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特許拒絶査定不服審判

2024-012910

スリットランプ顕微鏡、眼科情報処理装置、眼科システム、スリットランプ顕微鏡の制御方法、プログラム、及び記録媒体

審判番号
2024-012910
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-164262
請求日
2024年08月08日
審決日
2025年08月18日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社トプコン
  • 【請求人代理人】榎並 智和
審判長/審判官
  • 審判長 南 宏輔
  • 審判官 北島 拓馬
  • 審判官 ▲高▼見 重雄
分類
P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-164262「スリットランプ顕微鏡、眼科情報処理装置、眼科システム、スリットランプ顕微鏡の制御方法、プログラム、及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和3年3月18日出願公開、特開2021-40855〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件出願(以下「本願」という。)は、2019年(令和元年)9月10日の出願であって、令和5年9月7日付けの拒絶理由の通知に対し、令和5年10月10日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年12月12日付けの拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知に対し、令和6年2月22日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年5月14日付けで補正の却下の決定とともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して同年8月8日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和6年8月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年8月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである(下線部は、補正箇所である。)。 「 【請求項1】 被検眼の前眼部をスリット光でスキャンして複数の断面画像を収集するスキャン部と、 前記スキャン部により収集された前記複数の断面画像に3次元再構成を適用して、水晶体内の混濁部が描出されている3次元再構成画像を構築する再構成部と、 前記被検眼の奥行き方向に直交する平面に対するプロジェクションを前記3次元再構成画像の少なくとも一部に適用して、前記混濁部が描出されているプロジェクション画像を構築するレンダリング部と、 前記プロジェクション画像と、前記奥行き方向における前記混濁部の位置を示す深さ情報とを表示する表示部と を含み、 前記スキャン部は、 被検者にとって左右の方向を幅方向とする前記スリット光を前記前眼部に照射する照明系と、 前記照明系とは異なる方向から前記前眼部を動画撮影する撮影系と、 前記照明系及び前記撮影系を前記左右の方向に移動する移動機構と を含む、 スリットランプ顕微鏡。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和5年10月10日に手続補正がなされた特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。 「 【請求項1】 被検眼の前眼部をスリット光でスキャンして複数の断面画像を収集するスキャン部と、 前記スキャン部により収集された前記複数の断面画像に3次元再構成を適用して、水晶体内の混濁部が描出されている3次元再構成画像を構築する再構成部と、 前記被検眼の奥行き方向に直交する平面に対するプロジェクションを前記3次元再構成画像の少なくとも一部に適用して、前記混濁部が描出されているプロジェクション画像を構築するレンダリング部と、 前記プロジェクション画像と、前記奥行き方向における前記混濁部の位置を示す深さ情報とを表示する表示部と を含む、スリットランプ顕微鏡。」 2 補正の適否 上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「スキャン部」が、「被検者にとって左右の方向を幅方向とする前記スリット光を前記前眼部に照射する照明系と、前記照明系とは異なる方向から前記前眼部を動画撮影する撮影系と、前記照明系及び前記撮影系を前記左右の方向に移動する移動機構とを含む、」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献等 ア 引用文献3 (ア)引用文献3の記載 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開2003-111728号公報」(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに次の記載がある(下線は、当審において付与した。以下、同様)。 (引3ア) 「【請求項1】 被検眼前眼部にスリット光を投影するスリット投影光学系と、スリット投影光軸に対して傾斜した撮影光軸を持つ撮影光学系であって、シャインプルークの原理に基づいて配置された撮影レンズと撮像素子を持つ撮影光学系と、前記スリット光と撮影光学系とをスリット投影光軸を中心にその軸回りに回転する回転手段と、複数の回転角度にて撮影された各前眼部断面画像とその撮影時の回転角度情報とに基づいて所定の前眼部組織の3次元位置を求め、その組織の形状を測定する形状測定手段と、を備えること特徴とする前眼部測定装置。 【請求項2】 請求項1の前眼部測定装置は、前記回転手段によりスリット光と撮影光学系とを連続的に回転し所定の角度毎に撮影した画像を記憶手段に記憶させる制御手段を備えることを特徴とする前眼部測定装置。」 (引3イ) 「【0005】・・・。 【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る前眼部撮影装置の光学系を示す図である。 【0006】<スリット投影光学系> 1は反射鏡、2は撮影用光源としてのハロゲンランプ、3はコンデンサレンズ、4はスリット開口絞り、5は投光レンズ、6はスリット投影光学系の光軸L1上に斜設されたダイクロイックミラーである。ダイクロイックミラー6は可視光の大部分を透過し、赤外光を反射する特性を持つ。 【0007】ハロゲンランプ2を発した光束はコンデンサレンズ3によって集光してスリット開口絞り4を照明する。スリット開口絞り4により細いスリット状に制限された光束は、投光レンズ5、ダイクロイックミラー6を透過し、被検眼に投影される。これにより、被検眼前眼部の透光体(角膜、前房、水晶体等)は、可視域の白色光源で光切断された形で照明される。 【0008】<スリット断面撮影光学系> L2はスリット断面撮影光学系の撮影光軸を示す。7は偏角プリズム、8は撮影レンズ、9は像の歪みを補正するためのアナモフィックレンズ、10は高感度CCDカメラである。スリット断面撮影光学系の光軸L2は、スリット投影光学系の光軸L1に対して45度の傾き角度を持って配置されている。撮影レンズ8はシャインプルークの原理を満たすように、偏角プリズム7により方向が変えられる撮影光軸に対して傾いて配置されている。すなわち、偏角プリズム7を取り除いたときには、スリット投影光による被検眼前眼部の光切断の延長とCCDカメラ10の撮像面10aの延長との交線が、撮影レンズ8の主平面の延長線上で交わる関係に配置されている。この光学配置により、CCDカメラ10の撮像面10a上に形成される断面像は、その断面像の略全体で合焦する焦点深度を持つようにすることができる。」 (引3ウ) 「【0012】図2は光学系の回転機構を説明する図である。30はパルスモータである。スリット投影光学系の反射鏡1~投光レンズ5までの部材は保持ユニット31に保持されている。保持ユニット31は光軸L1を中心に回転可能に装置本体の筐体内部で保持されおり、ギヤ等の回転伝達部材を介してモータ30により回転される。また、偏角プリズム7~CCDカメラ10のスリット断面撮影光学系は保持ユニット32に保持されている。この保持ユニット32は固定部材33によって保持ユニット31に固定されている。これらの構成により、被検眼に投影されるスリット光とスリット断面撮影光学系とが、光軸L1を中心にその軸回りに回転する。また、図2において、35は保持ユニット31(又は保持ユニット3)の初期回転位置を検出するセンサである。」 (引3エ) 「【0013】図3は、本装置の制御系の構成図を示す。100は上述の光学系及び回転機構が配置される前眼部撮影ユニットである。制御部60には、CCDカメラ10,22、撮影光源2等の各光源、モータ30、センサ35、撮影スイッチ61、各種のスイッチを持つ操作パネル62、撮影された断面画像を記憶するメモリ63、観察画像及び撮影画像を表示するディスプレイ65、画像データを外部に出力する出力部66、が接続されており、制御部60はこれらの要素を制御する。 