特許拒絶査定不服審判
2024-012548
画像誘導手術のための照明補正近赤外線(NIR)イメージング
- 審判番号
- 2024-012548
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-531598
- 請求日
- 2024年08月01日
- 審決日
- 2025年06月16日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人ITOH
- 審判長/審判官
- 審判長 南 宏輔
- 審判官 伊藤 幸仙
- 審判官 萩田 裕介
- 分類
- P18 .121-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-531598「画像誘導手術のための照明補正近赤外線(NIR)イメージング」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月11日国際公開、WO2020/117744、令和 4年 1月26日国内公表、特表2022-510393〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)12月3日 (パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年12月5日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 3年 6月15日 手続補正書の提出
令和 5年10月 2日付け 拒絶理由通知書
令和 6年 1月10日 意見書・手続補正書の提出
同年 3月22日付け 拒絶査定
同年 8月 1日 審判請求書・手続補正書の提出
以下では、令和6年3月22日付け拒絶査定を「原査定」という。
第2 令和6年8月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年8月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は、特許請求の範囲の請求項6を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項6の記載は、次のとおり補正された
(下線部は、補正箇所である。また、各構成単位冒頭の「A」などは便宜のため当審にて付した分説番号であり、以下、各構成単位について該分説番号を用いて「構成A」などということがある。引用発明等についても同様である。)。
「【請求項6】
A 手術シーンの部分から放射される蛍光の量を表す第1の量を示す情報を感知するように構成される第1の画像センサと;
B 1つ又は複数の処理装置を含むレンダリングエンジンであって:
C 前記手術シーンの前記部分から前記蛍光を放射させる励起シグナルの量を表す第2の量を示す情報を得る、
D 前記第1の量及び前記第2の量の関数として正規化された蛍光シグナルを生成する、及び
E 前記正規化された蛍光シグナルに基づいて前記手術シーンの前記部分の視覚的表現を生成する、
ように構成される、レンダリングエンジンと;
F 前記視覚的表現を提示するように構成されたディスプレイ装置と;
を有し、
G 前記レンダリングエンジンは:
前記励起シグナルのソースに関連する深度マップにアクセスし、前記深度マップは、前記ソースからの空間的分離の関数として、前記励起シグナルの強度変動に関する情報を提供し;
H 前記手術シーンの前記部分と前記励起シグナルの前記ソースとの間の空間的分離に関する情報を表すデータを受信し;
I (i)前記手術シーンの前記部分と前記ソースとの間の前記空間的分離、及び(ii)前記深度マップに基づいて前記第2の量を決定する;
ように構成され、
J 前記第1の画像センサは、内視鏡の一部として含まれ、
K 前記励起シグナルは前記内視鏡の遠位端部から放射される、
L イメージングシステム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和6年1月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項6の記載は、次のとおりである。
「【請求項6】
手術シーンの部分から放射される蛍光の量を表す第1の量を示す情報を感知するように構成される第1の画像センサと;
1つ又は複数の処理装置を含むレンダリングエンジンであって:
前記手術シーンの前記部分から前記蛍光を放射させる励起シグナルの量を表す第2の量を示す情報を得る、
前記第1の量及び前記第2の量の関数として正規化された蛍光シグナルを生成する、及び
前記正規化された蛍光シグナルに基づいて前記手術シーンの前記部分の視覚的表現を生成する、
ように構成される、レンダリングエンジンと;
前記視覚的表現を提示するように構成されたディスプレイ装置と;
を有し、
前記レンダリングエンジンは:
前記励起シグナルのソースに関連する深度マップにアクセスし、前記深度マップは、前記ソースからの空間的分離の関数として、前記励起シグナルの強度変動に関する情報を提供し;
前記手術シーンの前記部分と前記励起シグナルの前記ソースとの間の空間的分離に関する情報を表すデータを受信し;
(i)前記手術シーンの前記部分と前記ソースとの間の前記空間的分離、及び(ii)前記深度マップに基づいて前記第2の量を決定する;
ように構成される、
イメージングシステム。」
2 補正の適否
