商標取消審判
2024-300146
ベンチ、ベンティ
- 審判番号
- 2024-300146
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2000-024937
- 登録番号
- 4488959
- 請求日
- 2024年03月04日
- 審決日
- 2025年05月08日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エスエヌシー セイン インク
- 【請求人代理人】弁理士法人筒井国際特許事務所
- 【被請求人】スターバックス・コーポレイション
- 【被請求人代理人】弁護士法人窪田法律事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 高橋 幸志
- 分類
- T132 .1 -Y (Z30)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第2条第3項、商標法第50条第2項、商標法第3条、商標法第73条、商標法第1条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第4488959号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第4488959号商標(以下「本件商標」という。)は、「VENTI」の欧文字を標準文字で表してなり、平成12年3月14日に登録出願、第29類「乳製品」、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,菓子及びパン,氷」及び第32類「ミルクシェイク,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」を指定商品として、同13年7月6日に設定登録され、その後、商標権一部取消し審判により、第30類「菓子及びパン」及び第32類「飲料用野菜ジュース」について取り消すべき旨の審決がなされ、同17年6月1日にその確定審決の登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判請求の登録日は、令和6年3月19日であり、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、同3年(2021年)3月19日ないし同6年(2024年)3月18日である(以下「要証期間」という。)。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第30類「コーヒー及びココア,氷」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び令和6年6月19日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年8月26日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)にて、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第31号証(以下、証拠の表記に当たっては、甲各号号証を「甲○」及び乙各号証を「乙○」と省略して記載する場合がある。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第30類「コーヒー及びココア,氷」(以下「請求に係る指定商品」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、請求に係る指定商品についての登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁書による主張
(1)商標としての使用について
商標法上、商標の本質的機能は,自他商品又は役務の識別機能にあると解するのが相当であるから(商標法第3条)、同法第50条における「登録商標の使用」というためには、当該登録商標が商品又は役務の出所を表示し、自他商品又は役務を識別するものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されることを要すると解するのが相当である(令和3年(行ケ)第10076号判決)。
したがって、商標法第50条第1項に関し、「登録商標の使用」かどうかを判断する際、当該登録商標が商品又は役務の出所を表示し、自他商品又は役務を識別するものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されるか、に基づいて判断されるべきである。
(2)被請求人が主張する本件商標の使用事実
ア 被請求人の主張について
被請求人は、答弁書において、メニュー表では「スターバックスラテ」や「ドリップコーヒー」等のコーヒー、コーヒー飲料及びココアを含む各飲料の画像とともに、サイズ毎の価格が表示され、サイズの一つとして「Venti(R)」(審決注:(R)は○内にRを表したもの。以下同じ。また、以下「Venti」を「使用商標」という。)と表示されていること、使用商標を付して店内でメニュー表として用いる行為は、商品に関する価格表に標章を付して展示する行為に該当すること、「Venti(R)」の表示を含むプレスリリースがスターバックスコーヒーの日本ウェブサイトに掲載されたこと、及び乙第16号証ないし乙第21号証のプレスリリースは、被請求人の商品に関する広告であり、これらの行為は、商標法第2条第3項第8号に定める商標の使用行為に該当する旨を主張している。
