特許拒絶査定不服審判
2024-018143
ログデータ解析装置、ログデータ解析方法及びプログラム
- 審判番号
- 2024-018143
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-506414外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年11月13日
- 審決日
- 2025年10月28日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】NTT株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 分類
- P18 .561-WZ (G06F) / P18 .536-WZ (G06F) / P18 .537-WZ (G06F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項、特許法第17条の2第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-506414「ログデータ解析装置、ログデータ解析方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔2022年(令和4年)9月22日国際公開、WO2022/195690〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)3月15日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年 3月 6日付け:拒絶理由通知書
令和6年 5月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 9月 3日付け:拒絶査定(原査定)
令和6年11月13日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 7月 9日付け:拒絶理由(最後)通知書
令和7年 9月 4日 :意見書、手続補正書の提出
第2 令和7年9月4日提出の手続補正書に係る手続補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年9月4日提出の手続補正書に係る手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項5の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 プロセッサを有するログデータ解析装置におけるログデータ解析方法であって、
前記プロセッサにより、ログデータと当該ログデータのクラスタリングされたクラスタを示すクラスタラベルを含む訓練データの距離学習によって、クラスタ間により遠ざけるためのマージンを入れた埋め込み空間を訓練し、
前記プロセッサにより、
処理対象のログデータから1以上の文字列でなる語彙の集合を計算して、語彙記憶部に記憶させることと、
前記語彙記憶部に記憶された語彙を辞書として使用して、前記処理対象のログデータを部分単語のトークンに分割することと、
前記部分単語のトークンを使って、前記処理対象のログデータを表現する、前記訓練データの距離学習によって訓練された前記マージンを入れた埋め込み空間でのベクトルを算出することと、
クラスタ間により遠ざけるためのマージンを入れた各クラスタとの類似度に基づいて、前記ベクトルを各クラスタ又はそれらとは一致しない新規クラスタにクラスタリングすることと、
前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れかと一致しない新規クラスタである場合は前記クラスタリングの結果は正解ではないと評価することと、
前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れかと一致して前記クラスタリングの結果は正解であると評価した場合、前記処理対象のログデータと前記クラスタリングの結果を示すクラスタラベルとを、前記訓練データに追加することと、
を、複数の処理対象のログデータのそれぞれに対して行い、
前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れとも一致せずに前記クラスタリングの結果が正解でないと評価した場合、前記プロセッサにより、前記クラスタリングの結果が正解であると評価した場合の前記処理対象のログデータと前記クラスタラベルとが追加された前記訓練データにより再訓練する、
ログデータ解析方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正後の請求項5は、本件補正前の、令和6年11月13日提出の手続補正書に係る手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項6に対応したものと認められるところ、この本件補正前の請求項6の記載は次のとおりである。
「 プロセッサを有するログデータ解析装置におけるログデータ解析方法であって、
前記プロセッサにより、ログデータと当該ログデータのクラスタリングされたクラスタを示すクラスタラベルを含む訓練データの距離学習によって、クラスタ間により遠ざけるためのマージンを入れた埋め込み空間を訓練し、
前記プロセッサにより、
処理対象のログデータから1以上の文字列でなる語彙の集合を計算して、語彙記憶部に記憶させることと、
前記語彙記憶部に記憶された語彙を辞書として使用して、前記処理対象のログデータを部分単語に分割することと、
前記部分単語を使って、前記処理対象のログデータを表現する、前記訓練データの距離学習によって訓練された前記マージンを入れた埋め込み空間でのベクトルを算出することと、
