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特許拒絶査定不服審判

2024-013113

シンチレータパネル及び放射線検出器

審判番号
2024-013113
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-532292
請求日
2024年08月13日
審決日
2026年04月30日
公報発行日
2026年07月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】浜松ホトニクス株式会社
  • 【請求人代理人】長谷川 芳樹
  • 【請求人代理人】黒木 義樹
  • 【請求人代理人】柴山 健一
  • 【請求人代理人】荒井 寿王
  • 【請求人代理人】和田 雄二
  • 【請求人代理人】阿部 寛
審判長/審判官
  • 審判長 道祖土 新吾
  • 審判官 東松 修太郎
  • 審判官 堀井 康司
分類
P18 .121-Z (G21K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-532292「シンチレータパネル及び放射線検出器」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月23日国際公開、WO2021/256011〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2021年(令和3年)2月26日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 令和2年6月16日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和6年 2月26日付け:拒絶理由通知書 同年 4月24日 :意見書、手続補正書の提出 同年 5月10日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月21日 :原査定の謄本の送達) 同年 8月13日 :審判請求書の提出 同年 8月13日 :手続補正書の提出 以下、2020年(令和3年)6月16日を「優先日」という。 第2 本願発明について 1 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年8月13日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。 「支持体と、 前記支持体上に形成され、柱状結晶により構成されたシンチレータ層と、 前記シンチレータ層を少なくとも覆う保護膜と、を備え、 前記シンチレータ層は、母材としてヨウ化セシウムを含み且つ賦活剤としてセリウムを含み、 前記セリウムの濃度は、300~6000ppmである、シンチレータパネル。」 2 本願発明の分説 検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Bまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】を元に部材名を記入したものを掲載する。 <本願発明の分説> A 支持体と、前記支持体上に形成され、柱状結晶により構成されたシンチレータ層と、前記シンチレータ層を少なくとも覆う保護膜と、を備え、 B 前記シンチレータ層は、母材としてヨウ化セシウムを含み且つ賦活剤としてセリウムを含み、前記セリウムの濃度は、300~6000ppmである、 X シンチレータパネル。 <参考図> [図:0001436680000001.jpg] 3 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。下線は、合議体による。また、図は対応する説明がある箇所に適宜挿入して示した。 (1) 【技術分野】、【背景技術】、【発明の概要】等(【0001】~【0021】) 「【技術分野】 【0001】 本発明の一側面は、シンチレータパネル及び放射線検出器に関し、特にX線又はガンマ線を用いた被照射体のイメージングに用いられるシンチレータパネル及び放射線検出器に関する。 【背景技術】 【0002】 特許文献1には、フォトダイオードが配列された光電変換基板と、光電変換基板上に形成された蛍光体層(シンチレータ層)と、を備える放射線検出器が記載されている。特許文献1に記載された放射線検出器では、シンチレータ層は、母材としてヨウ化セシウムを含み、賦活剤としてタリウムを含んでいる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1:特開2006-20820号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 上述した技術では、発光寿命が約1000nsであり、それ以上の速い発光寿命を得ることが難しいことから、優れた高速応答性を得ることが困難な場合がある。 【0005】 本発明の一側面は、優れた高速応答性を得ることができるシンチレータパネル及び放射線検出器を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、シンチレータ層において母材としてヨウ化セシウムを含ませると共に賦活剤としてセリウムを含ませることで、発光寿命を速めることができるという知見を得て、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の一側面に係るシンチレータパネルは、支持体と、支持体上に形成され、柱状結晶により構成されたシンチレータ層と、シンチレータ層を少なくとも覆う保護膜と、を備え、シンチレータ層は、母材としてヨウ化セシウムを含み且つ賦活剤としてセリウムを含む。 【0007】 このシンチレータパネルでは、シンチレータ層は、母材としてヨウ化セシウムを含み且つ賦活剤としてセリウムを含む。このように、上記知見に基づきシンチレータ層を構成することで、速い発光寿命を得ることができ、その結果、優れた高速応答性を得ることが可能となる。 【0008】 本発明の一側面に係るシンチレータパネルでは、セリウムの濃度は、300~6000ppmであってもよい。この場合、高輝度のシンチレーション光を得ることが可能となる。 【0009】 本発明の一側面に係るシンチレータパネルでは、シンチレータ層の発光波長特性は、第1発光波長における第1発光ピークと、第1発光波長よりも長波長側の第2発光波長における第2発光ピークと、を有し、第1発光ピークは、第2発光ピークよりも大きくてもよい。この場合、高い光強度のシンチレーション光を得ることが可能となる。 【0010】 本発明の一側面に係るシンチレータパネルでは、保護膜は、第1有機膜、無機膜及び第2有機膜を含んでいてもよい。これにより、シンチレータ層の潮解性に起因した特性劣化を確実に抑制することができる。 【0011】 本発明の一側面に係るシンチレータパネルでは、無機膜は、積層構造を有していてもよい。この場合、シンチレータ層の潮解性に起因した特性劣化を一層確実に抑制することができる。 【0012】 本発明の一側面に係るシンチレータパネルでは、支持体は、アルミニウム、ガラス、アモルファスカーボン及びポリエチレンテレフタレート樹脂の少なくとも何れかで形成された基板、又は、ファイバーオプティックプレートであってもよい。このような支持体を採用することで、シンチレータパネルを具体的に構成することができる。 【0013】 本発明の一側面に係る放射線検出器は、上記シンチレータパネルと、シンチレータパネルと貼り合わされ、光電変換素子を有するセンサパネルと、を備える。