特許拒絶査定不服審判
2024-012524
家具要素を制御するためのシステム、方法、家具アセンブリおよびコンピュータプログラム製品
- 審判番号
- 2024-012524
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-574473
- 請求日
- 2024年08月01日
- 審決日
- 2025年10月22日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
- 【請求人代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【請求人代理人】森田 拓
- 【請求人代理人】前川 純一
- 【請求人代理人】永島 秀郎
- 【請求人代理人】上島 類
- 審判長/審判官
- 審判長 小島 寛史
- 審判官 井海田 隆
- 審判官 喜々津 徳胤
- 分類
- P18 .121-Z (G08C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-574473「家具要素を制御するためのシステム、方法、家具アセンブリおよびコンピュータプログラム製品」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月 9日国際公開、WO2021/243394、令和 5年 7月 5日国内公表、特表2023-528634〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)6月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2020年6月5日、オーストリア国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。なお、2020年(令和2年)6月5日を以下「優先日」という。
令和5年 2月 2日 :翻訳文の提出
令和6年 1月10日付け:拒絶理由通知書
同年 4月 8日 :意見書、手続補正書の提出
同月30日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 5月 7日 :原査定の謄本の送達)
同年 8月 1日 :審判請求書の提出
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年4月8日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「電気的に駆動可能なまたは位置調整可能な少なくとも1つの家具要素(1)を制御するためのシステムであって、前記システムは、
無線で伝送される少なくとも1つの信号(4)を送出する少なくとも1つの主送信装置(31)と、
無線で伝送される少なくとも1つの信号(4)を受信する少なくとも1つの受信装置(2)と、
を有し、
前記少なくとも1つの家具要素(1)は、無線で伝送される少なくとも1つの第1の信号(4)によって制御可能であり、
無線で伝送される前記少なくとも1つの第1の信号(4)は、前記少なくとも1つの主送信装置(31)から前記少なくとも1つの受信装置(2)に伝送可能であるシステムにおいて、
前記少なくとも1つの主送信装置(31)とは別個の少なくとも1つの副送信装置(32)が設けられ、前記少なくとも1つの副送信装置(32)から、無線で伝送される少なくとも1つの第2の信号(4)が前記少なくとも1つの受信装置(2)に送信可能であり、
前記少なくとも1つの家具要素(1)は、前記少なくとも1つの副送信装置(32)から前記少なくとも1つの受信装置(2)に伝送された少なくとも1つの第2の信号(4)によって制御可能であり、
前記システムは、少なくとも2つの副送信装置(32)を有し、前記少なくとも2つの副送信装置(32)のそれぞれは、少なくとも2つの家具要素(1)のそれぞれに固有に対応付けられている、
ことを特徴とする、システム。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Eまでに分説する。また、参考図として、本願の【図6b】を掲載する。
<本願発明の分説>
構成X 電気的に駆動可能なまたは位置調整可能な少なくとも1つの家具要素(1)を制御するためのシステムであって、
構成A 前記システムは、
無線で伝送される少なくとも1つの信号(4)を送出する少なくとも1つの主送信装置(31)と、
無線で伝送される少なくとも1つの信号(4)を受信する少なくとも1つの受信装置(2)と、
を有し、
構成B 前記少なくとも1つの家具要素(1)は、無線で伝送される少なくとも1つの第1の信号(4)によって制御可能であり、
無線で伝送される前記少なくとも1つの第1の信号(4)は、前記少なくとも1つの主送信装置(31)から前記少なくとも1つの受信装置(2)に伝送可能であるシステムにおいて、
構成C 前記少なくとも1つの主送信装置(31)とは別個の少なくとも1つの副送信装置(32)が設けられ、前記少なくとも1つの副送信装置(32)から、無線で伝送される少なくとも1つの第2の信号(4)が前記少なくとも1つの受信装置(2)に送信可能であり、
構成D 前記少なくとも1つの家具要素(1)は、前記少なくとも1つの副送信装置(32)から前記少なくとも1つの受信装置(2)に伝送された少なくとも1つの第2の信号(4)によって制御可能であり、
構成E 前記システムは、少なくとも2つの副送信装置(32)を有し、前記少なくとも2つの副送信装置(32)のそれぞれは、少なくとも2つの家具要素(1)のそれぞれに固有に対応付けられている、
ことを特徴とする、
構成X システム。
<参考図>
[図:0001433659000001.jpg]
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【0002】
電気的に駆動可能なまたは位置調整可能な家具要素の使用は、家具部分、特にフラップ、戸または引出しの手動による開閉の代わりになる。これによって、家具部分の快適かつ省力化された操作が可能にされる。
【0003】
電気的に駆動可能なまたは位置調整可能な家具要素の制御は、従来技術によればしばしば無線接続を介して行われる。これによって、手間のかかる線路の敷設が省かれる。
【0004】
刊行物であるオーストリア国実用新案第11904号明細書には、物理的に操作可能なスイッチが開示されており、このスイッチは、副送信装置を介して家具要素の受信装置に無線信号を送信し、これによって家具部分を動かすようにこの家具要素を促す。
【0005】
このスイッチは操作しやすく、かつ家具部分自体よりも良好に到達可能な箇所に位置決め可能であるが、操作者は、家具部分を動かすためにスイッチの箇所に赴く必要がある。
【0006】
さらに、このスイッチは、操作者自身によって直接に物理的に操作されなければならず、直接に手によってまたは間接に手元の家具部分を押圧することによって操作されなければならない。
【0007】
本発明の課題は、これらの欠点を回避することである。特に、電気的に駆動可能なまたは位置調整可能な少なくとも1つの家具要素を制御するための改良された装置と、そのような装置を備える改良された家具アセンブリと、電気的に駆動可能なまたは位置調整可能な家具要素を制御するための改良された方法と、そのような方法を実施するための改良されたコンピュータプログラム製品とが実現されるべきである。」
