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特許拒絶査定不服審判

2023-010137

標的化核酸編集のための系、方法、及び組成物

審判番号
2023-010137
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-152800
請求日
2023年06月20日
審決日
2025年12月16日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ザ・ブロード・インスティテュート・インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】弁理士法人特許事務所サイクス
  • 【請求人】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
  • 【請求人代理人】弁理士法人特許事務所サイクス
  • 【請求人】プレジデント アンド フェロウズ オヴ ハーヴァード カレッジ
  • 【請求人代理人】弁理士法人特許事務所サイクス
審判長/審判官
  • 審判長 長井 啓子
  • 審判官 小暮 道明
  • 審判官 深草 亜子
分類
P18 .537-WZ (C12N) / P18 .536-WZ (C12N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条1項特許法36条4項1号特許法36条6項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-152800「標的化核酸編集のための系、方法、及び組成物」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月 4日出願公開、特開2022- 41〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年9月21日(パリ条約による優先権主張 2017年9月21日)を国際出願日とする特願2020-516525号の一部を新たな特許出願として令和3年9月21日に出願されたものであって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和5年 2月14日付け 拒絶査定 令和5年 6月20日 審判請求書、手続補正書の提出 令和7年 5月15日付け 拒絶理由通知書 令和7年 8月20日 意見書、手続補正書の提出 第2 特許請求の範囲の記載 本願の特許請求の範囲は、令和7年8月20日提出の手続補正書で補正された、請求項1~5からなるものであって、このうち請求項1は、次のとおりのものである。(下線は補正箇所である。また、以下、請求項1に記載された発明を「本願発明1」という。) 「【請求項1】 触媒的に不活性なCas13エフェクタータンパク質(dCas13)、または前記触媒的に不活性なCas13エフェクタータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、エンジニアリングされた天然に存在しない系であって、前記Cas13エフェクタータンパク質がCas13aであり、 前記系が機能性成分をさらに含むか、または前記ポリヌクレオチドが前記機能性成分をさらにコードし、 前記機能性成分が、塩基編集成分であり、前記塩基編集成分が、アデノシンデアミナーゼまたはその触媒ドメインを含み、前記アデノシンデアミナーゼまたはその前記触媒ドメインが、前記dCas13の内部ループに挿入されており、前記アデノシンデアミナーゼは、RNA2に作用するヒトアデノシンデアミナーゼ(hADAR2)、同一種由来のそのホモログ、または異なる種由来のそのオルソログである、系。」 第3 当審における拒絶の理由の概要 当審が令和7年5月15日付けで通知した拒絶の理由は、次の理由1及び2を含むものである。 1 理由1(サポート要件) 本願は、特許請求の範囲の請求項1及びそれを引用する請求項2~5の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2 理由2(実施可能要件) 本願は、特許請求の範囲の請求項1及びそれを引用する請求項2~5記載の発明について、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 第4 当審の判断 1 本願発明1について 本願発明1には「RNA2に作用するヒトアデノシンデアミナーゼ(hADAR2)」と記載されているが、発明の詳細な説明に「RNA2」は記載されておらず、また、「RNA2」が技術用語として一般的に用いられているとも認められない。ここで、ADAR(adenosine deaminases that act on RNA)はRNAに作用するアデノシンデアミナーゼであり、また、Cas13aは標的RNAを切断する活性を有し、前記「RNA2」は「RNA」の誤記であることは明らかであるといえるから、前記「RNA2に作用するヒトアデノシンデアミナーゼ(hADAR2)」は「RNAに作用するヒトアデノシンデアミナーゼ2(hADAR2)」を意味していると解して、以下、検討する。 2 発明の詳細な説明の記載事項 本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある(下線は、当審が付与した。)