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特許拒絶査定不服審判

2024-014347

装置、方法、及びプログラム

審判番号
2024-014347
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-113819
請求日
2024年09月06日
審決日
2026年03月16日
公報発行日
2026年05月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】浜松ホトニクス株式会社
  • 【請求人代理人】長谷川 芳樹
  • 【請求人代理人】黒木 義樹
  • 【請求人代理人】柴山 健一
  • 【請求人代理人】中山 浩光
  • 【請求人代理人】小曳 満昭
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 波多江 進
  • 審判官 野村 伸雄
分類
P18 .121-WZ (G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-113819「装置、方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 9月 8日出願公開、特開2022-132488〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年4月9日に出願した特願2018-74865号の一部を令和4年7月15日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和4年 7月15日 :上申書の提出 令和5年 7月31日付け:拒絶理由通知書 同年11月21日 :意見書の提出 令和6年 1月22日付け:拒絶理由通知書 同年 3月29日 :意見書、手続補正書の提出 6月25日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年 7月 2日 :原査定の謄本の送達) 同年 9月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和7年 8月 8日付け:拒絶理由通知書 同年 9月29日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 1 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年9月29日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1の記載は、次のとおりである。 <本願発明> 「互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を設定した場合に、 複数のXZ画像データをY軸方向に有する試料の3次元情報に基づいて前記試料のXY画像データを生成する画像生成部を備え、 前記画像生成部は、前記XZ画像データ中の前記試料が存在していると判断された領域を前記XZ画像データにおける解析領域として抽出する一方で、前記解析領域以外の領域の輝度値を低減した後、前記解析領域以外の領域の輝度値が低減された前記XZ画像データの輝度値をZ軸方向に積算してX画像データを生成し、前記X画像データを前記Y軸方向に結合して前記XY画像データを生成する装置。」 2 本願発明の分説 検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Dまでに分説する。また、参考図として、本願の【図13】に部材名を記入したものを掲載する。 <本願発明の分説> (構成A)互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を設定した場合に、 複数のXZ画像データをY軸方向に有する試料の3次元情報に基づいて前記試料のXY画像データを生成する画像生成部を備え、 (構成B)前記画像生成部は、前記XZ画像データ中の前記試料が存在していると判断された領域を前記XZ画像データにおける解析領域として抽出する一方で、 (構成C)前記解析領域以外の領域の輝度値を低減した後、前記解析領域以外の領域の輝度値が低減された前記XZ画像データの輝度値をZ軸方向に積算してX画像データを生成し、 (構成D)前記X画像データを前記Y軸方向に結合して前記XY画像データを生成する (構成X)装置。 <参考図> [図:0001434765000001.jpg] 3 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願の明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、図面を関連する記載のある箇所の次に適宜挿入して示した。下線は当合議体による。 (1) 【技術分野】、【背景技術】、【発明の概要】等 「【技術分野】 【0001】 本発明は、装置、方法、及びプログラムに関する。 【背景技術】 【0002】 細胞などの3次元立体構造を持つ試料の内部を観察する手法の一つとして、SPIM(Selective Plane Illumination Microscopy)が知られている。例えば特許文献1に記載の断層像観察装置は、SPIMの基本的な原理を開示したものであり、面状光を試料に照射し、試料の内部で発生した蛍光又は散乱光を結像面に結像させて試料内部の観察画像データを取得する。 【0003】 面状光を用いた他の試料観察装置としては、例えば特許文献2に記載のSPIM顕微鏡が挙げられる。この従来のSPIM顕微鏡では、試料の配置面に対して一定の傾斜角をもって面状光を照射し、面状光の照射面に対して直交する観察軸を有する観察光学系によって試料からの観察光を撮像する。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開昭62-180241号公報 【特許文献2】特開2014-202967号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 上述したような試料観察装置では、例えば試料容器の中に試料と溶液とを保持して観察を実施している。溶液からの蛍光は、背景光となるため、試料からの観察光を高い再現性で測定するためには、背景光の影響を低減させる必要がある。従来、取得画像から背景光の影響を低減させる手法としては、例えば取得画像から試料の存在しない領域の平均輝度値を求め、試料の存在する領域の輝度値から試料の存在しない領域の平均輝度値を減算して試料の輝度値を算出する手法が挙げられる。 【0006】 しかしながら、背景光の輝度値の算出結果は、様々な要因でばらつくことが考えられる。例えば背景光が蛍光である場合、背景光の輝度値は、溶液の単位体積当たりの蛍光の強度と溶液の深さとの積で表される。同一の試料容器内で試料の存在しない領域の平均輝度値を求める場合、表面張力に起因して溶液の高さがばらつくことがある。また、背景光の検出用に溶液のみを保持した試料容器を用いる場合、溶液の分注精度がばらつくことがある。背景光の輝度値の算出結果がばらつくと、試料の蛍光の輝度値に対する背景光減算後の蛍光の輝度値のリニアリティが大きく崩れ、試料観察の再現性が低下してしまうおそれがある。 