特許拒絶査定不服審判
2024-016729
紫外線殺菌装置
- 審判番号
- 2024-016729
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-089403外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年10月21日
- 審決日
- 2025年09月30日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (A61L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法49条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 89403「紫外線殺菌装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年12月12日出願公開、特開2024-171997〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和5年5月31日を出願日とするものであり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和5年 6月 5日 手続補正書の提出
令和6年 5月13日付け 拒絶理由通知
同年 6月24日 手続補正書及び意見書の提出
同年 7月18日付け 拒絶査定
同年10月21日 手続補正書(以下、同手続補正書によりなされた補正を、「本件補正」という。)及び審判請求書の提出
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された。
「【請求項1】
一端を被処理液の導入口とするとともに他端を当該被処理液の導出口とする筒状のリアクターと、当該リアクター内に挿入配置されるとともに表面周方向に環状のバッフルを密着形成した保護管と、当該保護管の内部に挿入配置されるとともに、当該保護管と上記リアクターとの間を流通する被処理液に向けて紫外線を照射可能とする紫外線ランプまたは深紫外LED発光素子とを備え、上記リアクターの内周面と上記バッフルの外周面との間に全周にわたって間隔が形成されたことを特徴とする紫外線殺菌装置。」
(2)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
一端を被処理液の導入口とするとともに他端を当該被処理液の導出口とする筒状のリアクターと、当該リアクター内に挿入配置されるとともに表面周方向に環状のバッフルを密着形成した保護管と、当該保護管の内部に挿入配置されるとともに、当該保護管と上記リアクターとの間を流通する被処理液に向けて紫外線を照射可能とする紫外線ランプまたは深紫外LED発光素子とを備えたことを特徴とする紫外線殺菌装置。」
2 補正の適否
(1)補正の目的について
本件補正は、請求項1において、「上記リアクターの内周面と上記バッフルの外周面との間に全周にわたって間隔が形成された」との特定を付加するものである。
この補正は、「紫外線殺菌装置」について、より限定された「リアクターの内周面と上記バッフルの外周面との間に全周にわたって間隔が形成された」紫外線殺菌装置に限定するものであり、いわゆる限定的減縮にあたるものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
そこで、上記1(1)で記載した本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(2)独立特許要件について
ア 引用文献1に記載された事項
本願出願日前に頒布され、下記第3の2で述べる原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特表2010-540227号公報)には、以下の事項が記載されている。
なお、下線は当審において付したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。
(ア)「【請求項4】
水が通ってチャンバーに入る入口及び水が通ってチャンバーを出る出口を有するチャンバー、
前記チャンバー内で紫外線光を生成するための少なくとも1個の紫外線光源、及び
前記チャンバー内で複数のサブチャンバを定義する複数のバッフルを含み、前記サブチャンバは前記少なくとも1個の紫外線光源からの紫外線光を受けるように位置している浄水システム。
・・・
【請求項18】
