特許拒絶査定不服審判
2024-017233
測定装置及び測定システム
- 審判番号
- 2024-017233
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-054702
- 請求日
- 2024年10月29日
- 審決日
- 2026年05月27日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大作商事株式会社
- 【請求人代理人】大野 聖二
- 【請求人代理人】大野 浩之
- 審判長/審判官
- 審判長 小島 寛史
- 審判官 谷垣 圭二
- 審判官 関口 英樹
- 分類
- P18 .113-Z (G08C) / P18 .121-Z (G08C) / P18 .572-Z (G08C) / P18 .575-Z (G08C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 54702「測定装置及び測定システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年10月11日出願公開、特開2024-142541〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和5年3月30日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 3月29日付け:拒絶理由通知書
同年 5月31日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月22日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月30日 :原査定の謄本の送達)
同年10月29日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年10月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年10月29日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年10月29日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年5月31日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
車両に搭載され、当該車両のバッテリに接続された測定装置であって、
前記バッテリを測定する測定部と、
外部通信部と無線通信可能かどうかを判断する制御部と、
前記制御部が前記外部通信部との通信が可能であると判断した場合に、インターネットを介して外部装置に前記測定部による前記バッテリの測定結果を送信するために、前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する内部通信部と、
を備える測定装置。
【請求項2】
車両が前記外部通信部と通信可能な領域内に入った場合に、前記内部通信部が前記測定部による前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に自動で送信する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
少なくとも車両が駐車される駐車場又は営業所内に前記通信可能な領域が設定され、
車両が前記通信可能な領域に入った場合に、前記内部通信部が前記測定部による前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に自動で送信する、請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
無人搬送車に搭載され、当該無人搬送車のバッテリに接続された測定装置であって、
前記バッテリを測定する測定部と、
インターネットを介して外部装置に前記測定部による前記バッテリの測定結果を送信するために、前記バッテリの測定結果を外部通信部に送信する内部通信部と、
を備え、
前記内部通信部は連続的又は断続的に前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する、測定装置。
【請求項5】
前記無人搬送車は所定の敷地内を自動で移動する、請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
複数の車両の各々に設置された請求項1に記載の測定装置又は複数の無人搬送車の各々に設置された請求項4に記載の測定装置と、
前記測定装置とインターネットを介して通信可能な前記外部装置と、
を備え、
前記外部装置は、前記測定装置による各バッテリの測定結果の履歴を識別情報と関連付けて記憶する外部記憶部を有する、測定システム。
【請求項7】
複数の車両の各々に設置された請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置と、
前記測定装置とインターネットを介して通信可能な前記外部装置と、
を備え、
インターネットを介して前記外部装置からの指令を受けた場合に、前記外部通信部と通信可能な内部通信部が搭載されている車両のバッテリに対する測定部による測定結果を、内部通信部が外部通信部に送信する、測定システム。
【請求項8】
車両に搭載され、当該車両のバッテリに接続された測定装置であって、
前記バッテリを測定する測定部と、
外部通信部と無線通信可能かどうかを判断する制御部と、
前記制御部が前記外部通信部との通信が可能であると判断した場合に、前記測定部による前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する内部通信部と、
を備え、
常時動作するモードとタイマー動作モードとを切り替え可能になっている、測定装置。
【請求項9】
車両に搭載され、当該車両のバッテリに接続された測定装置であって、
前記バッテリを測定する測定部と、