【0007】 本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、背景光の輝度値のばらつきの影響を低減できる試料観察装置及び試料観察方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の一側面に係る試料観察装置は、試料に面状光をXZ面で照射する照射光学系と、面状光の照射面を通過するように試料をY軸方向に走査する走査部と、照射面に対して傾斜する観察軸を有し、面状光の照射によって試料で発生した観察光を結像する結像光学系と、結像光学系によって結像された観察光の光像に対応するXZ画像データを複数取得する画像取得部と、画像取得部によって取得された複数のXZ画像データに基づいて試料のXY画像データを生成する画像生成部と、を備え、画像取得部は、XZ画像データをY軸方向について複数取得し、画像生成部は、XZ画像データにおける解析領域を抽出し、少なくとも解析領域の輝度値をZ軸方向に積算してX画像データを生成し、X画像データをY軸方向に結合してXY画像データを生成する。 【0009】 この試料観察装置では、照射面に対して傾斜する観察軸を有する結像光学系によって試料のXZ画像データを複数取得する。各XZ画像データでは、1画素に含まれる背景光のZ方向成分を一定とすることができるため、背景光の輝度値のばらつきの影響を低減できる。したがって、X画像データをY軸方向に結合して得られるXY画像データにおいても、背景光の影響を十分に低減することが可能となる。 …(中略)… 【発明の効果】 【0026】 この試料観察装置及び試料観察方法によれば、背景光の輝度値のばらつきの影響を低減できる。」 (2) 【発明を実施するための形態】 「【0029】 図1は、試料観察装置の一実施形態を示す概略構成図である。この試料観察装置1は、面状光L2を試料Sに照射し、試料Sの内部で発生した観察光(例えば蛍光又は散乱光など)を結像面に結像させて試料S内部の観察画像データを取得する装置である。この種の試料観察装置1としては、スライドガラスに保持される試料Sの画像を取得し表示するスライドスキャナ、あるいはマイクロプレートに保持される試料Sの画像データを取得し、画像データを解析するプレートリーダなどがある。試料観察装置1は、図1に示すように、光源2と、照射光学系3と、走査部4と、結像光学系5と、画像取得部6と、コンピュータ7とを備えて構成されている。 【図1】 [図:0001434765000002.jpg] 【0030】 観察対象となる試料Sとしては、例えばヒト或いは動物の細胞、組織、臓器、動物或いは植物自体、植物の細胞、組織などが挙げられる。これらの試料Sは、例えばフルオレセインーデキストラン(励起波長:494nm/蛍光波長:521nm)、テトラメチルローダミン(励起波長:555nm/蛍光波長:580nm)などの蛍光材料によって染色されている。なお、試料Sは、複数の蛍光物質によって染色されてもよい。また、試料Sは、溶液、ゲル、或いは試料Sとは屈折率の異なる物質に含まれていてもよい。 …(中略)… 【0032】 照射光学系3は、光源2から出力された光L1を面状光L2に整形し、整形された面状光L2を光軸P1に沿って試料Sに照射する光学系である。以下の説明では、照射光学系3の光軸P1を面状光L2の光軸という場合もある。照射光学系3は、例えばシリンドリカルレンズ、アキシコンレンズ、或いは空間光変調器などの光整形素子を含んで構成され、光源2に対して光学的に結合されている。照射光学系3は、対物レンズを含んで構成されていてもよい。照射光学系3によって形成された面状光L2は、試料Sに照射される。面状光L2が照射された試料Sでは、面状光L2の照射面Rにおいて観察光L3が発生する。観察光L3は、例えば面状光L2によって励起された蛍光、面状光L2の散乱光、或いは面状光L2の拡散反射光である。 …(中略)… 【0034】 走査部4は、面状光L2の照射面Rに対して試料Sを走査する機構である。本実施形態では、走査部4は、試料Sを保持する試料容器11を移動させる移動ステージ12によって構成されている。試料容器11は、例えばマイクロプレート、スライドガラス、シャーレ等であり、面状光L2及び観察光L3に対して透明性を有している。本実施形態では、マイクロプレートを例示する。試料容器11は、図2に示すように、試料Sが配置される複数のウェル13が一直線状(或いはマトリクス状)に配列された板状の本体部14と、本体部14の一面側においてウェル13の一端側を塞ぐように設けられた板状の透明部材15とを有している。 【図2】 [図:0001434765000003.jpg] 【0035】 ウェル13内への試料Sの配置にあたり、ウェル13内には、試料Sと共に培養液、蛍光指示薬、バッファ等の溶液が充填されている。溶液からは、自家蛍光が発せられる。透明部材15は、ウェル13内に配置された試料Sに対する面状光L2の入力面15aを有している。透明部材15の材質は、面状光L2に対する透明性を有する部材であれば特に限定はされないが、例えばガラス、石英、或いは合成樹脂である。試料容器11は、入力面15aが面状光L2の光軸P1と直交するように移動ステージ12に対して配置されている。なお、ウェル13の他端側は、外部に開放された状態となっている。試料容器11は、移動ステージ12に対して固定されていてもよい。 …(中略)… 【0063】 続いて、試料観察装置1における背景光の減算処理について説明する。 【0064】 試料観察装置1では、試料容器11のウェル13内に試料Sと蛍光溶液とを保持して観察を実施している。溶液からの自家蛍光は、背景光となるため、試料Sからの観察光L3を高い再現性で測定するためには、背景光の影響を低減させる必要がある。従来、取得画像から背景光の影響を低減させる手法としては、例えば取得画像から試料の存在しない領域の平均輝度値を求め、試料の存在する領域の輝度値から試料の存在しない領域の平均輝度値を減算して試料の輝度値を算出する手法が挙げられる。 【0065】 しかしながら、背景光の輝度値の算出結果は、様々な要因でばらつくことが考えられる。例えば背景光が蛍光である場合、背景光の輝度値は、溶液の単位体積当たりの蛍光の強度と溶液の深さとの積で表される。同一の試料容器内で試料の存在しない領域の平均輝度値を求める場合、表面張力に起因して溶液の高さがばらつくことがある。また、背景光の検出用に溶液のみを保持した試料容器を用いる場合、溶液の分注精度がばらつくことがある。 【0066】 背景光の輝度値の算出結果がばらつくと、例えば図10に示すように、試料の蛍光の輝度値に対する背景光減算後の蛍光の輝度値のリニアリティが大きく崩れ、試料観察の再現性が低下してしまうおそれがある。図10では、背景光の減算値が±10%ばらついた場合の試料の蛍光量に対する背景光減算後の蛍光量が示されている。この結果から、背景光の減算値が±数%ばらつくだけでも、背景光減算後の蛍光の輝度値のリニアリティが保たれなくなることが分かる。 【図10】 [図:0001434765000004.jpg] 【0067】 これに対し、試料観察装置1の画像生成部8では、まず、XZ画像データ31における解析領域Fの抽出を行う。解析領域Fの抽出は、XZ画像データ31で撮像される領域のうち、試料Sからの蛍光が存在する領域に対して行われる。図11の例では、画像取得部6でY軸方向に複数される複数のXZ画像データ31のうちの一のXZ画像データ31が示されている。このXZ画像データ31には、例えば試料容器11の透明部材15或いは空気に対応する光像41、試料Sに対応する光像42、溶液に対応する光像43が含まれている。 