特許拒絶査定不服審判
2023-020075
光コヒーレンストモグラフィ(OCT)データ処理方法
- 審判番号
- 2023-020075
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-123431
- 請求日
- 2023年11月28日
- 審決日
- 2025年07月07日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社トプコン
- 【請求人代理人】榎並 智和
- 審判長/審判官
- 審判長 南 宏輔
- 審判官 北島 拓馬
- 審判官 宮澤 浩
- 分類
- P18 .121-WZ (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-123431「光コヒーレンストモグラフィ(OCT)データ処理方法」拒絶査定不服審判事件〔令和3年1月28日出願公開、特開2021-7665〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和元年7月2日の出願であって、令和5年2月2日付けの拒絶理由の通知に対し、同年6月6日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年9月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年11月28日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
その後、令和7年3月11日付けで拒絶理由を通知し、同年5月15日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされた。
2 本件発明
本願の請求項1~7に係る発明は、令和7年5月15日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 フーリエドメイン法の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンをサンプルに適用して収集された3次元データセットに含まれる波数値と強度値との関係を表すスペクトル強度分布である各Aスキャンデータに、前記スペクトル強度分布を深さ方向の反射強度分布に変換するフーリエ変換を含む前記フーリエドメイン法の画像化処理を適用してOCT画像データを生成する方法であって、
サンプルから収集された、それぞれが波数値と強度値との関係を表すスペクトル強度分布である複数のAスキャンデータからなる3次元データセットを準備し、
前記複数のAスキャンデータに前記フーリエドメイン法の画像化処理を適用することなく、各Aスキャンデータにハイパスフィルターを適用して振幅成分を抽出し、抽出された前記振幅成分から逆累積分布関数に基づき単一の推定強度値である代表強度値を決定し、前記複数のAスキャンデータからそれぞれ決定された複数の代表強度値の前記深さ方向に直交する面における分布を表す2次元マップを作成し、
前記2次元マップに基づいて、前記3次元データセットと前記サンプルの領域との位置関係を決定する前記3次元データセットの位置決めを行い、
前記位置決めがなされた前記3次元データセットの少なくとも部分データセットに基づき前記サンプルの特定部位の寸法を計測して結果データを得る寸法解析処理を実行し、
前記3次元データセットの少なくとも一部に前記フーリエドメイン法の画像化処理を適用してOCT画像データを生成する、
OCTデータ処理方法。」
3 当審で通知した拒絶の理由
令和7年3月11日付けで通知した拒絶理由は、この出願の請求項1~19に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という拒絶の理由を含むものである。
<引用文献等一覧>
引用文献2:特開2014-188373号公報
引用文献4:特開2013-154121号公報
引用文献A:特開2014-128620号公報
なお、引用文献2は、主引用発明が記載された文献として引用したものであり、引用文献4及び引用文献Aは、周知技術が記載された文献として引用したものである。
4 引用文献
(1)引用文献2
ア 引用文献2の記載事項
令和7年3月11日付けで通知した拒絶の理由において、主引用発明が記載された文献として引用され、本願の出願前に頒布された引用文献である、特開2014-188373号公報(平成26年10月6日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、引用発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項15】
光コヒーレンス断層撮影インターフェログラムデータから強度マップを得るための方法であって、
光ビームを光源により生成するステップと、
前記光ビームをサンプル経路と参照経路とに沿って分割するステップと、
前記光ビームを前記サンプル経路に沿ってX-Y平面内の異なる位置に向けるステップと、
前記サンプル経路および前記参照経路の各々から返された光を受け取るステップと、
複数の出力セットを生成するステップであって、前記複数の出力セットの各々は、前記光ビームが特定のX-Y平面位置に向けられるときに前記光源の異なる波長で受け取られる光強度に対応し、前記光強度は、前記特定のX-Y平面位置における深さ方向Zの対象物内の光反射率分布に関する情報を含むものである、前記複数の出力セットを生成するステップと、
前記光ビームを特定のX-Y平面位置に向けることにより生成された出力セットを高域フィルタリングしてフィルタ出力セットを生成するステップと、
前記フィルタ出力セットを、逆累積分布関数に基づいて、前記特定のX-Y平面位置についての前記深さ方向Zの単一の推定強度値に変換するステップであって、1つもしくは複数のX-Y平面位置に対応する1つもしくは複数の単一の推定強度値が前記対象物の2次元画像強度マップを生成するのに適する、前記変換するステップと
を含む方法。」
(イ)技術分野
「【0001】
本開示は、一般に、コヒーレント波形に基づく撮像を対象とし、より詳細には、光コヒーレンス断層撮影法の撮像システムに関する。」
(ウ)背景技術・発明が解決しようとする課題
「【背景技術】
【0002】
光コヒーレンス断層撮影法(Optical coherence tomography:OCT)は、光信号の取得および処理の方法である。OCTは、表面下の画像が得られるように観察対象の光散乱物体(生物組織など)の表面を越えて貫通させるのに使用することができる干渉に基づく技法である。
【0003】