クラスタ間により遠ざけるためのマージンを入れた各クラスタとの類似度に基づいて、前記ベクトルをクラスタリングすることと、
前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れかと一致しない場合は前記クラスタリングの結果は正解ではないと評価することと、
前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れかと一致して前記クラスタリングの結果は正解であると評価した場合、前記処理対象のログデータと前記クラスタリングの結果を示すクラスタラベルとを、前記訓練データに追加することと、
を、複数の処理対象のログデータのそれぞれに対して行い、
前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れとも一致せずに前記クラスタリングの結果が正解でないと評価した場合、前記プロセッサにより、前記クラスタリングの結果が正解であると評価した場合の前記処理対象のログデータと前記クラスタラベルとが追加された前記訓練データにより再訓練する、
ログデータ解析方法。」
2 補正の適否について
(1)本件補正後の請求項5に係る発明の構成
本件補正により、本件補正後の請求項5に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、「クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れかと一致しない新規クラスタである場合は正解ではないと評価する」及び「前記クラスタリングの結果が前記各クラスタのいずれとも一致せずに前記クラスタリングの結果が正解ではないと評価した場合、…再訓練する」との構成を含み、これらの構成によれば、「クラスタリングの結果」が「各クラスタのいずれかと一致しない新規クラスタ」である場合は、「正解ではない」と評価して「再訓練」を実施するよう構成されていると解される。
(2)当初明細書等の記載
そして、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「クラスタリング」、「クラスタリング」の結果、「再訓練」について、次の記載がある。(なお、下線は、強調のため当審が付与した。)
「 【0055】
図9は、このような代表ベクトルまでの距離によるログデータのクラスタ分類例を示す模式図である。丸印はログデータのベクトル表現を示し、バツ印はクラスタ毎に設定した代表ベクトルを示している。また、破線は、クラスタ間の識別境界を示している。丸数字の1で示される処理対象のログデータのベクトル表現は、類似度が最大であるクラスタAの代表ベクトルとの間の類似度が閾値以下であるので、このログデータはクラスタAへ分類される。一方、丸数字の2で示されるベクトル表現は、クラスタAの代表ベクトル及びクラスタBの代表ベクトルの何れとの間の類似度とも閾値を超えているので、このログデータは、クラスタA及びBの何れへも分類されず、新クラスタへ分類される。
【0056】
次に、プロセッサ101は、ログ-クラスタ類似度算出部13としての動作を実行して、処理対象のログデータLogと出力ラベルOutputで示されるクラスタとの類似度Accuracyを計算する(ステップS19)。
【0057】
そして、プロセッサ101は、クラスタリング精度評価部14としての動作を実行して、類似度Accuracyを評価することで、出力ラベルOutputが正解であるか否か判定する(ステップS20)。
【0058】
ここで、出力ラベルOutputが正解であると判定したならば、プロセッサ101は、ログデータLogとクラスタラベルLabelを訓練データに追加する(ステップS21)。すなわち、プロセッサ101は、処理対象のログデータLogをログデータ保持部DB1に追加すると共に、出力ラベルOutputをクラスタラベルLabelとしてクラスタラベル保持部DB2に追加する。
【0059】
また、プロセッサ101は、出力ラベルOutputを出力する(ステップS22)。例えば、プロセッサ101は、入出力インタフェース105を介して表示部108に出力ラベルOutputを表示したり、通信インタフェース104を介して外部のデータ処理装置へ出力ラベルOutputを送信したりする。
【0060】
その後、プロセッサ101は、入出力インタフェース105を介して入力部107から、あるいは、通信インタフェース104を介して外部のデータ処理装置から、ログデータの解析の終了が指示されたか否か判定する(ステップS23)。未だ終了が指示されていないと判定した場合には、プロセッサ101は、上記ステップS11の処理から繰り返す。また、終了が指示されていると判定した場合には、プロセッサ101は、このフローチャートに示す処理を終了する。
【0061】
また、上記ステップS20において、出力ラベルOutputが正解ではないと判定したならば、プロセッサ101は、埋め込み訓練部15としての動作を実行して、訓練データによる再訓練を行う(ステップS24)。すなわち、プロセッサ101は、上記ステップS10での初期訓練後のログデータの解析により、ログデータLogとクラスタラベルLabelが追加された訓練データにより、ログベクトル集合を更新する。」
「 【0083】
なお、以上のログデータ解析処理は、図13乃至図15のアルゴリズムのように表すことができる。ここで、図13は全体のアルゴリズムの一例、図14はログを分類のアルゴリズムの一例、図15は訓練のアルゴリズムの一例、をそれぞれ示している。
…(中略)…
【0088】
