特許拒絶査定不服審判
2024-005913
積層セラミックコンデンサおよび積層セラミックコンデンサの製造方法
- 審判番号
- 2024-005913
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-094808
- 請求日
- 2024年04月08日
- 審決日
- 2025年03月06日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】太陽誘電株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人片山特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 ▲高▼橋 徳浩
- 審判官 渡辺 努
- 分類
- P18 .121-WZ (H01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 94808「積層セラミックコンデンサおよび積層セラミックコンデンサの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 7月29日出願公開、特開2022-111361〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、平成28年8月25日に出願した特願2016-165015号の一部を令和3年5月31日に新たな特許出願として出願した特願2021-91238号の一部を令和4年6月13日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 7月27日付け:拒絶理由通知
令和5年10月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年12月27日付け:拒絶査定
令和6年 4月 8日 :審判請求書の提出
令和6年10月23日付け:拒絶理由通知(当審)
令和6年12月26日 :意見書、手続補正書の提出
2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、令和6年12月26日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
【請求項1】
誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成され、略直方体形状を有する積層チップと、
前記対向する2端面に設けられ第1金属粒子を含む第1金属層および前記第1金属層上に設けられ、前記第1金属粒子より小さい粒径の第2金属粒子を含む第2金属層を有する1対の外部電極と、を備え、
前記1対の外部電極において、前記2端面には前記第1金属層が接し、前記側面には前記第2金属層が接しており、
前記第1金属層のガラス含有量が5wt%以上9wt%以下であり、前記第2金属層のガラス含有量が5wt%未満であり、
前記第1金属粒子および前記第2金属粒子は、Cuである、積層セラミックコンデンサ。
3 当審における拒絶理由の概要
本願の請求項1に係る発明に対する当審における拒絶理由のうち、理由2(進歩性)の概要は以下のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開平09-007878号公報
引用文献2:特開2000-049034号公報
4 各引用文献について
(1)引用文献1の記載及び引用発明
当審による拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平09-007878号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
a 「【請求項1】 セラミック素体と、このセラミック素体の両端に有する外部電極とを備え、この外部電極は少なくとも2層からなり、前記素子に接する第1層のガラスの含有量は、その上層の第2層のガラスの含有量より多いセラミック電子部品。
【請求項2】 第1層は金属に対しガラスを8~16重量%含有し、第2層は金属に対しガラスを2重量%以下含有する請求項1記載のセラミック電子部品。
【請求項3】 第1層はセラミック素体の端面のみに形成され、第2層は前記第1層を覆うとともに前記セラミック素体の側面部に至るように形成されている請求項1記載のセラミック電子部品。」
b 「【0007】そこで本発明は、耐基板曲げ性の向上したセラミック電子部品を提供することを目的とするものである。」
c 「【0011】図1に本発明の外部電極を適用した積層セラミックコンデンサ9を示す。まず、チタン酸バリウムを主成分とした混合粉末に有機結合材及び可塑材を加え、ボールミルでこれらを分散させることによりスラリーを作製した。ついでドクターブレード法によりグリーンシートを作製した。」
