特許拒絶査定不服審判
2024-000366
スマート検知ネットワーク
- 審判番号
- 2024-000366
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-547223
- 請求日
- 2024年01月11日
- 審決日
- 2025年05月28日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】トライコーンテック コーポレイション
- 【請求人代理人】田中 伸一郎
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】須田 洋之
- 【請求人代理人】大塚 文昭
- 【請求人代理人】近藤 直樹
- 【請求人代理人】那須 威夫
- 【請求人代理人】鈴木 信彦
- 【請求人代理人】山崎 貴明
- 審判長/審判官
- 審判長 道祖土 新吾
- 審判官 小島 寛史
- 審判官 谷垣 圭二
- 分類
- P18 .121-Z (G08C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第158条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-547223号「スマート検知ネットワーク」拒絶査定不服審判事件〔平成30年5月24日国際公開、WO2018/093792、令和元年12月12日国内公表、特表2019-536188〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)11月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年11月16日、2017年11月13日、いずれも米国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。なお、2016年(平成28年)11月16日を以下「優先日」という。
令和元年 7月10日 :翻訳文の提出
令和3年 6月30日付け:拒絶理由通知書
同年11月26日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 4月 4日付け:拒絶理由通知書
同年 9月 5日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月28日付け:拒絶理由通知書
令和5年 6月 1日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月 6日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月11日 :原査定の謄本の送達)
令和6年 1月11日 :審判請求書、手続補正書の提出
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年1月11日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
検知ネットワークであって、
1又は2以上のセンサノードであって、前記1又は2以上のセンサノードの各々が、前記センサノードの周囲のノーダルカバレッジエリアにおける1又は2以上の大気汚染物質の存在、濃度、又はその両方を測定することができるガスセンサを含む、1又は2以上のセンサノードと、
前記1又は2以上のセンサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにおける1又は2以上の大気汚染物質の存在、濃度、又はその両方を測定することができるセンサベースであって、前記センサベースが、前記1又は2以上のセンサノードの前記ガスセンサよりもより高い品質を備えたガスセンサを含む、センサベースと、
前記センサベース及び前記1又は2以上のセンサノードに通信可能に結合された1又は2以上のサーバを含むデータセンタと、
を備え、
前記センサベース及び前記1又は2以上のセンサノードは、これらの測定値を前記サーバに通信することができ、前記センサベースの測定値は、前記1又は2以上のセンサノードの測定値を補正するための基準データとして前記サーバによって使用され、前記1又は2以上のセンサノードそれぞれの測定値は、各センサノードのベースラインドリフトのために補正され、
前記センサベースは、前記1又は2以上のセンサノードのドリフト率に応じた頻度又は時間期間にて前記センサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにて又はその周りで空気サンプルを収集する、ことを特徴とする検知ネットワーク。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Gまでに分説する。なお、分説するにあたり、必要に応じて改行を加えて表記した。また、参考図として、本願の【図1】を元に部材名を記入したものを掲載する。
<本願発明の分説>
X 検知ネットワークであって、
A 1又は2以上のセンサノードであって、前記1又は2以上のセンサノードの各々が、前記センサノードの周囲のノーダルカバレッジエリアにおける1又は2以上の大気汚染物質の存在、濃度、又はその両方を測定することができるガスセンサを含む、1又は2以上のセンサノードと、
B 前記1又は2以上のセンサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにおける1又は2以上の大気汚染物質の存在、濃度、又はその両方を測定することができるセンサベースであって、前記センサベースが、前記1又は2以上のセンサノードの前記ガスセンサよりもより高い品質を備えたガスセンサを含む、センサベースと、
C 前記センサベース及び前記1又は2以上のセンサノードに通信可能に結合された1又は2以上のサーバを含むデータセンタと、
を備え、
D 前記センサベース及び前記1又は2以上のセンサノードは、これらの測定値を前記サーバに通信することができ、
E 前記センサベースの測定値は、前記1又は2以上のセンサノードの測定値を補正するための基準データとして前記サーバによって使用され、
F 前記1又は2以上のセンサノードそれぞれの測定値は、各センサノードのベースラインドリフトのために補正され、
G 前記センサベースは、前記1又は2以上のセンサノードのドリフト率に応じた頻度又は時間期間にて前記センサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにて又はその周りで空気サンプルを収集する、
X ことを特徴とする検知ネットワーク。
<参考図>
【図1】
[図:0001428596000001.jpg]
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は、当合議体において付したものである。
「【背景技術】
【0003】
近代化に伴って、都市公園及び産業団地内での大気汚染が悪化しており、大気汚染物質(例えば、PM2.5、NOx、SOx、O3、及び揮発性有機化合物(VOC)などの化学物質)によって引き起こされる公衆衛生への影響は、益々注目を集め始めている。複合汚染源に起因して、より高密度の空間大気質監視データを取得して、関心のある位置での更新された大気質情報を一般市民に提供することが必要とされる。
【0004】
環境大気質監視が実施されているが、信頼できる監視データを得るために高価で大型の実験用機器を用いる必要があるので、限られた数の監視ステーションが限定的な場所でのみ配置及び設置することができる。また、監視ステーションは通常、機器の設定(特に、ガスクロマトグラフィー機器の場合)に大きな空間を必要とするので、ほとんどの場合、これらを収容する余地がある郊外地域に設置され、余地が少ない都市部にはステーションはほとんど存在しない。その結果、都市全体の空間的な大気質を監視するネットワークを形成するために小型で低コストのセンサを使用する必要があり、これは普及してきている。」
「【0015】
