特許拒絶査定不服審判
2024-019114
SNP分子で標識されたHu羊純血種の評価方法
- 審判番号
- 2024-019114
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2024-014465外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年11月29日
- 審決日
- 2026年03月09日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .537-WZ (C12Q)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2024- 14465「SNP分子で標識されたHu羊純血種の評価方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 7年 5月19日出願公開、特開2025- 77938〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和6年2月1日(パリ条約による優先権主張2023年11月7日、中国)の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年 5月 1日付け:拒絶理由通知書
令和6年 7月12日 :意見書の提出
令和6年 9月 6日付け:拒絶査定
令和6年11月29日 :審判請求書・手続補正書の提出
令和7年10月10日付け:拒絶理由通知書
令和8年 1月11日 :意見書・手続補正書の提出
第2 本願発明について
令和8年1月11日提出の手続補正書により補正された請求項1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
1)ハイスループットシーケンシング方法でHu羊群体の特定群体頻度を有する候補遺伝的変異を鑑定して、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較することによって、採点方法を作成するとともに、シーケンシングを行い、羊群れ中に存在する遺伝的変異の各種指標によって純血種評価モデルを作成し、さらにモデル結果によって遺伝標識候補セットを提供し、30個のSNPsを選ぶ段階;および
2)段階1)から得た30個のSNPsをSequenomSNPサブタイピング検出方法を用いて、plinkソフトによってサブタイピングされたSNPデータを利用してIBS係数を算出し、前記IBSは状態ホモロジーであり、16個のIBSと著しく関連するSNPsを得る段階;を含み、
前記遺伝標識候補セットはANO10遺伝子とPDLIM5遺伝子を含み、
段階1)において、前記30個のSNPsはP64757122、P18235445、P83818961、P83818969、P55276319、P55384071、P17642678、P17644657、P74169717、P19203813、P64629274、P64629764、P64630486、P69523858、P15346217、P15347178、P15347396、P101963616、P103941154、P50147220、P50194226、P6840723、P223703680、P37184275、P29949299、P30659550、P30778083、P44863176、P90333029およびP5313717を含み、
段階2)において、前記16個のIBSと著しく関連するSNPsはP30659550、P15347396、P37184275、P223703680、P15346217、P55384071、P19203813、P64757122、P64630486、P64629274、P50194226、P15347178、P74169717、P90333029、P69523858およびP18235445を含み、
段階2)において、IBSが大きければ大きいほど、二つの個体の遺伝関係が近いことを表明する、
ことを特徴とするSNP分子マーカーを用いたHu羊純血種の評価方法。」
(以下、「本願発明」という。)
第3 拒絶の理由
当審の令和7年10月10日付け拒絶理由通知の理由は、概略、次のとおりのものである。
「1.(明確性) この出願は、特許請求の範囲の記載が、以下の点で、特許法36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2.(サポート要件) この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(明確性)について
・請求項 1
(1)請求項1には、「Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較することによって、採点方法を作成する」と記載されているが、「採点方法」について何ら特定されておらず、「採点方法」がどのようなものであるのか不明確であり、また、「Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較」することでどのようにして採点方法を作成するのか、発明の詳細な説明の記載を参酌しても把握できない。(下線は合議体により付与した。以下同じ。)
よって、請求項1に係る発明は明確でない。