【図11】 [図:0001434765000005.jpg] 【0068】 画像生成部8は、図12に示すように、このXZ画像データ31における解析領域Fを抽出し、解析領域Fの輝度値をZ軸方向に積算してX画像データ33を生成する。画像生成部8は、他のXZ画像データ31についても同様に、解析領域Fの抽出及び解析領域Fの輝度値のZ軸方向への積算を実行し、複数のX画像データ33を生成する。画像生成部8は、図13に示すように、これらのX画像データ33をY軸方向に結合し、XY画像データ32を生成する。 【図12】 [図:0001434765000006.jpg] 【図13】 [図:0001434765000007.jpg] 【0069】 図14は、画像生成ステップS05の一例を示すフローチャートである。同図に示す画像生成ステップS05の例では、まず、解析領域Fを抽出するための閾値の設定を実行する(ステップS11)。閾値は、例えば溶液のみを保持した試料容器11のウェル13に対するXZ画像データ31の輝度値に基づいて設定される。閾値は、試料Sの蛍光量が既知である場合には、当該蛍光量に基づいて設定されてもよい。閾値は、XZ画像データ31毎に設定されていてもよく、画像取得部6の画素毎にそれぞれ設定されていてもよい。 【図14】 [図:0001434765000008.jpg] 【0070】 次に、設定された閾値に基づいて、XZ画像データ31における解析領域Fの抽出を実行する(ステップS12)。ここでは、解析領域Fとして、試料Sからの蛍光が存在する領域を抽出する。解析領域Fの抽出後、解析領域Fに対して画像取得部6のダークオフセット減算を実行する(ステップS13)。ダークオフセットとは、撮像装置固有のノイズであり、例えば撮像装置の暗電流によって生じるノイズである。ダークオフセット減算実行後、解析領域Fの輝度値をZ軸方向に積算してX画像データ33を生成する(ステップS14)。そして、他のXZ画像データ31について同様に得られたX画像データ33をY軸方向に結合し、XY画像データ32を生成する(ステップS15)。なお、ステップS13のダークオフセット減算は、ステップS11の閾値の設定よりも前に行ってもよい。この場合、ダークオフセット減算分を考慮して閾値の設定を行うことが好ましい。ステップS13のダークオフセット減算は、ステップS14のX画像データ33の生成よりも後に行ってもよい。この際、ダークオフセット減算は、X画像データ33に対して行われることになるため、ダークオフセット減算をXZ画像データ31全体に行うことと同等の効果を得る。 【0071】 また、画像生成ステップS05では、解析領域F以外の領域を構成する複数の画素の輝度値を低減した後に、ステップS14によるX画像データ33の生成を行ってもよい。例えば解析領域F以外の領域を構成する複数の画素の輝度値を0カウントとする処理を行った後、XZ画像データ31をZ軸方向に積算してX画像データ33を生成してもよい。この場合、撮像装置固有のノイズ(例えば読出しノイズ)の揺らぎによる影響を抑えることができる。このような処理は、背景光を発生しない場合(例えば溶液が自家蛍光を発生しない場合)においても有効である。 【0072】 さらに、画像生成ステップS05では、ステップS12による解析領域Fの抽出の後、XZ画像データ31における解析領域FのみをZ軸方向に積算してX画像データ33を生成してもよい。この場合、X画像データ33の生成において積算される画素数が制限されるため、撮像装置固有のノイズ(例えば読出しノイズ)の揺らぎによる影響を抑えることができる。このような処理は、背景光を発生しない場合(例えば、溶液が自家蛍光を発生しない場合)でも有効である。 …(中略)… 【0087】 また、試料観察装置1では、画像生成部8が解析領域F以外の領域の輝度値を低減し、XZ画像データ31の輝度値をZ軸方向に積算してX画像データ33を生成し得る。これにより、撮像装置固有のノイズの揺らぎによる影響を抑えることができる。試料観察装置1では、画像生成部8が解析領域Fのみの輝度値をZ軸方向に積算して、X画像データ33を生成し得る。この場合も、Z軸方向に積算される画素数を制限できるため、撮像装置固有のノイズの揺らぎの影響を抑えることができる。 …(後略)」 第3 当審において通知した拒絶の理由の概要 本願発明は、本件補正前の請求項1(令和6年9月6日にされた手続補正後のもの。)に係る発明を補正したものであるところ、当審において令和7年8月8日付け拒絶理由通知書で本件補正前の請求項1に係る発明に対して通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち理由2(進歩性の欠如)の概要は、次に示すとおりである。 (進歩性の欠如)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特開2013-166072号公報 第4 当合議体の判断 当合議体は、以下に示すとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、と判断する。 1 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 (1) 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定 ア 引用文献1に記載された事項 当審拒絶理由で引用した、本願の出願前に発行された引用文献1(特開2013-166072号公報)には、次の事項が記載されている。なお、図は適宜関連する記載の近くに挿入して示した。また、下線は当合議体が付したものである。 (ア) 技術分野、背景技術(【0001】~【0010】) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、被写体の断層画像を撮影する撮影装置及びその制御方法、当該制御方法をコンピュータに実行させるプログラム、並びに、当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に関する。 【背景技術】 【0002】 生活習慣病や失明原因の上位を占める各種疾病の早期診断を目的として、従来、被写体として眼部の撮像による検査が広く行われている。検診等においては、眼部全体における疾病を見つけることが求められるため、眼部の広い範囲にわたる画像(以下、「眼底広域画像」と称する)を用いた検査が必須となる。この眼底広域画像は、例えば、眼底カメラや走査型レーザー検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope:以下、「SLO」と称する)を用いて撮像される。 【0003】 一方、下記の非特許文献1に原理紹介されている光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:以下「OCT」と称する)などを用いた眼部の断層画像取得装置は、眼部の網膜層内部の状態を3次元的に観察することが可能である。このため、この断層画像取得装置は、疾病の診断をより的確に行うために有用であると期待されている。 【0004】 しかしながら、例えば人間の眼は、固定された点を注視していても無意識に絶えず固視微動という微小な運動を行う。そして、例えばOCTを用いて眼部の撮影を行う場合、撮影開始から終了までに多少の時間がかかるため、この間に被写体である眼部(被検眼)が不意に動いてしまった場合、撮影画像にずれや歪みが生じてしまうことがある。 【0005】 図24は、断層画像取得装置の視点から見た断層画像の撮影位置及び被検眼の網膜上での断層画像の撮影位置の一例を示す模式図である。 