上記補正は、本件補正前の請求項6に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1の画像センサ」について、「内視鏡の一部として含まれ」るものであることを限定するとともに、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「励起シグナル」について、「前記内視鏡の遠位端部から放射される」ものであることを限定するものである。そして、補正前の請求項6に記載された発明と補正後の請求項6に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項6に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用された特表2009-542415号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
a 「【0009】
挿入可能計器は、膀胱癌、子宮癌、肺がん、気管支癌、および結腸ポリープおよび癌、ならびに動脈班のような身体内部の深いところにある病理に生体内進入を可能にすることによって、前述の蛍光反射撮像の撮像深さの限界を多少は解決している。しかしながら、前述した挿入可能構成では、挿入可能計器を身体内部において移動させると、各撮像における蛍光光が変動することを認めることができる。これは、挿入可能計器から組織までの距離、および撮像する組織の表面に対する角度が大きく変動する可能性があり、画像毎に蛍光の定量化可能な評価が困難になるからである。画像捕獲中における挿入可能計器の距離および角度が変動する可能性があるために、組織に進行する励起光および挿入可能計器に逆行する放出光双方について、画像フレーム毎に光路が変化する可能性がある。光路が異なると、画像記録デバイスにおいて、光のレベルが異なってしまい、最終的に画像をリアル・タイムで収集する際に各画像における信号強度が変動する可能性がある。各画像において強度が変動すると、画像を順次捕獲しつつ比較することが困難になる。」
b 「【0023】
本発明について記載する前に、序言的概念の一部および用語法について説明する。ここで用いる場合、「励起光」という用語は、励起光源が発生する光を記述するために用いられる。励起光は、生物組織から蛍光を励起することが可能なスペクトル光成分(即ち、波長)を含むが、これに限定されるのではない。蛍光光を励起することが可能な励起光におけるスペクトル成分は、単一波長、単一波長帯、1つよりも多い波長、1つよりも多いスペクトル波長帯を含むことができる。蛍光光を励起することが可能な励起光におけるスペクトル成分は、約400~700ナノメートルの可視スペクトル領域にある1つ以上の波長を含むことができる。しかしながら、蛍光光を励起することが可能な励起光におけるスペクトル成分は、その他のスペクトル領域、例えば、約700~1000ナノメートルの近赤外線(NIR)スペクトル領域、または約1~400ナノメートルの紫外線(UV)スペクトル領域における1つ以上の波長も含むことができる。また、励起光は、蛍光光を励起しないスペクトル成分も含むことができる。」
c 「【0028】
ここで用いる場合、「挿入可能計器」は、被験者の身体内に挿入することができる光学計器を記述するために用いられる。挿入可能計器は、種々の形態をなすことができる。例えば、挿入可能計器は、身体内に挿入する光ファイバ内視鏡とすることができる。別の例では、挿入可能計器は、光ファイバ束を有するカテーテル、カテーテル先端を通じた生検鉗子、生理食塩水、空気等の通過を可能にする1つ以上の「作業チャネル」とすることができる。別の例では、挿入可能計器は、多数の光学レンズが入っている管(ボアスコープ)とすることもできる。一般に、挿入可能計器は、光ファイバ束またはレンズを通じて発光器または受光器に結合されるが、これについては以下で更に詳しく説明する。したがって、挿入可能計器は、被験者内部の光学的視野(view)を提供するシステムの一部となることができる。ここで用いる場合、光ファイバ束の「遠端」とは、挿入可能計器から最も離れた束の端部であり、光ファイバ束の「近端」とは、挿入可能計器に最も近い束の端部である。また、挿入可能計器は、合焦エレメントおよび記録エレメント全体が被験者の内部にあるデバイス、例えば、記録デバイスを合焦エレメントに直接取り付けたハンド・ヘルド・デバイスにも言及することができる。」
d 「【0035】
これより図1を参照すると、撮像システム10は、光ファイバ14を通じて挿入可能計器11に結合されている受光部12を含むことができる。受光部12は、光ファイバ14から光18を受光するように光学的に結合されている。受光部12は、1つ以上の受光レンズ、例えば、レンズ16を含むことができる。レンズ16は、光ファイバ14と光分割エレメント20との間に光学的に結合されている。光分割エレメント20は、ダイクロイック・ミラーまたはプリズムの形態とすることができるが、これに限定されるのではない。また、受光部12は、光分割エレメント20と光ファイバ26との間に光学的に結合されている別のレンズ24も含むことができる。電荷結合デバイス(CCD)28を光ファイバ26に光学的に結合することができる。更にまた、受光部12は、光分割エレメント20と別の電荷結合デバイス34との間に光学的に結合されている更に別のレンズ32も含むことができる。」
e 「【0038】
受光部12の動作において、電荷結合デバイス(CCD)28は画像データ36(画素強度値を含むことができる)を発生する。画像データ36は、例えば、蛍光光の画像と関連のある蛍光光画像データとすることができる。動作において、電荷結合デバイス34は画像データ38を発生し、例えば、画像データ38は、励起光の画像と関連のある励起光画像データとすることができる。