。 (1) 技術分野 「【0004】 本発明は、概して、核酸の標的化及び編集のための、特に、目的の標的遺伝子座でのアデニンのプログラム可能な脱アミノ化のための系、方法、及び組成物に関する。」 (2) 背景技術 「【0005】 ゲノムシーケンシング技術及び分析方法の最近の進歩により、様々な生物学的機能及び疾患に関連する遺伝因子をカタログ化し、マッピングする能力は急速に向上している。個々の遺伝エレメントを選択的に摂動させることによる原因遺伝的変異の体系的なリバースエンジニアリングを可能にするとともに合成生物学、バイオテクノロジー的、及び医学的応用を進歩させるには、正確なゲノムターゲティング技術が必要である。標的化したゲノム摂動を生じさせるためにデザイナージンクフィンガー、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)、またはホーミングメガヌクレアーゼなどのゲノム編集技術が利用可能であるものの、新規戦略及び分子機構を利用した、かつ安価で、セットアップし易く、スケーリングが可能で、及び真核生物ゲノム内の複数の位置を標的化するのに適した新規のゲノムエンジニアリング技術が依然として必要とされている。それは、ゲノムエンジニアリング及びバイオテクノロジーにおける新規適用の主要なリソースとなるであろう。」 (3) 発明の概要 「【0008】 いくつかの実施形態では、dCas13タンパク質は、C末端、N末端、または両方で短縮される。いくつかの実施形態では、dCas13は、C末端上の少なくとも20、少なくとも40、少なくとも60、少なくとも80、少なくとも100、少なくとも120、少なくとも140、少なくとも160、少なくとも180、少なくとも200、少なくとも220、少なくとも240、少なくとも260、または少なくとも300アミノ酸により短縮される。いくつかの実施形態では、dCas13は、N末端上の少なくとも20、少なくとも40、少なくとも60、少なくとも80、少なくとも100、少なくとも120、少なくとも140、少なくとも160、少なくとも180、少なくとも200、少なくとも220、少なくとも240、少なくとも260、または少なくとも300アミノ酸により短縮される。いくつかの実施形態では、Cas13エフェクタータンパク質の短縮型は、C末端Δ984-1090、C末端Δ1026-1090、C末端Δ1053-1090、C末端Δ934-1090、C末端Δ884-1090、C末端Δ834-1090、C末端Δ784-1090、またはC末端Δ734-1090で短縮されており、短縮のアミノ酸位置は、Prevotella sp.P5-125 Cas13bタンパク質のアミノ酸位置に対応する。いくつかの実施形態では、Cas13エフェクタータンパク質の短縮型は、C末端Δ795-1095で短縮されており、短縮のアミノ酸位置は、Riemerella anatipestifer Cas13bタンパク質のアミノ酸位置に対応する。いくつかの実施形態では、Cas13エフェクタータンパク質の短縮型は、C末端Δ875-1175、C末端Δ895-1175、C末端Δ915-1175、C末端Δ935-1175、C末端Δ955-1175、C末端Δ975-1175、C末端Δ995-1175、C末端Δ1015-1175、C末端Δ1035-1175、C末端Δ1055-1175、C末端Δ1075-1175、C末端Δ1095-1175、C末端Δ1115-1175、C末端Δ1135-1175、C末端Δ1155-1175で短縮されており、アミノ酸位置は、Porphyromonas gulae Cas13bタンパク質のアミノ酸位置に対応する。いくつかの実施形態では、Cas13エフェクタータンパク質の短縮型は、N末端Δ1-125、N末端Δ1-88、またはN末端Δ1-72で短縮されており、短縮のアミノ酸位置は、Prevotella sp.P5-125 Cas13bタンパク質のアミノ酸位置に対応する。いくつかの実施形態では、dCas13は、Cas13エフェクタータンパク質のHEPNドメインで、Cas13エフェクタータンパク質の短縮型を含む。」 (4) 発明を実施するための形態 「【0043】 Cas13遺伝子は、いくつかの多様な細菌ゲノムに見られ、典型的には、cas1、cas2、及びcas4遺伝子ならびにCRISPRカセット(例えば、Francisella cf.novicida Fx1のFNFX1_1431-FNFX1_1428)で同じ遺伝子座にある。従って、この推定新規CRISPR-Cas系のレイアウトは、II-B型と類似しているものと思われる。さらに、Cas9と同様に、Cas13タンパク質は、トランスポゾンORF-Bと相同の容易に同定可能なC末端領域を含有し、活性RuvC様ヌクレアーゼ、アルギニンリッチ領域、及びZnフィンガー(Cas9にはない)を含む。しかしながら、Cas9と異なり、Cas13はまた、CRISPR-Casコンテクストのないいくつかのゲノムにも存在し、ORF-Bとのその比較的高い類似性から、これがトランスポゾン成分である可能性が示唆される。