【図24】 [図:0001434765000009.jpg] 【0006】 具体的に、図24(a)には、断層画像取得装置の視点から見た断層画像の撮影位置2410の一例が示されており、撮影位置2410の各ラインは、OCTによる断層画像に対応している。しかしながら、実際には、固視微動により眼球が動くため、図24(b)に示すように、被検眼の網膜上での断層画像の撮影位置2420の走査ラインは、図24(a)に対して異なるものとなってしまう。 【0007】 そこで、従来、断層画像間の位置ずれを補正することによって、3次元形状データの歪みを軽減する試みがなされている。例えば、下記の特許文献1には、参照画像(2以上の断層画像と直交する1枚の断層画像、或いは眼底画像)を用いて2以上の断層画像間の位置ずれ補正を行う技術が示されている。 …(中略)… 【先行技術文献】 【特許文献】 【0009】 【特許文献1】特開2007-130403号公報 …(後略)」 (イ) 発明の概要(【0011】~【0016】) 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 しかしながら、上述した特許文献1では、単にスキャナの走査位置を原点に戻す過程で参照画像を得ているものである。この際、例えば被検眼の網膜は基本的に層構造を有しており、この場合、上述した特許文献1の技術で得られた参照画像内には位置ずれ補正を行うのに十分な特徴が含まれている保証はないため、位置補正の精度の確保は困難である。また、特許文献1では、眼底画像を用いて断層画像の位置補正を行うことも示されているが、この場合、網膜に対して直交する深度方向の位置合わせは困難である。 【0012】 本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、被写体の断層画像における位置ずれ補正を高精度で行える仕組みを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0013】 本発明の撮影装置は、被写体の断層画像を撮影する撮影装置であって、前記被写体の第1の断層画像を取得する第1の断層画像取得手段と、前記第1の断層画像を解析する断層画像解析手段と、前記断層画像解析手段の解析結果に基づいて、前記被写体の第2の断層画像を撮影する際の撮影パラメータを設定する撮影パラメータ設定手段と、前記撮影パラメータ設定手段で設定された撮影パラメータに基づき撮影された前記第2の断層画像を取得する第2の断層画像取得手段と、前記第2の断層画像を用いて前記第1の断層画像の位置ずれを補正する補正手段とを有する。 【0014】 また、本発明は、上述した撮影装置の制御方法、及び、当該制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、並びに、当該プログラムを記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含む。 【発明の効果】 【0015】 本発明によれば、被写体の断層画像における位置ずれ補正を高精度で行うことができる。 …(後略)」 (ウ) 発明を実施するための形態(【0017】~【0155】) 「【発明を実施するための形態】 【0017】 以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。 …(中略)… 【0133】 (第3の実施形態) 次に、本発明の第3の実施形態について説明する。 【0134】 上述した第1及び第2の実施形態に係る撮影装置100は、断層画像のコントラスト変化量に係る画像特徴量を用いて注目3次元断層画像中の特徴量の多い領域の抽出を行ったが、本発明の趣旨は、この画像特徴量に限定されるものではない。第3の実施形態に係る撮影装置100では、断層画像内に存在する血管像を特徴とし、注目3次元断層画像に血管像が多く存在する位置の領域の抽出を行う。 【0135】 図14は、本発明の第3の実施形態を示し、断層画像における血管像(特徴)の一例を示す模式図である。 図14(a)には、2次元断層画像Tiと、血管像がない位置におけるA-スキャンに沿った2次元断層画像Tiの輝度値の一例が示されている。また、図14(b)には、2次元断層画像Tjと、血管像がある位置におけるA-スキャンに沿った2次元断層画像Tjの輝度値の一例が示されている。 【図14】 [図:0001434765000010.jpg] 【0136】 2次元断層画像Ti及びTjには、内境界膜1401、神経線維層境界1402、網膜色素上皮層1403、視細胞内節外節接合部1404、視細胞層1405が示されている。さらに、2次元断層画像Tjには、血管領域1406及び血管下の領域1407が示されている。 【0137】 図14(b)に示すように、血管の影のように血管下の領域1407は、全体的に輝度値が低くなってその周辺領域の輝度値とのコントラストが上がるため、注目3次元断層画像と参照断層画像の同じ位置の特定に用いることが好適である。 【0138】 即ち、本実施形態では、注目3次元断層画像を参照断層画像との位置合わせに血管下の領域1407とその付近(周辺領域)とのコントラストの変化を用いるので、そのために血管が多く存在する位置の参照断層画像を撮影するための撮影パラメータを設定する。 【0139】 第3の実施形態に係る撮影システムの概略構成は、図1に示す第1の実施形態に係る撮影システム10の概略構成と同様である。また、第2の実施形態に係る撮影装置のハードウェア構成は、図2に示す第1の実施形態に係る撮影装置100のハードウェア構成と同様である。 【0140】 次に、第3の実施形態に係る撮影装置100の機能構成について説明する。 図15は、本発明の第3の実施形態に係る撮影装置100の機能構成の一例を示す模式図である。なお、以下の説明においては、図15に示す第3の実施形態に係る撮影装置100を「撮影装置100-3」として説明を行い、また、図15に示す機能構成において図3に示す機能構成と同様のものについては同じ符号を付し、その説明は省略する。 【図15】 [図:0001434765000011.jpg] 【0141】 具体的に、図15に示す第3の実施形態に係る撮影装置100-3の機能構成は、図3に示す第1の実施形態に係る撮影装置100-1の機能構成に対して、積算画像作成部1510が追加されて構成されたものである。 【0142】 ここで、本実施形態においては、例えば、図2に示すCPU101及び外部記憶装置104に記憶されているプログラムから、図15に示す積算画像作成部1510が構成される。 【0143】 なお、図15に示す撮影装置100-3の積算画像作成部1510等における機能の説明については、後述する図16のフローチャートの説明と併せて行う。 【0144】 また、第3の実施形態に係る撮影装置100の制御方法における処理手順は、基本的には、図6に示す処理手順と同様である。ただし、第3の実施形態では、図6のステップS630の処理の詳細な処理内容が第1の実施形態と異なるため、この点について以下に説明を行う。 【0145】 図16は、本発明の第3の実施形態を示し、図6のステップS630における参照断層画像撮影パラメータの設定処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。 【図16】 [図:0001434765000012.jpg] 【0146】 <ステップS1601> まず、ステップS1601において、断層画像主走査方向位置補正部161は、図7のステップS631と同様に、断層画像取得部120で撮影し取得された注目断層画像(注目3次元断層画像)のB-スキャン画像同士のX方向、Z方向の位置ずれ補正を行う。