しかしながら、商標法第50条にいう「登録商標の使用」というためには、上記(1)で示した要件を満たすことが必要であるところ、メニュー表(乙1~乙4)及びプレスリリース(乙16~乙21)に表示されている本件商標は、単に本件商標の指定商品であるコーヒーやココア等の飲料のサイズを示しているだけであって、コーヒーやココア等の商品の出所を表示しておらず、また、自他商品を識別していない。
イ 本件商標が単に飲料の容量・サイズを表示していることについて
(ア)乙号証における本件商標の表示
被請求人は、本件商標がサイズのひとつを表示していると認識している。
そこで、乙号証における本件商標の具体的な表示方法を確認すると、乙第1号証ないし乙第4号証のメニュー表、乙第8号証、乙第10号証、乙第11号証及び乙第16号証ないし乙第21号証のプレスリリース、並びに乙第24号証ないし乙第25号証のインターネット記事のいずれにおいても、本件商標は、被請求人が販売する、たとえば、「カプチーノ」、「スターバックスブロンドラテ with オーツミルク」、「スターバックスラテ」などの各飲料のサイズのひとつとして、「Short」、「Ta11」、「Grande」と並んで表示されている。乙第25号証によれば、「Short」は240ml、「Ta11」は350ml、「Grande」は470ml、「Venti」は590mlと、商品の容量を指している。これら4種のサイズ(「Short」、「Ta11」、「Grande」及び本件商標)は、常にひとまとまりで、かつ、この並び順で、表示されている。
また、コーヒーやコーヒー飲料だけではなく、ゆずシトラス&ティー、ホットティー、アイスティー等の他の飲料についても、上記4種のサイズはひとまとまりで表示されている(乙1~乙4)。
ここで、乙第8号証の「花見さくらクリーム」を例に挙げると、「<店内ご利用の場合> Short¥550/Tall¥590/Grande¥635/Venti(R)¥680」と表示されている。取引者及び需要者は、販売価格を踏まえ、「Short」、「Ta11」、「Grande」、本件商標の順に飲料の容量・サイズが大きくなること、本件商標が最も大きいサイズであることを容易に理解することが可能である。
これらの事実から、被請求人が、本件商標を、自身が販売する指定商品であるコーヒーやココア等の名称としてではなく、飲料の容量、つまりサイズを示す表示のひとつとして使用していることが明らかである。つまり、本件商標は、指定商品の容量を表す表示であって、自他商品を識別するための表示ではなく、また、その出所表示でもない。
(イ)スターバックスコーヒージャパン株式会社(以下「スターバックスコーヒージャパン」という。)のウェブサイト内における本件商標の表示
スターバックスコーヒージャパンのウェブサイト内の、「スターバックスの注文方法」という表題のページ(甲4)には、「1.ビバレッジを選びましょう。」の文字の直下に、「コーヒーやフラペチーノの他に、ココアなどもご用意しています。」という記載がある。そして、「2.サイズもいろいろ。」の文字の直下に、「飲みたい量を飲みたいだけ。サイズは4種類からお選びください。」の文言とともに、ショート(Short)、トール(Ta11)、グランデ(Grande)、ベンティ(Venti)とサイズが紹介されている。
このように、当該ウェブサイトにおいても、本件商標は、需要者が飲料を購入する際に選択するサイズのひとつとして表示されている。本件商標は、指定商品であるコーヒーやココア等の飲料の出所を表示するものでもなければ、自他商品等を識別するための表示でもない。
したがって、被請求人が、本件商標を、飲料の容量を表す表示として、つまり、販売している飲料のサイズのひとつとして表示しており、商標として用いていないことが明らかである。
(ウ)辞書で定義された意味の通りに使用されていること
本件商標を構成する「Venti」は、「20オンスの、ベンティ・サイズの、コーヒーなど約600ミリリットル。」という意味を有する英単語であり、語源はイタリア語の「20」である、と辞書に掲載されている(甲5)。また、イタリア語で「20」という意味を有する(甲6)。
スターバックスコーヒージャパンは、本件商標を590ml(約600ml)の飲料のサイズ表示として使用している(乙25)。つまり、本件商標は、辞書で定義されている上記の意味の通りに使用され、指定商品であるコーヒーやココア等の容量を説明する表示として付されているにすぎず、商標として使用されていない。
(エ)取引者及び需要者の認識
乙第12号証ないし乙第15号証は、株式会社食品産業新聞社のwebニュースの記事であるところ、例えば、乙第12号証では、「花見さくらクリーム」の価格について、「テイクアウトShort540円、Tall579円、Grande624円、Venti668円。店内はShort550円、Tall590円、Grande635円、Venti680円(各税込)」と紹介されている。同様に、乙第13号証では、「ジャンドゥーヤチョコレートモカ」のサイズ及び価格が「Tall600円、Short561円、Grande645円、Venti690円(各税込)。」と紹介されている。
これらの記載からも、本件商標は、取引者及び需要者に対して、単なる商品の容量・サイズの一つとしてのみ認識させる表示であることが分かる。
(オ)他人によるサイズの名称としての「ベンティ」の表示
スターバックスコーヒージャパン以外により、本件商標の音読みを片仮名で表した「ベンティ」がサイズ名として表示されている例(甲7~甲18)があり、被請求人が本件商標をサイズの名称として表記する行為は、被請求人独自のものではないことが明らかである。