これが真正のCRISPR-Cas系であったならば、Cas13は、Cas9の機能性の類似体であり、新規CRISPR-Casタイプ、すなわちV型であろうことが示唆された(Annotation and Classification of CRISPR-Cas Systems.Makarova KS,Koonin EV.Methods Mol Biol.2015;1311:47-75を参照)。しかしながら、本明細書に記載される通り、Cas13は、同一のドメイン構造を有しない、従ってサブタイプV-Bと称されるC2c1pとそれを区別するため、サブタイプV-Aと称される。」 「【0072】 不活性化Cas13またはCas13ニッカーゼは、例えば、アデノシンデアミナーゼまたはその触媒ドメインを含む1つ以上の機能性ドメインと(例えば、融合タンパク質を介して)会合していてもよい。ある場合には、追加で少なくとも1つの異種NLSが提供されることが有利である。場合によっては、NLSをN末端に位置することが有利である。一般に、不活性化Cas13またはCas13ニッカーゼ上に1つ以上の機能性ドメインを位置決めすることは、機能性ドメインの正しい空間的定位が、起因する機能効果により標的に影響を及ぼすことが可能になることである。例えば、機能性ドメインがそのアデノシンデアミナーゼ触媒ドメインである場合、アデノシンデアミナーゼ触媒ドメインは、空間的定位に置かれることで、標的アデニンと接触し、脱アミノ化することができる。これは、Cas13のN/C末端以外の位置を含み得る。いくつかの実施形態では、アデノシンデアミナーゼタンパク質またはその触媒ドメインは、Cas13の内部ループに挿入される。」 「【0074】 いくつかの実施形態では、Cas13エフェクターのC末端は、短縮することができる。例えば、少なくとも20アミノ酸、少なくとも40アミノ酸、少なくとも50アミノ酸、少なくとも60アミノ酸、少なくとも80アミノ酸、少なくとも100アミノ酸、少なくとも120アミノ酸、少なくとも140アミノ酸、少なくとも150アミノ酸、少なくとも160アミノ酸、少なくとも180アミノ酸、少なくとも200アミノ酸、少なくとも220アミノ酸、少なくとも240アミノ酸、少なくとも250アミノ酸、少なくとも260アミノ酸、または少なくとも300アミノ酸、または少なくとも350アミノ酸、または最大120アミノ酸、または最大140アミノ酸、または最大160アミノ酸、または最大180アミノ酸、または最大200アミノ酸、または最大250アミノ酸、または最大300アミノ酸、または最大350アミノ酸、または最大400アミノ酸は、Cas13エフェクターのC末端で短縮され得る。Cas13短縮の例としては、C末端Δ984-1090、C末端Δ1026-1090、及びC末端Δ1053-1090、C末端Δ934-1090、C末端Δ884-1090、C末端Δ834-1090、C末端Δ784-1090、及びC末端Δ734-1090が挙げられ、ここで、アミノ酸位置は、Prevotella sp.P5-125 Cas13bタンパク質のアミノ酸位置に対応する。Cas13短縮の例としては、C末端Δ795-1095も挙げられ、アミノ酸位置は、Riemerella anatipestifer Cas13bタンパク質のアミノ酸位置に対応する。Cas13短縮の例としては、C末端Δ875-1175、C末端Δ895-1175、C末端Δ915-1175、C末端Δ935-1175、C末端Δ955-1175、C末端Δ975-1175、C末端Δ995-1175、C末端Δ1015-1175、C末端Δ1035-1175、C末端Δ1055-1175、C末端Δ1075-1175、C末端Δ1095-1175、C末端Δ1115-1175、C末端Δ1135-1175、C末端Δ1155-1175がさらに挙げられ、ここで、アミノ酸位置は、Porphyromonas gulae Cas13bタンパク質のアミノ酸位置に対応する。当業者であれば、他のCas13bオルソログ、または他のCas13タイプもしくはサブタイプ、例えば、Cas13a、Cas13c、もしくはCas13dに対して同様の短縮を設計できることが理解されるであろう。 【0075】 いくつかの実施形態では、Cas13エフェクタータンパク質のN末端は、短縮され得る。例えば、少なくとも20アミノ酸、少なくとも40アミノ酸、少なくとも50アミノ酸、少なくとも60アミノ酸、少なくとも80アミノ酸、少なくとも100アミノ酸、少なくとも120アミノ酸、少なくとも140アミノ酸、少なくとも150アミノ酸、少なくとも160アミノ酸、少なくとも180アミノ酸、少なくとも200アミノ酸、少なくとも220アミノ酸、少なくとも240アミノ酸、少なくとも250アミノ酸、少なくとも260アミノ酸、または少なくとも300アミノ酸、または少なくとも350アミノ酸、または最大120アミノ酸、または最大140アミノ酸、または最大160アミノ酸、または最大180アミノ酸、または最大200アミノ酸、または最大250アミノ酸、または最大300アミノ酸、または最大350アミノ酸、または最大400アミノ酸は、Cas13エフェクターのN末端で短縮され得る。Cas13短縮の例としては、N末端Δ1-125、N末端Δ1-88、またはN末端Δ1-72が挙げられ、ここで、短縮のアミノ酸位置は、Prevotella sp.P5-125 Cas13bタンパク質のアミノ酸位置に対応する。」 「【0157】 いくつかの実施形態では、アデノシンデアミナーゼは、哺乳類、鳥類、カエル、イカ、魚類、ハエ及び線虫を含むがこれらに限定されない1つ以上の後生動物種に由来する。