各紫外線光源の周囲に、更に石英管を含む、請求項4記載のシステム。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0022】
従って、必要なものは、処理されている水を全て浄化し、置換する必要がある高価な化学物質又はフィルターを必要としないで、妊婦、小さい子供及び高齢者を含む全ての人が飲むことができる水を生成する、水中に存在する不純物のタイプ及び濃度に応答して浄化方法の安価な調整を可能にする浄水装置である。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によれば、紫外線-C(UVC)をベースとする浄水システムは、適用されたUVC光の単位エネルギーあたりの水中の病原体の根絶の効果を向上させるためのバッフルの新規配列を使用する。このシステムは、世界中の天然の淡水中に見いだされる、広範囲の重大な水媒介性細菌、ウイルス、原虫、蠕虫、酵母及びかびを処理することができる。プレフィルタ又はポストフィルタ又はオゾン処理又は過酸化水素をシステムに加えることにより、重金属、無機化合物、殺虫剤及び/又は有害な有機化合物を除去することができる。世界中からの多種多様の水媒介性の病原体を処理することができるので、この単独の浄水器システム設計は、事実上、世界でどこでも飲料水における水媒介性病原体を処理するのに用いることができる。」
(ウ)「【0036】
・・・
【図12】図12は、各バッフル中の開口を通るランプを有し、各バッフルの周りの外側表面中に流体の流れが起こるサブチャンバー中に備え付けられたバッフルを示す。」
(エ)「【0047】
図4は、浄化チューブ40の一方の末端近くの拡大断面を示す。開口56を通って、水がシステムに入った後に、最初にサブチャンバー22-1に流れ込み、ここで、UVC光源20に曝される。次いで、水は、第一のバッフル21-1とEFPコーティングされたUVCランプ20との間の中央の環状形状の開口23-1を通り、第二のサブチャンバー22-2に流れ込み、システム内の最初のチューブ40の末端に到達するまでそのように流れる(チューブ40-1のように図3に示す)。次いで、最大のUVC露光を確実にするために、水は、好ましくはチューブの上部の外に流れ出る。図3に示すように、クロスオーバーチューブ41を通ってチューブ40-1の上部から他のチューブ40-2に水が流れ、ここで、水は更にUVC光に曝される。また、クロスオーバーチューブ41は、電子機器筐体36から熱を取り除くために用いられる高熱伝導性を有する熱電動チューブの部分を含むことができる。水は、チューブ40-2及び出口33を通ってシステムから出る(図3)。」
(オ)「【0111】
また、バッフル21は、図12に示すようにUVC源を囲むランプ20又は中心の石英チューブ24と直接接触して装着されていてもよい。この設計では、水は、バッフル外周264と浄化チューブ40の内壁との間で、バッフル21の外縁264(図9)の周囲を流れる。本実施態様は、水が貫流できる環状の形の開口を残すために、バッフル21の外径がチューブ40の内径よりやや小さいことを必要とする。一実施態様では、タブは、バッフル21がチューブ40に取り付けられることを可能にするように、バッフル21からチューブ40の内壁まで延在する。別の実施態様では、バッフル21は、石英チューブ24に装着される。」
(カ)「【0121】
UVCランプ
好ましい実施態様は、Philips製TUV 75W HOランプなどの253.7nm低圧水銀ランプ20を用い、このランプ20は、253.7nmの周波数で95%を超えるそのエネルギを放出する。好ましいランプは、石英管を用いて製造される。石英は、優れたUVC透過特性と、冷水が温かいランプと接触するときなどの突然の温度変化に基づく破損を最小にする高耐熱衝撃性とを有する。
・・・
【0126】
中央の紫外線ランプ20は、図42、図43及び図44に示すように、チューブ40内部で石英チューブ24によって囲まれてよい。このシステムは、上記のバッフル構成の使用を続けるものである。空気又は場合により不活性ガスが、ランプ20と石英チューブ24の内側との間の放射状空間を占めることができる。石英チューブ24は、バイオフィルム、ならびにカルシウム付着物及びマグネシウム付着物のビルドアップを防止又は低減するために、FEPコートされていてもよい。」
(キ)「【0129】
製造プロセス
