業株式会社製のSW-100、SW-50C、SW-100C、SW-200C、SW-320C等が挙げられる。これらの中ではSW-100が好ましい。 ・・・ [0029] 前記外添剤の中には、市販品として入手できるものもある。例えば、シリカとしては日本アエロジル株式会社製のAEROSILRTM R812、AEROSILRTM RX50、AEROSILRTM RX200、AEROSILRTM RX300、キャボットジャパン株式会社製のTG-6110G、TG-810G、TG-811F、クラリアントジャパン株式会社製のH2000/4、H2000T、H05TM、H13TM、H20TM、H30TM等;アルミナとしては日本アエロジル株式会社製のAEROXIDERTM Alu C 805等;酸価チタンとしてはチタン工業株式会社製のSTT-30A、EC-300、日本アエロジル株式会社製のAEROXIDERTM TiO2 T805、AEROXIDERTM TiO2 NKT90等が挙げられる。これらの中ではシリカが好ましく、具体的にはAEROSILRTM R812、AEROSILRTM RX50等が好ましい。 ・・・ [0041] 前記荷電制御剤の中には、市販品として入手できるものもある。例えば、ニグロシン系染料のボントロンRTM03、第四級アンモニウム塩のボントロンRTMP-51、含金属アゾ染料のボントロンRTMS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のボントロンRTME-82、サリチル酸系金属錯体のボントロンRTME-84、フェノール系縮合物のボントロンRTME-89(以上、オリエント化学工業社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業社製);第四級アンモニウム塩のコピーチャージRTMPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージRTMNEG VP2036、コピーチャージRTMNX VP434(以上、ヘキスト社製);LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製);銅フタロシアニン;ペリレン;キナクリドン;アゾ系顔料;又は、スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する、高分子系の化合物;等が挙げられる。」 12d「[0051] 以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。実施例においても特に断りがない限り、「部数」、及び「%」は質量基準である。また、1回の操作で目的とする物質の量が得られなかったときは、目的とする量の物質が得られるまで同じ操作を繰り返し行った。 実施例中、体積平均粒子径(D50 Vol.)は、精密粒度分布測定装置「MulitisizerRTM 4(ベックマン・コールター株式会社製)」を用いて測定した。 [0052] [実施例1] (工程1) ダイヤクロンRTM FC-2232(96部)、C.I.ディスパースブルー359(14部)、ボントロンRTM E-84(1部)、カルナバワックスC1(3部)をヘンシェルミキサーにて30m/秒の回転速度で10分間予備混合した後、二軸押出機により溶融混練した。得られた溶融混練物を粉砕・分級機を用いて粉砕・分級することにより、体積平均粒子径が7.9μmのトナー母粒子を得た。 [0053] (工程2) 実施例1(工程1)で得られたトナー母粒子(100部)、RX50(1部)、R812(1部)、SW-100(1部)をヘンシェルミキサーに入れ、30m/秒の回転速度で10分間撹拌することにより外添処理をして実施例1のシアントナー1(C-1)を得た。 ・・・ [0056] [実施例4] 実施例1(工程1)で用いたC.I.ディスパースブルー359の代わりに、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物(20部)を用いる以外は実施例1(工程1)及び(工程2)と同様にして、体積平均粒子径が7.9μmの実施例4のブラックトナー1(B-1)を得た。 ・・・ [0062] [A.初期評価試験] 乾式非磁性1成分現像方式印刷機(桂川電気株式会社製:KIPc7800)に、前記実施例及び比較例で得た各トナーセットをそれぞれ充填した。中間記録媒体としてA0判のボンド紙を用いて、印字率5%、解像度:600pixel/inch、定着温度:135℃、現像バイアス:200Vの条件で印刷し、単色としてシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各4色と、実施例1~4、及び各比較例についてはコンポジットカラーとしてレッド、グリーン、ブルーの3色の、合計7色のベタ画像が印刷された中間記録媒体(ボンド紙)をそれぞれ得た。(表2において、実施例1~4では、レッド、グリーン、ブルーについて、夫々、R-1、G-1、B-1と記載した。また、表3において、例えば比較例1では、レッド、グリーン、ブルーについて、夫々、CR-1、CG-1、CB-1と記載した。) 得られた各中間記録媒体のトナー付着面と、被染色物として100%ポリエステル繊維で構成されているダブルピケ(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製:トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することにより、昇華転写染色方法により染色された該ダブルピケの染色物をそれぞれ得た。 得られた各染色物の染色部分を分光光度計「スペクトロアイ(グレタグマクベス社製)」を用いて測色し、印刷開始直後の初期の染色濃度を測定し、これを初期評価試験とした。染色濃度は1.35以上であれば、実用的に使用できる。測定結果を下記表2に示す。 [0063] [B.耐刷評価試験] 前記「A.初期評価試験」と同様にして、印字率5%で1000枚の中間記録媒体へベタ画像を印刷した。この1000枚印刷した後に、前記[A.初期評価試験]と同じ条件で中間記録媒体に印刷を行い、各トナーセットにつき4色又は7色の中間記録媒体をそれぞれ得た。得られた中間記録媒体と、前記と同じ昇華転写染色方法より染色されたダブルピケの染色物とをそれぞれ試験片とし、1000枚印刷した後の印刷状態等を、下記[C.印刷適性]、[D.トナーの平均帯電量]、[E.染色濃度]、[F.白地汚染の測色値による評価]、及び[G.染めムラの評価]の各項目で評価した。評価結果は、いずれ も下記表2及び表3に示す。 [0064] [C.印刷適性] 得られた各中間記録媒体の試験片について、掃きムラと画像メモリの有無を目視にて観察し、印刷適性を下記する3段階で評価した。 A:掃きムラ、画像メモリが無く、均一なベタ画像が得られている。 B:掃きムラ、画像メモリが明らかに観察される。 C:非常に目立つ程の掃きムラ、画像メモリが明確に観察される。 [0065] [D.トナーの平均帯電量] 前記[B.耐刷評価試験]で1000枚印刷した後の各トナーの平均帯電量を、電界飛翔式帯電量測定器を用いて測定した。 [0066] [E.染色濃度] 前記[B.耐刷評価試験]で得た各ダブルピケの染色物を試験片とし、染色濃度を前記[A.初期評価試験]と同様にして測色した。測定結果を下記表2及び表3に示す。 [0067] [F.白地汚染の測色値による評価] 前記[B.耐刷評価試験]で得た各ダブルピケの染色物を試験片とし、その白地部分を分光光度計「スペクトロアイ(グレタグマクベス社製)」を用いて測色し、白地汚染の程度を測定した。 なお、染色を行う前のダブルピケを同様に測色した時、その測定値は0.05であった。従って、この数値は白地汚染が全く無いことを意味する。 [0068] [G.白地汚染の目視による評価] 前記[E.白地汚染の測色値による評価]に用いた各ダブルピケの染色物を試験片とし、測色を行った白地部分の汚染具合を目視にて観察し、下記する3段階の基準で評価した。 [0069] A:白地汚染がほとんど観察されない。 B:白地汚染されていることが明らかに観察される。 C:激しく白地汚染されていることが観察される。 [0070] [H.染めムラの評価] 前記[E.白地汚染の測色値による評価]に用いた各ダブルピケの染色物を試験片とし、染めムラの具合を目視にて観察し、下記する3段階の基準で評価した。 [0071] A:染めムラが無い高品質の染色物が得られている。 B:染めムラが明らかに観察される。 C:激しく染めムラがあることが観察される。 [0072] 下記表1中の略号等は、以下の意味を表す。 SW-100:チタン工業株式会社製のSW-100。 STT-30A:チタン工業株式会社製のSTT-30A。 RX50:日本アエロジル株式会社製のRX50。 R812:日本アエロジル株式会社製のR812。」 (19)甲第13号証(以下、「甲13」という。) 13a「【請求項1】 電子写真方式によってトナーを中間記録媒体に付着させ、該中間記録媒体に付着させたトナーが含有する染料を、染色される物質に昇華転写させることにより染色を行う昇華転写染色方法に用いるトナーであって、ポリエステル樹脂、昇華性染料、少なくとも1種類の油溶性染料及びカルナバワックスを含有する、該トナー。 ・・・ 【請求項6】 電子写真方式によって請求項1~5のいずれか1項に記載のトナーを中間記録媒体に付着させ、該中間記録媒体に付着させたトナーが含有する染料を、染色される物質に昇華転写させることにより染色を行う昇華転写染色方法。」 13b「【0021】 市販品として入手できるポリエステル樹脂の例としては、ポリエステルとして三菱レーヨン株式会社製のダイヤクロン FC-316、ダイヤクロン FC-489、ダイヤクロン FC-611、ダイヤクロン FC-684、ダイヤクロン FC-1224、ダイヤクロン FC-1233、ダイヤクロン FC-1565、ダイヤクロン FC-2232、ダイヤクロン FC-316等が挙げられる。 ・・・ 【0023】 上記の昇華性染料とは、昇華転写適性のある染料を意味する。 昇華転写適性のある染料としては、「乾熱処理に対する染色堅ろう度試験方法[JIS L 0879:2005](2010年 確認、平成17年1月20日 改定、 財団法人日本規格協会 発行)」における、感熱処理試験(C法)汚染(ポリエステル)の試験結果が、通常3-4級以下、好ましくは3級以下の染料が挙げられる。そのような染料としては、例えば以下の染料が挙げられる。 イエロー染料としては、C.I.ディスパースイエロー3、7、8、23、39、51、54、60、71、86;C.I.ソルベントイエロー114、163;等が挙げられる。 オレンジ染料としては、C.I.ディスパースオレンジ1、1:1、5、20、25、25:1、33、56、76;等が挙げられる。 ブラウン染料としては、C.I.ディスパースブラウン2;等が挙げられる。 レッド染料としては、C.I.ディスパースレッド11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、240;C.I.バットレッド41;等が挙げられる。 バイオレット染料としては、C.I.ディスパースバイオレット8、17、23、27、28、29、36、57;等が挙げられる。 ブルー染料としては、C.I.ディスパースブルー19、26、26:1、35、55、56、58、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、359、360;C.I.ソルベントブルー3、63、83、105、111;等が挙げられる。 上記した染料は、いずれも単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。 これらの中ではC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー359よりなる群から選択される染料が好ましい。 【0024】 また、複数の染料を配合し、例えばブラックのように元の染料とは全く異なる色相を得ることも好ましく行われる。この時は、例えばブルー染料を主体にイエロー染料、及びレッド染料を適宜配合することによりブラック染料とすることができる。 さらに、例えばブルー、イエロー、オレンジ、レッド、バイオレット、又はブラック等の色調を、より好みの色調に微調整する目的;又は、中間色を得る目的;等により、複数の染料を配合してもよい。 ・・・ 【0028】 特に好ましい油溶性染料としては、下記式(1)及び式(2)から選択される染料が挙げられる。 【化1】 [図:0001423481000024.jpg] 【化2】 [図:0001423481000025.jpg] ・・・ 【0037】 市販品として入手できる荷電制御剤の例としては、ニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP-51、含金属アゾ染料のボントロンS-34、オキシナフトエ酸系金属錯体のボントロンE-82、サリチル酸系金属錯体のボントロンE-84、フェノール系縮合物のボントロンE-89、アゾ系鉄錯体又は錯塩のボントロンT-77(以上、オリエント化学工業社製);第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP-302、TP-415(以上、保土谷化学工業社製);第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージNEG VP2036、コピーチャージNX VP434(以上、ヘキスト社製);LRA-901、ホウ素錯体であるLR-147(日本カーリット社製);等が挙げられる。 ・・・ 【0042】 市販品として入手できる外添剤の例としては、例えば、シリカとして日本アエロジル株式会社製のAEROSIL R812、AEROSIL RX50、AEROSIL RY50、AEROSIL RX200、AEROSIL RX300、キャボットジャパン株式会社製のTG-6110G、TG-810G、TG-811F、クラリアントジャパン株式会社製のH2000/4、H2000T、H05TM、H13TM、H20TM、H30TM等;アルミナとして日本アエロジル株式会社製のAEROXIDE Alu C 805等;酸価チタンとしてチタン工業株式会社製のSTT-30A、EC-300、日本アエロジル株式会社製のAEROXIDE TiO2 T805、AEROXIDE TiO2 NKT90等;チタン酸ストロンチウムとしては富士チタン社製のST、CT、HST-1、HPST-1、HPST-2、チタン工業株式会社製のSW-100、SW-50C、SW-100C、SW-200C、SW-320C等;等が挙げられる。」 13c「【0055】 [実施例1] 三菱レイヨン株式会社製のダイヤクロン FC-489(96部)、日本化薬株式会社製のC.I.ディスパースブルー359(14部)、上記式(2)で表される染料(10部)、ボントロン E-84(1部)、カルナバワックスC1(3部)をヘンシェルミキサーにて30m/秒の回転速度で10分間予備混合した後、二軸押出機により溶融混練した。得られた溶融混練物を粉砕・分級機を用いて粉砕・分級することにより、体積平均粒子径が7.9μmのトナー母粒子を得た。得られたトナー母粒子(100部)、日本アエロジル社製のRX50(1部)、日本アエロジル社製のR812(1部)、SW-100(1部)をヘンシェルミキサーに入れ、30m/秒の回転速度で10分間撹拌し、実施例1のシアントナー「T1」を得た。 【0056】 [実施例2] 実施例1で用いたC.I.ディスパースブルー359(14部)及び上記式(2)で表される染料(10部)に代えて、C.I.ディスパースレッド60(10部)及び上記式(2)で表される染料(7部)を用いる以外は実施例1と同様にして、実施例2のマゼンタトナー「T2」を得た。 ・・・ 【0058】 [実施例4] 実施例1で用いたC.I.ディスパースブルー359(14部)及び上記式(2)で表される染料(10部)に代えて、C.I.ディスパースイエロー54(2部)、C.I.ディスパースブルー72(12部)、C.I.ディスパースレッド60(6部)の混合物(20部)及び上記式(1)及び式(2)で表される染料の混合物(10部:式(1)及び式(2)の混合比率は1/4)を用いる以外は実施例1と同様にして、実施例4のブラックトナー「T4」を得た。 ・・・ 【0062】 下記表1中の略号等は、以下の意味を表す。 FC489:三菱レーヨン株式会社製、ダイヤクロンFC489。 DispB359:C.I.ディスパースブルー359。 DispB72:C.I.ディスパースブルー72。 DispR60:C.I.ディスパースレッド60。 DispY54:C.I.ディスパースイエロー54。 式(1):上記式(1)で表される油溶性染料。 式(2):上記式(2)で表される油溶性染料。 E-84:オリエント化学株式会社製、E-84。 C-1:加藤洋行株式会社製のカルナバワックス C-1。 100TS:三洋化成株式会社製のポリプロピレン系ワックス、ユーメックス100TS。 WEP8:日本油脂株式会社製のエステルワックス、エレクトールWEP8。 FT115:日本精蝋株式会社製の合成FTワックス、FT115。 リコワックス E:クラリアント ジャパン 株式会社製のモンタンワックス、リコワックス E。 RX50:日本アエロジル株式会社製のシリカ、RX50。 R812:日本アエロジル株式会社製のシリカ、R812。 SW-100:チタン工業株式会社製のチタン酸ストロンチウム、SW-100。 D50 Vol.:体積平均粒子径、単位はμm。 【0063】 【表1】 [図:0001423481000026.jpg] 【0064】 上記の実施例及び比較例の各トナーを用いて、下記する方法にて耐刷前後の評価を行った。評価結果を表2に示す。 【0065】 [A.初期評価試験] 評価例1[平均帯電量及び染色濃度] 上記実施例及び比較例で得た各トナーの初期の平均帯電量(下記表2中の「帯電量1」に相当する。)を電界飛翔式帯電量測定器を用いて測定した。測定結果を表2に示す。 乾式非磁性1成分現像方式印刷機(桂川電気株式会社製:KIPc7800)に、上記実施例及び比較例で得た各トナーをそれぞれ充填した。中間記録媒体としてA0判のボンド紙を用いて、解像度:600pixel/inch、定着温度:135℃、現像バイアス:200Vの条件でベタ画像を印刷し、各トナーが付着した中間記録媒体(ボンド紙)をそれぞれ得た。 得られた各中間記録媒体のトナー付着面と、被染色物として100%ポリエステル繊維で構成されているダブルピケ(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製:トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することにより、昇華転写染色方法により染色された該ダブルピケの染色物をそれぞれ得た。 得られた各染色物の染色部分を分光光度計「スペクトロアイ(グレタグマクベス社製)」を用いて測色し、染色濃度(下記表2中の「染色濃度1」に相当する。)を測定した。染色濃度は1.35以上であれば、良好であることを示す。測定結果を表2に示す。 【0066】 [B.耐熱試験] テスト方法:各実施例及び比較例で得たトナー5gをそれぞれ計量し、スクリュウ栓のついたガラス製サンプル瓶に入れた後、50℃±0.5℃のインキュベーター中に24時間放置することにより、各被検サンプルを調製した。得られた被検サンプルを室温に戻した後、耐熱性をトナー凝集の状態により、下記A~Eの評価基準で評価した。結果を下記表2に示す。 [耐熱評価基準] A;サンプル瓶を逆さにすると、トナーは全く凝集せずに落下する。 B;サンプル瓶を逆さにするとトナーは30秒以内に落下する。僅かに軟凝集塊が認められるが、指で軽く押すと容易に解砕され、固化した凝集塊はない。 C:サンプル瓶を逆さにするとトナーは1分以内で落下する。明らかに軟凝集塊が認められるが、指で押すと解砕され、固化した凝集塊はない。 D:サンプル瓶を逆さにして1分を経過してもトナーは自然落下しない。瓶の底を軽くたたくとトナーは落下するが、硬い凝集塊が認められ、指で押して解砕しても、固化した数mm以下程度の小さい凝集塊が残存する。 E:サンプル瓶を逆さにして1分を経過してもトナーは自然落下しない。瓶の底をたたくとトナーは落下するが、硬い凝集塊が認められ、指で押して解砕しても、固化した数mm程度の凝集塊が残存する。 【0067】 [C.耐刷後の評価] 評価例2[画像評価] 上記の評価例1において、中間記録媒体を得た後、C/W比が20%で1000枚の連続印刷を行った。以下の実施例において、「耐刷後」とは、この「1000枚の連続印刷を行った後」を意味する。この後、上記評価例1と同様にして、ベタ画像を印刷し、耐刷後の各トナーが付着した中間記録媒体(ボンド紙)をそれぞれ得た。なお、上記「C/W比20%」は、各色のB/W比が5%で4色同時に印刷するため、20%となる。 得られた各中間記録媒体の掃きムラと画像メモリの有無を目視にて観察し、以下の評価基準に従って画像を評価した。評価結果を下記表2に示す。 [画像評価基準] A:掃きムラ、画像メモリが無く、均一なベタ画像が得られている。 B:掃きムラ、画像メモリが僅かに観察される。 C:掃きムラ、画像メモリが明らかに観察される。 D:非常に目立つ程の掃きムラ、画像メモリが明確に観察される。 【0068】 評価例3[耐刷後の平均帯電量及び染色濃度] 評価例2における耐刷後の各トナーの平均帯電量(下記表2中の「帯電量2」に相当する。)を電界飛翔式帯電量測定器を用いて測定した。測定結果を表2に示す。 評価例2で得られた各中間記録媒体を用いて、評価例1と同じ昇華転写染色方法により、染色された該ダブルピケの染色物をそれぞれ得た。 得られた各染色物の染色濃度(下記表2中の「染色濃度2」に相当する。)を評価例1と同様にして測色した。測定結果を表2に示す。 【0069】 評価例4[染色物の白地汚染の測色による評価] 評価例2で得られた各染色物の白地部分を分光光度計「スペクトロアイ(グレタグマクベス社製)」を用いて測色し、白地汚染の程度を測定した。測定値を表2に示す。 なお、染色を行う前のダブルピケを同様に測色したときの測定値は0.05であった。従って、この数値は白地汚染が全く無いことを意味する。 【0070】 評価例5[染色物の白地汚染の目視による評価] 評価例4に用いた各染色物において、測色を行った白地部分の汚染具合を目視にて観察し、下記する4段階の基準で評価した。評価結果を表2に示す。 A:白地汚染がほとんど観察されない。 B:白地汚染が僅かに観察される。 C:白地汚染されていることが明らかに観察される。 D:激しく白地汚染されていることが明確に観察される。 【0071】 評価例6[染色物の染めムラの目視による評価] 評価例4に用いた各染色物において、染めムラを目視にて観察し、下記する4段階の基準で評価した。評価結果を表2に示す。 A:染めムラが無い高品質の染色物が得られている。 B:染めムラが僅かに観察される。 C:染めムラが明らかに観察される。 D:激しく染めムラがあることが明確に観察される。 【0072】 評価例7[現像ローラ並びに感光体のフィルミングの観察] 評価例2の耐刷後の現像ローラ及び感光体のフィルミングを目視にて観察し、下記する4段階の基準で評価した。評価結果を表2に示す。 A:フィルミングは発生していない。 B:僅かにフィルミングの発生が認められる。 C:フィルミングの発生が認められ、現像ローラ及び/又は感光体は、うっすらと白くなっている。 D:明らかにフィルミングが発生しており、現像ローラ及び/又は感光体が白くなっている。」 (20)甲第14号証(以下、「甲14」という。) 14a「【請求項1】 少なくとも1種の昇華性分散染料、および、バインダー樹脂を含有するトナーであって、 前記トナーにプランジャーで4.90MPaの圧力を与えかつ5℃/minで昇温させながら直径1mmおよび長さ1mmの孔から下方に流出させる流動性試験において、トナーの半量が流出する温度T1/2が150℃~175℃であり、 前記トナーの130℃における損失正接tanδが0.35以下であり、 前記バインダー樹脂は、第1の重合体と第2の重合体との反応物であり、前記第1の重合体はカルボキシル基を有し、前記第2の重合体はカルボキシル基と反応して架橋する官能基を有し、 前記第1の重合体はポリエステル樹脂である、捺染用トナー。 ・・・ 【請求項6】 請求項1~5のいずれか一項記載のトナーの画像をシート状基材に転写する工程、 加熱により前記トナーを前記シート状基材上に定着させる工程、及び、 前記シート状基材上の前記トナー中の昇華性分散染料を昇華させて染色対象物を捺染する工程を含む、捺染布帛の製造方法。」 