そして、断層画像主走査方向位置補正部161は、主走査方向の位置ずれ補正がなされた注目断層画像(注目3次元断層画像)を断層画像解析部130及び記憶部150へ出力する。 【0147】 <ステップS1602> 続いて、ステップS1602において、積算画像作成部1510は、ステップS620で断層画像取得部120によって撮影された注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれについてZ方向(第1の方向)に積算した積算画像を作成する処理を行う。 【0148】 図17は、本発明の第3の実施形態を示し、注目断層画像と積算画像の一例を示す模式図である。ここで、図17(a)は、被検眼20の黄斑部の注目断層画像T1~Tnを示し、図17(b)は、注目断層画像T1~Tnから作成された積算画像Pを示している。ここで、深度方向は、図17(a)に示すZ方向であり、深度方向に積算するとは、図17(a)のZ方向の各深度位置における輝度値を足し合わせる処理である。 【図17】 [図:0001434765000013.jpg] 【0149】 なお、図17(b)示す積算画像Pは、各深度位置における輝度値を単純加算した値でもよいし、加算値を加算数で割った平均値でもよい。さらに、この積算画像Pは、深度方向に全画素の輝度値を加算する必要はなく、任意の範囲のみ加算するようにしてもよい。例えば、事前に被検眼20の網膜層全体を検出しておいて当該網膜層内のみを加算してもよいし、また、当該網膜層内の任意の層のみを加算してもよい。 【0150】 積算画像作成部1510は、断層画像取得部120によって撮影された注目断層画像のn個の断層画像T1~Tnのそれぞれについて深度方向(Z方向)に積算する処理を行って、積算画像Pを作成する処理を行う。図17(b)に示す積算画像Pは、積算値が大きいほど輝度値が明るく、積算値が小さいほど輝度値が暗くなるように示している。また、図17(b)の積算画像Pにおいて、曲線Vは血管像を示しており、また、画像中心の円Mは、被検眼20の黄斑部を示している。 【0151】 また、断層画像取得部120は、図6のステップS620において、低コヒーレンス光源123から照射した光の反射光を、受光素子(1次元光センサアレイ128)で受光することにより被検眼20の注目断層画像T1~Tnを撮影し取得する。ここで、血管がある場所は、当該血管より深部の位置における光の反射光強度が弱くなりやすく、Z方向に積算した値は、血管がない場所に比べて小さくなる。そのため、積算画像Pを作成することで、血管とそれ以外の部位でコントラストのある画像を得ることができる。 【0152】 <ステップS1603> ここで、再び、図16の説明に戻る。 ステップS1602の処理が終了すると、ステップS1603に進む。 ステップS1603に進むと、断層画像解析部130は、ステップS1602で作成された積算画像から特徴量である血管を含む領域を抽出する処理を行う。ここで、血管の抽出方法としては、例えば、非特許文献2や非特許文献3に示すような画像処理方法を用いて行うことができる。なお、血管の抽出方法としては、この2手法に限定する必要はなく、複数の手法を組み合わせてもよい。 【0153】 <ステップS1604> 続いて、ステップS1604において、断層画像撮影パラメータ設定部140は、ステップS1603の特徴量である血管を含む領域の抽出結果に基づいて、参照断層画像の撮影パラメータを設定する。ここでは、図7のステップS633と同様に、参照断層画像候補の中から、1番多くの血管像を含む断層画像を用いて参照断層画像の撮影パラメータを設定する。 【0154】 このステップS1604が終了すると、図16のフローチャートの処理(即ち、図6のステップS630の処理)が終了する。 【0155】 以上説明したように、第3の実施形態によれば、注目断層画像として撮影されている血管の影を特徴量として利用することが可能になり、血管を多く撮影する参照断層画像の撮像パラメータを設定をすることで、コントラストの高い参照断層画像が撮影できる。そして、この参照断層画像を用いて注目断層画像の位置ずれを補正するようにしているため、被写体の断層画像における位置ずれ補正を高精度で行うことができる。」 イ 引用文献1に記載された事項から当業者が把握できる事項 【0147】及び図17(a)から、当業者は、次の認定事項を把握することができる(以下「認定事項1」という。)。 <認定事項1> 「注目断層画像はXZ画像であり、積算画像はXY画像であること。」 ウ 引用発明の認定 前記アに摘記した引用文献1の記載事項及び前記イにおいて認定した認定事項1を総合すると、引用文献1には、第3の実施形態に係る撮影装置100に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。 <引用発明> 「撮影装置100-3であって、(【0141】) 撮影装置100-3は、積算画像生成部1510を有して構成され、(【0141】) 積算画像作成部1510は、断層画像取得部120によって撮影された注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれについてZ方向(第1の方向)に積算した積算画像を作成する処理を行い、(【0147】) 深度方向は、Z方向であり、深度方向に積算するとは、Z方向の各深度位置における輝度値を足し合わせる処理であり、(【0148】) 積算画像Pは、深度方向に全画素の輝度値を加算する必要はなく、任意の範囲のみ加算するようにしてもよく、例えば、事前に被検眼20の網膜層全体を検出しておいて当該網膜層内のみを加算してもよく、また、当該網膜層内の任意の層のみを加算してもよく、(【0149】) 注目断層画像はXZ画像であり、積算画像はXY画像である、(認定事項1) 撮影装置100-3」 (2) 引用文献2の記載事項及び技術常識Aの認定 ア 引用文献2に記載された事項 当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2016-131754号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、図面を関連する記載のある箇所の次に適宜挿入して示した。下線は当合議体による。 「【技術分野】 【0001】 この発明は、検出されたX線に基づいて透視画像を取得するX線装置に係り、特に、血管構造などを確認しながら手技を行う技術に関する。 【背景技術】 【0002】 医用X線装置では、リアルタイムの透視画像の他に、血管輪郭像を含むマスク像を透視前に予め取得し、マスク像を透視画像に重ね合わせる重畳処理(加算処理)、もしくは減算処理することで、血管構造などを確認しながら手技を行うことができる機能(マップモードまたはマップ機能)が搭載されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1:国際公開第2008/013255号では、造影剤投与前のX線画像における画素値から、造影剤投与後のX線画像における画素値を減算することによって、得られた造影サブトラクション画像をマスク像としている。 【0003】 そして、リアルタイムの透視画像(例えば背景的箇所が除かれた非造影透視画像)とマスク像(造影サブトラクション画像)とを重ね合わせる重畳処理を行う。