外部通信部と無線通信可能かどうかを判断する制御部と、
前記制御部が前記外部通信部との通信が可能であると判断した場合に、前記測定部による前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する内部通信部と、
を備え、
外部装置から測定及び通信に関するスケジュールを受信し、
当該スケジュールに従って、測定部がバッテリを測定し、かつ外部装置との通信を試みる、測定装置。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
スマートフォン又はタブレットからなる外部装置と、
車両に搭載され、当該車両のバッテリに接続された測定装置であって、前記バッテリを測定する測定部と、外部通信部と無線通信可能かどうかを判断する制御部と、前記制御部が前記外部通信部との通信が可能であると判断した場合に、インターネットを介して前記スマートフォン又は前記タブレットからなる前記外部装置に前記測定部による前記バッテリの測定結果を送信するために、前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する内部通信部と、を有する測定装置と、
を備える測定システム。
【請求項2】
車両が前記外部通信部と通信可能な領域内に入った場合に、前記内部通信部が前記測定部による前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に自動で送信する、請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
少なくとも車両が駐車される駐車場又は営業所内に前記通信可能な領域が設定され、
車両が前記通信可能な領域に入った場合に、前記内部通信部が前記測定部による前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に自動で送信する、請求項2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記外部装置は、前記測定装置による各バッテリの測定結果の履歴を識別情報と関連付けて記憶する外部記憶部を有する、請求項1に記載の測定システム。
【請求項5】
インターネットを介して前記外部装置からの指令を受けた場合に、前記外部通信部と通信可能な内部通信部が搭載されている車両のバッテリに対する測定部による測定結果を、内部通信部が外部通信部に送信する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定システム。
【請求項6】
車両に搭載され、当該車両のバッテリに接続された測定装置であって、
前記バッテリを測定する測定部と、
外部通信部と無線通信可能かどうかを判断する制御部と、
前記制御部が前記外部通信部との通信が可能であると判断した場合に、前記測定部による前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する内部通信部と、
を備え、
常時動作するモードとタイマー動作モードとを切り替え可能になっている、測定装置。
【請求項7】
車両に搭載され、当該車両のバッテリに接続された測定装置であって、
前記バッテリを測定する測定部と、
外部通信部と無線通信可能かどうかを判断する制御部と、
前記制御部が前記外部通信部との通信が可能であると判断した場合に、前記測定部による前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する内部通信部と、
を備え、
外部装置から測定及び通信に関するスケジュールを受信し、
当該スケジュールに従って、測定部がバッテリを測定し、かつ外部装置との通信を試みる、測定装置。」
2 補正の目的の判断
(1) 本件補正前の請求項1を補正したものとしての検討
ア 請求人は、審判請求書において、「請求項1に施した補正は、[0022]、[0025]等に基づいて」いる旨を主張している。
上記主張からは、本件補正後の請求項1についてする補正が、本願明細書の段落【0022】、【0025】等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1を補正したものであると解するのが相当である。
そこで、本件補正のうち本件補正後の請求項1についてする補正が、本件補正前の請求項1を補正したものであるとして検討する。
イ 本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前においては「測定装置」の発明であったのを、「測定装置」と別の装置である「スマートフォン又はタブレットからなる外部装置」を追加した上で、「スマートフォン又はタブレットからなる外部装置と、」「測定装置と、を備える測定システム」の発明であるとする補正事項(以下「補正事項1」という。)を含んでいる。
ウ 前記補正事項1は、「測定装置」とは別の装置である「スマートフォン又はタブレットからなる外部装置」を追加する補正を含んでいるから、補正前の請求項1のいずれかの発明特定事項を、概念的により下位の発明特定事項とする補正ではない。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当しない。
また、本件補正が、特許法17条の2第5項に掲げる、請求項の削除(1号)、誤記の訂正(3号)、明りょうでない記載の釈明(4号)のいずれを目的とする補正にも該当しないことも明らかである。
(2) 本件補正前の請求項6又は7を補正したものとしての検討
ア 本件補正後の請求項1に係る発明が「測定システム」の発明であることから、本件補正後の請求項1についてする補正が、「測定システム」の発明が記載されている本件補正前の請求項6又は7を補正したものであるとして検討する。
イ(ア) 本件補正前の請求項6を補正したものとした場合
本件補正後の請求項1についてする補正は、本件補正前における「外部装置」について限定する、「前記測定装置による各バッテリの測定結果の履歴を識別情報と関連付けて記憶する外部記憶部を有する」との記載を削除する補正事項(以下「補正事項2」という。)を含んでいる。
