特許拒絶査定不服審判
2024-009254
吸収性物品
- 審判番号
- 2024-009254
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-220057外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年06月04日
- 審決日
- 2026年04月17日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ユニ・チャーム株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人一色国際特許事務所
- 分類
- P18 .575-Z (A61F) / P18 .121-Z (A61F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第46条、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-220057「吸収性物品」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月16日出願公開、特開2020- 58768〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、出願日が平成30年10月12日である実願2018-3949号を特許法46条1項の規定により同年11月26日に特許出願に変更したものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 7月 8日付け:拒絶理由通知
同年 9月15日 :意見書及び手続補正書の提出
同年12月 1日付け:拒絶理由通知(最後)
令和5年 1月25日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 5月 2日付け:拒絶理由通知
同年 7月 4日 :意見書及び手続補正書の提出
同年10月11日付け:拒絶理由通知
同年12月 7日 :意見書及び手続補正書の提出
令和6年 3月12日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月19日 :原査定の謄本の送達)
同年 6月 4日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和6年6月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年6月4日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年6月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についての補正を含むものであり、この補正により、次の(1)に示す本件補正前の請求項1が、後記の(2)に示す本件補正後の請求項1に補正された。下線は、補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
吸収性本体と、前記吸収性本体の厚さ方向に重ねて配置された外装体と、を有する吸収性物品であって、
前記外装体は、着用者の脚回りに沿って湾曲した一対の切り欠き部を有し、
少なくとも一部が前記切り欠き部に沿う脚回り弾性部材としての糸ゴムを有し、
前記吸収性物品を展開した状態において、互いに交差する長手方向と幅方向とを有し、
前記切り欠き部は、前記長手方向において、中央よりも背側に位置する背側切り欠き部と、前記中央よりも腹側に位置する腹側切り欠き部とを有し、
前記外装体の前記幅方向の両端部にて前記外装体の対向する面同士を接合する一対のサイドエッジ部を有しており、
前記糸ゴムは、前記長手方向における、前記背側切り欠き部に対応する領域において、前記背側切り欠き部に沿って連続的に設けられた連続部分を有しており、
前記糸ゴムは前記連続部分を二つ備え、二つの前記連続部分は、前記吸収性物品の前記幅方向の中心線を基準として左右対称な位置に配置されており、
前記糸ゴムは、前記長手方向における、前記腹側切り欠き部の少なくとも一部に対応する領域において、前記腹側切り欠き部に沿った部分を有しておらず、
前記長手方向における、前記腹側切り欠き部に対応する領域において、前記幅方向に沿って腰回り弾性部材が設けられた弾性領域と、前記弾性領域よりも前記背側の領域に位置し前記腰回り弾性部材が設けられていない非弾性領域とを有しており、
前記展開した状態において、且つ、前記長手方向において、前記非弾性領域のうちの、前記糸ゴムが設けられていない領域の長さは、前記サイドエッジ部の前記背側の端から前記弾性領域の前記背側の端までの長さよりも長い、ことを特徴とする吸収性物品。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
吸収性本体と、前記吸収性本体の厚さ方向に重ねて配置された外装体と、を有する吸収性物品であって、
前記外装体は、着用者の脚回りに沿って湾曲した一対の切り欠き部を有し、
少なくとも一部が前記切り欠き部に沿う脚回り弾性部材としての糸ゴムを有し、
前記吸収性物品を展開した状態において、互いに交差する長手方向と幅方向とを有し、
前記切り欠き部は、前記長手方向において、中央よりも背側に位置する背側切り欠き部と、前記中央よりも腹側に位置する腹側切り欠き部とを有し、
前記外装体の前記幅方向の両端部にて前記外装体の対向する面同士を接合する一対のサイドエッジ部を有しており、
