特許拒絶査定不服審判
2024-007791
ガス検知器、通信システム、ガス検知器における通信方法、及びガス検知器によるイベント報知方法
- 審判番号
- 2024-007791
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-042301
- 請求日
- 2024年05月10日
- 審決日
- 2025年10月30日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】新コスモス電機株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 審判長/審判官
- 審判長 道祖土 新吾
- 審判官 柳 重幸
- 審判官 谷垣 圭二
- 分類
- P18 .121-WZ (G08C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 42301「ガス検知器、通信システム、ガス検知器における通信方法、及びガス検知器によるイベント報知方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 9月30日出願公開、特開2024-131825〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和5年3月16日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 7月 4日付け:拒絶理由通知書
同年 9月 7日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月14日付け:拒絶理由通知書
令和6年 1月18日 :意見書の提出
同年 2月21日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月27日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月10日 :審判請求書の提出
令和7年 5月21日付け:拒絶理由通知書
同年 7月23日 :応対記録
同月25日 :意見書、手続補正書の提出
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年7月25日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ガスセンサを搭載したガス検知器であって、
外部の機器から送信される第1のアドバタイズを受信不可とするとともに、当該外部の機器へ第2のアドバタイズを送信でき、ペリフェラルとして機能する第1のモードと、前記外部の機器から送信される前記第1のアドバタイズを受信でき、セントラルとして機能する第2のモードと、を切り換え可能な制御部と、
操作受付部と、を備え、
前記制御部は、前記操作受付部が所定の操作を受け付けた場合、前記第1のモードから前記第2のモードに切り換えることを特徴とする通信機能を有したガス検知器。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Cまでに分説する。また、参考図として、本願の【図3】を掲載する。
<本願発明の分説>
X ガスセンサを搭載したガス検知器であって、
A 外部の機器から送信される第1のアドバタイズを受信不可とするとともに、当該外部の機器へ第2のアドバタイズを送信でき、ペリフェラルとして機能する第1のモードと、前記外部の機器から送信される前記第1のアドバタイズを受信でき、セントラルとして機能する第2のモードと、を切り換え可能な制御部と、
B 操作受付部と、を備え、
C 前記制御部は、前記操作受付部が所定の操作を受け付けた場合、前記第1のモードから前記第2のモードに切り換えることを特徴とする
X 通信機能を有したガス検知器
<参考図>
【図3】
[図:0001430634000001.jpg]
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。
「【技術分野】
【0001】
本開示は、通信機器、通信システム、通信方法、及び報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モバイルガス検知器と、モバイルガス検知器から送られるガス検出データを受信する受信管理部と、の間で通信が行われるガス検知システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-240823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のガス検知システムは、モバイルガス検知器と、受信管理部を備える監視装置と、の間で通信が行われるものであるため、当該ガス検知システムでは、ユーザ間で機器を用いて通信を行うことは想定されていない。このため、上記ガス検知システムでは、あるユーザが、離れた場所にあるガス検知器の情報を確認することはできないという問題がある。
【0005】