好ましいシステムは、ステンレス鋼浄化管40及びバッフル21で構成される。図26に示すように、この管40は、バッフル21をチューブ40内の所定位置にTIG溶接するために、その長さに沿ってレーザ切断又は別な方法ではドリリングもしくはパンチングの穴451によって穿孔される。また、この管は、穿孔されなくてよく、バッフルは、抵抗溶接などの別の方法を用いて接合されていてもよい。各バッフル21は、バッフル21の外周の周囲に位置するタブへの3つ以上の溶接部を選択的に有する。また、バッフル21は、所定位置にレーザ溶接されていてもよい。
・・・
【0133】
次に、チューブ40は、位置調整され、端部キャップ50がチューブ40に組立及びシールされ、次いで、ランプ20が挿入され、電子機器エンクロージャ36がシステムに組み立てられる(図3参照)。」
(ク)「【図12】
[図:0001429753000001.jpg]
・・・
【図43】
[図:0001429753000002.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1の上記ア(ア)には、請求項4を引用する請求項18として、「水が通ってチャンバーに入る入口及び水が通ってチャンバーを出る出口を有するチャンバー、前記チャンバー内で紫外線光を生成するための少なくとも1個の紫外線光源、及び前記チャンバー内で複数のサブチャンバを定義する複数のバッフルを含み、前記サブチャンバは前記少なくとも1個の紫外線光源からの紫外線光を受けるように位置し、
各紫外線光源の周囲に、更に石英管を含む、浄水システム。」が記載されているといえる。
ここで、同(イ)の【0023】に記載されるように、引用文献1に記載された浄水システムは、「適用されたUVC光の単位エネルギーあたりの水中の病原体の根絶の効果を向上させるためのバッフルの新規配列を使用する」ものであり、このバッフルの新規配列として、同(オ)の【0111】及び同(ク)の図12に記載される態様に着目する。
そして、複数の「バッフルの新規配列」の態様において、チャンバーに水が出入りする構造は共通であるといえるから、同(エ)の【0047】の「図4は、浄化チューブ40の一方の末端近くの拡大断面を示す。開口56を通って、水がシステムに入った後に、最初にサブチャンバー22-1に流れ込み、ここで、UVC光源20に曝される。次いで、水は、第一のバッフル21-1とEFPコーティングされたUVCランプ20との間の中央の環状形状の開口23-1を通り、第二のサブチャンバー22-2に流れ込み、システム内の最初のチューブ40の末端に到達するまでそのように流れる(チューブ40-1のように図3に示す)。次いで、最大のUVC露光を確実にするために、水は、好ましくはチューブの上部の外に流れ出る。」との記載を参照すると、上記浄水システムの「水が通ってチャンバーに入る入口及び水が通ってチャンバーを出る出口を有するチャンバー」は、「浄化チューブ40の一方の末端近くの開口56を通って、水がシステムに入った後に、最初にサブチャンバー22-1に流れ込み、ここで、UVC光源20に曝され、次いで、第二のサブチャンバー22-2に流れ込み、システム内の最初のチューブ40の末端に到達するまでそのように流れ、水は、好ましくはチューブの上部の外に流れ出る」ものであるといえる。
また、ここで着目している図12に記載される態様における、上記浄水システムのバッフルの構造と配置は、同(オ)の【0111】の「また、バッフル21は、図12に示すようにUVC源を囲むランプ20又は中心の石英チューブ24と直接接触して装着されていてもよい。この設計では、水は、バッフル外周264と浄化チューブ40の内壁との間で、バッフル21の外縁264(図9)の周囲を流れる。本実施態様は、水が貫流できる環状の形の開口を残すために、バッフル21の外径がチューブ40の内径よりやや小さいことを必要とする。」との記載によれば、「バッフル21は、UVC源を囲むランプ20又は中心の石英チューブ24と直接接触して装着されていてもよく、水は、バッフル外周264と浄化チューブ40の内壁との間で、バッフル21の外縁264(図9)の周囲を流れ、水が貫流できる環状の形の開口を残すために、バッフル21の外径がチューブ40の内径よりやや小さいことを必要とする」ものである。
さらに、同(イ)の【0023】の「本発明によれば、紫外線-C(UVC)をベースとする浄水システムは、適用されたUVC光の単位エネルギーあたりの水中の病原体の根絶の効果を向上させるためのバッフルの新規配列を使用する。このシステムは、世界中の天然の淡水中に見いだされる、広範囲の重大な水媒介性細菌、ウイルス、原虫、蠕虫、酵母及びかびを処理することができる。」との記載によれば、上記「浄水システム」は、「紫外線-C(UVC)をベースとして、広範囲の重大な水媒介性細菌、ウイルス、原虫、蠕虫、酵母及びかびを処理することができる」ものである。