(前略)低コストセンサは、リアルタイムの又はより頻繁な現場大気質監視の結果を提供することができる。ノードSを検知するのに使用される低コストセンサは、感度ドリフトを生じる可能性があり、このことにより、定期的にベースライン/感度ドリフトチェック及び補正が必要となる。」
「【0018】
(前略)更に他の実施形態において、特定のセンサノードが予想よりも速いドリフトを開始したが、交換を前にして許容可能に機能しているとデータセンタが決定した場合、センサノードをカバーする対応するセンサベース(例えば、固定型又は移動型)は、当該センサノードの周りで空気サンプル監視頻度を増大して、より正確なデータ補正を提供するよう調整することができる。」
「【0020】
(前略)1つの実施形態において、図2Bに示すように、ドリフトは、特定の空間的位置及び特定の時間又はその近傍でのセンサノードの測定値とセンサベースの測定値との間の差異として定義することができる。図2Bの上側のグラフで分かるように、空気検知(図で示されるような濃度の下方垂下の検知)を継続している間、センサノードは、データドリフトを有する。図2Bの上側のグラフで分かるように、空気検知(図で示されるような濃度の下方垂下の検知)を継続している間、センサノードは、データドリフトを有する。データ補正なしでは、センサノードから得られる結果は、汚染物濃度の低下を誤って判断することにより、間違った監視結果を提供することになる。しかしながら、センサベースの高性能アナライザー(移動型又は静止型)からの追加の正確なデータがあれば、センサノードのドリフトした結果は、実質的に同じ時間及び実質的に同じ位置(センサベースデータは、各センサノードについて時間的により離散的な監視を提供しない可能性があるが)で測定されたセンサベース結果に基づいて補正される。」
「【図2B】
[図:0001428596000002.jpg]
」
3 令和4年11月28日付けで通知した拒絶の理由の概要
審査においてした手続は、拒絶査定不服審判においてもその効力を有するものであるところ(特許法158条)、令和4年11月28日付けで通知した拒絶の理由(以下「拒絶理由通知における拒絶の理由」という。)のうち、請求項1に係る発明に対する理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如) 本願の請求項1に係る発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2004-108857号公報(主たる引用文献)
引用文献4.特開2011-237295号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5.特開2015-141061号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6.特表2010-503042号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7.特表2003-530006号公報(周知技術を示す文献)
引用文献8.特開2001-289811号公報(周知技術を示す文献)
引用文献9.特開平11-142128号公報(周知技術を示す文献)
4 引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
(1) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
拒絶理由通知における拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2004-108857号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、当合議体により、後記イの引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。
(ア) 【0001】~【0007】
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気汚染モニタリングシステム、詳細には、大気中のNOX、O3、SO2、COおよびHCなどの濃度をモニタリングするシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開2001-201498号公報
従来より、全国各地の大気汚染状況をモニタリングすることが行われている。そこでは、たとえば前記公開特許公報に示すような所定のガス分析装置を各地に設置し、または前記ガス分析装置を載せたマイクロバスなどの大気観測車を移動させ、大気をサンプリングしガス分析装置で測定するすることにより全国各地で大気中の前記各成分の濃度をモニタリングしていた。そして、、大気中のNOX、O3、SO2、COおよびHCなどの各測定対象成分に対応して規格化された測定原理を採用したガス分析装置が採用されている。
【0003】
しかし、そのようなガス分析装置は成分毎に規格化された測定原理を採用した各成分のガス分析計を組合せ、複数成分を同時にモニタリングするものであり、濃度演算およびその校正処理も各分析装置内にて行うものであるためため、設置されるガス分析装置全体は、大掛かりかつ高価なものとならざるをえない。したがって、交通量の多い道路または交差点の周辺などに設置する場合も、広い設置スペースが必要で、またモニタリング精度を向上させるため複数のガス分析装置を設置する場合には、多大なコストを要するといった問題が生じていた。
【0004】
また、車両を移動させモニタリングする場合、車両の移動に時間を要し、必然的にモニタリング頻度もある程度低くならざるを得なかった。また、車両の移動にも多大な手間を要し、全国各所でリアルタイムにモニタリングする場合には、前記分析装置を搭載した車両を多数用意しなければならず、モニタリングに多大なコストを要することになる。
したがって、車両を用いたモニタリングにも、多大なコストを要し、その頻度も低下せざるを得ないといった問題が生じていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題点を解決するものであり、簡易にリアルタイムでかつ豊富な情報量でもって精度の高いモニタリングが可能な大気汚染モニタリングシステムを実現するすることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の大気汚染モニタリングシステムは、大気中の測定対象成分を検出するセンサを有するセンサユニットと、そのセンサユニットにおいて取得した測定対象成分濃度に対応する信号を送信するための通信手段と、その通信手段を介して前記信号を取得するサーバとを備え、そのサーバは、前記センサユニットから送信される前記信号に基づいて大気中の測定対象成分の濃度演算行い、大気中の測定対象成分の濃度を求めるようにしている(請求項1)。これにより、各地に設置されるセンサユニットを小型化することができるので、狭いスペースにおいても設置が可能となる。また、サーバにて集中的に演算処理を行うことにより、設置されるセンサユニットを簡易に構成することができる。したがって、センサユニットはより廉価に製造することができるので、設置台数を増加させ、リアルタイムにより多くのモニタリング信号を取得することができる。
【0007】
また、前記大気汚染モニタリングシステムにおいて、前記センサを大気中の測定対象成分を選択的に検出する半導体ガスセンサによって構成すれば(請求項2)、光源等を設ける必要はなく、センサユニットを大気中の測定対象成分の検出に必要なもののみで、より簡易かつ小型に低コストで構成することができる。さらに、本発明では、前記大気汚染モニタリングシステムにおいて、前記センサユニットの設置場所を巡回するとともに、前記センサユニットでの測定対象成分に対応する成分の濃度を測定するガス分析装置を設けた巡回手段を備え、前記サーバは、前記ガス分析装置での測定結果を基準として校正係数を求め、その校正係数を用いて前記センサユニットからの信号に基づいて求められる大気中の測定対象成分の濃度を校正するようにしている。このように、各センサユニットに比べて高い精度で各成分を測定可能なガス分析装置での測定結果を基準にサーバで集中的に濃度校正を行うことより、簡易なシステム構成で、モニタリング情報の精度を一定水準に保つことができる。」