本開示の一態様は、外部の機器から送信される接続要求情報に含まれる情報を、外部の機器から離れた場所にある通信機器により任意のタイミングで確認させることを目的とする。」
「【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の第1態様の通信機器は、外部の機器から送信される第1の接続要求情報を受信不可とするとともに、当該外部の機器へ第2の接続要求情報を送信する第1のモードと、前記外部の機器から送信される前記第1の接続要求情報を受信可能となる第2のモードと、を切り換え可能な制御部と、操作受付部と、を備え、前記制御部は、前記操作受付部が所定の操作を受け付けた場合、前記第1のモードから前記第2のモードに切り換えることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、通信機器は、所定の操作を受け付けた場合、第1のモードから第2のモードに切り換えることにより、外部の機器から送信される第1の接続要求情報を受信可能となる。これにより、通信機器のユーザは、外部の機器より送信された第1の接続要求情報に含まれる情報を任意のタイミングで確認することができる。
【0008】
本開示の第2態様の通信機器は、第1態様の通信機器において、前記第1の接続要求情報には、前記外部の機器によって検出された所定ガスの濃度を示す濃度情報が含まれており、前記操作受付部が前記所定の操作を受け付けている間は、前記制御部が前記第2のモードを維持することにより、前記第1の接続要求情報を当該外部の機器から受信可能な状態となる受信部と、前記受信部によって前記第1の接続要求情報が受信された場合に、前記第1の接続要求情報に含まれる前記濃度情報を報知する報知部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、通信機器は、所定の操作を受け付けている間、外部の機器より送信された濃度情報を受信し、受信した濃度情報を報知する。これにより、通信機器のユーザは、外部の機器より送信された濃度情報を任意のタイミングで確認できるため、離れた場所にいる外部の機器のユーザが安全な状態にあるかを任意のタイミングで確認することができる。
…(中略)…
【発明の効果】
【0018】
本開示の一態様によれば、外部の機器から送信される接続要求情報に含まれる情報を、外部の機器から離れた場所にある通信機器により任意のタイミングで確認させることができる通信機器等を提供することができる。」
「【0038】
<ガス検知器の動作例>
次に、図4乃至図6も参照して、本実施形態のガス検知器30の動作例について具体的に説明する。図4は、図1に示したガス検知器30の動作例を示すフローチャートである。図5は、図1に示したガス検知器30の別の動作例を示すフローチャートである。図6は、図1に示したガス検知器30の別の動作例を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、まず図4を用いて、本実施形態のガス検知器30の基本的な動作例について説明する。また、以下の説明では、ガス検知システム100において、ガス検知器30が上記BLE通信でのペリフェラルとして動作している状態から説明する。」
「【図4】
[図:0001430634000002.jpg]
」
「【0039】
図4のステップS1に示すように、本実施形態のガス検知器30においては、制御部31Cは操作受付部31Sが所定の操作を受け付けたか否かについて判別する判別処理を実行する。具体的にいえば、ガス検知器30では、制御部31Cは受付ボタン31SBがユーザによって押圧動作されたか否かについて判別する。そして、ガス検知器30では、制御部31Cが受付ボタン31SBに対して押圧動作が行われていないことを検出すると(ステップS1でNO)、ガス検知器30は、待機状態となる。
【0040】
一方、ガス検知器30では、制御部31Cが受付ボタン31SBに対して押圧動作が行われていることを検出すると(ステップS1でYES)、ガス検知器30では、受付ボタン31SB(操作受付部31S)に対しての所定の操作を受け付ける受付工程が実行される。
【0041】
次に、ステップS2に示すように、ガス検知器30では、制御部31Cは第1のモードから第2のモードに切り換える切換工程を実行する。具体的にいえば、ガス検知器30では、制御部31Cは、モード切換制御を行うことにより、他のガス検知器30から送信される第1の接続要求情報を受信不可とするとともに、他のガス検知器30へ第2の接続要求情報を送信する第1のモードから、他のガス検知器30から送信される第1の接続要求情報を受信可能となる第2のモードに切り換える。なお、第1のモードにおいて、第1の接続要求情報の送信元の他のガス検知器30と、第2の接続要求情報の送信先の他のガス検知器30とは、同じガス検知器30であってもよいし、異なるガス検知器30であってもよい。
【0042】