ウ 本件商標が商標として使用されていないことについて
(ア)乙第1号証ないし乙第4号証における本件商標の文字の大きさ
乙第1号証ないし乙第4号証における本件商標の文字は非常に小さく、かろうじて視認することが可能であるか、認識が不可能である表示が多くある。
(イ) 実際に被請求人の商品を特定している標章
被請求人が、コーヒーやココア等の指定商品に係る商品を特定している標章は、明瞭に、かつ、大きく表示されている「スターバックスラテ」、「ドリップコーヒー」、「ホワイトオペラフラペチーノ」、「ほうじ茶もちっとミルクフラペチーノ」、「メルティホワイトピスタチオフラペチーノ」や「スターバックスラテ」、「エスプレッソアフォガートフラペチーノ」等である(乙1~乙4)。これらは商品を特定する、商品を識別するための表示である。
(ウ)スターバックスコーヒージャパンのウェブサイトにおける検索結果
当該ウェブサイトの上部にある検索ボックスに、「Venti」、「ヴェンティ」及び「ベンティ」と入力したが、検索結果は0件であった(甲19、甲20)。一方、コーヒー飲料の名称「フラペチーノ」(被請求人が所有する登録第4612716号商標及び登録第5754527号商標)(甲21、甲22)を入力した場合には、検索結果が20件表示された(甲23)。
「Venti」、「ヴェンティ」及び「ベンティ」が自他商品を識別する表示として使用されているのだとしたら、上記「フラペチーノ」と同様に、検索結果が表示されるであろう。当該ウェブサイトにおいても、本件商標は自他商品を識別する表示として使用されていないことが明らかである。
(エ)取引の実情
被請求人は、「使用商標はコーヒー等の商品の画像や持ち帰りの場合の価格と並んでその商品のサイズの種類を示すものとして商品と結びつく形で表示されている」と主張しているが、タリーズコーヒー、ドトールコーヒー、サンマルクカフェ等、他のコーヒーストアにおいても、その販売商品である飲料を紹介する際、サイズは商品と結びつく形で表示されている(甲24~甲27)。
エ 被請求人が主張する商標法第2条第3項への該当性について
(ア)本件商標の表示により被請求人が示したこと
被請求人は、商標を商品との具体的関係において使用することにより、商標が使用された特定のサイズのコーヒー等が被請求人のコーヒーストア事業に係る商品であると示してきたと主張しているが、被請求人は、4種のサイズ(「Short」、「Tall」、「Grande」及び本件商標)を常にひとまとまりに統一的に表示することによって、本件商標が指定商品に係る商品の容量を表す、単にサイズのひとつであることを示してきたにすぎない。
(イ)インターネットの記事
被請求人は、サイズ名を含む被請求人の商品に使用される名称が独特であることに言及している記事もあることを踏まえると(乙24、乙25)、「Venti」という語のサイズ名への使用は被請求人独自のものであるとの認識が需要者の間にもあるといえると主張しているが、これら2つのネット記事をもって、そのような認識が需要者の間にもあるとはいえない。
(ウ)本件商標が取り消されるべきであることについて
被請求人は、このような使用状況及びそれに対する需要者の認識を踏まえれば、本件商標には被請求人の事業活動によって一定の信用が蓄積されており、商品の出所が被請求人であることを示すものとして機能するに至っていると考えられる。ゆえに、本件商標の使用状況は、不使用取消審判において、商標登録としての保護を引き続き受けるに値すると判断されるにふわさしいものであるといえると主張しているが、被請求人は、本件商標を単に辞書に記載の意味のどおりに表示しているにすぎない。また、被請求人が販売する飲料の4種のサイズ(「Short」、「Tall」、「Grande」及び本件商標)は、常にひとまとまりで、かつ、この並び順で表示されている。本件商標は、取引者及び需要者に対して、単なるサイズのひとつとしてのみ認識させる表示であり、表示方法である。
さらに、本件商標は商品名として表示されておらず、自他商品を識別するものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されていない。すなわち、商標として使用されていない。本件商標に触れた取引者及び需要者は、本件商標を、指定商品に係る飲料のサイズを表示するものであると認識するにとどまり、コーヒーやコーヒー飲料等に係る自他商品識別機能を果たすと認識しないことは明らかである。
したがって、本件商標には被請求人の事業活動によって一定の信用が蓄積されているとはいえず、商品の出所が被請求人であることを示すものとして機能するに至っているとはいえない。
以上のとおりであるから、被請求人の主張する本件商標の使用は、商標法第50条における「登録商標の使用」に該当しない。本件商標登録は不使用であるとして取り消されるべきである。
(3)その他の各証拠及び被請求人の主張について
ア (R)(アールマーク)について
(ア)日本特許庁の見解
被請求人は、本件商標には商標登録であることを示す(R)マークが付されており、スターバックスコーヒージャパンは本件商標について常に当該マークを使用してきたと主張している。