前記糸ゴムは、前記脚回り弾性部材として配置された糸ゴムのうちの、一本のある糸ゴムであり、
前記ある糸ゴムは、前記長手方向における、前記背側切り欠き部に対応する領域において、前記背側切り欠き部に沿って連続的に設けられた連続部分を有しており、
前記ある糸ゴムは前記連続部分を二つ備え、二つの前記連続部分を含む前記ある糸ゴムは、前記吸収性物品の前記幅方向の中心線を基準として左右対称な位置に配置されており、
前記ある糸ゴムは、前記長手方向における、前記腹側切り欠き部の少なくとも一部に対応する領域において、前記腹側切り欠き部に沿った部分を有しておらず、
前記長手方向における、前記腹側切り欠き部に対応する領域において、前記幅方向に沿って腰回り弾性部材が設けられた弾性領域と、前記弾性領域よりも前記背側の領域に位置し前記腰回り弾性部材が設けられていない非弾性領域とを有しており、
前記展開した状態において、且つ、前記長手方向において、前記非弾性領域のうちの、前記ある糸ゴムが設けられていない領域の長さは、前記サイドエッジ部の前記背側の端から前記弾性領域の前記背側の端までの長さよりも長く、
前記長手方向において、前記ある糸ゴムの前記背側の端は、前記サイドエッジ部の中央よりも前記腹側に位置する、ことを特徴とする吸収性物品。」
2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の「外装体」が有する「脚回り弾性部材としての糸ゴム」が、「脚回り弾性部材として配置された糸ゴムのうちの、一本のある糸ゴム」であると限定するとともに、「前記長手方向において、前記ある糸ゴムの前記背側の端は、前記サイドエッジ部の中央よりも前記腹側に位置する」として、「糸ゴム」の「背側の端」の位置を限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
前記2のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
イ 本件補正発明の分説
本件補正発明の構成を、後記(3)の対比の議論のために、便宜上次のように構成A~M、Xに分説する。
<本件補正発明の分説>
(構成A)吸収性本体と、前記吸収性本体の厚さ方向に重ねて配置された外装体と、を有する吸収性物品であって、
(構成B)前記外装体は、着用者の脚回りに沿って湾曲した一対の切り欠き部を有し、
(構成C)少なくとも一部が前記切り欠き部に沿う脚回り弾性部材としての糸ゴムを有し、
(構成D)前記吸収性物品を展開した状態において、互いに交差する長手方向と幅方向とを有し、
(構成E)前記切り欠き部は、前記長手方向において、中央よりも背側に位置する背側切り欠き部と、前記中央よりも腹側に位置する腹側切り欠き部とを有し、
(構成F)前記外装体の前記幅方向の両端部にて前記外装体の対向する面同士を接合する一対のサイドエッジ部を有しており、
(構成G)前記糸ゴムは、前記脚回り弾性部材として配置された糸ゴムのうちの、一本のある糸ゴムであり、
(構成H)前記ある糸ゴムは、前記長手方向における、前記背側切り欠き部に対応する領域において、前記背側切り欠き部に沿って連続的に設けられた連続部分を有しており、
(構成I)前記ある糸ゴムは前記連続部分を二つ備え、二つの前記連続部分を含む前記ある糸ゴムは、前記吸収性物品の前記幅方向の中心線を基準として左右対称な位置に配置されており、
(構成J)前記ある糸ゴムは、前記長手方向における、前記腹側切り欠き部の少なくとも一部に対応する領域において、前記腹側切り欠き部に沿った部分を有しておらず、
(構成K)前記長手方向における、前記腹側切り欠き部に対応する領域において、前記幅方向に沿って腰回り弾性部材が設けられた弾性領域と、前記弾性領域よりも前記背側の領域に位置し前記腰回り弾性部材が設けられていない非弾性領域とを有しており、
(構成L)前記展開した状態において、且つ、前記長手方向において、前記非弾性領域のうちの、前記ある糸ゴムが設けられていない領域の長さは、前記サイドエッジ部の前記背側の端から前記弾性領域の前記背側の端までの長さよりも長く、
(構成M)前記長手方向において、前記ある糸ゴムの前記背側の端は、前記サイドエッジ部の中央よりも前記腹側に位置する、
(構成X)吸収性物品。
(2) 各引用文献等に記録された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2003-284736号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は、当審において付したものであり、以下同様である。
a 【0007】~【0010】
「【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の使い捨て紙おむつでは、背側腰回り部、或いは腹側腰回り部に腰回り用弾性体があまり配設されておらずこの使い捨て紙おむつが幅方向に伸縮しないため、この使い捨て紙おむつを装着する際に、背側腰回り部、或いは腹側腰回り部により使用者の身体を締め付けすぎて圧迫するおそれがある。
【0008】一方で、この使用者の身体の締め付けすぎを防止するために腹側結合部と背側結合部との接合をゆるくすると、使用者の身体とこの使い捨て紙おむつとの間に隙間が生じて、たとえば尿などの排泄液が漏れるおそれがある。
【0009】この結果、この使い捨て紙おむつを密着させつつ漏れを防止することが容易でないという問題点を有している。
【0010】本発明はこのような点に鑑みなされたもので、密着性を向上し漏れを防止できる使い捨て吸収性物品を提供することを目的とする。」
b 【0025】、【図1】