この放射線検出器においても、上記シンチレータパネルを備えるため、優れた高速応答性を得ることができるという効果を奏する。 【0014】 本発明の一側面に係る放射線検出器は、光電変換素子を有するセンサパネルと、センサパネル上に形成され、柱状結晶により構成されるシンチレータ層と、シンチレータ層を少なくとも覆う保護膜と、を備え、シンチレータ層は、母材としてヨウ化セシウムを含み且つ賦活剤としてセリウムを含む。 【0015】 この放射線検出器においても、上記知見に基づきシンチレータ層を構成することで、速い発光寿命を得ることができ、優れた高速応答性を得ることが可能となる。 【0016】 本発明の一側面に係る放射線検出器では、セリウムの濃度は、300~6000ppmであってもよい。この場合、高輝度の発光を得ることが可能となる。 【0017】 本発明の一側面に係る放射線検出器では、シンチレータ層の発光波長特性は、第1発光波長における第1発光ピークと、第1発光波長よりも長波長側の第2発光波長における第2発光ピークと、を有し、第1発光ピークは、第2発光ピークよりも大きくてもよい。この場合、高い光強度のシンチレーション光を得ることが可能となる。 【0018】 本発明の一側面に係る放射線検出器では、保護膜は、第1有機膜、無機膜及び第2有機膜を含んでいてもよい。これにより、シンチレータ層の潮解性に起因した特性劣化を確実に抑制することができる。 【0019】 本発明の一側面に係る放射線検出器では、無機膜は、積層構造を有していてもよい。この場合、シンチレータ層の潮解性に起因した特性劣化を一層確実に抑制することができる。 【0020】 本発明の一側面に係る放射線検出器は、フォトンカウンティング型検出器であってもよい。放射線検出器がフォトンカウンティング型検出器の場合、優れた高速応答性を得る上記効果は特に有効となる。 【発明の効果】 【0021】 本発明の一側面によれば、優れた高速応答性を得ることができるシンチレータパネル及び放射線検出器を提供することが可能となる。」 (2) 【発明を実施するための形態」(【0023】~【0056】) 「 【0023】 以下、実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図の説明において、同一の要素又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。 【0024】 [第1実施形態] 図1に示されるように、第1実施形態に係る放射線検出器100は、フォトンカウンティング型検出器である。すなわち、放射線検出器100は、エネルギー積分型収集方式(電流モード計測方式)の検出器ではなく、フォトンカウンティング(Photon Counting)方式の検出器である。放射線検出器100は、例えばX線又はガンマ線を用いた被照射体のイメージングに用いられる。放射線検出器100は、シンチレータパネル10及びセンサパネル20を備える。」 「【図1】 [図:0001436680000002.jpg] 」 「 【0025】 シンチレータパネル10は、支持体11と、シンチレータ層12と、保護膜13と、を備える。支持体11は、アルミニウム、ガラス、アモルファスカーボン及びポリエチレンテレフタレート樹脂の少なくとも何れかで形成された基板である。 【0026】 シンチレータ層12は、支持体11上に形成されている。シンチレータ層12は、放射線の入射に応じて、シンチレーション光を生じさせる(発光する)。本実施形態のシンチレータ層12は、発光寿命の速いシンチレーション光を生じさせる高速応答性を有する高速シンチレータである。例えばシンチレータ層12は、後述するように、100ns程度ないしそれを下回る速い発光寿命のシンチレーション光を生じさせる。発光寿命は、蛍光寿命又は発光時定数とも称される。発光寿命は、例えば、生じたシンチレーション光の強度が最初の発光ピーク時の約36.8%になるまでの時間である。 【0027】 シンチレータ層12は、複数の柱状結晶により構成されている(図2参照)。シンチレータ層12の柱状結晶は、支持体11側を根本側として配列されている。シンチレータ層12は、母材としてヨウ化セシウム(CsI)を含み且つ賦活剤としてセリウム(Ce)を含む。ここでのシンチレータ層12は、ヨウ化セシウムを母材としヨウ化セリウム(CeI3)をドーパントとして真空蒸着法により作製されている。シンチレータ層12の発光は、セリウムが起因となって生じる。ヨウ化セリウムに代えて、塩化セリウム又は臭化セリウムを用いてもよい。」 「【図2】 [図:0001436680000003.jpg] 」 「 【0028】 シンチレータ層12におけるセリウムの濃度は、300~6000ppmである。シンチレータ層12におけるセリウムの濃度は、500~5000ppmである。つまり、当該セリウムの濃度は、300ppm以上であってもよいし、500ppm以上であってもよいし、5000ppm以下であってもよいし、6000ppm以下であってもよいし、これらの少なくとも何れかの組合せであってもよい。 【0029】 シンチレータ層12の発光波長特性は、複数の発光ピークを有する。具体的には、シンチレータ層12の発光波長特性は、第1発光波長における第1発光ピークと、第1発光波長よりも長波長側の第2発光波長における第2発光ピークと、を有する。第1発光ピークは、第2発光ピークよりも大きい。例えば、シンチレータ層12では、発光ピークとなる波長領域は400~600nmであり、第1発光波長は430~470nmに存在し、第2発光波長は470~510nmに存在する。換言すると、発光ピークは400~600nmの波長領域に存在し、第1発光ピークは430~470nmに存在し、第2発光ピークは470~510nmに存在する。 【0030】 保護膜13は、シンチレータ層12を少なくとも覆う膜である。保護膜13は、第1有機膜14、無機膜15及び第2有機膜16を含む。第1有機膜14は、支持体11及びシンチレータ層12全体を保護する保護層である。第1有機膜14は、支持体11及びシンチレータ層12を覆うように成膜されて成る。第1有機膜14としては、例えばポリパラキシリレンが用いられている。無機膜15は、耐湿性の向上を目的として設けられた保護層である。無機膜15は、第1有機膜14を覆うように成膜されて成る。無機膜15は、積層構造を有する。無機膜15は、アルミニウム、チタン又はそれらの酸化物の何れかの膜が積層されて構成されている。例えば無機膜15は、酸化アルミニウム膜と酸化チタン膜とを含む。 【0031】 第2有機膜16は、シンチレータパネル10全体を保護する保護層である。第2有機膜16は、無機膜15を覆うように成膜されて成る。例えば第2有機膜16としては、ポリパラキシリレンが用いられている。無機膜15の厚さは、第1有機膜14及び第2有機膜16よりも薄く、例えば30nmである。第1有機膜14及び第2有機膜16の厚さは、互いに等しく、例えば10μmである。以上のように構成されたシンチレータパネル10は、アニール処理が施されて、内部歪(残留応力)が除去されていてもよい。 【0032】 センサパネル20は、シンチレータパネル10と貼り合わされている。センサパネル20は、シンチレータパネル10においてシンチレータ層12の柱状結晶の先端側に張り合わされている。センサパネル20は、光電変換素子を有する。センサパネル20は、シンチレータ層12の発光(シンチレーション光)を検出する。センサパネル20としては、例えばMPPC(マルチピクセルフォトンカウンター、浜松ホトニクス社製、登録商標)を用いることができる。 …(中略)… 【0037】 図6は、シンチレータ層12におけるセリウムの濃度と輝度との関係を示すグラフである。図6において、縦軸は、シンチレーション光の輝度(%)であり、横軸は、シンチレータ層12のセリウムの濃度(ppm)である。