(イ) 【0008】~【0012】、【図1】
「【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態につき、図を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る大気汚染モニタリングシステム1の一例を示す構成図である。大気汚染モニタリングシステム1は、センサユニット2と通信手段としての光ファイバ7とセンサユニット2から信号を取得し、濃度演算および濃度校正演算を行うサーバとしてのパソコン8とガス分析装置13を設けた車両12と車両12で取得した測定信号をパソコン8に対して送信するための通信手段9とからなる。全国の大気の汚染状況をモニタリングするため、複数のセンサユニット2が全国の任意の場所に設置される。センサユニット2には、例えば環境大気の汚染状況を監視するための一般的測定局を構成するものと、特に自動車排出ガスによる汚染状況を監視するための自排測定局を構成するものとがある。後者の自排測定局としてのセンサユニットは交通量の多い道路または交差点の周辺に設置される。」
「【図1】
[図:0001428596000003.jpg]
」
「【0009】
6は、センサユニット2の設置台である。すなわち、設置台6は、雨などからセンサユニット2を保護するための屋根6a、センサユニット2の一部を収納する収納ボックス4が載置される載置台6bおよびそれを支持しセンサユニットが設置される高さを調整可能な支持ポール6cとからなっている。また、3は、センサユニット2の一部を構成する風向・風速センサである。(後略)
【0010】
光ファイバ7は、センサユニット2とパソコン8とを結ぶ通信手段の一例である。近年、国土交通省によって、主要な幹線道路に沿って光ファイバ7が敷設されている。したがって、かかる光ファイバ7を伝送媒体として利用して、センサユニット2からの信号をパソコン8に対し送信するようにすれば、新たな通信手段を付加することなく、より廉価に大気汚染モニタリングシステム1を形成することができる。もっとも、本発明の通信手段は、かかる光ファイバに限られるものではない。パソコン8は、内蔵されたモデムを介してインターネット10に接続されている。そこで、センサユニット2に、DoPa通信などからインターネット10を介してパソコン8へ接続するための手段を設け、センサユニット2で取得した信号をパソコン8へ送信することもできる。
【0011】
サーバとしてのパソコン8は、光ファイバ7を介してセンサユニット2からの信号を取得するとともに、インターネット10を介して車両12に載せられたガス分析装置13から測定信号を取得し、記憶部に格納された濃度演算及び校正演算を行うための測定プログラム及び所定の様式の日報や週報などの報告書を表示部やプリンタへ出力するための報告書作成プログラムに基いて濃度演算及び濃度校正演算を行い、所定の報告書を作成する。すなわち、サーバ8の記憶部には、測定プログラムによる濃度演算及び濃度校正演算後の大気中の測定対象成分の各濃度がセンサユニット認識番号および測定時間情報と関連付けられて記憶されており、パソコン8のCPUは、報告書作成プログラムに基き、センサユニット毎の各時間における各測定対象成分濃度をそれぞれ記憶部から読み込み、所定の報告書を作成する。
【0012】
車両12は、本発明の巡回手段を構成する。この車両12は、全国に複数台配備され、例えば、二週間または一ヶ月に一回など一定周期で上記各センサユニット2が配置された場所を巡回する。車両12は、各測定対象成分を規格に基いて測定するためのガス分析装置13を搭載している。そこで、車両12は、例えば一日など一定の時間一つのセンサユニット2の設置場所に滞在し、サンプリング手段(図示省略。)から大気を導入して連続的にリアルタイム測定を行う。そして、車両12には、DoPa通信11などからインターネット10を介してパソコン8に接続するための手段が設けられているので、その測定結果をサーバとしてのパソコン8へリアルタイムに送信し、後述する濃度校正演算を行い、リアルタイムに正確な濃度値を求めることができる。」
(ウ) 【0013】~【0016】、【図2】
「【0013】
図2は、センサユニット2の構成を示す図である。図2(a)において14は、大気中の複数の測定対象成分の中から一の成分を選択的に検出する半導体ガスセンサを複数集めてなる検出部である。本例では、その検出部14には、NOX、O3、SO2、COおよびHCをそれぞれ検出するNOXガスセンサ15、O3ガスセンサ16、SO2ガスセンサ17、COガスセンサ18およびHCガスセンサ19が設けられている。」
「【図2】
[図:0001428596000004.jpg]
」
「【0014】
なお、これら半導体ガスセンサとしては、既に多種多用なものが市販されている。したがって、ここで詳細な説明は省略するが、図2(b)の断面図を参照しながら一般的なガスセンサの構成について説明する。20は、アルミナ、窒化アルミニウム等からなり、耐熱性、絶縁性に優れた基板である。そして、その基板20上面側には主にSnO2などの金属酸化物半導体薄膜からなるガス検出部21が形成され、その下面側には、ガス検出部21を所定の温度に加熱するためのヒータ22が設けられている。23および24は、白金や金などからなり、ガス検出部21の電極で、25および26は、ヒータ22に電圧を印加するための電極である。こういった半導体ガスセンサでは、ガス検出部21の表面に検出対象ガスが吸着したときのそのガス濃度に応じた抵抗変化を電極出力として取り出すことができる。なお、半導体ガスセンサでは、ヒータ22によるガス検出部21の加熱温度を制御したり、金属酸化物半導体薄膜成分を改良したり、また金属酸化物半導体薄膜の近傍に触媒層を設けることにより、検出対象ガスに対する所期の感度ないしガス選択性を得ることができる。
【0015】
34は、マイクロコンピュータよりなり、センサユニット2の全体の制御を行う制御部で、センサユニット2全体を制御するとともに、測定時間情報を出力するための時計回路を有している。そして、15ないし19の各ガスセンサからの出力信号は、それぞれに対応するプリアンプ27ないし31にて増幅された後、マルチプレサ32を介して、ADコンバータ33に入力され、そこでデジタル信号に変換された後、制御部34に入力される。なお、38は、センサユニット2と光ファイバ7とを接続するためのインターフェイスで、検出部21およびプリアンプ27ないし31、マルチプレクサ32、ADコンバータ33、制御部34、インターフェイス38などからなる電気系統は、埃などによる故障を防止し、また雨などの侵入による短絡を防止するため収納ボックス4内に設けられている。
【0016】
また、センサユニット2は、それぞれ風向・風速センサ3、温度センサ35、湿度センサ36を有し、これら各センサからの気象情報に関する信号も、制御部334に入力される。このようにして制御部34に入力されたこれらの信号は、インターフェイス38及び光ファイバー7を介して、サーバ8へ送信される。すなわち、NOXガスセンサ15、O3ガスセンサ16、SO2ガスセンサ17、COガスセンサ18およびHCガスセンサ19で得られた各測定対象成分の濃度に対応する信号、および風向・風速センサ3、温度センサ38、湿度センサ39からの信号は、測定時間情報、センサユニットを認識するためのセンサユニット認識番号とともに、サーバ8に送信される。」
(エ) 【0018】~【0021】、【図3】
「【0018】
図3は、車両12に搭載されるガス分析装置13の概略的構成を示す。この図3において39ないし43は、前記センサユニットで測定される測定対象成分に対応して、NOX、O3、SO2、CO、HCの濃度をそれぞれ測定するNOX分析装置、O3分析装置、SO2分析装置、CO分析装置、HC分析装置である。なお、39ないし43のいずれの分析装置も既に公知で、大気汚染モニタリング用の分析装置として公的に承認された分析装置であるので、各分析装置の詳細な図示およびその説明は省略するが、いずれもおおよそ次の構成よりなる。」
「【図3】
[図:0001428596000005.jpg]