3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する引用文献1を主引用文献とする理由3(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由3(進歩性の欠如)
本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.米国特許出願公開第2018/0289175号明細書
4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である米国特許出願公開第2018/0289175号明細書(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(併せて当合議体による日本語訳を括弧内に示す。なお、当合議体により、後記(2)の引用発明の認定に用いる記載に下線を付した。)。
ア 段落[0001]~[0002]
「[0001] The invention relates to a remote-controllable furniture control for a piece of furniture with at least one, preferably electrically, adjustable furniture part; the invention further relates to a piece of furniture with a furniture control and to a furniture system with such a piece of furniture and a remote control.
[0002] Pieces of furniture can include moveable parts which enable an adaption of the piece of furniture to requirements in terms of need or convenience of a user. Such pieces of furniture can for example be sickbeds or nursing beds with height-adjustable head parts and foot parts; likewise, the entire frame of the bed can be height-adjustable. Another example are height-adjustable tables. The movement of the adjustable furniture parts can be effected electrically via drives, such as electro motors or actuators. The control of these drives, so that the movement takes place in an intended manner, is effected via a furniture control. This can be controlled and operated by a user via an operating element attached to the piece of furniture or a remote control.」
(日本語訳:[0001] 本発明は、少なくとも1つの、好ましくは電気的に調整可能な家具部品を備えた家具のための、遠隔操作可能な家具制御装置に関する。さらに、本発明は、家具制御装置を備えた家具、ならびにそのような家具と遠隔操作装置を備えた家具システムに関する。
[0002] 家具は、使用者のニーズまたは利便性に関する要件に合わせて家具を適応させることを可能にする可動部品を含むことができる。そのような家具としては、例えば、高さ調節可能な頭部および脚部を備えた病人用ベッドまたは看護用ベッドが挙げられる。同様に、ベッドのフレーム全体が高さ調節可能であることも可能である。別の例としては、高さ調節可能なテーブルが挙げられる。調整可能な家具部品の動きは、電動モータまたはアクチュエータなどの駆動装置を介して電気的に行うことができる。これらの駆動装置は、意図した動作を行うように家具制御装置を介して制御される。これは、家具に取り付けられた操作部または遠隔操作装置を介して使用者によって制御および操作され得る。)
イ 段落[0029]~[0030]、【Fig.1】
「[0029] FIG. 1 shows a first exemplary embodiment of a bed system, which includes a sickbed 15 with height-adjustable head part 17 as an example of a piece of furniture with electrically-adjustable furniture part as well as remote control devices 7, 6 for the control thereof. The sickbed 15 can include further adjustable parts, for example a frame which is height-adjustable in its entirety, and a height-adjustable foot part. The sickbed 15 includes a furniture control 3, which can for example be mounted on the bed frame or integrated therein. The furniture control 3 includes a drive 30 for adjusting the head part 17 as well as a transceiver 10 for the communication with the remote control devices 7, 6, by means of which a user can adjust the position of the head part 17 and control the movement thereof. The drive 30 can be integrated in the furniture control 3 or have a modular structure, so that e.g. a plug connection is provided between a control module with the transceiver 10 and the drive module, and the furniture control 3 is formed by assembling the modules.