OCTシステムは、ある特定の医学的状態を診断し、モニタするのに十分な解像度のものである断面画像または断面画像の集合体(3次元画像など)を提供することができる。従来、OCTシステムは、観察対象物から受け取られる後方散乱および後方反射光からのエコー時間遅延の測定値を提供することによって動作する。そのようなOCTシステムは通常、干渉計および機械的に走査される参照光路とを含み、それらのシステムを一般に時間領域OCTと呼ぶ。
【0004】
スペクトル領域OCTシステムまたは波長掃引光源型フーリエ領域OCTシステムは、観察対象物から測定される光と固定参照経路からの光との間の干渉スペクトルからの光のエコー時間遅延の測定値を提供することによって動作する。スペクトル領域OCTシステムは通常、光分散性部品と、観察対象物から受け取られる干渉スペクトルを測定するための、電荷結合デバイス(CCD)カメラといった検出器アレイとからなる分光計を含む。一方、波長掃引光源型システムは通常、高速波長同調レーザーと、干渉スペクトルを測定するための検出・高速データ取得装置とを含む。どちらの種類のシステムでも、観察対象物からの後方散乱および後方反射光のエコー時間遅延は、干渉スペクトルのフーリエ変換を計算することによって求められる。
【0005】
フーリエ領域OCTシステムは時間領域OCTシステムに優る改善である。というのは、観察対象物の異なる軸位置における後方散乱および後方反射光を、順次にではなく同時に測定することができるからである。したがって、ある特定の医学的状態を診断し、モニタするための撮像速度および感度が改善されている。しかし、より効率的で正確な医学的診断、モニタリング他の機能を提供するには、フーリエ領域OCTデータを使用した測定法におけるさらなる改善が有益となるはずである。
【0006】
さらに、眼科OCTシステムは通常、走査レーザー検眼鏡や赤外線眼底カメラといった2次的画像診断法を利用して全般的診断のために眼底を撮像し、正面眼底像を作成することによってOCT走査整合を補助する。しかし、被験者または患者においては、小さい瞳孔や眼球混濁といった撮像状況が存在し、その場合には、たとえ眼科OCTシステムが許容できる画像を生成しうるとしても、すべての2次的画像診断法が有効に働くとは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、2次的画像診断法を置き換え、またはその代用をするように、OCT走査データを利用して正面眼底画像の表示を生成する方法を作成することが望ましい。正面眼底画像の表示は、臨床家がより確実に意図される位置を走査することができる能力を提供し、また、他のデータセットもしくは画像診断法との位置合わせにも、特徴セグメンテーション計算を可能にするためにも使用することのできるOCT走査データの本来的に重ね合わされたマップも提供する。」
(エ)課題を解決するための手段
「【0008】
3次元OCTインターフェログラムデータから2次元眼底画像を生成するための方法および装置が提供される。一実施形態によれば、光源からの光ビームがサンプル経路と参照経路とに沿って分割される。光ビームはサンプル経路に沿ってX-Y平面内の異なる位置に向けられる。サンプル経路および参照経路の各々から返された光が受け取られる。複数の出力セットが生成され、複数の出力セットの各々は、光ビームが特定のX-Y平面位置に向けられるときに光源の異なる波長で受け取られる光強度に対応し、光強度は、特定のX-Y平面位置における深さ方向Zの対象物内の光反射率分布に関する情報を含む。光ビームを特定のX-Y平面位置に向けることにより生成される出力セットが高域フィルタリングされてフィルタ出力セットが生成される。フィルタ出力セットは、任意選択で、ダウンサンプリングされ、または切り捨てられてもよい。フィルタ出力セットは、逆累積分布関数に基づいて、特定のX-Y平面位置についての深さ方向Zの単一の推定強度値に変換され、その場合、1つもしくは複数のX-Y平面位置に対応する1つもしくは複数の単一の推定強度値が、対象物の2次元画像強度マップを生成するのに適する。フィルタ出力セットは二乗され、またはソートされてよい。光源は広帯域光ビームを生成してよく、検出器は、回折格子と検出器アレイとを含む分光計とすることができる。また光源は、可同調掃引光ビームを生成してもよく、光源の異なる波長での光強度が時間の関数として得られてもよい。
・・・
【0011】
一実施形態によれば、対象物の2次元画像強度マップの少なくとも一部が、画像診断法と関連付けられた走査取り込み整合プロセスに使用されてよい。また対象物の2次元画像強度マップは、別の画像診断法によって得られた対象物の1つもしくは複数の画像を位置合わせするのに使用されてもよい。画像診断法は、OCTまたは眼底撮像カメラ、走査レーザー検眼鏡、眼底自発蛍光または血管造影法のうちの1つとすることができる。
・・・
【0016】
一実施形態によれば、光源からの光ビームがサンプル経路と参照経路とに沿って分割される。光ビームはサンプル経路に沿ってX-Y平面内の異なる位置に向けられる。サンプル経路および参照経路の各々から返された光が受け取られる。複数の出力セットが生成され、複数の出力セットの各々は、光ビームが特定のX-Y平面位置に向けられるときに光源の異なる波長で受け取られる光強度に対応し、光強度は、特定のX-Y平面位置における深さ方向Zの対象物内の光反射率分布に関する情報を含む。光ビームを特定のX-Y平面位置に向けることにより生成される出力セットが高域フィルタリングされてフィルタ出力セットが生成される。フィルタ出力セットは、任意選択で、ダウンサンプリングされ、または切り捨てられてもよい。フィルタ出力セットは、特定のX-Y平面位置についての深さ方向Zの単一の推定強度値に変換され、その場合、1つもしくは複数のX-Y平面位置に対応する1つもしくは複数の単一の推定強度値が、対象物の2次元画像強度マップを生成するのに適し、対象物の2次元画像強度マップの少なくとも一部が、画像診断法と関連付けられた走査取り込み整合プロセスに使用されうる。」
(オ)発明を実施するための形態
「【0024】
様々な実施形態によれば、フーリエ領域(例えば分光計や波長掃引光源型の)光断層撮影収束(OCT)データが、OCT撮像システムで入力として受け取られ、2次元画像強度マップが、逆累積分布関数に基づいてインターフェログラムデータから生成されうる。
・・・
【0026】