」
「【0019】
NOX分析装置39はクロスモデュレーション方式セミ減圧化学発光法により、O3分析装置40はクロスモデュレーション方式紫外線吸収法により、SO2分析装置41は紫外線蛍光法により、CO分析装置42はクロスモデュレーション方式非分散型赤外線分析法により、HC分析装置43はクロスモデュレーション方式選択燃焼法または水素炎イオン化検出法により、大気中のNOX濃度、O3濃度、SO2濃度、CO濃度、HC濃度をそれぞれ測定し、所定の演算処理によって各成分濃度値を出力するよう構成されている。そして、39ないし43の各分析装置において取得された測定結果としての各濃度信号は、インターフェイス(例えばRS232C)44を介して、ガス分析装置13全体の制御を行うパソコン45に送信される。
【0020】
また、車両12には、ガス分析装置13の他、風向・風速計46、温度計47、湿度計48も搭載されており、これらからの信号も気象データ変換器49を介してパソコン45に入力される。(後略)
【0021】
ガス分析装置13において取得され、パソコン45に入力された測定結果としての各測定対象成分の濃度信号は、センサユニット認識番号および測定時間情報とともにサーバとしてのパソコン8に送信される。また、風向・風速計46、温度計47、湿度計48で取得した気象観測用の情報も同様にパソコン8に送信される。すなわち、車両12またはパソコン45には、DoPa通信11などからインターネット10を介してパソコン8に接続するための手段が設けられいる。したがって、このインターネットなどの通信手段を介して濃度信号等をパソコン8にリアルタイムに送信することができる。なお、これら濃度信号等の送信は、センサユニット2と同じ通信手段、すなわち光ファイバ7を介して行ってもよい。」
(オ) 【0022】~【0030】、【図4】
「【0022】
図4は、サーバとしてのコンピュータ8において行われる濃度演算処理および濃度校正演算処理の概略を示すフローチャートで、それら処理を実行する測定プログラムの内容を示している。すなわち、コンピュータ8は、その記憶部に記憶された測定プログラムにしたがって濃度演算処理および濃度校正演算処理を実行する。なお、このサーバは、制御部37において設けられた時計回路に対し、時刻修正処理指令出力する機能を有している。」
「【図4】
[図:0001428596000006.jpg]
」
「【0023】
では、コンピュータ8が実行する濃度演算処理および濃度校正演算処理について説明する。まず、コンピュータ8は、NOX、O3、SO2、CO、HCの濃度に対応する信号、および風向・風速センサ3、温度センサ38、湿度センサ39からの信号、測定時間情報およびセンサユニットを認識するためのセンサユニット認識番号を、各センサユニット2から光ファイバー7を介してリアルタイムに取得する(S1)。そして、コンピュータ8は、各測定対象成分の濃度に対応する信号に基づき、NOX、O3、SO2、CO、HCそれぞれの濃度演算を行う(S2)。
【0024】
すなわち、コンピュータ8は、その記憶部から、各半導体ガスセンサの出力とその測定対象成分ガス濃度との関係を定めた関数を呼び出し、その関数に基づき測定対象成分濃度値を演算算出する。そして、その濃度値に対し、所定の干渉補正演算を行い、干渉成分濃度を差し引いた正確な測定対象成分濃度を演算算出する。
【0025】
次に、コンピュータ8は、車両12からの測定対象成分濃度信号を新たに取得したか否か判断する(S3)。すなわち、センサユニット2での測定時間と同じ時間において行った測定結果としての濃度信号を車両から新たに取得した場合(S3:YES)、センサユニット2からの信号に基いて前記ステップ(S2)で得られたNOX、O3、SO2、CO、HCの濃度値と車両12から取得したそれら成分に対応する濃度値とをそれぞれ比較し、成分毎にその比を校正係数として演算算出する(S30)。なお、これら成分毎に得られた校正係数は、コンピュータ8の記憶部に保存される。
【0026】
そして、コンピュータ8は、このように成分毎の校正係数を求めた場合には、その算出した校正係数を用いて、また車両12からの測定対象成分濃度信号を新たに取得していない場合(S3:NO)には、既に保存されている校正係数を記憶部から呼び出して、次のような濃度校正演算処理を行う(S4)。すなわち、コンピュータ8は、センサユニット2からの信号に基いて前記ステップ(S2)で得られたNOX、O3、SO2、CO、HCの各濃度値にそれぞれの校正係数を乗算して濃度校正を行った各濃度値を出力する。そして、コンピュータ8は、この濃度校正によって算出されたNOX、O3、SO2、CO、HCの各濃度値を測定時間情報、センサユニットを認識番号、風向・風速情報、温度情報および湿度情報と関連付けて記憶部に記憶する(S5)。なお、これら記憶された情報は、報告書作成プログラムによる所定の報告書作成処理に用いられる。そして、作成された報告書はコンピュータの表示部およびプリンタ(図示省略。)などに出力される。
【0027】
ここでは、センサユニット2とサーバとしてのコンピュータ8との通信手段として光ファイバ網によるものを示したが、本発明では、無線送信手段をセンサユニット2に設けるとともに、サーバー側に無線受信手段を設け、無線通信によりセンサユニット2での信号を送信するようにするなどの種々の変形が可能である。また、車両12からサーバ側への測定信号の送信手段についても同様である。なお、このように車両とサーバとの通信手段を設けておけば、測定結果を送信し、常にリアルタイムな濃度校正演算が可能であるが、ガス分析装置13での測定結果を記憶媒体に記憶し、サーバにおいて記憶媒体内から測定結果を呼び出して既に記憶されている同じ時間の濃度値と比較して新たな校正係数を求め、その同じ時間以降の濃度値に対して濃度校正演算を行うこともできる。
【0028】
さらに、巡回手段として車両12を示しているが、本発明の巡回手段はそれに限られず、移動手段であって、上述のガス分析装置13を搭載可能なものであればよい。そして、そのガス分析装置13も上述の測定原理を採用したものかかわらず、種々の変形が可能である。すなわち、ガス分析装置13としては、JISなど公的規格を充たすものを採用するのが最適ではあるが、それ自体に感度校正機能を備え、干渉補正を含めた濃度演算機能を有し、センサユニット2に対してより高精度に大気中の測定対象成分濃度を測定しうるものであれば良く、公知の種々のガス分析装置を用いることができる。
【0029】
そして、センサユニット2および車両12での測定対象成分も、必ずしも上述の5成分に限られるわけでなく、センサユニット2においては必要(不要)な半導体ガスセンサを増減し、また車両12においては対応する測定対象成分をより高い精度で測定可能なガス分析装置を増減すればよい。
【0030】
ここでは、検出部14を半導体ガスセンサにより構成する最適実施例を示しているが、両端が赤外線透過部材よりなるセル窓により封止され、適宜のサンプリング手段を介して大気Sが導入されるセルと、それに対して赤外光を照射するための赤外光源と、各測定対象成分のみの特性吸収帯域の赤外線のみを透過させる複数の光学フィルタと、大気中の測定対象成分により吸収を受けるとともにその光学フィルタを透過した光を検出する焦電型検出器や半導体検出器などの複数の固体検出器をセンサとして設け、その検出器での出力信号を通信手段を介してサーバに送信し、その信号に基づいてサーバにおいて集中的に濃度演算処理および/または濃度校正演算処理などを行うようにしてもよい。このようにした場合も、従来のように測定対象成分毎にそれぞれが濃度演算などを行う分析装置を設けた場合に比べ、センサユニット2を簡易な構成とし、小型化することができる。」
イ 引用発明の認定
前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「大気汚染モニタリングシステム1であって、(【0008】)
大気汚染モニタリングシステム1は、センサユニット2と、センサユニット2とパソコン8とを結ぶ通信手段としての光ファイバ7と、センサユニット2から信号を取得し濃度演算および濃度校正演算を行うサーバとしてのパソコン8と、ガス分析装置13を設けた車両12と、車両12で取得した測定信号をパソコン8に対して送信するための通信手段9とからなり、(【0008】、【0010】)
