特許拒絶査定不服審判
2024-005142
発報方法
- 審判番号
- 2024-005142
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-180564
- 請求日
- 2024年03月27日
- 審決日
- 2024年08月13日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】新コスモス電機株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 馬場 慎
- 審判官 稲葉 崇
- 審判官 丸山 高政
- 分類
- P18 .121-Z (G08B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-180564「発報方法」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和5年3月16日に出願した特願2023-42297号の一部を令和5年10月19日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 5年12月 6日付け 拒絶理由通知書
令和 6年 1月30日 意見書・手続補正書
2月14日付け 拒絶査定
3月27日 審判請求書
以下では、令和6年2月14日付け拒絶査定を「原査定」という。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年1月30日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
なお、後の参照の便宜のため、請求項1を以下のA~Eに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A 取得される検知情報に基づく第1音声、及び外部機器との通信に基づく第2音声を出力装置から発する報知装置に音声による報知を行なわせる発報方法であって、
B 前記報知装置に前記第1音声及び前記第2音声の一方の音声の音量を選択させることと、
C 選択された前記音量で前記出力装置に含まれる単一の音声発生装置に前記一方の音声を発しさせることと、
D 前記第1音声及び前記第2音声のうちの前記一方の音声と異なる他方の音声を、前記音量よりも低い音量で、前記一方の音声と並行して前記音声発生装置に発しさせることと、
E を含んでいる、発報方法。
第3 原査定の概要
原査定の概要は、以下のとおりである。
1.(進歩性)この出願の請求項1及び2に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明又は引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2003-115901号公報
引用文献2.特開2013-51504号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された特開2003-115901号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は強調のために当審で付した。
(1)「【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、ページャとPHS端末の機能を有する複合端末に適用した一実施例として、図面を参照して説明する。
A.実施例の構成
A-1.無線通信システムの構成
図1は本発明の実施例によるページャやPHS端末等の無線通信システムの構成を示すブロック図である。図において、電話回線網1は、全国に張り巡らされた通常のアナログ電話回線網(PSTN網)、あるいはデジタル回線網(例えば、ISDN網)である。該電話回線網1には、電話機(アナログ端末およびデジタル端末)2、所定間隔で設置されたPHS基地局3、PHSセンタ4、およびページングセンタ5が接続されている。電話機2は、一般家庭に設置されている電話機や公衆電話機あるいは図示しないPBX(交換機)を介して電話回線網1に接続される電話機であり、ページャ7や複合端末8にメッセージを送る場合に使用される。利用者は、メッセージを送る場合、上記電話機2あるいは後述する複合端末8のPHS部から相手のページャ7または複合端末8に電話をかけ、メッセージに対応する数字を入力することにより送信するか、トーンダイヤラ機能を利用して、予め入力しておいた電話番号およびメッセージを選択して送信する。上記メッセージは、電話回線網1に接続されているページングセンタ5に供給される。