d 「【0012】このグリーンシートに金属導体としてPdからなる内部電極用ペーストを塗布し、これらを積層圧着した後、1300℃の大気中で焼成してコンデンサ素体10を作製した。」
e 「【0013】外部電極11の第1層電極11a及び第2層電極11bは次の手順で形成した。Ag粉末70重量部に対し第1層電極11aはガラスフリットを金属粉末に対し12重量%、第2層電極11bは2重量%、さらにそれぞれにエチルセルロース、ブチルカルビトール及びテルピネオールを含む有機ビヒクルを混練して全体を100重量部として2種類の導電性ペーストを調整した。」
f 「【0014】次に第1層電極11aをコンデンサ素体10の両端面部のみに塗布して、大気圧下、150℃、15分間で乾燥し、さらに第2層電極11bを今度はコンデンサ素体10の側面まで被いかぶさるよう両端部に塗布し同様に乾燥させた後、大気圧下、25℃/分の昇温速度で650℃まで昇温して外部電極11を形成した。」
g 「【0018】また、外部電極11のガラスも含有量は、第1層電極11aが金属粉末に対し12重量%、第2層電極11bが金属粉末に対し2重量%の場合のみ示したが、第1層電極11aは金属粉末に対しガラスを8~16重量%含有し、第2層電極11bは金属に対しガラスを2重量%以下含有するようにすればどのような組合せでも構わない。」
h 「【0019】さらに、第1層電極11aと第2層電極11bとは、同じ金属粉末か、合金を形成するような組合せの金属粉末を用いることにより、第2層電極11bのガラスフリットの含有量が少なくても、第1層電極11a、第2層電極11bとの接着強度は保つことができる。用いる金属粉末としては、Ag,Ag-Pd合金,Cu,Niなどが考えられる。ここで、CuやNiのように還元雰囲気中で外部電極11の焼き付けを行わなければならないような金属を用いる場合、ガラスフリットも耐還元性を有するものを用いることが望ましい。」
i 「【図1】
[図:0001422168000001.jpg]
」
j 「【図3】
[図:0001422168000002.jpg]
」
上記aないしjから以下のことがいえる。
上記b、cの記載より、引用文献1には、「耐基板曲げ性の向上を目的とした積層セラミックコンデンサ」に関する発明が記載されている。
上記c、dの記載より、引用文献1の積層セラミックコンデンサは、チタン酸バリウムを主成分として作製されたグリーンシートに内部電極用ペーストを塗布し、これらを積層圧着し焼成して作製されたコンデンサ素体10を備えるものである。
また、上記i及びjより、内部電極は1つおきに対向する2端面において第1層電極11aと接することが見て取れることから、内部電極は交互に対向する2端面に露出するように形成されているといえる。
そして、上記dの記載と上記i及びjより、コンデンサ素体10は、グリーンシートと内部電極用ペーストが交互に積層されたものであって、横から見ると長方形状であることから、略直方体形状であるといえる。
以上より、引用文献1の積層セラミックコンデンサは、チタン酸バリウムを主成分として作製されたグリーンシートに内部電極用ペーストを塗布し、これらを積層圧着し焼成して作製され、内部電極は交互に対向する2端面に露出するように形成され、略直方体形状であるコンデンサ素体を備えるものである。
上記a、eの記載より、外部電極11は、第1層電極11a及び第2層電極11bを有するものである。
上記a、f、gの記載及び上記iより、金属粉末を含む第1層電極11aはコンデンサ素体10の両端面部に設けられ、金属粉末を含む第2層電極11bは第1層電極11a上に設けられているといえる。
そして、上記a、fの記載より、外部電極11がコンデンサ素体10の両端面部に設けられていることから、外部電極11は、1対であるといえる。
以上より、引用文献1の積層セラミックコンデンサは、コンデンサ素体の両端面部に設けられ金属粉末を含む第1層電極および前記第1層電極上に設けられ金属粉末を含む第2層電極を有する1対の外部電極を備えるものである。
上記a、fの記載より、引用文献1の積層セラミックコンデンサの外部電極(1対の外部電極)は、第1層電極11aをコンデンサ素体10の両端面部のみに塗布して、さらに第2層電極11bをコンデンサ素体10の側面まで被いかぶさるよう両端部に塗布して形成されたものである。
上記a、gの記載より、引用文献1の積層セラミックコンデンサにおいて、第1層電極11aは金属粉末に対しガラスを8~16重量%含有し、第2層電極11bは金属粉末に対しガラスを2重量%以下含有するものである。
上記hの記載より、引用文献1の積層セラミックコンデンサにおいて、第1層電極11aと第2層電極11bの金属粉末は、Cuである。
