特許訂正審判
2024-390088
発泡性飲料用缶、及びその製造方法
- 審判番号
- 2024-390088
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2021-186547
- 登録番号
- 7161596
- 請求日
- 2024年08月09日
- 審決日
- 2024年12月24日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】アサヒビール 株式会社
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】須田 洋之
- 【請求人代理人】山崎 一夫
- 【請求人代理人】服部 博信
- 【請求人】artience 株式会社
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】須田 洋之
- 【請求人代理人】山崎 一夫
- 【請求人代理人】服部 博信
- 【請求人】トーヨーケム 株式会社
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】須田 洋之
- 【請求人代理人】山崎 一夫
- 【請求人代理人】服部 博信
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 武市 匡紘
- 審判官 金丸 治之
- 分類
- P141 .841-Y (B65D) / P141 .853-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第5項、特許法第126条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7161596号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7161596号の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第7161596号(以下「本件特許」という。)は、2021年(令和3年)11月16日(優先権主張 令和2年12月28日、日本)に出願され、令和4年10月18日に特許権の設定登録がされた。その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和6年 8月 9日 :訂正審判の請求(以下「本件訂正審判」という
。)
令和6年10月24日付け:訂正拒絶理由通知
令和6年11月27日 :意見書、手続補正書(審判請求書、訂正明細書
)の提出(以下、本手続補正書により補正され
た訂正明細書を「本件訂正」という。)
第2 審判請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第7161596号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。
第3 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
(1)訂正事項1
明細書の段落【0037】において、「結果を下記表3に示す。尚、第1の凹部としてカウントされた構造は、最大でも直径が8.8μmであった。」という記載を、
「結果を下記表3に示す。尚、第1の凹部としてカウントされた構造は、最大でも直径が8.8μmであった。
[図:0001422331000001.jpg]
」という記載に訂正する(下線は訂正箇所を示す。)。
2 訂正の目的
(1)訂正事項1
本件訂正は、設定登録時の明細書の段落【0037】に、「結果を下記表3に示す。」と記載されているにも関わらず、設定登録時の明細書に表3が記載されていないという、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載等、明細書、特許請求の範囲又は図面に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
3 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
(1)訂正事項1
本件訂正は、明細書の段落【0037】に【表3】を追加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正により新規事項が追加されるか否かについて
(1)訂正事項1
請求人は審判請求書において、「訂正事項1の【表3】の内容は、出願当初の明細書の【表3】の内容と同じである。したがって、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合する。」と主張している。
しかしながら、新規事項を追加しているか否かの判断の基準となる明細書等は、設定登録された時点の明細書、特許請求の範囲又は図面であり、出願時の明細書から記載の一部を削除した明細書で特許されているときは、その削除部分を復活させる訂正をすることはできない。したがって、請求人が主張する、上記「訂正事項1の【表3】の内容は、出願当初の明細書の【表3】の内容と同じである。」ことのみを理由に、新規事項を追加するものではないとすることはできない(審判便覧38-03 7.の『訂正において、新規事項を追加しているか否かの判断の基準となる明細書等は、設定登録された時点の明細書、特許請求の範囲又は図面であるので、例えば、出願時の明細書から記載の一部を削除した明細書で特許されているときは、その削除部分を復活させる訂正をすることはできない。』の記載を参照。)。