換言すれば、ガス検知器30の制御部31Cは、上記切換工程を実行することにより、第1のモードにおける、当該ガス検知器30が上記BLE通信でのペリフェラルとして機能する状態から、第2のモードにおける、当該ガス検知器30が上記BLE通信でのセントラルとして機能する状態の当該ガス検知器30の状態遷移を行わせる。このように本実施形態のガス検知器30では、操作受付部31Sに対する操作に応じて、状態遷移が可能に構成されており、ペリフェラル及びセントラルのいずれか一方として選択的に機能可能になっている。」
「【0063】
以上の構成によれば、本実施形態のガス検知器(通信機器)30及びガス検知システム(通信システム)100では、ガス検知器30は、所定の操作を受け付けた場合、第1のモードから第2のモードに切り換えることにより、他のガス検知器(外部の機器)30から送信される第1の接続要求情報を受信可能となることができる。これにより、ガス検知器30のユーザは、他のガス検知器30より送信された第1の接続要求情報に含まれる情報を任意のタイミングで確認することができる。
【0064】
また、本実施形態のガス検知器30では、図4のステップS1及びS2にそれぞれ示したように、受付工程と切換工程とが実行される。この結果、本実施形態のガス検知器30では、他のガス検知器30から送信される第1の接続要求情報を受信可能となる。これにより、ガス検知器30のユーザは、他のガス検知器30より送信された第1の接続要求情報に含まれる情報を任意のタイミングで確認することができる。
【0065】
また、本実施形態のガス検知器30では、図5のステップS11~S16に示したように、所定の操作を受け付けた場合、第1のモードから第2のモードに切り換えることにより、他のガス検知器30から送信される第1の接続要求情報を受信可能となる。よって、第1の接続要求情報に含まれるイベント情報が示す第2のイベントを報知することができる。これにより、ユーザは、ガス検知器30の第1のイベントに加えて、他のガス検知器30で検出された第2のイベントを任意のタイミングで確認することができる。このように、本実施形態のガス検知器30では、他のガス検知器30から送信される第1の接続要求情報に含まれる情報を、当該他のガス検知器30から離れた場所にあるガス検知器30により任意のタイミングでユーザに確認させることができる。換言すれば、本実施形態では、爆発性雰囲気下の区画に存在する、他のガス検知器30の検出されたガス濃度などのイベント(情報)を、爆発性雰囲気外の区画に存在するガス検知器30のユーザが安全性を確保した状態で確実に確認することができる。」
3 当審拒絶理由通知で指摘した拒絶の理由の概要
当審拒絶理由通知で指摘した拒絶の理由のうち、本願発明に関する理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献6.特開2019-218162号公報
4 引用文献6の記載事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献6に記載された事項
当審拒絶理由通知において引用した、本願の出願前に発行された文献である特開2019-218162号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(2)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
ア 段落【0009】~【0014】、図1
「【0009】
〔実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係るシステム10の外観斜視図であり、図2は側面図、図3は端末装置100の断面図である。図1~図3に示すように、システム10は、端末装置100、スマートフォン200、およびカセット300を備える。」
「
[図:0001430634000003.jpg]
」
「【0011】
端末装置100は、円柱状のペン型の外形をなしている、小型且つ携帯可能なIoT(Internet of Things)デバイスである。例えば、端末装置100は、直径が約18mm~20mm、長さが約165mm~170mmである。端末装置100は、BLE(Bluetooth Low Energy)により、「携帯情報端末」の一例であるスマートフォン200との間で無線通信を行うことができる。端末装置100は、スマートフォン200との間でデータの送受信を行うことにより、各種データをスマートフォン200と共有することができる。
【0012】
端末装置100は、電源部113とプリンタ部114とに分離可能な筐体110を有する。プリンタ部114は、接続された電源部113から供給される電力により動作する。プリンタ部114は印刷装置120を有しており、給紙口111Aに装着されたカセット300から供給された用紙Pに印刷を行い、排紙口111Bから用紙Pを排紙する。プリンタ部114は接続されたカセット300から供給される電力により動作することもできる。また、プリンタ部114は、スマートフォン200から無線送信された印刷データ、または自身のメモリに記憶されている印刷データを用いた印刷が可能である。
【0013】