そうすると、引用文献1には、積層セラミックコンデンサの発明として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
(引用発明)
「チタン酸バリウムを主成分として作製されたグリーンシートに内部電極用ペーストを塗布し、これらを積層圧着し焼成して作製され、内部電極は交互に対向する2端面に露出するように形成され、略直方体形状であるコンデンサ素体と、
コンデンサ素体の両端面部に設けられ金属粉末を含む第1層電極および前記第1層電極上に設けられ金属粉末を含む第2層電極を有する1対の外部電極と、を備え、
1対の外部電極は、第1層電極をコンデンサ素体の両端面部のみに塗布して、さらに第2層電極をコンデンサ素体の側面まで被いかぶさるよう両端部に塗布して形成され、
第1層電極は金属粉末に対しガラスを8~16重量%含有し、第2層電極は金属粉末に対しガラスを2重量%以下含有し、
第1層電極と第2層電極の金属粉末は、Cuである、積層セラミックコンデンサ。」
(2)引用文献2の記載及び引用技術事項
当審における拒絶の理由に引用された引用文献2(特開特開2000-049034号公報)には、以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば積層コンデンサのようなセラミック電子部品及びその製造方法に関し、より詳細には、導電ペーストの塗布・焼き付けにより外部電極が形成されるセラミック電子部品及びその製造方法に関する。」
b 「【0012】本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、導電ペーストの塗布・焼き付け法により外部電極を形成してなるセラミック電子部品において、焼き付け時の締め付け応力によるセラミック焼結体の歪みやクラックの発生を効果的に抑制することができると共に、緻密であり、信頼性に優れた外部電極を備えたセラミック電子部品及びその製造方法を提供することにある。」
c 「【0021】第1の端面2aを覆うように外部電極7が、第2の端面2bを覆うように外部電極8が形成されている。外部電極7,8は、端面2a,2bだけでなく、セラミック焼結体2の上面2c及び下面2d並びに図示しない一対の側面にも至るように形成されている。」
d 「【0022】本実施例の特徴は、上記外部電極7,8の構造にある。外部電極7,8は、導電ペーストを塗布し、焼き付けることにより形成されている。もっとも、外部電極7,8は、セラミック焼結体2の表面に第1の層及び第2の層を順に積層してなる積層構造を有する。ここで、第1の層では、平均粒径が相対的に大きな金属粉末9からなり、空孔率が相対的に高くされている。第2の層は、第1の層の外側に形成されており、第1の層に多く含まれている粒径の大きな金属粉末9よりも平均粒径が小さい金属粉末10からなり、空孔率が第1の層よりも低くされている。」
e 「【0028】ここで、粒径が相対的に大きな金属粉末9としては、好ましくは、平均粒径が5μm以上、15μm以下の金属粉末が用いられる。平均粒径が5μm未満の金属粉末では、締め付け応力の緩和を十分に図れないことがあり、15μmを超えると導電膜の緻密性が低下しすぎることがある。」
f 「【0030】他方、第2の導電ペーストとしては、好ましくは平均粒径5μm未満の金属粉末から構成されることが望ましい。平均粒径5μm以上の金属粉末の場合には、第2の層の緻密性が十分に高くならないことがある。」
上記aないしfの記載より、引用文献2には、
「導電ペーストの塗布・焼き付け法により外部電極を形成してなる積層コンデンサのようなセラミック電子部品において、焼き付け時の締め付け応力によるセラミック焼結体の歪みやクラックの発生を効果的に抑制するために、
外部電極は、端面に形成され、セラミック焼結体の表面に第1の層及び第2の層を順に積層してなる積層構造を有し、
第1の層では、平均粒径が5μm以上15μm以下の金属粉末からなり、第2の層は、第1の層の外側に形成されており、平均粒径が5μm未満の金属粉末からなるという技術事項。」(以下、「引用技術事項」という。)が記載されている。
5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明において、グリーンシートに内部電極用ペーストを塗布したものを積層した構成は、グリーンシートと内部電極用ペーストとが交互に積層されているといえる。
引用発明の「グリーンシート」は、チタン酸バリウムすなわち誘電体を含み、積層されているものであることから、誘電体が層状になっているものといえ、本願発明1の「誘電体層」に相当する。
また、引用発明の「内部電極用ペースト」は、積層されているものであることから、内部電極が層状になっているものといえ、本願発明の「内部電極層」に相当する。