14b「【0040】 (昇華性分散染料) 昇華性分散染料は、昇華性を有する分散染料であれば特段の限定はない。例えば、イエロー染料としては、C.Iディスパースイエロー54、マゼンタ染料としては、C.Iディスパースレッド4、60、シアン染料としては、C.Iディスパースブルー60,60-2、72,359、360等が好適である。ブラックトナーの場合には、イエロー、マゼンタ、及び、シアン染料を配合して黒色に調色したブラック用染料を用いることができる。ブラック染料には、さらに他のブルー、オレンジ、レッド、バイオレット等を併用添加することもできる。」 14c「【0098】 (ブラックトナー:比較例B1~B5、実施例B1~B5) 〔昇華転写染色用トナーの製造〕 【0099】 ポリエステル樹脂FC2447(酸価Av:11KOHmg/g、三菱レーヨン社製)、ポリエステル樹脂FC2447(酸価Av:13KOHmg/g、三菱レーヨン社製)、荷電制御剤TN-105(保土谷化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースイエロー54(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースレッド60(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースブルー360(紀和化学社製)、カルナバワックスTOWAX1F3(東亜合成社製)、酸化ポリプロピレンワックス100TS(三洋化成工業社製)、架橋剤メタブレンP1901(ポリグリシジルメタクリレート、Mw45000、Mn2700、三菱レーヨン社製)、架橋剤メタブレンP1900(ポリグリシジルメタクリレート、Mw15000、Mn2900、三菱レーヨン社製)、架橋剤カルボジライトHMV15CA(ポリカルボジイミド、日清紡社製)を表1の組成比となるように計量調合して、ヘンシェルミキサーに投入し、40m/sの周速で5分原料を混合し、昇華性分散染料とワックスを微細化させるとともに均一な原料混合物を得た。 【0100】 次いでスクリュー搬送部、ニーディングディスクによる混練物溶融部、スクリュー搬送部、ニーディングディスクによる混練物溶融部、スクリュー搬送ニーディングディスクによる練物混練部、スクリュー搬送部、先端ダイ部をこの順で有するTEM50型二軸押し出し機を用意し、各混練物溶融部で160~165℃で溶融させた後は、各スクリュー搬送部で80~100℃に冷却して溶融混練分散させるように設定し、原料混合物を投入して溶融混練分散および架橋反応を生じさせ、先端ダイ部から吐出する混練分散物の温度を165℃以下に調温し吐出させた。 【0101】 吐出した混練分散物を、冷間ロールで急冷し、冷間ベルトコンベアにて常温まで冷却の後、粗砕器にて粉砕し粗砕物を得た。 【0102】 この粗砕物をクリプトロン機械式粉砕機にて微粉砕し、TSP分級機にて微粉を除去し、体積平均粒径が8μm、平均円形度が0.950、2μm以下の個数分率が3.0%の母体トナーを得た。 【0103】 この母体トナー100重量部に小粒径疎水性SiO2 H-1303<ワッカー社製>、大径疎水性SiO2 X24<信越化学社製>、中径疎水性SiO2 RX50<エボニック社製>を表1の組成比となるように調合して、ヘンシェルミキサーに投入し55m/sの周速で20分混合し、目開き74μmの振動篩にて異物除去を行って、実施例B1~B5及び比較例B1~B5に関する表面処理された昇華転写染色用ブラックトナーを得た。 ・・・ 【0107】 (トナーの特性評価) 得られた各トナーの温度T1/2およびtanδの測定を行った。結果を各表に示す。 【0108】 【表1】 [図:0001423481000027.jpg] ・・・ 【0112】 (各トナー単独での転写紙への印刷) 転写紙への各トナー印刷には桂川電機社製KIPc7800プリンタを用いた。桂川電機KIPc7800プリンタの現像器に、各トナーを装着し、感光体上にカバレッジ100%の単色トナー像を形成し、紙に転写し、160℃及び平均ニップ圧力1.5kgf/cm2の条件下でロールにより紙に定着した。 【0113】 昇華転写染色用の転写紙として、三菱製紙グループ北上ハイテクペーパー社製写真用(広葉樹晒クラフト)原紙(坪量100g/m2、水分7%、密度1.030、BEKK平滑度310sec、ガーレー透気度350sec、表面抵抗6.6E+09Ω/□)を用いた。 【0114】 (転写紙へのトナーの定着性の評価) 転写紙上に付着したトナーの剥離性について評価した。×は布や爪で擦ったりした場合のトナーの剥離や、転写紙の表裏を重ねて擦れた時の転写紙裏への汚れが生じた場合を、〇は布や爪で擦ったりした場合のトナーの剥離や、転写紙の表裏を重ねて擦れた時の転写紙裏への汚れが生じなかった場合を意味する。 【0115】 (ポリエステル系布帛への昇華転写) 昇華転写染色ポリエステル布帛として、ジャージ生地、トロピカル生地、短繊維生地、長繊維生地、ポリウレタン20%混紡ポリエステル生地を用いた。各転写紙のトナー定着面を、各ポリエステル系布帛と重ね、アサヒ繊維機械社製の昇華転写プレス機MP-1000のプレス板間に挟み込み、200℃及び0.51kgf/cm2で60sec加熱処理し、室温まで冷ましたのち、ポリエステル布帛から昇華転写用転写紙を剥離することにより昇華転写染色された該各ポリエステル布帛の染色物を得た。 【0116】 (昇華転写染色されたポリエステル布帛の摩擦堅牢度試験) 各ポリエステル系布帛の染色物をJIS L 0849のII形の試験方法により摩擦堅牢度(乾)と(湿)を試験し判定した。II形は、別名「学振形」とも呼ばれる。 【0117】 摩擦試験機はテーブルを有しており、試験対象となる布帛をこのテーブルに取り付け、綿布を摩擦試験機上部のアーム先端(摩擦子)に取り付けた。約200gの荷重で綿布を有するアームを100mmの長さで試験対象布帛の上を100回往復摩擦し、摩擦が終わったら綿布をアームから取り外して、汚染用のグレースケールを使用して「汚染」の判定をすることにより摩擦堅牢度の数値を決めた。数値は級で表され、級が大きいほど摩擦堅牢度が高いことを意味する。 【0118】 摩擦堅牢度試験として、「乾燥試験」及び「湿潤試験」を行った。「乾燥試験」は、乾燥した綿布で摩擦した。「湿潤試験」では濡らした綿布で摩擦した。湿潤試験では、JIS規格に従って、濡らす程度を約100%の湿潤状態とした。湿潤試験では、摩擦が終わったらアームから取り外した綿布を乾燥させ、乾燥したら汚染用のグレースケールを使用して「汚染」の判定をした。」 (21)甲第15号証(以下、「甲15」という。) 15a「[請求項1] (A)染料及び/又は顔料、(B)スチレン-(メタ)アクリル共重合体、及び(C)下記式(1)で表される化合物を含有し、(C)下記式(1)で表される化合物の含有率が0.18質量%を超えるインク用エマルション組成物。 [化1] [図:0001423481000028.jpg] [式(1)中、tは1乃至5を表す。] ・・・ [請求項17] 請求項1乃至12のいずれか一項に記載のインク用エマルション組成物、又は請求項14乃至16のいずれか一項に記載のインク用分散液組成物を含有する水性インク。」 15b「[0068] 以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。実施例において部は質量部を、%は質量%をそれぞれ意味する。 [0069] [エマルション液1] 48%水酸化ナトリウム(3.7部)、イオン交換水(96.3部)、プロピレングリコール(60部)へJoncryl 683(BASF社製、式(2)の骨格を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=8,000、ガラス転移点=75℃、酸価=160mgKOH/g)40部を投入し、90―120℃に昇温して5時間撹拌することにより、Joncryl 683のエマルション液1を得た。 [0070] [エマルション液2] 48%水酸化ナトリウム(4.1部)、イオン交換水(95.9部)、プロピレングリコール(60部)へJoncryl 690(BASF社製、式(3)の骨格を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=16,500、ガラス転移点=102℃、酸価=240mgKOH/g)40部を投入し、90―120℃に昇温して5時間撹拌することにより、Joncryl 690のエマルション液2を得た。 [0071] [エマルション液3] Joncryl 690(BASF社製、式(3)の骨格を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=16,500、ガラス転移点=102℃、酸価=240mgKOH/g)40部をプロピレングリコール(60部)へ投入し、90―120℃に昇温して5時間撹拌することにより、Joncryl 690の40%溶解液を得た。その後70―90℃に温度を下げて、そこへ48%水酸化ナトリウム(4.1部)を投入し、1時間撹拌後イオン交換水(180部)、サーフィノール104(日信化学工業株式会社製)0.1部を投入し、70―95℃に保って1時間撹拌することにより、Joncryl 690のエマルション液(A)を得た。 得られたエマルション液(A)を0.2mm径ガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散化処理を行った。分散処理後、ガラス繊維濾紙GC-50(東洋濾紙株式会社製、フィルターの孔径0.5μm)で濾過し、粒子サイズの大きい成分を除去したJoncryl 690のエマルション液3を得た。 [0072] [エマルション液4] 48%水酸化ナトリウム(3.1部)、イオン交換水(96.9部)、プロピレングリコール(60部)へJoncryl 678(BASF社製、式(2)の骨格を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=8,500、ガラス転移点=85℃、酸価=215mgKOH/g)40部を投入し、90―120℃に昇温して5時間撹拌することにより、Joncryl 678のエマルション液4を得た。 [0073] [エマルション液5] 48%水酸化カリウム(4.3部)、イオン交換水(95.7部)、プロピレングリコール(60部)へJoncryl 678(BASF社製、式(2)の骨格を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=8,500、ガラス転移点=85℃、酸価=215mgKOH/g)40部を投入し、90―120℃に昇温して5時間撹拌することにより、Joncryl 678のエマルション液5を得た。 [0074] [エマルション液6] 48%水酸化リチウム(1.9部)、イオン交換水(98.1部)、プロピレングリコール(60部)へJoncryl 678(BASF社製、式(2)の骨格を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=8,500、ガラス転移点=85℃、酸価=215mgKOH/g)40部を投入し、90-120℃に昇温して5時間撹拌することにより、Joncryl 678のエマルション液6を得た。」 3 甲1の1に記載された発明 甲1の1のインク組成物は、分散染料を配合することによりブラックを構成するもの(摘記1a、1c参照)であり、インクジェットプリンタによる印刷に利用することができるもの(摘記1b参照)であって、同【0052】の【表2】の「比較例1」のインク組成物もインクジェットプリンタによる印刷に利用することができるものとして調製及び評価されたといえるから、比較例1のインク組成物に着目すれば、甲1の1には、「純水を40.40%、Red 60、SOLSPERSE 43000、SOLSPERSE 44000、プロピレングリコール、水及びプロキセルXL2からなる分散液2を7.60%、Yellow 54、SOLSPERSE 43000、SOLSPERSE 44000、プロピレングリコール、水及びプロキセルXL2からなる分散液1を3.90%、 Blue 359、Disperbyk-190、プロピレングリコール、水及びプロキセルXL2からなる分散液3を9.70%、Blue 72、SOLSPERSE 43000、SOLSPERSE 44000、プロピレングリコール、水及びプロキセルXL2からなる分散液4を11.30%、グリセリンを10.00%、プロピレングリコールを15.50%、サーフィノール465を1.50%並びにプロキセルXL2を0.1%からなり、インクジェットプリンタによる印刷に利用することができるブラックインク組成物。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(摘記1e参照)。 4 対比・判断 (1)本件特許発明1 ア 甲1発明との対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「Red 60」、「Yellow 54」、「Blue 359」及び「Blue 72」は、昇華性染料であるから(摘記3b、7a、9a参照)、それぞれ、本件特許発明1の「C.I.ディスパースレッド60」、「C.I.ディスパースイエロー54」、「C.I.ディスパースブルー359」及び「C.I.ディスパースブルー72」に相当し、これらをまとめると、「少なくとも4種類の昇華性染料」及び「昇華性染料」に相当する(摘記1c参照)。 甲1発明の「SOLSPERSE 43000」、「SOLSPERSE 44000」及び「Disperbyk-190」は、いずれも、本件特許発明1の「分散剤」に相当し(摘記1e参照)、甲1発明の「SOLSPERSE 43000」は、アクリル-スチレン共重合樹脂であるから(摘記1h参照)、本件特許発明1の「前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり」に相当する。 甲1発明の「プロピレングリコール」は本件特許発明1の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲1発明の「インクジェットプリンタによる印刷に利用することができるブラックインク組成物」は、本件特許発明1の「インクジェット」「用ブラックインク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であり、前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であるインクジェット用ブラックインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1> スチレン-(メタ)アクリル共重合体が、本件特許発明1では、質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gであるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 <相違点1-2> インクジェット用ブラックインク組成物が、本件特許発明1では「インクジェット捺染用」であるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 イ 相違点についての検討 <相違点1-1> 甲1の1には甲1発明のブラックインク組成物に含まれる分散剤の質量平均分子量及び酸価について記載も示唆もない。 甲3~甲5、甲9の1及び甲15には、昇華性染料を含有するインクジェット用インク組成物の分散剤として質量平均分子量が5000~17000及び酸価が100~250mgKOH/gの範囲にあるスチレン-(メタ)アクリル共重合体が記載されており(摘記3c、4f、5b、5d、9c、9d、15b参照)、そのようなスチレン-(メタ)アクリル共重合体は周知であるといえるかもしれないが、甲1発明のブラックインク組成物は甲1の1における比較例のものであり、そのような比較例である甲1発明のブラックインク組成物において、昇華性染料を含有するインクジェット用インク組成物の分散剤としてスチレン-(メタ)アクリル共重合体であるSOLSPERSE 43000に代えて、あるいは、スチレン-(メタ)アクリル共重合体ではないSOLSPERSE 44000又はDisperbyk 190に代えて、質量平均分子量が5000~17000及び酸価が100~250mgKOH/gの範囲にあるスチレン-(メタ)アクリル共重合体を採用することは、例えそれらが周知であったとしても、それらを採用する動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2、甲6、甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の2、甲10~甲15にも甲1発明のブラックインク組成物において、分散剤としてスチレン-(メタ)アクリル共重合体であるSOLSPERSE 43000に代えて、あるいは、スチレン-(メタ)アクリル共重合体ではないSOLSPERSE 44000又はDisperbyk 190に代えて、質量平均分子量が5000~17000及び酸価が100~250mgKOH/gの範囲にあるスチレン-(メタ)アクリル共重合体を採用する動機付けとなる記載はない。 ウ 本件特許発明1の効果について 本件特許発明細書の実施例と比較例の記載から、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であり、分散剤が、質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gであるスチレン-(メタ)アクリル共重合体である本件特許発明1の水性ブラックインクは、演色性の影響が殆ど無く、染色濃度が高く、高品位の黒色を有しており、耐光性にも優れているという効果を奏するものであり、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 エ 申立人の主張及び当審の判断について 申立人は、令和6年11月5日提出の意見書において、「訂正前の請求項3の要件「前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである」は、令和6年3月22日付特許異議申立書の甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、および甲第15号証に示されるように、周知技術である。・・・訂正前の請求項3の要件を新規性が無い訂正前の請求項1の発明に追加すること自体、周知技術であり、また、そのような要件の追加により奏する効果も、周知技術である。よって、訂正後の請求項1に記載の発明は進歩性を有するものではない。」と主張する。 しかし、前記イで検討したとおり、前記要件が周知技術であったとしても、甲1発明のブラックインク組成物は甲1の1における比較例のものであり、そのような比較例である甲1発明のブラックインク組成物において、そのような要件を採用する動機付けがあるとはいえず、前記ウのとおり、効果についても、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 したがって、申立人の前記主張は採用できない。 オ 小括 したがって、本件特許発明1は、甲1の1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、<相違点1-2>について検討するまでもなく、甲1の1に記載された発明、並びに、甲1の2、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (2)本件特許発明4 ア 甲1発明との対比 本件特許発明4と甲1発明を対比する。 甲1発明の「Red 60」、「Yellow 54」、「Blue 359」及び「Blue 72」は、昇華性染料であるから(摘記3b、7a、9a参照)、それぞれ、本件特許発明4の「C.I.ディスパースレッド60」、「C.I.ディスパースイエロー54」、「C.I.ディスパースブルー359」及び「C.I.ディスパースブルー72」に相当し、これらをまとめると、「少なくとも4種類の昇華性染料」及び「昇華性染料」に相当する(摘記1c参照)。 甲1発明の「SOLSPERSE 43000」、「SOLSPERSE 44000」及び「Disperbyk-190」は、いずれも、本件特許発明4の「分散剤」に相当する。 甲1発明の「プロピレングリコール」は本件特許発明4の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲1発明の「インクジェットプリンタによる印刷に利用することができるブラックインク組成物」は、本件特許発明4の「インクジェット」「用ブラックインク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲1発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であり、前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であるインクジェット用ブラックインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-3> 分散剤が、本件特許発明4では、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択されるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 <相違点1-4> インクジェット用ブラックインク組成物が、本件特許発明4では「インクジェット捺染用」であるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。 イ 相違点についての検討 <相違点1-3> 甲1の1には甲1発明のブラックインク組成物に含まれる分散剤がクレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩であることについて記載も示唆もない。 甲6、甲7及び甲8の1には、昇華転写用インクジェットブラックインク組成物や捺染用インクジェットインクの分散剤としてクレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩が記載されており(摘記6b、7b、8d参照)、そのようなクレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩は周知であるといえるかもしれないが、甲1発明のブラックインク組成物は甲1の1における比較例のものであり、比較例である甲1発明のブラックインク組成物において、分散剤としてスチレン-(メタ)アクリル共重合体であるSOLSPERSE 43000、あるいは、SOLSPERSE 44000又はDisperbyk-190に代えて、昇華性染料を含有するインクジェット用インク組成物の分散剤としてクレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩を採用することは、例えそれらが周知であったとしても、それらを採用する動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2~甲5、甲8の2~甲8の5、甲9の2、甲10~甲15にも甲1発明のブラックインク組成物において、分散剤としてスチレン-(メタ)アクリル共重合体であるSOLSPERSE 43000、あるいは、SOLSPERSE 44000又はDisperbyk-190に代えて、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩を採用する動機付けとなる記載はない。 ウ 申立人の主張及び当審の判断について 申立人は、令和6年11月5日提出の意見書において、「訂正前の請求項4の要件「前記分散剤が、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択される分散剤である」は、令和6年3月22日付特許異議申立書の甲第6号証、甲第7号証、および甲第8号証の1に示されるように、周知技術である。・・・新規性が無い訂正前の請求項1の要件を周知技術である訂正前の請求項4の発明に追加することは、当業者に容易であり、また、そのような要件の追加により奏する効果も、周知技術である。よって、訂正後の請求項4に記載の発明は進歩性を有するものではない。」と主張する。 