プリンタ部114の長手方向に沿ってフック110Aが設けられ、筆記用具と同様にフック110Aによって胸のポケット等に端末装置100を挟持することが可能となっている。プリンタ部114の外周には、円筒状のダイヤルスイッチ130が設けられている。ユーザがダイヤルスイッチ130を操作することにより、電源のオンオフ、動作モードの切り替えなど端末装置100の操作を可能とする。ダイヤルスイッチ130はプッシュ操作と回転操作との2通りの操作が可能である。フック110Aにはインジケータ132が設けられている。インジケータ132の点灯によって、電源状態、印刷状態、動作モード等の端末装置100の状態を表すことができる。インジケータ132としては、例えばLED(light emitting diode)が用いられる。筐体110の一端部には着脱可能なキャップ110Bが、筐体110の他端部には着脱可能なキャップ110Cが設けられている。
【0014】
カセット300は、端末装置100に用紙Pおよび電力を供給する。カセット300は、本体305から延在し用紙Pが収容される円弧状の収容部310を有しており、後述する本体305端部の接続部380(図30等参照)を給紙口111Aに接続することにより、収容部310に収容されている用紙Pを印刷装置120に供給することができる。収容部310はクリップ形状を有しており、例えば円筒状の透明なパイプに装着可能である。収容部310の内周面には、収容部310に囲まれた空間内の物体に関する計測を行う複数のセンサモジュール320a1~a3,b1~b3(以下まとめて「複数のセンサモジュール320」と示す)が設けられている。収容部310を透明なパイプに装着した場合、複数のセンサモジュール320によりパイプ内の物体に関する存在確認、形状、サイズ、移動方向、移動速度等の計測ができる。一例として、パイプ内を通過する液体内に存在する魚、異物等の複数の物体の数をカウントしたり、パイプ内を通過するボール等の複数の物体の数をカウントすることができる。本実施形態では、2つのセンサモジュール群が、収容部310の内周面の周方向と交差する短手方向に離間して設けられている。各センサモジュール群は、周方向に等間隔で設置された3つのセンサモジュール320を有する。カセット300は、本体305に設けられたIC(Integrated Circuit)等の処理部307により、センサモジュール320から得られたセンサデータの記憶、内部処理等を行うことができる。また、端末装置100へセンサデータを送信することにより、端末装置100でのセンサデータの印刷、共有、外部処理、蓄積、配信等を行うこともできる。カセット300は、本体305の上面に、スマートフォン200を設置することが可能な設置台330を有する。」
イ 段落【0096】
「【0096】
(変形例)
図33および図34は、カセット300の変形例を示す図である。図33に示す例では、収容部310の外周面にタッチパネル・ディスプレイ(「タッチパネル」)360が設けられており、タッチパネル360による情報表示および各種操作が可能となる。また、図34では、設置台330の上面に太陽光パネル370が設けられ、太陽光パネル370から出力された電力によるリチウムイオン電池426の充電が可能となる。なお、設置台330の上面に、太陽光パネル370の代わりに、または太陽光パネル370に加えて、広角センサ、高精度センサ等の各種センサを設けてもよい。」
ウ 段落【0098】~【0118】
「【0098】
(その他変形例)
(中略)
【0102】
また、各センサモジュール320に実装されるセンサは、受光素子に限らず、測定内容に応じた如何なるセンサであってもよい。例えば、各センサモジュール320に各種生体センサを実装することにより、ユーザの体温、脈拍、心拍数、発汗量等の生体情報を検出してもよい。
(中略)
【0108】
端末装置100は、1または複数の他の端末装置100とグループを構成し、BLE通信により他の端末装置100とグループ間通信を行う。例えば、端末装置100がグループ間通信のマスタとして機能し、他の端末装置100がスレーブとして機能する。端末装置100は、グループ間通信により他の端末装置100と各種データを共有することができる。なお、他の端末装置100は端末装置100と同様の機能を有するものであり、他の端末装置100は、端末装置100と同様に印刷を行ったり、グループ間通信を行ったりすることができる。また、他の端末装置100は、端末装置100と同様にスマートフォンとのグループ間通信を行ったり、マスタとして機能することもできる。
(中略)
【0118】
端末装置100は、動作モード切替部を備える。動作モード切替部は、端末装置100の動作モードを、グループ間通信でマスタとして機能するマスタモードと、スレーブとして機能するスレーブモードとに切り替える。例えば、動作モード切替部は、ダイヤルスイッチ130の操作に応じて端末装置100の動作モードを切り替え、端末装置100は初期状態においてスレーブモードで動作し、ダイヤルスイッチ130が操作された場合に動作モード切替部によってマスタモードに切り替わる。端末装置100の動作モードは電源がオフとなっても保持され、マスタモード時に電源がオフになった場合、再び電源がオンになると端末装置100はマスタモードで起動する。反対に、スレーブモード時に電源がオフになった場合、再び電源がオンになると端末装置100はスレーブモードで起動する。また、端末装置100は、モード切替動作を行っているときに電源オフの操作がなされた場合、直ちに電源をオフにするのではなく、モード切替の初期化処理のため電源オン状態を一時的に保持し、その間に動作モードを確実に切り替えて切り替え完了をユーザにインジケータ132などを用いて通知し、その後電源をオフにする。尚、マスタ/スレーブ切り替えは、ダイヤルスイッチ130の操作に限らず、上位からの切替指示命令であっても良い。」