[0030] The remote control devices 6, 7 are a cell phone 6 with functionalities beyond telephony, and a remote control 7 for the bed 15. The described cell phone is also called smartphone. The remote control 7 is usually bed system-specific, i.e. it is limited in the functionality thereof substantially to the control of the bed 15. Nevertheless, further functions beyond the actual bed control, for example a little light source, can be provided in the remote control 7.」
(日本語訳:[0029] 図1は、ベッドシステムの第1の例示的な実施形態を示す。このベッドシステムは、電動調整可能な家具部を備えた家具の一例として、高さ調節可能な頭部17を備えた病人用ベッド15と、それを制御するための遠隔制御装置7、6とを備える。病人用ベッド15は、例えば、全体が高さ調節可能なフレームや、高さ調節可能な脚部など、さらなる調節可能な部品を備えることができる。病人用ベッド15には、例えばベッドフレームに取り付けるか、またはベッドフレームに一体化することができる家具制御装置3が備えられている。家具制御装置3は、頭部17を調整するための駆動装置30と、リモコン装置7、6との通信用のトランシーバ10とを備えており、これにより、ユーザは頭部17の位置を調整し、その動きを制御することができる。駆動装置30は、家具制御装置3に一体化することも、モジュール構造とすることもできる。その場合、例えば、トランシーバ10を備えた制御モジュールと駆動モジュールとの間にプラグ接続が設けられ、これらのモジュールを組み立てることで家具制御装置3が構成される。
[0030] リモコン装置6、7は、電話機能以外の機能を備えた携帯電話6と、ベッド15用のリモコン7である。ここで説明する携帯電話は、スマートフォンとも呼ばれる。リモコン7は通常、ベッドシステム固有のものであり、その機能はベッド15の制御にほぼ限定されている。しかしながら、ベッド制御以外の機能、例えば小型の光源などをリモコン7に搭載することも可能である。)
「Fig.1
[図:0001433659000002.jpg]
」
ウ 段落[0036]、【Fig.3】
「[0036]
FIG. 3 schematically shows an exemplary embodiment of a furniture control 3 for a bed system as the above-described. The furniture control 3 comprises a combined transceiver 10 which, via two separate radio links 1, 2, can communicate with the two remote control devices 6, 7, namely a smartphone 6 which is Bluetooth-compatible, and a radio remote control 7. The remote control devices 6, 7 each have a radio component 8, 9, which serves as the transceiver thereof. The smartphone 6 has a Bluetooth transceiver, to enable a first radio link 1 with the transceiver 10 according to the Bluetooth standard. The radio component 8 is the Bluetooth transceiver mounted in the Bluetooth-compatible device. The radio remote control 7 has a radio component 9 for the communication with the transceiver 10 via a second radio link 2 according to a standard other than Bluetooth. Advantageously, this radio component 9 is a cost-efficient transceiver module for the remote control 7.」
(日本語訳:[0036] 図3は、上述のベッドシステム用の家具制御装置3の例示的な実施形態を概略的に示す。家具制御装置3は、2つの別々の無線リンク1、2を介して、2つのリモコン装置6、7、すなわち、Bluetooth対応のスマートフォン6、無線リモコン7と通信することができる複合トランシーバ10を備える。