そして、紫外線、UVC(紫外線-C)等の用語はUVCに、光源、(UVC)源の用語は光源に、チューブ、浄化チューブの用語はチューブに、石英管、石英チューブの用語は石英管に統一すると共に「浄化システム」が「各紫外線光源の周囲に、更に石英管を含」む場合には、「バッフル21は、中心の石英チューブ24と直接接触して装着され」ることになることを踏まえて、以上の記載をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「水が通ってチャンバーに入る入口及び水が通ってチャンバーを出る出口を有するチャンバー、
前記チャンバー内でUVCを生成するための少なくとも1個のUVC光源、及び
前記チャンバー内で複数のサブチャンバーを定義する複数のバッフルを含み、前記サブチャンバーは前記少なくとも1個のUVC光源からのUVCを受けるように位置し、
各UVC光源の周囲に、更に石英管を含み、
チューブの一方の末端近くの開口を通って、水がシステムに入った後に、最初にサブチャンバーに流れ込み、ここで、UVC光源に曝され、次いで、第二のサブチャンバーに流れ込み、システム内の最初のチューブの末端に到達するまでそのように流れ、水は、好ましくはチューブの上部の外に流れ出て、
バッフルは、UVC光源を囲む中心の石英管と直接接触して装着されていてもよく、水は、バッフル外周とチューブの内壁との間で、バッフルの外縁の周囲を流れ、水が貫流できる環状の形の開口を残すために、バッフルの外径がチューブの内径よりやや小さいことを必要とするものであり、
UVCをベースとして、広範囲の重大な水媒介性細菌、ウイルス、原虫、蠕虫、酵母及びかびを処理することができる、浄化システム。」
ウ 対比・判断
(ア)補正発明と引用発明との対比
a 引用発明の「水」は、「広範囲の重大な水媒介性細菌、ウイルス、原虫、蠕虫、酵母及びかび」を含むものであり、「UVCをベースとして」水に含まれる水媒介性細菌等が「処理」されるものであるから、補正発明の「被処理液」に相当する。また、引用発明の「チューブ」は、その内部で、「UVCをベースとして」水に含まれる水媒介性細菌等が「処理」されるという、UVCによる反応が起こるものであるから、引用発明の「筒状のリアクター」に相当する。
そして、引用発明の「水が通ってチャンバーに入る入口及び水が通ってチャンバーを出る出口を有するチャンバー」は、「チューブの一方の末端近くの開口を通って、水がシステムに入った後に、最初にサブチャンバーに流れ込み、ここで、UVC光源に曝され、次いで、第二のサブチャンバーに流れ込み、システム内の最初のチューブの末端に到達するまでそのように流れ、水は、好ましくはチューブの上部の外に流れ出」る「チューブ」により形成されるものであるところ、このチューブには、一方の末端近くに水が入る開口があり、他方の末端に水が流れ出る箇所があるといえるから、引用発明の「チューブの一方の末端近くの開口を通って、水がシステムに入った後に、最初にサブチャンバーに流れ込み、ここで、UVC光源に曝され、次いで、第二のサブチャンバーに流れ込み、システム内の最初のチューブの末端に到達するまでそのように流れ、水は、好ましくはチューブの上部の外に流れ出」る「チューブ」は、補正発明の「一端を被処理液の導入口とするとともに他端を当該被処理液の導出口とする筒状のリアクター」に相当する。
b(a)引用発明の「石英管」は、上記ア(カ)の【0121】の「好ましいランプは、石英管を用いて製造される。石英は、優れたUVC透過特性と、冷水が温かいランプと接触するときなどの突然の温度変化に基づく破損を最小にする高耐熱衝撃性とを有する。」との記載によれば、ランプの破損を防ぐものであるから、補正発明の「保護管」に相当する。
(b)引用発明の「バッフルは、UVC源を囲む中心の石英管と直接接触して装着されていてもよく、水は、バッフル外周とチューブの内壁との間で、バッフルの外縁の周囲を流れ、水が貫流できる環状の形の開口を残すために、バッフルの外径がチューブの内径よりやや小さいことを必要とするものであり」との構成は、石英管について見れば、「水は、バッフル外周とチューブの内壁との間で、バッフルの外縁の周囲を流れ、水が貫流できる環状の形の開口を残すために、バッフルの外径がチューブの内径よりやや小さいことを必要とするものであ」る「バッフル」が「直接接触して装着されてい」る「UVC源を囲む中心の石英管」である。