(2) 引用発明の認定
<引用発明>
「端末装置100、スマートフォン200、およびカセット300を備えるシステム10であって、(【0010】)
端末装置100は、電源部113とプリンタ部114とに分離可能な筐体110を有し、(【0012】)
プリンタ部114の外周には、円筒状のダイヤルスイッチ130が設けられていて、ユーザがダイヤルスイッチ130を操作することにより、電源のオンオフ、動作モードの切り替えなど端末装置100の操作を可能としており、(【0013】)
端末装置100は、1または複数の他の端末装置100とグループを構成し、BLE通信により他の端末装置100とグループ間通信を行い、例えば、グループ間通信のマスタとして機能し、他の端末装置100がスレーブとして機能し、グループ間通信により他の端末装置100と各種データを共有することができ、他の端末装置100は、マスタとして機能することもできるものであり、(【0108】)
端末装置100は、動作モード切替部を備え、動作モード切替部は、端末装置100の動作モードを、グループ間通信でマスタとして機能するマスタモードと、スレーブとして機能するスレーブモードとに切り替えるものであり、例えば、動作モード切替部は、ダイヤルスイッチ130の操作に応じて端末装置100の動作モードを切り替え、(【0118】)
端末装置100に用紙Pおよび電力を供給するカセット300は、用紙Pが収容される円弧状の収容部310を有しており、収容部310の内周面には、収容部310に囲まれた空間内の物体に関する計測を行う複数のセンサモジュール320が設けられ、収容部310を透明なパイプに装着した場合、複数のセンサモジュール320によりパイプ内の物体に関する存在確認、形状、サイズ、移動方向、移動速度等の計測ができ、本体305に設けられたIC(Integrated Circuit)等の処理部307により、センサモジュール320から得られたセンサデータの記憶、内部処理等を行うことができ、端末装置100へセンサデータを送信することにより、端末装置100でのセンサデータの印刷、共有、外部処理、蓄積、配信等を行うこともできるものであって、(【0014】)
センサモジュール320に実装されるセンサは、測定内容に応じた如何なるセンサであってもよく、(【0102】)
収容部310の外周面にタッチパネル・ディスプレイ360が設けられており、タッチパネル360による情報表示および各種操作が可能である、(【0096】)
システム10。」
5 引用文献7の記載事項及び技術常識Aの認定
(1) 引用文献7に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願日前にウェイバックマシンに保存されたウェブサイトのサブページである「Bluetooth Low Energyの接続(★)、Bluetooth技術コラム、フィールドデザイン株式会社ホームページ、https://web.archive.org/web/20211208001213/https://fielddesign.jp/technology/ble/blespec_connect/参照、2021年12月8日にウェイバックマシンに保存」(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。
「マスター/スレーブ、セントラル/ペリフェラル
Bluetoothでは、ver1.0からマスター、スレーブという役割が使われてきました。
2つのデバイス間で、マスターがパケットを出し、その直後にスレーブがパケットで応答するというやりとりをひたすら続けることで、接続を保っています。この関係は、Bluetooth Low Energy以降も同じです。マスター、スレーブという役割は、接続状態でのみ使われるものです。
ここでややこしいのは、Bluetooth Low Energyでは、セントラル、ペリフェラルという役割が追加されました。Bluetooth Low Energyでは、接続前にビーコン(アドバータイズ)を出すものをペリフェラルといい、そのビーコンをスキャンするものをセントラルと呼んでいます。接続後は、セントラルが先にパケットを出して、ペリフェラルがそれに応答する形になるため、セントラルが必ずマスターとなり、ペリフェラルが必ずスレーブになります。Bluetooth SIGでは、いずれ、マスターをセントラル、スレーブをペリフェラルと統一するようにするみたいです。