また、一実施形態に係るログデータ解析装置1は、クラスタリングの結果である出力ラベルOutputを、ログデータとクラスタリングされたクラスタとの類似度に基づいて評価する評価部としてのログ-クラスタ類似度算出部13及びクラスタリング精度評価部14と、クラスタリングの結果が正解であると評価した場合に、ログデータLogとクラスタリングされたクラスタを示すクラスタラベルLabelとを、訓練データに追加する追加部としてのクラスタリング精度評価部14と、をさらに備える。
【0089】
よって、訓練データを追加することができるので、距離学習による増分的な訓練を行えるようになる。
【0090】
すなわち、一実施形態に係るログデータ解析装置1は、クラスタリングの結果が正解ではないと評価した場合に、訓練データを使って、埋め込み空間、各クラスタの代表ベクトル及び閾値を再訓練する再訓練部としての埋め込み訓練部15をさらに備える。」
「 【0094】
[評価例]
図16は、従来のログデータ解析手法を用いたログ解析装置の解析結果と一実施形態に係るログデータ解析装置1の解析結果とを示す模式図である。
【0095】
ここでは、2000件のLoghubのHealthAppログデータ(アノテーション付き)により評価した。ベースライン手法は、ログデータの文字列のスペース区切りによる分割と、マージン無し損失による訓練である。また、評価方法は、100件の初期訓練データ、1900件の初期訓練データ以外の分類精度であり、分類精度は類似度Accuracyで評価した。」
「【図6】
[図:0001430829000001.jpg]
」
([当審注]S16の右側にある「YES」は「NO」の、下側にある「NO」は「YES」の誤記と認められる。)
「【図9】
[図:0001430829000002.jpg]
」
「【図13】
[図:0001430829000003.jpg]
」
(3)新規事項の有無についての判断
上記(2)で摘記した記載において、当初明細書等の【0088】に記載の「クラスタリングの結果である出力ラベルOutputを、ログデータとクラスタリングされたクラスタとの類似度に基づいて評価する」、及び、当初明細書等の【図6】に記載の「ログとクラスタの類似度を計算」(S19)における「類似度」は、当初明細書等の【0056】及び【0057】の記載を参酌すれば、「類似度Accuracy」の誤記と認められる。
また、当初明細書等の【図13】について、当初明細書等には、【0083】に「全体のアルゴリズムの一例である」といった説明しかなく、どのような事項が記載されているか必ずしも明らかではないものの、その4行目に「出力OutputをAccuracyで評価」と記載されていることからすれば、4行目の後の6行目に記載の「if 分類を誤った場合 Output≠Label」は、「類似度Accuracy」により評価した結果、出力ラベル(クラスタリングの結果)が正解でない場合、を意味しているものと解するのが合理的である。(【図13】において、「Label」と「Labels」とは異なるパラメータとして書き分けられていることにも留意されたい。)
そうすると、上記(2)より、当初明細書等には、
・処理対象となるログデータのベクトル表現と各クラスタの代表ベクトルとの間の距離である「類似度」を算出して、「類似度」が閾値以上のものがあれば、「クラスタリングの結果」として「類似度」が最大のクラスタを出力し、一方、「類似度」が閾値以上のクラスタがなければ、「クラスタリングの結果」として、「新規クラスタ」を出力すること(【0055】、【図6】、【図9】)、
・ログデータの分類精度を示す「類似度Accuracy」を、処理対象となるログデータと出力ラベル(クラスタリングの結果)で示されるクラスタとから計算し、「類似度Accuracy」を評価することで、出力ラベル(クラスタリングの結果)が正解か否かを判定すること(【0056】、【0057】、【0088】、【0095】、【図13】)
・出力ラベル(クラスタリングの結果)が正解でない場合、「再訓練」を行うこと(【0061】、【図6】)
が記載されていると認められる。
そして、当初明細書等には、「クラスタリングの結果」が「各クラスタのいずれかと一致しない新規クラスタ」である場合は、「正解ではない」と評価して「再訓練」を実施することは、記載も示唆もない。また、「類似度Accuracy」を評価した結果、出力ラベル(クラスタリングの結果)が正解でない場合と、「クラスタリングの結果」が「各クラスタのいずれかと一致しない新規クラスタ」である場合とが等価であることは、当初明細書等には記載も示唆もなく、そのことが、本願出願日における技術常識であったともいえない。
よって、本件補正後の請求項5に係る補正を含む本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものではない。
(4)請求人の主張について
請求人は、本件補正に関して、令和7年9月4日提出の意見書において、次のように主張している。(下線は、請求人が付したものである。)
(主張1)
「また、「クラスタ間により遠ざけるためのマージンを入れた各クラスタとの類似度とその閾値に基づいて、前記ベクトルを各クラスタ又はそれらとは一致しない新規クラスタにクラスタリングするクラスタリング部」及び「前記クラスタリングの結果が前記各クラスタのいずれかと一致しない新規クラスタである場合は前記クラスタリングの結果は正解ではないと評価する評価部」における補正箇所については、本願発明の当初明細書及び図面の記載から、特には、明細書の[0048]乃至[0055]等の記載及び図面の[図6]、[図9]等の記載から自明な事項を補正したものです。
…(中略)…
(1C) 補正後の請求項5について
補正後の請求項1の補正箇所と軌を一にする補正を行ったものです。」
(主張2)