CO2以外の造影剤を用いた場合には、造影剤投与によって血管が黒っぽく写って血管の画素値が低くなるので、マスク像において画素値の反転(白黒反転)を行って重畳処理、もしくは減算処理を行う。なお、造影サブトラクション画像はDSA(DSA: Digital Subtraction Angiography)画像とも呼ばれている。 …(中略)… 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、特許文献1:国際公開第2008/013255号の場合には、マップを使用して血管形状を確認しながら手技を行う際に、現状のマップは、関心領域(ROI: Region Of Interest)外の余分な血管やノイズがマスク像には含まれている。よって、これらの余分な血管やノイズを含む多くの不必要な情報から必要な情報をユーザは抽出しなければならないので、手技の妨げとなる。また、マスク像は血管輪郭像であるので、関心領域(ROI)外の余分な血管やノイズを含む不必要な線がとても多くなり、ユーザの認識ミスや操作ミスの恐れも考えられる。 …(中略)… 【発明の効果】 【0019】 この発明に係るX線装置によれば、血管輪郭像を含むマスク像を表示する際に、透視画像の一部領域のみにマスク像を重畳して表示画像を生成して表示するので、マスク像における不必要な表示を軽減することができ、ユーザが画像を確認する時の余分な情報を軽減することができる。」 「【0022】 本実施例に係るX線装置は、図1に示すように、被検体Mを載置する天板1と、その被検体Mの透視、あるいは透視よりも事前の撮影を行う映像系2とを備えるとともに、図2に示すように、画像処理系3を備えている。天板1は、図1に示すように、昇降および水平移動可能に構成されている。 【図1】 [図:0001434765000014.jpg] 【図2】 [図:0001434765000015.jpg] 【0035】 図2の説明に戻って画像処理系3の各構成について説明する。 画像検出部31は、FPD25で取得されたX線画像の画素値情報に基づいて、造影剤投与前の被検体M(図1を参照)のX線画像(元画像),造影剤投与後の被検体MのX線画像(最終的にはピークホールド像)または透視によりその後に取得された複数のX線画像(透視画像)のいずれかとして画像を検出する。具体的には、CO2以外の造影剤を用いた場合には、造影剤投与によって血管が黒っぽく写って血管の画素値が低くなる。よって、最初に取得される造影剤投与前の元画像は画素値が全体的に高く、次に取得される造影剤投与後のピークホールド像は画素値が全体的に低く、造影剤が流れ切った後において透視によりその後に取得された各々のX線画像(透視画像)は画素値が全体的に高くなる。このようにして画像検出部31で検出された画像のうち、透視によりその後に取得された複数のX線画像(透視画像)についてはモニタ43にリアルタイムに表示するために、画像メモリ部32に記憶せずに、重畳処理部39を介してモニタ43に送り込む。一方、画像検出部31で検出された画像のうち、透視よりも事前の撮影で取得された造影剤投与前のX線画像(元画像)や造影剤投与後のX線画像については画像メモリ部32に送り込む。 【0036】 上述した元画像や造影剤投与後のX線画像を画像メモリ部32に書き込んで記憶する。図4に示すように、元画像P1にはガイドワイヤGやガイドワイヤGに取り付けられたステントSやステントSに付属するマーカMが写り込むとともに、血管外においてクリップやペースメーカー等の人工構造物Cも写り込む。組織(図示省略)や人工構造物Cを除外するために、画像メモリ部32に記憶された元画像P1を読み出して減算器34に送り込む。 【図4】 [図:0001434765000016.jpg] 【0037】 一方、画像メモリ部32に記憶された造影剤投与後のX線画像を読み出してピークホールド33に送り込む。ピークホールド33は、造影剤投与後のX線画像における画素値の最大値あるいは最小値をホールドして、図4に示すようなピークホールド像P2を取得する。具体的には、CO2以外の造影剤を用いた場合には、造影剤投与によって血管が黒っぽく写って血管の画素値が低くなるので、造影剤投与後のX線画像において画素値の最小値をホールドして、画素値が閾値以下のピクセル(画素)を血管とすることによりピークホールド像P2を取得する。図4に示すように、ピークホールド像P2には造影剤によって血管Bが影となって写り込む。このようにして取得されたピークホールド像P2を減算器34に送り込む。 【0038】 減算器34は、ピークホールド像P2と元画像P1との差分を求めることにより、図4に示すような血管像P3を取得する。具体的には、ピークホールド像P2および元画像P1において同一画素毎に差分を求めることにより、組織(図示省略)や人工構造物Cを除外して、図4に示すように血管Bのみが写り込んだ画像を、血管輪郭像を含むマスク像P3として取得する。このようにして取得されたマスク像P3をマスク像メモリ部35に送り込む。 【0039】 マスク像P3をマスク像メモリ部35に書き込んで記憶する。局所的な関心領域を設定するために、マスク像メモリ部35に記憶されたマスク像P3を読み出して電子シャッタ36に送り込む。 【0040】 電子シャッタ36は、図4に示すようにマスク像P3の関心領域ROIを設定する。具体的には、関心領域以外の領域に対応する画素の画素値を所定の画素値(図4では“0”の画素値)に設定する。もちろん、それ以外にも、ユーザが図4中の点線に示す関心領域ROIを手動で設定してもよい。このように電子シャッタ36で設定された関心領域ROIをマスク像生成部37に送り込む。 【0041】 マスク像生成部37は、電子シャッタ36で設定された関心領域ROIに限定したマスク像を生成する。図4に示すように関心領域ROIに限定したマスク像をP4とする。マスク像生成部37で生成されたマスク像P4を反転部38に送り込む。 【0042】 反転部38は、マスク像生成部37で生成されたマスク像P4における画素値の反転を行う。具体的には、関心領域ROIに限定したマスク像P4において画素値の反転(白黒反転)を行うことで、反転後のマスク像を取得する。図4に示すように反転後のマスク像をP5とする。反転部38での反転後のマスク像P5を透視時に重畳処理部39に送り込む。 【0043】 重畳処理部39は、透視によりその後に取得された複数の透視画像における画素値と、マスク像生成部37で生成され、かつ反転部38での反転後のマスク像P5における画素値とを加算することで、透視画像とマスク像P5とを重ね合わせる重畳処理を行う。重畳処理部39での重畳処理後の各々のX線画像を表示画像としてモニタ43に送り込む。」 イ 技術常識Aの認定 前記(ア)に摘記した引用文献2の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識A」という。)。 <技術常識A> 「画像データのうち、ROI(関心領域又は注目領域)の画像データを抽出し、当該データを後の画像処理で利用できるようにするために、ROI以外の画素値を“0”とすること。」 2 対比 (1) 対比分析 本願発明と引用発明を対比する。 ア 構成Xの観点 構成Xは、「装置」の発明であることを特定するものである。 (ア) 引用発明における「撮影装置100-3」は、本願発明における「装置」に相当する。 (イ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。 「装置」の発明である点。 