いくつかの実施形態では、アデノシンデアミナーゼは、ヒト、イカまたはDrosophilaアデノシンデアミナーゼである。 【0158】 いくつかの実施形態では、アデノシンデアミナーゼは、ヒトADAR、例えば、hADAR1、hADAR2、hADAR3である。いくつかの実施形態では、アデノシンデアミナーゼは、Caenorhabditis elegans ADARタンパク質、例えば、ADR-1及びADR-2である。いくつかの実施形態では、アデノシンデアミナーゼは、Drosophila ADARタンパク質、例えば、dAdarである。いくつかの実施形態では、アデノシンデアミナーゼは、squid Loligo pealeii ADARタンパク質、例えば、sqADAR2a及びsqADAR2bである。いくつかの実施形態では、アデノシンデアミナーゼは、ヒトADATタンパク質である。いくつかの実施形態では、アデノシンデアミナーゼは、Drosophila ADATタンパク質である。いくつかの実施形態では、アデノシンデアミナーゼは、ヒトADADタンパク質、例えば、TENR(hADAD1)及びTENRL(hADAD2)である。」 「【0164】 hADAR1及びhADAR2タンパク質のある特定の突然変異は、Kuttan et al.,Proc Natl Acad Sci USA.(2012)109(48):E3295-304;Want et al.ACS Chem Biol.(2015)10(11):2512-9;及びZheng et al.Nucleic Acids Res.(2017)45(6):3369-337(その全体を参照により本明細書に組み込む)に記載されている。」 「【0304】 いくつかの実施形態では、CRISPR-Casタンパク質は、失活Cas13である。いくつかの実施形態では、失活Cas13は、HEPNドメインに1つ以上の突然変異を含む失活Cas13aタンパク質である。いくつかの実施形態では、失活Cas13aは、Leptotrichia wadeiにおいてR474A及びR1046Aに対応する突然変異(LwaCas13a)を含む。いくつかの実施形態では、失活Cas13は、Bergeyella zoohelcum ATCC 43767から生じるCas13bタンパク質のR116A、H121A、R1177A、H1182A、またはCas13bオルソログのそれに対応するアミノ酸位置のうちの1つ以上を含む失活Cas13bタンパク質である。」 「【0366】 ある特定の例示の実施形態では、CRISPRエフェクタータンパク質は、表2から選択されるCas13aタンパク質である。 【表2】 [図:0001435451000001.jpg] [図:0001435451000002.jpg] 」 (5) 実施例 「【0861】 ADの選択及び設計: 多くのADを使用し、各々は、活性レベルが変化している。これらのADは、 【0862】 1.ヒトADAR(hADAR1、hADAR2、hADAR3) 【0863】 2.イカOctpus vulgaris ADAR 【0864】 3.イカSepia ADAR;Doryteusthis opalescensADAR 【0865】 ADAT(ヒトADAT、Drosophila ADAT)」 「【0901】 RNA編集のための哺乳類構築物の設計及びクローニング PspCas13bは、HEPNドメインの触媒部位で、2つのヒスチジンからアラニンへの突然変異(H133A/H1058A)を介して触媒的に不活性に作成された(dPspCas13b)。ヒトADAR1及びADAR2のデアミナーゼドメインを合成し、PCR増幅し、pcDNA-CMVベクター骨格にギブソンクローニングし、GSまたはGSGGGGS(配列番号296)リンカーを介して、C末端でdPspCas13bに融合した。異なるリンカーについて試験した実験では、以下の追加のリンカー:GGGGSGGGGSGGGGS、EAAAK(配列番号297)、GGSGGSGGSGGSGGSGGS(配列番号298)、及びSGSETPGTSESATPES(XTEN)(配列番号299)を、dPspCas13bとADAR2ddとの間にクローニングした。適切な突然変異体をdPspCas13b-GSGGGGS(配列番号761)骨格にギブソンクローニングすることによって、特異性突然変異体を生成した。」 「【0933】 REPAIRv1系を疾患細胞に送達することは、治療的使用の前提条件であるため、従って、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどの治療上適切なウイルスベクターにパッケージングすることができるREPAIRv1構築物を設計しようとした。AAVベクターは、4.7kbのパッケージング制限を有し、プロモーター及び発現調節エレメントと共に、大きいサイズのdCas13b-ADARDD(4473bp)を収容することができない。サイズを低下させるため、RNA編集活性のためのADAR2DD(E488Q)に融合したdCas13の様々なN末端及びC末端短縮を試験した。試験した全てのC末端短縮は、まだ機能しており、かつ、ルシフェラーゼシグナルを回復することができることが判明し(図59)、最大の短縮であるC末端Δ984-1090(融合タンパク質4,152bpの合計サイズ)は、AAVベクターのパッケージング制限内に収まるほど十分に小型であった。」 