日本特許庁のウェブサイトには、「(R)マーク」は、外国の商標制度においてRegistered Trademark(登録商標)を意味するもので、日本の商標法に基づく商標登録表示ではありません。・・・(省略)・・・日本における商標登録表示は、「登録商標第0000000号」という表示方法です。登録商標を表示する際にはそのように表示することが推奨されます(商標法第73条)。」と記載されている(甲28)。つまり、スターバックスコーヒージャパンが使用している(R)マークは、日本の商標法に基づく商標登録表示ではない。日本の商標法制度上、本件商標に常に(R)マークを付していたことをもって、その商標が登録商標であることを示していたことにはならない。
(イ)商標登録を取り消した審決
標章に(R)マークが付されている場合であっても、商標法第50条の審判において不使用であるとして商標登録を取り消した審決は、多く存在する(甲29~甲31)。
イ 被請求人が主張する使用者について
(ア)乙第5号証、乙第22号証及び乙第23号証に基づく被請求人の主張について
被請求人は、「日本におけるスターバックスコーヒー事業の運営は、スターバックスコーヒージャパンが被請求人との親子会社の関係に基づいて行っている(乙5)」ことや、「スターバックスコーヒージャパンは、平成27年3月以降は被請求人の完全子会社となっている(乙22、乙23)旨を主張しているが、乙第5号証には、スターバックスコーヒージャパンが被請求人の完全子会社になったことは記載されていない。乙第22号証には、スターバックスコーヒージャパンの親会社に関する記載はない。乙第23号証はスターバックスコーヒージャパンが運営するウェブサイトのページの写しであり、客観的な証拠ではない。
したがって、スターバックスコーヒージャパンが被請求人の完全子会社になったことは、客観的に証明されていない。
(イ)通常使用権の許諾の存否について
被請求人は、「スターバックスコーヒージャパンには本件商標に係る商標権について通常使用権の許諾がなされている。」と主張しているが、スターバックスコーヒージャパンが被請求人から通常使用権の許諾がなされていることは確認できない。商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも本件商標を使用していないことが明らかである。
ウ メニュー表について
(ア) 使用時期
被請求人は、各メニュー表の使用時期は上述のとおりであり、いずれも要証期間内に用いられたものである。このことは、メニュー表の裏面右下部分に「Printed in Japan. 202402」・・・(省略)・・・と表示されていることからも推認される(乙1~乙4)と主張しているが、「Printed in Japan.202402」等の記載は、単に印刷時期を示しているだけであって、各メニュー表が要証期間内に被請求人により使用されたことは客観的に証明されていない。
また、被請求人は、メニュー表の表面上部に載っている期間限定商品の発売に際してスターバックスコーヒーの日本ウェブサイトに掲載されたプレスリリース(乙8~乙11)・・・(省略)・・・には当該商品の販売時期が記載されており、当該記載からも対応するメニュー表の使用期間が商品の販売期間と同じであるものと考えられると主張しているが、プレスリリースが配信されたとしても、実際にメニュー表が店舗で使用されたとは限らない。つまり、各メニュー表が要証期間内に使用されたことは客観的に証明されていない。
(イ)商標法上の使用
被請求人は、乙第1号証ないし乙第4号証のメニュー表は、被請求人の商品に関する価格表であり、これに使用商標を付して店内でメニュー表として用いる行為は、商品に関する価格表に標章を付して展示する行為に該当する。・・・(省略)・・・したがって、これらの行為は、商標法第2条第3項第8号に定める商標の使用行為に該当すると主張しているが、これらメニュー表が実際に店内で展示されたことは確認できない。
(ウ)店内飲食用のメニュー
被請求人は、店内飲食と持ち帰りのいずれも可能な店舗においては、メニュー表を使い分けることはなく、持ち帰りを希望する客に対しても店内飲食用価格を表示したメニュー表を提示していることや、乙第1号証のみならず乙第2号証ないし乙第4号証も持ち帰りの商品の販売用としても使用されていた旨を主張しているが、乙第2号証ないし乙第4号証のメニュー表の上部には、表示価格は「店内飲食時」の価格であると記載されており、持ち帰りを希望する客に対しても店内飲食用価格を表示したメニュー表を提示していることや、持ち帰りの商品の販売用としても当該メニューが使用されていたことは確認できない。
(エ)メニュー表の発注データ
被請求人は、メニュー表はスターバックスコーヒージャパンの社内システムを介して外部の印刷業者に発注して印刷作成されるところ、入荷日の日付からその直後に納品されたメニュー表が各店舗で用いられていたことが推認される(乙7)と主張している。
入荷したのはメニュー表であろうと推察するが、どこからどこに入荷され、どこに納品したのかが不明確である。そもそも、社内システムからプリントアウトしたものであるため、実際にメニュー表が発注され、納品されたことは客観的に証明されていない。
(オ)店内飲食用のメニューを用いた店員の対応
被請求人は、乙第2号証ないし乙第4号証について、実際には、注文会計時に店員が客に対して店内飲食か持ち帰りかを尋ね客の返答に応じて税率を使い分けるという対応をとっている(乙6)と主張しているが、「軽減税率制度の適用に伴い、店内でのご飲食の場合またはお持ち帰りの場合で、お客様にお支払いいただく税込価格が異なるため、表示場所によって、異なる税率が適用された総額表示となっている場合がございます。」と記載されているだけであって、実際に、店員が客に対して店内飲食か持ち帰りかを尋ねていることは、客観的に証明されていない。
3 結語