しかし、前記イで検討したとおり、前記要件が周知技術であったとしても、甲1発明のブラックインク組成物は甲1の1における比較例のものであり、そのような比較例である甲1発明のブラックインク組成物において、そのような要件を採用する動機付けがあるとはいえず、前記ウのとおり、効果についても本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 したがって、申立人の前記主張は採用できない。 エ 小括 したがって、本件特許発明4は、甲1の1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、<相違点1-4>について検討するまでもなく、甲1の1に記載された発明に、甲1の2、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (3)本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲1発明との<相違点1-1>と同じ相違点を有するものであるから、甲1の1に記載された発明ではなく、また、<相違点1-2>について検討するまでもなく、甲1の1に記載された発明に、甲1の2、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 第6 理由3(明確性要件)について 1 本件特許発明3~6、8、9 本件訂正により、本件特許発明3は削除され、本件特許発明4は本件特許発明3を引用しないものとなったので、本件特許発明4は明確である。 本件特許発明4を引用する本件特許発明5、6、8も明確である。 本件訂正により、本件特許発明9は削除されたので、この取消理由は存在しなくなった。 2 本件特許発明9 本件訂正により、本件特許発明9は削除されたので、この取消理由は存在しなくなった。 第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 当審が取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は以下の理由1~理由3のとおりである。 理由1(新規性)本件特許の請求項1、2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第02号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 理由2(進歩性)本件特許の請求項1~6、8、9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第01号証の1~甲第14号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 理由3(サポート要件)本件特許の請求項1、4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の(1)及び(2)の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (1) 本件特許発明1は、「インクジェット捺染用ブラックインク組成物」という物の発明である。この本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであってはならない。 本件特許発明は・・・インクジェット捺染を用いた昇華転写染色において、演色性の影響による色相の変化が少ない染色物を作製でき、坪董の小さい転写紙又はインク受容層の少ない転写紙を用いた場合でも昇華転写効率が高く、高濃度の染色物を得ることができ、且つ、耐光性に優れる高品位な黒色の染色物を得ることが可能な「インクジェット捺染用ブラックインク組成物」である。また本件2に示すように、本件特許発明1は、「分散剤」を含み、その分散剤の種類などは限定されていない。 しかし、・・・分散剤としてJoncryl 678を使用したものしか開示されていない。・・・そして、Joncryl 678以外の分散剤を用いた場合、本発明の課題を解決できることは十分に実証されているとは言えない。 そうすると、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない。 (2) 本件特許発明は・・・インクジェット捺染を用いた昇華転写染色において、演色性の影響による色相の変化が少ない染色物を作製でき、坪董の小さい転写紙又はインク受容層の少ない転写紙を用いた場合でも昇華転写効率が高く、高濃度の染色物を得ることができ、且つ、耐光性に優れる高品位な黒色の染色物を得ることが可能な「インクジェット捺染用ブラックインク組成物」である。 しかし、・・・分散剤としてJoncryl 678を使用したものしか開示されていない。・・・そして、Joncryl 678以外の分散剤、すなわち、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩を用いた場合、本発明の課題を解決できることは十分に実証されているとは言えない。 そうすると、本件特許発明4は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない。 第8 前記第6の理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について 1 甲号証について 前記第5 1のとおり。 2 甲号証の記載について 前記第5 2のとおり。 3 甲号証に記載された発明 (1)甲2に記載された発明 甲2の水熱昇華性インク水はインクジェットプリント分野のものであるから、実施例1の水熱昇華性インク水として「分散染、第1分散剤(アクリル系分散剤、顔料親和性基を含有する変性ポリエーテル系分散剤、ポリアクリレート系分散剤、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニン分散剤およびアルキンジオール系分散剤、質量比は1:1:1:1:1:1である)、第1保湿剤(エチレングリコール、1’2-プロパンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール600、質量比は1:1:1:1である)、第1殺菌剤(1、2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン系殺菌剤)、脱イオン水、黄色の種類としてC.I.ディスパーズイエロー34、50、54、56、60、64、114、赤色の種類としてC.I.ディスパーズレッド5、60、75、121、146、179、189、202、青色の種類としてC.I.ディスパーズブルー3、43、54、56、60、83、96、165、295、359、360、黒色の種類としてC.I.ディスパーズブルー72、ディスパーズブルー359、ディスパーズブルー360,ディスパーズブラウン1、ディスパーズブラウンBR、ディスパーズブラウン27、ディスパーズブラウンBF、ディスパーズレッド60、ディスパーズイエロー54のうちの複数種類の混合染料を含む、水熱昇華性インクジェットインク。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる(摘記2b参照)。 (2)甲3に記載された発明 甲3には実施例1のインクとして「レッド分散染料原体(C.I.Disperse Red 60)、アニオン性高分子分散剤として"ジョンクリル63"(スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体アンモニア中和物の30%樹脂水溶液、重量平均分子量=12,500、酸価=213)、糖アルコールとして"ソルビトールS"(日研化学(株)製、D-ソルビトール70%水溶液)、化学式(I) [図:0001423481000029.jpg] のアセチレングリコール系化合物である"サーフィノール82" (日信化学工業(株)製)、ジグリセリン及び水からなり、市販のインクジェット印刷用昇華転写紙(キモト株式会社製“CT-JET100”)に、大判インクジェット用プロッター(ピエゾ方式、(株)ミマキエンジニアリング製"JV4-130")により、360×540dpi、3パス、双方向の条件で、縦300mm、横400mmの単色・塗りつぶし印刷を行った昇華転写紙をポリエステル布に重ねて、ホットプレートにて200℃で1分間加熱圧着し、転写染色を行うインク。」の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる(摘記3c参照)。 (3)甲4に記載された発明 甲4には実施例1のエマルション溶液として「48%水酸化ナトリウム、イオン交換水、プロピレングリコール、Joncryl 683(BASF社製、式(2)の構造を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=8,000、ガラス転移点=75℃、酸価=160mgKOH/g)からなるエマルション液1に染料2 B359:ディスパースブルー359を分散させた、インクジェット用水性インクに用いるエマルション組成物。」の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる(摘記4f参照)。 (4)甲5に記載された発明 甲5には実施例3の分散液組成物として「R60:C.I.ディスパースレッド60、 48%水酸化ナトリウム、イオン交換水、プロピレングリコール及びJoncryl 690(BASF社製、式(3)の構造を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=16,500、ガラス転移点=102℃、酸価=240mgKOH/g)からなるJoncryl 690のエマルション液2、 プロピレングリコール 10%SF104PG:サーフィノール104:アセチレングリコール界面活性剤(エアープロダクツジャパン株式会社製)をプロピレングリコールで10%濃度に希釈したもの、 プロクセルGXL:防腐防黴剤(ロンザ社製)からなる水性インクとして有用である分散液組成物。」の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されているといえる(摘記5d参照)。 (5)甲6に記載された発明 甲6には実施例1のインク組成物として「(染料A)DR60(Disperse Red 60、アミノ基及びヒドロキシル基を有するアントラキノン骨格を有する。)、(染料B)DY54(Disperse Yellow 54、キノリル骨格を有する。)、〔界面活性剤〕BYK-348(シリコーン系界面活性剤、ビックケミー・ジャパン社製)、〔分散剤〕NS(β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物(アニオン系分散剤))、〔水溶性有機溶剤〕グリセリン及びプロピレングリコールからなり、インクジェットプリンタ(PX-G930、セイコーエプソン社製)のヘッドに充填し、中間転写媒体であるTRANSJET Sportline(Cham Paper社)上に、記録解像度1440×720dpiでベタパターンを付着させ、その後、中間転写媒体の昇華転写用インク付着側を白色記録媒体である布帛(ポリエステル100%、アミーナ、東レ社製)と密着させ、この状態で、ヒートプレス機(TP-608M、太陽精機社製)を用いて200℃で60秒の条件で加熱し、昇華転写を行い、各記録物を得る、昇華転写用インクジェットブラックインク組成物。」の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されているといえる(摘記6e参照)。 (6)甲7に記載された発明 甲7には実施例8の昇華転写用のインクジェットインクとして「昇華性染料として“カヤセットブルーA-2R”(日本化薬株式会社製、C.I.ディスパースブルー72)、アニオン分散剤としてラベリンAN-40(第一工業製薬株式会社製、メチルナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物の40%水溶液)、ノニオン分散剤としてNIKKOLRTMBPSH-25(日光ケミカルズ製、水添フィトステロールのEO25モル付加物)及びイオン交換水からなる水性分散液、ジグリセリンS(阪本薬品工業株式会社製、グリセリン含有量0.5%)、ポリオール化合物としてプロピレングリコール、BYK-348(ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)及びイオン交換水からなり、ロングラン印刷試験で作成したベタ印刷物のインク付与面を所定の大きさに裁断し(35cm×40cm)、同サイズのポリエステル布(ポンジ)と重ね合わせた後、太陽精機株式会社製トランスファープレス機TP-600A2を用いて190℃×60秒の条件にて昇華転写を行う、昇華転写用のインクジェットインク。」の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されているといえる(摘記7c参照)。 (7)甲8の1に記載された発明 甲8の1には実施例1の捺染用インクジェットインクとして「昇華性分散染料としてC.I.Disperse Blue 359、分散剤としてデモールNL(花王株式会社製)及び水からなる昇華性分散染料分散物1、水性有機溶剤としてグリセリンとプロピレングリコール、BYK-348(ビックケミー・ジャパン社製)、ポリエステル樹脂バイロナールMD-1480(東洋紡株式会社製,固形分30質量%(固形分以外は水)、体積平均粒子径(Mv):110nm)及び水からなる捺染用インクジェットインク1。」の発明(以下、「甲8発明」という。)が記載されているといえる(摘記8f参照)。 (8)甲9の1に記載された発明 甲9の1には実施例1のインク組成物として「C.I.Disperse Red 60、 ジョンクリル67、水酸化ナトリウム、イオン交換水,プロクセルGXL、サーフィノール104PG50からなる分散剤1、 プロクセルGXL、サーフィノール104PG50、イオン交換水からなる分散液、 ジグリセリンS(グリセリン含有量0.5%)、サーフィノール420、分散剤1、ポリオール化合物としてプロピレングリコール、80%トリエタノールアミン(純正化学株式会社製)、プロクセルGXL、サーフィノールDF110D及びイオン交換水からなり、株式会社ミマキエンジニアリング製ワイドフォーマットインクジェットプリンタ、JV2-130にてロングランでの吐出安定性を評価したロングラン吐出性試験で作成したベタ印刷物のインク付与面を所定の大きさに裁断し(35cm×40cm)、同サイズのポリエステル布(ポンジ)と重ね合わせた後、太陽精機株式会社製トランスファープレス機TP-600A2を用いて190℃×60秒の条件にて、ポリエステル布に対して昇華転写染色を行う、水性インク。」の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されているといえる(摘記9d参照)。 (9)甲10に記載された発明 甲10には実施例1の昇華転写染色方法に使用するトナー調製例1のマゼンタトナーとして「ダイヤクロンRTMFC-1224、カヤセットレッドB(日本化薬株式会社製、C.I.ディスパースレッド60)、ボントロンRTM E-84及びLicowaxRTM KPからなる粒子、 AEROSILRTM R812、 AEROSILRTM RX50、 SW-100からなり、密度が1.09g/cm3のトレーシングペーパー(コクヨ株式会社製、トレーシングペーパー A4 厚口 75g/m2)に印刷を行い、トナーを付着させて得た中間記録媒体のトナー付着面と、100%ポリエステル繊維で構成されているサテン(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することによる昇華転写染色方法により染色された該サテンの染色物を得るマゼンタトナー。」の発明(以下、「甲10発明」という。)が記載されているといえる(摘記10e参照)。 (10)甲11に記載された発明 甲11には実施例1のシアントナーとして「アルマテックスCPR-390、C.I.ディスパースブルー359、FCA-1001-NS及びカルナバワックスC1からなるトナー母粒子、 RX50、 R812、 SW-100からなり、乾式非磁性1成分現像方式印刷機(桂川電気株式会社製:KIPc7800)に充填し、中間記録媒体としてA0判のボンド紙を用い、解像度:600pixel/inch、定着温度:135℃、現像バイアス:200Vの条件で印刷を行い得た、中間記録媒体(ボンド紙)トナー付着面と、被染色物として100%ポリエステル繊維で構成されているダブルピケ(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製:トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することにより、昇華転写染色方法により染色された該ダブルピケの染色物を得る、シアントナー。」の発明(以下、「甲11発明」という。)が記載されているといえる(摘記11d参照)。 (11)甲12に記載された発明 甲12には実施例4のブラックトナーとして「ダイヤクロンRTM FC-2232、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物、ボントロンRTM E-84及びカルナバワックスC1からなるトナー母粒子、 RX50、 R812、 SW-100からなり、乾式非磁性1成分現像方式印刷機(桂川電気株式会社製:KIPc7800)に充填し、中間記録媒体としてA0判のボンド紙を用いて、印字率5%、解像度:600pixel/inch、定着温度:135℃、現像バイアス:200Vの条件で印刷された中間記録媒体(ボンド紙)のトナー付着面と、被染色物として100%ポリエステル繊維で構成されているダブルピケ(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製:トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することにより、昇華転写染色方法により染色された該ダブルピケの染色物を得る、ブラックトナー1(B-1)。」の発明(以下、「甲12発明」という。)が記載されているといえる(摘記12d参照)。 (12)甲13に記載された発明 甲13には実施例4のブラックトナーとして「三菱レイヨン株式会社製のダイヤクロン FC-489、日本化薬株式会社製のC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合式(1)及び式(2)で表される染料の混合物 [図:0001423481000030.jpg] [図:0001423481000031.jpg] 、ボントロン E-84及びカルナバワックスC1からなる トナー母粒子、 日本アエロジル社製のRX50、 日本アエロジル社製のR812、 SW-100からなり、乾式非磁性1成分現像方式印刷機(桂川電気株式会社製:KIPc7800)に充填し、中間記録媒体としてA0判のボンド紙を用いて、解像度:600pixel/inch、定着温度:135℃、現像バイアス:200Vの条件でベタ画像を印刷し、得た各中間記録媒体のトナー付着面と、被染色物として100%ポリエステル繊維で構成されているダブルピケ(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製:トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することにより、昇華転写染色方法により染色された該ダブルピケの染色物を得る、ブラックトナー「T4」。」の発明(以下、「甲13発明」という。)が記載されているといえる(摘記13c参照)。 (13)甲14に記載された発明 甲14には実施例B1のブラックトナーとして「ポリエステル樹脂FC2447(酸価Av:11KOHmg/g、三菱レーヨン社製)、昇華性分散染料CIディスパースイエロー54(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースレッド60(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースブルー360(紀和化学社製)、カルナバワックスTOWAX1F3(東亜合成社製)、酸化ポリプロピレンワックス100TS(三洋化成工業社製)、荷電制御剤TN-105(保土谷化学社製)及び架架橋剤メタブレンP1901(ポリグリシジルメタクリレート、Mw45000、Mn2700、三菱レーヨン社製)からなる母体トナー、 小粒径疎水性SiO2 H-1303<ワッカー社製>、 大径疎水性SiO2 X24<信越化学社製>及び 中径疎水性SiO2 RX50<エボニック社製>からなり、桂川電機社製KIPc7800プリンタを用いた。桂川電機KIPc7800プリンタの現像器に装着し、転写紙として、三菱製紙グループ北上ハイテクペーパー社製写真用(広葉樹晒クラフト)原紙(坪量100g/m2、水分7%、密度1.030、BEKK平滑度310sec、ガーレー透気度350sec、表面抵抗6.6E+09Ω/□)に転写し、転写紙のトナー定着面を、各ポリエステル系布帛と重ね、アサヒ繊維機械社製の昇華転写プレス機MP-1000のプレス板間に挟み込み、200℃及び0.51kgf/cm2で60sec加熱処理し、室温まで冷ましたのち、ポリエステル布帛から昇華転写用転写紙を剥離することにより昇華転写染色されたポリエステル布帛の染色物を得る、昇華転写染色用ブラックトナー。」の発明(以下、「甲14発明」という。)が記載されているといえる(摘記14c参照)。 4 対比・判断 (1)甲2発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲2発明との対比 本件特許発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明の「第1保湿剤(エチレングリコール、1’2-プロパンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール600、質量比は1:1:1:1である)」は本件特許発明1の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲2発明の「混合染料」は、水熱昇華性インクジェットインクに含まれるから、本件特許発明1の「昇華性染料」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲2発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有する、インクジェットインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-1> 分散剤が、本件特許発明1では、スチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gであるのに対し、甲2発明では、第1分散剤(アクリル系分散剤、顔料親和性基を含有する変性ポリエーテル系分散剤、ポリアクリレート系分散剤、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニン分散剤およびアルキンジオール系分散剤である点。 <相違点2-2> インクジェットインク組成物が、本件特許発明1では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点2-2>について検討する。 甲2発明の水熱昇華性インクジェットインクにおいて、黄色の種類としてC.I.ディスパーズイエロー34、50、54、56、60、64、114、赤色の種類としてC.I.ディスパーズレッド5、60、75、121、146、179、189、202、青色の種類としてC.I.ディスパーズブルー3、43、54、56、60、83、96、165、295、359、360、黒色の種類としてC.I.ディスパーズブルー72、ディスパーズブルー359、ディスパーズブルー360,ディスパーズブラウン1、ディスパーズブラウンBR、ディスパーズブラウン27、ディスパーズブラウンBF、ディスパーズレッド60、ディスパーズイエロー54のうちの複数種類の混合染料を含むことが、特定されるのみであるから、<相違点2-2>は実質的な相違点である。 そして、甲2にはブラックインクについて記載もなく、甲2には染料が多数列記されており(摘記2b参照)、甲2発明の水熱昇華性インクジェットインクにおいて、その多数列記された染料のうち黄色の種類としてC.I.ディスパーズイエロー54、赤色の種類としてC.I.ディスパーズレッド60、青色の種類としてC.I.ディスパーズブルー359、黒色の種類としてC.I.