【0039】
受光部12は、撮像プロセッサ40に結合されている。撮像プロセッサ40は、画像データ36と画像データ38とを組み合わせて、「補正」画像データ58を発生するように構成されている。「補正」画像データ58は、撮像しようとする生物組織に対する挿入可能計器11の移動の結果生ずる、少なくとも前述の可変強度に関して補正されている。尚、CCD16、28各々は、それぞれの捕獲時間および露出時間が異なることが可能であることは認められよう。更に、個々の画像の各々は、それぞれの捕獲時間および露出時間が異なることも可能である。したがって、比較が行われる前の中間処理をせずに画像データ36が表す画像を画像データ38が表す画像と直接比較することは、可能でない場合もある。中間処理および画像の比較または合体については、図3、図6、および図6Aに関連付けて以下で説明する。
【0040】
また、撮像プロセッサ40は、補正画像データ58を表示デバイス60に伝達するように構成されている。補正画像データ58は、実質的に画像データ36、38の発生と同時に、電荷結合デバイス28、34によって発生することができ、その結果、表示デバイス60上にリアル・タイム表示が得られる。
・・・
【0042】
更に、撮像システム10は、光ファイバ54を通じて挿入可能計器11に結合されている光発信器42も含むことができる。構成の中には、2本の光ファイバ14、54を1つの光ファイバ束56の中に一緒に配することができる場合もある。構成の中には、光ファイバ14、54の一方または双方を、複数の光ファイバで構成できる場合もある。
・・・
【0044】
光発信器42は、撮像プロセッサ40に光学的に結合されている励起光源46を含むことができる。また、光発信器42は、光ファイバ50も含むことができる。光ファイバ50は、レンズ52と励起光源46との間を光学的に結合することができる。レンズ52は、光ファイバ54に光学的に結合することができる。特定的な一実施形態では、励起光源は、300ワットのキセノン・ランプ(Sunoptics, Jacksonvill, FL)とすることができ、光ファイバ50は、680nm長の通過フィルタ(pass filter)とすることができる。このフィルタは熱出力を減少させ、偽陽性(false-positive)蛍光光信号を減少させるのに役立つ。」
上記a~eの記載事項から、以下、fの事項が導かれる。
f 段落【0039】には、「補正」画像データ58は、撮像しようとする生物組織に対する挿入可能計器11の移動の結果生ずる、少なくとも前述の可変強度に関して補正されている。」と記載されており、当該記載の「前述の可変強度」に関して、段落【0009】には、「画像捕獲中における挿入可能計器の距離および角度が変動する可能性があるために、組織に進行する励起光および挿入可能計器に逆行する放出光双方について、画像フレーム毎に光路が変化する可能性がある。光路が異なると、画像記録デバイスにおいて、光のレベルが異なってしまい、最終的に画像をリアル・タイムで収集する際に各画像における信号強度が変動する可能性がある。」との記載があるから、段落【0039】の上記記載における「前述の可変強度」が励起光の可変強度を含むものであり、「少なくとも前述の可変強度に関」する「補正」が、励起光の可変強度に関する補正を含むものであることは、明らかである。
また、段落【0039】に記載の「「補正」画像データ58」が、段落【0040】に記載の「補正画像データ58」と同じものを意味することは、明らかである。
以上より、引用文献1には、補正画像データ58は、撮像しようとする生物組織に対する挿入可能計器11の移動の結果生ずる、励起光の可変強度に関して補正されているものである点が記載されているといえる。
(イ)引用文献1に記載された発明
上記(ア)a~eの記載事項及びfの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「a 光ファイバ14を通じて挿入可能計器11に結合されている受光部12を有し、受光部12は、蛍光光画像データである画像データ36を発生する電荷結合デバイス(CCD)28と、励起光画像データである画像データ38を発生する電荷結合デバイス34とを含み、(段落【0035】、【0038】)
b 撮像プロセッサ40であって、(段落【0039】)
c 受光部12に結合されており、(段落【0039】)
d 画像データ36と画像データ38とを組み合わせて、補正画像データ58を発生するように構成されており、補正画像データ58は、撮像しようとする生物組織に対する挿入可能計器11の移動の結果生ずる、生物組織から蛍光を励起する励起光の可変強度に関して補正されているものであり、(段落【0009】、【0023】、【0039】、認定事項f)
e 補正画像データ58を表示デバイス60に伝達するように構成されている、撮像プロセッサ40と、(段落【0040】)
f 補正画像データ58をリアル・タイム表示する表示デバイス60と、を有し、(段落【0040】)
j 挿入可能計器11は内視鏡であり、(段落【0028】)
k 光ファイバ54を通じて挿入可能計器11に結合されている光発信器42を含み、光発信器42は励起光源46を含む、(段落【0042】、【0044】)
l 撮像システム10(段落【0035】)」
イ 周知技術を示す文献
(ア)引用文献3
原査定の拒絶の理由で、周知技術を示す文献である引用文献3として引用された特開2008-229025号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