【0014】200は画像解析ユニットであり、前眼部断面撮影部100からの断面画像データに画像処理を施して解析するコンピュータ部201を備える。コンピュータ部201は、画像データを記憶保持するメモリや画像解析のための解析プログラムを有する。また、コンピュータ部201にはキーボード202、マウス203、カラーディスプレイ204、プリンタ205が接続されており、コンピュータ部201はこれらを制御する。」 (引3オ) 「【0015】以上のような構成の装置の動作を説明する。・・・。 【0016】アライメントが終了したら、検者は撮影スイッチ61を操作し撮影を開始する。制御部60は撮影スイッチ61の信号により、撮影光源2を点灯すると共に、モータ30を駆動してスリット投影光学系と断面撮影光学系を光軸L1の軸回りに回転する。撮影光源2の点灯により、被検眼前眼部はスリット光により光切断される。スリット光で光切断された前眼部からの散乱光は断面撮影光学系に向かい、CCDカメラ10により断面画像が撮影される。このとき、制御部60はパルスモータ30のパルス数と同期させ、所定の回転角度毎にCCDカメラ10から出力される撮影画像をメモリ63に記憶させる。また、撮影角度の情報も撮影画像と対応付けて記憶させる。なお、回転撮影中は、撮影光源2の撮影光量が一定に制御されている。 【0017】半周の回転で全周分の撮影像が得られるので、撮影画像の枚数は18枚(10度毎の回転)以上が好ましい。さらに好ましくは、36枚以上(回転角5度毎)である。本実施形態ではできるだけ精度の良い立体解析が行えるように、スリット光の幅80μmとした場合、回転角2.25度毎に撮影した80枚の撮影画像を自動的にメモリ63に記憶させる。回転角度は固定であっても良いが、任意に設定できる構成が好ましい。 ・・・ 【0019】撮影が終了したら、操作パネル62の画像転送スイッチを押し、メモリ63に記憶した全ての撮影画像とその回転角度情報をコンピュータ部201に出力する。コンピュータ部201側では、画像解析の解析プログラムにより撮影画像を立体構築する。」 (引3カ) 「【0020】撮影画像の立体構築について説明する。本装置の光学系では、図1に示したように、撮影光軸に対して物体平面が45度傾いており、撮影レンズ平面を撮影光軸に対して所定角度分だけ傾けることによりシャインプルーク原理を満たしている。ただし、この配置は像面上で縦横比が歪んだ像となる。このシャインプルークの原理による歪みについては、アナモフィックレンズ9を配置することで補正がされる。図4は撮影された断面画像を示す。なお、シャインプルークの原理による歪みの補正は画像処理によっても行うことができる。 【0021】また、ここで得られる前眼部断面像の散乱光は、撮影光学系を通るだけでなく、一部は眼球内部(前眼部透光体)を通過しており、眼球内部での屈折による歪みを受けるため、屈折後の見かけの像である。眼球内の各部位の位置情報を得る上では、この途中の前眼部透光体の影響をも補正することが好ましい。これは光線追跡を使用して補正する。 【0022】光線追跡はFederの一般光線追跡の公式を用いて行うことができる。光線追跡においては、断面画像における各部位の見かけの位置データ、各組織の屈折率(一般的な既知の値を使用する)を与えてやる。そして、Federの公式では、光線の通過する座標と光線の向きを方向余弦で表すことにより光線追跡を行う。 【0023】コンピュータ部201は、各撮影画像の各部位(角膜前面、角膜後面、水晶体前面、水晶体後面等の位置)について光線追跡を行うことにより、見かけの位置を補正した位置情報を得る。そして、これらの平面の位置情報と撮影角度情報を合せ、撮影画像全てから3次元位置情報を算出する。画像情報が得られていない部分については、周辺の画像から補間する。これにより、前眼部の各組織の立体形状を構築する。また、各組織内の輝度値に対応した3次元位置情報を求める。 【0024】ディスプレイ204には、図5のように、構築された前眼部立体像300がグラフィック表示される。この前眼部立体像300はマウス203の操作により、回転させたり、見る方向(網膜方向、正面方向、斜め方向等)を変えた表示ができる。」 (引3キ) 「【0025】画像輝度の解析について説明する。ここでは、水晶体の混濁を解析する場合を例にとって説明する。撮影された断面画像は、スリット光により光切断された前眼部組織からの散乱によるものであり、混濁の度合いが進むほど画像輝度が高くなる。したがって、混濁の濃度(density値)は画像輝度で定量化することができ、例えば、0から255の256段階で表す(単位:cct)。混濁解析モードに設定すると、density値の度数分布が棒グラフでディスプレイ204に表示される。検者が任意のdensity値を指定すると、そのdensity値より高い部位(混濁度が進んだ部位)の位置座標が抽出され、ディスプレイ204に立体表示される。図6は正面方向から見たときの表示例であり、斜線部分310が抽出された混濁部位を示す。この混濁部位310の表示も、マウス203やキーボード202の操作により、回転させたり、見る方向を任意に指定することができる。このため、混濁部位の程度とその位置情報が視覚的に把握しやすい。なお、正面方向または網膜方向から見たときは、混濁部位及び程度が徹照像の形式よりもより正確に観察できる。抽出された混濁部位310については、容積が計測されてその結果が表示される。 【0026】また、混濁解析は任意の断面についても行える。図5の表示において、検者はマウス203等を用いて3点P,Q,Rを指定し前眼部立体像300上に解析したい断面を決定する。または、解析したい断面上に含まれる直線として2点P,Q指定した上で、その直線を軸とし回転表示させて解析したい断面の確認をし、最後に1点Rを指定することにより解析したい断面を決定することもできる。これは、図6の表示状態においても可能である。ディスプレイ204には、図7のように、立体像300を輪切りにした断面を含む立体図320が表示される。この立体表示の断面においては、density値に対応させた色分布のカラーマップで表示される。図7において、302がカラーマッピングされた混濁部位を示す。カラーマップは、例えば、density値を4段階に分け、段階毎に4色に色分けされる。また、マウス203を用いて図7の混濁部位ポイントを選択すると、その指定したポイントにおけるdensity値が表示されるようになる。このように、断面を含む立体像の形式で表示すると、混濁部位の位置関係が把握しやすくなりる。 【0027】なお、指定された断面のみを2次元的に表示しても良い。この場合、光軸を通る断面については、撮影した生画像の断面像を表示させ、その生画像上にカラーマッピングを施した図形を合成表示することもできる。もちろん、図4に示したような、撮影画像のみを撮影角の指定により選択的に表示することもできる。 【0028】また、任意に指定した断面において、density値をグレード化すると共に、指定断面(さらには指定部分を拡大した断面)を桝目状にエリアを分割し、各エリアにグレード化した数値を表示する。 【0029】以上は、水晶体混濁を例にとって説明したが、後嚢混濁、その他の前眼部組織のについても同様に行うことができる。また、混濁解析において必ずしも精度の良い立体形状の構築は無くても良い場合は、見かけの位置データのまま立体形状を算出することでも良い。」 (引3ク) 「【0030】次に、形状解析について説明する。解析モードを形状解析モードに設定する。この形状解析では、前眼部組織の3次元形状の構築結果から、角膜表面の曲率分布、角膜裏面の曲率分布、角膜厚の分布、水晶体前面の曲率分布、水晶体裏面の曲率分布、水晶体厚の分布、前房深度の分布、等の各組織の形状が個別に測定される。・・・。 ・・・ 【0033】上記のような形状測定においては、その基となる前眼部断面画像は眼の光軸(又は視軸としても良い)を中心に回転して撮影した画像であるので、スリット光を平行移動して断面撮影する場合に比べ、視力と密接な瞳孔領について精度の高い計測結果が得られる。このため眼科診療に有益な情報を提供できる。また、シャインプルークの原理を基にするため、角膜前面から水晶体後面までのクリアな画像が得られ、立体形状構築の精度が向上する。」 (引3ケ)図1 [図:0001427654000001.jpg] (引3コ)図2 [図:0001427654000002.jpg] (引3サ)図3 [図:0001427654000003.jpg] (引3シ)図4 [図:0001427654000004.jpg] (引3ス)図5 [図:0001427654000005.jpg] (引3セ)図6 [図:0001427654000006.jpg] (引3ソ)図7 [図:0001427654000007.jpg] (イ)引用文献3に記載された発明 上記(ア)の記載及び図面を総合すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(各構成単位末尾の括弧内には、主たる認定箇所となる引用文献の記載箇所を示す。以下、同様)。 