以上のとおりであるから、被請求人、その専用使用権者又は通常使用権者が、本審判請求登録前3年以内に、本件登録商標を、日本国内において、本件審判請求に係る指定商品について使用していなかったことは明白である。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第25号証を提出している。
1 被請求人の主張
本件商標は、「コーヒー及びココア」について、要証期間中に、通常使用権者によって使用されていた。したがって、本件審判の請求が成り立たないことは明らかである。
2 本件商標の使用事実
(1)使用証拠及び使用時期
ア メニュー表での使用
被請求人は、平成8年より、その子会社であるスターバックスコーヒージャパンを通して、日本各地でコーヒーストア「スターバックスコーヒー」(以下「被請求人店舗」という。)等を展開し、コーヒー等の飲料や軽食を提供及び販売してきた(乙5)。被請求人店舗では、注文したものを店内で飲食できるほか、提供する商品すべてを持ち帰り用としても販売している。取扱い商品には季節に応じた限定メニューもあり、そのプロモーション内容に応じてメニュー表が作成され、店内で客に提示されている。例えば、令和5年末から同6年初めにかけては、以下に挙げる飲料のメニュー表(乙1~乙4)が用いられていた。これらのメニュー表では、「スターバックス ラテ」や「ドリップ コーヒー」等のコーヒー、コーヒー飲料及びココアを含む各飲料の画像とともに、サイズ毎の価格が表示され、サイズの一つとして「Venti(R)」と表示されている。
乙第1号証は、表示価格が「TO GO(お持ち帰り)」時の価格であるとの記載からわかるとおり、持ち帰り商品用のメニュー表であり、被請求人店舗のうち持ち帰り商品の販売のみを行っている店舗で使用されていた。これに対し、乙第2号証ないし乙第4号証の同じ箇所には、表示価格は「店内飲食時」の価格であると記載されている。これは、令和元年に導入された軽減税率制度に則り、メニュー表では基本的に店内飲食の場合の税込価格のみを表示することにしたためであるが、実際には、注文会計時に店員が客に対して店内飲食か持ち帰りかを尋ね客の返答に応じて税率を使い分けるという対応をとっている(乙6)。つまり、店内飲食と持ち帰りのいずれも可能な店舗においては、メニュー表を使い分けることはなく、持ち帰りを希望する客に対しても店内飲食用価格を表示したメニュー表を提示している。
各メニュー表の使用時期は上述のとおりであり、いずれも要証期間内に用いられたものである。このことは、メニュー表の裏面右下部分に「Printed in Japan.202402」、「Printed in Japan.202401」、「Printed in Japan.202312」、「Printed in Japan.202311」と表示されていることからも推認される(乙1~乙4。例えば、「Printed in Japan.202402」の表示は、2024年2月に日本で印刷されたことを意味する。)。また、メニュー表はスターバックスコーヒージャパンの社内システムを介して外部の印刷業者に発注して印刷作成されるところ、入荷日の日付からその直後に納品されたメニュー表が各店舗で用いられていたことが推認される(乙7)。さらに、メニュー表の表面上部に載っている期間限定商品の発売に際してスターバックスコーヒーの日本ウェブサイトに掲載されたプレスリリース(乙8~乙11)及び食品産業新聞社ニュースWEBにおける同様の内容の記事(乙12~乙15)には当該商品の販売時期が記載されており、当該記載からも対応するメニュー表の使用期間が商品の販売期間と同じであるものと考えられる。
イ プレスリリースでの使用
スターバックスコーヒーの日本ウェブサイトでは、新商品が発売される際にはその旨のプレスリリースが掲載されている。その中には、以下のコーヒー飲料に関するプレスリリースもある。
それぞれについて商品名及び持ち帰りの場合の価格とともに「Short」等のサイズ表記と並んで「Venti(R)」と表示されている(乙16~乙21)。また、FY24ホリデーP2の「メルティホワイト ピスタチオ モカ」のプレスリリースにも同様の表示がある(乙11)。
各プレスリリースの掲載時期は、いずれも要証期間内である。よって、各時期に各商品に関して「Venti(R)」の表示を含むプレスリリースがスターバックスコーヒーの日本ウェブサイトに掲載されることで本件商標が使用されていた。
(2)商標の社会通念上の同一性
本件商標は「VENTI」の欧文字を標準文字で表してなり、すべてが大文字で表されている。これに対して、使用商標も同様の綴りからなるが、語頭のみが大文字でその他は小文字で表され、語尾の右側に「(R)」マークを伴っている。
商標法第50条にいう「登録商標」には、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標」等の登録商標と社会通念上同一の商標も含まれる(商標法第50条、同法第38条第5項)。使用商標の場合、「(R)」マークは登録商標であることを示す記号であるから、出所識別標識としての機能を発揮するのは「Venti」の文字部分である。当該部分は書体や大文字・小文字の違いはあるものの同じつづりからなり同一の称呼及び観念を生ずるものであるから、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標である。
(3)使用商品