a 「【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る蛍光観察装置1について、図1~図4を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る蛍光観察装置1は、図1に示されるように、内視鏡装置であって、体腔内に挿入される細長い挿入部2と、該挿入部2の先端(励起光出射端)から出射する励起光L1および参照光L2を発生する光源ユニット3と、前記挿入部2内に配置され、励起光L1が照射されることにより体腔内の観察対象部位Xから発生した蛍光および観察対象部位Xの表面における参照光L2の反射光を検出する検出ユニット4と、該検出ユニット4により取得された蛍光画像を参照光画像に基づいて補正する画像処理ユニット5と、該画像処理ユニット5により補正された蛍光画像を表示するモニタ6とを備えている。」
b 「【0031】
前記補正部27は、上記のようにして算出された各画素に対応する観察対象部位Xの各位置と拡散レンズ10との距離Lと前記角度θとを用いて補正係数k=L2/cosθを算出し、これを蛍光画像生成部23により生成された蛍光画像の各画素の輝度値に乗算するようになっている。
すなわち、観察対象部位Xに照射される励起光L1の強度は、拡散レンズ10の中心から観察対象部位Xの各位置までの距離Lの2乗に反比例し、距離Lが長くなるほど低くなる。また、観察対象部位Xの表面の各位置における角度θが大きくなるほど取得される蛍光強度は低くなる。したがって、上記補正係数kを乗算することにより、距離Lおよび角度θによる影響を除外して、発せられる蛍光強度を規格化することができる。
【0032】
その結果、腫瘍等の病変部に特異的に集積する蛍光プローブからの蛍光を検出する場合等において、病変部が存在するために明るく光っている蛍光が、励起光L1の拡散レンズ10からの距離Lが長かったり、励起光L1の照射方向に対して傾斜していたりするために暗くなり、正常部と判別することができなくなってしまう不都合を防止して、病変部を精度よく診断する診断能を向上することができる。」
(イ)引用文献4
原査定の拒絶の理由で、周知技術を示す文献である引用文献4として引用された特開平10-108831号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
a 「【0002】
【従来の技術】従来より、生体内部を観察したり、また観察しながら治療するために、内視鏡が広く用いられている。この内視鏡を使用して生体内部を観察するために、通常、生体外部に配された照明光源から発せられた光を可撓性の導入管に収納された光ファイバよりなるライトガイドを介して生体内に導き観察部を照射する。通常像撮像手段が、この観察部で反射した照明光により観察部の通常像を撮像し、この撮像手段の出力をCRT等よりなる画像表示手段に表示する。そこで術者は、この画像表示手段に表示された通常像を参考にして生体内部における観察部の診断を行うことができる。」
b 「【0005】これら内視鏡や蛍光診断装置(以下、「内視鏡装置」という)を使用して治療操作を行う場合には、観察部の腫瘍部分の位置を特定するため生体内部に挿入された内視鏡先端部の生体での位置を正確に把握したいという要求がある。通常は、内視鏡装置の導入管の挿入長さに基づいて観察部の位置を特定しており、術者の経験を必要としている。
【0006】ところで、生体の部位には凹凸が有り、照明光照射系や励起光照射系から観察部までの距離が均一ではない事と照射光の光軸に対し生体の部位との角度が一定でないために、観察部における光の照度は一般に不均一である。このように光の照度が不均一であると、光の照度の高低に応じて反射光や蛍光の強度が変化するので、画像表示手段に表示される通常像や蛍光像は観察部の状態を正確に表わしたものとはならず、観察部の腫瘍部分の診断を誤ることもあり得る。」
c 「【0026】内視鏡20は可撓性を有する導入管20aを有しており、この導入管20aの先端部が生体50の内部の観察部52の近傍まで挿入されている。励起光L1が制御装置10を構成する励起光用光源12から発せられ、ライトガイド13を介して内視鏡20へ導かれ、さらに導入管20aに納められたライトガイド(図示せず)を介して導入管20aの先端の励起光照射部まで導かれ、観察部52を照射する。導入管20aの先端部には、励起光L1が照射されたことにより観察部52から発せられる蛍光を検出して蛍光像を撮像する蛍光像撮像手段(図示せず)が配設されており、この蛍光像撮像手段が蛍光像を示す蛍光映像信号S1を出力する。蛍光映像信号S1は、導入管20aを介して生体外に導かれ制御装置10を構成する画像処理装置14へ入力される。
【0027】一方、X線源32およびX線検出器34が、生体50の内部の観察部52および導入管20aの先端の励起光照射部を断層観察し得るように、X線CT装置本体30からの制御信号S6に基づいて移動可能なように生体50を中心に対向して配設されている。X線検出器34は、X線源32より発せられたX線のうち生体50を透過した成分を検出するものであり、X線検出器34の出力S5がX線CT装置本体30に入力されている。X線CT装置本体30は、測定データD1を制御装置10を構成する演算装置16へ出力するとともに、生体50の内部の観察部52および導入管20aの先端部の励起光照射部の断層像を示すCT像映像信号S7をCT画像表示装置42へ出力する。