「反射鏡1、撮影用光源としてのハロゲンランプ2、コンデンサレンズ3、スリット開口絞り4、投光レンズ5、ダイクロイックミラー6を有するスリット投影光学系であって、ハロゲンランプ2を発した光束はコンデンサレンズ3によって集光してスリット開口絞り4を照明し、スリット開口絞り4により細いスリット状に制限された光束は、投光レンズ5、ダイクロイックミラー6を透過し、被検眼に投影され、これにより、被検眼前眼部の透光体(角膜、前房、水晶体等)は、可視域の白色光源で光切断された形で照明される、スリット投影光学系と、(【0006】・【0007】) 偏角プリズム7、撮影レンズ8、アナモフィックレンズ9、高感度CCDカメラ10を有するスリット断面撮影光学系であって、スリット断面撮影光学系の光軸L2は、スリット投影光学系の光軸L1に対して45度の傾き角度を持って配置され、撮影レンズ8はシャインプルークの原理を満たすように、偏角プリズム7により方向が変えられる撮影光軸に対して傾いて配置されている、スリット断面撮影光学系と、(【0008】) パルスモータ30を有する光学系の回転機構であって、スリット投影光学系の反射鏡1~投光レンズ5までの部材は保持ユニット31に保持され、保持ユニット31は光軸L1を中心に回転可能に装置本体の筐体内部で保持されおり、ギヤ等の回転伝達部材を介してモータ30により回転され、また、偏角プリズム7~CCDカメラ10のスリット断面撮影光学系は保持ユニット32に保持され、この保持ユニット32は固定部材33によって保持ユニット31に固定され、これらの構成により、被検眼に投影されるスリット光とスリット断面撮影光学系とが、光軸L1を中心にその軸回りに回転する、光学系の回転機構と、(【0012】) 上述の光学系及び回転機構が配置される前眼部撮影ユニット100であって、CCDカメラ10,22、撮影光源2等の各光源、モータ30、センサ35、撮影スイッチ61、各種のスイッチを持つ操作パネル62、撮影された断面画像を記憶するメモリ63、観察画像及び撮影画像を表示するディスプレイ65、画像データを外部に出力する出力部66、が接続される制御部60を備え、制御部60はこれらの要素を制御する、前眼部撮影ユニット100と、(【0013】) 前眼部断面撮影部100からの断面画像データに画像処理を施して解析するコンピュータ部201を備える画像解析ユニット200であって、コンピュータ部201は、画像データを記憶保持するメモリや画像解析のための解析プログラムを有し、また、コンピュータ部201にはキーボード202、マウス203、カラーディスプレイ204、プリンタ205が接続されており、コンピュータ部201はこれらを制御する、画像解析ユニット200と、(【0014】) を備える前眼部撮影装置であって、(【発明の実施の形態】) 検者は撮影スイッチ61を操作し撮影を開始し、制御部60は撮影スイッチ61の信号により、撮影光源2を点灯すると共に、モータ30を駆動してスリット投影光学系と断面撮影光学系を光軸L1の軸回りに連続的に回転し、撮影光源2の点灯により、被検眼前眼部はスリット光により光切断され、スリット光で光切断された前眼部からの散乱光は断面撮影光学系に向かい、CCDカメラ10により断面画像が撮影され、このとき、制御部60はパルスモータ30のパルス数と同期させ、所定の回転角度毎にCCDカメラ10から出力される撮影画像をメモリ63に記憶させ、また、撮影角度の情報も撮影画像と対応付けて記憶させ、(【0016】・請求項2) 半周の回転で全周分の撮影像が得られるので、できるだけ精度の良い立体解析が行えるように、スリット光の幅80μmとした場合、回転角2.25度毎に撮影した80枚の撮影画像を自動的にメモリ63に記憶させ、(【0017】) 撮影が終了したら、操作パネル62の画像転送スイッチを押し、メモリ63に記憶した全ての撮影画像とその回転角度情報をコンピュータ部201に出力し、コンピュータ部201側では、画像解析の解析プログラムにより撮影画像を立体構築し、(【0019】) ディスプレイ204には、構築された前眼部立体像300がグラフィック表示され(図5参照)、この前眼部立体像300はマウス203の操作により、回転させたり、見る方向(網膜方向、正面方向、斜め方向等)を変えた表示ができ、(【0024】) 水晶体の混濁を解析する場合、混濁の濃度(density値)は画像輝度で定量化することができ、混濁解析モードに設定すると、density値の度数分布が棒グラフでディスプレイ204に表示され、検者が任意のdensity値を指定すると、そのdensity値より高い部位(混濁度が進んだ部位)の位置座標が抽出され、ディスプレイ204に立体表示され、正面方向から見たときの混濁部位310を示す表示例(図6参照)があり、この混濁部位310の表示も、マウス203やキーボード202の操作により、回転させたり、見る方向を任意に指定することができ、このため、混濁部位の程度とその位置情報が視覚的に把握しやすく、正面方向または網膜方向から見たときは、混濁部位及び程度が徹照像の形式よりもより正確に観察でき、(【0025】) また、混濁解析は任意の断面についても行え、図5の表示において、検者はマウス203等を用いて3点P,Q,Rを指定し前眼部立体像300上に解析したい断面を決定し、または、解析したい断面上に含まれる直線として2点P,Q指定した上で、その直線を軸とし回転表示させて解析したい断面の確認をし、最後に1点Rを指定することにより解析したい断面を決定することもでき、これは、図6の表示状態においても可能であり、ディスプレイ204には、立体像300を輪切りにした断面を含む立体図320が表示され(図7参照)、この立体表示の断面においては、カラーマッピングされた混濁部位302を示す、density値に対応させた色分布のカラーマップで表示され、このように、断面を含む立体像の形式で表示すると、混濁部位の位置関係が把握しやすくなる、(【0026】) 前眼部撮影装置。」 イ 引用文献1 拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開2019-24618号公報」(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。 (引1ア) 「【0003】 これら様々な眼科装置のうち最も広く且つ頻繁に使用される装置の一つがスリットランプ顕微鏡である。スリットランプ顕微鏡は、スリット光で被検眼を照明し、照明された断面を側方から顕微鏡で観察したり撮影したりするための眼科装置である。角膜や水晶体など前眼部の診断には、一般的にスリットランプ顕微鏡が用いられる。例えば、医師は、スリット光による照明野やフォーカス位置を移動させつつ診断部位全体を観察して異常の有無や程度を判断する。 ・・・ 【0037】 〈眼科撮影装置の構成〉 眼科撮影装置2000-inの構成について説明する。前述したように、眼科撮影装置2000-inは任意のモダリティであってよいが、本実施形態ではスリットランプ顕微鏡が適用される。 【0038】 ここで、方向を定義しておく。スリットランプ顕微鏡の光学系において最も被検者側に位置するレンズ(対物レンズ)から被検者に向かう方向を前方向(又は、深さ方向、奥行き方向など)とし、その逆方向を後方向とする。また、前方向に直交する水平方向を左右方向とする。更に、前後方向と左右方向の双方に直交する方向を上下方向とする。 ・・・ 【0065】 スリットランプ顕微鏡1は、被検眼Eに対する照明角度及び撮影角度を変更しつつ被検眼Eを複数回撮影して複数の画像を取得することができる。換言すると、スリットランプ顕微鏡1は、照明系8及び観察撮影系6を回動させつつ被検眼Eを複数回撮影することで、被検眼Eの複数の断面画像を取得することができる。 ・・・ 【0067】 照明系8の回動位置や観察撮影系6の回動位置は、例えば、エンコーダーなどを含む回動位置検出部によって検出することができる。或いは、照明系8の回動位置や観察撮影系6の回動位置は、それを制御するコンピュータ100によって認識可能である。また、被検眼Eの正面画像における断面の位置は、例えば、別途に取得された被検眼Eの正面画像と、回動位置検出部による検出の結果とに基づいて求めることができる。詳細は後述するが、このような位置情報と複数の断面画像とに基づいて、被検眼Eの3次元画像を形成することができる。 ・・・ 【0085】 スキャン制御部101Bは、被検眼Eの関心部位に対する水平方向(つまり、回動動作における偏角方向)のスキャン(θスキャン)を制御する。スキャン制御部101Bは、例えば、照明系8の回動と観察撮影系6の回動とを連係させるように移動機構60を制御する。例えば、スキャン制御部101Bは、水平方向のスキャン位置PS1、PS11、PS12の順番に観察撮影系6及び照明系8を移動させる。」 (引1イ) 「【0149】 レンダリング部5120は、画像に対してレンダリングを適用する。例えば、レンダリング部5120は、部分領域指定部5110により指定された3次元画像の部分領域に基づいて、この3次元画像をレンダリングする。 【0150】 レンダリングは任意の処理であってよく、例えば3次元コンピュータグラフィクスを含む。3次元コンピュータグラフィクスは、3次元座標系により定義された3次元空間内の仮想的な立体物(スタックデータ、ボリュームデータなどの3次元画像)を2次元情報に変換することにより立体感のある画像を作成する演算手法である。 【0151】 レンダリングの例として、ボリュームレンダリング法、最大値投影法(MIP)、最小値投影法(MinIP)、サーフェスレンダリング法、多断面再構成法(MPR)、プロジェクション画像形成、シャドウグラム形成などがある。」 