(「採点方法」なる用語は請求項1と同様の内容が記載されているにすぎない段落【0006】を除き発明の詳細な説明において用いられていません。
(以下省略)
●理由2(サポート要件)について
・請求項 1
(省略)」
第4 本願の発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、次の記載がある(下線は、当審で付与した。)。
「【発明の概要】
【0005】
発明が解決しようとする課題:
上記問題を解決するために、本発明はSNPで標識されたHu羊純血種の評価方法を提供して、群体レベルのハイスループットデータを利用してHu羊や小尾Han羊、ドーパー羊およびドーパー羊とHu羊との雑交群体に対する完全ゲノム範囲内の遺伝的変異検出を行い、生物情報学的方法でHu羊専属の遺伝特徴を鑑定することによって、Hu羊純血種を鑑定する評価方法を構築して、Hu羊の品種資源保護や開発および利用に科学的根拠を提供することを課題とする。
課題を解決するための技術手段:
【0006】
本発明は、
1)ハイスループットシーケンシング方法でHu羊群体の特定群体頻度を有する候補遺伝的変異を鑑定して、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較することによって、採点方法を作成するとともに、シーケンシングを行い、羊群れ中に存在する遺伝的変異の各種指標によって純血種評価モデルを作成し、さらにモデル結果によって遺伝標識候補セットを提供し、部位プライマーのデザインおよび部位ゲノムの連鎖状況によって30個の遺伝的標識部位を選んでHu羊純血種の鑑定に使用する段階;
2)段階1)から得た30個の遺伝的標識部位をSequenomSNPサブタイピング検出方法を用いて、plinkソフトによってタイピングされたSPNデータを利用してIBS分数を算出し、前記IBSは状態ホモロジーであり、16個のIBSと著しく関連する遺伝的標識部位を得る段階;および
3)R言語に基づき、多変量線形回帰分析モデルを利用し、そのうち、独立変数は16個の異なる遺伝子タイプの遺伝的標識部位であり、従属変数は特定のIBS分数であって、純血種評価モデルを作成することによって、候補のHu羊純血種群体に対する純血種鑑定を行う段階;」
を含むSPN分子で標識されたHu羊純血種の評価方法を提供する。
【0007】
1)本発明は群体レベルの高いハイスループットデータを利用してHu羊や小尾Han羊、ドーパー羊およびドーパー羊とHu羊との雑交群体に対する完全ゲノム範囲内の遺伝的変異検出を行い、生物情報学的方法でHu羊専属の遺伝特徴を鑑定することのよって、Hu羊純血種を鑑定する評価方法を構築して、Hu羊の品種資源保護や開発および利用に科学的根拠を提供する。
2)本発明はHu羊の純血種の評価方法に用いる30個の遺伝的標識部位を確定する。
3)本発明はさらにHu羊の純血種の評価方法に用いる遺伝的標識の候補セットを確定する。」
「【0015】
本発明はSNP分子で標識されたHu羊純血種評価方法を提供し、本発明は群体レベルの高いハイスループットデータを利用して、Hu羊や小尾Han羊、ドーパー羊およびドーパー羊とHu羊との雑交群体に対する完全ゲノム範囲内の遺伝的変異検出を行い、生物情報学的方法でHu羊専属の遺伝特徴を鑑定することによって、Hu羊純血種を鑑定する評価方法を構築して、Hu羊の品種資源保護や開発および利用に科学的根拠を提供する。
【0016】
評価方法には、
1)ハイスループットシーケンシング方法でHu羊群体の特定群体頻度を有する候補遺伝的変異を鑑定して、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較することによって、採点方法を作成するとともに、シーケンシングを行い、羊群れ中に存在する遺伝的変異の各種指標によって純血種評価モデルを作成し、さらにモデル結果によって遺伝標識候補セットを提供し、部位プライマーのデザインおよび部位ゲノムの連鎖状況によって30個の遺伝的標識部位を選んでHu羊純血種の鑑定に使用する段階;
2)段階1)から得た30個の遺伝的標識部位をSequenomSNPサブタイピング検出方法を用いて、plinkソフトによってサブタイピングされたSPNデータを利用してIBS分数を算出し、前記IBSは状態ホモロジーであり、16個のIBSと著しく関連する遺伝的標識部位を得る段階;および
3)R言語に基づき、多変量線形回帰分析モデルを利用し、そのうち、独立変数は16個の異なる遺伝子タイプの遺伝的標識部位であり、従属変数は特定のIBS分数であって、純血種評価モデルを作成することによって、候補のHu羊純血種群体に対する純血種鑑定を行う段階が含まれる。」
「遺伝的変異の検出(SNPs、Indels)
【0026】
GATKソフトプロセスやHaplotypeCaller、GenotypeGVCFsおよびCombineGVCFsモジュールを利用して、80個の個体に対する遺伝的変異の検出、遺伝子型判定および群体合併を行い、最終的に検出された変異の遺伝子型ファイル(VCF)を獲得する。さらに、VariantFiltrationモジュールを利用して、遺伝的変異の強制的ろ過を行うが、そのうち、品質制御基準は以下のとおりである。つまり、QD<2.0;QUAL<30.0;SOR>3.0;FS>60.0;MQ<40.0;MQRankSum<-12.5;ReadPosRankSum<-8.0。