【0028】演算装置16は、演算結果である照度分布データD2を画像処理装置14へ出力し、画像処理装置14が、強度補正された蛍光像映像信号S3を画像表示装置40へ出力する。
【0029】なお、導入管20aの先端の励起光照射部における励起光L1の照射特性データD3が、あらかじめ測定されており、演算装置16を構成する記憶素子(図示せず)に記憶されている。」
d 「【0032】一方、X線CT装置本体30は、制御信号S6によりX線源32およびX線検出器34を少しずつ移動させつつ、X線源32から生体50にX線を照射しながら、生体50を透過したX線をX線検出器34により検出することにより、生体50の内部の観察部52および導入管20aの先端部の励起光照射部の断層像(CT像)を撮像する。このようなX線CT装置により、生体50を輪切りするようにCT像を何枚も撮像することによって、生体50の内部の観察部52および導入管20aの先端部の励起光照射部を立体的に観察し得るようになる。従って、それぞれのCT像とX線源32およびX線検出器34の移動距離から、演算処理によって生体50の内部の観察部52と導入管20aの先端部の励起光照射部との距離と傾き、および観察部52の形状を測定することができる。この演算処理は通常X線CT装置本体30の一部を構成するコンピュータにより行うことができる。また、後述の演算装置16によって行うことも可能である。この場合は、前記CT像を示す信号および前記X線源32およびX線検出器34の移動距離を示すデータを演算装置16へ入力させればよい。
【0033】X線CT装置により得られる生体50の内部の観察部52と導入管20aの先端部の励起光照射部との距離と傾き、および観察部52の形状の測定データD1は演算装置16へ入力される。演算装置16は、測定データD1中の距離のデータおよび導入管20aの先端部の励起光照射部における励起光L1の照射特性データD3に基づいて、観察部52における励起光照度分布を以下のように解析し、照度分布データD2を算出する。励起光L1の照射特性データD3はあらかじめ測定されており、観察部52が平坦であれば励起光L1の照射特性データD3がそのまま観察部52の励起光照度分布として与えられる。しかし、一般には、観察部52は平坦ではなく凹凸を有する。この場合は、励起光の観察部52へ照射される励起光密度は距離の2乗に反比例することが知られており、観察部52と導入管20aの先端部の励起光照射部との距離のデータD1と、励起光L1の照射特性のデータD3より、観察部52の励起光照度分布を演算により算出することができる。従って、観察部52における照度分布データD2が正確に求められる。蛍光像は、励起光の強度にほぼ比例することは周知である。画像処理装置14は、この照度分布データD2に基づき蛍光像映像信号S1に対して強度補正を行い、強度補正のされた蛍光像映像信号S3を画像表示装置40へ入力する。これにより、観察部52における励起光の照度分布の不均一性に起因する蛍光強度のむらが除去され、精度の良い蛍光画像を画像表示装置40に表示することができる。また、X線CT装置により得られる観察部52のCT像が、X線CT装置本体30よりCT像映像信号S7としてCT画像表示装置42に入力されCT像が表示されているため、同時に表示されたCT像と蛍光像とを比較することができ、一層精度の良い診断が可能となる。従って、この内視鏡装置を生体内部の腫瘍の診断、治療に使用することにより、診断の精度を向上させることができ、術者は、これら表示画像を参考にして腫瘍の浸潤範囲を把握し、適切な切除範囲を決定し切除することができる。」
(ウ)周知技術
上記(ア)、(イ)の記載から、以下の技術的事項は、本願優先日前における周知技術であると認められる(以下の技術的事項を、以下「周知技術1」という。)。
「励起光の強度により正規化された蛍光画像を生成する内視鏡において、
励起光の放射部からの距離等から観察対象部位に照射される励起光の強度に関する情報を算出するための計算式等の情報を有しており、
観察対象部位と、励起光の放射部との間の距離等の情報を取得し、
取得した観察対象部位と励起光の放射部との間の距離等の情報と、励起光の放射部からの距離等から観察対象部位に照射される励起光の強度に関する情報を算出するための計算式等の情報とを用いて、観察対象部位に照射される励起光の強度に関する情報を算出する点。」
(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 構成Aについて
引用発明の「蛍光光画像データである画像データ36」及び「電荷結合デバイス(CCD)28」は、それぞれ、本件補正発明の「蛍光の量を表す第1の量を示す情報」及び「第1の画像センサ」に相当する。
また、「光ファイバ14を通じて挿入可能計器11に結合されている受光部12」が含む「電荷結合デバイス(CCD)28」が「発生」させる「蛍光光画像データである画像データ36」が、「挿入可能計器11」による観察対象の部分から放射される蛍光を撮像したものであることは、明らかである。
よって、構成aは、構成Aと、観察対象「の部分から放射される蛍光の量を表す第1の量を示す情報を感知するように構成される第1の画像センサ」を有する点で共通する。
イ 構成Bについて
引用発明の「撮像プロセッサ40」は、「画像データ36と画像データ38とを組み合わせて、補正画像データ58を発生する」ものであるから、レンダリングエンジンであるといえる。また、「撮像プロセッサ40」は、プロセッサとして機能するための少なくとも1つの処理装置を含むものであることは、明らかである。
よって、引用発明の「撮像プロセッサ40」は、本件補正発明の「1つ又は複数の処理装置を含むレンダリングエンジン」に相当する。