イ 構成Aの観点 構成Aは、「互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を設定した場合に、複数のXZ画像データをY軸方向に有する試料の3次元情報に基づいて前記試料のXY画像データを生成する画像生成部」を備えることである。 (ア) 引用発明における「積算画像生成部1510」は、本願発明における「画像生成部」に相当する。 (イ) 以下に示すように、網膜等の人体の一部を試料と呼ぶことは慣用されていることに鑑みれば、引用発明における「網膜層」は、本願発明における「試料」に相当するといえる。 a 特開2017-140316号公報 「【0002】 多波長光波干渉を利用した光干渉断層法(Optical Coherence Tomography:OCT)を用いる装置(以下、OCT装置という。)は、試料、特に眼底の断層画像を高分解能に得ることができる。」 b 特表2016-533796号公報 「【0036】 本願にて記載した実施例の多くは試料を眼としており、特に眼の網膜、角膜、前眼部および水晶体としているが、本発明の実施形態はこれらの試料に限定されることはなく、本願にて記載した実施形態と共に用いることができるものであれば、如何なる種類の試料も 、本発明の範囲を逸脱することなく使用することができる。」 c 特開2012-222164号公報 「【0031】 そして、カップラ21の出力は、例えば、波長可変レーザ1の出力としてSS-OCT (swept source OCT)の波長可変レーザとして用いられる(図5参照)。この場合、レーザ1から出射された光は、試料光と参照光とに分割され、試料光が試料(例えば、眼)に導光される。そして、試料光は、光スキャナによって試料上で走査される。そして、試料によって反射された試料光と参照光とが合成され、合成された光の干渉状態が受光素子によって検出される。そして、検出された干渉状態が解析され、試料の断層情報が得られる。」 d 株式会社システムズエンジニアリングのウェブページ(URL: https://www.systems-eng.co.jp/column/column01.html) 「OCTとは、Optical Coherence Tomography(光干渉断層撮影)の略語で、光の干渉性を利用して試料内部の構造を高分解能・高速で撮影する技術です。近赤外線を照射して非接触・非侵襲で撮像できますので、被爆の心配もなく、人体の様々な器官の断層撮像に用いられています。」 e 佐藤学 他、光コヒーレンストモグラフィーの基礎、光学、2003年、32巻、45号、268-274頁 「近年、低コヒーレンス光を利用して生体などの多重散乱物体の三次元断層画像を測定する試みが眼科の分野で実用化され、幅広い臨床応用が検討されている。これは、スペクトル幅の広い低コヒーレンス光を生体試料に照射して、その内部で発生する後方散乱光を高感度で検出することにより生体の断層画像を測定する方法で、光コヒーレンスモグラフィー(optical coherence tomography: OCT)とよばれている)。OCTは低コヒーレンス干渉計を基礎としており、当初この低コヒーレンス干渉計は光導波路などの評価に応用されて感度などが検討され、また医学分野では眼軸長や角膜厚の測定に応用された。」(268頁左欄1~11行) (ウ) 引用発明における「注目断層画像のn個のB-スキャン画像」は、「注目断層画像はXZ画像であ[る]」ことを踏まえると、本願発明における「XZ画像データ」に相当する。そして、引用発明における「B-スキャン画像のそれぞれ」は、Y方向に複数存在することが理解され、これらは、前記(イ)も踏まえれば、本願発明でいう「複数のXZ画像データをY軸方向に有する試料の3次元情報」ということができる。 (エ) 引用発明における「積算画像作成部1510」は、「断層画像取得部120によって撮影された注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれについてZ方向(第1の方向)に積算した積算画像を作成する処理を行[う]」ものであるところ、「積算画像はXY画像である」ことを踏まえれば、本願発明でいう「前記試料のXY画像データを生成する」ものであるといえるとともに、前記(ウ)も踏まえれば、「試料の3次元情報に基づいて」前記試料のXY画像データを生成するものであるといえる。 (オ) 引用発明においては、「注目断層画像はXZ画像であり、積算画像はXY画像である」ところ、X、Y、Zが互いに直交することは技術常識から見て明らかであるから、引用発明は、本願発明でいう「互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を設定した場合」に該当するものである。 (カ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Aの点である次の点において一致する。 「互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を設定した場合に、複数のXZ画像データをY軸方向に有する試料の3次元情報に基づいて前記試料のXY画像データを生成する画像生成部」を備える点。 ウ 構成Bの観点 構成Bは、「前記画像生成部は、前記XZ画像データ中の前記試料が存在していると判断された領域を前記XZ画像データにおける解析領域として抽出する」ことである。 (ア) 引用発明は、「積算画像Pは、深度方向に全画素の輝度値を加算する必要はなく、任意の範囲のみ加算するようにしてもよく、例えば、事前に被検眼20の網膜層全体を検出しておいて当該網膜層内のみを加算してもよ[い]」ものであるところ、網膜層内のみを加算して積算画像Pを作成するためには、網膜層内の領域を特定し、抽出する必要があることは明らかであり、当該網膜層内の領域は、本願発明における「前記試料が存在していると判断された領域」である「解析領域」に相当する。 (イ) 引用発明において、前記(ア)の網膜層内の領域の抽出は、積算画像Pを作成するに先立ち行う必要があることが理解でき、したがって、当該抽出は、「注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれ」において行われるものと理解されるから、前記イの検討も考慮すれば、引用発明の「積算画像生成部1510」は、本願発明でいう「前記XZ画像データ中の前記試料が存在していると判断された領域を前記XZ画像データにおける解析領域として抽出する」ものであるといえる。 (ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Bの点である次の点において一致する。 「前記画像生成部は、前記XZ画像データ中の前記試料が存在していると判断された領域を前記XZ画像データにおける解析領域として抽出する」点。 エ 構成Cの観点 構成Cは、「前記画像生成部は、」「前記解析領域以外の領域の輝度値を低減した後、前記解析領域以外の領域の輝度値が低減された前記XZ画像データの輝度値をZ軸方向に積算してX画像データを生成[する]」ことである。 (ア) 引用発明における「積算画像作成部1510」は、「断層画像取得部120によって撮影された注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれについてZ方向(第1の方向)に積算した積算画像を作成する処理を行[う]」ものであるであるところ、「n個のB-スキャン画像のそれぞれについてZ方向(第1の方向)に積算した積算画像」は、「n個のB-スキャン画像のそれぞれ」に対応する部分積算画像が集合したものであることが理解でき、当該部分積算画像は、本願発明における「X画像データ」に相当する。