ここでの輝度は、KODAK社のLanex regular screensを基準とした相対値として表されている。横軸は、対数目盛で表示されている。図中の黒色ひし形は、アニール処理が施されて内部歪(残量応力)が除去された状態のシンチレータパネル10のデータである。図中の○は、アニール処理が施されていない状態のシンチレータパネル10のデータである。セリウムの濃度は、セシウム、ヨウ素及びセリウムの3つの元素を定量分析して取得することができる。」 「【図6】 [図:0001436680000004.jpg] 」 「 【0038】 図6に示されるように、シンチレータ層12では、セリウムの濃度が高くなるにつれて輝度が増加し、一定以上の濃度では濃度消光により輝度が小さくなるという傾向を確認できる。例えばシンチレータ層12におけるセリウムの濃度が300~6000ppmであると、高い輝度のシンチレーション光が生じ得ることがわかる(図中の左右矢印参照)。例えばシンチレータ層12におけるセリウムの濃度が500~5000ppmであると、高い輝度のシンチレーション光が一層生じ得ることがわかる。例えばシンチレータパネル10にアニール処理を施した場合、より高い輝度のシンチレーション光が生じ得ることがわかる。例えば当該アニール処理を施した場合、シンチレータ層12におけるセリウムの濃度が500~6000ppmであると、高い輝度のシンチレーション光が生じ得ることがわかる。例えば当該アニール処理を施していない場合、シンチレータ層12におけるセリウムの濃度が300~3500ppmであると、高い輝度のシンチレーション光が生じ得ることがわかる。 …(後略)…」 第3 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献1~13に記載された発明に基いて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.国際公開第2009/031574号 引用文献2.米国特許出願公開第2019/0250286号明細書 第4 引用文献について 1 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定 (1) 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である引用文献1(国際公開第2009/031574号)には、次の記載がある。なお、図は対応する説明がある箇所に適宜挿入して示した。また、当合議体により、後記(2)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。 「技術分野 [0001] 本発明は、シンチレータパネルと平面受光素子との接触状態が良好なシンチレータパネルを有するフラットパネルディテクタに関する。 …(中略)… [0015] 本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、蛍光体層の経時での特性劣化を防止し、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護し、シンチレータパネルと平面受光素子の接触状態が安定なフラットパネルディテクタを提供することにある。 課題を解決するための手段 [0016] 本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。 [0017] 1.基板上に蛍光体層が設けられてなるシンチレータと、該シンチレータの蛍光体面を被覆する保護層からなるシンチレータパネルを、2次元状に配置した複数の画素を有する平面受光素子面上に配置したフラットパネルディテクタにおいて、前記保護層表面に再剥離粘着剤層が設けられていることを特徴とするフラットパネルディテクタ。 [0018] 2.前記再剥離粘着剤層の粘着力が、厚さ25μmのポリエチレンテレフタルレート(PET)に対して0.05~1N/20mmであることを特徴とする前記1に記載のフラットパネルディテクタ。 [0019] 3.前記再剥離粘着剤層が、少なくともゴム系樹脂またはアクリル系樹脂を含有することを特徴とする前記1または2に記載のフラットパネルディテクタ。 [0020] 4.前記シンチレータが、基板上に気相堆積法により蛍光体層が設けられてなることを特徴とする前記1~3のいずれか1項に記載のフラットパネルディテクタ。 [0021] 5.前記保護層が樹脂フィルムからなることを特徴とする前記1~4のいずれか1項に記載のフラットパネルディテクタ。 [0022] 6.前記樹脂フィルムの厚さが1~200μmであることを特徴とする前記5に記載のフラットパネルディテクタ。 [0023] 7.基板がポリイミド(PI)またはポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムであることを特徴とする前記1~6のいずれか1項に記載のフラットパネルディテクタ。 [0024] 8.前記シンチレータパネルの総厚が1mm以下であることを特徴とする前記1~7のいずれか1項に記載のフラットパネルディテクタ。 [0025] 9.前記蛍光体層がCsI(ヨウ化セシウム)であることを特徴とする前記1~8のいずれか1項に記載のフラットパネルディテクタ。 発明の効果 [0026] 本発明により、蛍光体層の経時での特性劣化を防止し、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護し、シンチレータパネルと平面受光素子の接触状態が安定なフラットパネルディテクタを提供することができる。 …(中略)… [0047] 図1は、本発明のフラットパネルディテクタ1の構成図である。フラットパネルディテクタ1は、筐体11内に、被写体を透過した放射線を受けてその線量に対応した強度で蛍光を瞬時に発光するシンチレータパネル12、シンチレータパネル12に圧接して設けられ、シンチレータパネル12からの光を光電変換する複数の受光画素が2次元状に配置された受光素子13、及びシンチレータパネル12を保護する保護カバー14及びクッション部材としてのクッション層15を備えている。 [0048] シンチレータパネル12は、基板123上に蛍光体層122が形成され、これらの基板123及び蛍光体層122が第1保護フィルム121及び第2保護フィルム124により封止された構成となっている。」 「 [図:0001436680000005.jpg] 」 「[0049] 基板123は、放射線を透過させる材質から構成される。基板123は、受光素子13の表面に均一にシンチレータパネル12を接触させることができるよう、可撓性を有することが好ましい。例えば、125μm厚の可撓性を有するポリイミドフィルムを用いることができる。ポリイミドフィルムの他には、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等を用いることができる。厚さとしては、50~500μmが好ましい。 [0050] 蛍光体層122は、光ガイド効果を有し発光効率の高い柱状結晶構造の蛍光体層から構成される。この蛍光体層は基板上に気相堆積法により形成することが好ましい。例えば、賦活剤としてタリウム(Tl)を添加したヨウ化セシウム(CsI)を蛍光体材料として真空蒸着することにより、基板122上に柱状結晶構造の蛍光体層を形成することができる。ヨウ化セシウム(CsI)の他には、臭化セシウム(CsBr)等を用いることができる。賦活材としては、タリウム(Tl)の他に、ユーロピウム、インジウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、ナトリウム、銅、セリウム、亜鉛、チタン、ガドリニウム、テルビウム等を用いることができる。