(c)ここで、補正発明の「環状のバッフルを密着形成した保護管」における「密着形成」であるが、通常、「密着」とは、「ぴったりつくこと。」(三省堂編集所「広辞林<第五版>」株式会社三省堂、1982年9月1日、1882頁、「みっ-ちゃく[密着]」)といった意味であるから、「密着形成」とは、「ぴったりつくように形成する」といった意味でしかないといえる。
他方、引用発明の石英管についても、バッフルは、「直接接触して装着されてい」るものであり、「水は、バッフル外周とチューブの内壁との間で、バッフルの外縁の周囲を流れ」るものである。すなわち、バッフルと石英管の間は隙間なく接合されているといえるし、このバッフルと石英管との状態を示す引用文献1の同(ク)の図12からもその状態を見て取ることができるから、引用発明において、バッフルは石英管に密着形成されているといえる。
さらに、「密着形成」に関連する本願明細書の記載を参照しても、本願明細書の【0016】には、「またこのバッフル(2)は、上記保護管(1)との接触部分を溶接等にて隙間なく密着形成している。このようにバッフル(2)を上記保護管(1)に密着形成することにより、当該保護管(1)とバッフル(2)との間に汚れが溜まって洗浄が不十分となる事態を防ぐことが可能となる。」との記載があるが、この記載でも、バッフルと保護管との接触部分を例えば溶接等にて隙間なく接合できていれば「密着形成」されているといえる。
これによれば、本願明細書の記載を考慮したとしても、バッフルと保護管との接触部分を隙間なく接合できており、バッフル外周とチューブの内壁との間で、バッフルの外縁の周囲に水を流している引用発明においても、バッフルは石英管に密着形成されているといえる。
(d)また、補正発明の「当該リアクター内に挿入配置される・・・保護管」における「挿入配置」であるが、補正発明は、「紫外線殺菌装置」という物の発明であり、補正発明では、この「紫外線殺菌装置」の構造が特定されているといえるから、「挿入配置」とは、この「紫外線殺菌装置」におけるリアクターと保護管との構造的な関係を表現しているといえる。そうすると、補正発明の「挿入配置」とは、筒状のリアクター内に保護管が配置されていれば「挿入配置」された構造であるといえる。他方、引用発明の石英管は、同(ク)の図12に示されるように、チューブの中に同軸に配置されるものであるから、補正発明と同様に「挿入配置」された構造であるといえる。
なお、「挿入配置」の「挿入」について、上述のように方法としての意味を読み取ることはできないが、同(キ)の【0133】の「次に、チューブ40は、位置調整され、端部キャップ50がチューブ40に組立及びシールされ、次いで、ランプ20が挿入され、電子機器エンクロージャ36がシステムに組み立てられる(図3参照)。」との記載によれば、引用文献1に記載される「浄化システム」では、チューブに対してランプを挿入して組み立てていることから、引用発明に対応する図12に記載される「浄化システム」においても、チューブに対して石英管を挿入して組み立てているといえる。
(e)以上によれば、引用発明の「水は、バッフル外周とチューブの内壁との間で、バッフルの外縁の周囲を流れ、水が貫流できる環状の形の開口を残すために、バッフルの外径がチューブの内径よりやや小さいことを必要とするものであ」る「バッフル」が「直接接触して装着されてい」る「UVC光源を囲む中心の石英管」は、補正発明の「当該リアクター内に挿入配置されるとともに表面周方向に環状のバッフルを密着形成した保護管」に相当する。
c 引用発明の「UVC光源」は、引用文献1の上記ア(カ)の【0126】等の記載によれば、「紫外線ランプ」等である。そして、補正発明における「当該保護管の内部に挿入配置される」の「挿入配置」の意味は、上記b(d)で述べた「当該リアクター内に挿入配置される・・・保護管」の「挿入配置」の意味と同じであるといえるところ、引用発明の「UVC光源を囲む中心の石英管」の構造を表しているといえる同(ク)の図43によれば、補正発明の「保護管」に相当する「石英管」内に管状の「紫外線ランプ」が配置されているから、上記b(d)で述べた「挿入配置」と同様に考えれば、引用発明の「UVC光源」は、「石英管」の内部に挿入配置されているといえる。
また、引用発明の「チャンバー内」の「複数のサブチャンバー」「は前記少なくとも1個のUVC光源からのUVCを受けるように位置」するものであり、この「サブチャンバーに流れ込」む「水」が、「UVC光源に曝され」るのであるから、引用発明の「石英管」に「囲」まれ、「チャンバー内」の複数の「サブチャンバーに流れ込」む「水」が、「UVC光源に曝され」るようにする「UVC光源」は、補正発明の「当該保護管の内部に挿入配置されるとともに、当該保護管と上記リアクターとの間を流通する被処理液に向けて紫外線を照射可能とする紫外線ランプまたは深紫外LED発光素子」に相当する。