【0009】PHS基地局3は、図示の例では1つであるが、実際には複数であり、それぞれのサービスエリアに存在するPHS端末との間で無線によりデータ授受することにより、端末同士の回線を確立したり、後述するPHSセンタ4によるサービスを複合端末8に提供する。また、PHSセンタ4は、図示しないデータベースに複合端末8の位置登録情報や認証情報、課金情報を格納し、電話回線網1を制御して端末間での通信を管理するとともに、データベースにボイスメール等の各種データを蓄積し、後述する複合端末8からの要求に応じて、上記ボイスメールやデータを利用者に与える各種のサービスを提供する。次に、ページングセンタ5には、所定間隔で設置されたページャ基地局6,6が接続されており、該ページャ基地局6,6を介して、複合端末8または電話機2から送信されたページャメッセージをページャ7または複合端末8に対して送信する。」
(2)「【0011】A-2.複合端末の構成
図2は本発明の実施例による複合端末8の構成を示すブロック図である。図において、10はPHS用の送受信部であり、受信部および送信部からなる周波数変換部と、受信部および送信部からなるモデムとから構成されている。周波数変換部の受信部は、送信/受信を振り分けるアンテナスイッチを介して入力される、アンテナANT1で受信した信号を、PLLシンセサイザから出力される所定周波数の局部発振信号と混合することにより、1.9GHz帯から1MHz帯付近のIF(中間周波)信号に周波数変換する。また、周波数変換部の送信部は、後述するモデムから供給されるπ/4シフトQPSKの変調波をPLLシンセサイザから出力される所定周波数の局部発振信号と混合することにより、1.9GHz帯に周波数変換し、アンテナスイッチを介してアンテナANT1から輻射する。次に、上述したモデムの受信部は、周波数変換部からのIF信号を復調し、IQデータに分離してデータ列とし、PHS通信制御部11へ送出する。また、モデムの送信部では、通信制御部11から供給されるデータからIQデータを作成して、π/4シフトQPSKの変調をして、PHS送受信部10の周波数変換部へ送出する。
【0012】次に、PHS通信制御部11は、送信側および受信側とで構成されており、フレーム同期およびスロットのデータフォーマット処理を行う。上記受信側は、PHS送受信部10のモデムから供給される受信データから所定のタイミングで1スロット分のデータを取り出し、このデータの中からユニークワード(同期信号)を抽出してフレーム同期信号を生成し、かつ、制御データ部および音声データ部のスクランブル等を解除した後、制御データを制御部18へ送出し、音声データを音声処理部12へ送出する。また、上記送信側は、音声処理部12から供給される音声データに制御データ等を付加するとともに、スクランブル等を付与した後にユニークワード等を付加して、1スロット分の送信データを作成し、所定タイミングでフレーム内の所定スロットに挿入してPHS送受信部10のモデムに送出する。
【0013】次に、上述した音声処理部12は、スピーチコーディックおよびPCMコーディックで構成されている。上記スピーチコーディックは、デジタルデータの圧縮/伸張処理を行うものであり、受信側および送信側とで構成されている。受信側は、PHS通信制御部11から供給されるADPCM音声信号(4ビット×8KHz=32Kbps)をPCM音声信号(8ビット×8KHz=64Kbps)に復号化することにより伸張してPCMコーディックに出力する。送信側は、PCMコーディックから供給されるPCM音声信号をADPCM音声信号に符号化することにより圧縮してPHS通信制御部11へ送出する。上述したPCMコーディックは、アナログ/デジタル変換処理を行うものであり、受信側は、スピーチコーディックから供給されるPCM音声信号をD/A変換によりアナログ音声信号へ変換し、スピーカ13から発音させ、送信側はマイク14から入力されたアナログ音声信号をA/D変換によりPCM信号に変換し、スピーチコーディックに送出する。
【0014】ページャ受信部15は、ページャ用のアンテナANT2で受信した信号を復調し、ページャ通信制御部16に供給する。ページャ通信制御部16は、上記復調された信号から送信者の識別情報(例えば、電話番号等)、受信したメッセージを取り出し、制御部18に供給する。次に、キー入力部17は、相手先の電話番号を入力する数値キーや、オンフック/オフフックを行うスイッチ、音声出力を変えるボリュームスイッチ等から構成される。これらキーやスイッチの状態は制御部18に供給される。