(イ) 本件補正前の請求項7を補正したものとした場合
本件補正後の請求項1についてする補正は、本件補正前における「搭載されている車両のバッテリに対する測定部による測定結果を、内部通信部が外部通信部に送信する」ことについて限定する、「インターネットを介して前記外部装置からの指令を受けた場合に」との記載を削除する補正事項(以下「補正事項3」という。)を含んでいる。
ウ 前記補正事項2及び3は、いずれも、本件補正前にあった発明特定事項について限定する記載を削除する補正であることから、補正前の請求項6又は7のいずれかの発明特定事項を、概念的により下位の発明特定事項とする補正ではない。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当しない。
また、本件補正が、特許法17条の2第5項に掲げる、請求項の削除(1号)、誤記の訂正(3号)、明りょうでない記載の釈明(4号)のいずれを目的とする補正にも該当しないことも明らかである。
(3) 補正の目的についての判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しないが、仮に、本件補正が、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するとした場合、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成B3までに分説する。また、参考図として、本願の【図1】に部材名を追記したものを掲載する。
<本件補正発明の分説>
A スマートフォン又はタブレットからなる外部装置と、
B 車両に搭載され、当該車両のバッテリに接続された測定装置であって、
B1 前記バッテリを測定する測定部と、
B2 外部通信部と無線通信可能かどうかを判断する制御部と、
B3 前記制御部が前記外部通信部との通信が可能であると判断した場合に、インターネットを介して前記スマートフォン又は前記タブレットからなる前記外部装置に前記測定部による前記バッテリの測定結果を送信するために、前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する内部通信部と、
B を有する測定装置と、
X を備える測定システム。
<参考図>
[図:0001437868000001.jpg]
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリに接続された測定装置及び測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両のバッテリを測定するためのバッテリテスタが提供されている(例えば特許文献1参照)。従来の態様は、バッテリテスタを用いて1又は複数の車両のバッテリを測定することが行われている。つまり、例えば1台のバッテリテスタをユーザが購入し、当該バッテリテスタを用いて、管理している1又は複数の車両のバッテリを測定することが行われている。
…(中略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の発想とは異なり、バッテリテスタ等の測定装置を車両に搭載し、当該測定装置を用いて車両のバッテリを測定するものである。このような態様を採用することで、車両ごとのバッテリを迅速かつ確実に取得できるという、従来の態様と比較して優れた効果を得られるものである。」
「【発明の効果】
【0014】
本発明のようにバッテリテスタ等の測定装置を車両に搭載し、当該測定装置を用いて車両のバッテリを測定することで、車両ごとのバッテリを迅速かつ確実に取得できるという、従来の態様と比較して優れた効果を得られるものである。」
「【0021】
車両90が駐車場や営業所に停車しており、内部通信部20が外部通信部110と通信可能となっている状態においては、内部通信部20は継続的又は断続的に外部通信部110に対して測定結果を送信するようにしてもよい。このような態様を採用した場合には、例えば翌日に駐車場や営業所から車両90が出ていく直前までの車両90のバッテリ500の状態を把握することができる点で有益である。」
「【0023】
本実施の形態で示す車両に予め搭載された測定装置100を採用する場合には、例えば建設機器等のショベルカー、ブルドーザー等の車両90が山間部等の遠隔地で作業をしている場合であっても、Wi-Fi等の外部通信部110を適宜の場所に設置するだけで、各車両90に設定されているバッテリ500の状況を随時把握することができる点で有益である。」
「【0033】
AGV等の無人搬送車95は工場等の所定の敷地内を移動する車両90であってもよい。この場合、内部通信部20が連続的又は断続的にバッテリ500の測定結果を外部装置150に送信することによって、無人搬送車95に搭載されたバッテリ500の減り具合を連続的又は断続的にセンター等で把握することができるようになる。AGV等の無人搬送車95は予め定まった経路を移動することが一般的であるが(図5参照)、AGV等の無人搬送車95のバッテリ500の電圧が下がってしまって無人搬送車95が移動できなくなってしまうと、当該経路を塞いでしまい、例えば工場内での運送が停止してしまうことになる。このため、バッテリ500を常時観察し、無人搬送車95が停止してしまうリスクがないかを把握できることは非常に有益である。
【0034】
また、バッテリ500の減り具合を経時的に把握できることで、採用している無人搬送車95の経路が妥当なものであるかも検証することができる点で有益である。無人搬送車95が工場内等の敷地内を移動する際、別の無人搬送車95の往来や人の往来等によって停車することがあるが、その頻度が高くなるとバッテリ500の減りが早くなってしまう。このため、バッテリ500の減りが想定よりも早い場合には、別の経路を採用する等して、経路を変更し、ひいては無人搬送車95による搬送効率を高めることを期待できる点でも有益である。」