全国の大気の汚染状況をモニタリングするため、複数のセンサユニット2が全国の任意の場所に設置され、(【0008】)
センサユニット2は、大気中の複数の測定対象成分の中から一の成分を選択的に検出する半導体ガスセンサを複数集めてなる検出部14を備え、その検出部14には、NOX、O3、SO2、COおよびHCをそれぞれ検出するNOXガスセンサ15、O3ガスセンサ16、SO2ガスセンサ17、COガスセンサ18およびHCガスセンサ19が設けられており、(【0013】)
NOXガスセンサ15、O3ガスセンサ16、SO2ガスセンサ17、COガスセンサ18およびHCガスセンサ19で得られた各測定対象成分の濃度に対応する信号は、測定時間情報、センサユニットを認識するためのセンサユニット認識番号とともに、サーバ8に送信され、(【0016】)
車両12は、全国に複数台配備され、例えば、二週間または一ヶ月に一回など一定周期で上記各センサユニット2が配置された場所を巡回し、例えば一日など一定の時間一つのセンサユニット2の設置場所に滞在し、サンプリング手段から大気を導入して連続的にリアルタイム測定を行い、(【0012】)
車両12に搭載されるガス分析装置13は、前記センサユニットで測定される測定対象成分に対応して、NOX、O3、SO2、CO、HCの濃度をそれぞれ測定するNOX分析装置39、O3分析装置40、SO2分析装置41、CO分析装置42、HC分析装置43を備え、(【0018】)
ガス分析装置13において取得された測定結果としての各測定対象成分の濃度信号は、センサユニット認識番号および測定時間情報とともにサーバとしてのパソコン8に送信され、(【0021】)
コンピュータ8が実行する濃度演算処理および濃度校正演算処理として、(【0023】)
まず、コンピュータ8は、NOX、O3、SO2、CO、HCの濃度に対応する信号、および測定時間情報およびセンサユニットを認識するためのセンサユニット認識番号を、各センサユニット2から光ファイバー7を介してリアルタイムに取得し(S1)、各測定対象成分の濃度に対応する信号に基づき、NOX、O3、SO2、CO、HCそれぞれの濃度演算を行い(S2)、(【0023】)
次に、コンピュータ8は、センサユニット2での測定時間と同じ時間において行った測定結果としての濃度信号を車両から新たに取得した場合(S3:YES)、センサユニット2からの信号に基いて前記ステップ(S2)で得られたNOX、O3、SO2、CO、HCの濃度値と車両12から取得したそれら成分に対応する濃度値とをそれぞれ比較し、成分毎にその比を校正係数として演算算出し(S30)、(【0025】)
そして、コンピュータ8は、このように成分毎の校正係数を求めた場合には、その算出した校正係数を用いて、また車両12からの測定対象成分濃度信号を新たに取得していない場合(S3:NO)には、既に保存されている校正係数を記憶部から呼び出して、センサユニット2からの信号に基いて前記ステップ(S2)で得られたNOX、O3、SO2、CO、HCの各濃度値にそれぞれの校正係数を乗算して濃度校正を行った各濃度値を出力し、(【0026】)
巡回手段として車両12に搭載されたガス分析装置13としては、それ自体に感度校正機能を備え、干渉補正を含めた濃度演算機能を有し、センサユニット2に対してより高精度に大気中の測定対象成分濃度を測定しうるものであれば良い、(【0028】)
大気汚染モニタリングシステム1。(【0008】)」
(2) 引用文献9~11の記載事項及び周知技術1の認定
ア 引用文献9に記載された事項
拒絶理由通知における拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開平11-142128号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
(ア) 【0001】~【0006】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,放射線厚さ計に係り,例えばシート状の金属フォイル等の被測定部材に放射線を照射して上記被測定部材の厚さを計測する放射線厚さ計において,被測定部材の厚さ計測中に放射線量を測定する放射線測定手段の較正を行う放射線厚さ計に関するものである。
…(中略…)
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は,被測定部材にビーム状の放射線を照射するための放射線源と,上記放射線源から照射され上記被測定部材を透過又は散乱した放射線量を測定するための放射線測定手段と,上記放射線源及び放射線測定手段を上記被測定部材に対して所定の走査方向に走査する走査手段とを具備してなる放射線厚さ計において,上記放射線測定手段を較正するための較正部材が,上記走査手段の走査領域端部に設けられ,走査が行われる都度,あるいは数回の走査について1回の割合いで上記較正部材による較正が行われてなることを特徴とする放射線厚さ計として構成されている。このため,上記放射線源及び放射線測定手段の走査を行う都度,あるいは数回の走査について1回の割合いで,上記較正部材により上記放射線測定手段を較正することができ,被測定部材の厚さ計測中,即ちラインを停止させることなく,長時間安定した測定環境を提供することができる。尚,上記較正部材による較正の頻度は,全系のドリフト(時間的変化)に合わせて設定される。上記放射線厚さ計において,上記較正部材が設けられる上記走査領域端部が,例えば始点側と終点側の両方の端部であるならば,測定可能な最大厚さと最少厚さの基準となる較正部材を用いてより厳密な較正を行うことができる。尚,上記放射線厚さ計に用いられる放射線は,例えばX線等である。」
(イ) 【0011】
「【0011】また,上記実施の形態では,1回走査を行う度に厚さの較正を行っていたが,感度のドリフト時間が走査時間に対して十分に長ければ,数回の走査について1回の割合いで較正部材P,Qを用いて較正を行うようにしてもよい。(後略)」
イ 引用文献10に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特表2005-521883号公報(以下「引用文献10」という。)には、次の記載がある。
(ア) 【0001】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、付着層の性質の制御を提供する手段としての、めっき浴の有機添加物及び他の成分の分析に関する。」
(イ) 【0033】
「【0033】
発明を実施する最良の形態
好ましい実施態様で、本発明の参照電極較正は、CVS又はCPVSめっき浴分析の通常の過程でめっき浴支持電解質中の回転白金円板電極に関して生成されたボルタンメトリデータを使用して実施される。この白金作用電極の電位を、参照電極に対し、固定電位限界の間で、ポテンシオスタットと、ステンレス鋼、貴金属又はめっき金属によって構成されていることができる対電極とによって繰返し周期的に変化させる。使用される電位限界は、めっき浴のタイプに依存し、分析される特定の添加物に依存することもある。めっきからストリッピングへのゼロ電流交差に対応する定常状態の作用電極電位を定数とみなす。この電位を、まず、既知の電位の標準参照電極に対して計測し、次いで、標準参照電極と同じ電極であってもよい試験参照電極に対して計測する。試験参照電極の電位を、これら二つの計測電位の差に相当するオフセットに関して補正して、その後のボルタンメトリ計測の誤差が最小限になるようにする。このような補正は、CVS又はCPVSめっき浴分析に使用されるものと同じコンピュータによって自動的に実施されることが好ましい。補正の頻度は参照電極電位のドリフトの率に依存する。酸性硫酸銅電気めっき浴中のダブルジャンクションSSCE参照電極の場合、較正及び補正は一般に8時間ごとに繰り返される。」
ウ 引用文献11に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開2000-97767号公報(以下「引用文献11」という。)には、次の記載がある。