なお、Bluetooth Low Energyでは、GATTより上のプロファイルで、クライアントとサーバという役割も出てきます。クライアントは、セントラルが成っても、ペリフェラルが成っても構いません。同様に、サーバは、セントラルが成っても、ペリフェラルが成っても構いません。
通常は、ペリフェラル側がサーバになり、セントラル側がクライアントになります。」
(2) 技術常識Aの認定
前記(1)に摘記した引用文献7の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識A」という。)
<技術常識A>
「Bluetoothでは、ver1.0からマスター、スレーブという役割が使われてきているところ、Bluetooth Low Energyでは、セントラル、ペリフェラルという役割が追加され、接続前にビーコン(アドバータイズ)を出すものをペリフェラルといい、そのビーコンをスキャンするものをセントラルと呼んでおり、接続後は、セントラルが先にパケットを出して、ペリフェラルがそれに応答する形になるため、セントラルが必ずマスターとなり、ペリフェラルが必ずスレーブになること。」
6 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点
(ア) 構成Xは、「ガスセンサを搭載したガス検知器であって、」「通信機能を有したガス検知器」の発明であることである。
(イ) 引用発明の「システム10」は、「センサ」が「実装される」「複数のセンサモジュール320」を含んでおり、センサを搭載した検出器であるといえるから、本願発明の「ガスセンサを搭載したガス検知器」と、「センサを搭載した検知器」である点で共通する。
(ウ) 引用発明の「システム10」は、「システム10」が「備える」「端末装置100」が「1または複数の他の端末装置100とグループを構成し、BLE通信により他の端末装置100とグループ間通信を行[う]」ものであるから、通信機能を有したものであるといえる。
(エ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Xの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Xの観点における一致点
「センサを搭載した検知器であって、」「通信機能を有した検知器」の発明である点。
b 構成Xの観点における相違点
本願発明においては、搭載したセンサが「ガスセンサ」であり、そのため、検知器が「ガス検知器」であるのに対して、
引用発明においては、センサが「測定内容に応じた如何なるセンサであってもよ[い]」ものの、ガスセンサであることの特定がない点。
イ 構成Aの観点
(ア) 構成Aは、「外部の機器から送信される第1のアドバタイズを受信不可とするとともに、当該外部の機器へ第2のアドバタイズを送信でき、ペリフェラルとして機能する第1のモードと、前記外部の機器から送信される前記第1のアドバタイズを受信でき、セントラルとして機能する第2のモードと、を切り換え可能な制御部」を備えることである。
(イ) 引用発明における「BLE通信により」「行[われる]」「グループ間通信でマスタとして機能するマスタモード」、及び、「スレーブとして機能するスレーブモード」は、それぞれ、本願発明における「第1のモード」、及び、「第2のモード」に相当する。
(ウ) 引用発明における「ダイヤルスイッチ130の操作に応じて端末装置100の動作モードを切り替え[る]」「動作モード切替部」は、「端末装置100の動作モードを、グループ間通信でマスタとして機能するマスタモードと、スレーブとして機能するスレーブモードとに切り替えるものであ[る]」から、前記(イ)も踏まえると、本願発明における「外部の機器から送信される第1のアドバタイズを受信不可とするとともに、当該外部の機器へ第2のアドバタイズを送信でき、ペリフェラルとして機能する第1のモードと、前記外部の機器から送信される前記第1のアドバタイズを受信でき、セントラルとして機能する第2のモードと、を切り換え可能な制御部」と、「第1のモードと、第2のモードと、を切り換え可能な制御部」である点で共通する。
(エ) 引用発明において、「動作モード切替部」は、「システム10」が「備える」「端末装置100」が「備える」ものであるから、引用発明の「システム10」は、本願発明における「制御部」「を備え」に相当する構成を備えるといえる。
(オ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Aの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Aの観点における一致点
「第1のモードと、第2のモードと、を切り換え可能な制御部」を備える点。
b 構成Aの観点における相違点
第1のモード、及び、第2のモードについて、
本願発明においては、それぞれ、「外部の機器から送信される第1のアドバタイズを受信不可とするとともに、当該外部の機器へ第2のアドバタイズを送信でき、ペリフェラルとして機能する」モード、及び、「前記外部の機器から送信される前記第1のアドバタイズを受信でき、セントラルとして機能する」モードであるのに対して、