ウ 構成Cについて
引用発明の「生物組織から蛍光を励起する励起光」は、本件補正発明の「前記手術シーンの前記部分から前記蛍光を放射させる励起シグナル」と、観察対象「の前記部分から前記蛍光を放射させる励起シグナル」である点で共通する。
そして、引用発明の「励起光画像データである画像データ38」は、「励起光」の量を画像として表す情報であるといえるから、本件補正発明の「前記手術シーンの前記部分から前記蛍光を放射させる励起シグナルの量を表す第2の量を示す情報」と、観察対象「の前記部分から前記蛍光を放射させる励起シグナルの量を表す第2の量を示す情報」である点で共通する。
また、引用発明において、「撮像プロセッサ40」は、「受光部12に結合されており」、「画像データ36と画像データ38とを組み合わせて、補正画像データ58を発生する」ものであるから、「励起光画像データである画像データ38を発生する電荷結合デバイス34」を含むものである「受光部12」から、「画像データ38」を得て、「補正画像データ58」の発生に用いていることは、明らかである。
よって、引用発明は、構成Cと、「レンダリングエンジン」が観察対象「の前記部分から前記蛍光を放射させる励起シグナルの量を表す第2の量を示す情報を得る」ものである点で共通する。
エ 構成Dについて
上記ア、ウで示したとおり、引用発明の「画像データ36」及び「画像データ38」は、本件補正発明の「第1の量を示す情報」及び「第2の量を示す情報」に相当する。
また、引用発明の「補正画像データ58」は、「撮像しようとする生物組織に対する挿入可能計器11の移動の結果生ずる、生物組織から蛍光を励起する励起光の可変強度に関して補正」されたものとなるように、「画像データ36と画像データ38とを組み合わせて」発生させたものであるから、「励起光画像データである」「画像データ38」に基づいて、正規化されたものであるといえる。
よって、引用発明において、「撮像しようとする生物組織に対する挿入可能計器11の移動の結果生ずる、生物組織から蛍光を励起する励起光の可変強度に関して補正されているものであ」る「補正画像データ58」を、「画像データ36と画像データ38とを組み合わせて」「発生する」ことは、本件補正発明において、「前記第1の量及び前記第2の量の関数として正規化された蛍光シグナルを生成する」ことに相当する。
オ 構成Eについて
引用発明において、「表示デバイス60に伝達」される「補正画像データ58」は、「表示デバイス60」において「リアル・タイム表示」されるものであるから、視覚的表現として生成されたものといえる。
よって、引用発明において、「補正画像データ58を表示デバイス60に伝達するように構成されている」ことは、本件補正発明において、「前記正規化された蛍光シグナルに基づいて前記手術シーンの前記部分の視覚的表現を生成する」ことと、「前記正規化された蛍光シグナルに基づいて」観察対象「の前記部分の視覚的表現を生成する」ことである点で共通する。
カ 構成Fについて
引用発明において、「補正画像データ58をリアル・タイム表示する」こと、及び「表示デバイス60」は、それぞれ、本件補正発明の「前記視覚的表現を提示する」こと、及び「ディスプレイ装置」に相当する。
よって、引用発明の「補正画像データ58をリアル・タイム表示する表示デバイス60」は、本件補正発明の「前記視覚的表現を提示するように構成されたディスプレイ装置」に相当する。
キ 構成Jについて
引用発明において、「電荷結合デバイス(CCD)28」は、「光ファイバ14を通じて挿入可能計器11に結合されている受光部12」が含むものであるから、「電荷結合デバイス(CCD)28」は「挿入可能計器11に結合され」一体となっているものであり、また、「挿入可能計器11」とともに「蛍光光画像データ」を取得する「内視鏡」としての機能を発揮するものといえる。そうすると、「電荷結合デバイス(CCD)28」および「挿入可能計器11」を含む装置が「内視鏡」である、すなわち、「電荷結合デバイス(CCD)28」は「内視鏡」の一部であって「内視鏡」に含まれるものであるといえる。
よって、引用発明において、「挿入可能器11は内視鏡であり」、「光ファイバ14を通じて挿入可能計器11に結合されている受光部12を有し、受光部12は、蛍光光画像データである画像データ36を発生する電荷結合デバイス(CCD)28」を含むことは、本件補正発明において、「前記第1の画像センサは、内視鏡の一部として含まれ」ることに相当する。
ク 構成Kについて
引用発明において、「光ファイバ54を通じて挿入可能計器11に結合されている光発信器42を含み、光発信器42は励起光源46を含む」から、「励起光源46」が発する励起シグナルが、「挿入可能計器11」から放射されることは、明らかである。
さらに、通常、内視鏡は、その遠位端部から観察対象部位の観察や光の照射等を含む内視鏡としての動作を行うものであるから、引用発明において、「内視鏡であ」る「挿入可能計器11」が、その遠位端部から励起シグナルを放射するものであることも、明らかである。
よって、引用発明において、「挿入可能計器11は内視鏡であり、」「光ファイバ54を通じて挿入可能計器11に結合されている光発信器42を含み、光発信器42は励起光源46を含む」ことは、本件補正発明において、「前記励起シグナルは前記内視鏡の遠位端部から放射される」ことに相当する。
ケ 構成Lについて
引用発明の「撮像システム10」は、本件補正発明の「イメージングシステム」に相当する。
(4)一致点、相違点