使用商標は、メニュー表においてドリップ コーヒー、コールドブリューコーヒー及びココアのほか、カフェ ミスト、カプチーノ、スターバックス ブロンド ラテ with オーツミルク、スターバックス ラテ、カフェ アメリカーノ、キャラメル マキアート、カフェ モカ、ホワイト モカについて価格とともにサイズの名称として使用されている(乙1~乙4)。また、乙第2号証においてはジャンドゥーヤ チョコレート モカ、乙第4号証においてはメルティホワイト ピスタチオ モカ、ジンジャーブレッド ラテ及びクレームブリュレ ラテについても使用されている。これらのうちカフェミストはコーヒー飲料、カプチーノ以下の商品はエスプレッソコーヒー飲料であり「コーヒー」の範ちゅうに入る。乙第1号証のみならず乙第2号証ないし乙第4号証も持ち帰りの商品の販売用としても使用されていた。
また、使用商標は、プレスリリースにおいて、ミルクコーヒーはコーヒー飲料であり、その他はエスプレッソコーヒー飲料であるから、いずれも「コーヒー」の範ちゅうに入る。
(4)使用者
メニュー表(乙1~乙4)は、スターバックスコーヒージャパンが運営するコーヒーストア「スターバックスコーヒー」の店舗で使用されていたものである。また、プレスリリース(乙16~乙22)は、スターバックスコーヒージャパンが運営する「スターバックスコーヒー」の日本ウェブサイトに掲載されたものである。
日本におけるスターバックスコーヒー事業の運営は、スターバックスコーヒージャパンが被請求人との親子会社の関係に基づいて行っている(乙5)。なお、スターバックスコーヒージャパンは、平成27年3月以降は被請求人の完全子会社となっている(乙22、乙23)。日本における事業を運営する一環として、スターバックスコーヒージャパンには本件商標に係る商標権について通常使用権の許諾がなされている。
したがって、本件商標は、日本において通常使用権者によって使用されている。
(5)商標法第2条第3項への該当性
商標法の目的は、営業活動を通して商標を使用することによってその商標に蓄積した信用を保護することにある(商標法第1条)。そのことから、不使用取消審判制度の趣旨は、一定期間使用していない商標は保護すべき信用が発生していない又は消滅したと考えられ、他方でそのような不使用商標に対して商標権という排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ第三者の商標選択の余地を狭めることになるから、そのような商標登録は保護に値しないという点にあるといえる(工業所有権法逐条解説〔第22版〕1743頁参照)。そして、使用を通して商標への信用が蓄積することにより、商標の出所識別機能が発現されることになる。
使用商標は飲料のサイズの名称であり、商標の使用として典型的な商品名やブランド名が商品に付されて販売等される場合とは異なる。しかし、使用商標には登録商標であることを示す「(R)」マークが付されており、スターバックスコーヒージャパンは本件商標について常に当該マークを使用してきた(乙1~乙4、乙16~乙21)。そして、使用商標はコーヒー等の商品の画像や持ち帰りの場合の価格と並んでその商品のサイズの種類を示すものとして商品と結びつく形で表示されている。このように商標を商品との具体的関係において使用することにより、商標が使用された特定のサイズのコーヒー等が被請求人のコーヒーストア事業に係る商品であることを示してきた。また、サイズ名を含む被請求人の商品に使用される名称が独特であることに言及している記事もあることを踏まえると(乙24、乙25)、「VENTI」という語のサイズ名への使用は被請求人独自のものであるとの認識が需要者の間にもあるといえる。このような使用状況及びそれに対する需要者の認識を踏まえれば、本件商標には被請求人の事業活動によって一定の信用が蓄積されており、商品の出所が被請求人であることを示すものとして機能するに至っていると考えられる。ゆえに、本件商標の使用状況は、不使用取消審判において、商標登録としての保護を引き続き受けるに値すると判断されるにふさわしいものであるといえる。
メニュー表(乙1~乙4)は、被請求人の商品に関する価格表であり、これに使用商標を付して店内でメニュー表として用いる行為は、商品に関する価格表に標章を付して展示する行為に該当する。
また、プレスリリース(乙16~乙22)は、被請求人の商品に関する広告であり、これをウェブサイトに掲載し不特定多数の者に向けて告知する行為は、商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為に該当する。
したがって、これらの行為は、商標法第2条第3項第8号に定める商標の使用行為に該当する。
(6)小括
本件商標は、それと社会通念上同一と認められる商標が、通常使用権者によって、要証期間中に、「コーヒー及びココア」の範ちゅうに含まれる商品に関する価格表に付して展示され及びそれらの商品の広告を内容とする情報に付して電磁的方法により提供されることによって使用された。
3 結論
以上より、本件審判請求に係る要証期間中に、本件商標と社会通念上同一の商標が、通常使用権者によって、その指定商品「コーヒー及びココア」について使用されていた。
第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証及び被請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)スターバックス・コーポレーションとスターバックスコーヒージャパンについて
ア 被請求人であるスターバックス・コーポレーション(以下「本件商標権者」という場合がある。)は、コーヒー飲料を中心として、「STARBUCKS」の名称で全世界に渡りコーヒーチェーンを展開する事業者である。