【0027】
それと同時に、シーケンシング深さが8を超え、カバー率が30%を超え、且つ突然変異塩基の最小対立遺伝子頻度が0.05を超える遺伝変異を留保して、得られたInDelsの5dp以内のSNPを除去する。
遺伝的変異の注釈
【0028】
ANNOVAソフトを利用して、検出された変異に対する遺伝子またはエリアに基づく注釈を行い、NCBIよりゲノムgff注釈ファイル(GCA_016772045.1)をダウンロードする。対応する変異に対する注釈:SNPは8種類に分けられ、エクソンエリア(シノニム、ノンシノニム、stopgaiおよびstoploss)、スプライス部位、イントロンエリア、5’および3’UTRs、上下流エリアおよび遺伝子間エリアを含む。
【0029】
InDelsはさらにstoploss、stopgainおよびフレームシフト突然変異(3つのbp挿入または欠失)に分類される。
遺伝多様性評価
【0030】
SNPおよびInDels変異情報を利用して、検出された異なる群体に存在する頻度分布によって、群体の多様性特徴の評価に使用される。Plinkソフトを用いて異なる変異部位群体頻度を算出する。上記すでに遺伝子注釈された結果によって、異なるSNPとInDels注釈の群体頻度の特徴を比較して、遺伝的変異のゲノム特徴分布の好みを鑑定する。InDels情報については、その長さ分布をさらに統計して、異なる長さ分布がInDels所在群体における群体分布頻度を比較する。
【0031】
平均群体ごとに23,972,025個SNPsと2,441,291個InDelsを検出することができ、そのうち、Hu羊は最も多い遺伝的変異26,262,209個SNPsと2,693,430個InDelsを有し、上記SNPsとInDelsに基づいて、湖州Hu羊の分子遺伝情報のデータベースを作成した。ドーパー羊は最も少ない遺伝的変異22,626,849個SNPsと2,296,833個InDelsを有した。」
「Hu羊純血種の評価モデル作成
【0040】
Hu羊純血種の評価は、代表性のある遺伝的変異()を選んで、候補羊群体中のHu羊純血種または雑種個体を判別する用途に使用することを目的とする。表4のとおり、6つの指標を選んで遺伝的変異を評価するモデルとして評価の根拠とする。そのうち、機能エリア特徴は変異が機能ゲノムに対する影響程度によって分類する(表5)。
表4 Hu羊純血種評価モデルの評価パラメータ
[図:0001437884000001.jpg]
表5 機能エリアの特徴分類
[図:0001437884000002.jpg]
【0041】
本発明は純血種鑑定モデルを作成して雑種と純血種Hu羊の特異性特徴を鑑定しており、合計5つの指標をモデル中に使用して、異なる角度ら候補遺伝的変異を確定する。そのうち、遺伝的変異はHu羊変異頻度と他の郡体の頻度を主要指標としているが、Hu羊群体の変異頻度が高ければ高いほど、他の群体の変異頻度が低く、Hu羊の純血種特徴に取って代表性を有する。Hu羊の群体変異検出率もその中の一つの重要な指標となるが、当該遺伝的変異の信頼性を表明する用途に使われ、通常検出率は90%を超え、候補特徴を完全に満たす。
【0042】
上記指標に基づき、特定の遺伝的変異に対して評価点数を算出することができ、評価点数=Hu羊の変異頻度×他の羊群体内変異頻度×Hu羊群体変異検出率;評価点数のランキング結果(表6を参照)によって、ANO10およびPDLIM5遺伝子をHu羊群体を評価する遺伝標識候補セットとする。
表6 Hu羊純血種鑑定に用いる候補遺伝的変異
[図:0001437884000003.jpg]
(表6の以降の行省略)」
第5 当審の判断(特許法第36条第6項第2号について)
1 請求項1の「ハイスループットシーケンシング方法でHu羊群体の特定群体頻度を有する候補遺伝的変異を鑑定して、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較することによって、採点方法を作成する」との記載について
ア 請求項1における記載
請求項1には、採点方法について、「ハイスループットシーケンシング方法でHu羊群体の特定群体頻度を有する候補遺伝的変異を鑑定して、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較することによって」作成されるものであることが特定されている。
しかしながら、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較する、との文言から、この比較によって、Hu羊の群体遺伝的変異とその他の群体遺伝的変異との違いが分かるものと解釈することはできるものの、このような違いが分かることは、「採点方法を作成する」ことではない。
このように、「Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較する」ことと、「採点方法を作成する」こととの技術的な関係は技術常識を踏まえても不明であるため、作成される「採点方法」が技術的にどのような意味を持つものか明確ではなく、そのため、「採点方法」の技術的範囲が明確ではない。