「【0025】図1において、使い捨て吸収性物品は、たとえば使い捨て紙おむつであり、吸収性物品体としてのおむつ体1を備えている。このおむつ体1は、図1に示す展開状態から、たとえば病人、失禁者などの使用者の背部側から腹部側に身体に沿って装着するものである。そして、このおむつ体1は、透液性を有する透液性表面シート2、不透液性を有する不透液性裏面シート3、これら透液性表面シート2と不透液性裏面シート3との間に配設された液吸収性を有する吸収体4、および不透液性裏面シート3の外面側に結合された外層シート5にて層状に形成されている。」
「【図1】
[図:0001435616000001.jpg]
」
c 【0033】~【0038】
「【0033】そして、この外層シート5は、展開状態で背側腰回り部13、股下回り部14および腹側腰回り部15がおむつ体1の長手方向に順次一体的に形成されるとともに、長手方向に略沿った中心線にて線対称な略矩形状に形成されて、この股下回り部14の幅方向の両側縁には、略凹弧状に切り欠き形成された脚回り部16が形成されている。
【0034】また、透液性表面シート2、不透液性裏面シート3および吸収体4は、おむつ体1の外層シート5の長手方向に略沿った状態で、背側腰回り部13、股下回り部14および腹側腰回り部15の略中央にわたって配設されている。
【0035】さらに、おむつ体1の外層シート5の背側腰回り部13は、展開状態におけるおむつ体1の長手方向の一端側に形成され、この展開状態からおむつ体1が適宜折り曲げられて、使用者の腰回りの背部側に位置する部分となっている。そして、この背側腰回り部13のおむつ体1の長手方向における両外側縁部の肌側になる内面には、たとえば面ファスナのループ部材により形成される背側結合部21が貼着されている。この背側結合部21は、長手方向をおむつ体1の長手方向に略沿わせた状態で貼着されている。
【0036】また、おむつ体1の股下回り部14は、展開状態における長手方向の中間部に、背側腰回り部13から腹側腰回り部15にわたっておむつ体1の長手方向側に連続して一体に形成され、この展開状態からおむつ体1が適宜折り曲げられて、使用者の股下に位置する部分となっている。なお、股下回り部14の両側縁に略凹弧状に形成された脚回り部16は、背側腰回り部13および腹側腰回り部15の幅寸法よりも幅寸法が狭く形成され、使用者の脚回りに適合される。
【0037】そして、おむつ体1の腹側腰回り部15は、展開状態におけるおむつ体1の長手方向の股下回り部14の背側腰回り部13と反対側の他端側に連続して一体に形成され、この展開状態からおむつ体1が適宜折り曲げられて、使用者の腰回りの腹側に位置する部分となっている。さらに、この腹側腰回り部15は、背側腰回り部13と同様に、おむつ体1の幅方向に略沿った長手方向を有した略矩形状に形成されている。
【0038】また、腹側腰回り部15のおむつ体1の長手方向における外層シート5の外側シート片12の両外側部近傍には、背側腰回り部13の両側部に背側結合部21と係脱自在に接合される略矩形状の面ファスナのフック部材により構成される腹側結合部22が設けられている。この腹側結合部22は、略矩形状に形成され、長手方向がおむつ体1の長手方向に略沿った状態で設けられている。さらに、この腹側結合部22は、平面視で背側結合部21よりも幅広に形成されている。」
d 【0039】~【0043】
「【0039】そして、おむつ体1の背側腰回り部13および腹側腰回り部15には、長手方向に略沿って、複数本のたとえば紐状ゴムなどの幅方向に伸縮する腰回り用弾性体23,24が伸張した状態で、幅方向に沿ってたとえば接着剤などにてそれぞれ固着されている。これら腰回り用弾性体23,24にて、背側腰回り部13および腹側腰回り部15の略全域、すなわち使用者の腰回りの略全周にわたって伸縮性が付与される。
【0040】また、外層シート5の内側シート片11および外側シート片12の間に位置した背側腰回り部13には、たとえば紐状ゴムなどの第1の脚回り用弾性体25および第2の脚回り用弾性体26がそれぞれ伸張された状態で配設されている。
【0041】ここで、第1の脚回り用弾性体25は、この背側腰回り部13の使用者の腰回り側におけるおむつ体1の幅方向の一側、すなわち背側結合部21の近傍から、同側の脚回り部16近傍および股下回り部14を通って折り返し方向に彎曲して他側の脚回り部16近傍の背側腰回り部13に延在した形状、すなわち略へ字状に形成されている。
【0042】一方、第2の脚回り用弾性体26は、第1の脚回り用弾性体25と、おむつ体1の幅方向について略対称な位置に配設されている。すなわち、背側腰回り部13の使用者の腰回り側におけるおむつ体1の幅方向の他側である第1の脚回り用弾性体25と反対側の一側、すなわち背側結合部21の近傍から、同側の脚回り部16近傍および股下回り部14を通って折り返し方向に彎曲して他側の脚回り部16近傍に延在した形状、すなわち略へ字状に形成されている。さらに、この第2の脚回り用弾性体26は、第1の脚回り用弾性体25と股下回り部14の略中心域、すなわち吸収体4上で交差している。
【0043】この結果、脚回り部16には、これら第1の脚回り用弾性体25および第2の脚回り用弾性体26にて、おむつ体1の長手方向および幅方向に伸縮性が付与され、おむつ体1の脚回り部16はギャザ部に形成される。」
e 【0089】、【0090】、【図7】