なお、蛍光体層の厚さは、100~800μmであることが好ましく、120~700μmであることが、輝度と鮮鋭性の特性をバランスよく得られる点からより好ましい。 [0051] クッション層15は、シンチレータパネル12を適度な圧力で受光素子13に圧接させるためのものである。例えば、放射線の吸収が少ないシリコン系またはウレタン系の発泡材を用いることができる。クッション層の厚さは1~40mmが好ましく、より好ましくは2~20mmである。 [0052] 第1保護フィルム121及び第2保護フィルム124は、蛍光体層121を防湿し蛍光体層122の劣化を抑制するためのもので、透湿度の低いフィルムから構成される。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を用いることができる。PETの他には、ポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等を用いることができる。 [0053] また、第1保護フィルム121及び第2保護フィルム124の互いに対向する面には、互いを融着して封止するための融着層が形成されている。 [0054] 第1保護フィルム121の受光素子に接する側には、再剥離粘着剤層125が形成されている。 [0055] 受光素子13は、2次元状に配置された複数の受光画素から構成されている。例えば、フォトダイオード+薄膜トランジスタ(TFT)により構成することができる。フォトダイオードにより光電変換した信号電荷を、TFTを用いて読み出す。受光素子13としては他に、CMOS、CCD等を用いることができる。 [0056] 保護カバー14は、シンチレータパネル12を外部の衝撃等から保護するとともに、クッション層15を圧縮してシンチレータパネル12を適度な圧力で受光素子13に圧接する役割も果たしている。例えば、放射線透過性の高いカーボン板により構成される。保護カバー14としては他に、アルミ板を用いることができる。 [0057] フラットパネルディテクタ1を組み立てる際には、筐体11内に配置した受光素子13上に、再剥離粘着剤層125が形成されている第1保護フィルム121で封止されたシンチレータパネル12を載置し、さらにクッション層15、その後保護カバー14を筐体11にネジ等で固定することにより組み立てる。保護カバー14を取り付けた際にクッション層15が圧縮され、圧縮に抗するクッション層15の反発力によりシンチレータパネル12が受光素子13に対して適度な圧力で圧接する。この圧力により第1保護フィルム121上に形成された再剥離粘着剤層125と受光素子13が接着し、振動やフラットパネルディテクタの傾き等による、シンチレータパネル12と受光素子13の位置ずれが防止される。 [0058] また基板123は200μm以下の樹脂フィルムからなっており、またシンチレータパネル12の総厚が1mm以下であるあるため、シンチレータパネル12がクッション層15の適度な圧力で平面受光素子13の面形状に合った形状に変形し、フラットパネルディテクタの受光面全体で均一な接触状態が得られる。 [0059] このように、本実施形態によれば、蛍光体層122にダメージを与えない適度なクッション層15の圧力で、シンチレータパネル12と受光素子13の良好な密着状態が得られる。なお、作業は受光素子13上にシンチレータパネル12を載置して、クッション層15、保護カバー14を取り付ければよいので、精度よく容易に組み立てることができる。 [0060] 本実施形態では、第1保護フィルム124及び第2保護フィルム125の2枚の保護フィルムを用いているが、保護層が樹脂フィルム以外の、CVD法によりシンチレータパネル全面に形成されたポリパラキシリレン膜であっても同様の手順で本発明の効果を実現できる。 実施例 [0061] 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。 [0062] 実施例 《シンチレータの作製》 (基板の準備) 基板として厚さ125μmと225μmのポリイミドフィルム(250mm×300mm)を準備した。 [0063](蛍光体層の形成) 以下のように、蒸着装置を使用して、気相堆積法により、準備したポリイミドフィルムに蛍光体(CsI:0.3%Tl)を蒸着して蛍光体層を形成し、シンチレータを作製した。 [0064] 蛍光体原料(CsI:0.3%Tl)を抵抗加熱ルツボに充填し、支持体ホルダにポリイミドフィルムを設置し、抵抗加熱ルツボとアルミニウム板との間隔を400mmに調節した。続いて蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して0.5Paに真空度を調整した後、10rpmの速度でポリイミドフィルムを回転しながら温度を150℃に保持した。次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して蛍光体を蒸着し、蛍光体層の膜厚が400μmとなったところで蒸着を終了し、シンチレータを作製した。」 (2) 引用発明の認定 前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「シンチレータパネル12であって、([0048]) シンチレータパネル12は、基板123上に蛍光体層122が形成され、これらの基板123及び蛍光体層122が第1保護フィルム121及び第2保護フィルム124により封止された構成となっており、([0048]) 蛍光体層122は、光ガイド効果を有し発光効率の高い柱状結晶構造の蛍光体層から構成され、([0050]) 賦活剤としてタリウム(Tl)を添加したヨウ化セシウム(CsI)を蛍光体材料として真空蒸着することにより、基板122上に柱状結晶構造の蛍光体層を形成することができ、([0050]) 賦活材としては、タリウム(Tl)の他に、ユーロピウム、インジウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、ナトリウム、銅、セリウム、亜鉛、チタン、ガドリニウム、テルビウム等を用いることができ、([0050]) 蒸着装置を使用して、気相堆積法により、準備したポリイミドフィルムに蛍光体(CsI:0.3%Tl)を蒸着して蛍光体層を形成し、シンチレータを作製し、([0063]) 蛍光体原料(CsI:0.3%Tl)を抵抗加熱ルツボに充填し、支持体ホルダにポリイミドフィルムを設置し、抵抗加熱ルツボとアルミニウム板との間隔を400mmに調節した。続いて蒸着装置内を一旦排気し、Arガスを導入して0.5Paに真空度を調整した後、10rpmの速度でポリイミドフィルムを回転しながら温度を150℃に保持し、次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して蛍光体を蒸着し、蛍光体層の膜厚が400μmとなったところで蒸着を終了し、シンチレータを作製した、([0063]) フラットパネルディテクタ1」 2 引用文献2の記載事項及び引用文献2技術事項の認定 (1) 引用文献2記載事項 原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である引用文献1(米国特許出願公開第2019/0250286号明細書)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。また、括弧書きの仮訳は当合議体が作成したものであり、以下同様である。 