イ スターバックスコーヒージャパンは、「STARBUCKS」の店舗を運営する会社で、平成26年6月23日に関東財務局長に提出したとされる有価証券報告書において、「2【沿革】」に「平成8年8月 第1号店「銀座松屋通り店(東京都中央区)を開店」と記載され、「3【事業内容】」に「当社は、日本国内におきましてスターバックス コーヒー ストアを展開しており、スターバックス ブランドの下、コーヒー及び関連商品を販売する事業を営んでおります。」と記載されている(乙5)。
ウ 職権調査によれば、「日本経済新聞」の「2014年9月24日10:52」に配信された「米スタバ、日本法人を完全子会社化 対コンビニに備え」と題する記事に「米コーヒーチェーン最大手のスターバックスは23日、日本でコーヒー事業を展開するスターバックスコーヒージャパンを約1000億円で完全子会社化すると発表した。株式を2回のTOB(株式公開買い付け)で取得する。ジャスダックに上場するスターバックスジャパンは買い付け完了後に上場廃止になる見通し」(https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM2401T_U4A920C1MM0000/)との記載が認められる。
エ スターバックスコーヒージャパンが各位宛に発信した平成27年2月20日付けの書面の「5.本完全子会社化手続の日程概要(予定)」の一覧表の最後の項目に「全部取得条項付普通株式の取得及びA種種類株式の交付の効力発生日」が「平成27年3月26日(木)」と記載されている(乙22)。
オ スターバックスコーヒージャパンのホームページ内の「沿革(2011~2015年度)」に2014年度の3月、すなわち、2015年(平成27年)3月に「スターバックス・コーポレーションによる、当社完全子会社化の手続きが完了。」と記載されている(乙23)。
(2)メニュー表について
ア 乙第1号証はメニュー表であるところ、その表面の左上部に「ESPRESSO & COFFEE」と記載され、当該文字以下に多数のコーヒー飲料が掲載されており、例えば、その一番上部にある商品「カプチーノ」(以下「使用商品」という。)の文字の下に「Venti」(以下「使用商標」という。)の記載が認められる。
イ 乙第1号証のメニュー表の表面の最上部には、「表示価格はTOGO(お持ち帰り)時の税込み価格(円)です。」の記載が認められる。
ウ 乙第1号証のメニュー表の表面の上部には、「花見だんごフラペチーノ」の商品が紹介されており、「花見だんごフラペチーノ」の文字下部に「Tall678」の記載が認められる。
エ 乙第1号証のメニュー表の表面の右下には、スターバックスコーヒージャパンのホームページのURLである「www.starbucks.co.jp」の記載が認められる。
オ 乙第1号証のメニュー表の裏面の最下部右側には、「Printed in Japan.202402」と記載されている。
(3)プレスリリースについて
ア 乙第8号証はスターバックスコーヒージャパンの2024年2月8日付けのホームページにおけるプレスリリースで「SAKURAシーズン第1弾 2月15日(木)よりスタート!」「三色だんごをモチーフにした「花見だんごプラペチーノ(R)」や「さくらAR」など、お花見気分満載のラインナップが新登場」と記載されている。
イ 同プレスリリースに、「◆商品名・価格(表示価格は税込みの総額表示となります)」「花見だんごフラペチーノ(R)」「Tallサイズのみ」「<お持ち帰りの場合>¥678」と記載されている。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用者について
使用商標の使用者であるスターバックスコーヒージャパンは、平成8年より我が国において、本件商標権者が展開する「STARBUCKS」の店舗を運営してきた。
そして、本件商標権者は、2014年9月にスターバックスコーヒージャパンを完全子会社化することを発表し、スターバックスコーヒージャパンが発出する書面に、完全子会社化の手続の日程として「平成27年3月26日(木)」と記載(乙22)され、スターバックスコーヒージャパンのホームページで2015年3月にスターバックス・コーポレーションにより完全子会社化されたとの発表がある(乙23)ことから、遅くとも2015年3月には、スターバックスコーヒージャパンは、本件商標権者の完全子会社となったことが推認できる。
さらに、スターバックスコーヒージャパンは、本件商標権者の完全子会社となった後も、継続的に「STARBUCKS」の店舗を運営していることから、本件商標権者は、スターバックスコーヒージャパンに対して、本件商標の使用について、黙示の許諾を与えていたものとみて差し支えない。
したがって、本件商標の使用者であるスターバックスコーヒージャパンは、要証期間において本件商標の通常使用権者であると認められる。
(2)使用商標及び使用商品について
本件商標は、「VENTI」の欧文字を横書きしてなるものである。
他方、使用商標は、「Venti」の欧文字を横書きしてなるものであり、両者の違いは2文字目以降の大文字と小文字の表記の差異にすぎず、構成文字を同一にするものであるから、社会通念上同一の商標と認められる。
そして、乙第1号証のメニュー表の左上部に使用商標とともに掲載されている商品は「カプチーノ(エスプレッソコーヒーに、蒸気で温めて泡立てた牛乳を加えたもの。(広辞苑 第七版参照))」であり、代表的なコーヒー飲料であることから、請求に係る指定商品中の「コーヒー」の範ちゅうに含まれる商品である。