「【0089】さらに、上記各実施の形態において、図7に示すように、背側結合部21を背側腰回り部13の幅方向の両側の全域に亘って、おむつ体1の長手方向に略沿って形成するとともに、腹側結合部22を腹側腰回り部15の幅方向の両側の全域に亘って、おむつ体1の長手方向に略沿ってたとえば両面接着テープなどにて形成して、これら背側結合部21および腹側結合部22を接合することにより、おむつ体1は、背側腰回り部13および腹側腰回り部15にて腰回り開口部を形成し、脚回り部16にて左右一対の脚回り開口部を形成した、パンツ形状に予め形成されていてもよい。
【0090】そして、背側結合部21および腹側結合部22は、いずれか一方をループ部材とし、いずれか他方をフック部材とすればよく、或いは接着剤などにて接合し係脱自在としなくてもよい。」
「【図7】
[図:0001435616000002.jpg]
」
f 【0091】
「【0091】
【発明の効果】請求項1記載の使い捨て吸収性物品によれば、外層シートの背側腰回り部および腹側腰回り部に、吸収性物品体の長手方向略全域にわたって、この外層シートの内側シート片と外側シート片との間に、吸収性物品体の幅方向に伸縮する腰回り用弾性体を配設するとともに、外層シートの内側シート片および外側シート片の間に、背側腰回り部および腹側腰回り部の少なくともいずれか一方の使用者の腰回り側における吸収性物品体の幅方向の一側から、股下回り部を通って背側腰回り部および腹側腰回り部の少なくともいずれか一方の他側の脚回り部近傍に延在する第1の脚回り用弾性体、およびこの第1の脚回り用弾性体と吸収性物品体の幅方向について略対称に位置し第1の脚回り用弾性体と股下回り部の略中心域で交差する第2の脚回り用弾性体を配設する。この結果、背側腰回り部および腹側腰回り部が腰回り用弾性体により伸縮するため、使用者に装着した際に使用者の腰回りへの密着性が向上するとともに、第1の脚回り用弾性体、および第2の脚回り用弾性体が股下回り部の略中心域で交差しているので、この股下回り部、或いは吸収体が使用者の股下に、より密着するため、使用者への密着性をより向上できる。」
(イ) 引用文献1から読み取れる認定事項
a 【図1】から、次の事項が読み取れる。
「脚回り部16が、おむつ1の長手方向の中央から、背側腰回り部13側の部分と、腹側腰回り部15側の部分を有し、第1の脚回り用弾性体25及び第2の脚回り用弾性体26は、脚回り部16の背側腰回り部13側の部分に沿って配設されているが、腹側腰回り部15側の部分に沿って配設されていないこと。」
b 【0033】の「長手方向」及び「幅方向」に関する記載と、【図1】から、次の事項が読み取れる。
「おむつ体1が、展開状態において、長手方向と、当該長手方向に直交する幅方向を有していること。」
c 【図1】から、次の事項が読み取れる。
「脚回り部16の腹側腰回り部15側の部分において、腰回り用弾性体24が設けられている領域と、当該領域より背側の領域で、腰回り用弾性体24が設けられていない領域があり、前記腰回り用弾性体24が設けられていない領域で、第1の脚回り用弾性体25が設けられていない領域の長手方向の長さは、腹側結合部22の背側の端から、前記腰回り用弾性体24が設けられている領域の背側の端までの長手方向の長さより長いこと。」
d 【図1】から、次の事項が読み取れる。
「展開状態において、第1の脚回り用弾性体25の幅方向左側の背側の端は、背側腰回り部13の幅方向左側の背側結合部21の中央よりも腹側に位置していること。」
e 【0035】、【0038】、【0089】、【0090】及び【図7】から、次の事項が読み取れる。
「背側結合部21を、背側腰回り部13のおむつ体1の長手方向における両外側縁部の肌側になる内面に、たとえば両面接着テープなどにて形成し、腹側結合部22を、腹側腰回り部15のおむつ体1の長手方向における両外側縁部の肌側になる内面に、同じく両面接着テープなどにて形成して、背側腰回り部13と腹側腰回り部15の肌側になる内面同士を接合すること。」
(ウ) 引用発明の認定
前記(ア)の記載事項及び前記(イ)の認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「吸収性物品体としてのおむつ体1であって、(【0025】)
透液性を有する透液性表面シート2、不透液性を有する不透液性裏面シート3、これら透液性表面シート2と不透液性裏面シート3との間に配設された液吸収性を有する吸収体4、および不透液性裏面シート3の外面側に結合された外層シート5にて層状に形成され、(【0025】)
外層シート5は、展開状態で背側腰回り部13、股下回り部14および腹側腰回り部15がおむつ体1の長手方向に順次一体的に形成されるとともに、この股下回り部14の幅方向の両側縁には、略凹弧状に切り欠き形成された脚回り部16が形成され、(【0033】)
背側結合部21を、背側腰回り部13のおむつ体1の長手方向における両外側縁部の肌側になる内面に、たとえば両面接着テープなどにて形成し、腹側結合部22を、腹側腰回り部15のおむつ体1の長手方向における両外側縁部の肌側になる内面に、同じく両面接着テープなどにて形成して、背側腰回り部13と腹側腰回り部15の肌側になる内面同士を接合し、(前記(イ)eの認定事項)
背側腰回り部13および腹側腰回り部15には、長手方向に略沿って、複数本のたとえば紐状ゴムなどの幅方向に伸縮する腰回り用弾性体23,24が伸張した状態で、幅方向に沿ってたとえば接着剤などにてそれぞれ固着され、(【0039】)
背側腰回り部13には、たとえば紐状ゴムなどの第1の脚回り用弾性体25および第2の脚回り用弾性体26がそれぞれ伸張された状態で配設され、(【0040】)
第1の脚回り用弾性体25は、この背側腰回り部13の使用者の腰回り側におけるおむつ体1の幅方向の一側、すなわち背側結合部21の近傍から、同側の脚回り部16近傍および股下回り部14を通って折り返し方向に彎曲して他側の脚回り部16近傍の背側腰回り部13に延在した形状、すなわち略へ字状に形成され、(【0041】)