「[0131] In some embodiments, the presently disclosed subject matter provides a method of altering one or more optical and/or scintillation properties of an alkali or alkaline earth halide scintillator, e.g., to provide a scintillator material with properties tailored for a particular application, such as for a particular medical diagnostic application or a particular security/military-related application. In some embodiments, the presently disclosed subject matter provides a method of altering one or more optical and/or scintillation properties of an alkali or alkaline earth halide scintillation material, wherein the optical and/or scintillation properties being altered are selected from the group including, but not limited to, scintillation light yield, decay time(i.e., photoluminescence and/or scintillation decay time), afterglow, rise time, energy resolution, proportionality, and sensitivity to light exposure. In some embodiments, the method comprises preparing the scintillation material in the presence of a dopant ion and one or more tetravalent coolant ions. In some embodiments, the method comprises preparing the scintillation material in the presence of a dopant ion (e.g., In, Tl, Ce, PR, Nd, Smi, Eu, Gd, Tb, Yb, Bi, and Sb) and in the presence of a tetravalent cocopan ion, wherein the tetravalent co dopant ion is present at a molar ratio of up to about 5000ppm with respect to all cations. In some embodiments, the dopant ion is present at a mol percent of about 10 mol % or less compared to all cations.」 ([0131] いくつかの実施形態において、本開示の主題は、特定の医療診断用途又は特定の安全保障/軍事関連用途などの特定の用途に適合させた特性を有するシンチレータ材料を提供するために、アルカリ又はアルカリ土類ハライドシンチレータの一つ又は複数の光学特性及び/又はシンチレーション特性を変化させる方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示の主題は、アルカリ又はアルカリ土類ハライドシンチレーション材料の一つ又は複数の光学特性及び/又はシンチレーション特性を変化させる方法を提供し、ここで変化させられる光学特性及び/又はシンチレーション特性は、シンチレーション発光量、減衰時間(すなわち、フォトルミネセンス及び/又はシンチレーション減衰時間)、残光、立ち上がり時間、エネルギー分解能、比例性、並びに光照射に対する感度を含む群から選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、当該方法は、ドーパントイオン及び一つ又は複数の四価コドーパントイオンの存在下でシンチレーション材料を調製することを含む。いくつかの実施形態において、当該方法は、ドーパントイオン(例えば、In、Tl、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Yb、Bi、及びSb)の存在下、並びに四価コドーパントイオンの存在下でシンチレーション材料を調製することを含み、ここで前記四価コドーパントイオンは、全てのカチオンに対して最大約5000ppmのモル比で存在する。いくつかの実施形態において、前記ドーパントイオンは、全てのカチオンに対して約10 mol%以下のモル百分率で存在する。) 「[0132] In some embodiments, the alkali or alkaline earth scintillation material whose optical and/or scintillation properties are being altered via tetravalent ion codoping is a scintillator material of Formula (I′) or (II′): (A1-xMx)X (I′); or (A′1-xMx)X2 (II); wherein: 0.0001≦x≦0.1; A is one or more alkali metal; A′ is one or more alkaline earth metal; M is selected from the group comprising In, Tl, Ce, Pr, Nd, Sm, Eu, Gd, Tb, Yb, Bi, Sb, and combinations thereof; and X is one or more halogen. In some embodiments, A is selected from the group comprising Li, Na, K, Rb, Cs, and combinations thereof. In some embodiments, A′ is selected from the group comprising Mg, Ca, Sr, Ba, and combinations thereof. In some embodiments, A′ is selected from Sr and Ba. In some embodiments, A′ is Sr. In some embodiments, X is selected from Cl, Br, I and combinations thereof. In some embodiments, X is I.」 (いくつかの実施形態において、四価イオンのコドープにより光学特性及び/又はシンチレーション特性が変化させられるアルカリ又はアルカリ土類シンチレーション材料は、式(I′)又は(II′)のシンチレーション材料である: (A1-xMx)X (I′);又は (A′1-xMx)X2 (II); ここで、0.0001≦x≦0.1であり、Aは一つ又は複数のアルカリ金属であり、A′は一つ又は複数のアルカリ土類金属であり、Mは、In、Tl、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Yb、Bi、Sb、並びにこれらの組合せからなる群から選択され、Xは一つ又は複数のハロゲンである。