光ビームがスキャナ116によって対象物120上の特定のX-Y平面位置に向けられた結果として、インターフェログラム検出部122はサンプル経路106から返された光を受け取る。またインターフェログラム検出部122は、対象物120から測定された光と参照経路108から測定された光との間の干渉スペクトルから光のエコー時間遅延を測定するために、参照経路108から返される光も受け取る。一実施形態では、光源102は広帯域光ビームを生成してよく、インターフェログラム検出部122は、検出器アレイと、サンプル経路106から返される光および参照経路108から返される光を波長の関数として角度分散させるための回折格子とを含む分光計とすることができる。あるいは、光源102は可同調掃引光ビームを生成してもよく、光源の異なる波長の光強度が、インターフェログラム検出部122によって時間の関数として得られてもよい。
【0027】
一実施形態では、インターフェログラム検出部122は、サンプル経路106および参照経路108から受け取られる光(すなわちインターフェログラムデータ)に基づいて複数の出力セットを生成する。例えば、インターフェログラム検出部122によって生成される複数の出力セットの各々は、光源102の異なる波長で受け取られる光強度に対応しうる。したがって、光源102からの光ビームがスキャナ116によって特定のX-Y平面位置に向けられるときに、検出される光強度は、特定のX-Y平面位置における深さ方向Zの対象物120内の光反射分布に関する情報を含むことができる。したがって、各出力セットは3次元データセットを含む。
・・・
【0029】
図2に、一実施形態による、3次元OCTインターフェログラムデータから2次元画像を生成するための機能ステップの図を示す。例えば、OCTインターフェログラムデータ(インターフェログラム検出部122によって生成された複数の3次元出力セットなど)を使用して(200)、処理装置124において、医学的診断用の眼底マップといった、2次元強度マップOCT画像を生成し(202)、表示する(204)ためのコンピュータプログラム命令が実行されうる。一実施形態では、生成画像は、例えば、生成画像を表示し、位置合わせし、セグメント化するための、対象物120の2次元画像強度マップ、またはそのセグメント化もしくは変換の結果を生成するのに適したものとすることができる。あるいは、生成画像は、OCTや眼底撮像カメラといった画像診断法と関連付けられた走査取り込み整合プロセスを実施するのに適したものであってもよい。加えて、または代替として、3次元断面画像を生成する(208)ためにOCTインターフェログラムデータを変換する(206)コンピュータプログラム命令が実行されてもよい。」
合議体注:図2は次のものである。
[図:0001426354000001.jpg]
「【0030】
フーリエ変換計算を利用して1つもしくは複数のフィルタ出力セットを生成することができる。一般的なフーリエ領域OCTインターフェログラム方程式が次式で与えられる。
【数1】
[図:0001426354000002.jpg]
式中、vは光ビームの周波数であり、RnおよびRmは、それぞれ、対象物120からの、特定のX-Y平面位置nおよびmにおける強度反射であり、Gs(v)は光源102のスペクトル密度であり、参照アームの反射は均一であり、距離は、サンプル経路106における伝搬時間τnおよびτmならびに参照経路108における伝搬時間τrによって表されている。括弧内の第3項は対象物120内で散乱するすべての光についての相互干渉であり、最後の項は、対象物120からの散乱光と参照経路108との間の干渉を含み、そこからA走査(すなわち軸方向長走査)が計算される。
【0031】
インターフェログラム検出部122が分光計である実施形態では、パラメータvは、ライン・スキャン・カメラ上の位置も表す。したがって、最初の2項はカメラ画素の線形アレイの端から端までの緩慢な変動を表し、最後の2項は振動(すなわち干渉じま)を表しうる。同様に、光源102が可同調掃引光源であり、ある範囲の周波数vを掃引される実施形態では、1次方程式の最初の2項は検出される信号の緩慢な時間的変動を表し、最後の2項は振動を表す。
【0032】
一実施形態では、高域フィルタリングにより式の右辺の第3項および第4項を除くすべてが消去され、低反射率を有する対象物がサンプル経路106に沿って存在するときには第4項の大きさが通常は第3項よりもずっと大きいものと仮定して、事実上、第4項が分離されることになる。さらに、高域フィルタリングされたスペクトルの範囲、偏り、標準偏差、分散、またはエントロピーを使用して、対象物120の2次元画像強度マップが生成されてもよい。
【0033】
図3に、一実施形態による、OCTインターフェログラムデータを処理するためのワークフロー図を示す。図3に示す方法は、高域フィルタリングされたインターフェログラムデータの分布を推定し、定量化して、対象物120上の1つもしくは複数のX-Y平面位置に対応する1つもしくは複数の単一の推定強度値を求めるステップを含む。例えば、300で、インターフェログラムデータ(複数の出力セットなど)がインターフェログラム検出部122から受け取られる。インターフェログラムデータは、フーリエ領域インターフェログラム式の各項を簡約して前述のように第4項を事実上分離するために、302で高域フィルタリングされてよい。一実施形態では、高域フィルタリングされたインターフェログラムデータのデータ率またはサイズは、例えば、より高い処理効率やより高速な計算を可能にするために、304で、様々な公知のダウンサンプリングまたは切り捨ての技法によってさらに低減されてよい。あるいは、データは、インターフェログラムデータの高域フィルタリングの前に切り捨てられ、またはダウンサンプリングされてもよい。例えば、(高域フィルタリングの前または後の)インターフェログラムデータは、n番目ごとの出力を保持し、他のすべてを廃棄することによってダウンサンプリングされてもよい。別の例では、インターフェログラムデータは、選択された範囲内のデータを保持し、他のすべてのデータを廃棄することによって切り捨てられてもよい。あるいは、1サンプルがnサンプルごとの中からランダムに、または疑似ランダムに選択される疑似ランダム・ダウンサンプリング・プロセスが用いられてもよい。」
合議体注:図3は次のものである。
[図:0001426354000003.jpg]
「【0034】
次いでフィルタ出力セットは、逆累積分布関数(CDF)に基づいて、特定のX-Y平面位置についての深さ方向Zの単一の推定強度値に変換されうる。一般に、CDF関数は、所与の確率分布を有する実数値の確率変数xがx以下の値において見つかる確率を示す。確率変数の逆CDFは、分位関数とも呼ばれ、所与の確率について、確率変数がその確率でその値以下になる値を特定する。
・・・
【0037】