また、「採点」とは、一般に「評価して点数をつけること。また、つけた点数。」(weblio辞書)であり、「採点方法」とは、何らかの評価基準に基づいて点数をつける方法であり、「採点方法を作成する」ことは点数をつける方法を作成することを意味すると解釈されるものの、一般的な用語の意味を参酌しても、「Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較する」ことと、「採点方法を作成する」こととの技術的な関係は不明であるため、作成される「採点方法」が技術的にどのような意味を持つものか明確ではなく、そのため、「採点方法」の技術的範囲が明確ではない。
したがって、請求項1の記載のみからでは、「ハイスループットシーケンシング方法でHu羊群体の特定群体頻度を有する候補遺伝的変異を鑑定して、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較する」ことと、「採点方法を作成する」こととの技術的な関係を明確に把握することができず、そのため、「採点方法」の技術的な意味内容とその技術的な範囲、および「採点方法を作成する」ための技術的構成を特定できず、請求項1は明確でない。
上記のとおり、請求項1の記載のみでは、本願発明の技術的範囲を定めることができないことから、「採点方法」の意味内容、および、「採点方法を作成する」ための技術的構成を特定するために、発明の詳細な説明を参照する。
イ 発明の詳細な説明の記載から把握できる事項について
(ア)「採点方法」について
「採点方法」は、段落【0006】、【0016】に記載されているものの、いずれの段落も、「採点方法」が「ハイスループットシーケンシング方法でHu羊群体の特定群体頻度を有する候補遺伝的変異を鑑定して、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較することによって」作成されるものであることを記載するものにとどまる。
(イ)「比較」について
「比較」について、段落【0006】、【0016】に加えて、段落【0030】に「遺伝子注釈された結果によって、異なるSNPとInDels注釈の群体頻度の特徴を比較して、遺伝的変異のゲノム特徴分布の好みを鑑定する。InDels情報については、その長さ分布をさらに統計して、異なる長さ分布がInDels所在群体における群体分布頻度を比較する。」との記載がある。
(ウ)その他の記載について
段落【0040】~【0042】の記載から、発明の詳細な説明には、「特定の遺伝的変異に対して、評価点数を算出することができ、評価点数は、Hu羊の変異頻度×(1-他の羊群体内変異頻度)×Hu羊群体変異検出率によって算出されること、評価点数のランキング結果(表6を参照)によって、候補遺伝的変異を評価すること」が記載されていると認められる。
(なお、段落【0042】には、「評価点数=Hu羊の変異頻度×他の羊群体内変異頻度×Hu羊群体変異検出率」と記載されているが、表6に記載されている評価点数の具体例を参照すると、「他の羊群体内変異頻度」は、「1-他の羊群体内変異頻度」の誤記であることが明らかであるため、上記のとおり認定した。)
ウ 検討
(ア)発明の詳細な説明の上記イ(ア)の「採点方法」に関する記載は、請求項1の記載と同様であるため、上記アで検討したことと同様に、「ハイスループットシーケンシング方法でHu羊群体の特定群体頻度を有する候補遺伝的変異を鑑定して、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較すること」と、「採点方法」との技術的な関係を明確に把握することはできない。
(イ)また、発明の詳細な説明の上記イ(イ)の「比較」に関する記載のうち、【0030】の記載は、「異なるSNPとInDels注釈の群体頻度の特徴を比較」は、「遺伝的変異のゲノム特徴分布の好みを鑑定する」ためのものであるから、請求項1の「Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較すること」を説明するものではなく、「採点方法を作成する」こととを説明するものでもない。
(ウ)他方、発明の詳細な説明の上記イ(ウ)の「その他の記載」は、評価点数を算出する式から、Hu羊の変異頻度が高く、他の羊群体内変異頻度が低い遺伝的変異が高い評価点数となる、すなわち、評価点数を算出する式に基づいて、候補遺伝的変異として高い評価をすることを説明するものである。
このため、発明の詳細な説明の上記イ(ウ)の「その他の記載」は、特定の遺伝的変異に対して、Hu羊の変異頻度と、その他の羊群体の変異頻度を「比較」することで、評価点数を算出し、算出された評価点数により、候補遺伝的変異を評価するとの事項を説明するものとも解釈できる。
しかしながら、段落【0040】~【0042】には、上記のとおり評価点数を算出する「式」は記載されているものの、当該「式」は予め与えられているものであるから、Hu羊の変異頻度と、その他の羊群体の変異頻度を比較することで「作成」される「評価方法」ではなく、この「式」を用いて評価点数を算出することは、「採点方法を作成する」と言い得ないことも明らかである。
このため、上記(ウ)の記載は、Hu羊の変異頻度と、その他の羊群体の変異頻度を比較することで「採点方法を作成する」ことを説明するものではない。