いくつかの実施形態において、Aは、Li、Na、K、Rb、Cs、及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、A′は、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、A′は、Sr及びBaから選択される。いくつかの実施形態において、A′はSrである。いくつかの実施形態において、Xは、Cl、Br、I、及びこれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、XはIである。) 「[0133] In some embodiments, dopant or activator M is Eu, Ce, or Pr. In some embodiments, M is Eu(which can be present as Eu2+). In some embodiments, the scintillator material is SrI2:Eu. ([0133] いくつかの実施形態において、ドーパント又は活性剤Mは、Eu、Ce、又はPrである。いくつかの実施形態において、MはEu(Eu2+として存在し得る)である。いくつかの実施形態において、シンチレータ材料はSrI2:Euである。) 「[0134] In some embodiments, the scintillator material comprises between about 0.1 at % (or mol %)and about 5 at % (or mol %) of the dopant or activator (i.e., M) compared to all the cations in the scintillator material. Thus, in some embodiments, 0.001≦x≦0.05. In some embodiments, 0.01≦x≦0.05. Thus, in some embodiments, the scintillator material comprises about 1.0, 1.5, 2.0, 2.5, 3.0, 3.5,4.0, 4.5, or about 5.0 at % (or mol %) of the dopant or activator. In some embodiments, x is 0.03 and the scintillator material comprises about 3.0 at% (or mol %) of the dopant.」 ([0134] いくつかの実施形態において、シンチレータ材料は、シンチレータ材料中の全てのカチオンに対して、ドーパント又は活性剤(すなわち、M)を約0.1at%(又はmol%)~約5at%(又はmol%)含有する。したがって、いくつかの実施形態において、0.001≦x≦0.05である。いくつかの実施形態において、0.01≦x≦0.05である。したがって、いくつかの実施形態において、シンチレータ材料は、ドーパント又は活性剤を約1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、又は約5.0at%(又はmol%)含有する。いくつかの実施形態において、xは0.03であり、シンチレータ材料はドーパントを約3.0at%(又はmol%)含有する。) (2) 引用文献2技術事項の認定 前記(1)に摘記した引用文献2記載事項を総合すると、引用文献2には次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「式(I′)のシンチレーション材料であり (A1-xMx)X (I′) 0.0001≦x≦0.1であり、Mは、In、Tl、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Yb、Bi、Sbから選択され、Aは、Li、Na、K、Rb、Cs、及びこれらの組合せからなる群から選択され、XはIであり、([0132]) いくつかの実施形態において、シンチレータ材料は、シンチレータ材料中の全てのカチオンに対して、ドーパント又は活性剤(すなわち、M)を約0.1at%(又はmol%)~約5at%(又はmol%)含有する、([0134]) 技術。」 3 引用文献5、6に記載された事項及び技術常識1の認定 引用文献の参照番号は、審査及び審判の手続において共通した表記とするため、この審決において新たに引用した文献は、「引用文献5」、「引用文献6」等の表記とした。 (1) 引用文献5に記載された事項 本審決において新たに引用する、優先日前に発行された文献である国際公開第2009/119378号(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。 「[0025] 当該シンチレーターに、前出の二次放射線であるα線が当たると当該シンチレーターに多数の電子正孔対が生成され、該電子正孔対の一部がランタノイドを介して再結合する際に発光が起こる。例えば、Ce或いはPrの場合は、5d準位から4f準位への電子遷移による5d-4f遷移に起因する発光が起こる。当該Ce或いはPrの5d-4f遷移に起因する発光は特に寿命が短く、従って高速応答性に優れたシンチレーターを得ることができる。Euの場合にも同様に5d-4f遷移に起因する発光が起こるが、当該Euの5d-4f遷移に起因する発光は、Ce或いはPrに比較して寿命が長い半面、発光強度が極めて高いという性質を有する。」 (2) 引用文献6に記載された事項 本審決において新たに引用する、優先日前に発行された文献である欧州特許出願公開第3633081号明細書(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。 「[0009] The greatest variety of parameters can be obtained from crystal phosphors, by varying the dopants and the composition of the base (WO 2001060945 A2, 23.08.2001). There are known scintillation single crystals doped with cerium Ce ions (the dopant content in the crystal matrix is at the level of tenths of a percent), which have one of the largest scintillation outputs (see, e.g., US 7250609 B2, 31.07.2017). Scintillation materials doped with cerium ions have, in addition to high scintillation output, a short luminescence time. Among the scintillation crystals doped with cerium ions, there are materials with a garnet structure possessing a cubic spatial symmetry group. These crystals are the most technologically advanced, allowing to obtain a wide range of compositions for use in scintillation detectors.」 (結晶性蛍光体からは、ドーパント及び母材の組成を変化させることにより、最も多様なパラメータを得ることができる(WO 2001060945 A2、23.08.2001)。セリウムCeイオンをドープしたシンチレーション単結晶(結晶マトリクス中のドーパント含有量は百分率の十分の一程度である)が知られており、これらは最大級のシンチレーション出力の一つを有する(例えば、US 7250609 B2、31.07.2017を参照)。セリウムイオンをドープしたシンチレーション材料は、高いシンチレーション出力に加えて、短い発光時間を有する。セリウムイオンをドープしたシンチレーション結晶の中には、立方空間対称群を有するガーネット構造の材料が存在する。これらの結晶は最も技術的に成熟しており、シンチレーション検出器に用いるための広範な組成範囲を得ることを可能にする。) (3) 技術常識1の認定 前記(1)及び(2)に摘記した引用文献5の記載事項及び引用文献6の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識(以下「技術常識1」という。)であったと認められる。 <技術常識1> 「シンチレータ結晶において、セリウムをドープすると短い発光時間が得られること。」 4 引用文献7、8に記載された事項及び技術常識2の認定 (1) 引用文献7に記載された事項 本審決において新たに引用する、優先日前に発行された文献である特表2016-502575号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。 「【0046】 第1実施態様によれば、図1に示されたもののようなガンマ光子検出器に例示的用途を有すると共に図2に図示されたPET撮像システムに他の例示的用途を有するシンチレータ材料2は、組成(Gd2.7-yLu0.3Cey)(Al2.5Ga2.47Lu0.03)O12を有し、ここで、セリウムの量は0.1モル%~1.0モル%の範囲内である。この組成において、セリウムのドーピングはCeyにより表されている。改善された感度は、以下の範囲の系列:即ち、0.15モル%~1.0モル%;0.15モル%~0.6モル%;0.15モル%~0.5モル%;0.15モル%~0.4モル%;0.15モル%~0.2モル%を通して漸進的に減少されるように、セリウム濃度範囲を更に限定することにより達成される。 【0047】 ガーネット組成物にセリウムを添加する効果は、当該シンチレーション光応答のピークに近いエネルギを持つガンマ光子により打撃された場合に当該ガーネットからの実質的に緑色のシンチレーション光の放出を特に高い光収率で生じさせることである。図3は、セラミックガーネット組成物(Gd2.7-yLu0.3Cey)(Al2.5Ga2.47Lu0.03)O12における0.1モル%~3.0モル%の範囲内のセリウムドーパント濃度の場合のLYSOと比較した等価光収率の変化を示し、ここで、y=0.03が1.0モル%のセリウム濃度に対応する。図3における等価光収率は、基準材料LYSOとの直接的比較がなされることを可能にする。零のセリウム濃度においては、母材がシンチレータ材料として作用するには、該母材からの十分な光放出が存在しない。0.1モル%なる最も低いプロットされたセリウム濃度においては、約75000光子/MeVの光収率が測定され、この濃度からは、セリウム濃度の増加は光収率を低下させる。約1.0モル%のセリウムより上では、光収率は当該組成物をシンチレータ材料として使用するには効率的でなくなるレベルに低下する。このことは、高いセリウムドーピングレベルにおいて光収率を低下させる濃度消光(concentration quemching)の効果を示している。減少された光収率はガンマ光子検出器が個々のガンマ光子の間を正確に区別することを妨げるので、PET撮像において濃度消光状態を使用することは望ましくない。」 (2) 引用文献8に記載された事項 本審決において新たに引用する、優先日前に発行された文献である特開2016-164210号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の記載がある。 「【0085】 上記結果より、実施例の群からなるパイロクロア型の複合酸化物を主成分とするシンチレータ材料は、いずれも厚さ1mmとした場合の波長633nmの光の透過率が76%以上と透明であるため、シンチレータ材料として発光した光がその内部で無駄に散乱損失することなく、またX線で励起した場合の最強の発光ピーク波長が545nmであるため、受光素子としてSiフォトダイオードで光電変換を問題なく行うことができ、更にまた、光出力が従来材料と比べて遜色がなく、その上、X線照射による残光出力5%時の減衰時間が5ms以下と短い。なお、紫外線照射による残光出力5%時の減衰時間はすべて10ns以下であった。より詳細に比較すると、セリウム濃度が同じ組成群同士では、p/qが0.98、0.90、0.80と低下するほど光出力が増大する傾向が顕著となっている。これにより、本発明のシンチレータ材料をX線CT装置やガンマ線PET装置などの放射線検査装置に利用した場合に、スイッチングサイクルが高速化できるため、短時間、低被曝線量の操作性、安全性に優れた放射線検査装置に仕上げることが可能となる。 なお、比較例3-1、3-2、3-3、3-7の組成では、セリウム濃度が高すぎるため、濃度消光を起こし、光出力が低下している。また、比較例3-4、3-5、3-6、3-8の組成では、セリウム濃度が低すぎるため、光出力が低下している。」 (3) 技術常識2の認定 前記(1)及び(2)に摘記した引用文献7の記載事項及び引用文献8の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識(以下「技術常識2」という。)であったと認められる。 <技術常識2> 「シンチレータ材料にセリウムを添加する場合、濃度が低すぎると十分に発光せず、濃度が高すぎると濃度消光が発生し発光強度が低下すること。」 第5 本願発明と引用発明の対比 1 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 (1) 構成Xの観点 「シンチレータパネル」の発明である本願発明と「シンチレータパネル12」の発明である引用発明は、「シンチレータパネル」の発明である点において一致する。 (2) 構成Aの観点 ア 構成Aは、「支持体と、前記支持体上に形成され、柱状結晶により構成されたシンチレータ層と、前記シンチレータ層を少なくとも覆う保護膜と、を備え[る]」ことである。 イ 引用発明における「基板123」は、本願発明における「支持体」に相当する。 ウ 引用発明においては、「シンチレータパネル12は、基板123上に蛍光体層122が形成され」、「蛍光体層122は、光ガイド効果を有し発光効率の高い柱状結晶構造の蛍光体層から構成され[ている]」から、引用発明における「蛍光体層122」は本願発明における「シンチレータ層」に相当し、本願発明と同様に「柱状結晶により構成され[ている]」といえる。 エ 引用発明における「シンチレータパネル12」は、「基板123及び蛍光体層122が第1保護フィルム121及び第2保護フィルム124により封止された構成となって[いる]」から、引用発明における「第1保護フィルム121及び第2保護フィルム124」は、本願発明における「保護層」に相当し、引用発明における「第1保護フィルム121及び第2保護フィルム124」は本願発明と同様に「シンチレータ層を少なくとも覆う」ものであるといえる。 