【0015】次に、制御部18は、所定のプログラムに従って装置全体を制御する。特に、本実施例では、上述したPHSによる動作とページャ通信システムによる動作を同時に作動させることができるようになっている。また、制御部18は、PHSおよびページャにおける着信時の報知やメッセージ表示処理、PHSでの発信、通話処理、着信時の報知等を行うようになっている。制御部8は、通常、ページャあるいはPHSが着信すると、後述するRAM20に予め設定されている情報に従って報知するようになっている。これに対して、例えば、PHSによる通話中に、ページャ通信システムからのメッセージを着信した場合には、使用者に不快感を与えず、かつ通話の障害を防止することがないような報知を行うようになっている。具体的には、ページャ着信を着信音で報知するように設定されている場合には、最小音量で報知し、また、バイブ(振動)で報知するように設定されている場合には、最小振動で報知するようになっている。なお、着信音は、スピーカ13を鳴動させることにより実現され、バイブ(振動)は、後述するバイブ22を作動させることにより実現される。
【0016】ROM19には上記制御部18で実行されるプログラムや、種々のパラメータ等が格納されている。また、RAM20は、上記制御部18の制御に伴って生成されるデータが格納されたり、ワーキングエリアとして用いられるとともに、電話をかける相手先の住所や、電話番号等のデータからなる住所録等の電話帳(データベース)が格納されている。特に、本実施例では、RAM20には、図3に示すように、上述したPHSおよびページャによる着信を報知する際の情報として、それぞれに対して、着信音の大中小、バイブ(振動)が格納されている。これら情報は、ユーザによって任意に設定可能となっている。」
(当審注:【0015】の「制御部8」との記載は、「制御部18」の誤記と認める。)
(3)図2
[図:0001416369000001.jpg]
図2は複合端末8の構成を示すものである(【0011】)から、図2によれば、複合端末8は、アンテナANT1、PHS送受信部10、PHS通信制御部11、音声処理部12、スピーカ13、アンテナANT2、ページャ受信部15、ページャ通信制御部16、制御部18、ROM19及びRAM20を備える。また、複合端末8が備えるスピーカ13は1つであることが見て取れる。
(4)「【0019】図4および図5は、本実施例による複合端末8において、PHSおよびページャでの着信を報知するための動作を説明するためのフローチャートである。図4において、まず、ステップS10で、PHSまたはページャに対して着信があるか否かを判断し、着信があれば、ステップS12に進み、着信がPHSかページャかを判断する。そして、PHSに対して着信があった場合には、ステップS14に進み、RAM20からPHSに対して設定されている着信音種別を読み込み、ステップS16で、着信音種別が「バイブ」か否かを判断する。そして、着信音種別が「バイブ」であれば、ステップS18に進み、図6(a)に示すように、バイブ22を駆動して振動させることにより、使用者にPHSに着信があったことを報知する。
【0020】一方、着信音種別が「着信音(大、中または小)」であれば、ステップS20に進み、例えば、図6(b)に示すように、スピーカ13を鳴動させることにより、使用者にPHSに着信があったことを報知する。次に、ステップS22で、オフフックされたか否かを判断し、オフフックされると、ステップS24で、通話処理を行う。なお、実際には、該通話中においても、着信の有無を検知しており、着信があると、ステップS12における判断処理が実行されるようになっている。そして、ステップS26で、オンフックされたか否かを判断し、オンフックされるまで、通話を続け、オンフックされると、回線を切断し、当該処理を終了する。
【0021】また、ページャに対して着信があった場合には、図5に示すステップS28に進み、PHSによって通話中であるか否かを判断する。そして、通話中でなければ、ステップS30に進み、RAM20からページャに対して設定されている着信音種別を読み込み、ステップS32で、着信音種別が「バイブ」か否かを判断する。そして、着信音種別が「バイブ」であれば、ステップS34に進み、バイブ22を駆動して振動させることにより、使用者にPHS着信があったことを報知する。一方、着信音種別が「着信音(大、中または小)」であれば、ステップS36に進み、スピーカ13を鳴動させることにより、使用者にPHS着信があったことを報知する。一方、PHSによる通話中にページャに着信があった場合には、ステップS38に進み、RAM20の設定内容を無視し、図6(c)に示すように、スピーカ13の通話音声に小音量の着信音を重畳させ、使用者にページャに着信があったことを報知する。
【0022】このように、本実施例では、PHSによる通話中にページャに対して着信があると、ページャに対する着信方式の設定内容にかかわらず、スピーカ13の通話音声に小音量の着信音を重畳させ、使用者にページャに着信があったことを報知するようにしたので、使用者に不快感を与えず、かつ通話の障害を防止することができる。」
2 引用発明