d 引用発明の「チューブの内壁」は、補正発明の「リアクターの内周面」に相当する。そして、引用発明の「バッフル」には、当然厚みがあり、厚みがあれば厚みに対応する面が存在するといえる。また、引用文献1の上記ア(ウ)の【0036】の「【図12】図12は、各バッフル中の開口を通るランプを有し、各バッフルの周りの外側表面中に流体の流れが起こるサブチャンバー中に備え付けられたバッフルを示す。」との記載によれば、「バッフルの外縁」付近に表面(面)の存在が示されているといえるから、「バッフルの外縁」は、補正発明の「バッフルの外周面」に相当する。
また、引用発明の「水が貫流できる環状の形の開口」とは、「バッフルの外縁の周囲」にあるものであるから、全周にわたるものであるといえる。
そうすると、引用発明の「バッフルの外径がチューブの内径よりやや小さ」く、「バッフル外周とチューブの内壁との間で、バッフルの外縁の周囲」に「水が貫流できる環状の形の開口を残す」ことは、補正発明の「上記リアクターの内周面と上記バッフルの外周面との間に全周にわたって間隔が形成されたこと」に相当する。
e 引用発明の「UVCをベースとして、広範囲の重大な水媒介性細菌」「を処理することができる、浄化システム」は、補正発明の「紫外線殺菌装置」に相当する。
f 上記a~eによれば、補正発明と引用発明は、「一端を被処理液の導入口とするとともに他端を当該被処理液の導出口とする筒状のリアクターと、当該リアクター内に挿入配置されるとともに表面周方向に環状のバッフルを密着形成した保護管と、当該保護管の内部に挿入配置されるとともに、当該保護管と上記リアクターとの間を流通する被処理液に向けて紫外線を照射可能とする紫外線ランプまたは深紫外LED発光素子とを備え、上記リアクターの内周面と上記バッフルの外周面との間に全周にわたって間隔が形成された紫外線殺菌装置。」の点で一致し、相違するところがない。
g 以上のとおり、補正発明は、引用発明である。
(イ)審判請求人の審判請求書における主な主張について
a 審判請求人の主張(審判請求書3.(3)a.ウ))
(a)引用文献1の【0111】には、「バッフル21は、図12に示すようにUVC源を囲むランプ20又は中心の石英チューブ24と直接接触して装着されていてもよい。この設計では、水は、バッフル外周264と浄化チューブ40の内壁との間で、バッフル21の外縁264(図9)の周囲を流れる。本実施態様は、水が貫流できる環状の形の開口を残すために、バッフル21の外径がチューブ40の内径よりやや小さいことを必要とする。一実施態様では、タブは、バッフル21がチューブ40に取り付けられることを可能にするように、バッフル21からチューブ40の内壁まで延在する。別の実施態様では、バッフル21は、石英チューブ24に装着される。」との記載がある。しかし引用文献1の当該箇所には、「バッフル21は、・・・ランプ20又は中心の石英チューブ24と直接接触して装着されていてもよい。」、「バッフル21は、石英チューブ24に装着される。」との記載のみであって、バッフル21が石英チューブ24に「装着」されていることしか記載されていない。また同図12にもバッフル21と石英チューブ24との接続箇所が明確に開示されておらず、更に引用文献1のその他の記載も含めて、本願発明の如く保護管にバッフルが密着配置されたことについては全く開示されていない。そのため引用文献1に記載の発明は、本願出願時の「背景技術」に記載した「リアクターと保護管との間に攪拌板を組み付け、当該攪拌板によって被処理液をリアクター内にて流通させる」(【0005】)という従来技術に相当するものである。
したがって、引用文献1に記載の構成は、本願発明の必須の構成要件である「リアクター内に挿入配置されるとともに表面周方向に環状のバッフルを密着形成した保護管」を備えた構成とは全く異なるものである。
(b)本願発明は補正により、「リアクターの内周面と上記バッフルの外周面との間に全周にわたって間隔が形成された」ことを必須の構成要件としたものである。
しかし、引用文献1の【0111】には、「この設計では、水は、バッフル外周264と浄化チューブ40の内壁との間で、バッフル21の外縁264(図9)の周囲を流れる。本実施態様は、水が貫流できる環状の形の開口を残すために、バッフル21の外径がチューブ40の内径よりやや小さいことを必要とする。」旨の記載があるものの、本願発明の如くリアクターとバッフルとの間の全周にわたって間隔が形成されたことについては、全く開示も示唆もされていない。