ディスパーズブルー72、ディスパーズブルー359を選択し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の1には、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359を含む、ブラックを構成すると思われるインク組成物が記載されているが(摘記1e参照)、該インク組成物は、甲1の1において吐出性が劣るとされる比較例に相当するものであり、甲2にはブラックインクについて記載もないから、甲2発明の水熱昇華性インクジェットインクにおいて、甲1の1に記載のとおり、染料のうち黄色の種類としてC.I.ディスパーズイエロー54、赤色の種類としてC.I.ディスパーズレッド60、青色の種類としてC.I.ディスパーズブルー359、黒色の種類としてC.I.ディスパーズブルー72、ディスパーズブルー359を選択し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 そして、甲1の2、甲3~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15にも、甲2発明の水熱昇華性インクジェットインクにおいて、その多数列記された染料のうち黄色の種類としてC.I.ディスパーズイエロー54、赤色の種類としてC.I.ディスパーズレッド60、青色の種類としてC.I.ディスパーズブルー359、黒色の種類としてC.I.ディスパーズブルー72、ディスパーズブルー359を選択し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 本件特許発明細書の実施例と比較例の記載から、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359である本件特許発明1の水性ブラックインクは、昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359ではない比較例の水性ブラックインクに対し、演色性の影響が殆ど無く、染色濃度が高く、高品位の黒色を有しており、耐光性にも優れているという効果を奏するものであり、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明ではなく、また、<相違点2-1>について検討するまでもなく、甲2に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲3~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明4 (ア)甲2発明との対比 本件特許発明4と甲2発明を対比する。 甲2発明の「第1保湿剤(エチレングリコール、1’2-プロパンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール600、質量比は1:1:1:1である)」は本件特許発明4の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲2発明の「混合染料」は、水熱昇華性インクジェットインクに含まれるから、本件特許発明4の「昇華性染料」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲2発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有し、前記分散剤が、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択される分散剤である、インクジェットインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2-3> 分散剤が、本件特許発明4では、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択されるのに対し、甲2発明では、第1分散剤(アクリル系分散剤、顔料親和性基を含有する変性ポリエーテル系分散剤、ポリアクリレート系分散剤、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニン分散剤およびアルキンジオール系分散剤である点。 <相違点2-4> インクジェットインク組成物が、本件特許発明4では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲2発明ではそのような特定がない点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点2-4>について検討する。 <相違点2-4>は、前記<相違点2-2>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、<相違点2-2>は実質的な相違点であり、甲2発明の水熱昇華性インクジェットインクにおいて、その多数列記された染料のうち黄色の種類としてC.I.ディスパーズイエロー54、赤色の種類としてC.I.ディスパーズレッド60、青色の種類としてC.I.ディスパーズブルー359、黒色の種類としてC.I.ディスパーズブルー72、ディスパーズブルー359を選択し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明4の効果について 前記ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明4の効果の程度が、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明4は、甲2に記載された発明ではなく、また、<相違点2-3>について検討するまでもなく、甲2に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲3~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲2発明との<相違点2-2>又は<相違点2-4>と同じ相違点を有するものであるから、甲2に記載された発明ではなく、また、<相違点2-2>及び<相違点2-3>について検討するまでもなく、甲2に記載された発明に、甲1の1、甲1の2、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第1項第3号に該当せず、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (2)甲3発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲3発明との対比 本件特許発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明の「レッド分散染料原体(C.I.Disperse Red 60)」は、昇華転写紙に印刷紙、ポリエステル布に重ねて、ホットプレートにて200℃で1分間加熱圧着し、転写染色を行っているから、本件特許発明1の「昇華性染料」及び「C.I.ディスパースレッド60」に相当する。 甲3発明の「アニオン性高分子分散剤として"ジョンクリル63"(スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合体アンモニア中和物の30%樹脂水溶液、重量平均分子量=12,500、酸価=213)」は、本件特許発明1の「分散剤」及び「前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである」に相当する。 甲3発明の「ジグリセリン」は本件特許発明1の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲3発明の「市販のインクジェット印刷用昇華転写紙(キモト株式会社製“CT-JET100”)に、大判インクジェット用プロッター(ピエゾ方式、(株)ミマキエンジニアリング製"JV4-130")により、360×540dpi、3パス、双方向の条件で、縦300mm、横400mmの単色・塗りつぶし印刷を行った昇華転写紙をポリエステル布に重ねて、ホットプレートにて200℃で1分間加熱圧着し、転写染色を行うインク」は本件特許発明1の「インクジェット捺染用」及び「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲3発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有し、 前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60であり、前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである、インクジェット捺染用インク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3-1> インクジェット捺染用インク組成物が、本件特許発明1では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60以外はC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359である、ブラックインク組成物であるのに対し、甲3発明では前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60であり、ブラックインク組成物でない点。 (イ)相違点についての検討 甲3には甲3発明のインクの昇華性染料として"C.I.Disperse Yellow 54",60,64,71,82,"C.I.Disperse Orange 25",288,"C.I.Disperse Red 4",22,55,60,146,302,364,"C.I.Disperse Blue 14",28,56,72,334,359,360,"C.I.Disperse Violet 28","C.I.Solvent Yellow 16",33,93,"C.I.Solvent Orange 60","C.I.Solvent Red 111",155, "C.I.Solvent Violet 31","C.I.Solvent Blue 35",36,59,63,97,104が好ましいことが、記載されており(摘記3b参照)、実施例において、昇華性染料が、イエロー分散染料原体(C.I.Disperse Yellow 54)、ブルー分散染料原体(C.I.Disperse Blue 72)又はブルー分散染料原体(C.I.Disperse Blue 359)であるものが記載されている(摘記3c参照)。そして、甲1の1には複数の分散染料を配合することによりブラックを構成することが記載されているが(摘記1a参照)、いかなる分散染料を何種類配合することまでは記載されていないところ、比較例1としてRed 60、Yellow 54、Blue 359及びBlue 72が配合され、ブラックを構成すると思われるインク組成物が記載されているが(摘記1e参照)、そのインク組成物は甲1の1において吐出性が劣るとされる比較例であるから、そのような比較例に基づいて、甲3発明のインクの昇華性染料としてレッド分散染料原体(C.I.Disperse Red 60)に加えて、実施例においてそれぞれ単独で配合されるイエロー分散染料原体(C.I.Disperse Yellow 54)、ブルー分散染料原体(C.I.Disperse Blue 72)及びブルー分散染料原体(C.I.Disperse Blue 359)を全て採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとまではいえない。 また、甲1の2、甲2、甲4~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15にも、甲3発明のインクの昇華性染料としてレッド分散染料原体(C.I.Disperse Red 60)に加えて、実施例においてそれぞれ単独で配合されるイエロー分散染料原体(C.I.Disperse Yellow 54)、ブルー分散染料原体(C.I.Disperse Blue 72)及びブルー分散染料原体(C.I.Disperse Blue 359)を全て採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲3に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2、甲4~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明4 (ア)甲3発明との対比 本件特許発明4と甲3発明を対比する。 甲3発明の「レッド分散染料原体(C.I.Disperse Red 60)」は、昇華転写紙に印刷紙、ポリエステル布に重ねて、ホットプレートにて200℃で1分間加熱圧着し、転写染色を行っているから、本件特許発明4の「昇華性染料」及び「C.I.ディスパースレッド60」に相当する。 甲3発明の「ジグリセリン」は本件特許発明4の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲3発明の「市販のインクジェット印刷用昇華転写紙(キモト株式会社製“CT-JET100”)に、大判インクジェット用プロッター(ピエゾ方式、(株)ミマキエンジニアリング製"JV4-130")により、360×540dpi、3パス、双方向の条件で、縦300mm、横400mmの単色・塗りつぶし印刷を行った昇華転写紙をポリエステル布に重ねて、ホットプレートにて200℃で1分間加熱圧着し、転写染色を行うインク」は本件特許発明4の「インクジェット捺染用」及び「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲3発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有する、インクジェット捺染用インク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3-2> 分散剤が、本件特許発明4では、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択されるのに対し、甲4発明では、第1分散剤(アクリル系分散剤、顔料親和性基を含有する変性ポリエーテル系分散剤、ポリアクリレート系分散剤、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニン分散剤およびアルキンジオール系分散剤である点。 <相違点3-3> インクジェット捺染用インク組成物が、本件特許発明4では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60以外はC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359である、ブラックインク組成物であるのに対し、甲3発明では前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60であり、ブラックインク組成物でない点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点3-3>について検討する。 <相違点3-3>は、前記<相違点3-1>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、甲3発明のインクの昇華性染料としてレッド分散染料原体(C.I.Disperse Red 60)に加えて、実施例においてそれぞれ単独で配合されるイエロー分散染料原体(C.I.Disperse Yellow 54)、ブルー分散染料原体(C.I.Disperse Blue 72)及びブルー分散染料原体(C.I.Disperse Blue 359)を全て採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明4の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明4の効果の程度が、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明4は、<相違点3-2>について検討するまでもなく、甲3に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2、甲4~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲3発明との<相違点3-1>又は<相違点3-2>と同じ相違点を有するものであるから、甲3に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2、甲4~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (3)甲4発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲4発明との対比 本件特許発明1と甲4発明を対比する。 甲4発明の「プロピレングリコール」は本件特許発明1の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲4発明の「Joncryl 683(BASF社製、式(2)の構造を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=8,000、ガラス転移点=75℃、酸価=160mgKOH/g)」は、本件特許発明1の「分散剤」及び「前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである」に相当する(摘記4c参照。)。 甲4発明の「染料2 B359:ディスパースブルー359」は、分散染料であるから(摘記4b参照)、本件特許発明1の「昇華性染料」及び「前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359である」に相当する。 甲4発明の「インクジェット用水性インクに用いるエマルション組成物」は、本件特許発明1の「インクジェット」及び「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲4発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359であり、前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである、インクジェットインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4-1> インクジェット捺染用インク組成物が、本件特許発明1では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359以外はC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72である、インクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲4発明では昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359であり、ブラックインク組成物でない点。 (イ)相違点についての検討 甲4には甲4発明のインクジェット用水性インクに用いるエマルション組成物の分散性染料が、好ましくは、C.I.ディスパースオレンジ25、ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースバイオレット27、28、C.I.ディスパースブルー72、359、360、366であることが記載されており(摘記4b参照)、ブラックインクの調製においては、ブルー染料を主体にオレンジ染料、及びレッド染料を適宜配合してブラック色に調色し、これをブラック染料として用いることができることが記載されているが(摘記4b参照)、甲4発明のインクジェット用水性インクの分散染料として染料2 B359:ディスパースブルー359に加えて、前記記載のC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、及び、前記に記載のないC.I.ディスパースバイオレッド60を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとまではいえない。 また、甲1の1には、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359を含むブラックインク組成物が記載されているが(摘記1e参照)、該インク組成物は、吐出性が劣るものであり、甲1の1において比較例に相当するものであり、甲4発明のインクジェット用水性インクにおいて、甲1の1に記載の前記比較例のとおり、染料のうち黄色の種類としてC.I.ディスパーズイエロー54、赤色の種類としてC.I.ディスパーズレッド60、青色の種類としてC.I.ディスパーズブルー359、黒色の種類としてC.I.ディスパーズブルー72、ディスパーズブルー359を選択し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 そして、甲1の2、甲2、甲3、甲5~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15にも、甲4発明のインクジェット用水性インクの分散染料として染料2 B359:ディスパースブルー359に加えて、前記記載のC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、及び、前記に記載のないC.I.ディスパースバイオレッド60を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲4に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2、甲3、甲5~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明4 (ア)甲4発明との対比 本件特許発明4と甲4発明を対比する。 甲4発明の「プロピレングリコール」は本件特許発明4の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲4発明の「染料2 B359:ディスパースブルー359」は、分散染料であるから(摘記4b参照)、本件特許発明4の「昇華性染料」及び「前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359である」に相当する。 甲4発明の「インクジェット用水性インクに用いるエマルション組成物」は、本件特許発明4の「インクジェット」及び「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲4発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有する、インクジェットインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4-2> 分散剤が、本件特許発明4では、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択されるのに対し、甲4発明では、Joncryl 683(BASF社製、式(2)の構造を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=8,000、ガラス転移点=75℃、酸価=160mgKOH/g)である点。 <相違点4-3> インクジェット捺染用インク組成物が、本件特許発明4では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359以外はC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72である、インクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲4発明では昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359であり、ブラックインク組成物でない点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点4-3>について検討する。 <相違点4-3>は、前記<相違点4-1>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、甲4発明のインクジェット用水性インクの分散染料として染料2 B359:ディスパースブルー359に加えて、前記記載のC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、及び、前記に記載のないC.I.ディスパースバイオレッド60を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明4の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明4の効果の程度が、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明4は、<相違点4-2>について検討するまでもなく、甲4に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2、甲3、甲5~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲4発明との<相違点4-1>又は<相違点4-3>と同じ相違点を有するものであるから、甲4に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2、甲3、甲5~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (4)甲5発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲5発明との対比 本件特許発明1と甲5発明を対比する。 甲5発明の「R60:C.I.ディスパースレッド60」は、分散染料であるから(摘記5a参照)、本件特許発明1の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が」及び「C.I.ディスパースレッド60」に相当する。 甲5発明の「プロピレングリコール」は本件特許発明1の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲5発明の「Joncryl 690(BASF社製、式(3)の構造を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=16,500、ガラス転移点=102℃、酸価=240mgKOH/g)」は、本件特許発明1の「分散剤」及び「前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである」に相当する(摘記5b参照)。 甲5発明の「水性インクとして有用である分散液組成物」は、本件特許発明1の「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲5発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60であり、前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである、インク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点5-1> インク組成物が、本件特許発明1では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60以外はC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359である、インクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲5発明では昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60であり、インクジェット捺染用ブラックインク組成物でない点。 (イ)相違点についての検討 甲5には甲5発明の水性インクとして有用である分散液組成の分散性染料として、多数の選択肢の中にディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、359が記載されており(摘記5a参照)、甲1の1には複数の分散染料を配合することによりブラックを構成することが記載されているが(摘記1a参照)、いかなる分散染料を何種類配合することまでは記載されていないところ、比較例1としてRed 60、Yellow 54、Blue 359及びBlue 72が配合され、ブラックを構成すると思われるインク組成物が記載されているが(摘記1e参照)、そのインク組成物は甲1の1において吐出性が劣るとされる比較例であるから、そのような比較例に基づいて、甲5発明の水性インクとして有用である分散液組成の分散性染料としてC.I.ディスパースレッド60に加えて、その多数の選択肢の中からディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、359を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2~甲4、甲6、甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15にも、甲5発明の水性インクとして有用である分散液組成の分散性染料としてC.I.ディスパースレッド60に加えて、その多数の選択肢の中からディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、359を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲5に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲4、甲6、甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明4 (ア)甲5発明との対比 本件特許発明4と甲5発明を対比する。 甲5発明の「R60:C.I.ディスパースレッド60」は、分散染料であるから(摘記5a参照)、本件特許発明4の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が」及び「C.I.ディスパースレッド60」に相当する。 甲5発明の「プロピレングリコール」は本件特許発明1の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲5発明の「Joncryl 690(BASF社製、式(3)の構造を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=16,500、ガラス転移点=102℃、酸価=240mgKOH/g)」は、本件特許発明4の「分散剤」に相当する。 甲5発明の「水性インクとして有用である分散液組成物」は、本件特許発明4の「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲5発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60である、インク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点5-2> 分散剤が、本件特許発明4では、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択されるのに対し、甲5発明では、Joncryl 690(BASF社製、式(3)の構造を分子内に有するスチレン-(メタ)アクリル共重合体、重量平均分子量=16,500、ガラス転移点=102℃、酸価=240mgKOH/g)である点。 <相違点5-3> インク組成物が、本件特許発明4では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60以外はC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359である、インクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲5発明では昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60であり、インクジェット捺染用ブラックインク組成物でない点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点5-3>について検討する。 <相違点5-3>は、前記<相違点5-1>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、甲5発明の水性インクとして有用である分散液組成の分散性染料としてC.I.ディスパースレッド60に加えて、その多数の選択肢の中からディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、359を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明4の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明4の効果の程度が、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明4は、<相違点5-2>について検討するまでもなく、甲5に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲4、甲6、甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲5発明との<相違点5-1>又は<相違点5-3>と同じ相違点を有するものであるから、甲5に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲4、甲6、甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (5)甲6発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲6発明との対比 本件特許発明1と甲6発明を対比する。 甲6発明の「(染料A)DR60(Disperse Red 60、アミノ基及びヒドロキシル基を有するアントラキノン骨格を有する。)」及び「(染料B)DY54(Disperse Yellow 54、キノリル骨格を有する。)」は、昇華転写用インクジェットブラックインク組成物に含まれるものであるから、本件特許発明1の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60」に相当する。 甲6発明の「インクジェットプリンタ(PX-G930、セイコーエプソン社製)のヘッドに充填し、中間転写媒体であるTRANSJET Sportline(Cham Paper社)上に、記録解像度1440×720dpiでベタパターンを付着させ、その後、中間転写媒体の昇華転写用インク付着側を白色記録媒体である布帛(ポリエステル100%、アミーナ、東レ社製)と密着させ、この状態で、ヒートプレス機(TP-608M、太陽精機社製)を用いて200℃で60秒の条件で加熱し、昇華転写を行い、各記録物を得る、昇華転写用インクジェットブラックインク組成物」は本件特許発明1の「インクジェット捺染用ブラックインク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲6発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点6-1> 分散剤が、本件特許発明1では、分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gであるのに対し、甲6発明ではそのような特定がない点。 <相違点6-2> 昇華性染料が、本件特許発明1では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60及びC.I.ディスパースイエロー54以外は、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であるのに対し、甲6発明では華性染料が、C.I.ディスパースレッド60及びC.I.ディスパースイエロー54である点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点6-2>について検討する。 甲6には甲6発明の昇華転写用インクジェットブラックインク組成物の染料AとしてC.I.ディスパースブルー72、359が記載されて(摘記6b参照)、実施例においてDB359(Disperse Blue 359、アミノ基を有するアントラキノン骨格を有する。)又はDB72(Disperse Blue72、ヒドロキシル基を有するアントラキノン骨格を有する。)を用いたものが記載されているが(摘記6e参照)、染料Aは単一種で用いられることが好ましいことが記載されているから(摘記6b参照)、甲6発明の昇華転写用インクジェットブラックインク組成物において(染料A)DR60(Disperse Red 60、アミノ基及びヒドロキシル基を有するアントラキノン骨格を有する。)に加えて、C.I.ディスパースブルー72、359を採用する動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の1には、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359を含む、ブラックを構成すると思われるインク組成物が記載されているが(摘記1e参照)、該インク組成物は、甲1の1において吐出性が劣るとされる比較例に相当するものであるから、そのような比較例に基づいて、甲6発明の昇華転写用インクジェットブラックインク組成物において(染料A)DR60(Disperse Red 60、アミノ基及びヒドロキシル基を有するアントラキノン骨格を有する。)に加えて、C.I.ディスパースブルー72、359を採用する動機付けがあるとはいえない。 そして、甲1の2、甲2~甲5、甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15にも、甲6発明の昇華転写用インクジェットブラックインク組成物において(染料A)DR60(Disperse Red 60、アミノ基及びヒドロキシル基を有するアントラキノン骨格を有する。)に加えて、C.I.ディスパースブルー72、359を採用する動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、<相違点6-1>について検討するまでもなく、甲6に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲5、甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明4 (ア)甲6発明との対比 本件特許発明4と甲6発明を対比する。 甲6発明の「(染料A)DR60(Disperse Red 60、アミノ基及びヒドロキシル基を有するアントラキノン骨格を有する。)」及び「(染料B)DY54(Disperse Yellow 54、キノリル骨格を有する。)」は、昇華転写用インクジェットブラックインク組成物に含まれるものであるから、本件特許発明4の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60」に相当する。 甲6発明の「〔分散剤〕NS(β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物(アニオン系分散剤))」は、本件特許発明4の「分散剤」、「前記分散剤が」及び「メチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩」に相当する。 甲6発明の「インクジェットプリンタ(PX-G930、セイコーエプソン社製)のヘッドに充填し、中間転写媒体であるTRANSJET Sportline(Cham Paper社)上に、記録解像度1440×720dpiでベタパターンを付着させ、その後、中間転写媒体の昇華転写用インク付着側を白色記録媒体である布帛(ポリエステル100%、アミーナ、東レ社製)と密着させ、この状態で、ヒートプレス機(TP-608M、太陽精機社製)を用いて200℃で60秒の条件で加熱し、昇華転写を行い、各記録物を得る、昇華転写用インクジェットブラックインク組成物」は本件特許発明4の「インクジェット捺染用ブラックインク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲6発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60であり、前記分散剤が、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択される分散剤である、インクジェット捺染用ブラックインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点6-3> 昇華性染料が、本件特許発明4では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60及びC.I.ディスパースイエロー54以外は、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であるのに対し、甲6発明では昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60及びC.I.ディスパースイエロー54である点。 (イ)相違点についての検討 <相違点6-3>は前記ア(ア)の<相違点6-2>と同じであり、前記(イ)で検討したとおり、甲6発明の昇華転写用インクジェットブラックインク組成物において(染料A)DR60(Disperse Red 60、アミノ基及びヒドロキシル基を有するアントラキノン骨格を有する。)に加えて、C.I.ディスパースブルー72、359を採用する動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明4の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明4の効果の程度が、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明4は、甲6に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲5、甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲6発明との<相違点6-2>又は<相違点6-3>と同じ相違点を有するものであるから、甲6に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲5、甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (6)甲7発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲7発明との対比 本件特許発明1と甲7発明を対比する。 甲7発明の「昇華性染料として“カヤセットブルーA-2R”(日本化薬株式会社製、C.I.ディスパースブルー72)」は本件特許発明1の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が」及び「C.I.ディスパースブルー72」に相当する。 甲7発明の「ジグリセリンS(阪本薬品工業株式会社製、グリセリン含有量0.5%)、ポリオール化合物としてプロピレングリコール」は本件特許発明1の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲7発明の「ロングラン印刷試験で作成したベタ印刷物のインク付与面を所定の大きさに裁断し(35cm×40cm)、同サイズのポリエステル布(ポンジ)と重ね合わせた後、太陽精機株式会社製トランスファープレス機TP-600A2を用いて190℃×60秒の条件にて昇華転写を行う、昇華転写用のインクジェットインク」は本件特許発明1の「インクジェット捺染用」及び「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲7発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー72であるインクジェット捺染用インク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点7-1> 分散剤が、本件特許発明1では、分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gであるのに対し、甲7発明ではそのような特定がない点。 <相違点7-2> インクジェット捺染用インク組成物が、本件特許発明1では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー72以外は、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー359であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲7発明では昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー72であり、ブラックインク組成物でない点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点7-2>について検討する。 甲7には甲7発明の昇華転写用のインクジェットインクの昇華性染料として多数の選択肢の中にC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー359が記載されており(摘記7a参照)、甲2にも甲2に記載の水熱昇華性インクジェットインクの分散染料として多数の選択肢の中にC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー359が記載されているが(摘記2b参照)、甲7発明の昇華転写用のインクジェットインクの昇華性染料としてC.I.ディスパースブルー72に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の1には、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359を含む、ブラックを構成すると思われるインク組成物が記載されているが(摘記1e参照)、該インク組成物は、甲1の1において吐出性が劣るとされる比較例に相当するものであるから、そのような比較例に基づいて、甲7発明の昇華転写用のインクジェットインクにおいて(染料A)DR60(Disperse Red 60、アミノ基及びヒドロキシル基を有するアントラキノン骨格を有する。)に加えて、C.I.ディスパースブルー72、359を採用する動機付けがあるとはいえない。 そして、甲1の2、甲3~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15にも、甲7発明の昇華転写用のインクジェットインクの昇華性染料としてC.I.ディスパースブルー72に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、<相違点7-1>について検討するまでもなく、甲7に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲6、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明4 (ア)甲7発明との対比 本件特許発明4と甲7発明を対比する。 甲7発明の「昇華性染料として“カヤセットブルーA-2R”(日本化薬株式会社製、C.I.ディスパースブルー72)」は本件特許発明4の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が」及び「C.I.ディスパースブルー72」に相当する。 甲7発明の「アニオン分散剤としてラベリンAN-40(第一工業製薬株式会社製、メチルナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物の40%水溶液)」は、本件特許発明4の「分散剤」、「前記分散剤が」及び「メチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩」に相当する。 