そこで、本件訂正において追加される事項が、設定登録された時点の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項(以下「設定登録時の明細書等」という。)の範囲内か否かについて以下、検討を行う。
ア 設定登録時の明細書等の記載事項
本件特許の設定登録時の明細書等には以下の記載がある。なお、下線は当審で付与し、・・・は省略を示す。
(ア)「【請求項2】
前記第1の凹部の個数が1mm2あたり256~768個であり、
前記第2の凹部の個数が1mm2あたり6000~9552個である、
請求項1に記載の発泡性飲料缶。」
(イ)「【0028】
(対照区)
下面及び胴部を有するアルミニウム製の容器(350ml容)を準備した。また、平均粒径が0.3μmのカルナバワックスを塗料中の不揮発成分(ワックスを除く)100質量部に対して1質量部含む水性エポキシアクリル系塗料を準備した。準備した塗料を、容器の胴部内面の全面にスプレー塗装により塗装し、続けて200℃で2分間加熱し、対照区に係る飲料用缶を得た。胴部樹脂層の厚みは、平均5μmであった。
【0029】
(試験区1)
ワックスとして、平均粒径6μmのワックスを、塗料中の不揮発成分(ワックスを除く)100質量部に対して7.5質量部の量で用いた。その他の点は、対照区と同様にして、実施例1に係る飲料用缶を得た。
【0030】
(試験区2)
ワックスとして、平均粒径6μmのワックス(第1のワックス)と、平均粒径4μmのワックス(第2のワックス)とを用いた。第1のワックスの量は、塗料中の不揮発成分(ワックスを除く)100質量部に対して、7.5質量部とした。第2のワックスの量は、塗料中の不揮発成分(ワックスを除く)100質量部に対して、7.5質量部とした。
その他の点は、対照区と同様にして、試験区2に係る飲料用缶を得た。」
(ウ)「【0035】
(表面状態の計測)
得られた各飲料缶について、胴部内面の表面状態を観測した。具体的には、白色干渉計搭載レーザ顕微鏡VK-X3000(株式会社キーエンス製)を用いて、胴部内面の画像を取得した。図3A~図3Cに、それぞれ、対照区、試験区1、及び試験区2について得られた画像を示す。また、図4A~図4Cに、それぞれ、対照区、試験区1、及び試験区2について得られた画像を3D化処理した画像を示す。」
(エ)「【0037】
更に、得られた画像に基づいて、直径5μm以上、20μm以下の凹部(第1の凹部)と、直径0.5μm以上、5μm未満の凹部(第2の凹部)の数を、白色干渉計搭載レーザ顕微鏡VK-X3000(株式会社キーエンス製)を用いて計数し、1mm2当たりの個数を求めた。
凹部の数の計数にあたっては、ベースラインからの深さが1μm以上であるものの数をカウントした。
結果を下記表3に示す。尚、第1の凹部としてカウントされた構造は、最大でも直径が8.8μmであった。
【0038】
(結果についてのまとめ)
第1の凹部が1mm2あたり200~2000個設けられた試験区1及び試験区2は、第1の凹部が確認できなかった対照区に比べて、ガス抜け量及びカバー性が大きく、発泡性が高いことが確認された。第2の凹部の個数が1mm2あたり7000~15000である試験区2は、更に発泡性が高かった。」
(オ)「【図3B】
[図:0001422331000002.jpg]
【図3C】
[図:0001422331000003.jpg]
」
イ 設定登録時の明細書等から把握できる事項
・ア(ア)より、第1の凹部の個数は1mm2あたり256~768個であり、第2の凹部の個数は1mm2あたり6000~9552個であることが分かる。またア(オ)より、試験区1と試験区2を比較すると、試験区2の方が凹部の数が多いといえる。したがって、試験区1は、第1の凹部の個数は1mm2あたり256個であり、第2の凹部の個数は1mm2あたり6000個であり、試験区2は、第1の凹部の個数は1mm2あたり768個であり、第2の凹部の個数は1mm2あたり9552個であるといえる。
・ア(エ)より、対照区では、第1の凹部が確認できなかったことから、対照区における第1の凹部の個数は1mm2あたり0個であるといえる。
ウ 判断
上記イのように、設定登録時の明細書等から、第1の凹部の1mm2あたりの個数として、対照区は0個、試験区1は256個、試験区2は768個であり、第2の凹部の1mm2あたりの個数として、試験区1は6000個、試験区2は9552個であることが導き出される。
エ 小括
したがって、訂正事項1は、設定登録時の明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、本件訂正により新規事項が追加されるものではない。
第4 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項、第6項の規定に適合するので、本件訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
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