ウ 引用文献4 (ア)引用文献4の記載 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開2018-186930号公報」(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに次の記載がある。 (引4ア) 「【0004】 ところで、白内障等の疾患を患う被検眼には、その角膜や水晶体に混濁が生じている場合がある。例えば、このような被検眼に対しては、上記の装置を用いて被検眼の眼底に向けて測定光を入射させても、混濁部によって測定光が反射し、眼底の断層像を上手く撮影できないことがあった。 【0005】 本開示は、上記従来技術に鑑み、被検眼の眼底を効率よく撮影し、良好な断層像を得ることができる眼科撮影装置を提供することを技術課題とする。 ・・・ 【0013】 なお、被検眼の前眼部は、OCT光学系を用いて、その画像データを取得する構成であってもよい。もちろん、被検眼の前眼部は、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)やシャインプルークカメラ等を用いて、その画像データを取得する構成であってもよい。すなわち、被検眼に光束を照射し、被検眼からの反射光を受光する受光素子を有し、受光素子からの受光信号に基づいて、被検眼の正面像を得るものを利用してもよい。 ・・・ 【0038】 例えば、本実施例における眼科撮影装置は、被検眼の前眼部断面画像データとして、前眼部三次元断面画像データを取得してもよい。例えば、この場合には、取得手段が、被検眼の前眼部断面画像データとして、前眼部三次元断面画像データを取得する。このような構成によって、被検眼における混濁部の位置を、XY方向だけでなく、Z方向においても特定することができる。従って、検者は、被検眼の眼底OCT画像データを精度よく取得することができる。 ・・・ 【0109】 <前眼部三次元断面画像データの解析(S5)> 例えば、制御部70は、取得した前眼部三次元断面画像データに基づいて、OCT光学系2における測定光の走査位置を設定する。例えば、本実施例においては、制御部70が前眼部三次元断面画像データを処理することによって、混濁部65(図8参照)の二次元分布を示す解析情報を取得する(S5)。また、例えば、制御部70は、混濁部65の二次元分布を示す解析情報に基づいて、OCT光学系2における測定光の走査位置を設定する(後述するS6参照)。以下、これについてより詳細に説明する。 【0110】 例えば、制御部70は、取得した前眼部三次元断面画像データを深さ方向に積算して、モニタ75に前眼部Ecの正面画像(En face画像)データ62を表示してもよい。図8は前眼部の正面画像データ62を示す図である。例えば、本実施例においては、OCT撮影を利用して被検眼Eの前眼部三次元断面画像データを取得している。OCT撮影は、被検眼Eにおける測定光の反射率に基づいて断層像を撮影するものである。被検眼Eに混濁が生じていた場合には、混濁部65に入射した測定光が反射されるため、断層像上において混濁部65が輝度の高い(明るい)像となって表れる。すなわち、前眼部Ecの正面画像データ62上では、混濁部65が輝度の高い像として、混濁部でない部分(図8における斜線部)が輝度の低い(暗い)像として表れる。 ・・・ 【0117】 なお、解析情報は、モニタ75に表示される構成としてもよい。この場合、例えば、検者は、モニタ75に表示された解析情報を観察し、走査位置を設定するようにしてもよい。 ・・・ 【0136】 また、例えば、本実施例における眼科撮影装置は、被検眼の前記前眼部断面画像データとして、前眼部三次元断面画像データを取得する。このため、被検眼における混濁部の位置を、XY方向だけでなく、Z方向(深さ方向)においても特定できる。従って、検者は、被検眼の眼底OCT画像データを精度よく取得することができる。 【0137】 <変容例> なお、本実施例においては、OCTデバイス1を用いて、被検眼Eの前眼部断面画像データを取得する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、被検眼Eの前眼部断面画像データは、光干渉以外の技術を利用して取得されてもよい。例えば、この場合には、SLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)やシャインプルークカメラ等の撮影装置により、前眼部断面画像データを取得する構成としてもよい。」 (引4イ)図8 [図:0001427654000008.jpg] (イ)引用文献4に記載された技術的事項 上記(ア)の記載及び図面を総合すると、引用文献4には、次の発明(以下「引用文献4技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「白内障等の疾患を患う被検眼には、その角膜や水晶体に混濁が生じている場合があり、このような被検眼に対しては、被検眼の眼底に向けて測定光を入射させても、混濁部によって測定光が反射し、眼底の断層像を上手く撮影できないことがあったことに鑑み、被検眼の眼底を効率よく撮影し、良好な断層像を得るための眼科撮影装置であって、(【0004】・【0005】) シャインプルークカメラ等の撮影装置により、被検眼の前記前眼部断面画像データとして、前眼部三次元断面画像データを取得し、(【0136】・【0137】) 前眼部三次元断面画像データを処理することによって、混濁部65(図8参照)の二次元分布を示す解析情報を取得し、(【0109】) 取得した前眼部三次元断面画像データを深さ方向に積算して、モニタ75に前眼部Ecの正面画像(En face画像)データ62を表示し、(【0110】) 被検眼における混濁部の位置を、解析情報として、XY方向だけでなく、Z方向(深さ方向)においても特定し、(【0136】・【0137】) 解析情報は、モニタ75に表示され、検者は、モニタ75に表示された解析情報を観察し、走査位置を設定する、(【0117】) 眼科撮影装置。」 エ 引用文献5 (ア)引用文献5の記載 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開2005-118076号公報」(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。 (引5ア) 「【実施例】 【0017】 図面を参照して本発明の実施例を説明する。 図1は、低コヒーレンス光源1を用いたオプティカルコヒーレンストモグラフィ装置を利用して角膜100の混濁の状態を分析することができる角膜混濁解析装置の全体構成を示している。 ・・・ 【0041】 次いで、それら各異常部数の積算値が得られた位置を角膜100における位置に復元するために、各積算値が得られた位置を同心円走査時の元の座標系に戻す極座標変換を行う(S9)。それによって、図11に略示されるように、角膜100を正面から見た状態に対応する各位置に異常部数の積算値データが当てはめられる。 【0042】 そこで、各部の異常部数の積算値を、各々値が大きいほど濃くなる濃度表現に変換して、その濃度分布画像をディスプレイ11に表示する(S10)。その濃度表現の変換や濃度分布の表示に際しては、コンボリュージョン演算や周知の補間処理等を行って、隙間の生じない画像を表示する。 【0043】 表示は白黒画像の濃淡により行うのが最も自然であり、例えば図12に示されるように、異常部数の積算値(即ち、角膜100に好ましくないレベルの混濁がある部分の厚み)の大きな部分が濃く表示され、混濁の厚みが薄くなるにしたがって薄く表示される。 【0044】 このようにして、角膜100を正面から見た状態に対応する画面に好ましくないレベルの混濁の厚みを示す濃度分布画像が表示されるので、画面を一目見ただけで、角膜100のどの部分にどの程度の厚みで混濁が発生しているかを把握することができる。 ・・・ 【0048】 図5に示されるS5に戻って、角膜100の表面寄りの部分のデータを積算から除外する指示がキーボード12から入力されている場合には、その指示が、角膜100の表面からどこまでの範囲の除外を指定しているか(例えば、図4及び図8に示される除外深さJ)を入力し(S13)、その範囲(除外深さJ)のデータを除外して、S6と同様に厚み方向に異常部(即ち「1」)の数を積算し(S14)、S7に戻る。 【0049】 このようにすることにより、角膜100の表面部分を任意の厚みだけ切り取った状態における異常部数の濃度分布画像表示が行われるので、その条件での混濁の残存状態を一目で把握することができる。 【0050】 例えば、図13は角膜100の表面部分を8分の1の厚さ(J=D/8)取り除いた場合の濃度分布画像を示し、図14は4分の1の厚さ(J=D/4)取り除いた場合の濃度分布画像を例示している。 【0051】 これによって、角膜100に対して移植手術が必要であるかどうか、及び表面部分の切除で済む場合にはどの程度の厚みを切除すればよいか等を的確かつ容易に把握することができる。」 (引5イ)図11 [図:0001427654000009.jpg] (引5ウ)図12 [図:0001427654000010.jpg] (引5エ)図13 [図:0001427654000011.jpg] (引5オ)図14 [図:0001427654000012.jpg] (イ)引用文献5に記載された技術的事項 上記(ア)の記載及び図面を総合すると、引用文献5には、次の発明(以下「引用文献5技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「角膜100の混濁の状態を分析することができる角膜混濁解析装置であって、(【0017】) 角膜100を正面から見た状態に対応する画面に好ましくないレベルの混濁の厚みを示す濃度分布画像(図12)が表示され、(【0043】・【0044】) 角膜100の表面寄りの部分のデータを積算から除外する指示がキーボード12から入力されている場合には、角膜100の表面部分を任意の厚みだけ切り取った状態における異常部数の濃度分布画像表示(図13、図14)が行われる、(【0048】・【0049】・【0050】) 角膜混濁解析装置。」 オ 引用文献6 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開2019-24738号公報」(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。 (引6ア) 「【0003】 これら様々な眼科装置のうち最も広く且つ頻繁に使用される装置の一つがスリットランプ顕微鏡である。スリットランプ顕微鏡は、スリット光で被検眼を照明し、照明された断面を側方から顕微鏡で観察したり撮影したりするための眼科装置である。角膜や水晶体など前眼部の診断には、一般的にスリットランプ顕微鏡が用いられる。例えば、医師は、スリット光による照明野やフォーカス位置を移動させつつ診断部位全体を観察して異常の有無や程度を判断する。 ・・・ 【0033】 〈眼科撮影装置の構成〉 眼科撮影装置2000-inの構成について説明する。前述したように、眼科撮影装置2000-inは任意のモダリティであってよいが、本実施形態ではスリットランプ顕微鏡が適用される。 【0034】 ここで、方向を定義しておく。スリットランプ顕微鏡の光学系において最も被検者側に位置するレンズ(対物レンズ)から被検者に向かう方向を前方向(又は、深さ方向、奥行き方向など)とし、その逆方向を後方向とする。また、前方向に直交する水平方向を左右方向とする。更に、前後方向と左右方向の双方に直交する方向を上下方向とする。 ・・・ 【0061】 スリットランプ顕微鏡1は、被検眼Eに対する照明角度及び撮影角度を変更しつつ被検眼Eを複数回撮影して複数の画像を取得することができる。換言すると、スリットランプ顕微鏡1は、照明系8及び観察撮影系6を回動させつつ被検眼Eを複数回撮影することで、被検眼Eの複数の断面画像を取得することができる。 ・・・ 【0063】 照明系8の回動位置や観察撮影系6の回動位置は、例えば、エンコーダーなどを含む回動位置検出部によって検出することができる。或いは、照明系8の回動位置や観察撮影系6の回動位置は、それを制御するコンピュータ100によって認識可能である。また、被検眼Eの正面画像における断面の位置は、例えば、別途に取得された被検眼Eの正面画像と、回動位置検出部による検出の結果とに基づいて求めることができる。詳細は後述するが、このような位置情報と複数の断面画像とに基づいて、被検眼Eの3次元画像を形成することができる。 ・・・ 【0081】 スキャン制御部101Bは、被検眼Eの関心部位に対する水平方向(つまり、回動動作における偏角方向)のスキャン(θスキャン)を制御する。スキャン制御部101Bは、例えば、照明系8の回動と観察撮影系6の回動とを連係させるように移動機構60を制御する。例えば、スキャン制御部101Bは、水平方向のスキャン位置PS1、PS11、PS12の順番に観察撮影系6及び照明系8を移動させる。」 カ 引用文献7 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開2016-159073号公報」(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。 (引7ア) 「【0002】 細隙灯顕微鏡は、細隙光を用いて被検眼の観察部位の光切片を切り取ることにより観察部位の断面を観察したり、当該断面の画像を取得したりするための眼科装置である。角膜や水晶体等の診断には、一般的に、細隙灯顕微鏡が用いられる。たとえば、医師は、細隙灯顕微鏡を操作し、細隙光で照明された被検眼の観察部位を水平方向や深さ方向にシフトさせることにより診断部位全体を観察し、当該診断部位における異常の有無を判断する。 ・・・ 【0010】 この発明に係る細隙灯顕微鏡の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。 【0011】 まず方向を定義しておく。装置光学系において最も被検者側に位置するレンズ(対物レンズ)から被検者に向かう方向を前方向、深さ方向(奥行き方向)とし、その逆方向を後方向とする。また、前方向に直交する水平方向を左右方向とする。更に、前後方向と左右方向の双方に直交する方向を上下方向とする。 ・・・ 【0040】 細隙灯顕微鏡1は、観察部位に対して観察撮影系6および照明系8の双方のフォーカス位置を変更しながら複数の画像を取得することが可能である。たとえば、取得された画像は、その取得位置を示す位置情報に関連付けて保存される。それにより、取得された複数の画像を観察部位の広域の画像(たとえば、3次元画像)として合成したり、各画像を順番に表示したりすることが可能になる。 ・・・ 【0056】 スキャン制御部101Bは、被検眼Eの観察部位の水平方向(偏角方向)のスキャン(θスキャン)を制御することができる。スキャン制御部101Bは、照明系8の移動と観察撮影系6の移動とを連係させるように移動機構60を制御する。たとえば、スキャン制御部101Bは、水平方向のスキャン位置PS1、PS11、PS12の順番に観察撮影系6および照明系8を移動させる。」 キ 引用文献8 (ア)引用文献8の記載 本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開2019-42172号公報」(以下「引用文献8」という。)には、図面とともに次の記載がある。 (引8ア) 「【0009】 <実施形態> 以下、本開示に係る実施形態について説明する。本実施形態の眼科装置(例えば、眼科撮影装置200)は、被検眼の検査を行う眼科装置である。眼科装置は、例えば、撮影部(例えば、OCTデバイス5)と、解析部(例えば、制御部80)を主に備える。撮影部は、例えば、被検眼の水晶体を含む前眼部画像を撮影する。前眼部画像は、例えば、前眼部断層画像である。また、前眼部画像は、2次元データであってもよいし、3次元データであってもよい。解析部は、前眼部画像に写る水晶体を複数の区画に分割して画像解析する。本実施形態の眼科装置は、このような構成を備えることによって、水晶体の深さ方向(眼球光軸方向)に関する区画ごとに白内障評価を行うことができる。 ・・・ 【0018】 なお、撮影部は、光干渉断層計(OCTデバイス5)、シャインプルーフカメラ、超音波断層撮影装置(UBM)のいずれかであってもよい。OCTは、偏光OCTであってもよいし、偏光ではない通常のOCTであってもよい。 ・・・ 【0053】 なお、制御部80は、OCTデバイス5によって取得された三次元断層画像データに基づいて、En face画像を生成してもよい。また、制御部80は、生成したEn face画像をモニタ70に表示させてもよい。En face画像とは、測定光の光軸方向(例えば、z方向)から見たときの画像である。なお、En faceとは、例えば、眼底面に対して水平な面、または眼底2次元水平断層面などのことである。 ・・・ 【0056】 例えば、図5に示すような、徹照像600によって白内障の評価を行う場合、水晶体全域での評価しかできなかった。しかしながら、図6に示すように区画ごとに作成されたEn face画像700で評価を行うことによって、深さ方向(眼球光軸方向)に依存した混濁部位の評価が可能となる。 【0057】 例えば、図6(a)は水晶体前嚢のEn face画像、図6(b)は皮質(前側)のEn face画像、図6(c)は核のEn face画像、図6(d)は皮質(後側)のEn face画像、図6(e)は水晶体後嚢のEn face画像である。図6の例のように、区画ごとに混濁具合が異なる場合、制御部80は、区画ごとのEn face画像700に基づいて白内障の評価を行うことによって、白内障の種類または区画ごとの進行度などを判定することができ、より詳細に評価を行うことができる。」 (引8イ) 「【0062】 なお、本実施形態においては、前眼部断面像を撮像する前眼部撮像デバイスとして、前眼部断層像(断面像)撮影用の光コヒーレンストモグラフィーデバイスを例に挙げたがこれに限定されない。光源からの出射光を被検眼前眼部に向けて投光し、前眼部上に光切断面を形成させる投光光学系と、光切断面の前眼部での散乱により取得される前眼部散乱光を含む光を受光する検出器を有する受光光学系と、を有し、検出器からの検出信号に基づいて前眼部断面画像を形成する構成であればよい。すなわち、検眼の前眼部にスリット光を投影し、シャインプルークカメラにより前眼部断面画像を得る装置等にも適用可能である。 