そうすると、引用発明は、本願発明の「誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され」る構成に相当する構成を有している。
また、引用発明の「内部電極は交互に対向する2端面に露出するように形成され、略直方体形状である」との構成は、本願発明の「積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成され、略直方体形状」である構成に相当する。
さらに、引用発明の「コンデンサ素体」は、グリーンシートに内部電極用ペーストを塗布したものを積層して作製されたものであるから、本願発明の「積層チップ」に相当する。
以上より、引用発明の「チタン酸バリウムを主成分として作製されたグリーンシートに内部電極用ペーストを塗布し、これらを積層圧着し焼成して作製され、内部電極は交互に対向する2端面に露出するように形成され、略直方体形状であるコンデンサ素体」は、本願発明の「誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成され、略直方体形状を有する積層チップ」に相当する。
(2)引用発明の「金属粉末を含む第1層電極」及び「金属粉末を含む第2層電極」は、ともに金属粉末を含むものであるから、金属層であるといえる。
そうすると、引用発明の「金属粉末を含む第1層電極」及び「金属粉末を含む第2層電極」は、本願発明の「第1金属粒子を含む第1金属層」及び「第2金属粒子を含む第2金属層」に相当する。
また、第1層電極はコンデンサ素体の両端面部に設けられることから、第1層電極は対向する2端面に設けられているといえる。
以上より、本願発明と引用発明とは、「前記対向する2端面に設けられ第1金属粒子を含む第1金属層および前記第1金属層上に設けられ、第2金属粒子を含む第2金属層を有する1対の外部電極」を備える点で共通する。
しかし、本願発明の第2金属粒子は、「第1金属粒子より小さい粒径」であるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点で相違する。
(3)引用発明では、「1対の外部電極は、第1層電極をコンデンサ素体の両端面部のみに塗布して、さらに第2層電極をコンデンサ素体の側面まで被いかぶさるよう両端部に塗布して形成」されることから、端面部には第1層電極が接しており、側面には第2層電極が接しているといえる。
そうすると、引用発明は、本願発明の「前記1対の外部電極において、前記2端面には前記第1金属層が接し、前記側面には前記第2金属層が接して」いる構成を有するといえる。
(4)引用発明は、第1層電極は金属粉末に対しガラスを8~16重量%含有し、第2層電極は金属粉末に対しガラスを2重量%以下含有するのに対し、本願発明は、前記第1金属層のガラス含有量が5wt%以上9wt%以下であり、前記第2金属層のガラス含有量が5wt%未満である。
すなわち、引用発明と本願発明とは、前記第1金属層のガラス含有量が前記第2金属層のガラス含有量より多い点で共通する。
しかし、第1金属層及び第2金属層のガラスの含有量に関して、本願発明は、それぞれ「5wt%以上9wt%以下」及び「5wt%未満」であるのに対し、引用発明は、それぞれ「金属粉末に対し」「8~16重量%」、「金属粉末に対し」「2重量%以下」である点で相違する。
(5)引用発明の「第1層電極と第2層電極の金属粉末は、Cuである」ことは、本願発明の「前記第1金属粒子および前記第2金属粒子は、Cuである」ことに相当する。
(6)よって、上記(1)ないし(5)によれば、本願発明と引用発明とは、
「誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成され、略直方体形状を有する積層チップと、
前記対向する2端面に設けられ第1金属粒子を含む第1金属層および前記第1金属層上に設けられ、第2金属粒子を含む第2金属層を有する1対の外部電極と、を備え、
前記1対の外部電極において、前記2端面には前記第1金属層が接し、前記側面には前記第2金属層が接しており、
前記第1金属層のガラス含有量が前記第2金属層のガラス含有量より多く、
前記第1金属粒子および前記第2金属粒子は、Cuである、積層セラミックコンデンサ。」
である点で一致し、次の2点で相違する。
(相違点1)
本願発明の第2金属粒子は、「第1金属粒子より小さい粒径」であるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。
(相違点2)
第1金属層及び第2金属層のガラスの含有量に関して、本願発明は、それぞれ「5wt%以上9wt%以下」及び「5wt%未満」であるのに対し、引用発明は、それぞれ「金属粉末に対し」「8~16重量%」、「金属粉末に対し」「2重量%以下」である点。