(1)前記1(2)及び(4)のとおり、引用文献1には、「制御部18」が「装置全体を制御」し、「PHSおよびページャにおける着信時の報知やメッセージ表示処理、PHSでの発信、通話処理、着信時の報知等を行う」(【0015】)ことが記載されており、「複合端末8において、PHSおよびページャでの着信を報知するための動作」の「フローチャート」(【0019】)として、「ステップS10」~「ステップS38」の記載も認められる(【0019】~【0021】)。
したがって、引用文献1の「制御部18」は、当該「フローチャート」の各ステップを含む、「複合端末8」の装置全体を制御する方法(以下「複合端末制御方法」という。)を実行するものと認められ、「複合端末8」の各動作は、複合端末制御方法により行われるものといえる。
(2)前記1の記載及び前記(1)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明をa~nに分説し、「分説a」などのようにして参照する。
<引用発明>
「a ページャとPHS端末の機能を有する複合端末を制御する複合端末制御方法であって、(【0008】及び前記(1))
b 無線通信システムにおいて、PHS基地局3は、PHS端末との間で無線によりデータ授受し、(【0008】及び【0009】)
c 複合端末8は、アンテナANT1、PHS送受信部10、PHS通信制御部11、音声処理部12、スピーカ13、アンテナANT2、ページャ受信部15、ページャ通信制御部16、制御部18、ROM19及びRAM20を備え、複合端末8が備えるスピーカ13は1つであり、(図2)
d PHS送受信部10は、受信部および送信部からなる周波数変換部と、受信部および送信部からなるモデムとから構成されており、周波数変換部の受信部は、アンテナANT1で受信した信号をIF(中間周波)信号に周波数変換し、モデムの受信部は、周波数変換部からのIF信号を復調し、IQデータに分離してデータ列とし、PHS通信制御部11へ送出し、(【0011】)
e PHS通信制御部11は、送信側および受信側とで構成されており、受信側は、PHS送受信部10のモデムから供給される受信データから所定のタイミングで1スロット分のデータを取り出し、音声データを音声処理部12へ送出し、(【0012】)
f 音声処理部12は、スピーチコーディックおよびPCMコーディックで構成されており、スピーチコーディックは、受信側および送信側とで構成されており、受信側は、PHS通信制御部11から供給されるADPCM音声信号をPCM音声信号に復号化することにより伸張してPCMコーディックに出力し、PCMコーディックは、アナログ/デジタル変換処理を行うものであり、受信側は、スピーチコーディックから供給されるPCM音声信号をD/A変換によりアナログ音声信号へ変換し、スピーカ13から発音させ、(【0013】)
g ページャ受信部15は、ページャ用のアンテナANT2で受信した信号を復調し、ページャ通信制御部16に供給し、ページャ通信制御部16は、復調された信号から送信者の識別情報(例えば、電話番号等)、受信したメッセージを取り出し、制御部18に供給し、(【0014】)
h1 制御部18は、所定のプログラムに従って装置全体を制御し、PHSによる動作とページャ通信システムによる動作を同時に作動させることができるようになっており、制御部18は、PHSおよびページャにおける着信時の報知やメッセージ表示処理、PHSでの発信、通話処理、着信時の報知等を行うようになっており、(【0015】)
h2 制御部18は、通常、ページャあるいはPHSが着信すると、RAM20に予め設定されている情報に従って報知するようになっており、これに対して、PHSによる通話中に、ページャ通信システムからのメッセージを着信した場合には、ページャ着信を着信音で最小音量で報知し、着信音は、スピーカ13を鳴動させることにより実現され、(【0015】)
i ROM19には制御部18で実行されるプログラムや、種々のパラメータ等が格納されており、RAM20には、PHSおよびページャによる着信を報知する際の情報として、それぞれに対して、着信音の大中小、バイブ(振動)が格納されており、これら情報は、ユーザによって任意に設定可能となっており、(【0016】)
j PHSおよびページャでの着信を報知するための動作において、まず、PHSまたはページャに対して着信があるか否かを判断し、PHSに対して着信があった場合には、RAM20からPHSに対して設定されている着信音種別を読み込み、(【0019】)
k 着信音種別が「着信音(大、中または小)」であれば、スピーカ13を鳴動させることにより、使用者にPHSに着信があったことを報知し、オフフックされると、通話処理を行い、該通話中においても、着信の有無を検知しており、(【0020】)
l ページャに対して着信があった場合には、PHSによって通話中であるか否かを判断し、PHSによる通話中にページャに着信があった場合には、RAM20の設定内容を無視し、スピーカ13の通話音声に小音量の着信音を重畳させ、使用者にページャに着信があったことを報知し、(【0021】)