最初の逆CDFの手法に戻って、フィルタ出力セットは、306で二乗され(すなわち、正の値および負の値が同じ範囲に存在するように)、310の逆CDF関数のために308でソートされてよい。一実施形態では、フィルタ出力セットは、308で、逆CDF計算のために選択されうる任意のパーセンタイルに対応する値を求めるために、昇順または降順にソートされてよい。例えば、0番目のパーセンタイル値は最小パーセンタイル値および最小フィルタ出力値に対応していてよく、50番目のパーセンタイルは中央パーセンタイル値および中央フィルタ出力値に対応していてよく、100番目のパーセンタイル値は最大パーセンタイル値および最大フィルタ出力値に対応していてよい。したがって、2048個のフィルタ出力があり、90番目のパーセンタイルが選択される場合、1843番目のソート値が選択値である。一例示的実施形態では、少なくとも1つの選択パーセンタイル値は、50番目のパーセンタイル値と100番目のパーセンタイル値との間の値に対応しうる。しかし、少なくとも1つの選択パーセンタイル値は、フィルタ出力セット内の任意の事前選択パーセンタイル値に対応しうる。したがって、任意のパーセンタイルに対応するソート値が選択されると、ソート値は312で単一の推定強度値に変換されうる。
・・・
【0040】
図4に、一実施形態による、3次元OCTインターフェログラムデータから2次元画像を生成するための流れ図を示す。
・・・
【0042】
410で、光ビームを特定のX-Y平面位置に向けることにより生成される出力セットは、任意選択で、フィルタ出力セットを生成するために高域フィルタリングされてもよい。412で、フィルタリングされた、またはフィルタリングされていない出力のセットは、上記で図3に関連して説明したように、逆累積分布関数に基づいて、特定のX-Y平面位置についての深さ方向Zの単一の推定強度値に変換される。414で、対象物の2次元画像強度マップが、1つもしくは複数のX-Y平面位置に対応する1つもしくは複数の単一の推定強度値から生成される。2次元画像強度マップは、ディスプレイにおける提示に適したものとすることができる。一実施形態では、単一の推定強度値は、画像強度マップのリアルタイム表示のために変換されうる。
【0043】
図5に、一実施形態による、2次元画像強度マップが利用される撮像セッションのための流れ図を示す。対象物120の2次元画像強度マップは、画像診断法と関連付けられた走査取り込み整合プロセスに使用されうる。例えば、画像診断法は、OCTまたは別のシステム(眼科のための眼底撮像カメラなど)のうちの1つとすることができる。さらに、走査取り込み整合プロセスは自動的に行われてもよく、画像診断法は、例えば技術者などによって、手作業で整合されてもよい。502で、被験者(患者など)がOCT(眼底など)画像のために位置決めされ、504で画像診断法が固定される(例えば、画像診断法のシャシが特定の位置で固定して設定される)。506で、必要に応じて、画像診断法の焦点が合わせられる。
【0044】
上記図4で説明したように、508で3次元OCTインターフェログラムが取り込まれてよく、510で2次元画像強度マップが自動的に生成され、リアルタイムで表示されてよい。一実施形態では、対象物120のOCT画像が、それだけに限らないが、逆累積分布関数を含む方法を含む様々な手段のいずれかによって生成されうる。512でOCT走査または眼底画像取り込みが開始される。一実施形態では、画像診断法が手作業で整合されてよく、506で(例えば、別の画像を取り込むのに必要な場合などに)画像診断法の焦点を再度合わせる前に、514で固定状態が調整されてよい。
【0045】
様々な実施形態において、走査取り込み整合プロセスは、非散瞳状態においてさえも、正常な撮像セッションを可能にするように機能しうる。また対象物120の2次元画像強度マップは、別の画像診断法によって得られた対象物120の画像を位置合わせするのに使用されてもよい。
【0046】
加えて、(フィルタリングされていない)出力のセットは、特定のX-Y平面位置についての深さ方向Zの強度情報を有する3次元データセットに変換されてもよく、その場合、1つもしくは複数の3次元データセットが対象物120のOCT断面画像を生成するのに使用される。例えば、3次元データセットは、1つもしくは複数のランドマーク、例えば対象物120の1つもしくは複数の物理境界などに基づいてセグメント化されてよく、ランドマークは深さ方向Zの強度情報から識別されうる。様々な実施形態において、セグメント化3次元データセットは、対象物120の部分強度画像もしくは眼球マップを生成し、または対象物120の液体充満空間を定量化するのに利用されうる。
【0047】
さらに別の実施形態において、対象物120の2次元画像強度マップは、例えば、対象物120の2次元画像強度マップを対象物120のOCT断面画像と並列に表示することによって、対象物120のOCT断面画像を位置合わせするのに使用されうる。」
合議体注:図4及び図5は以下のものである。
[図:0001426354000004.jpg]
イ 引用発明
引用文献2の記載事項(ア)に基づけば、引用文献2には、請求項15に記載された発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 光コヒーレンス断層撮影インターフェログラムデータから強度マップを得るための方法であって、
光ビームを光源により生成するステップと、
前記光ビームをサンプル経路と参照経路とに沿って分割するステップと、
前記光ビームを前記サンプル経路に沿ってX-Y平面内の異なる位置に向けるステップと、
前記サンプル経路および前記参照経路の各々から返された光を受け取るステップと、
複数の出力セットを生成するステップであって、前記複数の出力セットの各々は、前記光ビームが特定のX-Y平面位置に向けられるときに前記光源の異なる波長で受け取られる光強度に対応し、前記光強度は、前記特定のX-Y平面位置における深さ方向Zの対象物内の光反射率分布に関する情報を含むものである、前記複数の出力セットを生成するステップと、
前記光ビームを特定のX-Y平面位置に向けることにより生成された出力セットを高域フィルタリングしてフィルタ出力セットを生成するステップと、
前記フィルタ出力セットを、逆累積分布関数に基づいて、前記特定のX-Y平面位置についての前記深さ方向Zの単一の推定強度値に変換するステップであって、1つもしくは複数のX-Y平面位置に対応する1つもしくは複数の単一の推定強度値が前記対象物の2次元画像強度マップを生成するのに適する、前記変換するステップと
を含む方法。」
(2)周知技術
ア 引用文献4の記載事項
令和7年3月11日付けで通知した拒絶の理由において、周知技術が記載された文献として引用され、本願の出願前に頒布された引用文献である、特開2013-154121号公報(平成25年8月15日出願公開。以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、周知技術の認定に用いた箇所に下線を付した。