リモコン装置6、7はそれぞれ、送受信機として機能する無線コンポーネント8、9を備える。スマートフォン6は、Bluetooth規格に準拠した第1無線リンク1を送受信機10と通信するためのBluetoothトランシーバを備える。無線コンポーネント8は、Bluetooth対応機器に搭載されたBluetoothトランシーバである。無線リモコン7は、Bluetooth以外の規格に準拠した第2無線リンク2を介して送受信機10と通信するための無線コンポーネント9を備える。この無線コンポーネント9は、リモコン7用のコスト効率の高い送受信モジュールであるのが有利である。)
「Fig.3
[図:0001433659000003.jpg]
」
(2) 引用発明の認定
前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「電動調整可能な家具部を備えた家具として、高さ調節可能な頭部17を備えた病人用ベッド15と、それを制御するための遠隔制御装置7、6とを備えるベッドシステムであって、([0029])
病人用ベッド15には、ベッドフレームに取り付けるか、またはベッドフレームに一体化することができる家具制御装置3が備えられ、家具制御装置3は、頭部17を調整するための駆動装置30と、リモコン装置7、6との通信用のトランシーバ10とを備えており、これにより、ユーザは頭部17の位置を調整し、その動きを制御することができ、([0029])
リモコン装置6、7は、電話機能以外の機能を備えた携帯電話6と、ベッド15用のリモコン7であり、携帯電話は、スマートフォンとも呼ばれ、リモコン7はベッドシステム固有のものであり、([0030])
家具制御装置3は、2つの別々の無線リンク1、2を介して、2つのリモコン装置6、7と通信することができる複合トランシーバ10を備え、リモコン装置6、7はそれぞれ、送受信機として機能する無線コンポーネント8、9を備える、([0036])
ベッドシステム。」
5 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(システムについて)
引用発明の「電動調整可能な家具部」は、本願発明の「電気的に駆動可能な」「少なくとも1つの家具要素(1)」に相当するから、「電気的に駆動可能なまたは位置調整可能な少なくとも1つの家具要素(1)を制御するためのシステム」の発明である本願発明と、「電動調整可能な家具部を備えた家具として、高さ調節可能な頭部17を備えた病人用ベッド15と、それを制御するための遠隔制御装置7、6とを備えるベッドシステム」である引用発明は、「電気的に駆動可能な」「少なくとも1つの家具要素を制御するためのシステム」の発明である点において一致する。
イ 構成Aの観点(送受信装置について)
(ア) 引用発明における「リモコン装置6」(携帯電話6)が備える「送受信機として機能する無線コンポーネント8」は、本願発明の「無線で伝送される少なくとも1つの信号(4)を送出する少なくとも1つの主送信装置(31)」に相当する。
(イ) 引用発明における「家具制御装置3」が備える「リモコン装置6」(携帯電話6)と「通信することができる複合トランシーバ10」は、本願発明の「無線で伝送される少なくとも1つの信号(4)を受信する少なくとも1つの受信装置(2)」に相当する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記システムは、
無線で伝送される少なくとも1つの信号を送出する少なくとも1つの主送信装置と、
無線で伝送される少なくとも1つの信号を受信する少なくとも1つの受信装置と、
を有[する]」点。
ウ 構成Bの観点(無線信号の伝送について)
(ア) 引用発明は「家具制御装置3は、頭部17を調整するための駆動装置30と、リモコン装置7、6との通信用のトランシーバ10とを備えており、これにより、ユーザは頭部17の位置を調整し、その動きを制御することができ[る]」ものであるから、引用発明の「電動調整可能な家具部」である「頭部17」が「リモコン装置6」から無線で伝送される信号により制御可能であることは明らかであって、このことは本願発明において「前記少なくとも1つの家具要素(1)は、無線で伝送される少なくとも1つの第1の信号(4)によって制御可能であ[る]」ことに相当する。
(イ) 引用発明において「複合トランシーバ10」が「リモコン装置6」(携帯電話6)と「通信することができる」ことは、本願発明において「無線で伝送される前記少なくとも1つの第1の信号(4)は、前記少なくとも1つの主送信装置(31)から前記少なくとも1つの受信装置(2)に伝送可能である」ことに相当する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記少なくとも1つの家具要素は、無線で伝送される少なくとも1つの第1の信号によって制御可能であり、
無線で伝送される前記少なくとも1つの第1の信号は、前記少なくとも1つの主送信装置から前記少なくとも1つの受信装置に伝送可能である」点。
エ 構成Cの観点(副送信装置について)
(ア) 引用発明の「リモコン装置7」は、本願発明の「前記少なくとも1つの主送信装置(31)とは別個の少なくとも1つの副送信装置(32)」に相当する。