m スピーカ13の通話音声に小音量の着信音を重畳させ、使用者にページャに着信があったことを報知するようにしたので、使用者に不快感を与えず、かつ通話の障害を防止することができる、(【0022】)
n 複合端末制御方法。」
第5 本願発明と引用発明との対比・判断
1 対比
(1)発明特定事項Aについて
本願発明を特定する事項に「音声」がある。ここで、「音声」とは、「人間が発声器官を通じて発する言語音。また、テレビなどの音。」(広辞苑)の意味である。すると、本願発明の「音声」(「第1音声」及び「第2音声」を含む)は、「人間が発声器官を通じて発する言語音」に限られず、「テレビなどの音」と解釈すべきである。このことは、前述した「音声」の意味に加え、本願の明細書の「本開示において「音声」は、ヒトが声として発する音やヒトの声を模して人工的に生成された音だけでなく、楽曲の音、及び、雨風や波、又はヒト以外の生物などによって自然界で生成される特段の意味を有さない音、並びに、それらの録音後の再生音、などのあらゆる音を含んでいる。」(【0018】)との記載により、明らかである。
よって、以下では本願発明の「音声」を、テレビなどの音、すなわち、音の出力が可能な機器から発せられるあらゆる音(言語音に限られない)として解釈する。
ア 引用発明では、「PHSによる通話中にページャに着信があった場合」に「スピーカ13の通話音声に小音量の着信音を重畳させ」ており(分説l)、ページャに対して着信があった場合の「着信音」(以下「ページャ着信音」という。)が、「スピーカ13」から発せられるものと認められるから、引用発明の「ページャ着信音」は本願発明の「音声」に相当する。
イ 引用発明の「複合端末」(分説a)は、「ページャに着信があったことを報知」する(分説l)から、報知を行う装置であり、本願発明の「報知装置」に相当する。
加えて、本願の明細書においても、「報知装置100は、警報器の他、携帯電話などの携帯機器」等として「具現化される」(【0015】)とされており、報知装置として、着信を受けるような携帯機器も想定しているものと認められるから、引用発明の「複合端末」を、本願発明の「報知装置」に相当すると認定することは、本願の明細書の記載とも整合的である。
ウ 引用発明の「複合端末制御方法」(分説a)では、「ページャに対して着信があった場合」に、「着信があったことを報知」しており(分説l)、この報知は前記アの「ページャ着信音」により行われる。
そして、報知することは、所定の報せを発する、すなわち、発報することといえるから、引用発明の「複合端末制御方法」は、発報の方法を包含する。
したがって、引用発明の「複合端末制御方法」は、本願発明の「報知装置に音声による報知を行なわせる発報方法」に相当する。
エ 引用発明では、ページャに対して着信があった場合に、「ページャ着信音」により報知が行われる(前記ウ)。
そして、引用発明において「着信時の報知」は、「制御部18」が行っており(分説h1)、かつ、引用発明の「着信の有無」は「検知」されるものである(分説k)から、機器の制御は一般にマイコンなどの情報処理装置により実装されることに鑑みると、引用発明の「制御部18」は、当然、ページャに対する着信を検知したことを示す情報(以下「ページャ着信情報」という。)を取得し、「ページャ着信情報」に基づいて「ページャ着信音」を発する制御を行っているものと認められる。
そうすると、引用発明の「ページャ着信音」は、「制御部18」が取得した「ページャ着信情報」に基づいて発せられる音声であるから、本願発明の「取得される検知情報に基づく第1音声」に相当する。
加えて、本願の明細書においても、「報知装置100」は、「周囲環境の状態」だけでなく、「報知装置100自身の特定の状態への遷移」等を「検知」して、「その検知によって取得された検知情報」を「周囲のユーザーなどに報せてもよ」く、「電話の着信などを報知してもよ」い(【0014】)とされている。したがって、着信があったことを検知情報とし、該検知情報に基づいて報知をすることは、本願の明細書においても報知装置の動作として想定されているものと認められるから、引用発明の「ページャ着信音」を、本願発明の「取得される検知情報に基づく第1音声」に相当すると認定することは、本願の明細書の記載とも整合的である。
オ 引用発明では、「アンテナANT1で受信した信号」が、「PHS送受信部10」の「周波数変換部の受信部」及び「モデムの受信部」により順に処理されて、「PHS通信制御部11へ送出」され(分説d)、「PHS通信制御部11」の「受信側」により処理されて、「音声データ」が「音声処理部12へ送出」され(分説e)、「音声処理部12」の「スピーチコーディック」及び「PCMコーディック」により処理されて、「PCM音声信号をD/A変換によりアナログ音声信号へ変換」したものが、「スピーカ13から発音」される(分説f)。