したがって、引用発明における「積算画像作成部1510」は、本願発明における「前記XZ画像データの輝度値をZ軸方向に積算してX画像データを生成[する]」ものであるといえる。 (イ) そうすると、構成Cの観点における本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のa及びbに示すとおりである。 a 構成Cの観点における一致点 「前記画像生成部は、」「前記XZ画像データの輝度値をZ軸方向に積算してX画像データを生成[する]」点。 b 構成Cの観点における相違点 X画像データを生成することについて、 本願発明は、「前記解析領域以外の領域の輝度値を低減した後、前記解析領域以外の領域の輝度値が低減された」XZ画像データの輝度値を積算するのに対して、 引用発明は、「積算画像Pは、深度方向に全画素の輝度値を加算する必要はなく、任意の範囲のみ加算するようにしてもよく、例えば、事前に被検眼20の網膜層全体を検出しておいて当該網膜層内のみを加算してもよ[い]」ものであるが、注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれの網膜層内以外の領域の輝度値を低減するものではない点。 オ 構成Dの観点 構成Dは、「前記画像生成部は、」「前記X画像データを前記Y軸方向に結合して前記XY画像データを生成する」ことである。 (ア) 引用発明における「積算画像作成部1510」は、「断層画像取得部120によって撮影された注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれについてZ方向(第1の方向)に積算した積算画像を作成する処理を行[う]」ものであるところ、当該積算画像は、前記エ(ア)で説示した部分積算画像を結合して得られるものといえるから、引用発明における「積算画像作成部1510」は、本願発明でいう「前記X画像データを前記Y軸方向に結合して前記XY画像データを生成する」ものであるといえる。 (イ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Dの点である次の点において一致する。 「前記画像生成部は、」「前記X画像データを前記Y軸方向に結合して前記XY画像データを生成する」点。 (2) 一致点及び相違点の認定 前記(1)の対比分析を踏まえると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。 ア 一致点 「互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を設定した場合に、 複数のXZ画像データをY軸方向に有する試料の3次元情報に基づいて前記試料のXY画像データを生成する画像生成部を備え、 前記画像生成部は、前記XZ画像データ中の前記試料が存在していると判断された領域を前記XZ画像データにおける解析領域として抽出する一方で、前記XZ画像データの輝度値をZ軸方向に積算してX画像データを生成し、前記X画像データを前記Y軸方向に結合して前記XY画像データを生成する装置」の発明である点。 イ 相違点 X画像データを生成することについて、 本願発明は、「前記解析領域以外の領域の輝度値を低減した後、前記解析領域以外の領域の輝度値が低減された」XZ画像データの輝度値を積算するのに対して、 引用発明は、「積算画像Pは、深度方向に全画素の輝度値を加算する必要はなく、任意の範囲のみ加算するようにしてもよく、例えば、事前に被検眼20の網膜層全体を検出しておいて当該網膜層内のみを加算してもよ[い]」ものであるが、注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれの網膜層内以外の領域の輝度値を低減するものではない点。 3 判断 (1) 相違点についての検討 前記相違点について検討する。 引用発明は、「深度方向に全画素の輝度値を加算する必要はなく、任意の範囲のみ加算するようにしてもよく、例えば、事前に被検眼20の網膜層全体を検出しておいて当該網膜層内のみを加算してもよ[い]」ものであるところ、前記1(2)イにおいて技術常識Aとして認定したように、「画像データのうち、ROI(関心領域又は注目領域)の画像データを抽出し、当該データを後の画像処理で利用できるようにするために、ROI以外の画素値を“0”とすること」は、常套手段である。 そして、引用発明において技術常識Aを採用して注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれについて網膜層内以外の輝度値を0にした後、注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれについて輝度値を加算して得られる積算画像Pが、引用発明のように注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれについて網膜層内のみを輝度値を加算して得られる積算画像Pと、同じ画像となることは、当業者がただちに理解できる事項である。 したがって、引用発明において、注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれについて網膜層内のみの輝度値を加算することに代えて、注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれについて網膜層内以外の輝度値を0にした後、注目断層画像のn個のB-スキャン画像のそれぞれについて輝度値を加算するようにして、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者には自明の設計事項にすぎない。 なお、本願発明が奏する効果としては、本願発明の構成が奏するものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 請求人の主張について 請求人は、一般に、「試料」は、「検査・分析・試験などの目的で採取された材料やサンプル」を指し、これに対し、引用発明の「撮影装置100-3」の被写体である「生体の一部である眼部」は、「採取された」ものではないから、「試料」には該当しない旨を主張している。 しかしながら、例えば広辞苑第四版において「しりょう【試料】 試験・検査・分析などに供する物質や生物。」と記載されているように、「試料」という用語は、「採取された」もののみを意味する用語ではない。そして、網膜等の人体の一部を試料と呼ぶことは慣用されていることは、前記2(1)イ(イ)で説示したとおりである。 なお、本願の明細書の「観察対象となる試料Sとしては、例えばヒト或いは動物の細胞、組織、臓器、動物或いは植物自体、植物の細胞、組織などが挙げられる。」(【0030】)との記載があるが、この部分の記載は「試料」という用語を定義する記載ではなく、「試料S」に包摂されるものを例示するものにすぎない。 以上のとおりであるから、本願発明における「試料」を「採取された」ものに限定すべきとの請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づくものではなく、採用できない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-014347

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