(ア)技術分野
「【0001】
本発明は、眼科撮影装置によって取得された正面画像を用いて被検眼を観察する眼科観察システム及びプログラムに関する。」
(イ)発明が解決しようとする課題
「【0008】
本発明は、上記問題点を鑑み、容易に撮影画像間の位置合わせをずれを確認することができる眼科観察システムに関する。」
(ウ)課題を解決するための手段
「【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0010】
(1) 眼科撮影装置によって取得された第1正面画像の画像データと,該第1正面画像と同一の撮影領域に関して該第1正面画像と異なるタイミングで取得された第2正面画像の画像データと,を記憶部から取得し、該第1正面画像における一部の画像データである第1画像データを該第1正面画像の画像データから抽出し、該第1正面画像から抽出した該第1画像データとは異なる部分の第2画像データを該第2正面画像の画像データから抽出し、抽出した各画像データを合成処理することによって、該第1正面画像と該第2正面画像との位置ずれを確認するための合成正面画像を作成する画像処理部と、前記画像処理部によって作成された前記合成正面画像をモニタ上に表示する表示制御部と、を有し、眼科撮影装置によって取得された異なる画像データ間の位置合わせを行う。」
(エ)発明を実施するための形態
「【0013】
<概要>
本発明の実施形態に係る眼科画像処理装置の概要について説明する。本実施形態において、眼科画像処理装置1は、操作入力部(操作部)90、モニタ75、表示制御部、画像処理部を有する。制御部(CPU)70は、例えば、表示制御部、画像処理部として用いられる。
・・・
【0022】
眼科撮影装置としては、例えば、レーザ走査型検眼装置(SLO)、光干渉断層計(OCT撮影装置)、眼底カメラ等が考えられる。レーザ走査型検眼装置は、被検眼上でレーザ光を走査し、眼からの反射光を共焦点開口を介して受光して正面画像を得る装置である。OCT撮影装置は、被検眼でOCT測定光を走査し、眼からの反射光と参照光とが合成された光を受光して正面画像を得る装置である。眼底カメラは、被検眼に対して照明光を一体的に照射し、眼からの反射光を二次元撮像素子で受光して正面画像を得る装置である。
【0023】
検者は、操作部90を操作し、メモリ72に記憶された複数の正面画像の比較を行う。例えば、メモリ72に記憶された複数の正面画像がモニタ75上に表示される。検者は、操作部90を操作し、モニタ75上に表示された複数の正面画像から、位置合わせを行う正面画像を選択する。例えば、検者が2つの正面画像を選択すると、モニタ75上には、2つの正面画像が表示される。このとき、例えば、一方の正面画像を基準正面画像とし、もう一方の正面画像を他の正面画像とする。なお、基準正面画像と他の正面画像を撮影する眼科撮影装置は異なってもよい。
【0024】
初めに、制御部70は、メモリ72に記憶された複数の正面画像(基準正面画像と他の正面画像)をモニタ75上に表示する。検者は、モニタ75上に表示された基準正面画像20上において、操作部90を操作し、正面画像上の特徴部分(例えば、血管の分岐等に基づく特徴点、乳頭部分を含む画像領域)を指定する。検者によって、特徴部分が選択されると、制御部70は、モニタ75上に表示された基準正面画像20上における特徴部分において、操作部90から入力される操作信号に基づいて、基準正面画像における特徴部分(例えば、基準点a)選択する(図4参照)。
【0025】
例えば、制御部70は、基準正面画像20上で選択された特徴部分の位置座標と,他の正面画像30上において探索された特徴部分の位置座標とに基づいて、基準正面画像20と他の正面画像30における特徴部分を画像処理によって一致させることにより、基準正面画像20と他の正面画像30との位置合わせを行う。
【0026】
例えば、制御部70は、基準点aの位置座標と対応点a'の位置座標に基づいて、アフィン変換処理を行い、正面画像間の位置合わせを行う。もちろん、画像処理としては、剛体変換であるアフィン変換ではなく、非剛体変換を用いてもよい。なお、位置合わせの画像処理としては、例えば、正面画像のコントラストを同期させる処理を行ってもよい。
・・・
【0034】
以上のようにして、容易に精度良く位置合わせを行うことができる。そして、正面画像間の位置合わせを精度良く行うことによって、異なるタイミングで取得された画像データ間の比較(例えば、経過観察)を精度良く行うことができる。
【0035】
制御部70は、正面画像同士を直接比較してもよいし、各正面画像に対応するOCT画像データを比較するようにしてもよい。
【0036】
OCT画像データ間の比較処理は、例えば、解析マップ等を作成し、それを用いることによって行われる。例えば、異なるタイミングで取得された各OCT画像データにおける眼底の層情報に基づいて、層厚に関する二次元分布を示す各層厚マップが作成され、層厚マップ間の差分結果である差分マップが作成される。
【0037】
なお、マップ(グラフ)化される眼底の層厚の情報としては、深さ方向(Z方向)における眼底の層の厚さに関する情報であればよく、例えば、各層の厚みの他、複数の層の厚さを足し合わせたときの層の厚さであってもよい。例えば、神経線維層の厚み、網膜表面から脈絡膜までの厚み、等が考えられる。
【0038】
なお、解析マップとしては差分マップに限定されない。眼底上の異常部位の位置を二次元的に示すマップが考えられる。例えば、各位置の層厚を計測し、計測結果が正常眼データベースにおける所定範囲(例えば、正常眼の計測値に対応する正常範囲)内であるかを判定する。すなわち、各層の層厚判定、形状判定、所定部位(例えば、乳頭、黄斑)のサイズ判定等を行い、眼底の眼底の正常/異常等の判定を行う。そして、眼底の眼底の正常/異常部位に関する二次元分布データを検出する構成としてもよい。
【0039】
層情報の取得は、光干渉断層計によって取得される三次元断層画像から検出を行う必要がある。このため、各正面画像の取得とともに、光干渉断層計によって取得される三次元断層画像を取得しておく必要がある。すなわち、各正面画像の層情報の取得は、各正面画像と対応付けされた三次元断層像を解析することによって行われる。なお、正面画像と三次元断層画像の対応付けは、解析に用いた三次元断層像からOCT正面画像を生成し、生成されたOCT正面画像と正面画像とを重畳させることによって、両データを対応付けして、行われる。」
イ 引用文献Aの記載事項