上記(3)のとおりであるから、本件補正発明と引用発明とは、下記アの点で一致し、下記イ~ウの点で相違する。
ア 一致点
「A’ 観察対象の部分から放射される蛍光の量を表す第1の量を示す情報を感知するように構成される第1の画像センサと;
B 1つ又は複数の処理装置を含むレンダリングエンジンであって:
C’ 前記観察対象の前記部分から前記蛍光を放射させる励起シグナルの量を表す第2の量を示す情報を得る、
D 前記第1の量及び前記第2の量の関数として正規化された蛍光シグナルを生成する、及び
E’ 前記正規化された蛍光シグナルに基づいて前記観察対象の前記部分の視覚的表現を生成する、
ように構成される、レンダリングエンジンと;
F 前記視覚的表現を提示するように構成されたディスプレイ装置と;
を有し、
J 前記第1の画像センサは、内視鏡の一部として含まれ、
K 前記励起シグナルは前記内視鏡の遠位端部から放射される、
L イメージングシステム。」
イ 相違点1(構成A、C、E)
本件補正発明は、「手術シーンの部分から放射される蛍光の量を表す第1の量」(構成A)、「前記手術シーンの前記部分から前記蛍光を放射させる励起シグナルの量を表す第2の量」(構成C)及び「前記手術シーンの前記部分の視覚的表現を生成する」(構成E)と特定されているのに対し、引用発明は、「撮像システム10」の観察対象の部位が、「手術シーン」であるとは特定されていない点。
ウ 相違点2(構成G、H、L)
レンダリングエンジンにおける第2の量の決定に関し、本件補正発明は、
「G 前記レンダリングエンジンは:
前記励起シグナルのソースに関連する深度マップにアクセスし、前記深度マップは、前記ソースからの空間的分離の関数として、前記励起シグナルの強度変動に関する情報を提供し;
H 前記手術シーンの前記部分と前記励起シグナルの前記ソースとの間の空間的分離に関する情報を表すデータを受信し;
I (i)前記手術シーンの前記部分と前記ソースとの間の前記空間的分離、及び(ii)前記深度マップに基づいて前記第2の量を決定する;
ように構成され」
ると特定されているのに対し、引用発明の「撮像プロセッサ40」(レンダリングエンジン)は、上記構成とは異なる第2の量の決定を行う点。
(5)相違点について
ア 相違点1
本件補正発明は、方法の発明ではなく、「イメージングシステム」についての物の発明である。そして、本件補正発明における「手術シーン」は、「イメージングシステム」の観察対象の部位を特定する事項であって、「イメージングシステム」自体の機能、構造等を直接特定する事項ではない。
また、引用発明の「撮像システム10」は、手術を行う際に、「内視鏡であ」る「挿入可能計器11」により、手術シーンを観察するように用いることができるといえるから、本件補正発明の「手術シーンの部分から放射される蛍光の量を表す第1の量」(構成A)、「前記手術シーンの前記部分から前記蛍光を放射させる励起シグナルの量を表す第2の量」(構成C)及び「前記手術シーンの前記部分の視覚的表現を生成する」(構成E)との特定事項に関して、引用発明と本件補正発明とに「イメージングシステム」としての差異があるとは認められない。
よって、相違点1は、実質的な相違点ではない。
また、仮に実質的な相違点であると解釈したとしても、例えば引用文献4には、「従来より、生体内部を観察したり、また観察しながら治療するために、内視鏡が広く用いられている。」(段落【0002】)、「これら内視鏡や蛍光診断装置(以下、「内視鏡装置」という)を使用して治療操作を行う」(段落【0005】)と記載されているように、手術の際に内視鏡による観察を行うことは、本願の優先日前において慣用されている技術であるから、引用発明の「撮像システム10」を、手術の際に手術シーンを撮像するように用いるものとし、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易想到し得たことである。
イ 相違点2
(ア)上記(2)イ(ウ)で示したとおり、以下の技術的事項は、周知技術であると認められる。
「励起光の強度により正規化された蛍光画像を生成する内視鏡において、
励起光の放射部からの距離等から観察対象部位に照射される励起光の強度に関する情報を算出するための計算式等の情報を有しており、
観察対象部位と励起光の放射部との間の距離等の情報を取得し、
取得した観察対象部位と励起光の放射部との間の距離等の情報と、励起光の放射部からの距離等から観察対象部位に照射される励起光の強度に関する情報を算出するための計算式等の情報とを用いて、観察対象部位に照射される励起光の強度に関する情報を算出する点。」(周知技術1)
(イ)周知技術1において、「励起光」、「励起光の放射部からの距離等」及び「観察対象部位に照射される励起光の強度に関する情報」は、それぞれ、本件補正発明の「励起シグナル」、「空間的分離」及び「励起シグナルの強度変動に関する情報」に相当する。
そして、周知技術1において、「励起光の放射部からの距離等から観察対象部位に照射される励起光の強度に関する情報を算出するための計算式等の情報」は、「励起光の放射部からの距離等」から「観察対象部位に照射される励起光の強度に関する情報」を算出できるものであるから、「励起光の放射部からの距離等」の関数として、「観察対象部位に照射される励起光の強度に関する情報」を提供するものといえる。
よって、周知技術1において、「励起光の放射部からの距離等から観察対象部位に照射される励起光の強度に関する情報を算出するための計算式等の情報」は、本件補正発明における、「前記ソースからの空間的分離の関数として、前記励起シグナルの強度変動に関する情報を提供」するものである「深度マップ」に相当する。