「【0949】 Cas13b6(RanCas13b)、Cas13b11(PguCas13b)、及びCas13b12(PspCas13b)を含むCas13bオルソログを試験した。オルソログごとに、Cas13bオルソログのN末端(赤色)及びC末端(青色)の各々から20アミノ酸を徐々に短縮した。その後、この短縮されたタンパク質をADAR2dd(E488Q)に融合し、発現対照としてGaussiaルシフェラーゼを有するCypridinaルシフェラーゼにおける成熟前終止コドンのRNA編集活性のための融合タンパク質を評価した。Cas13b6(RanCas13b)のC末端の300アミノ酸を短縮することで、RNA編集活性の約2/3を保持することができた一方、AAVのパッケージング制限に許容できるほど近くタンパク質を短くすることができたことが判明した。AAVは概して、約4.7kbのゲノムをパッケージングすることができ、パッケージング効率は、大きいゲノムでは減少する。Cas13b6、Cas13b11、及びCas13b12の試験結果を図67~69にそれぞれ示す。」 3 引用文献の記載事項 (1) 引用文献7 同拒絶の理由で本願の原出願の出願時(以下、単に「本願出願時」という。)の技術水準を示すために引用された刊行物であるCell, 2017年08月10日, Vol.170, pp.714-726(以下、「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。(引用文献7は英語で記載されているので、合議体による翻訳文で示す。以下、同様である。) ア Cas13aによるRNA誘導型RNA切断のための分子構造 (表題) イ 図1 LbuCas13a-crRNA-標的RNA複合体の全体構造 (A) LbuCas13aのドメイン構成 (B) crRNA-標的RNA二重鎖の模式図 (C) リボン表示におけるLbuCas13a-crRNA-標的RNA複合体の全体構造の正面図および背面図。crRNAガイド鎖を褐色(反復領域)および赤色(スペーサー)で示す。標的RNAを青色で示す。図S1及び表S1も参照。 [図:0001435451000003.jpg] (2) 引用文献8 同拒絶の理由で本願出願時の技術水準を示すために引用された刊行物であるCommunications Biology, 2022, Vol.5, Article71, https://doi.org/10.1038/s42003-022-03025-4(以下、「引用文献8」という。)には、次の事項が記載されている。 ア Rhodobacter capsulatus由来のRNA依存性RNase Cas13aの構造および機構 (表題) イ 図1 RcCas13a-crRNA複合体の全体構造 a 触媒活性に重要な残基がそれぞれ赤色(trans-ssRNA切断)およびピンク色(pre-crRNAプロセシング)で強調されているRcCas13aのドメイン構造 b 2つの独立した活性部位の位置を赤色の円で示し、crRNAのシード領域(位置10-14)をシアン色の円で示す。 c RNase活性部位を拡大し、触媒活性に重要な残基(Arg 464/His 469およびArg 1052/His 1057)を赤色スティックモデルとして強調する。 d プレcrRNAプロセシング部位の拡大図であり、プレcrRNA切断に必須のArg 1085、Asn 1089およびHis 1113(下記参照)がピンク色で強調されている。crRNAを橙色スティックモデルとして示す。 [図:0001435451000004.jpg] 4 理由1(サポート要件)について (1) 本願発明1が解決しようとする課題は、発明の詳細な説明における「本発明は、概して、核酸の標的化及び編集のための、特に、目的の標的遺伝子座でのアデニンのプログラム可能な脱アミノ化のための系、方法、及び組成物に関する。」(【0004】段落)、「新規戦略及び分子機構を利用した、かつ安価で、セットアップし易く、スケーリングが可能で、及び真核生物ゲノム内の複数の位置を標的化するのに適した新規のゲノムエンジニアリング技術が依然として必要とされている。」(【0005】段落)との記載、請求項1における「触媒的に不活性なCas13エフェクタータンパク質(dCas13)、または前記触媒的に不活性なCas13エフェクタータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、エンジニアリングされた天然に存在しない系であって、前記Cas13エフェクタータンパク質がCas13aであり、 前記系が機能性成分をさらに含むか、または前記ポリヌクレオチドが前記機能性成分をさらにコードし、 前記機能性成分が、塩基編集成分であり、前記塩基編集成分が、アデノシンデアミナーゼまたはその触媒ドメインを含み、前記アデノシンデアミナーゼまたはその前記触媒ドメインが、前記dCas13の内部ループに挿入されており、」との記載、及び請求項4における「請求項1に記載の系を細胞に送達することを含む、標的配列のプログラム可能なかつ標的化された塩基編集の方法;ただし、ヒトを処置する方法を除く。」