令和7年3月11日付けで通知した拒絶の理由において、周知技術が記載された文献として引用され、本願の出願前に頒布された引用文献である、特開2014-128620号公報(平成26年7月10日出願公開。以下「引用文献A」という。)には、図面とともに、以下の記載事項がある。なお、周知技術の認定に用いた箇所に下線を付した。
(ア)技術分野
「【0001】
本発明は、眼底撮影システムに関する。」
(イ)発明が解決しようとする課題
「【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、眼底像と個人情報との関連付けを簡便に行うことが可能な眼底撮影システムを提供することを目的とする。」
(ウ)課題を解決するための手段
「【0006】
実施形態に係る眼底撮影システムは、被検者の被検眼の眼底を撮影する眼底撮影装置と、被検者の個人情報を取得する個人情報取得手段と、眼底撮影装置により取得された眼底の画像と、個人情報取得手段により取得された個人情報とを関連付ける関連付け手段とを備える。」
(エ)発明を実施するための形態
【0073】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態では、眼底撮影装置として光走査型検眼鏡が適用された眼底撮影システムについて説明したが、眼底撮影装置は光走査型検眼鏡に限定されるものではない。たとえば、背景技術として説明した眼底カメラや光干渉断層計を眼底撮影装置として適用することが可能である。
・・・
【0077】
以下の実施形態ではスペクトラルドメインタイプのOCTを適用した場合について詳しく説明するが、他のタイプのOCTを用いる眼底撮影装置に対して、この実施形態に係る構成を適用してよい。
・・・
【0110】
〔制御系・データ処理系〕
実施形態に係る眼底撮影装置100の制御系およびデータ処理系について説明する。
・・・
【0118】
眼底撮影装置100により取得されるデータとしては、OCT画像の画像データ、検査データ、正面画像の画像データなどがある。検査データとは、光学ユニット110による干渉光の検出結果を処理することにより生成される、被検眼の状態を示すデータである(詳細は後述する)。この実施形態において、検査データは、被検者の認証を行うための認証情報として使用される。記憶部212にあらかじめ記憶されるデータとしては、以下に説明する設定情報や正規個人認証情報がある。
【0119】
(設定情報)
設定情報は、光学ユニット110およびデータ処理部230に関する所定の項目の設定の内容が記録された情報である。設定情報はたとえば次の事項のうち少なくとも1つに関する設定内容を含む:(1)固視位置;(2)スキャンパターン;(3)合焦位置;(4)視度補正;(5)最大干渉深度;(6)解析処理。
・・・
【0125】
(6)「解析処理」は、光学ユニット110により取得されるデータに基づき実行される処理の内容、つまり取得される検査データの種別を示す。解析処理の例として、眼底層厚解析、乳頭形状解析などがある。眼底層厚解析は、眼底の所定の層組織(網膜、網膜のサブ組織、脈絡膜、強膜など)の厚さを求めるための解析処理である。乳頭形状解析は、眼底の断面像や3次元画像を解析して、網膜の孔部(切れ目、欠損部位)を検出して視神経乳頭の形状を求める解析処理である。また、乳頭形状解析では、視神経乳頭の傾き(形状の非対称性)を求めることもできる。
【0126】
解析処理は、被検眼Eの所定部位に相当する画像領域を特定する処理や、特定された画像領域の形態や分布を求める処理を含んでいてよい。特定対象である所定部位としては、たとえば、血管、視神経乳頭、黄斑、所定の層組織(網膜、網膜のサブ組織、脈絡膜、強膜など)、レーザ治療痕、病変部(ドルーゼン、網膜剥離部位、組織欠損部位、組織変形部位など)がある。
【0127】
解析処理は、OCT計測で取得されたデータに基づいて距離を算出する処理を含んでいてよい。この距離計測の例として、前眼部のOCT計測で取得されたデータと、眼底のOCT計測で取得されたデータとに基づく眼内距離(眼軸長など)の計測がある。なお、眼底または前眼部のOCT画像のみに基づいて眼内距離を求めることも可能である。」
ウ 周知技術
引用文献4及び引用文献Aの上記記載事項に基づけば、本願の出願前において、次の周知技術が知られていたといえる。
「光干渉断層計によって取得される画像から各位置の層厚を計測する解析処理を実行すること。」
5 対比(一致点、相違点の認定)
本件発明と引用発明とを対比する。
(1)OCTデータ処理方法
引用発明は、「光コヒーレンス断層撮影インターフェログラムデータから強度マップを得るための方法」であり、「光ビームを光源により生成するステップ」、「前記光ビームをサンプル経路と参照経路とに沿って分割するステップ」、「前記光ビームを前記サンプル経路に沿ってX-Y平面内の異なる位置に向けるステップ」、「前記サンプル経路および前記参照経路の各々から返された光を受け取るステップ」及び「複数の出力セットを生成するステップ」を含むものである。そうすると、引用発明は、「光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンをサンプルに適用」して、データを「収集」しているといえる。
また、引用発明の「出力セット」は、「前記光ビームが特定のX-Y平面位置に向けられるときに前記光源の異なる波長で受け取られる光強度に対応し、前記光強度は、前記特定のX-Y平面位置における深さ方向Zの対象物内の光反射率分布に関する情報を含むもの」である。ここで、「波数」は「波長」の逆数であるから、引用発明の「出力セット」の各々は、「波数値と強度値との関係を表すスペクトル強度分布である各Aスキャンデータ」であるといえる。そうすると、引用発明の「出力セット」は、本件発明の「波数値と強度値との関係を表すスペクトル強度分布である各Aスキャンデータ」を含む「3次元データセット」に相当する。さらに、引用発明の「出力セット」は、「光源の異なる波長」が「深さ方向Zの対象物内の光反射率分布に関する」ものであるから、「フーリエドメイン法」の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンを適用して得られたデータであるといえる。
以上より、引用発明は、本件発明の「フーリエドメイン法の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンをサンプルに適用してデータを収集された3次元データセットに含まれる波数値と強度値との関係を表すスペクトル強度分布である各Aスキャンデータに、前記スペクトル強度分布を深さ方向の反射強度分布に変換するフーリエ変換を含む前記フーリエドメイン法の画像化処理を適用してOCT画像データを生成する方法」について、「フーリエドメイン法の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンをサンプルに適用」し、「3次元データセットに含まれる波数値と強度値との関係を表すスペクトル強度分布である各Aスキャンデータ」を「収集」する点で共通する。