(エ)また、上述した記載以外に、段落【0018】以降に記載されている実施例には「採点方法」なる用語は一切用いられておらず、「評価方法」であることを推測させる説明がないから、発明の詳細な説明の記載全体を参酌しても、「採点方法」の意味内容を特定することができず、また、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較することによって採点方法を作成するための技術的構成を特定できない。
(オ)このため、発明の詳細な説明の記載を参照しても、請求項1の「ハイスループットシーケンシング方法でHu羊群体の特定群体頻度を有する候補遺伝的変異を鑑定して、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較する」ことと、「採点方法を作成する」こととの技術的な関係を明確に把握することができず、そのため、「採点方法」の技術的な意味内容とその技術的な範囲、および「採点方法を作成する」ための技術的構成を特定できない。
したがって、当業者であっても、本願発明の「ハイスループットシーケンシング方法でHu羊群体の特定群体頻度を有する候補遺伝的変異を鑑定して、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較することによって、採点方法を作成する」との記載について、その技術的範囲を特定することはできず、そのため、本願発明は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
エ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人の主張の概要
審判請求人は、令和8年1月11日提出の意見書において、次のように主張する。
「「Hu羊と他の集団の遺伝的変異頻度を比較して評価方法を策定する」における「評価方法」は3つの部分に分かれる。具体的な方法の限定または基準は以下に列挙されている:
1)vcftoolsを用いて全ゲノム範囲のFst値をスライディングウィンドウ法で計算し、Fst値に基づく降順ソートにより上位5%を候補領域として選定(湖羊選択信号分析参照)。最終的に候補領域の連鎖不平衡(LD)とプライマー設計に基づき、30の候補遺伝マーカー座を獲得(湖羊純系評価モデル構築参照)
2)Sequenom SNPタイピング法により上記30部位の頻度差を確認(表6参照)。IBSスコアとの統合解析により、これらの部位が異なる羊の個体群を効果的に区別できることを実証(表8及び図4参照)
3)最終的にこれらの部位を用いて多因子線形回帰モデルを構築。段階的分析により、IBSと有意に関連した16の遺伝子マーカー部位を抽出(表9参照)。
「評価方法」は集団に対するIBS係数の予測であり、予測結果はさらにZスコアパラメータ変換を施す。変換係数の計算はリシーケンスサンプルの平均値と標準偏差値に基づく。図7を参照すると、219頭の湖羊サンプルのZスコアが0未満は重合度の高い湖羊個体、280頭の湖羊のZスコアが0.3未満かつ0を超えるものは低合度の湖羊個体、1399頭の湖羊のZスコアが0.3を超えるものは湖羊純合品種に分類できる。」
(イ)審判請求人の主張の検討
審判請求人の上記主張は、「Hu羊と他の集団の遺伝的変異頻度を比較して評価方法を策定する」における「評価方法」がどのようなものであるかを釈明するものであって、その中の「1)」~「3)」は、段落【0006】及び【0016】の記載事項に類似するものである。
これらの記載によると「採点方法」は「評価方法」に含まれており、発明の詳細な説明において、「採点方法」と「評価方法」とは明確に区別して記載されている。そのため、審判請求人の上記主張は、「採点方法」についての釈明ではないことは明らかである。
また、念のため、審判請求人の上記主張を参酌しても、「ハイスループットシーケンシング方法でHu羊群体の特定群体頻度を有する候補遺伝的変異を鑑定して、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較する」ことと、「採点方法を作成する」こととの技術的な関係を明確に把握することができず、そのため、「採点方法」の技術的な意味内容とその技術的な範囲、および「採点方法を作成する」ための技術的構成を特定できない。
したがって、審判請求人の上記主張に理由はなく、これを採用することはできない。
2 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1の「ハイスループットシーケンシング方法でHu羊群体の特定群体頻度を有する候補遺伝的変異を鑑定して、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較することによって、採点方法を作成する」との記載について、「採点方法」の意味内容を特定することができず、また、Hu羊とその他の群体遺伝的変異との頻度を比較することによって採点方法を作成するための技術的構成を特定することができないため、本願発明の技術的範囲を定めることができない。
よって、本願発明に係る特許請求の範囲の記載は、第三者の不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
第6 むすび
以上のことから、この出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項2号の規定にする要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-019114