【0063】 この場合、シャインプルークカメラを回転させたり、水平または垂直方向に移動させたりすることにより前眼部の3次元形状画像を取得してもよい。なお、撮像面(スリット断面)に対して垂直な方向の位置ずれが検出され、その検出結果に基づいてずれ補正処理が行われる。」 (引8ウ)図5 [図:0001427654000013.jpg] (引8エ)図6 [図:0001427654000014.jpg] (イ)引用文献8に記載された技術的事項 上記(ア)の記載及び図面を総合すると、引用文献8には、次の発明(以下「引用文献8技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「水晶体の深さ方向(眼球光軸方向)に関する区画ごとに白内障評価を行うことができる眼科装置であって、(【0009】) シャインプルーフカメラによって取得された三次元断層画像データに基づいて、En face画像を生成し、生成したEn face画像をモニタ70に表示させ、En face画像とは、測定光の光軸方向(例えば、z方向)から見たときの画像であり、(【0018】・【0053】) 徹照像600(図5)によって白内障の評価を行う場合、水晶体全域での評価しかできなかったが、区画ごとに作成されたEn face画像700(図6)で評価を行うことによって、深さ方向(眼球光軸方向)に依存した混濁部位の評価が可能となる、(【0056】) 眼科装置。」 ク 引用文献9 本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開2019-55134号公報」(以下「引用文献9」という。)には、次の記載がある。 (引9ア) 「【0091】 画像形成部32は、スタックデータ又はボリュームデータにレンダリングを施すことで、Bスキャン画像(縦断面像、軸方向断面像)、Cスキャン画像(横断面像、水平断面像)、プロジェクション画像、シャドウグラムなどを形成することができる。」 ケ 引用文献10 本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった文献である「特開平10-33482号公報」(以下「引用文献10」という。)には、次の記載がある。 (引10ア) 「【0013】 【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。まず、角膜断面画像を得るための実施例の角膜断面撮影部100の光学系構成を図1により説明する。 ・・・ 【0016】<スリット断面撮影光学系> L2はスリット断面撮影光学系の撮影光軸を示す。10は偏角プリズムであり、撮影光軸L2の方向を変える。11は撮影レンズ、12は拡大撮影用結像レンズ、14はアナモフィックレンズ、16はCCDカメラである。撮影光軸L2は、正面からの観察によるアライメントがほぼ完了したときに角膜頂点付近で光軸L1と45度の傾き角度を持って交差するように設けられている。撮影レンズ11はシャインプル-クの原理を満たすように偏角プリズム10により方向が変えられる撮影光軸に対して傾いて配置されている。すなわち、偏角プリズム10を用いないときには、スリット照明光による被検眼前眼部の光断面の延長とCCDカメラ16の撮像面16aの延長との交線が、撮影レンズ11の主平面の延長線で交わるように配置されている。この光学配置により、CCDカメラ16により撮像される断面像(スリット光集光点を中心に前眼部の生体分子からの散乱光によって形成されたスリット光断面像)は、その断面像の略全体で合焦する焦点深度を持つようにすることができる。 ・・・ 【0022】以上のような光学系において、スリット断面撮影光学系、第2アライメント指標投影光学系、断面撮影用レティクル光学系及びスリット開口絞り4は、図示なき回転機構により光軸L1を中心に回転する構造になっており、任意の角度の断面像を撮影できるようになっている。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア スキャン部 引用発明(【0006】・【0007】、【0008】、【0012】、【0013】)の「前眼部撮影ユニット100」に「配置」された「スリット投影光学系」、「スリット断面撮影光学系」及び「光学系の回転機構」は、本件補正発明の「スキャン部」に相当する。また、引用発明(【0006】・【0007】、【0016】・請求項2)の「被検眼前眼部」を「照明」する「スリット光」を「光軸L1の軸回りに連続的に回転」させることは、本件補正発明の「被検眼の前眼部をスリット光でスキャン」することに相当する。また、引用発明(【0016】・請求項2)の「所定の回転角度毎に」「断面画像」を「撮影」することは、本件補正発明の「複数の断面画像を収集する」ことに相当する。 すると、引用発明の「被検眼前眼部」を「照明」する「スリット光」を「光軸L1の軸回りに連続的に回転」させ、「所定の回転角度毎に」「断面画像」を「撮影」する、「前眼部撮影ユニット100」に「配置」された「スリット投影光学系」、「スリット断面撮影光学系」及び「光学系の回転機構」は、本件補正発明の「被検眼の前眼部をスリット光でスキャンして複数の断面画像を収集するスキャン部」に相当する。 イ 再構成部 引用発明(【0024】)の「前眼部立体像」は、本件補正発明の「3次元再構成画像」に相当する。また、引用発明(【0025】)の「混濁部位」は、本件補正発明の「混濁部」に相当する。そして、引用発明(【0025】)では、「混濁の濃度(density値)は画像輝度で定量化する」から、「前眼部立体像」は、「水晶体」の「混濁部位」の「位置座標」が「画像輝度で定量化」されていることは明らかである。 すると、引用発明(【0008】、【0016】・請求項2、【0019】、【0024】、【0025】)の「スリット断面撮影光学系」が有する「CCDカメラ10により」「所定の回転角度毎に」「撮影」された「断面画像」に「画像解析の解析プログラム」を適用して、「水晶体」の「混濁部位」の「位置座標」が「画像輝度で定量化」されている「前眼部立体像」を「構築」する「コンピュータ部201」の一機能は、本件補正発明の「前記スキャン部により収集された前記複数の断面画像に3次元再構成を適用して、水晶体内の混濁部が描出されている3次元再構成画像を構築する再構成部」に相当する。 ウ レンダリング部 引用発明(【0025】)の「正面方向から見たときの混濁部位310を示す表示例(図6参照)」は、「水晶体」の「混濁部位」の「位置座標」が「画像輝度で定量化」されている「前眼部立体像」を、「正面方向から見たときの」投影「画像」であるから、引用発明の「水晶体」の「混濁部位」の「位置座標」が「画像輝度で定量化」されている「正面方向から見たときの」投影「画像」は、本件補正発明の「前記(水晶体内の)混濁部が描出されているプロジェクション画像」に相当する。そして、引用発明の「正面方向から見たときの」投影「画像」は、「正面方向から見たときの」投影に関する「画像解析の解析プログラム」を「前眼部立体像」に適用して、「コンピュータ部201」により「構築」したものであることが明らかであるから、引用発明の「正面方向から見たときの」投影に関する「画像解析の解析プログラム」は、本件補正発明の「前記被検眼の奥行き方向に直交する平面に対するプロジェクション」に相当する。ここで、引用発明の「正面方向から見たときの」投影に関する「画像解析の解析プログラム」は、プロジェクションであるから、コンピュータ上のデータや指示を、人間が見て理解できる形式に変換する処理であるレンダリング処理といえる(例えば、上記(2)イに摘記した引用文献1の【0151】、上記(2)クに摘記した引用文献9の【0091】を参照)。 すると、引用発明の「正面方向から見たときの」投影に関する「画像解析の解析プログラム」を、「水晶体」の「混濁部位」の「位置座標」が「画像輝度で定量化」されている「前眼部立体像」に適用して、「水晶体」の「混濁部位」の「位置座標」が「画像輝度で定量化」されている「正面方向から見たときの」投影「画像」を「構築」する「コンピュータ部201」の一機能は、本件補正発明の「前記被検眼の奥行き方向に直交する平面に対するプロジェクションを前記3次元再構成画像の少なくとも一部に適用して、前記混濁部が描出されているプロジェクション画像を構築するレンダリング部」に相当する。 エ 表示部 引用発明(【0025】)の「ディスプレイ204」は、本件補正発明の「表示部」に相当する。 すると、引用発明の「水晶体」の「混濁部位」の「位置座標」が「画像輝度で定量化」されている「正面方向から見たときの」投影「画像」を「表示」する「ディスプレイ204」と、本件補正発明の「前記プロジェクション画像と、前記奥行き方向における前記混濁部の位置を示す深さ情報とを表示する表示部」とは、「前記プロジェクション画像」「を表示する表示部」の点で共通する。 オ スキャン部-照明系 引用発明(【0006】・【0007】)の「スリット投影光学系」は、本件補正発明の「照明系」に相当する。 すると、引用発明(【0006】・【0007】、【0016】・請求項2、【0017】)の「被検眼前眼部」にとって「光軸L1の軸回り」を「幅」とする「スリット光」を「被検眼前眼部」に「照明」する「スリット投影光学系」と、本件補正発明の「被検者にとって左右の方向を幅方向とする前記スリット光を前記前眼部に照射する照明系」とは、「被検者にとって」所定の「方向を幅方向とする前記スリット光を前記前眼部に照射する照明系」の点で共通する。 