(イ) 引用発明において「複合トランシーバ10」が「リモコン装置7」「と通信することができる」ことは、本願発明において「前記少なくとも1つの副送信装置(32)から、無線で伝送される少なくとも1つの第2の信号(4)が前記少なくとも1つの受信装置(2)に送信可能であ[る]」ことに相当する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記少なくとも1つの主送信装置とは別個の少なくとも1つの副送信装置が設けられ、前記少なくとも1つの副送信装置から、無線で伝送される少なくとも1つの第2の信号が前記少なくとも1つの受信装置に送信可能であ[る]」点。
オ 構成Dの観点(副送信装置による制御について)
(ア) 引用発明は「家具制御装置3は、頭部17を調整するための駆動装置30と、リモコン装置7、6との通信用のトランシーバ10とを備えており、これにより、ユーザは頭部17の位置を調整し、その動きを制御することができ[る]」ものであるから、引用発明の「電動調整可能な家具部」が「リモコン装置7」から無線で伝送される信号により制御可能であることは明らかであって、このことは本願発明において「前記少なくとも1つの家具要素(1)は、前記少なくとも1つの副送信装置(32)から前記少なくとも1つの受信装置(2)に伝送された少なくとも1つの第2の信号(4)によって制御可能であ[る]」ことに相当する。
(イ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記少なくとも1つの家具要素は、前記少なくとも1つの副送信装置から前記少なくとも1つの受信装置に伝送された少なくとも1つの第2の信号によって制御可能であ[る]」点。
カ 構成Eの観点(2つの副送信装置について)
(ア) 引用発明において「リモコン7はベッドシステム固有のものであ[る]」ことは、本願発明において「副送信装置(32)」が「家具要素(1)」に「固有に対応付けられている」ことに相当する。
(イ) 引用発明においては二つ以上の「リモコン装置7」を有するとはされておらず、「少なくとも2つの副送信装置(32)を有[する]」本願発明と相違する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、「副送信装置(32)」が「家具要素(1)」に「固有に対応付けられている」点において一致し、一方、本願発明が「少なくとも2つの副送信装置(32)を有し、」ており、前記対応付けが「前記少なくとも2つの副送信装置(32)のそれぞれは、少なくとも2つの家具要素(1)のそれぞれに」対して行われるのに対して、引用発明は二つ以上の「リモコン装置7」を有するとはされていない点で相違する。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「電気的に駆動可能なまたは位置調整可能な少なくとも1つの家具要素を制御するためのシステムであって、前記システムは、
無線で伝送される少なくとも1つの信号を送出する少なくとも1つの主送信装置と、
無線で伝送される少なくとも1つの信号を受信する少なくとも1つの受信装置と、
を有し、
前記少なくとも1つの家具要素は、無線で伝送される少なくとも1つの第1の信号によって制御可能であり、
無線で伝送される前記少なくとも1つの第1の信号は、前記少なくとも1つの主送信装置から前記少なくとも1つの受信装置に伝送可能であるシステムにおいて、
前記少なくとも1つの主送信装置とは別個の少なくとも1つの副送信装置が設けられ、前記少なくとも1つの副送信装置から、無線で伝送される少なくとも1つの第2の信号が前記少なくとも1つの受信装置に送信可能であり、
前記少なくとも1つの家具要素は、前記少なくとも1つの副送信装置から前記少なくとも1つの受信装置に伝送された少なくとも1つの第2の信号によって制御可能であり、
前記副送信装置は、家具要素に固有に対応付けられている、システム。」である点。
イ 相違点
本願発明が「少なくとも2つの副送信装置(32)を有し、」ており、また、「前記少なくとも2つの副送信装置(32)のそれぞれは、少なくとも2つの家具要素(1)のそれぞれに」対して対応付けられるのに対して、引用発明は二つ以上の「リモコン装置7」を有するとはされていない点。
6 判断
(1) 相違点について
前記相違点について検討する。
引用発明は「病人用ベッド15と、それを制御するための遠隔制御装置7、6とを備えるベッドシステム」に関する発明であるところ、病人用ベッドを複数隣接して配置することは、病院施設における、いわゆる大部屋などに見られるように、極めて一般的な実施形態であって、これを採用することは当業者が容易に想到し得たものである。
そして、引用発明の「病人用ベッド15」を複数台隣接して配置する場合、「リモコン7」は「ベッドシステム固有のものであ[る]」から、個々のベッドごとに対応づけて病人用ベッド15の数と同数用意されることは当然である。(そうでなければ、リモコン7の操作によって複数のベッドが常に同一の動作を行うこととなるが、そのような動作制御に実用性がないことは明らかである。)
なお、本願発明においては「主送信装置(31)」について「少なくとも1つの第1の信号(4)」を送信して「少なくとも1つの家具要素(1)」を制御することのみが特定されており、二つ以上の「家具要素(1)」に対して「主送信装置(31)」がどのように機能するかについては、何ら特定されていない。