との記載に基づくと、塩基編集成分であるアデノシンデアミナーゼまたはその触媒ドメインが内部ループに挿入されている、触媒的に不活性なCas13aエフェクタータンパク質(dCas13a)を用いて、標的遺伝子座でのアデニンを脱アミノ化するための系を提供すること、及び前記系を用いた標的配列のプログラム可能なかつ標的化された塩基編集の方法を提供することであると認められる。 ここで、本願発明1が特許法第36条第6項第1号に規定するサポート要件を満たすためには、発明の詳細な説明に、当業者が以下のア~ウの点を理解でき、本願発明1が上記課題を解決できることを認識できるように記載されている必要がある。 ア (Cas13aの不活性化) 様々な由来のCas13aを触媒的に不活性化できること イ (内部ループの選択) 様々な由来のdCas13aについて、アデノシンデアミナーゼまたはその触媒ドメインを挿入した場合でも、標的遺伝子座でのアデニンを脱アミノ化するための標的結合性を維持でき、さらに、挿入したアデノシンデアミナーゼまたはその触媒ドメインが標的遺伝子座でのアデニンに作用できる立体配置となるような、dCas13aの内部ループを選択できること ウ (アデノシンデアミナーゼの選択) 様々な由来のdCas13aそれぞれの内部ループに挿入しても、標的遺伝子座でのアデニンに対して脱アミノ化活性を発揮できるようなhADAR2、同一種由来のそのホモログ、または異なる種由来のそのオルソログを選択できること (2)ア(Cas13aの不活性化)について 発明の詳細な説明には、Cas13aの不活性化については、「いくつかの実施形態では、失活Cas13aは、Leptotrichia wadeiにおいてR474A及びR1046Aに対応する突然変異(LwaCas13a)を含む。」(【0304】段落)と記載されるにとどまり、Cas13aを触媒的に不活性化した実施例は記載されていない。一方、Cas13bの不活性化については、Riemerella anatipestifer Cas13b、Porphyromonas gulae Cas13b、又はPrevotella sp.P5-125 Cas13bのアミノ酸位置に基づいてCas13bのC末端又はN末端の短縮型が例示され(【0008】、【0074】、【0075】段落)、実施例3-5にはHEPNドメインの触媒部位を変異させたCas13b(H133A/H1058A)(【0901】段落)及びCas13bの短縮型(【0933】【0949】段落)を調製したことが記載されている。 しかし、Cas13bとCas13aは、Cas13ファミリーにおいて異なるサブタイプとして分類されているとおり、ドメイン配置も異なり、互いにアミノ酸配列の同一性が高いとはいえない。そして、発明の詳細な説明(【0043】段落)にも記載されているとおり、Cas13は多様な細菌が有しており、Cas13ファミリーメンバーのひとつであるCas13aについて、表2(【0366】段落)には由来細菌が異なる33種類が例示されているところ、例えば、1340アミノ酸残基である配列番号34、1437アミノ酸残基である配列番号35、697アミノ酸残基である配列番号64、204アミノ酸残基である配列番号65、1082アミノ酸残基である配列番号66等、アミノ酸残基数だけでも多様であり、残基数に応じて立体構造も多様であるといえるから、上記のCas13bの短縮型やHEPNドメインの触媒部位の変異と同様にして、あるいは、「R474A及びR1046Aに対応する突然変異」との示唆のみから、Cas13aを不活性化できると推認することはできない。また、様々な由来のCas13aを触媒的に不活性化できる汎用的な手法が、本願出願時において広く知られていたとも認められない。したがって、本願出願時の技術水準を考慮しても、発明の詳細な説明におけるCas13aの不活性化に関する開示は不足しており、当業者が上記ア(Cas13aの不活性化)の点を理解できるとは認められない。 審判請求人は、令和7年8月20日提出の意見書において、【0304】段落の上記記載がCas13aの触媒活性を失わせるための特定の変異を直接特定していること、参考文献1(Nature 538:270-273, 2016)においてCas13aにおけるRNAに不可欠なHEPNドメインが同定されていること、引用文献7においてCas13aの結晶構造が報告されていること、参考文献2(Science 353:aaf5573, 2016)においてCas13aが特徴付けされその触媒メカニズムが実証されていることに基づいて、Cas13aを触媒的に不活性化できることは、本願明細書に明示的に開示されており、また本願優先日以前からの技術常識であると主張している。 しかし、上述のとおり、本願の発明の詳細な説明において、Cas13aが列挙されている表2(【0366】段落)には、【0304】段落、参考文献1、引用文献7及び参考文献2に記載されたCas13aとはアミノ酸長が大きく異なるCas13aも含まれており、例えば、配列番号65に示された204アミノ酸残基からなるCas13aにおいて、【0304】段落にいう「R474A及びR1046Aに対応する」位置がどこに当たるのかは不明であるから、それらについても触媒的に不活性化するための指針が示されていると認めることはできない。 (3)イ(内部ループの選択)について 発明の詳細な説明において、「一般に、不活性化Cas13またはCas13ニッカーゼ上に1つ以上の機能性ドメインを位置決めすることは、機能性ドメインの正しい空間的定位が、起因する機能効果により標的に影響を及ぼすことが可能になることである。例えば、機能性ドメインがそのアデノシンデアミナーゼ触媒ドメインである場合、アデノシンデアミナーゼ触媒ドメインは、空間的定位に置かれることで、標的アデニンと接触し、脱アミノ化することができる。これは、Cas13のN/C末端以外の位置を含み得る。いくつかの実施形態では、アデノシンデアミナーゼタンパク質またはその触媒ドメインは、Cas13の内部ループに挿入される。」(【0072】段落)と記載されているものの、Cas13(Cas13a及びCas13b)における内部ループについて、具体的な位置等は示されていない。そして、令和4年12月14日提出の意見書の(5)において、審判請求人は、「「内部ループ」という用語は、当技術分野においては十分に確立された技術用語であり、当業者であれば「内部ループ」の意味を理解することができます。ループとは、αヘリックスやβシートなどの通常のタンパク質二次構造を典型的には連結させるための明確に確立されたタンパク質構造です。そのようなループ領域は、ルーチンかつ慣用のモデリング技術および方法を使用して、配列から容易にモデル化することができます。」と述べている。しかし、ループ領域をモデル化することができるとしても、タンパク質二次構造を連結するループ領域はCas13aにおいて多数見いだされ、また、Cas13aの内部にはガイドRNAと標的RNAが存在するから(必要であれば、引用文献7:図1、引用文献8:図1等参照)、いずれの内部ループを選択すれば、嵩高いアデノシンデアミナーゼタンパク質またはその触媒ドメインを挿入してもCas13aの標的結合性を維持することができるのか、また、アデノシンデアミナーゼタンパク質またはその触媒ドメインを標的アデニンと接触し脱アミノ化できる場に配置することができるのかを当業者が推認することは困難であり、しかも本願の発明の詳細な説明にそのための指針は示されていない。そして、上記(2)で述べたとおり、Cas13aはその由来に応じてアミノ酸残基数が大きく異なり、それに応じて立体構造(ループ領域の位置や数、ガイドRNAの位置など)も多様であるところ、何らの指針が示されていない状態では、当業者といえども、様々な由来のdCas13aについて、どのようにしてアデノシンデアミナーゼまたはその触媒ドメインを挿入する内部ループを選択すればよいのか、理解することができるとは、到底認めることができない。 審判請求人は、令和7年8月20日提出の意見書において、アデノシンデアミナーゼを標的アデニンと接触させるための空間的配置に関する一般的な指針として上記【0072】段落の記載を挙げている。 しかし、この記載は、標的アデニンと接触し、脱アミノ化することができる位置にアデノシンデアミナーゼを配置するという達成すべき課題を述べているにとどまり、また、位置としてはN末端、C末端、及び内部が挙げられているから、Cas13aの全体にわたって配置できる可能性があると述べているにすぎない。よって、【0072】段落に、アデノシンデアミナーゼを標的アデニンと接触させるための空間的配置に関する指針が示されていると認めることはできない。 さらに、審判請求人は、本願優先日時点において、タンパク質ループへのドメイン挿入はタンパク質工学における標準的な技術であり、構造解析に基づいて適切なループ領域を特定することは、当業者にとって熟知された手法であったこと、引用文献7にも記載されているようにCas13aの結晶構造は既に公表されており、内部ループの特定に必要な構造情報は提供されていたこと、タンパク質融合に柔軟なグリシン-セリンリンカーを使用することは、当技術分野において一般的な手法であったことに基づき、これらの確立された方法と本願明細書の開示を鑑みれば、当業者であればCas13a内の適切な内部ループを特定することは十分に可能であり、そして既知のリンカー戦略を用いてアデノシンデアミナーゼを挿入することも過度の実験を行うことなく十分に可能であったと主張している。 しかし、本願発明1において求められているのは、単に機能を維持した状態でアデノシンデアミナーゼ又はその触媒ドメインをdCas13の内部ループに挿入することではなく、内部に包含するガイドRNAと標的RNAに対するdCas13aの結合性を維持した上で、当該標的RNAに存在する標的アデニンと接触し脱アミノ化できる立体的な位置関係と機能を保持した状態でアデノシンデアミナーゼ又はその触媒ドメインを、dCas13の内部ループに挿入することである。このようなdCas13aとアデノシンデアミナーゼ又はその触媒ドメインとの組み合わせに特有の条件下でのCas13aの内部ループの選択について、発明の詳細な説明に具体的な開示をすることなく、一般的な開示のみで当業者が理解できるに足りるとは、到底認めることができない。 (4)ウ(アデノシンデアミナーゼの選択)について 本願発明1における「ホモログ」及び「オルソログ」について、発明の詳細な説明には、「「ホモログ」は、それがそのホモログであるところのタンパク質と同じまたは同様の機能を果たす同じ種のタンパク質」であり、「ホモログタンパク質は、構造上関係がなくてもよく、または構造上部分的にのみ関係している」こと、「「オルソログ」は、それがそのオルソログであるところのタンパク質と同じまたは同様の機能を果たす異なる種のタンパク質」であり、「オルソログタンパク質は、構造上関係があってもよいがなくてもよく、または構造上部分的にのみ関係している」ことが記載されており(【0042】段落)、令和7年8月20日提出の意見書においては、当該記載に基づいて「ホモログとは、同じ種において同じまたは類似の機能を果たすタンパク質を指し、オルソログとは、異なる種において同じまたは類似の機能を果たすタンパク質を指す」と述べている。