すなわち、引用発明では、「アンテナANT1」で受信したPHSの受信信号に対して、「PHS送受信部10」及び「PHS通信制御部11」により処理がされ、PHSの受信信号に基づく「音声データ」(以下「PHS音声データ」という。)が「音声処理部12」に入力され、「PHS音声データ」に基づく音声(以下「PHS音声」という。)が、「スピーカ13」から発せられるものと認められる。
また、引用発明では、「PHS基地局3」が「PHS端末との間で無線によりデータ授受」する(分説b)から、PHSの受信信号は、「PHS基地局3」との通信により受信されるものと認められる。
したがって、引用発明の「PHS音声」は、「PHS基地局3」との通信に基づくものといえるから、本願発明の「外部機器との通信に基づく第2音声」に相当する。
カ 引用発明では、「スピーカ13の通話音声に小音量の着信音を重畳させ」る(分説l)から、スピーカ13の通話音声に着信音を重畳させる処理を行う手段(以下「着信音重畳手段」という。)を備えているといえる。
そして、引用発明では、「着信音重畳手段」及び「スピーカ13」により、通話音声と着信音を出力する機能を担っているとみることができる。
したがって、引用発明の「着信音重畳手段」及び「スピーカ13」(以下「音声重畳・発生部」という。)は音声を出力する装置であるといえ、引用発明の「音声重畳・発生部」は、本願発明の「出力装置」に相当する。
キ 引用発明では、「ページャ着信音」が「スピーカ13」から発せられ(前記ア)、「PHS音声」も「スピーカ13」から発せられる(前記オ)から、「ページャ着信音」及び「PHS音声」を「スピーカ13」から発している。そして、「スピーカ13」は「音声重畳・発生部」に含まれる(前記カ)から、引用発明では、「ページャ着信音」及び「PHS音声」を「音声重畳・発生部」から発しているといえる。
また、引用発明の「ページャ着信音」は、本願発明の「取得される検知情報に基づく第1音声」に相当し(前記エ)、引用発明の「PHS音声」は、本願発明の「外部機器との通信に基づく第2音声」に相当する(前記オ)。
したがって、本願発明の「報知装置」と、引用発明の「複合端末」とは、「取得される検知情報に基づく第1音声、及び外部機器との通信に基づく第2音声を出力装置から発する」ものである点で一致する。
ク 前記ウ及びキによれば、本願発明と引用発明とは、「取得される検知情報に基づく第1音声、及び外部機器との通信に基づく第2音声を出力装置から発する報知装置に音声による報知を行なわせる発報方法であ」る点で一致する。
(2)発明特定事項B及びCについて
ア 引用発明の「スピーカ13」は、「ページャ着信音」及び「PHS音声」を発するものである(前記(1)キ)から、音声発生装置であるといえる。
そして、引用発明では、「複合端末8が備えるスピーカ13は1つであ」る(分説c)から、「スピーカ13」は、単一のものであるといえる。また、前記(1)カのとおり、「スピーカ13」は「音声重畳・発生部」に含まれる。
したがって、引用発明の「スピーカ13」は、本願発明の「前記出力装置に含まれる単一の音声発生装置」に相当する。
イ 引用発明では、「PHS音声」を「スピーカ13」から発している(前記(1)キ)から、「ページャ着信音」及び「PHS音声」の一方の音声である「PHS音声」を、「スピーカ13」から発しているといえる。また、「PHS音声」は、当然、所定の音量で発していると認められる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「所定の音量で」「音声発生装置に前記第1音声及び前記第2音声の一方の音声を発しさせる」点で共通する。
ウ 前記ア及びイによれば、本願発明と引用発明とは、「所定の音量で前記出力装置に含まれる単一の音声発生装置に前記第1音声及び前記第2音声の一方の音声を発しさせる」点で共通する。
他方、本願発明では、「前記第1音声及び前記第2音声の一方の音声」の「音量」を、「報知装置」に「選択させる」のに対して、引用発明では、「PHS音声」の音量を「複合端末」に選択させることは、特定されていない。
(3)発明特定事項Dについて
ア 引用発明では、「ページャ着信音」を「スピーカ13」から発している(前記(1)キ)から、「ページャ着信音」及び「PHS音声」の一方の音声である「PHS音声」とは異なる他方の音声である「ページャ着信音」を、「スピーカ13」から発しているといえる。
イ 引用発明では、「PHSによる通話中にページャに着信があった場合」に「スピーカ13の通話音声に小音量の着信音を重畳させ、使用者にページャに着信があったことを報知」している(分説l)から、PHSによる通話の音声である「PHS音声」に小音量の「ページャ着信音」を重畳させて、「スピーカ13」から発しているものと認められる。