引用発明においては、それぞれ、「BLE通信により」「行[われる]」「グループ間通信でマスタとして機能する」モード、及び、「スレーブとして機能する」モードである点。
ウ 構成Bの観点
(ア) 構成Bは、「操作受付部」を備えることである。
(イ) 引用発明における「円筒状のダイヤルスイッチ130」は、「ユーザが」これを「操作する」ことが想定されているから、本願発明における「操作受付部」に相当する。
(ウ) 引用発明における「円筒状のダイヤルスイッチ130」は、「システム10」が「備える」「端末装置100」に「設けられてい[る]」から、引用発明の「システム10」は、本願発明における「操作受付部」「を備え」に相当する構成を備えるといえる。
(エ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、構成Bの観点において、次の点で一致する。
「操作受付部」を備える点。
エ 構成Cの観点
(ア) 構成Cは、「前記制御部は、前記操作受付部が所定の操作を受け付けた場合、前記第1のモードから前記第2のモードに切り換えることを特徴とする」ことである。
(イ)a 前記イ(イ)において検討したとおり、引用発明における「マスタモード」及び「スレーブモード」は、それぞれ、本願発明における「第1のモード」及び「第2のモード」に相当する。
b 前記イ(ウ)において検討したとおり、引用発明における「動作モード切替部」は、本願発明における「制御部」に相当する。
c 前記ウ(イ)において検討したとおり、引用発明における「ダイヤルスイッチ130」は、本願発明における「操作受付部」に相当する。
(ウ) 引用発明において「ユーザがダイヤルスイッチ130を操作すること」は、前記(イ)cも踏まえると、本願発明において「操作受付部が所定の操作を受け付け[る]」ことに相当する。
(エ) 引用発明において「端末装置100の動作モードを、」「マスタモードと」「スレーブモードとに切り替えるものであ[る]」「動作モード切替部」が、「ダイヤルスイッチ130の操作に応じて端末装置100の動作モードを切り替え[る]」ことは、前記(イ)a及びb並びに前記(ウ)も踏まえると、本願発明において「制御部」が、「前記操作受付部が所定の操作を受け付けた場合、前記第1のモードから前記第2のモードに切り換えること」に相当する。
(オ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明は、構成Cの観点において、次の点で一致する。
「前記制御部は、前記操作受付部が所定の操作を受け付けた場合、前記第1のモードから前記第2のモードに切り換えることを特徴とする」こと。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点において相違すると認められる。
ア 一致点
「センサを搭載した検知器であって、
第1のモードと、第2のモードと、を切り換え可能な制御部と、
操作受付部と、を備え、
前記制御部は、前記操作受付部が所定の操作を受け付けた場合、前記第1のモードから前記第2のモードに切り換えることを特徴とする通信機能を有した検知器」の発明である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1
本願発明においては、搭載したセンサが「ガスセンサ」であり、そのため、検知器が「ガス検知器」であるのに対して、
引用発明においては、センサが「測定内容に応じた如何なるセンサであってもよ[い]」ものの、ガスセンサであることの特定がない点。
(イ) 相違点2
第1のモード、及び、第2のモードについて、
本願発明においては、それぞれ、「外部の機器から送信される第1のアドバタイズを受信不可とするとともに、当該外部の機器へ第2のアドバタイズを送信でき、ペリフェラルとして機能する」モード、及び、「前記外部の機器から送信される前記第1のアドバタイズを受信でき、セントラルとして機能する」モードであるのに対して、
引用発明においては、それぞれ、「BLE通信により」「行[われる]」「グループ間通信でマスタとして機能する」モード、及び、「スレーブとして機能する」モードである点。
7 判断
(1) 相違点1について
引用発明における「センサモジュール320」について、「センサモジュール320に実装されるセンサは、測定内容に応じた如何なるセンサであってもよ[い]」との示唆を踏まえて、周知の様々なセンサを実装させてみることは、当業者が備える通常の創作能力の発揮にすぎない。
そして、「ガス」を測定できるセンサは例を挙げるまでもなく周知であるから、引用発明において、「センサモジュール320に実装されるセンサ」として、そのようなセンサを用いることで、前記相違点1に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。
(2) 相違点2について
ア 前記5(2)において技術常識Aとして認定したとおり、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。