6 判断
上記各相違点について検討する。
(1)相違点1について
歪みやクラックの発生を抑制するために、外部電極が、平均粒径が大きな(5μm以上15μm以下)金属粉末からなる第1の層と、第1の層の外側に形成され、第1の層より平均粒径が小さい(5μm未満)金属粉末からなる第2の層とからなる技術は、上記引用技術事項のように出願時において知られている技術である。
引用発明においても、各金属粉末について、クラックの発生を抑制するために引用技術事項を採用し、第2金属粒子を第1金属粒子より小さい粒径とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
(2)相違点2について
第2金属層のガラス含有量については、引用発明の範囲は本願発明の範囲に含まれるものであるから、実質的な相違点でない。
したがって、上記相違点2は、第1金属層のガラス含有量について、引用発明と本願発明とは一部重複するという点で相違するものといえる。
しかしながら、引用発明において、一部重複する例えば8~9wt%の範囲内の値を選択することも当業者が適宜なし得たことである。
(3)まとめ
以上より、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 審判請求人の主張について
(1)審判請求人の意見書における主張
審判請求人は、令和6年12月26日に提出された意見書において、以下のような主張をしている。
「引用文献2では、粒径の大きい金属粉末9が2端面から上下面まで延在しているものの、粒径の小さい金属粉末10が、粒径の大きい金属粉末9を超えておりませんので、本願の第2金属層とは異なります(本願の第2金属層は、第1金属層を超えて素体の上下面や側面に接しています)。
また、引用文献2では金属粉末の例としてAgだけが開示されており、Agの実験結果だけ開示されていますので、Ag以外の金属(Cuなど)について、応力が緩和されるのか定かではございません。したがいまして、引用文献1と引用文献2とから、本願の請求項1,3の構成は得られないものと思料致します。」(「3.拒絶理由に対する意見」の項)
(2)審判請求人の主張についての検討
上記主張について検討する。
ア 引用文献2では、粒径の小さい金属粉末10が、粒径の大きい金属粉末9を超えていないことについて
審判請求人が主張するように、引用文献2の【図1】を参酌すると、粒径の大きい金属粉末9が2端面から上下面まで延在し、粒径の小さい金属粉末10が、粒径の大きい金属粉末9を超えていない構成が見て取れる。
しかし、引用発明においては、本願発明のように、「前記対向する2端面に設けられ第1金属粒子を含む第1金属層および前記第1金属層上に設けられ、第2金属粒子を含む第2金属層を有する1対の外部電極と、を備え、前記1対の外部電極において、前記2端面には前記第1金属層が接し、前記側面には前記第2金属層が接して」いる構成である。
そして、当該構成を採用することが特徴である引用発明において、クラックの発生を抑制するために引用技術事項の金属粒子の大小関係に関する構成を採用する場合、第1金属層と第2金属層との形成範囲の関係については、引用発明の解決しようとする課題を踏まえそのままの構成とし、引用技術事項の大小関係のみを採用することを当業者であれば容易に想到し得ることである。
そうすると、引用文献2の構成が、本願発明と異なる構成であるとしても、引用発明に引用技術事項を組み合わせることにより、本願発明は当業者が容易に発明できたものである。
イ 引用文献2では、金属粉末(金属粒子)の例としてAgだけが開示されていることについて
審判請求人が主張するように、引用文献2には、金属粒子の具体例としてAg以外の金属については開示されていないものの、積層セラミックコンデンサの外部電極に用いられる金属としては、様々な金属が想定され、例えば、引用文献1の【0019】にも、「用いる金属粉末としては、Ag,Ag-Pd合金,Cu,Niなどが考えられる。」と記載されている。
さらに、引用文献2においても、【0038】の【表1】に示された各試料番号の金属粉末はAgであるものの、特許請求の範囲を含むそれ以外の記載では、単に金属粉末と記載されているのみである。
そうすると、引用技術事項の金属粉末としては、Agだけでなく、外部電極として一般に使用されている金属粉末(Ag以外の金属(Cuなど))も想定されているといえる。
(3)まとめ
以上より、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
8 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-005913