「そして、後者の「閾値以下の場合(ステップ17:YES)は新規クラスタに分類される(ステップ18)」が、補正前の請求項1における「前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れかと一致しない場合」となります。この点が明瞭となるように、請求項1の当該記載を「前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れかと一致しない新規クラスタである場合は前記クラスタリングの結果は正解ではないと評価する評価部」と補正致しました。」
上記各主張について検討する。
(主張1について)
上記(2)で摘記した箇所以外の記載を参酌しても、当初明細書等には、「前記クラスタリングの結果が前記各クラスタのいずれかと一致しない新規クラスタである場合は前記クラスタリングの結果は正解ではないと評価する」ことは、記載も示唆もなく、そのことが本願出願時における技術常識であったとも認められない。
(主張2について)
主張2が正しければ、当初明細書等の【図6】の「新規クラスタに分類」(S18)の後、直ちに、「再訓練」(S24)を実行するはずであるが、当該【図6】はそのように記載されていない。むしろ、当初明細書等の【図6】においては、「クラスタリングの結果」が「新規クラスタ」(S18)であるか、「類似度が最大のクラスタ」(S17)であるかに関わらず必ず、「ログとクラスタの類似度を計算」(S19)した上で「正解」か否かを判断(S20)しており、当初明細書等の【0056】、【0057】の記載とも整合する。
よって、主張2は、当初明細書等の記載に基づくものではない。
したがって、請求人の上記各主張は、いずれも採用することができない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内でしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和7年9月4日提出の手続補正書に係る手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和6年11月13日提出の手続補正書に係る手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項6に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 当審拒絶理由
令和7年7月9日付けで当審が通知した最後の拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、以下のとおりである。
(1)理由1(明確性要件)
この出願は、特許請求の範囲の請求項6の記載は、特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たしていない。
(2)理由2(実施可能要件)
この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
3 判断
(1)理由1(明確性要件)について
請求項6には、次の記載がある。
「 前記部分単語を使って、前記処理対象のログデータを表現する、前記訓練データの距離学習によって訓練された前記マージンを入れた埋め込み空間でのベクトルを算出することと、
クラスタ間により遠ざけるためのマージンを入れた各クラスタとの類似度に基づいて、前記ベクトルをクラスタリングすることと、
前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れかと一致しない場合は前記クラスタリングの結果は正解ではないと評価することと、
前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れかと一致して前記クラスタリングの結果は正解であると評価した場合、前記処理対象のログデータと前記クラスタリングの結果を示すクラスタラベルとを、前記訓練データに追加することと、
を、複数の処理対象のログデータのそれぞれに対して行い、
前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れとも一致せずに前記クラスタリングの結果が正解でないと評価した場合、前記プロセッサにより、前記クラスタリングの結果が正解であると評価した場合の前記処理対象のログデータと前記クラスタラベルとが追加された前記訓練データにより再訓練する」
上記記載において、「ベクトル」は、「処理対象のログデータ」を表現したものであるから、「各クラスタとの類似度に基づいて、前記ベクトルをクラスタリングする」とは、「処理対象のログデータ」が分類される「クラスタ」を決定することを意味し、また、「クラスタリングの結果を示すクラスタラベル」との記載を参酌すれば、「クラスタリングの結果」として「処理対象のログデータ」が分類される「クラスタ」のラベル(クラスタラベル)を出力するものと解され、さらに、「クラスタリングの結果」が「各クラスタ」と一致する(一致しない)とは、「クラスタリングの結果」として出力される「クラスタラベル」に対応する「クラスタ」が、「各クラスタ」のいずれかと一致する(いずれとも一致しない)ことを意味するものと解される。
ここで、「クラスタ間により遠ざけるためのマージンを入れた各クラスタとの類似度に基づいて、前記ベクトルをクラスタリングする」との記載を参酌すれば、「処理対象のログデータ」は、必ずいずれかの「クラスタ」に分類され、実際、明細書の【0055】の記載によれば、「処理対象のログデータ」は、「新規クラスタ」を含め、必ずいずれかの「クラスタ」へ分類されている。