「Bluetoothでは、ver1.0からマスター、スレーブという役割が使われてきているところ、Bluetooth Low Energyでは、セントラル、ペリフェラルという役割が追加され、接続前にビーコン(アドバータイズ)を出すものをペリフェラルといい、そのビーコンをスキャンするものをセントラルと呼んでおり、接続後は、セントラルが先にパケットを出して、ペリフェラルがそれに応答する形になるため、セントラルが必ずマスターとなり、ペリフェラルが必ずスレーブになること。」
イ 引用発明において、「端末装置100は、」「BLE通信により他の端末装置100とグループ間通信を行い、」「グループ間通信のマスタとして機能し、他の端末装置100がスレーブとして機能し」、「端末装置100は、動作モード切替部を備え、動作モード切替部は、端末装置100の動作モードを、グループ間通信でマスタとして機能するマスタモードと、スレーブとして機能するスレーブモードとに切り替える」構成(以下「BLE通信切替構成」という。)を備えるところ、前記技術常識A(特に下線部参照)を踏まえると、上記BLE通信切替構成に接した当業者であれば、「マスタとして機能する」「端末装置100」にセントラルの役割が与えられており、「スレーブとして機能[する]」「他の端末装置100」にペリフェラルの役割が与えられていることを観念できるといえる。
ウ そして、このことは、引用発明におけるBLE通信切替構成において、「マスタとして機能するマスタモード」、及び、「スレーブとして機能するスレーブモード」が、それぞれ、前記相違点2に係る本願発明における「セントラルとして機能する第2のモード」、及び、「ペリフェラルとして機能する第1のモード」に相当することにほかならない。
エ さらに、BLE通信において、「ペリフェラル」が「外部の機器から送信される第1のアドバタイズを受信不可とするとともに、当該外部の機器へ第2のアドバタイズを送信でき[る]」ものであり、「セントラル」が「外部の機器から送信される前記第1のアドバタイズを受信でき[る]」ものであることは、例を挙げるまでもなく技術常識である。
オ したがって、前記相違点2が実質的な相違点であるとは認められない。
また、仮に前記相違点2が実質的な相違点であるとしても、引用発明において、前記技術常識Aを踏まえて前記相違点2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。
(3) 総合評価
前記(1)及び(2)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び技術常識Aに基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、前記相違点を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び技術常識Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
8 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
請求人は、令和7年7月25日に提出した意見書において、次の主張を行っている。
ア 主張1
引用文献6には接続確立後の役割を表すマスタ・スレーブの切り替えについて記載されているため、引用発明では、接続確立前の状態ではモードの切り替えができないと考えられるから、接続確立前にモードを切り替える構成、つまり、接続確立前の役割を表すセントラル・ペリフェラルを切り替える構成を想到することは困難である。
イ 主張2
本願発明は、接続確立前の段階でペリフェラルから送信されるアドバタイズにガスの濃度情報を含ませることで、ガス検知器と外部の機器とを接続せずとも、任意のタイミングでリアルタイムの濃度情報を確認できるという効果を奏する。
(2) 請求人の主張についての検討
ア 主張1について
主張1は、前記相違点2に係る構成についてのものであるところ、前記7(2)において説示したとおり、前記相違点2が実質的な相違点であるとは認められず、仮に実質的な相違点であるとしても、引用発明において技術常識Aを踏まえて前記相違点2に係る構成を備えるようにすることは、当業者にとって自明な設計事項である。
したがって、主張1を採用することはできない。
イ 主張2について
本願発明において、アドバタイズにガスの濃度情報を含ませることは特定されていないから、主張2に係る効果が、本願発明が奏する効果であるとは認められない。
また、いずれにせよ、令和7年5月21日付け拒絶理由通知書において技術常識1として認定したとおり、「BLE通信において、スレーブ(ペリフェラル)が各種センサから取得した計測データをマスタ(セントラル)に受信させるために、スレーブ(ペリフェラル)が発信する接続要求情報であるアドバタイズ信号に、各種センサから取得した計測データを含ませることができること」は技術常識であるから、前記効果が格別なものとは認められない。
したがって、主張2は前記7の結論を左右するものでない。
9 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-007791