b 上記aの主張に対する当審の判断
(a)上記a(a)の主張に対して
引用発明において、バッフルが石英チューブに「密着形成」されたものであるといえることは、上記(ア)b(c)で述べたとおりである。
また、審判請求人は、引用発明は、保護管にバッフルが密着形成されたものではないため、本願出願時の「背景技術」として記載した「リアクターと保護管との間に攪拌板を組み付け、当該攪拌板によって被処理液をリアクター内にて流通させる」という従来技術に相当するものである旨、すなわち、保護管にバッフルが密着形成されたものでなければ、そのバッフルは従来技術の攪拌板に相当するものであることを主張しているが、密着形成に関する本願明細書の【0008】の「ここで、上記バッフルは、上記保護管との間に隙間なく溶接等により密着していることが好ましい。その理由としては、例えば当該保護管の表面と上記バッフルとの間に隙間が生じた場合には、当該隙間には汚れが溜まりやすく洗浄不良を引き起こすおそれがある。」との記載によれば、「密着形成」するか否かは、保護管の表面とバッフルとの間に隙間がなく、汚れが溜まらないか否かに関係するとされているものの、「密着形成」するか否かにより、バッフルが補正発明の「バッフル」に相当するものとなるのか、背景技術の「攪拌板」に相当するものとなるのかが決まるものとはされていない。
しかも、引用発明において、バッフルが石英チューブに「密着形成」されたものであるといえることは、上述のとおりであるし、引用文献1には、「バッフル」と明記されている一方、補正発明も「バッフル」と特定しているのであるから、引用発明の「バッフル」は、従来技術における「攪拌板」であるとして、補正発明の「バッフル」と区別することはできない。
以上のとおりであるから、審判請求人の上記a(a)の主張は、採用することができない。
(b)上記a(b)の主張に対して
上記(ア)dで述べたように、引用発明において、「水は、バッフル外周とチューブの内壁との間で、バッフルの外縁の周囲を流れ、水が貫流できる環状の形の開口を残すために、バッフルの外径がチューブの内径よりやや小さいことを必要とするもの」であるところ、ここでの「環状の形の開口」とは、補正発明と同様にチューブの内壁とバッフルとの間の全周にわたって間隔が形成されたものであるといえる。
以上のとおりであるから、審判請求人の上記a(b)の主張は、採用することができない。
(ウ)小括
以上のとおり、補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により、特許を受けることができない。
(3)本件補正についてのむすび
上記(2)で述べたように、補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和6年 6月24日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、令和6年 7月18日付け拒絶査定に記載された理由1及び2であって、その理由1は、本願発明は、本願出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。
記
引用文献1:特表2010-540227号公報
3 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1に記載された事項は、上記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2(1)での検討を踏まえると、補正発明に対して、「リアクターの内周面と上記バッフルの外周面との間に全周にわたって間隔が形成された」との限定事項のない「紫外線殺菌装置」に拡張したものにあたる。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらなる限定事項が付されたものに相当する補正発明が、前記第2の[理由]2(2)ウで述べたとおり、引用発明であるから、本願発明も、補正発明と同様に、引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により、特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第49条第2号に該当するから、その他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
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2024-016729