(2) 総合評価
前記(1)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
ア 請求人の主張1
請求人は令和6年4月8日付け意見書において概ね以下のように主張している。
本願発明は、特に、「前記システムは、少なくとも2つの副送信装置(32)を有し、前記少なくとも2つの副送信装置(32)のそれぞれは、少なくとも2つの家具要素(1)のそれぞれに固有に対応付けられている」ことを特徴のひとつとしており、かかる構成により、家具要素(1)を、副送信装置(32)を介して個別に制御することも、主送信装置(31)を介して集中的に制御することもでき、家具の柔軟な制御が可能となる。
各引用文献は、上述した本願発明の特徴を開示・示唆するものでないことは明らかであり、本願発明は各引用文献に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないと思料する。
イ 請求人の主張2
請求人は審判請求書において概ね以下のように主張している。
本願発明は、少なくとも1つの主送信装置(31)と少なくとも2つの副送信装置(32)の合計少なくとも3つの送信装置を有し、当該送信装置が少なくとも1つの受信装置(2)に、少なくとも1つの第1の信号と第2の信号を伝送して、当該信号により少なくとも1つの家具要素(1)が制御可能であることを特徴のひとつとしている。
各引用文献には、3つの送信装置から信号を受信する受信装置という構成が開示されていない。受信装置が2つの無線信号を処理できるというだけで、受信装置が3つの無線信号も処理できるということが直ちに一義的に成り立つわけではないことは明らかであり、例えば、引用文献1に記載の構成では、受信機では3つの無線信号間で起こりうる干渉に対処できないため、別個の受信機ユニットが必要となることは明らかであり、このためには引用文献1に記載の構成を大幅に変更することが必要となることから、当業者がこのような変更を容易に想到できないことは明らかである。
したがって、本願発明は、各引用文献に記載の発明とは本質的に異なる発明であり、また当該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないと思料する。
(2) 請求人の主張についての検討
ア 請求人の主張1について
請求人は、本願発明が「家具要素(1)を、副送信装置(32)を介して個別に制御することも、主送信装置(31)を介して集中的に制御することもでき、家具の柔軟な制御が可能となる。」ものであると主張するが、本願の請求項1において、「主送信装置(31)」が「無線で伝送される少なくとも1つの信号(4)を送出する」ことによって「制御可能であ[る]」とされているのは「少なくとも1つの家具要素(1)」のみであって、「少なくとも2つの副送信装置(32)のそれぞれ」が「それぞれに固有に対応付けられている」「少なくとも2つの家具要素(1)」の全てについて、一つの「主送信装置(31)」が制御可能であることについて、請求項1では特定されていない。
ここで本願明細書等の記載を参酌すると、前記2(2)において参考図として示した【図6a】では「主送信装置(31)」を二つ備える実施例の構成が開示されており、そのうち一方の「主送信装置(31)」は、ただ一つの「家具要素(1)」に対してのみ「信号(4)」を送出している。本願請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載されているこのような構成を包含するものであると解するのが自然である。
したがって、前記請求人の主張1は請求項の記載に基づかないものであって、採用することはできない。
なお、仮に本願発明が「主送信装置(31)を介して集中的に制御する」構成を有するものであるとしても、一つの送信装置により複数の機器を制御する技術は、いわゆるスマートリモコン又はスマートスピーカーにより各種スマート家電をコントロールするスマートホームとして周知なものであって、これを採用することは設計事項の範囲内のものといえる。
イ 請求人の主張2について
請求人は「引用文献1~4には、3つの送信装置から信号を受信する受信装置という構成が開示されていない。」と主張している。しかしながら、同主張の中で請求人も述べているように、本願発明が備える構成は「少なくとも1つの受信装置(2)に、少なくとも1つの第1の信号と第2の信号を伝送して、当該信号により少なくとも1つの家具要素(1)が制御可能である」という構成、すなわち「1つの受信装置(2)」が「1つの第1の信号」と「第2の信号」という二つの信号を受信する態様を含む構成であって、一つの受信装置が三つの信号を受信するという構成が特定されているわけではない。
本願明細書の記載を参酌しても、「種々異なる実施例」(段落【0060】)を示すものとされている図6a~図6eのいずれを見ても、「受信装置(2)」が三つ以上の「信号(4)」を受信する構成は示されていないし、ほかにそのような構成を示唆する記載も認められない。
したがって、前記請求人の主張2は請求項及び明細書の記載に基づかないものであって、採用することはできない。
8 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-012524