甲7発明の「ジグリセリンS(阪本薬品工業株式会社製、グリセリン含有量0.5%)、ポリオール化合物としてプロピレングリコール」は本件特許発明4の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲7発明の「ロングラン印刷試験で作成したベタ印刷物のインク付与面を所定の大きさに裁断し(35cm×40cm)、同サイズのポリエステル布(ポンジ)と重ね合わせた後、太陽精機株式会社製トランスファープレス機TP-600A2を用いて190℃×60秒の条件にて昇華転写を行う、昇華転写用のインクジェットインク」は本件特許発明4の「インクジェット捺染用」及び「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲7発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー72であり、前記分散剤が、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩からなる群より選択される分散剤である、インクジェット捺染用インク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点7-3> インクジェット捺染用インク組成物が、本件特許発明4では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー72以外は、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー359であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲7発明では昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー72であり、ブラックインク組成物でない点。 (イ)相違点についての検討 <相違点7-3>は前記ア(ア)の<相違点7-2>と同じであり、前記(イ)で検討したとおり、甲7発明の昇華転写用のインクジェットインクの昇華性染料としてC.I.ディスパースブルー72に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明4の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明4の効果の程度が、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明4は、甲7に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲7発明との<相違点7-2>又は<相違点7-3>と同じ相違点を有するものであるから、甲7に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲~甲6、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (7)甲8発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲8発明との対比 本件特許発明1と甲8発明を対比する。 甲8発明の「昇華性分散染料としてC.I.Disperse Blue 359」は本件特許発明1の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が」及び「C.I.ディスパースブルー359」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲8発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有し、 前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359であるインクジェット捺染用ブインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点8-1> 分散剤が、本件特許発明1では、分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gであるのに対し、甲8発明ではそのような特定がない点。 <相違点8-2> インクジェット捺染用インク組成物が、本件特許発明1では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359以外は、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲8発明では昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359であり、ブラックインク組成物でない点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点8-2>について検討する。 甲8の1には甲8発明の捺染用インクジェットインク1の昇華性染料として多数の選択肢の中にC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72が記載されており(摘記8c参照)、甲1の1には複数の分散染料を配合することによりブラックを構成することが記載されているが(摘記1a参照)、いかなる分散染料を何種類配合することまでは記載されていないところ、比較例1としてRed 60、Yellow 54、Blue 359及びBlue 72が配合され、ブラックを構成すると思われるインク組成物が記載されているが(摘記1e参照)、そのインク組成物は甲1の1において吐出性が劣るとされる比較例であるから、そのような比較例に基づいて、甲8発明の捺染用インクジェットインク1の昇華性染料としてC.I.ディスパースブルー359に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲3~甲7、甲8の2~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15にも、甲8発明の捺染用インクジェットインク1の昇華性染料としてC.I.ディスパースブルー359に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、<相違点8-1>について検討するまでもなく、甲8の1に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の2~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明4 (ア)甲8発明との対比 本件特許発明4と甲8発明を対比する。 甲8発明の「昇華性分散染料としてC.I.Disperse Blue 359」は本件特許発明4の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が」及び「C.I.ディスパースブルー359」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲8発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有し、 前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359であるインクジェット捺染用ブインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点8-3> 分散剤が、本件特許発明4では、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩であるのに対し、甲8発明ではそのような特定がない点。 <相違点8-4> インクジェット捺染用インク組成物が、本件特許発明4では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359以外は、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲8発明では昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359であり、ブラックインク組成物でない点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点8-4>について検討する。 <相違点8-3>は前記ア(ア)の<相違点8-2>と同じであり、前記ア(イ)で検討したとおり、甲8発明の捺染用インクジェットインク1の昇華性染料としてC.I.ディスパースブルー359に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明4の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明4の効果の程度が、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明4は、<相違点8-3>について検討するまでもなく、甲8の1に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の2~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲3発明との<相違点8-2>又は<相違点8-4>と同じ相違点を有するものであるから、甲8の1に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の2~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (8)甲9発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲9発明との対比 本件特許発明1と甲9発明を対比する。 甲9発明の「C.I.Disperse Red 60」は、昇華性を有する染料であるから(摘記9a参照)、本件特許発明1の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が」及び「C.I.ディスパースレッド60」に相当する。 甲9発明の「ジョンクリル67」は、本件特許発明1の「分散剤」及び「前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである」に相当する(摘記9c参照)。 甲9発明の「ジグリセリンS(グリセリン含有量0.5%)」及び「ポリオール化合物としてプロピレングリコール」は、いずれも、本件特許発明1の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲9の「株式会社ミマキエンジニアリング製ワイドフォーマットインクジェットプリンタ、JV2-130にてロングランでの吐出安定性を評価したロングラン吐出性試験で作成したベタ印刷物のインク付与面を所定の大きさに裁断し(35cm×40cm)、同サイズのポリエステル布(ポンジ)と重ね合わせた後、太陽精機株式会社製トランスファープレス機TP-600A2を用いて190℃×60秒の条件にて、ポリエステル布に対して昇華転写染色を行う、水性インク」は、本件特許発明1の「インクジェット捺染用」及び「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲9発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60であり、前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである、インクジェット捺染用ブラックインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点9-1> インクジェット捺染用インク組成物が、本件特許発明1では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60以外は、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72及びC.I.ディスパースブルー359であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲9発明では昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60であり、ブラックインク組成物でない点。 (イ)相違点についての検討 甲9の1には甲9発明の水性インクの昇華性を有する染料として多数の選択肢の中にC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72及びC.I.ディスパースブルー359が記載されており(摘記9a参照)、甲1の1には複数の分散染料を配合することによりブラックを構成することが記載されているが(摘記1a参照)、いかなる分散染料を何種類配合することまでは記載されていないところ、比較例1としてRed 60、Yellow 54、Blue 359及びBlue 72が配合され、ブラックを構成すると思われるインク組成物が記載されているが(摘記1e参照)、そのインク組成物は甲1の1において吐出性が劣るとされる比較例であるから、そのような比較例に基づいて、甲9発明の水性インクジェットの昇華性を有する染料としてC.I.ディスパースレッド60に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72及びC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の2及び甲10~甲15にも、甲9発明の水性インクジェットの昇華性を有する染料としてC.I.ディスパースレッド60に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72及びC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲9の1に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明4 (ア)甲9発明との対比 本件特許発明4と甲9発明を対比する。 甲9発明の「C.I.Disperse Red 60」は、昇華性を有する染料であるから(摘記9a参照)、本件特許発明4の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が」及び「C.I.ディスパースレッド60」に相当する。 甲9発明の「ジョンクリル67」は、本件特許発明4の「分散剤」に相当する(摘記9c参照)。 甲9発明の「ジグリセリンS(グリセリン含有量0.5%)」及び「ポリオール化合物としてプロピレングリコール」は、いずれも、本件特許発明4の「水溶性有機溶剤」に相当する。 甲9の「株式会社ミマキエンジニアリング製ワイドフォーマットインクジェットプリンタ、JV2-130にてロングランでの吐出安定性を評価したロングラン吐出性試験で作成したベタ印刷物のインク付与面を所定の大きさに裁断し(35cm×40cm)、同サイズのポリエステル布(ポンジ)と重ね合わせた後、太陽精機株式会社製トランスファープレス機TP-600A2を用いて190℃×60秒の条件にて、ポリエステル布に対して昇華転写染色を行う、水性インク」は、本件特許発明4の「インクジェット捺染用」及び「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲9発明は、「水溶性有機溶剤、分散剤、及び昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60である、インクジェット捺染用ブラックインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点9-2> 分散剤が、本件特許発明4では、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩であるのに対し、甲8発明ではそのような特定がない点。 <相違点9-3> インクジェット捺染用インク組成物が、本件特許発明4では、少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60以外は、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72及びC.I.ディスパースブルー359であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲9発明では昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60であり、ブラックインク組成物でない点。 (イ)相違点についての検討 事案に鑑み、まず、<相違点9-3>について検討する。 <相違点9-3>は、前記<相違点9-1>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、甲9発明の水性インクジェットの昇華性を有する染料としてC.I.ディスパースレッド60に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72及びC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明4の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明4の効果の程度が、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明4は、<相違点9-1>について検討するまでもなく、甲9の1に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲9発明との<相違点9-2>又は<相違点9-3>と同じ相違点を有するものであるから、甲9の1に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の2及び甲10~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (9)甲10発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲10発明との対比 本件特許発明1と甲10発明を対比する。 甲10発明の「カヤセットレッドB(日本化薬株式会社製、C.I.ディスパースレッド60)」は、昇華転写適性のある染料であるから(摘記10c参照)、本件特許発明1の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が」及び「C.I.ディスパースレッド60」に相当する。 甲10発明の「密度が1.09g/cm3のトレーシングペーパー(コクヨ株式会社製、トレーシングペーパー A4 厚口 75g/m2)に印刷を行い、トナーを付着させて得た中間記録媒体のトナー付着面と、100%ポリエステル繊維で構成されているサテン(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することによる昇華転写染色方法により染色された該サテンの染色物を得るマゼンタトナー」は、本件特許発明1の「捺染用」及び「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲10発明は、「昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60である捺染用インク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点10-1> 捺染用インク組成物が、本件特許発明1では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有し、前記分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである、インクジェットインク組成物であるのに対し、甲10発明では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有せず、インクジェットインク組成物でない点。 <相違点10-2> 捺染用インク組成物が、本件特許発明1では少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60以外は、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72及びC.I.ディスパースブルー359であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲10発明では昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60であるマゼンタトナーである点。 (イ)相違点についての検討 <相違点10-1>について 甲10には甲10発明のマゼンタトナーは、インクジェット方式の昇華転写染色方法の問題を避けるために電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるものであるから(摘記10a、10b参照)、甲10発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるマゼンタトナーをインクジェット方式の昇華転写染色方法に用いるためにインクジェットインク組成物とすることには阻害要因があり、甲1の1にインクジェットインク組成物について記載があるとしても(摘記1e参照)、甲10発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるマゼンタトナーをインクジェットインク組成物とする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲11~甲15にも、甲10発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるマゼンタトナーをインクジェットインク組成物とする動機付けとなる記載はない。 <相違点10-2>について 甲10には甲10発明のトナーに用いる染料として多数の選択肢の中にC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72及びC.I.ディスパースブルー359が記載されており(摘記10c参照)、甲1の1には複数の分散染料を配合することによりブラックを構成することが記載されているが(摘記1a参照)、いかなる分散染料を何種類配合することまでは記載されていないところ、比較例1としてRed 60、Yellow 54、Blue 359及びBlue 72が配合され、ブラックを構成すると思われるインク組成物が記載されているが(摘記1e参照)、そのインク組成物は甲1の1において吐出性が劣るとされる比較例であるから、そのような比較例に基づいて、甲10発明のトナーに用いる染料としてC.I.ディスパースレッド60に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72及びC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲11~甲15にも、甲10発明のトナーに用いる染料としてC.I.ディスパースレッド60に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72及びC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲10に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲11~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明4 (ア)甲10発明との対比 本件特許発明4と甲10発明を対比する。 甲10発明の「カヤセットレッドB(日本化薬株式会社製、C.I.ディスパースレッド60)」は、昇華転写適性のある染料であるから(摘記10c参照)、本件特許発明4の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が」及び「C.I.ディスパースレッド60」に相当する。 