また、同意見書において、【0158】、【0164】、【0861】~【0865】段落の記載に基づいて、hADAR2のホモログとしてhADAR1を、hADAR2のオルソログとしてイカ(Doryteuthis pealeii)のADAR2、およびDrosophilaのADARを挙げている。そうすると、本願発明1における「RNA2に作用するヒトアデノシンデアミナーゼ(hADAR2)、同一種由来のそのホモログ、または異なる種由来のそのオルソログ」とは、ヒト及び他の生物種由来の、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)全般を意味していると認められる。 発明の詳細な説明には、ヒトADAR1及びADAR2のデアミナーゼドメインをdCas13bのC末端に融合したことが記載されているものの(【0901】段落)、dCas13aを用いた例は記載されていない。また、dCas13a及びdCas13bのいずれについても、内部ループにアデノシンデアミナーゼタンパク質またはその触媒ドメインを挿入した例は記載されていない。さらに、【0156】-【0158】段落に列挙されているアデノシンデアミナーゼタンパク質のうち、ADARまたはその触媒ドメインであれば、dCas13aの内部ループに挿入した場合に、標的アデニンと接触できる立体構造を有しており、かつ、脱アミノ化作用を維持できることを理解できるように、具体的な根拠に基づいて説明されていない。仮に、ADARをhADAR2に特定した場合であっても、dCas13aの内部ループに挿入した場合に、標的アデニンと接触できる立体構造を有し、かつ、脱アミノ化作用を維持できることを理解できるように記載されているとはいえない。そして、上記(2)で述べたとおり、Cas13aはその由来に応じてアミノ酸残基数が大きく異なり、それに応じて立体構造(ループ領域の位置や数、ガイドRNAの位置など)も多様であるのだから、由来の異なるそれぞれのdCas13aについて、どのようなADARやその触媒ドメインを内部ループに挿入すれば標的遺伝子座でのアデニンに対して脱アミノ化活性を発揮できるのかも、当業者といえども認識できないといえる。よって、様々な由来のdCas13aそれぞれの内部ループに挿入しても、標的遺伝子座でのアデニンに対して脱アミノ化活性を発揮できるようなADARをどのように選択すればよいのか、理解できるとは認められない。 審判請求人は、同意見書において、補正により、アデノシンデアミナーゼを、hADAR2、同一種由来のそのホモログ、または異なる種由来のそのオルソログに限定したことにより、ウの要件は満たされたと述べている。 上述したとおり、補正後の「RNA2に作用するヒトアデノシンデアミナーゼ(hADAR2)、同一種由来のそのホモログ、または異なる種由来のそのオルソログ」は、ヒト及び他の生物種由来の、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)全般を意味していると解釈すべきものであって、ADARの他にADATやADADを包含していた補正前の「アデノシンデアミナーゼ」の範囲は、補正により、減縮されていると認められる(【0156】段落)。しかし、上述したとおり、【0156】-【0158】段落に列挙されているアデノシンデアミナーゼのうち、ADARまたはその触媒ドメインであれば、dCas13aの内部ループに挿入した場合に、標的アデニンと接触できる立体構造を有しており、かつ、脱アミノ化作用を維持できることを理解できるように、具体的な根拠に基づいて説明されていないから、審判請求人の主張は採用できない。 (5)小括 以上のとおり、上記ア~ウの点は、いずれも、発明の詳細な説明に当業者が理解できるように記載されているとはいえなないから、本願発明1が上記課題を解決できると当業者が認識できるとは認められない。 よって、本願発明1は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 5 理由2(実施可能要件)について 上記のような発明の詳細な説明の記載、及び、本願出願時の技術水準を考慮すると、上記4で示したのと同様の理由により、本願発明1の「系」を作ることができ、かつ、使用できるように、発明の詳細な説明が記載されているとは認められない。 よって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明1について、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1項の規定を満たしておらず、また、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-010137

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