第2の脚回り用弾性体26は、第1の脚回り用弾性体25と、おむつ体1の幅方向について略対称な位置に配設され、すなわち、背側腰回り部13の使用者の腰回り側におけるおむつ体1の幅方向の他側である第1の脚回り用弾性体25と反対側の一側、すなわち背側結合部21の近傍から、同側の脚回り部16近傍および股下回り部14を通って折り返し方向に彎曲して他側の脚回り部16近傍に延在した形状、すなわち略へ字状に形成され、さらに、この第2の脚回り用弾性体26は、第1の脚回り用弾性体25と股下回り部14の略中心域、すなわち吸収体4上で交差し、(【0042】)
前記脚回り部16は、おむつ1の長手方向の中央から、背側腰回り部13側の部分と、腹側腰回り部15側の部分を有し、第1の脚回り用弾性体25及び第2の脚回り用弾性体26は、脚回り部16の背側腰回り部13側の部分に沿って配設されているが、腹側腰回り部15側の部分に沿って配設されておらず、(前記(イ)aの認定事項)
前記おむつ体1は、展開状態において、長手方向と、当該長手方向に直交する幅方向を有しており、(前記(イ)bの認定事項)
前記脚回り部16の腹側腰回り部15側の部分において、腰回り用弾性体24が設けられている領域と、当該領域より背側の領域で、腰回り用弾性体24が設けられていない領域があり、前記腰回り用弾性体24が設けられていない領域で、第1の脚回り用弾性体25が設けられていない領域の長手方向の長さは、腹側結合部22の背側の端から、前記腰回り用弾性体24が設けられている領域の背側の端までの長手方向の長さより長く、(前記(イ)cの認定事項)
展開状態において、第1の脚回り用弾性体25の幅方向左側の背側の端は、背側腰回り部13の幅方向左側の背側結合部21の中央よりも腹側に位置している、(前記(イ)dの認定事項)
おむつ体1。」
イ 引用文献5に記載された事項、周知技術の認定
(ア) 引用文献5に記載された事項
当審において新たに引用する、特開2001-346825号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0026】図2において、吸収性本体20は、液透過性のトップシート24と、液不透過性のバックシート26と、これらの間に配置される吸収体22とを有し、この吸収性本体20のバックシート26側が外装部材14に接合され、パンツ型使いすておむつ11が形成されている。
【0027】また、外装部材14は、カバーシート27とインナーカバーシート23とが相互に貼り合わせられた構成であり、これらシート27,23の間に弾性部材18,19が伸長状態で挟持されている。第1弾性部材18は、外装部材の腹側部14Fの右側縁部に位置する閉じ合わせ部21Rから腹側部14Fの右側の脚周り開口部13Rに沿って股下部14Gを横切り、腹側部14Fの左側の脚周り開口部13Lに沿って腹側部14Fの左側縁部に位置する閉じ合わせ部21Lに至るように配置されている。また、第2弾性部材20(当審注:「第2弾性部材19」の誤記。)は、第1弾性部材18と股下部14Gにて近接状態となるように、背側部14Bの右側縁部に位置する閉じ合わせ部21Rから背側部14Bの右側の脚周り開口部13Rに沿って股下部14Gを横切り、背側部14Bの左側の脚周り開口部13Lに沿って背側部14Bの左側縁部に位置する閉じ合わせ部21Lに至るように配置されている。これら第1および第2弾性部材18,19を構成する複数本の伸縮性材料は、ほぼ等間隔で相互に平行に配置されている。」
「【図2】
[図:0001435616000003.jpg]
」
(イ) 周知技術の認定
a 【図2】から、次の事項が読み取れる。
「第2弾性部材19は、パンツ型使いすておむつ11の幅方向中心を基準として左右対称な位置に配置されていること。」
b 前記(ア)及び前記aに例示されているように、次の事項は周知技術であると認められる。
<周知技術>
「弾性部材を、背側部の右側縁部に位置する閉じ合わせ部から背側部の右側の脚周り開口部に沿って股下部を横切り、背側部の左側の脚周り開口部に沿って背側部の左側縁部に位置する閉じ合わせ部に至るように配置し、吸収性物品の幅方向中心を基準として左右対称な位置に配置すること。」
(3) 対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xについて
引用発明の「おむつ体1」は、「吸収性物品体」であるから、本件補正発明と引用発明は、「吸収性物品」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aについて
a 引用発明の「透液性表面シート2」、「不透液性裏面シート3」及び「透液性表面シート2と不透液性裏面シート3との間に配設された液吸収性を有する吸収体4」は、本件補正発明の「吸収性本体」に相当する。
b 引用発明の「不透液性裏面シート3の外面側に結合された外層シート5」は、本件補正発明の「吸収性本体の厚さ方向に重ねて配置された外装体」に相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、「吸収性本体と、前記吸収性本体の厚さ方向に重ねて配置された外装体と、を有する吸収性物品」である点において一致する。
(ウ) 構成Bについて
a 引用発明において、「外層シート5」の「股下回り部14」が、「幅方向の両側縁に」「略凹弧状に切り欠き形成された脚回り部16が形成されている」ことは、本件補正発明の「前記外装体は、着用者の脚回りに沿って湾曲した一対の切り欠き部を有[する]」ことに相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記外装体は、着用者の脚回りに沿って湾曲した一対の切り欠き部を有[する]」点において一致する。