甲10発明の「密度が1.09g/cm3のトレーシングペーパー(コクヨ株式会社製、トレーシングペーパー A4 厚口 75g/m2)に印刷を行い、トナーを付着させて得た中間記録媒体のトナー付着面と、100%ポリエステル繊維で構成されているサテン(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することによる昇華転写染色方法により染色された該サテンの染色物を得るマゼンタトナー」は、本件特許発明4の「捺染用」及び「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲10発明は、「昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60である捺染用インク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点10-3> 捺染用インク組成物が、本件特許発明4では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有し、前記分散剤が、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩であるのに対し、甲10発明では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有せず、インクジェットインク組成物でない点。 <相違点10-4> 捺染用インク組成物が、本件特許発明4では少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60以外は、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72及びC.I.ディスパースブルー359であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲10発明では昇華性染料が、C.I.ディスパースレッド60であるマゼンタトナーである点。 (イ)相違点についての検討 <相違点10-3>について 前記<相違点10-1>で検討したのと同じ理由により、甲10発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるマゼンタトナーをインクジェットインク組成物とする動機付けがあるとはいえない。 <相違点10-4>について <相違点10-4>は、前記<相違点10-2>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、甲10発明のトナーに用いる染料としてC.I.ディスパースレッド60に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72及びC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明4の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明4の効果の程度が、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明4は、甲10に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲11~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲10発明との<相違点10-1>及び<相違点10-2>、又は、<相違点10-3>及び<相違点10-4>と同じ相違点を有するものであるから、甲10に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2及び甲11~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (10)甲11発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲11発明との対比 本件特許発明1と甲11発明を対比する。 甲11発明の「C.I.ディスパースブルー359」は、昇華転写適性のある染料であるから(摘記11c参照)、本件特許発明1の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が」及び「C.I.ディスパースブルー359」に相当する。 甲11発明の「乾式非磁性1成分現像方式印刷機(桂川電気株式会社製:KIPc7800)に充填し、中間記録媒体としてA0判のボンド紙を用い、解像度:600pixel/inch、定着温度:135℃、現像バイアス:200Vの条件で印刷を行い得た、中間記録媒体(ボンド紙)トナー付着面と、被染色物として100%ポリエステル繊維で構成されているダブルピケ(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製:トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することにより、昇華転写染色方法により染色された該ダブルピケの染色物を得る、シアントナー」は、本件特許発明1の「捺染用」及び「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲11発明は、「昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359である捺染用インク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点11-1> 捺染用インク組成物が、本件特許発明1では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有する、インクジェットインク組成物であるのに対し、甲11発明では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有せず、インクジェットインク組成物でない点。 <相違点11-2> 捺染用インク組成物が、本件特許発明1では少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359以外は、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲11発明では、昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359であるマゼンタトナーである点。 (イ)相違点についての検討 <相違点11-1>について 甲11には甲11発明のシアントナーは、インクジェット方式の昇華転写染色方法の問題を避けるために電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるものであるから(摘記11a、11b参照)、甲11発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるシアントナーをインクジェット方式の昇華転写染色方法に用いるためにインクジェットインク組成物とすることには阻害要因があり、甲1の1にインクジェットインク組成物について記載があるとしても(摘記1e参照)、甲11発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるマゼンタトナーをインクジェットインク組成物とする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10及び甲12~甲15にも、甲11発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるマゼンタトナーをインクジェットインク組成物とする動機付けとなる記載はない。 <相違点11-2>について 甲11には甲11発明のトナーに用いる染料として多数の選択肢の中にC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72が記載されており(摘記11c参照)、甲1の1には複数の分散染料を配合することによりブラックを構成することが記載されているが(摘記1a参照)、いかなる分散染料を何種類配合することまでは記載されていないところ、比較例1としてRed 60、Yellow 54、Blue 359及びBlue 72が配合され、ブラックを構成すると思われるインク組成物が記載されているが(摘記1e参照)、そのインク組成物は甲1の1において比較例であるから、そのような比較例に基づいて、甲11発明のトナーに用いる染料としてC.I.ディスパースブルー359に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10及び甲12~甲15にも、甲11発明のトナーに用いる染料としてC.I.ディスパースブルー359に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲11に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10及び甲12~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明4 (ア)甲11発明との対比 本件特許発明4と甲11発明を対比する。 甲11発明の「C.I.ディスパースブルー359」は、昇華転写適性のある染料であるから(摘記11c参照)、本件特許発明4の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が」及び「C.I.ディスパースブルー359」に相当する。 甲11発明の「乾式非磁性1成分現像方式印刷機(桂川電気株式会社製:KIPc7800)に充填し、中間記録媒体としてA0判のボンド紙を用い、解像度:600pixel/inch、定着温度:135℃、現像バイアス:200Vの条件で印刷を行い得た、中間記録媒体(ボンド紙)トナー付着面と、被染色物として100%ポリエステル繊維で構成されているダブルピケ(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製:トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することにより、昇華転写染色方法により染色された該ダブルピケの染色物を得る、シアントナー」は、本件特許発明4の「捺染用」及び「インク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲11発明は、「昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359である捺染用インク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点11-3> 捺染用インク組成物が、本件特許発明4では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有する、インクジェットインク組成物であるのに対し、甲11発明では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有せず、インクジェットインク組成物でない点。 <相違点11-4> 捺染用インク組成物が、本件特許発明4では少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359以外は、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72であるインクジェット捺染用ブラックインク組成物であるのに対し、甲11発明では、昇華性染料が、C.I.ディスパースブルー359であるマゼンタトナーである点。 (イ)相違点についての検討 <相違点11-3>について <相違点11-3>は、前記<相違点11-1>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、甲11発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるマゼンタトナーをインクジェットインク組成物とする動機付けがあるとはいえない。 <相違点11-4>について <相違点11-4>は、前記<相違点11-2>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、甲2発明の水熱昇華性インクジェットインクにおいて、甲11発明のトナーに用いる染料としてC.I.ディスパースブルー359に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、及びC.I.ディスパースブルー72を採用し、染料を少なくとも4種類として、ブラックインクとする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明4の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明4の効果の程度が、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明4は、甲11に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10及び甲12~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲11発明との<相違点11-1>及び<相違点11-2>、又は、<相違点11-3>及び<相違点11-4>と同じ相違点を有するものであるから、甲11に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10及び甲12~甲15に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (11)甲12発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲12発明との対比 本件特許発明1と甲12発明を対比する。 甲12発明の「C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物」は、昇華転写適性のある染料であるから(摘記12c参照)、本件特許発明1の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72」に相当する。 甲12発明の「乾式非磁性1成分現像方式印刷機(桂川電気株式会社製:KIPc7800)に充填し、中間記録媒体としてA0判のボンド紙を用いて、印字率5%、解像度:600pixel/inch、定着温度:135℃、現像バイアス:200Vの条件で印刷された中間記録媒体(ボンド紙)のトナー付着面と、被染色物として100%ポリエステル繊維で構成されているダブルピケ(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製:トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することにより、昇華転写染色方法により染色された該ダブルピケの染色物を得る、ブラックトナー1(B-1)」は、本件特許発明1の「捺染用」及び「ブラックインク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲12発明は、「昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72である捺染用ブラックインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点12-1> 捺染用インク組成物が、本件特許発明1では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有する、インクジェットインク組成物であるのに対し、甲12発明では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有せず、インクジェットインク組成物でない点。 <相違点12-2> 昇華性染料が、本件特許発明1では少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72以外は、C.I.ディスパースブルー359であるのに対し、甲12発明では、昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物である点。 (イ)相違点についての検討 <相違点12-1>について 甲12には甲12発明のブラックトナー1(B-1)は、インクジェット方式の昇華転写染色方法の問題を避けるために電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるものであるから(摘記12a、12b参照)、甲12発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるブラックトナー1(B-1)をインクジェット方式の昇華転写染色方法に用いるためにインクジェットインク組成物とすることには阻害要因があり、甲1の1にインクジェットインク組成物について記載があるとしても(摘記1e参照)、甲12発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるマゼンタトナーをインクジェットインク組成物とする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10、甲11、甲13及び甲14にも、甲12発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるマゼンタトナーをインクジェットインク組成物とする動機付けとなる記載はない。 <相違点12-2>について 甲12には甲12発明のトナーに用いる染料として多数のブルー染料の選択肢の中にC.I.ディスパースブルー359が記載されているが(摘記12c参照)、染料がC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物であり、すでにブラックトナーとなっている甲12発明のブラックトナー1に用いる染料としてC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類とする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10、甲11、甲13及び甲14にも、甲12発明のブラックトナー1に用いる染料としてC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類とする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲12に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10、甲11、甲13及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明4 (ア)甲12発明との対比 本件特許発明4と甲12発明を対比する。 甲12発明の「C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物」は、昇華転写適性のある染料であるから(摘記12c参照)、本件特許発明4の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72」に相当する。 甲12発明の「乾式非磁性1成分現像方式印刷機(桂川電気株式会社製:KIPc7800)に充填し、中間記録媒体としてA0判のボンド紙を用いて、印字率5%、解像度:600pixel/inch、定着温度:135℃、現像バイアス:200Vの条件で印刷された中間記録媒体(ボンド紙)のトナー付着面と、被染色物として100%ポリエステル繊維で構成されているダブルピケ(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製:トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することにより、昇華転写染色方法により染色された該ダブルピケの染色物を得る、ブラックトナー1(B-1)」は、本件特許発明4の「捺染用」及び「ブラックインク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲12発明は、「昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72である捺染用ブラックインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点12-3> 捺染用インク組成物が、本件特許発明4では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有する、インクジェットインク組成物であるのに対し、甲12発明では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有せず、インクジェットインク組成物でない点。 <相違点12-4> 昇華性染料が、本件特許発明4では少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72以外は、C.I.ディスパースブルー359であるのに対し、甲12発明では、昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物である点。 (イ)相違点についての検討 <相違点12-3>について <相違点12-3>は、前記<相違点12-1>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、甲12発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるマゼンタトナーをインクジェットインク組成物とする動機付けがあるとはいえない。 <相違点12-4>について <相違点12-4>は、前記<相違点12-2>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、すでにブラックトナーとなっている甲12発明のブラックトナー1に用いる染料としてC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類とする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明4の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明4の効果の程度が、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明4は、甲12に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10、甲11、甲13及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲12発明との<相違点12-1>及び<相違点21-2>、又は、<相違点12-3>及び<相違点12-4>と同じ相違点を有するものであるから、甲12に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10、甲11、甲13及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (12)甲13発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲13発明との対比 本件特許発明1と甲13発明を対比する。 甲13発明の「日本化薬株式会社製のC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72(12部)、C.I.ディスパースレッド60(6部)の混合物」は、昇華転写適性のある染料であるから(摘記13b参照)、本件特許発明1の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72」に相当する。 