オ したがって、本願発明と引用発明は、構成Aの観点である次の点において一致する。 「支持体と、前記支持体上に形成され、柱状結晶により構成されたシンチレータ層と、前記シンチレータ層を少なくとも覆う保護膜と、を備え[る]」点。 (3) 構成Bの観点 ア 構成Bは、「前記シンチレータ層は、母材としてヨウ化セシウムを含み且つ賦活剤としてセリウムを含み、前記セリウムの濃度は、300~6000ppmである」ことである。 イ 引用発明における「シンチレータパネル12」は、「賦活剤としてタリウム(Tl)を添加したヨウ化セシウム(CsI)を蛍光体材料として真空蒸着することにより、基板122上に柱状結晶構造の蛍光体層を形成することができ[る]」ものであるところ、引用発明における「蛍光体層」及び「賦活剤」は、それぞれ引用発明における「シンチレータ層」及び「賦活剤」に相当する。また、引用発明における「ヨウ化セシウム」は本願発明における「母材」に相当することは明らかである。そうすると、本願発明における「シンチレータ層」と引用発明における「蛍光体層」は、「母材としてヨウ化セシウムを含み且つ賦活剤を含む」点で一致する。 ウ 一方で、「賦活剤」として、本願発明においては濃度が「300~6000ppm」のセリウムを用いているのに対して、引用発明においては濃度が0.3%、すなわち濃度が3000ppmのタリウムを用いている。 エ 以上の検討結果をふまえると、本願発明と引用発明は、構成Bの観点において次の(ア)の点において一致し、後記(イ)の点において相違する。 (ア) 構成Bの観点での一致点 「前記シンチレータ層は、母材としてヨウ化セシウムを含み且つ賦活剤を含む」点。 (イ) 構成Bの観点での相違点 シンチレータ層に含まれる賦活剤について、 本願発明においては濃度が「300~6000ppmである」「セリウム」を用いるのに対し、 引用発明においては濃度が3000ppmのタリウムを用いる点。 2 一致点及び相違点の認定 前記1の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。 (1) 一致点 「シンチレータパネルであって、 支持体と、前記支持体上に形成され、柱状結晶により構成されたシンチレータ層と、前記シンチレータ層を少なくとも覆う保護膜と、を備え、 前記シンチレータ層は、母材としてヨウ化セシウムを含み且つ賦活剤を含む、 シンチレータパネル。」の発明である点。 (2) 相違点 シンチレータ層に含まれる賦活剤について、 本願発明においては濃度が「300~6000ppmである」「セリウム」を用いるのに対して、 引用発明においては、濃度が3000ppmの「タリウム」を用いる点。 第6 相違点の評価 1 「シンチレータ層」は「賦活剤としてセリウムを含[む]」点について、引用発明においては、「賦活材としては、タリウム(Tl)の他に、ユーロピウム、インジウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、ナトリウム、銅、セリウム、亜鉛、チタン、ガドリニウム、テルビウム等を用いることができ」、「セリウム」が賦活剤として例示されているところ、「シンチレータ結晶において、セリウムをドープすると短い発光時間が得られること」は技術常識であり(前記第4の3(3)「技術常識1」)、引用発明において高速応答性を得ることを考慮して、賦活剤として、例示されたものからセリウムを選択することは、当業者が容易になし得る事項である。 2 「セリウムの濃度は、300~6000ppmである」点について、 賦活剤の濃度をどの程度とするかは、当業者が適宜設定する事項であるところ、引用発明においては、賦活剤であるタリウムを3000ppm添加しており、また、引用文献2技術事項(第4の2(2))にみるように、セリウム(Ce)を添加したヨウ化セシウム(CsI)の各元素を例示の材料とするシンチレータ材料において、活性剤(本願発明における「賦活剤」に相当)を0.0001≦x≦0.1at%つまり、54~56500ppm(質量%)含むものも知られている。すなわち、本願発明において特定されている「300~6000ppm」という値は、賦活剤の濃度として当業者が通常想定するような値であるといえる。そして、「シンチレータ材料にセリウムを添加する場合、濃度が低すぎると十分に発光せず、濃度が高すぎると濃度消光が発生し発光強度が低下すること」が技術常識であることを考慮すれば(前記第4の4(3)「技術常識2」)、そのような公知の濃度範囲から、本願発明における濃度の値、すなわちセリウムの濃度を「300~6000ppm」とすることは、当業者が適宜なし得る事項である。 3 そして、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして、当業者が予測・発見困難であり、かつ格別顕著な効果も認められない。 4 相違点の評価まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2技術事項、技術常識1及び技術常識2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 請求人の主張について 1 請求人の主張内容 請求人は、本願発明が進歩性を有することの根拠として、次の点(それぞれ「主張1」及び「主張2」という。)を主張する。 (1) 主張1 本願発明は「ヨウ化セシウムを母材とした場合の賦活剤としてのセリウムの濃度が高くなるにつれ、輝度が増加すること」、「ヨウ化セシウムを母材とした場合の賦活剤としてのセリウムの濃度が一定以上であると、濃度消光により輝度が小さくなること」との顕著な効果を奏するが、引用文献1、2にはこのような効果について教示や示唆はない。またそもそも、引用文献1、2においては、賦活剤としてのセリウムは例示されているにすぎない。 (2) 主張2 本願発明は、格別顕著な効果を奏するから、審査基準における、数値限定の発明が進歩性を有していると判断する要件、選択発明が進歩性を有していると判断するための要件を満たしている。 2 請求人の主張についての検討 (1) 主張1について 「シンチレータ材料にセリウムを添加する場合、濃度が低すぎると十分に発光せず、濃度が高すぎると濃度消光が発生し発光強度が低下すること。」(前記第4の4(3)「技術常識2」)は技術常識であるから、請求人が主張する効果は、格別顕著な効果とはいえない。また、「シンチレータ結晶において、セリウムをドープすると短い発光時間が得られること。」が技術常識であること(前記第4の3(3)「技術常識1」)から、セリウムを選択する動機があることは、前記第6の1において検討したとおりである。 したがって、前記主張1は採用することができない。 (2) 主張2について 「シンチレータ材料にセリウムを添加する場合、濃度が低すぎると十分に発光せず、濃度が高すぎると濃度消光が発生し発光強度が低下すること。」(技術常識1)が技術常識であること、及び、「シンチレータ結晶において、セリウムをドープすると短い発光時間が得られること。」(技術常識2)が技術常識であることを考慮すれば、本願発明の奏する効果は、当業者が予測・発見困難でありかつ格別顕著な効果であるとは認められない。すなわち、本願発明は、数値限定発明又は選択発明として進歩性が認められる場合には相当しないものである。 したがって、前記主張2もまた、採用することができない。 第8 むすび 以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-013113

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