また、引用発明は、「ページャ着信」の「着信音」を「最小音量で報知」するものであり(分説h2)、「スピーカ13の通話音声に小音量の着信音を重畳させ」ることで、「使用者に不快感を与えず、かつ通話の障害を防止することができる」ものである(分説m)から、「最小音量」とされる「ページャ着信音」の音量は、当然、「通話音声」より低いものと認められる。
したがって、引用発明では、「ページャ着信音」を、「PHS音声」より低い音量で「スピーカ13」から発しているものと認められる。
ウ 前記イのとおり、引用発明では、「PHS音声」に小音量の「ページャ着信音」を重畳させて、「スピーカ13」から発しているから、「ページャ着信音」を、「PHS音声」と並行して「スピーカ13」から発しているといえる。
エ 前記ア~ウによれば、引用発明では、「ページャ着信音」及び「PHS音声」の一方の音声である「PHS音声」と異なる他方の音声である「ページャ着信音」を、「PHS音声」より低い音量で、「PHS音声」と並行して「スピーカ13」から発していると認められる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記第1音声及び前記第2音声のうちの前記一方の音声と異なる他方の音声を、前記音量よりも低い音量で、前記一方の音声と並行して前記音声発生装置に発しさせる」点で一致する。
(4)発明特定事項Eについて
前記(1)ウのとおり、引用発明の「複合端末制御方法」は、本願発明の「発報方法」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「を含んでいる、発報方法」である点で一致する。
(5)一致点及び相違点
以上のことから、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致及び相違する。
<一致点>
「取得される検知情報に基づく第1音声、及び外部機器との通信に基づく第2音声を出力装置から発する報知装置に音声による報知を行なわせる発報方法であって、
所定の音量で前記出力装置に含まれる単一の音声発生装置に前記第1音声及び前記第2音声の一方の音声を発しさせることと、
前記第1音声及び前記第2音声のうちの前記一方の音声と異なる他方の音声を、前記音量よりも低い音量で、前記一方の音声と並行して前記音声発生装置に発しさせることと、
を含んでいる、発報方法。」
<相違点>
本願発明では、「前記第1音声及び前記第2音声の一方の音声」の「音量」を、「報知装置」に「選択させる」のに対して、引用発明では、「PHS音声」の音量を「複合端末」に選択させることは、特定されていない点。
2 判断
(1)相違点についての判断
ア PHS端末において、受話音量をユーザによって調整可能とすることは周知の技術である(例えば、特開2001-211475号公報の【0002】、特開平10-341201号公報の【0002】、特開平11-168534号公報の【0070】を参照。)。
イ そして、PHSや携帯電話のような通話を行う端末において、通話音量を使用する場面等に応じて適切なものとすることは、一般的な課題であり、引用発明においても、ユーザの利便性のために、PHSの通話音声である「PHS音声」の音量を調整可能とすることは、当業者が当然考慮する事項であると認められる。
ウ したがって、引用発明に上記周知技術を適用して、「PHS音声」の音量をユーザによって調整可能とし、ユーザが選択した音量を「PHS音声」の音量として「複合端末」に選択させる構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
(2)効果についての判断
引用発明において、「PHS音声」の音量をユーザによって調整可能とし、ユーザが選択した音量を「PHS音声」の音量として「複合端末」に選択させる構成としたものは、本願発明と同一の効果を奏することが明らかであるため、本願発明の効果は格別のものではない。
(3)請求人の主張についての判断
ア 請求人は、以下の主張をしている。(以下では、円で囲われた数字を摘記する際に、「○」の次に囲われた数字を書く形で摘記する。例えば、「2」が円で囲われているものは、「○2」のように表記する。)
「(4)本願発明と引用文献に記載の発明との差異について
(a)本願発明1及び本願発明2について
本願発明1及び本願発明2は、上記(2)で述べましたように、報知装置において「取得される検知情報に基づく第1音声」及び「外部機器との通信に基づく第2音声」の両方を、そのうちの一方よりも他方を低音量で、報知装置に発しさせます。
審査段階において審査官殿は、引用文献1のページャ端末としてのメッセージの受信による着信音、及び引用文献2の通信装置での着信による着信音が、それぞれ、本願発明1及び本願発明2それぞれの「検知情報に基づく音声」に対応する、と述べておられます。