(ア) 【0001】
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、赤外線撮像素子の駆動装置に関し、特に、入射赤外線を熱の形でとらえる熱型赤外線撮像素子の駆動装置に関し、更に詳しくは、複数の画素のDCレベルが時間と共に変化する、いわゆるドリフトの補正に関するものである。」
(イ) 【0033】~【0034】
「【0033】以上が入射光をカットした状態での初期設定であり、通常の動作は次のように行う。先ほどと同様にOB平均値算出回路110によりその時のOB画素の出力レベルの平均値[vOB]を求め、OB変位の平均値算出回路112によりOB画素の出力レベル平均値[vOB]からの変位の絶対値の平均値[Δvi,OB]を求める。この値はOB画素のばらつき量を表しており、デバイス温度を反映している。つまり、前記OB画素の変位の絶対値はドリフトに応じて刻々と変化している。OB部ドリフト係数の平均値レジスタ113には初期設定で取得したOB画素のドリフト係数Δvi0,OB の絶対値の平均値[Δvi0,OB ]が格納されており、除算器114によってxd =[Δvi,OB]/[Δvi0,OB ]を求める。この値xd は、初期設定時に対して現在デバイス温度がどのレベルにあるかを示しており、この値xd に初期設定で取得した有効画素のドリフト係数を乗算器115によって掛けることで、有効画素のドリフト量が推定できる。有効画素は、通常入射赤外線を受けているために、この様な推定によらざるを得ない。この各有効画素の推定ドリフト量を、各有効画素から減算器107により減算することで、ドリフトの補正は完了する。
【0034】この補正の頻度は、ドリフトのレベル及び時定数にもよるが、数フレームに1回行えばよい。(後略)」
エ 周知技術1の認定
前記ア~ウに示した引用文献9~11の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、本願の優先日前に当業者にとって周知の技術(以下「周知技術1」という。)であったと認められる。
<周知技術1>
「測定装置において、計測値のドリフトの進行速度に応じて、較正又は補正の頻度を決定すること。」
5 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(検知ネットワーク)
(ア) 構成Xは、「検知ネットワーク」の発明であることである。
(イ) 引用発明は、「大気汚染モニタリングシステム1」の発明であるところ、当該「大気汚染モニタリングシステム1」は、「センサユニット2と、センサユニット2とパソコン8とを結ぶ通信手段としての光ファイバ7と、センサユニット2から信号を取得し濃度演算および濃度校正演算を行うサーバとしてのパソコン8と、ガス分析装置13を設けた車両12と、車両12で取得した測定信号をパソコン8に対して送信するための通信手段9とからな[る]」ものである。
そうすると、引用発明の「大気汚染モニタリングシステム1」は、「センサユニット2」、「パソコン8」及び「ガス分析装置13を設けた車両12」を、通信手段を介して接続したものといえるから、「検知ネットワーク」といい得るものである。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Xの観点について、次の点において一致する。
「検知ネットワーク」の発明である点。
イ 構成Aの観点(センサノード)
(ア) 構成Aは、「1又は2以上のセンサノードであって、前記1又は2以上のセンサノードの各々が、前記センサノードの周囲のノーダルカバレッジエリアにおける1又は2以上の大気汚染物質の存在、濃度、又はその両方を測定することができるガスセンサを含む、1又は2以上のセンサノード」を備えることである。
(イ) 引用発明の「複数のセンサユニット2」は、本願発明の「1又は2以上のセンサノード」に相当する。
(ウ)a また、引用発明の「センサユニット2」は、「大気中の複数の測定対象成分の中から一の成分を選択的に検出する半導体ガスセンサを複数集めてなる検出部14を備え[る]」ものであるところ、「大気中」の「大気」がセンサユニット2の周辺の領域の大気であることは明らかであるから、当該センサユニット2の周辺の領域は、本願発明の「前記センサノードの周囲のノーダルカバレッジエリア」に相当する。
b さらに、引用発明の「センサユニット2」が「備え[る]」「検出部14には、NOX、O3、SO2、COおよびHCをそれぞれ検出するNOXガスセンサ15、O3ガスセンサ16、SO2ガスセンサ17、COガスセンサ18およびHCガスセンサ19が設けられて[いる]」ところ、当該「NOX、O3、SO2、COおよびHC」は、本願発明の「1又は2以上の大気汚染物質」に相当する。
c そして、引用発明の「NOXガスセンサ15、O3ガスセンサ16、SO2ガスセンサ17、COガスセンサ18およびHCガスセンサ19」は、「各測定対象成分の濃度に対応する信号」を得るものであるから、本願発明の「1又は2以上の大気汚染物質の存在、濃度、又はその両方を測定することができるガスセンサ」に相当する。
(エ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Aの観点について、次の点において一致する。
「1又は2以上のセンサノードであって、前記1又は2以上のセンサノードの各々が、前記センサノードの周囲のノーダルカバレッジエリアにおける1又は2以上の大気汚染物質の存在、濃度、又はその両方を測定することができるガスセンサを含む、1又は2以上のセンサノード」を備える点。
ウ 構成Bの観点(センサベース)
(ア) 構成Bは、「前記1又は2以上のセンサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにおける1又は2以上の大気汚染物質の存在、濃度、又はその両方を測定することができるセンサベースであって、前記センサベースが、前記1又は2以上のセンサノードの前記ガスセンサよりもより高い品質を備えたガスセンサを含む、センサベース」を備えることである。
(イ) 引用発明の「車両12」は、「一定周期で上記各センサユニット2が配置された場所を巡回し」、「一定の時間一つのセンサユニット2の設置場所に滞在し、サンプリング手段から大気を導入して連続的にリアルタイム測定を行[う]」ものであるから、各センサユニット2の周辺の領域の大気を導入して測定を行うものといえる。
また、引用発明の「車両12に搭載されるガス分析装置13」は、「前記センサユニットで測定される測定対象成分に対応して、NOX、O3、SO2、CO、HCの濃度をそれぞれ測定するNOX分析装置39、O3分析装置40、SO2分析装置41、CO分析装置42、HC分析装置43を備え[る]」ものであるから、「1又は2以上の大気汚染物質の存在、濃度、又はその両方を測定することができる」ものといえる。
そうすると、前記イの検討も踏まえれば、引用発明の「車両12」は、本願発明の「前記1又は2以上のセンサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにおける1又は2以上の大気汚染物質の存在、濃度、又はその両方を測定することができるセンサベース」に相当する。
(ウ) また、引用発明においては、「巡回手段として車両12に搭載されたガス分析装置13としては、」「センサユニット2に対してより高精度に大気中の測定対象成分濃度を測定しうるもの」であるから、引用発明は、本願発明の「前記センサベースが、前記1又は2以上のセンサノードの前記ガスセンサよりもより高い品質を備えたガスセンサを含む」ことに相当する構成を有する。
(エ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Bの観点について、次の点において一致する。
「前記1又は2以上のセンサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにおける1又は2以上の大気汚染物質の存在、濃度、又はその両方を測定することができるセンサベースであって、前記センサベースが、前記1又は2以上のセンサノードの前記ガスセンサよりもより高い品質を備えたガスセンサを含む、センサベース」を備える点。