(エ) 構成Cについて
a 引用発明の「紐状ゴムなどの第1の脚回り用弾性体25」が、「脚回り部16の背側腰回り部13側の部分に沿って配設されて[いる]」ことは、本件補正発明の「少なくとも一部が前記切り欠き部に沿う脚回り弾性部材としての糸ゴムを有[する]」ことに相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「少なくとも一部が前記切り欠き部に沿う脚回り弾性部材としての糸ゴムを有[する]」点において一致する。
(オ) 構成Dについて
a 引用発明において、「おむつ体1は、展開状態において、長手方向と、当該長手方向に直交する幅方向を有して[いる]」ことは、本件補正発明において、「前記吸収性物品を展開した状態において、互いに交差する長手方向と幅方向とを有[する]」ことに相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記吸収性物品を展開した状態において、互いに交差する長手方向と幅方向とを有[する]」点において一致する。
(カ) 構成Eについて
a 引用発明の「脚回り部16」、「脚回り部16」の「おむつ1の長手方向の中央から、背側腰回り部13側の部分」、及び、「脚回り部16」の「おむつ1の長手方向の中央から、」「腹側腰回り部15側の部分」は、それぞれ本件補正発明の「切り欠き部」、「中央よりも背側に位置する背側切り欠き部」、及び「中央よりも腹側に位置する腹側切り欠き部」に相当する。
b 前記aを踏まえると、引用発明において、「前記脚回り部16が、おむつ1の長手方向の中央から、背側腰回り部13側の部分と、腹側腰回り部15側の部分を有[する]」ことは、本件補正発明において、「前記切り欠き部は、前記長手方向において、中央よりも背側に位置する背側切り欠き部と、前記中央よりも腹側に位置する腹側切り欠き部とを有[する]」ことに相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記切り欠き部は、前記長手方向において、中央よりも背側に位置する背側切り欠き部と、前記中央よりも腹側に位置する腹側切り欠き部とを有[する]」点において一致する。
(キ) 構成Fについて
a 引用発明において、「たとえば両面接着テープなどにて形成[される]」「背側結合部21」と、「同じく両面接着テープなどにて形成[される]」「腹側結合部22」は、「背側腰回り部13と腹側腰回り部15の肌側になる内面同士を接合する」ものであるところ、両者は、いずれも「おむつ体1の長手方向における両外側縁部」に設けられるものであるから、本件補正発明の「前記外装体の前記幅方向の両端部にて前記外装体の対向する面同士を接合する一対のサイドエッジ部」に相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記外装体の前記幅方向の両端部にて前記外装体の対向する面同士を接合する一対のサイドエッジ部を有して[いる]」点において一致する。
(ク) 構成Gについて
a 引用発明の「紐状ゴムなどの第1の脚回り用弾性体25および第2の脚回り用弾性体26」は、「脚回り部16に沿って配設されて[いる]」から、本件補正発明の「前記脚回り弾性部材として配置された糸ゴム」に相当する。
b 前記aを踏まえると、引用発明の「紐状ゴムなどの第1の脚回り用弾性体25」は、本件補正発明の「前記脚回り弾性部材として配置された糸ゴムのうちの、一本のある糸ゴム」に相当する。
c したがって、前記(エ)の検討を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記糸ゴムは、前記脚回り弾性部材として配置された糸ゴムのうちの、一本のある糸ゴムであ[る]」点において一致する。
(ケ) 構成Hについて
a 引用発明の「第1の脚回り用弾性体25」は、「脚回り部16の背側腰回り部13側の部分に沿って配設された」ものであるところ、この脚回り部16に沿って設けられた部分は、本件補正発明の「前記背側切り欠き部に沿って連続的に設けられた連続部分」に相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記ある糸ゴムは、前記長手方向における、前記背側切り欠き部に対応する領域において、前記背側切り欠き部に沿って連続的に設けられた連続部分を有して[いる]」点において一致する。
(コ) 構成Iについて
本件補正発明と引用発明は、構成Iに関して、次に示す点において相違する。
本件補正発明においては、
「前記ある糸ゴムは前記連続部分を二つ備え、二つの前記連続部分を含む前記ある糸ゴムは、前記吸収性物品の前記幅方向の中心線を基準として左右対称な位置に配置されて[いる]」のに対して、
引用発明においては、
第1の脚回り用弾性体25は、脚回り部16の背側腰回り部13側の部分に沿って配設された部分を二つ備えているとはいえないとともに、おむつ体1の幅方向の中心を基準に左右対称な位置に配置されていない点。
(サ) 構成Jについて
a 引用発明において、「第1の脚回り用弾性体25」が「腹側腰回り部15側の部分に沿って配設されて」いないことは、本件補正発明において、「前記ある糸ゴムは、前記長手方向における、前記腹側切り欠き部の少なくとも一部に対応する領域において、前記腹側切り欠き部に沿った部分を有して[いない]」ことに相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記ある糸ゴムは、前記長手方向における、前記腹側切り欠き部の少なくとも一部に対応する領域において、前記腹側切り欠き部に沿った部分を有して[いない]」点において一致する。