また、引用発明の「光コヒーレンス断層撮影インターフェログラムデータから強度マップを得るための方法」は、本件発明の「OCTデータ処理方法」に相当する。
(2)3次元データセットの準備
引用発明の「複数の出力セットを生成するステップであって、前記複数の出力セットの各々は、前記光ビームが特定のX-Y平面位置に向けられるときに前記光源の異なる波長で受け取られる光強度に対応し、前記光強度は、前記特定のX-Y平面位置における深さ方向Zの対象物内の光反射率分布に関する情報を含むものである、前記複数の出力セットを生成する」ステップは、本件発明の「サンプルから収集された、それぞれが波数値と強度値との関係を表すスペクトル強度分布である複数のAスキャンデータからなる3次元データセットを準備」するステップに相当する。
(3)2次元マップの作成
引用発明の「前記光ビームを特定のX-Y平面位置に向けることにより生成された出力セットを高域フィルタリングしてフィルタ出力セットを生成するステップ」は、「出力セット」に「高域フィルタリング」するものである。そうすると、引用発明の「高域フィルタリングしてフィルタ出力セットを生成する」ことは、本件発明の「各Aスキャンデータにハイパスフィルターを適用して振幅成分を抽出」することに相当する。また、引用発明の「前記光ビームを特定のX-Y平面位置に向けることにより生成された出力セットを高域フィルタリングしてフィルタ出力セットを生成するステップ」は、「フーリエドメイン法の画像化処理」にはあたらない。
また、引用発明の「前記フィルタ出力セットを、逆累積分布関数に基づいて、前記特定のX-Y平面位置についての前記深さ方向Zの単一の推定強度値に変換するステップ」は、「高域フィルタリング」された「出力セット」に「逆累積分布関数」を適用して、「単一の推定強度値」を決定するものである。そうすると、引用発明の「前記フィルタ出力セットを、逆累積分布関数に基づいて、前記特定のX-Y平面位置についての前記深さ方向Zの単一の推定強度値に変換するステップ」は、本件発明の「抽出された前記振幅成分から逆累積分布関数に基づき単一の推定強度値である代表強度値を決定」することに相当する。そして、引用発明の「前記フィルタ出力セットを、逆累積分布関数に基づいて、前記特定のX-Y平面位置についての前記深さ方向Zの単一の推定強度値に変換するステップ」も、「フーリエドメイン法の画像化処理」にはあたらない。
さらに、引用発明の「1つもしくは複数のX-Y平面位置に対応する1つもしくは複数の単一の推定強度値が前記対象物の2次元画像強度マップを生成する」ことは、各「X-Y平面位置」に対応する「単一の推定強度値」に基づいて「2次元画像強度マップ」を生成することである。したがって、引用発明の「1つもしくは複数のX-Y平面位置に対応する1つもしくは複数の単一の推定強度値が前記対象物の2次元画像強度マップを生成する」ことは、本件発明の「前記複数のAスキャンデータからそれぞれ決定された複数の代表強度値の前記深さ方向に直交する面における分布を表す2次元マップを作成」することに相当する。そして、引用発明の「1つもしくは複数のX-Y平面位置に対応する1つもしくは複数の単一の推定強度値が前記対象物の2次元画像強度マップを生成する」ことも、「フーリエドメイン法の画像化処理」にはあたらない。
(4)一致点及び相違点
以上より、本件発明と引用発明とは、
「 フーリエドメイン法の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャンをサンプルに適用して3次元データセットに含まれる波数値と強度値との関係を表すスペクトル強度分布である各Aスキャンデータを収集する方法であって、
サンプルから収集された、それぞれが波数値と強度値との関係を表すスペクトル強度分布である複数のAスキャンデータからなる3次元データセットを準備し、
前記複数のAスキャンデータに前記フーリエドメイン法の画像化処理を適用することなく、各Aスキャンデータにハイパスフィルターを適用して振幅成分を抽出し、抽出された前記振幅成分から逆累積分布関数に基づき単一の推定強度値である代表強度値を決定し、前記複数のAスキャンデータからそれぞれ決定された複数の代表強度値の前記深さ方向に直交する面における分布を表す2次元マップを作成する、
OCTデータ処理方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本件発明は、収集されたデータに、「スペクトル強度分布を深さ方向の反射強度分布に変換するフーリエ変換を含む前記フーリエドメイン法の画像化処理を適用してOCT画像データを生成する方法」であるのに対し、引用発明は、出力セットに「スペクトル強度分布を深さ方向の反射強度分布に変換するフーリエ変換を含む前記フーリエドメイン法の画像化処理」を適用して「OCT画像データ」を生成していない点。
[相違点2]
本件発明は、「前記2次元マップに基づいて、前記3次元データセットと前記サンプルの領域との位置関係を決定する前記3次元データセットの位置決め」を行い、「前記位置決めがなされた前記3次元データセットの少なくとも部分データセットに基づき前記サンプルの特定部位の寸法を計測して結果データを得る寸法解析処理を実行」するのに対し、引用発明は、複数の出力セットとサンプルの領域との位置決め及び寸法解析処理を実行していない点。
6 判断(相違点についての検討)
(1)[相違点1]について
引用文献2の記載事項(イ)に基づけば、引用発明は、「光コヒーレンス断層撮影法」に関する発明である。
また、引用文献2の記載事項(ウ)に基づけば、引用発明は、「フーリエ領域OCTデータを使用した測定法におけるさらなる改善」(段落【0005】)を図るものであって、「OCT走査整合を補助する」(段落【0006】)にあたり、「2次的画像診断法を置き換え、またはその代用をするように、OCT走査データを利用して正面眼底画像の表示を生成する方法」(段落【0007】)を提供するものである。
さらに、記載事項(オ)の「加えて、または代替として、3次元断面画像を生成する(208)ためにOCTインターフェログラムデータを変換する(206)コンピュータプログラム命令が実行されてもよい。」(段落【0029】)、「加えて、(フィルタリングされていない)出力のセットは、特定のX-Y平面位置についての深さ方向Zの強度情報を有する3次元データセットに変換されてもよく、その場合、1つもしくは複数の3次元データセットが対象物120のOCT断面画像を生成するのに使用される。」(段落【0046】)との記載に基づけば、引用発明は、光コヒーレンス断層撮影法に関して、フーリエ領域OCTデータを使用した測定法に、さらなる改善をしたものであって、OCTインターフェログラムデータを変換して3次元断面画像を生成する方法と共に実施することを予定しているものといえる。そして、フーリエ領域OCTデータを使用した3次元断面画像の生成において、3次元断面画像のデータは、スペクトル強度分布を深さ方向の反射強度分布に変換するフーリエ変換を含むフーリエドメイン法の画像化処理を適用して生成されることは自明である。