エ 構成Cの観点(データセンタ)
(ア) 構成Cは、「前記センサベース及び前記1又は2以上のセンサノードに通信可能に結合された1又は2以上のサーバを含むデータセンタ」を備えることである。
(イ) 引用発明の「大気汚染モニタリングシステム1」は、「センサユニット2とパソコン8とを結ぶ通信手段としての光ファイバ7」と、「車両12で取得した測定信号をパソコン8に対して送信するための通信手段9」を含むものであるから、「パソコン8」は、「車両12」及び「「センサユニット2」と通信可能に結合されたものといえる。
そうすると、引用発明の「サーバとしてのパソコン8」は、本願発明の「前記センサベース及び前記1又は2以上のセンサノードに通信可能に結合された1又は2以上のサーバ」に相当する。
(ウ) 一方で、引用発明においては、「サーバとしてのパソコン8」は、どこに設置されるものか明らかでなく、「データセンタ」に含まれるものかも明らかでない。
(エ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Cの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Cの観点における一致点
「前記センサベース及び前記1又は2以上のセンサノードに通信可能に結合された1又は2以上のサーバ」を備える点。
b 構成Cの観点における相違点
「1又は2以上のサーバ」について、本願発明においては、「データセンタ」に含まれるものであるのに対して、引用発明においては、どこに設置されるものか明らかでない点。
オ 構成Dの観点(測定値の通信)
(ア) 構成Dは、「前記センサベース及び前記1又は2以上のセンサノードは、これらの測定値を前記サーバに通信することができ[る]」ことである。
(イ) 引用発明において、「車両12に搭載されるガス分析装置13」「において取得された測定結果としての各測定対象成分の濃度信号は、」「サーバとしてのパソコン8に送信され[る]」から、引用発明は、本願発明の「前記センサベース」「は、これらの測定値を前記サーバに通信することができる」ことに相当する構成を有する。
(ウ) また、引用発明において、「センサユニット2」が「備え[る]]「検出部14」に「設けられ[る]」「NOXガスセンサ15、O3ガスセンサ16、SO2ガスセンサ17、COガスセンサ18およびHCガスセンサ19」で「得られた各測定対象成分の濃度に対応する信号は、」「サーバ8に送信され[る]」から、引用発明は、本願発明の「前記1又は2以上のセンサノードは、これらの測定値を前記サーバに通信することができる」ことに相当する構成を有する。
(エ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Dの観点について、次の点において一致する。
「前記センサベース及び前記1又は2以上のセンサノードは、これらの測定値を前記サーバに通信することができる」点。
カ 構成Eの観点(測定値を補正するための基準データ)
(ア) 構成Eは、「前記センサベースの測定値は、前記1又は2以上のセンサノードの測定値を補正するための基準データとして前記サーバによって使用され[る]」ことである。
(イ) 引用発明において、「コンピュータ8は、センサユニット2での測定時間と同じ時間において行った測定結果としての濃度信号を車両から新たに取得した場合(S3:YES)、センサユニット2からの信号に基いて前記ステップ(S2)で得られたNOX、O3、SO2、CO、HCの濃度値と車両12から取得したそれら成分に対応する濃度値とをそれぞれ比較し、成分毎にその比を校正係数として演算算出し(S30)、」「センサユニット2からの信号に基いて前記ステップ(S2)で得られたNOX、O3、SO2、CO、HCの各濃度値にそれぞれの校正係数を乗算して濃度校正を行った各濃度値を出力[する]」ものである。
すなわち、引用発明においては、「車両12から取得した」「濃度値」は、「センサユニット2からの信号に基いて」「得られたNOX、O3、SO2、CO、HCの濃度値」と比較され、「その比を校正係数として」、「センサユニット2からの信号に基いて」「得られたNOX、O3、SO2、CO、HCの各濃度値にそれぞれの校正係数を乗算して濃度校正を行[う]」ものであるから、引用発明の「車両12から取得した」「濃度値」は、濃度校正のための基準データとしてコンピュータ8に使用されるものといえる。
そして、引用発明の「濃度校正」は、「各濃度値にそれぞれの校正係数を乗算して」行うものであるから、各濃度値を補正するものといえる。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Eの観点について、次の点において一致する。
「前記センサベースの測定値は、前記1又は2以上のセンサノードの測定値を補正するための基準データとして前記サーバによって使用される」点。
キ 構成Fの観点(ベースラインドリフトのための補正)
(ア) 構成Fは、「前記1又は2以上のセンサノードそれぞれの測定値は、各センサノードのベースラインドリフトのために補正され[る]」ことである。
(イ) 引用発明は、本願発明の構成Fに相当する構成を備えているか明らかでないから、本願発明と引用発明は、構成Fの観点について、次の点において相違する。
<構成Fの観点における相違点>
本願発明においては、「前記1又は2以上のセンサノードそれぞれの測定値は、各センサノードのベースラインドリフトのために補正され[る]」のに対して、引用発明は、そのようなものであるか明らかでない点。
ク 構成Gの観点(ドリフト率に応じた頻度又は時間期間)
(ア) 構成Gは、「前記センサベースは、前記1又は2以上のセンサノードのドリフト率に応じた頻度又は時間期間にて前記センサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにて又はその周りで空気サンプルを収集する」ことである。
(イ) 引用発明の「車両12」は、「例えば、二週間または一ヶ月に一回など一定周期で上記各センサユニット2が配置された場所を巡回し、例えば一日など一定の時間一つのセンサユニット2の設置場所に滞在し、サンプリング手段から大気を導入して連続的にリアルタイム測定を行[う]」ものである。
ここで、引用発明の「サンプリング手段から大気を導入[する]」ことは、本願発明の「空気サンプルを収集する」ことに相当する。
そして、前記ウ(イ)の検討を踏まえると、引用発明は、本願発明の「前記センサベースは、」「前記センサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにて又はその周りで空気サンプルを収集する」ことに相当する構成を有するといえる。
(ウ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Gの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Gの観点における一致点
「前記センサベースは、前記センサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにて又はその周りで空気サンプルを収集する」点。
b 構成Gの観点における相違点
本願発明においては、「前記センサベース」が「前記センサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにて又はその周りで空気サンプルを収集する」頻度又は時間間隔が、「前記1又は2以上のセンサノードのドリフト率に応じた頻度又は時間期間」であるのに対して、
引用発明においては、例えば、二週間または一ヶ月に一回など一定周期で各センサユニット2が配置された場所を巡回し、例えば一日など一定の時間一つのセンサユニット2の設置場所に滞在し、サンプリング手段から大気を導入して連続的にリアルタイム測定を行うものである点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「検知ネットワークであって、