なお、使用商標が掲載されている乙第1号証のメニュー表は、その表面にスターバックスコーヒージャパンのURLが掲載されていることから、通常使用権者の取扱いに係る商品であると認められる。
(3)使用時期及び使用行為について
乙第1号証のメニュー表は、「Printed in Japan.202402」との記載から2024年2月に作成されたものと推認できる。
そして、このメニュー表の表面最上部には、「表示価格はTOGO(お持ち帰り)時の税込み価格(円)です。」の記載があることから、持ち帰り可能な態様で販売されている商品のメニュー表と認められる。また、その表面上部に「花見だんごフラペチーノ(R)」が掲載されているところ、2024年2月8日付けプレスリリース(乙8)では、2024年2月15日(木)から2024年3月12日(火)の間、「花見だんごフラペチーノ(R)」が持ち帰りの価格として678円で販売されていたものといえ、このメニュー表に記載の価格と一致していることが認められる。
そうすると、乙第1号証のメニュー表は、2024年2月15日から同年3月12日の間に通常使用権者が持ち帰り用の商品の価格表として、店舗において使用したと推認することができる。
そして、上記期間は、要証期間内である。
(4)小括
上記(1)ないし(3)からすれば、本件商標の通常使用権者であるスターバックスコーヒージャパンは、要証期間に、日本国内において、請求に係る指定商品中「コーヒー」の範ちゅうに含まれる「コーヒー飲料(カプチーノコーヒー)」の価格表に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付し、当該価格表を展示する行為(商標法第2条第3項第8号)により本件商標を使用したといえる。
3 請求人の弁駁書による主張について
請求人は、商標法第50条における「登録商標の使用」というためには、当該登録商標が商品又は役務の出所を表示し、自他商品又は役務を識別するものと取引者及び需要者において認識し得る態様で使用されることを要すると主張した上で、本件商標は、各飲料のサイズのひとつとして、「Short」、「Ta11」、「Grande」と並んで表示されていることから、単に本件商標の指定商品であるコーヒーやココア等の飲料のサイズを示しているだけであって、コーヒーやココア等の商品の出所を表示しておらず、自他商品を識別していない。また、「Venti」は、「20オンスの、ベンティ・サイズの、コーヒーなど約600ミリリットル。」という意味を有する英単語(甲5)であり、スターバックスコーヒージャパン以外により、本件商標の音読みを片仮名で表した「ベンティ」がサイズ名として表示されている証拠(甲7~甲18)を提出し、本件商標権者独自のものではない旨主張するとともに、使用商標の横に付されている(R)マークは、日本の商標法に基づく商標登録表示ではなく、常に(R)マークを付していたことをもって登録商標であることを示していたことにはならないし、標章に(R)マークが付されている場合であっても不使用で登録を取り消した審決が多数存在する(甲29~甲31)旨主張している。
確かに、請求人が主張するとおり、(R)マークは、我が国の商標に関する法令に基づく商標登録の表示ではないが、登録商標を表示する記号として、一般に広く用いられているものであり、これに接する者に当該マークの傍らに表示された文字や図形等(以下「標章等」という。)が登録商標であることを認識させることは顕著な事実である。
そうすると、需要者は(R)マークの傍らに表示された標章等を登録商標であると直ちに想起するというのが相当であるから、その標章等が、自他商品又は役務の識別標識としての機能を喪失し、登録商標の使用であるとはいえないものであるかについては、その標章等が使用されている指定商品又は指定役務との関係で、過去の審決例にその判断が左右されることなく、個別具体的に検討する必要があるといわなければならない。
そこで、使用商標について検討すると、請求人は、「Venti」について、「コーヒーなど約600ミリリットル。」ほどの意味を有する英単語であるとしているが、当該語は平易な英単語ではなく、我が国で慣れ親しまれた事情も確認できないことから、当該意味が一般に理解されるとはいい難いものである。さらに、請求人が提出する「ベンティ」がサイズ名として表示されている事実(甲7~甲18)をみるに、これらの証拠は、飲料のボトルや浴衣に使用されているものであり、コーヒー飲料を提供する事業者がその提供する商品のサイズとして使用しているものではないことから、「Venti」の語がコーヒー飲料を提供する店舗等において、商品のサイズとして需要者に認識されるものともいい難く、自他商品識別機能を有する商標といい得るものである。
そうすると、使用商標に接する需要者は、「Venti」の横に(R)マークが付されていることから、「Venti」が当該商品を提供する事業者の登録商標であると認識するとみるのが自然であり、使用商標が商品のサイズを表す使用態様であるからといって、登録商標の使用であることが直ちに否定されるものではない。
よって、請求人の主張は、採用することができない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者が本件審判請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、本件審判の請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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