カ スキャン部-撮影系 引用発明(【0008】)の「スリット断面撮影光学系」は、本件補正発明の「撮影系」に相当する。また、引用発明(【0016】・請求項2)の「スリット投影光学系と断面撮影光学系を光軸L1の軸回りに連続的に回転」させ、「所定の回転角度毎に」「撮影」することは、本件補正発明の「動画撮影する」ことに相当する。 すると、引用発明(【0008】)の「スリット投影光学系の光軸L1に対して45度の傾き角度を持って配置」し、「スリット投影光学系と断面撮影光学系を光軸L1の軸回りに連続的に回転」させ、「被検眼前眼部」を「所定の回転角度毎に」「撮影」する「スリット断面撮影光学系」は、本件補正発明の「前記照明系とは異なる方向から前記前眼部を動画撮影する撮影系」に相当する。 キ スキャン部-移動機構 引用発明(【0012】)の「光学系の回転機構」は、本件補正発明の「移動機構」に相当する。 すると、引用発明(【0016】・請求項2)の「スリット投影光学系と断面撮影光学系を光軸L1の軸回りに連続的に回転」する「光学系の回転機構」と、本件補正発明の「前記照明系及び前記撮影系を前記左右の方向に移動する移動機構」とは、「前記照明系及び前記撮影系を前記」所定の「方向に移動する移動機構」の点で共通する。 ク スリットランプ顕微鏡 引用発明(【発明の実施の形態】、【0016】・請求項2)の「スリット光」を用いて「断層画像が撮影され」る「前眼部撮影装置」は、本件補正発明の「スリットランプ顕微鏡」に相当する。 (4)一致点・相違点 上記(3)での対比を踏まえると、本件補正発明と引用発明とは、次のアの点で一致し、次のイの各点で相違する。 ア 一致点 「被検眼の前眼部をスリット光でスキャンして複数の断面画像を収集するスキャン部と、 前記スキャン部により収集された前記複数の断面画像に3次元再構成を適用して、水晶体内の混濁部が描出されている3次元再構成画像を構築する再構成部と、 前記被検眼の奥行き方向に直交する平面に対するプロジェクションを前記3次元再構成画像の少なくとも一部に適用して、前記混濁部が描出されているプロジェクション画像を構築するレンダリング部と、 前記プロジェクション画像」「を表示する表示部と を含み、 前記スキャン部は、 被検者にとって」所定の「方向を幅方向とする前記スリット光を前記前眼部に照射する照明系と、 前記照明系とは異なる方向から前記前眼部を動画撮影する撮影系と、 前記照明系及び前記撮影系を前記」所定の「方向に移動する移動機構と を含む、 スリットランプ顕微鏡。」 イ 相違点 (ア)相違点1(表示) 本件補正発明では、前記プロジェクション画像と、「前記奥行き方向における前記混濁部の位置を示す深さ情報」とを表示するのに対し、引用発明では、「水晶体」の「混濁部位」の「位置座標」が「画像輝度で定量化」されている「正面方向から見たときの」投影「画像」(図6参照)を「表示」するものの、「水晶体」の「混濁部位」の深さ情報を「表示」するか、不明である点。 (イ)相違点2(方向) 本件補正発明では、照明系は、被検者にとって「左右の」方向を幅方向とする前記スリット光を前記前眼部に照射し、移動機構は、前記照明系及び前記撮影系を前記「左右の」方向に移動するのに対し、引用発明では、「スリット投影光学系」は、「被検眼前眼部」にとって「光軸L1の軸回り」を「幅」とする「スリット光」を「被検眼前眼部」に「照明」し、「光学系の回転機構」は、「スリット投影光学系と断面撮影光学系を光軸L1の軸回りに連続的に回転」する点。 (5)判断 以下、上記各相違点について検討する。 ア 相違点1(表示)について (ア)角膜や水晶体などの前眼部の混濁を解析するための眼科装置において、混濁部位を含む正面画像と、混濁部位の深さ方向の情報とを表示することは、例えば、引用文献4、5及び8技術的事項(上記(2)のウ(イ)、エ(イ)及びキ(イ)参照)に記載されているように周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。 具体的には、引用文献4技術的事項の「混濁部65(図8参照)の二次元分布を示す」「正面画像」、及び「混濁部の位置を」「特定」した「Z方向(深さ方向)」の「解析情報」が、それぞれ、周知技術1の「混濁部位を含む正面画像」、及び「混濁部位の深さ方向の情報」に相当する。また、引用文献5技術的事項の「角膜100を正面から見た状態に対応する画面に好ましくないレベルの混濁の厚みを示す濃度分布画像(図12)」、及び「角膜100の表面部分を任意の厚みだけ切り取った状態における異常部数の濃度分布画像表示(図13、図14)」が、それぞれ、周知技術1の「混濁部位を含む正面画像」、及び「混濁部位の深さ方向の情報」に相当する。また、引用文献8技術的事項の「徹照像600(図5)」、及び「水晶体の深さ方向(眼球光軸方向)に関する」「区画ごとに作成されたEn face画像700(図6)」が、それぞれ、周知技術1の「混濁部位を含む正面画像」、及び「混濁部位の深さ方向の情報」に相当する。 また、引用発明も周知技術1も、前眼部の混濁を解析するための眼科装置という同一の技術分野に属するものである。そして、引用発明(【0025】)では、「混濁部位の程度とその位置情報が視覚的に把握しやすく、正面方向または網膜方向から見たときは、混濁部位及び程度が徹照像の形式よりもより正確に観察でき」ることから、引用発明において上記周知技術1を適用する動機は存在するといえる。 すると、引用発明において、上記周知技術1を適用することで、『「水晶体」の「混濁部位」の「位置座標」が「画像輝度で定量化」されている「正面方向から見たときの」投影「画像」(図6参照)』(上記「(3)ウ レンダリング部」参照)と、「水晶体」の「混濁部位」の深さ方向の情報とを「表示」すること、すなわち、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に為し得ることである。 (イ)さらに検討を進める。 引用発明(【0025】)では、「表示」した『「水晶体」の「混濁部位」の「位置座標」が「画像輝度で定量化」されている「正面方向から見たときの」投影「画像」(図6参照)』(上記「(3)ウ レンダリング部」参照)に対して、「マウス203やキーボード202の操作により、回転させたり、見る方向を任意に指定することができ、このため、混濁部位の程度とその位置情報が視覚的に把握しやすく」なるとあることから、引用発明において、「混濁部位の程度とその位置情報が視覚的に把握」するために、「正面方向から見たときの」投影「画像」(図6参照)に加えて、「マウス203やキーボード202の操作により、」側面方向「から見たときの」投影「画像」を「表示」することは、当業者が容易に為し得ることである。 そして、この側面「方向から見たときの」投影「画像」は、「混濁部位の程度とその位置情報」を含むことから、「水晶体」の「混濁部位」の深さ情報(本件補正発明の「前記奥行き方向における前記混濁部の位置を示す深さ情報」に相当する。)である。 すると、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に為し得ることである。 (ウ)また、引用発明(【0026】)では、「表示」した『「水晶体」の「混濁部位」の「位置座標」が「画像輝度で定量化」されている「正面方向から見たときの」投影「画像」(図6参照)』(上記「(3)ウ レンダリング部」参照)において、「検者はマウス203等を用いて」「解析したい断面」を「指定」することで、「解析したい断面を含む」「立体図320が表示され(図7参照)、この立体表示の断面においては、」「混濁部位302」が「表示され、このように、断面を含む立体像の形式で表示すると、混濁部位の位置関係が把握しやすくなる」とあることから、引用発明において、「混濁部位の位置関係」を「把握」するために、「正面方向から見たときの」投影「画像」(図6参照)に加えて、側面の「断面を含む」「立体図」「(図7参照)」を「表示」することは、当業者が容易に為し得ることである。 そして、この側面の「断面を含む」「立体図」「(図7参照)」は、「混濁部位の位置関係」を含むことから、「水晶体」の「混濁部位」の深さ情報(本件補正発明の「前記奥行き方向における前記混濁部の位置を示す深さ情報」に相当する。)である。 すると、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に為し得ることである。 (エ)よって、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、上記(ア)で検討したとおり、当業者が容易に為し得ることである。また、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、上記(イ)、(ウ)で検討したとおり、当業者が容易に為し得ることでもある。 イ 相違点2(方向)について 角膜や水晶体などの前眼部の混濁を解析するための眼科装置において、スリット光を用いて前眼部の任意の位置での断面画像を撮像する際、スリット光を、(i)左右方向に移動させること、(ii)回転方向に移動させることは、いずれも周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。