1又は2以上のセンサノードであって、前記1又は2以上のセンサノードの各々が、前記センサノードの周囲のノーダルカバレッジエリアにおける1又は2以上の大気汚染物質の存在、濃度、又はその両方を測定することができるガスセンサを含む、1又は2以上のセンサノードと、
前記1又は2以上のセンサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにおける1又は2以上の大気汚染物質の存在、濃度、又はその両方を測定することができるセンサベースであって、前記センサベースが、前記1又は2以上のセンサノードの前記ガスセンサよりもより高い品質を備えたガスセンサを含む、センサベースと、
前記センサベース及び前記1又は2以上のセンサノードに通信可能に結合された1又は2以上のサーバと、
を備え、
前記センサベース及び前記1又は2以上のセンサノードは、これらの測定値を前記サーバに通信することができ、前記センサベースの測定値は、前記1又は2以上のセンサノードの測定値を補正するための基準データとして前記サーバによって使用され、
前記センサベースは、前記センサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにて又はその周りで空気サンプルを収集する、
検知ネットワーク。」である点。
イ 相違点
(ア) 相違点1
「1又は2以上のサーバ」について、本願発明においては、「データセンタ」に含まれるものであるのに対して、引用発明においては、どこに設置されるものか明らかでない点。
(イ) 相違点2
本願発明においては、「前記1又は2以上のセンサノードそれぞれの測定値は、各センサノードのベースラインドリフトのために補正され[る]」のに対して、引用発明は、そのようなものであるか明らかでない点。
(ウ) 相違点3
本願発明においては、「前記センサベース」が「前記センサノードの各々の前記ノーダルカバレッジエリアにて又はその周りで空気サンプルを収集する」頻度又は時間間隔が、「前記1又は2以上のセンサノードのドリフト率に応じた頻度又は時間期間」であるのに対して、
引用発明においては、例えば、二週間または一ヶ月に一回など一定周期で各センサユニット2が配置された場所を巡回し、例えば一日など一定の時間一つのセンサユニット2の設置場所に滞在し、サンプリング手段から大気を導入して連続的にリアルタイム測定を行うものである点。
6 判断
(1) 相違点1について
サーバをデータセンタに設置することは、例示するまでもない慣用手段にすぎないから、引用発明において、「サーバとしてのパソコン8」をデータセンタに設置して、データセンタに含まれるものとすることにより、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2) 相違点2について
ア 「ドリフト」とは、「測定器の測定対象や条件を一定にしておいても、時間とともに測定器の指示する値がしだいにずれてゆく現象、またはそのずれの値をいう。」ものであるところ(「岩波理化学辞典第4版」より)、測定値に生じるドリフトには、通常、ベースラインドリフトの要素と感度ドリフトの要素が含まれるものである。
このことは、令和5年6月1日に提出された意見書の3頁12~15行等に、次のとおり記載されていることからも明らかである。
「理想の測定値、ベースラインドリフト及び感度ドリフトは、直線で表されることから、y=mx+bの式により示すことが可能です。ここで、bはベースラインドリフトの変化量を示し、mは感度ドリフトの変化量を表すことができる傾き(m=1の場合、理想の測定値の傾きとなります)を示します。」
「
[図:0001428596000007.jpg]
」
イ 引用発明においては、「車両12から取得した」「濃度値」は、「センサユニット2からの信号に基いて」「得られたNOX、O3、SO2、CO、HCの濃度値」と比較され、「その比を校正係数と[する]」ものであるから、「校正係数」には、ベースラインドリフトの要素と感度ドリフトの要素の両方が反映されているといえる。
そして、引用発明は、「センサユニット2からの信号に基いて」「得られたNOX、O3、SO2、CO、HCの各濃度値にそれぞれの校正係数を乗算して濃度校正を行[う]」ものであるから、校正係数を乗算する濃度校正により、「各濃度値」の感度ドリフトだけでなくベースラインドリフトも補正されることは明らかである。
そうすると、引用発明において、「各濃度値」は、感度ドリフトのために補正されるとともに、ベースラインドリフトのためにも補正されるといえるから、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
なお、仮にこの点が実質的な相違点であるとしても、濃度センサの出力を補正するにあたり、ベースラインも含めて補正すべきことは当業者にとって自明のことであり(濃度センサの出力を補正するにあたりベースラインも補正すべき点について、例えば特開平10-227655号の段落【0002】~【0008】を参照。)、当業者が適宜なし得たことにすぎない。
(3) 相違点3について
ア 前記4(2)エにおいて周知技術1として認定したとおり、「測定装置において、計測値のドリフトの進行速度に応じて、較正又は補正の頻度を決定すること。」は、本願の優先日前に周知の技術であった。
引用発明は、「車両12から取得した」「濃度値」を用いて、「センサユニット2からの信号に基いて」「得られたNOX、O3、SO2、CO、HCの濃度値」を校正(補正)するものであるから、当該「濃度値」の補正のタイミングが、ドリフトの進行速度に対応した適切な頻度となるように、周知技術1を適用することは、当業者が容易に想到し得たことであり、その際に、補正の頻度を決定するため用いる「ドリフトの進行速度」を表す指標としてドリフト率(ドリフト率自体は周知技術1を例示するために示した引用文献10にも開示がある。)を採用することは、当業者が適宜選択し得る設計事項にすぎないというべきである。
したがって、引用発明において、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
(4) 総合評価
前記(1)~(3)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点1~3に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1~3を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
請求人は、令和5年6月1日に提出した意見書において、拒絶理由通知における拒絶の理由のうち理由2(進歩性の欠如)について、概略、次のとおり主張している。
引用発明における「センサユニット2から得られた濃度値に校正係数を乗算することで濃度値を求める」ことは、本願発明の「補正」とは大きく異なっている。本願発明では、「前記1又は2以上のセンサノードそれぞれの測定値は、各センサノードのベースラインドリフトのために補正され[る]」のに対して、引用発明の「校正」は、そのような「補正」を行うことがない。そして、本願発明は、「前記1又は2以上のセンサノードそれぞれの測定値は、各センサノードのベースラインドリフトのために補正され」という構成により、引用発明などよりも正確なデータを得ることができるといった格別な作用効果を奏する。
(2) 請求人の主張についての検討
前記6(2)において説示したとおり、「前記1又は2以上のセンサノードそれぞれの測定値は、各センサノードのベースラインドリフトのために補正され[る]」という構成に係る相違点2は、実質的な相違点とはいえない。
そうすると、相違点2が実質的な相違点であることを前提とする前記(1)に示した請求人の主張は、採用することができない。
また仮に、この点が実質的な相違点であるとしても、相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が適宜なし得たことであって進歩性の根拠とできないことは、前記6(2)で検討したとおりである。
8 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-000366