甲13発明の「乾式非磁性1成分現像方式印刷機(桂川電気株式会社製:KIPc7800)に充填し、中間記録媒体としてA0判のボンド紙を用いて、解像度:600pixel/inch、定着温度:135℃、現像バイアス:200Vの条件でベタ画像を印刷し、得た各中間記録媒体のトナー付着面と、被染色物として100%ポリエステル繊維で構成されているダブルピケ(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製:トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することにより、昇華転写染色方法により染色された該ダブルピケの染色物を得る、ブラックトナー「T4」」は、本件特許発明1の「捺染用」及び「ブラックインク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲13発明は、「昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72である捺染用ブラックインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点13-1> 捺染用インク組成物が、本件特許発明1では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有する、インクジェットインク組成物であるのに対し、甲13発明では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有せず、インクジェットインク組成物でない点。 <相違点13-2> 昇華性染料が、本件特許発明1では少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72以外は、C.I.ディスパースブルー359であるのに対し、甲13発明では、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物である点。 (イ)相違点についての検討 <相違点13-1>について 甲13には、甲13発明のブラックトナー「T4」は、電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるものであることが記載されており(摘記13a参照)、甲13発明のブラックトナー「T4」に、水溶性有機溶剤、分散剤を加え、インクジェット方式の昇華転写染色方法に用いることは、記載も示唆もされていないし、さらに、甲1の1にインクジェットインク組成物について記載があるとしても(摘記1e参照)、そのような記載及び技術常識から、甲13発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるブラックトナー1「T4」に、水溶性有機溶剤、分散剤を加え、さらに、インクジェット方式の昇華転写染色方法に用いるためにインクジェットインク組成物とする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10、甲11、甲12及び甲14にも、甲13発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるブラックトナー1「T4」に、水溶性有機溶剤、分散剤を加え、さらに、インクジェット方式の昇華転写染色方法に用いるためにインクジェットインク組成物とする動機付けとなる記載はない。 <相違点13-2>について 甲13には甲13発明のトナーに用いる染料として多数のブルー染料の選択肢の中にC.I.ディスパースブルー359が記載されているが(摘記13b参照)、染料がC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物であり、すでにブラックトナーとなっている甲13発明のブラックトナー「T4」に用いる染料としてC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類とする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10~甲12及び甲14にも、甲13発明のブラックトナー「T4」に用いる染料としてC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類とする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲13に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10~甲12及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明4 (ア)甲13発明との対比 本件特許発明4と甲13発明を対比する。 甲13発明の「日本化薬株式会社製のC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72(12部)、C.I.ディスパースレッド60(6部)の混合物」は、昇華転写適性のある染料であるから(摘記13b参照)、本件特許発明4の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72」に相当する。 甲13発明の「乾式非磁性1成分現像方式印刷機(桂川電気株式会社製:KIPc7800)に充填し、中間記録媒体としてA0判のボンド紙を用いて、解像度:600pixel/inch、定着温度:135℃、現像バイアス:200Vの条件でベタ画像を印刷し、得た各中間記録媒体のトナー付着面と、被染色物として100%ポリエステル繊維で構成されているダブルピケ(目付90g/m2)とを重ね合わせた後、熱プレス機(太陽精機株式会社製:トランスファープレス機TP-600A2)を用いて195℃×60秒の条件にて熱処理することにより、昇華転写染色方法により染色された該ダブルピケの染色物を得る、ブラックトナー「T4」」は、本件特許発明4の「捺染用」及び「ブラックインク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲13発明は、「昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72である捺染用ブラックインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点13-3> 捺染用インク組成物が、本件特許発明4では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有する、インクジェットインク組成物であるのに対し、甲13発明では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有せず、インクジェットインク組成物でない点。 <相違点13-4> 昇華性染料が、本件特許発明4では少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースブルー72以外は、C.I.ディスパースブルー359であるのに対し、甲13発明では、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物である点。 (イ)相違点についての検討 <相違点13-3>について <相違点13-3>は、前記<相違点13-4>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、甲13発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるブラックトナー1「T4」に、水溶性有機溶剤、分散剤を加え、さらに、インクジェット方式の昇華転写染色方法に用いるためにインクジェットインク組成物とする動機付けがあるとはいえない。 <相違点13-4>について <相違点13-4>は、前記<相違点13-2>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、すでにブラックトナーとなっている甲13発明のブラックトナー「T4」に用いる染料としてC.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースブルー72、C.I.ディスパースレッド60の混合物に加えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類とする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明4の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明4の効果の程度が、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明4は、甲13に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10~甲12及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲13発明との<相違点13-1>及び<相違点13-2>、又は、<相違点13-3>及び<相違点13-4>と同じ相違点を有するものであるから、甲13に記載された発明、並びに、甲1の1、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10~甲12及び甲14に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 (13)甲14発明を主たる引用発明とする場合 ア 本件特許発明1 (ア)甲14発明との対比 本件特許発明1と甲14発明を対比する。 甲14発明の「昇華性分散染料CIディスパースイエロー54(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースレッド60(紀和化学社製)」は、本件特許発明1の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60」に相当する。 甲14発明の「桂川電機社製KIPc7800プリンタを用いた。桂川電機KIPc7800プリンタの現像器に装着し、転写紙として、三菱製紙グループ北上ハイテクペーパー社製写真用(広葉樹晒クラフト)原紙(坪量100g/m2、水分7%、密度1.030、BEKK平滑度310sec、ガーレー透気度350sec、表面抵抗6.6E+09Ω/□)に転写し、転写紙のトナー定着面を、各ポリエステル系布帛と重ね、アサヒ繊維機械社製の昇華転写プレス機MP-1000のプレス板間に挟み込み、200℃及び0.51kgf/cm2で60sec加熱処理し、室温まで冷ましたのち、ポリエステル布帛から昇華転写用転写紙を剥離することにより昇華転写染色されたポリエステル布帛の染色物を得る、昇華転写染色用ブラックトナー」は、本件特許発明1の「捺染用」及び「ブラックインク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲14発明は、「昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60である捺染用ブラックインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点14-1> 捺染用インク組成物が、本件特許発明1では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有する、インクジェットインク組成物であるのに対し、甲14発明では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有せず、インクジェットインク組成物でない点。 <相違点14-2> 昇華性染料が、本件特許発明1では少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60以外は、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であるのに対し、甲14発明では、昇華性分散染料CIディスパースイエロー54(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースレッド60(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースブルー360(紀和化学社製)である点。 (イ)相違点についての検討 <相違点14-1>について 甲14には、甲14発明のブラックトナーは、電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるものであることが記載されており(摘記14a参照)、甲14発明のブラックトナーに、水溶性有機溶剤、分散剤を加え、インクジェット方式の昇華転写染色方法に用いることは、記載も示唆もされていないし、さらに、甲1の1にインクジェットインク組成物について記載があるとしても(摘記1e参照)、そのような記載及び技術常識から、甲14発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるブラックトナー1に、水溶性有機溶剤、分散剤を加え、さらに、インクジェット方式の昇華転写染色方法に用いるためにインクジェットインク組成物とする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10~甲13にも、甲14発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるブラックトナー1に、水溶性有機溶剤、分散剤を加え、さらに、インクジェット方式の昇華転写染色方法に用いるためにインクジェットインク組成物とする動機付けとなる記載はない。 <相違点14-2>について 甲14には甲14発明のトナーに用いる染料として多数のブルー染料の選択肢の中にC.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359が記載されているが(摘記14b参照)、染料が昇華性分散染料CIディスパースイエロー54(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースレッド60(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースブルー360(紀和化学社製)であり、すでにブラックトナーとなっている甲14発明のブラックトナーに用いる染料として昇華性分散染料CIディスパースイエロー54(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースレッド60(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースブルー360(紀和化学社製)に加えて、あるいは、昇華性分散染料CIディスパースブルー360(紀和化学社製)に代えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類とする動機付けがあるとはいえない。 また、甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10~甲13にも、甲14発明のブラックトナーに用いる染料として昇華性分散染料CIディスパースイエロー54(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースレッド60(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースブルー360(紀和化学社製)に加えて、あるいは、昇華性分散染料CIディスパースブルー360(紀和化学社製)に代えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類とする動機付けとなる記載はない。 (ウ)本件特許発明1の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明1の効果の程度が、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明1は、甲14に記載された発明、並びに、甲1の1甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10~甲13に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 イ 本件特許発明4 (ア)甲14発明との対比 本件特許発明4と甲14発明を対比する。 甲14発明の「昇華性分散染料CIディスパースイエロー54(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースレッド60(紀和化学社製)」は、本件特許発明4の「昇華性染料」、「前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60」に相当する。 甲14発明の「桂川電機社製KIPc7800プリンタを用いた。桂川電機KIPc7800プリンタの現像器に装着し、転写紙として、三菱製紙グループ北上ハイテクペーパー社製写真用(広葉樹晒クラフト)原紙(坪量100g/m2、水分7%、密度1.030、BEKK平滑度310sec、ガーレー透気度350sec、表面抵抗6.6E+09Ω/□)に転写し、転写紙のトナー定着面を、各ポリエステル系布帛と重ね、アサヒ繊維機械社製の昇華転写プレス機MP-1000のプレス板間に挟み込み、200℃及び0.51kgf/cm2で60sec加熱処理し、室温まで冷ましたのち、ポリエステル布帛から昇華転写用転写紙を剥離することにより昇華転写染色されたポリエステル布帛の染色物を得る、昇華転写染色用ブラックトナー」は、本件特許発明4の「捺染用」及び「ブラックインク組成物」に相当する。 そうすると、本件特許発明4と甲14発明は、「昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60である捺染用ブラックインク組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点14-3> 捺染用インク組成物が、本件特許発明4では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有する、インクジェットインク組成物であるのに対し、甲14発明では、水溶性有機溶剤、分散剤を含有せず、インクジェットインク組成物でない点。 <相違点14-4> 昇華性染料が、本件特許発明4では少なくとも4種類の昇華性染料を含有し、前記昇華性染料が、C.I.ディスパースイエロー54、C.I.ディスパースレッド60以外は、C.I.ディスパースブルー72、及びC.I.ディスパースブルー359であるのに対し、甲14発明では、昇華性分散染料CIディスパースイエロー54(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースレッド60(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースブルー360(紀和化学社製)である点。 (イ)相違点についての検討 <相違点14-3>について <相違点14-3>は、前記<相違点14-1>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、甲14発明の電子写真方式の昇華転写染色方法に用いるブラックトナー1に、水溶性有機溶剤、分散剤を加え、さらに、インクジェット方式の昇華転写染色方法に用いるためにインクジェットインク組成物とする動機付けがあるとはいえない。 <相違点14-4>について <相違点14-4>は、前記<相違点14-2>と同じであり、前記ア(イ)で検討したのと同じ理由により、すでにブラックトナーとなっている甲14発明のブラックトナーに用いる染料として昇華性分散染料CIディスパースイエロー54(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースレッド60(紀和化学社製)、昇華性分散染料CIディスパースブルー360(紀和化学社製)に加えて、あるいは、昇華性分散染料CIディスパースブルー360(紀和化学社製)に代えて、その多数の選択肢の中からC.I.ディスパースブルー359を採用し、染料を少なくとも4種類とする動機付けがあるとはいえない。 (ウ)本件特許発明4の効果について 前記(1)ア(ウ)で検討したのと同じ理由により、本件特許発明4の効果の程度が、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものであるといえる。 (エ)小括 したがって、本件特許発明4は、甲14に記載された発明、並びに、甲1の1甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10~甲13に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 ウ 本件特許発明5、6、8 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明1、4を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1、4と甲14発明との<相違点14-1>及び<相違点14-2>、又は、<相違点14-3>及び<相違点14-4>と同じ相違点を有するものであるから、甲14に記載された発明、並びに、甲1の1甲1の2、甲2~甲7、甲8の1~甲8の5、甲9の1、甲9の2、甲10~甲13に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。 第9 前記第6の理由3(サポート要件)について 本件特許発明の課題は、本件特許発明細書の【0012】に記載からみて、インクジェット捺染を用いた昇華転写染色において、演色性の影響による色相の変化が少ない染色物を作製でき、坪量の小さい転写紙又はインク受容層の少ない転写紙を用いた場合でも昇華転写効率が高く、高濃度の染色物を得ることができ、且つ、耐光性に優れる高品位な黒色の染色物を得ることが可能なインクジェット捺染用ブラックインク組成物、そのインクジェット捺染用ブラックインク組成物を備えるインクジェット捺染用インクセット、及びそれらを用いる疎水性繊維の捺染方法を提供することにあると認める。 ここで、本件特許発明細書の実施例及び【0024】の記載からみて、スチレン-(メタ)アクリル共重合体であるJoncryl 678(質量平均分子量:8500、酸価:215mgKOH/g)を含むものが前記課題を解決できることが理解できるから、分散剤がスチレン-(メタ)アクリル共重合体であり、該共重合体の質量平均分子量が5000~17000、酸価が100~250mgKOH/gである本件特許発明1は前記課題を解決できるといえる。 また、本件特許発明4において特定される昇華性染料を分散した、該昇華性染料を含有するインクジェット捺染用ブラックインク組成物であれば、前記課題を解決できるといえるところ、本件特許発明4において特定される、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩も分散剤であり、甲6、甲7及び甲8の1(摘記6c、7c、8d参照)に記載されるように、それらの分散剤は昇華性染料を含有するインクジェット捺染用ブラックインク組成物に用いられるものである以上、前記スチレン-(メタ)アクリル共重合体であるJoncryl 678と多少分散能が異なるとしても、同様に該昇華性染料を分散できるといえるから、本件特許発明4は前記課題を解決できるといえるし、申立人は、本件特許発明4において分散剤として特定されるクレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩、及びメチルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物又はその塩を含有するものを分散剤として用いた場合に、前記課題を解決できないことを実証しているわけでもない。 そうすると、本件特許発明4は前記課題を解決できるといえる。 第10 むすび 以上のとおりであるから、令和6年6月11日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、4~6、8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、4~6、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項2、3、9は、本件訂正により削除され、これらの請求項に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700263

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