そうすると、引用文献2の上記記載に基づいて、引用発明を、OCTインターフェログラムデータを変換して3次元断面画像を生成する方法と共に実施するように構成し、スペクトル強度分布を深さ方向の反射強度分布に変換するフーリエ変換を含むフーリエドメイン法の画像化処理を適用してOCT画像データを生成する方法とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)[相違点2]について
引用文献2の記載事項(ウ)の「したがって、2次的画像診断法を置き換え、またはその代用をするように、OCT走査データを利用して正面眼底画像の表示を生成する方法を作成することが望ましい。正面眼底画像の表示は、臨床家がより確実に意図される位置を走査することができる能力を提供し、また、他のデータセットもしくは画像診断法との位置合わせにも、特徴セグメンテーション計算を可能にするためにも使用することのできるOCT走査データの本来的に重ね合わされたマップも提供する。」(段落【0007】、下線は合議体が付した。)との記載に基づけば、引用文献2には、引用発明の「2次元画像強度マップ」を用いて、画像診断法との位置合わせに使用することが示唆されているといえる。
そして、引用文献2の記載事項(エ)には、「対象物の2次元画像強度マップの少なくとも一部が、画像診断法と関連付けられた走査取り込み整合プロセスに使用されてよい。・・・画像診断法は、OCTまたは・・・のうちの1つとすることができる。」(段落【0011】)及び「フィルタ出力セットは、・・・、1つもしくは複数のX-Y平面位置に対応する1つもしくは複数の単一の推定強度値が、対象物の2次元画像強度マップを生成するのに適し、対象物の2次元画像強度マップの少なくとも一部が、画像診断法と関連付けられた走査取り込み整合プロセスに使用されうる。」(段落【0016】)との記載があり、記載事項(オ)の「対象物120の2次元画像強度マップは、画像診断法と関連付けられた走査取り込み整合プロセスに使用されうる。例えば、画像診断法は、OCTまたは・・・のうちの1つとすることができる。さらに、走査取り込み整合プロセスは自動的に行われてもよく、画像診断法は、例えば技術者などによって、手作業で整合されてもよい。」(段落【0043】)との記載がある。これらの記載に基づけば、引用文献2における「画像診断法との位置合わせ」とは、「対象物の2次元画像強度マップ」を生成するのに用いた「フィルタ出力セット」の一部を用いて「OCT」画像診断法を行うにあたり、技術者によって、対象物における意図する位置を特定する(位置決めする)行為を含むものといえる。また、走査取り込み整合プロセスに使用するにあたり、対象の領域との位置関係の決定を行うことは自明である。
そして、前記4(2)ウに記載したとおり、「光干渉断層計によって取得される画像から各位置の層厚を計測する解析処理を実行すること。」は、本願出願前における周知技術である。
そうすると、引用文献2における示唆にしたがい、引用発明の「2次元画像強度マップ」を用いて、画像診断法との位置合わせ、つまり、サンプルの領域との位置関係の決定を行い、対応する画像診断法を用いて寸法解析処理を行うことは、当業者が容易になし得たことである。
請求人は、令和7年5月15日の意見書において、「補正後の請求項1において技術的に特定された「位置決め」は、「前記2次元マップに基づいて、前記3次元データセットと前記サンプルの領域との位置関係を決定する」ものであり、引用文献2から引用された「他のデータセットもしくは画像診断法との位置合わせ」と相違していることは明らかです。」と主張している。
しかし、上記のとおり、引用文献2における「画像診断法との位置合わせ」とは、「対象物の2次元画像強度マップ」を生成するのに用いた「フィルタ出力セット」の一部を用いて「OCT」画像診断法を行うにあたり、技術者によって、対象物における意図する位置を特定する行為を含むものである。
したがって、請求人の上記意見は採用することができない。
(3)効果について
本願の明細書段落【0021】の記載に基づけば、本件発明の効果は、「OCTデータ処理の効率化を図ることが可能である。」というものである。
一方、引用発明も、「光コヒーレンス断層撮影インターフェログラムデータから強度マップを得る」ものであって、引用文献2の記載事項(ウ)に基づけば、「2次的画像診断法を置き換え、またはその代用をするように、OCT走査データを利用して正面眼底画像の表示を生成する方法」(段落【0007】)であるから、本件発明と同様に、OCTデータ処理の効率化を図ることができるという、同様の効果を奏するものである。
したがって、本件発明の効果は、引用文献2に記載されたものである。
請求人は、令和7年5月15日の意見書において、「補正後の請求項1に係る発明は、フーリエドメイン法のOCTスキャンでサンプルから収集された3次元データセットから「フーリエドメイン法の画像化処理」を用いることなく作成された2次元マップに基づいて、3次元データセットとサンプルの領域との位置関係を決定できるという効果を奏することが可能です。この効果は、いずれの引用文献にも言及されていない、本願発明に特有のものです。」と主張している。
しかし、前記5(3)に記載したとおり、引用発明の「2次元画像強度マップ」は、「フーリエドメイン法の画像化処理」にはあたらないステップにより作成されたものである。また、引用発明の「2次元画像強度マップ」は、「臨床家がより確実に意図される位置を走査することができる能力を提供」(記載事項(ウ)の段落【0007】)するものである。そうすると、「3次元データセットとサンプルの領域との位置関係を決定できるという効果」は、引用発明も奏するものであって、本件発明に特有のものということができない。
したがって、請求人の上記意見は採用することができない。
(4)まとめ
上記のとおりであるから、本件発明は、引用発明と引用文献2の記載事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
7 むすび(結論)
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-020075