(i)左右方向については、例えば、引用文献1、6、7及び8(上記(2)のイ、オ、カ及びキ)、(ii)回転方向については、例えば、引用文献3、8及び10(上記(2)のア、キ及びケ)を参照されたい。そして、スリット光の移動方向について、(i)左右方向に移動させるか、(ii)回転方向に移動させるかは、例えば、引用文献8に(i)と(ii)の両方の態様(引用文献8の【0063】に記載の「シャインプルークカメラを回転させたり、水平または垂直方向に移動させたりすること」が、回転、左右または上下方向への移動を意味していることは自明)が並列的に採用され得るものとして記載されているとおり、当業者が適宜選択して採用し得る程度のことである。 そして、引用発明も周知技術2も、前眼部の混濁を解析するための眼科装置という同一の技術分野に属するものである。 すると、引用発明において、上記周知技術2を適用し、「スリット光」の移動方向を回転方向から左右方向へ変更することで、「スリット投影光学系」及び「光学系の回転機構」を、それぞれ、「被検眼前眼部」にとって左右方向を「幅」とする「スリット光」を「被検眼前眼部」に「照明」する「スリット投影光学系」及び、「スリット投影光学系と断面撮影光学系を」前記左右方向に移動する「光学系の」移動「機構」とすること、すなわち上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に為し得ることである。 ウ 本件補正発明の奏する作用効果 上記相違点1及び2を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術1、2が奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (6)小括 したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (7)請求人の主張 審判請求書における請求の趣旨は、「特願2019-164262について、令和6年5月14日になされた補正却下決定ならびに原査定を取り消す。本願発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」というものである。 そして、審判請求書における請求人の主張は、「(4)本願発明と引用発明との対比」の欄において、「次に、上記拒絶の理由3(進歩性)について述べる。本願発明と引用文献3に記載の発明とは、被検眼の前眼部をスリット光でスキャンして3次元的な情報を取得し、水晶体の混濁を解析する点で一致しているものの、本願発明では、被検者にとって左右の方向を幅方向とするスリット光を前眼部に照射する照明系と前眼部を動画撮影する撮影系とを左右の方向に移動することによって、平行に配列された複数の断面画像を収集するのに対し、引用文献3に記載の発明では、投影軸を中心にスリット光を回転させながら撮影することによって、放射状に配列された複数の断層画像を収集する点で相違している。 この相違点に関して、令和6年5月21日(送達日)付け補正却下決定では、照明系と撮影系とを左右方向に移動しながら複数の断面画像を収集するという本願発明の構成は、引用文献6及び7に記載された周知の技術であるとされた。 しかしながら、引用文献6及び7には、細隙形成部が形成するスリットを平行移動することや、回動動作の偏角方向におけるθスキャンを行うことが記載されているに過ぎず、本願発明の当該構成は記載も示唆もされていない。 具体的に説明すると、引用文献6及び7に記載された、細隙形成部が形成するスリットの平行移動は、撮影視野を固定した状態においてその撮影視野の内部でスリット光の照射位置を変更するものであるから、照明系と撮影系とを左右方向に移動しながら複数の断面画像を収集する本願発明とは、明らかに異なるものである。効果においても、照明系と撮影系との左右方向の移動に応じた広い範囲の画像を収集することが可能な本願発明と異なり、引用文献6及び7におけるスリットの平行移動では、固定された撮影視野内の狭い範囲の画像しか収集することができない。 また、引用文献6及び7のθスキャンが、本願発明と相違することは明らかである。なお、引用文献6の段落0081及び引用文献7の段落0056に「水平方向」と記載されているが、この水平方向は回動方向(偏角方向)を意味し、本願発明の左右方向には該当しない。 したがって、引用文献3に記載の発明に、引用文献6又は7に記載の技術事項を組み合わせたとしても、本願発明に想到することはできない。また、本願発明は、スリット光の照射領域に相当する断面が互いに平行に配列された複数の断面画像、つまり、隣接する断面画像の間隔が一定の複数の断面画像を収集できるため、混濁部が見逃される事態を防止できるという効果を奏するが、引用文献3~7はそれについて何ら言及していない。 以上のように、本願発明は、引用文献3~7に記載も示唆もされていない構成を具備するとともに、これら引用文献に言及されていない格別の効果を奏するものであるから、当業者がこれら引用文献に記載の発明に基づき容易に想到しうるものではなく、上記拒絶の理由3(進歩性)に該当しない。」というものである(下線は、当審において付与した。)。 上記主張について検討する。 請求人は、「引用文献6及び7に記載された、細隙形成部が形成するスリットの平行移動は、撮影視野を固定した状態においてその撮影視野の内部でスリット光の照射位置を変更するものであるから、照明系と撮影系とを左右方向に移動しながら複数の断面画像を収集する本願発明とは、明らかに異なるものである。効果においても、照明系と撮影系との左右方向の移動に応じた広い範囲の画像を収集することが可能な本願発明と異なり、引用文献6及び7におけるスリットの平行移動では、固定された撮影視野内の狭い範囲の画像しか収集することができない。」と主張するが、引用文献6及び7も、照明系と撮影系とを左右方向に移動しながら複数の断面画像を収集するものであるから、効果においても、照明系と撮影系との左右方向の移動に応じた広い範囲の画像を収集することが可能である。 また、請求人は、「引用文献6及び7のθスキャンが、本願発明と相違することは明らかである。なお、引用文献6の段落0081及び引用文献7の段落0056に「水平方向」と記載されているが、この水平方向は回動方向(偏角方向)を意味し、本願発明の左右方向には該当しない。」と主張するが、引用文献6の「水平方向」が「左右方向」を意味することは、引用文献6の段落0034及び引用文献7の段落0011の記載から明らかである。そして、本件補正発明が、回動動作(θスキャン)による「左右方向」を排除するものではない。 そして、上記主張は、令和6年2月22日になされた手続補正、又は、本件補正により追加された構成についての主張であって、当該構成と引用発明(引用文献3に記載された発明)とは、上記相違点2(方向)の点でのみ相違するところ、上記相違点2(方向)に係る本件補正発明の構成が引用発明及び周知技術2に基づいて当業者が容易に想到し得ることは、上記(5)イに説示したとおりである。 よって、請求人の上記主張は採用できず、令和6年5月14日になされた補正却下決定を取り消すことはできない。なお、原査定については、以下、「第3 本願発明について」にて検討する。 (8)まとめ 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和6年8月8日にされた手続補正(本件補正)は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年10月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定されるものである。そのうちの請求項1の記載は、上記第2の1(2)のとおりである。 2 原査定の拒絶理由 進歩性に係る原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、引用文献3に記載された発明及び引用文献4、5に例示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献3:特開2003-111728号公報 引用文献4:特開2018-186930号公報(周知技術を示す文献) 引用文献5:特開2005-118076号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、上記第2の2(2)ア、ウ及びエに記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、上記第2の2で検討した本件補正発明から「スキャン部」に係る限定事項を削除して拡張したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加して限定したものに相当する本件補正発明が、上記第2の2(3)~(6)に説示したとおり、引用発明及び周知技術1、2(周知技術2は、本件補正により追加された構成に対応するためのもの)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の拒絶の理由及び他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-012910

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