(シ) 構成Kについて
a 引用発明の「脚回り部16の腹側腰回り部15側の部分において、腰回り用弾性体24が設けられている領域」及び「当該領域より背側の領域で、腰回り用弾性体24が設けられていない領域」は、「腰回り用弾性体24」は「幅方向に沿って」「固着され[ている]」ものであるから、それぞれ本件補正発明の「幅方向に沿って腰回り弾性部材が設けられた弾性領域」及び「前記弾性領域よりも前記背側の領域に位置し前記腰回り弾性部材が設けられていない非弾性領域」に相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記長手方向における、前記腹側切り欠き部に対応する領域において、前記幅方向に沿って腰回り弾性部材が設けられた弾性領域と、前記弾性領域よりも前記背側の領域に位置し前記腰回り弾性部材が設けられていない非弾性領域とを有して[いる]」点において一致する。
(ス) 構成Lについて
a 引用発明の「脚回り部16の腹側腰回り部15側の部分において」、「腹回り弾性体24が設けられていない領域」で、「第1の脚回り用弾性体25が設けられていない領域の長手方向の長さ」は、本件補正発明の「前記展開した状態において、且つ、前記長手方向において、前記非弾性領域のうちの、前記ある糸ゴムが設けられていない領域の長さ」に相当する。
b 引用発明の「腹側結合部22の背側の端から、前記腰回り用弾性体24が設けられている領域の背側の端までの長手方向の長さ」は、前記(キ)を踏まえると、本件補正発明の「前記展開した状態において、且つ、前記長手方向において」、「前記サイドエッジ部の前記背側の端から前記弾性領域の前記背側の端までの長さ」に相当する。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記展開した状態において、且つ、前記長手方向において、前記非弾性領域のうちの、前記ある糸ゴムが設けられていない領域の長さは、前記サイドエッジ部の前記背側の端から前記弾性領域の前記背側の端までの長さよりも長[い]」点において一致する。
(セ) 構成Mについて
a 引用発明において、「展開状態において、第1の脚回り用弾性体25の幅方向左側の背側の端は、背側腰回り部13の幅方向左側の背側結合部21の中央よりも腹側に位置している」ことは、前記(キ)を踏まえると、本件補正発明の「前記長手方向において、前記ある糸ゴムの前記背側の端は、前記サイドエッジ部の中央よりも前記腹側に位置する」ことに相当する。
b したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記長手方向において、前記ある糸ゴムの前記背側の端は、前記サイドエッジ部の中央よりも前記腹側に位置する」点において一致する。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次に示すとおりである。
(ア) 一致点
(構成A)吸収性本体と、前記吸収性本体の厚さ方向に重ねて配置された外装体と、を有する吸収性物品であって、
(構成B)前記外装体は、着用者の脚回りに沿って湾曲した一対の切り欠き部を有し、
(構成C)少なくとも一部が前記切り欠き部に沿う脚回り弾性部材としての糸ゴムを有し、
(構成D)前記吸収性物品を展開した状態において、互いに交差する長手方向と幅方向とを有し、
(構成E)前記切り欠き部は、前記長手方向において、中央よりも背側に位置する背側切り欠き部と、前記中央よりも腹側に位置する腹側切り欠き部とを有し、
(構成F)前記外装体の前記幅方向の両端部にて前記外装体の対向する面同士を接合する一対のサイドエッジ部を有しており、
(構成G)前記糸ゴムは、前記脚回り弾性部材として配置された糸ゴムのうちの、一本のある糸ゴムであり、
(構成H)前記ある糸ゴムは、前記長手方向における、前記背側切り欠き部に対応する領域において、前記背側切り欠き部に沿って連続的に設けられた連続部分を有しており、
(構成J)前記ある糸ゴムは、前記長手方向における、前記腹側切り欠き部の少なくとも一部に対応する領域において、前記腹側切り欠き部に沿った部分を有しておらず、
(構成K)前記長手方向における、前記腹側切り欠き部に対応する領域において、前記幅方向に沿って腰回り弾性部材が設けられた弾性領域と、前記弾性領域よりも前記背側の領域に位置し前記腰回り弾性部材が設けられていない非弾性領域とを有しており、
(構成L)前記展開した状態において、且つ、前記長手方向において、前記非弾性領域のうちの、前記ある糸ゴムが設けられていない領域の長さは、前記サイドエッジ部の前記背側の端から前記弾性領域の前記背側の端までの長さよりも長く、
(構成M)前記長手方向において、前記ある糸ゴムの前記背側の端は、前記サイドエッジ部の中央よりも前記腹側に位置する、
(構成X)吸収性物品、である点。
(イ) 相違点(構成I)
本件補正発明においては、
「前記ある糸ゴムは前記連続部分を二つ備え、二つの前記連続部分を含む前記ある糸ゴムは、前記吸収性物品の前記幅方向の中心線を基準として左右対称な位置に配置されて[いる]」のに対して、
引用発明においては、
第1の脚回り用弾性体25は、脚回り部16の背側腰回り部13側の部分に沿って配設された部分を二つ備えているとはいえないとともに、おむつ体1の幅方向の中心を基準に左右対称な位置に配置されていない点。
(4) 当審の判断