以上より、周知技術1は、本件補正発明における、「前記励起シグナルのソースに関連する深度マップにアクセスし、前記深度マップは、前記ソースからの空間的分離の関数として、前記励起シグナルの強度変動に関する情報を提供し」、観察対象の「前記部分と前記励起シグナルの前記ソースとの間の空間的分離に関する情報を表すデータを受信し」、観察対象「の前記部分と前記ソースとの間の前記空間的分離、及び」「前記深度マップに基づいて前記第2の量を決定する」ことに相当する構成を有しているといえる。
(ウ)引用発明と周知技術1とは、励起光の強度により正規化された蛍光画像を生成する内視鏡である点で共通するものである。
また、引用発明における、「励起光画像データである画像データ38」と、周知技術1における「観察対象部位に照射される励起光の強度に関する情報」とは、正規化の際に用いる励起光の強度の情報を含むものである点で、共通するものである。
そうすると、引用発明において、「撮像プロセッサ40」が「生物組織から蛍光を励起する励起光の可変強度に関して補正」する際に用いる第2の量を、「励起光画像データである画像データ38」に代えて、周知技術1の構成を採用することにより、励起シグナルのソースに関連する深度マップにアクセスし、深度マップは、ソースからの空間的分離の関数として、励起シグナルの強度変動に関する情報を提供し、観察対象の部分と励起シグナルのソースとの間の空間的分離に関する情報を表すデータを受信し、観察対象の部分とソースとの間の空間的分離、及び深度マップに基づいて決定したものとし、上記相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(6)効果について
本件補正発明により奏される効果も、引用発明及び周知技術1から当業者が予期し得るものであり、格別顕著なものではない。
(7)請求人の主張について
請求人は、令和6年8月1日提出の審判請求書において、
「引用文献1乃至4には、いずれも、請求項1に係る発明の「前記励起シグナルは、前記内視鏡の遠位端部から放射される」点に対応する構成、請求項6の「前記励起シグナルは前記内視鏡の遠位端部から放射される」点に対応する構成の開示や示唆が全くなされていません。
したがって、請求項1、6に係る発明は、後知恵なしに引用文献1、3、4又は引用文献2-4に基づいて容易に想到できたと論理付けすることはできず、請求項1、6に係る発明は進歩性を有し、理由2には該当しないものと思量致します。」
との主張をしているので、以下検討する。
上記(3)クで示したとおり、引用発明において、「励起光源46」が発する励起シグナルが、「内視鏡であ」る「挿入可能計器11」の遠位端部から放射されることは、明らかである。
また、仮に、引用発明において、「励起光源46」が発する励起シグナルが、「内視鏡であ」る「挿入可能計器11」の遠位端部から放射されることが明らかであるとまではいえないとしても、内視鏡は、一般的にその遠位端部から観察対象部位の観察等の内視鏡としての動作を行うものであり、観察対象部位を蛍光観察するのに用いる励起光は、観察対象部位になるべく近いところから照射するべきであることは、内視鏡の分野における当業者において、技術常識であるから、引用発明において、「励起光源46」が発する励起シグナルが、「内視鏡であ」る「挿入可能計器11」の遠位端部から放射されるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。
(8)小括
以上より、本件補正発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正却下の決定についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~14に係る発明は、令和6年1月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に示した請求項6の記載により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
理由2(進歩性)この出願の請求項6に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2009-542415号公報
引用文献3:特開2008-229025号公報
引用文献4:特開平10-108831号公報
3 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、3、4の記載事項、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び引用文献から認定される周知技術1は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
(1)本願発明は、上記第2の[理由]2で独立特許要件の検討をした本件補正発明から、「前記第1の画像センサは、内視鏡の一部として含まれ」るとの発明特定事項、及び、「前記励起シグナルは前記内視鏡の遠位端部から放射される」との発明特定事項を削除して拡張したものである。
(2)本願発明と引用発明との対比は、上記第2の[理由]2(3)で示したとおりである。
そして、本願発明は、本件補正発明から上記(1)で示した発明特定事項を削除して拡張したものであるから、上記第2の[理由]2(4)及び(5)で検討したのと同様の理由により、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-012548