しかしながら、引用文献1のページャ端末の着信音、及び引用文献2の通信装置の着信音のいずれも、取得される検知情報に基づくものではなく、従って本願発明1及び本願発明2の「取得される検知情報に基づく音声」に対応するものではありません。「検知」とは、広辞苑によれば、
「○1目でみて心にさとること。○2実地に検査すること。○3敵の士卒の首を実検すること。○4(「検知」と書く)機械などで検査して知ること。「アルコール-器」○5(「検知」と書く)(→)検尺に同じ。」ですが、引用文献1及び引用文献2の「着信音」は、一方的に送られてくる電波の受信に基づいているに過ぎず、例えば、上記○4の定義の態様で知得される情報に基づくものではなく、上記○1~○5のいずれで定義される事項による情報に基づくものでもありません。
むしろ、引用文献1及び引用文献2の「着信音」は、引用文献1の「通話音声」や引用文献2の「応答メッセージ及び用件メッセージ」と同様に「外部機器との通信に基づく」音声です。また、拒絶査定において審査官殿は「引用文献1、2の着信音は、着信信号を検知したことに基づく音声であるから、上記着信音は『取得される検知情報に基づく音声』と言える」と述べておられますが、本願発明1及び本願発明2の「第1音声」は、検知したことに基づく音声ではなく、検知した情報に基づく音声です。一方、引用文献1及び引用文献2の着信音は、単にページャ端末としてのメッセージの受信、又は通信装置への着信を知らせているだけで、例えばビープ音などの着信音自体が、例えば上記「検知」の定義のように検査して知り得た何らかの情報に基づいている訳ではありません。
引用文献1及び引用文献2では、外部機器との通信による情報以外に、引用文献1の複合端末や引用文献2の通信装置が情報を得るなどということは想定されていません。当然ながら、そのような通信による情報以外の情報に基づいて音声を発することは想定されておらず、無論、そのような音声の発声態様、すなわち、通信による情報に基づく音声との間の音量に関する大小関係は、開示も示唆もされていません。これに対して、本願発明1及び2の発報方法は、発声に関して、検知情報に基づくという発声系統と、通信に基づくというもう1つの発声系統とを有する報知装置に、音声による報知をさせる発報方法であって、それら二つの発声系統それぞれから発せられる音声のうちの一方よりも低い音量で他方を発しさせるものです。この点において引用文献1及び引用文献2に記載の発明は、明らかに本願発明1及び本願発明2と異なっています。
従って、引用文献1及び引用文献2には、本願発明1及び本願発明2の発明の対象である「取得される検知情報に基づく第1音声、及び外部機器との通信に基づく第2音声を出力装置から発する報知装置に音声による報知を行なわせる発報方法」は開示も示唆もされていません。このような引用文献1又は引用文献2に記載の発明に基づいて当業者がその出願前に本願発明1又は本願発明2を容易になし得たなどということはあり得ません。」(審判請求書5~6頁)
イ しかしながら、前記1(1)エのとおり、引用発明の「ページャ着信音」は、「制御部18」が取得した「ページャ着信情報」(ページャに対する着信を検知したことを示す情報)に基づいて発せられる音声であるから、本願発明の「取得される検知情報に基づく第1音声」に相当すると認められる。
また、前記1(1)エのとおり、本願の明細書においても、「電話の着信などを報知してもよ」い(【0014】)等の記載があり、引用発明の「ページャ着信音」を、本願発明の「取得される検知情報に基づく第1音声」に相当すると認定することは、本願の明細書の記載とも整合的であると認められる。
さらに、請求人は、本願発明は、検知情報に基づく発声系統、及び通信に基づく発声系統のそれぞれから発せられる音声について、一方よりも低い音量で他方を発しさせるものである点で、引用発明と相違すると主張しているが、前記1(1)のとおり、本願発明の「音声」(「第1音声」及び「第2音声」を含む)は、音の出力が可能な機器から発せられるあらゆる音を含むものと解され、人が声として発する音である言語音に限定されるものではないと認められる。
そして、引用発明では、「ページャ着信情報」に基づく「ページャ着信音」(前記1(1)エ)、及び「PHS基地局3」との通信に基づく「PHS音声」(前記1(1)オ)が「スピーカ13」から発せられており(前記1(1)キ)、「ページャ着信音」の音量は、「PHS音声」より低い(前記1(3)イ)ところ、上記の点で本願発明と相違しない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(4)小括
以上によれば、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-005142