ア 相違点について
前記相違点について検討する。
(ア) 前記(2)イ(イ)において周知技術として示したとおり、次の事項は、本願出願前における周知技術である。
「弾性部材を、背側部の右側縁部に位置する閉じ合わせ部から背側部の右側の脚周り開口部に沿って股下部を横切り、背側部の左側の脚周り開口部に沿って背側部の左側縁部に位置する閉じ合わせ部に至るように配置し、吸収性物品の幅方向中心を基準として左右対称な位置に配置すること。」
(イ) 引用発明及び前記周知技術は、いずれも吸収性物品の脚回り部の弾性部材に関するものであり、単一の弾性部材を一方の側のサイドエッジ部から、一方の側の脚回り部、股下部、他方の側の脚周り部を通って、他方の側のサイドエッジ部まで配置する構成のものであるから、引用発明に前記周知技術を適用して、第1の脚回り用弾性体25を、おむつ体1の幅方向中心を基準として左右対称な位置に配置し、おむつ体1の幅方向の一側の脚周り部16と、他側の脚周り部16に沿って配置することは、当業者が容易に想到し得たことである。
(ウ) その場合、引用発明に前記周知技術を適用した構成においては、第1の脚回り用弾性体25は、おむつ体1の幅方向の一側の脚周り部16と、他側の脚周り部16の両方に沿って配置されることになるところ、この部分が本件補正発明の「二つの連続部分」に相当する。
(エ) 以上のとおりであるから、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(オ) そして、本件補正発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
(カ) したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 請求人の主張について
請求人は、審判請求の理由の「[3]本願発明が特許されるべき理由」において、概略次の主張をしているので、以下、検討する。
(ア) 請求人の主張の内容
仮に、引用発明の第1の脚回り用弾性体25としての紐状ゴムを、おむつ体1の幅方向の中心線を基準として左右対称な位置に配置するように変更するとした場合、「第1の脚回り用弾性体と前記吸収性物品体の幅方向について略対称に位置し前記第1の脚回り用弾性体と前記股下回り部の略中心域で交差する第2の脚回り用弾性体」を設けることが困難になる。すなわち、このような変更を行うと、左右対称な第1の脚回り用弾性体25に対して、略対称且つ略中心で交差する第2の脚回り用弾性体を設けることが困難になる。このような変更は、引用発明を、その目的を達成する方向とは反対の方向に変更することになるので、当業者であれば通常行わない変更である。
(イ) 請求人の主張についての検討
請求人の前記主張について検討する。
a 引用文献1の【0091】から、引用発明は次の(a)及び(b)の効果を奏するものであると認められる。
(a) 「背側腰回り部および腹側腰回り部が腰回り用弾性体により伸縮するため、使用者に装着した際に使用者の腰回りへの密着性が向上する。」
(b) 「第1の脚回り用弾性体、および第2の脚回り用弾性体が股下回り部の略中心域で交差しているので、この股下回り部、或いは吸収体が使用者の股下に、より密着するため、使用者への密着性をより向上できる。」
b また、引用文献1の【0007】~【0010】の記載から、引用発明の課題は、前記a(a)の効果を奏するようにすることで解決されるものであると理解される。
c そうすると、引用発明に前記周知技術を適用して、前記a(b)の効果を奏しないことになったとしても、依然として、前記a(a)の効果を奏するものであり、引用発明の課題を解決するものであるから、前記a(b)の効果を奏しないことが、引用発明に前記周知技術を適用することを阻害するものであるとまではいえない。
d したがって、請求人の前記主張は採用できない。
(5) 独立特許要件の判断についてのまとめ
前記(3)及び(4)において検討したとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2に示したとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年12月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(前記第2の1(1)参照)により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において発行された、下記引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2003-284736号公報(主たる引用例)
3 引用発明等の認定
引用発明及び周知技術の認定は、前記第2の3(2)ア及びイにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明と引用発明を対比する。
(1) 前記第2の3(3)において示した検討を踏まえると、本願発明と引用発明は、前記相違点についてのみ相違し、その他の点で一致する。
(2) そして、前記第2の3(4)アで示した理由と同様の理由により、引用発明において、周知技術を考慮して、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(3) また、本願発明の奏する作用効果としては、当業者が予測困難であり、格別顕著なものは、認めることができない。
(4) したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-009254