そうすると、請求項6の記載において、「処理対象のログデータ」は必ずいずれかの「クラスタ」に分類されるにもかかわらず、「前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れとも一致せずに前記クラスタリングの結果が正解でないと評価した場合」を想定しているところ、そのような「場合」は、技術的にも本願出願時の技術常識を参酌してもあり得ないから、請求項6の記載はそれ自体矛盾している。また、明細書及び図面には、そもそも「前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れとも一致せずに前記クラスタリングの結果が正解でないと評価した場合」に対応する記載が存在しないから、明細書の記載を参酌しても本願発明が明確であるとはいえない。
よって、請求項6の記載は、当業者の出願時における技術的常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
したがって、請求項6に係る発明は、明確ではないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)理由2(実施可能要件)について
明細書及び図面には、「処理対象のログデータ」が必ずいずれかの「クラスタ」に分類されるとの前提において、「前記クラスタリングの結果が前記各クラスタの何れとも一致せずに前記クラスタリングの結果が正解でないと評価した場合」をどのように判断し得るのかについて何ら記載がなく、本願出願時における技術常識から自明ともいえない。
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が、その記載及び出願時における技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、請求項6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないため、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
以上のとおり、当審拒絶理由は解消していない。
(3)請求人の主張について
請求人は、令和7年9月4日提出の意見書において、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載に基づいて「本願発明は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件及び特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしております」などと主張しているが、本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、却下された補正後の明細書等の記載に基づく請求人の主張はいずれも採用することができない。
なお、上記意見書において、請求人は、「なお、もし審判合議体におかれて、拒絶理由を解消していない請求項があるために、いまだ特許できないとの心証を持たれる場合や、ご質問等がある場合には、出願人としては、さらに補正について検討をする用意がございますので、ご連絡を頂きますようお願い申し上げます。」との希望を述べている。
原査定の拒絶の理由の概要は、発明の詳細な説明は、請求項1~7に係る「評価」をどのように実現しているのか不明であるため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない、というものであり、この拒絶理由を回避するために、請求人は、請求項に係る「評価」に関する事項を補正し、その結果として補正後の請求項の記載又は補正自体に不備が生じているものと認められる。
そして、明細書の【0056】及び【0057】には、「ログ-クラスタ類似度算出部13」が、処理対象のログデータLogと出力ラベルOutputで示されるクラスタとの類似度Accuracyを計算し、「クラスタリング精度評価部14」が、類似度Accuracyを「評価」することで、出力ラベルOutputが正解であるか否かを判定することが記載されているが、他の記載を参酌しても、明細書には、「ログ-クラスタ類似度算出部13」及び「クラスタリング精度評価部14」がどのような処理(計算)をするのかについて何ら具体的な記載はない。また、【図1】には、「ログ-クラスタ類似度算出部13」が、LogとOutputを入力してAccuracyを出力すること、「クラスタリング精度評価部14」が、Log、Output、Accuracyを入力し、(おそらくは正解である場合に)Outputを出力し(おそらくは正解でない場合に)LogとLabelを訓練データとして出力することが看て取れるが、他の箇所を参酌しても図面にもそれ以上の記載はない。
また、「評価」に関する「ログ-クラスタ類似度算出部13」及び「クラスタリング精度評価部14」の挙動が本願出願時における技術常識であったとも認められない。
そうすると、明細書及び図面には、出力ラベルOutputが正解であるか否かを判定するために類似度Accuracyを「評価」することについては、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないことが明らかであり、原査定の理由は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入する補正をすることなく、あるいは、特許法第17条の2第4項に規定する要件(シフト補正要件)に違反する補正をすることなく、解消することはおよそ不可能である。
よって、上記請求人の希望は参酌しない。
第4 むすび
以上のとおり、本願は、請求項6に関して、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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