(2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2012-217224号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記ウの引用発明1及び2の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
(ア) 【0001】~【0009】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に対して周辺の利用可能な充電器の詳細な情報を通知する充電器情報通知システム、及び充電器情報通知方法に関する。
【背景技術】
…(中略)…
【0003】
電気自動車は、現時点では、一回のフル充電での走行距離が、数10~100km程度のものが多く、このため特に長距離の走行には目的地途中での充電が必要となる。しかし、充電設備の普及はまだまだ進んでおらず、充電設備のある施設が必要なときにすぐに見つかるとは限らない。そのため、充電施設を効率的に検索するシステムが数多く提案されている。例えば、特許文献1には、電気自動車の蓄積されている燃料に応じた走行距離を算出し、電気自動車の位置を取得し走行可能距離内に存在する充電スタンドの情報を提供する充電スタンド情報提供サーバ等が記載されている。また、特許文献2には、ショッピングセンタ等の施設検索において、同時に充電器に関する情報を提供し、検索された施設の中から所望の充電器を備えた施設を絞り込み検索できるナビゲーション装置等が記載されている。
…(中略)…
【0006】
しかしながら、このような方法を用いて、充電スタンドのある施設付近までたどり着いて実際に利用しようとすると、肝心の充電器が車や建物等の陰に隠れて見えなかったり、充電器のある場所に到達するまでの入庫経路が分からず苦労することが多い。例えば、ナビゲーション・システムの検索結果で表示された地図を最大に拡大しても、せいぜい充電器のある施設を表示するに留まり、実際に充電器のある場所までを把握することは難しい。特に、充電器がビル内や大規模な駐車場内にある場合には、通常のガソリンスタンドや駐車場の検索のように、単にその施設を地図上に表示するだけでは不十分である。充電器はガソリン給油機と違って電力さえあれば小さな敷地にも設置でき、小型化する傾向にあり(壁に設置された単なるコンセントである場合もある)、しかも充電そのものを目的とする施設以外にも多く設置されるものだからである。
【0007】
また、充電器には普通充電器、急速充電器をはじめ、多くの種類があり、たどり着いた先の充電器の充電時間が長すぎ、急ぐ場合には利用できない場合も有りうる。さらに、予約でもしてない限り、充電器にたどり着くまでは、すぐに利用できるかどうかは分からない。したがって充電器に対しては従来のカソリンスタンドや駐車場の検索とは異なったより詳細な情報提供が望まれる。
…(中略)…
【0009】
本発明では、上記のような充電器特有の課題に鑑み、電気自動車の運転者が実際に充電施設の近くまで行った際に、その運転者にとって利用しやすい充電器の詳細な情報を通知することのできる充電器情報通知システム、及び充電器情報通知方法を提供することを目的とする。」
(イ) 【0033】~【0039】、【図2】
「【0033】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る充電器情報通知システムの機能ブロックを示す図である。本発明の充電器情報通知システム(以下、単に本システムという)は、様々な実施形態をとることができるが、この図では、第1の実施形態として、最もシンプルな構成を示す。」
「【図2】
[図:0001437868000002.jpg]
」
「【0034】
図示するように、本システムの充電器10は、無線通信部11,充電器情報記憶部12,充電状況監視部13,及び電力供給部14から構成される。無線通信部11は、近距離無線通信手段を備え、接近した電気自動車20と無線交信を行う。ここで使用する近距離無線通信手段は、数10メートルから数100メートル程度の到達距離を持つものが望ましい。例えば、Bluetooth(登録商標)のClass1(電波出力100mW、到達距離100メートル)等である。
【0035】
充電器情報記憶部12は、充電器10のメーカ・品番をはじめ、充電器の種類(充電器の定格出力)、市販されている電気自動車ごとの充電時間、及び設置情報(後述)等を記憶する記憶装置である。この記憶装置は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラシュメモリー等の書き変え可能な任意の不揮発性のメモリであってよい。
【0036】
電力供給部14は、さらに入力交流から直流への変換部、絶縁トランス、出力清流部等から構成され、電気自動車20と充電コード15によって接続されることによって充電のための電力を供給する。充電状況監視部13は、使用者に対する表示部・操作部を備え、電力供給部14からの充電状況、充電時間を監視する機能を果す。ここでの電力供給部14、充電状況監視部13は一般的な充電器に用いられるものである。
【0037】
電気自動車20は、充電器10と無線交信する無線通信部21,車載器に搭載され運転者に各種情報を表示する表示部22,運転者からの各種操作を受付ける操作部23,電気モーターを駆動するためのリチウムイオン2次電池等のバッテリ25,及びバッテリ25の電池残量を計測する電池残量計測部24を備えている。表示部22及び操作部23は、一般的なカーナビゲーション装置を利用してよい。電気自動車20の運転者は、カーナビゲーションに必要な操作の他、本システムへの入力として充電のために費やしてもよい時間(停車可能時間)を設定することができる。なお、その他の電気自動車の構成は、一般的なものなのでここでは省略する。
【0038】
電気自動車20の無線通信部21は、所定の無線到達距離内に近づいたときに、充電器10と自動的に交信を行い、電気自動車20の情報(車種、電池残量、停車可能時間等)と、充電器10の充電器情報記憶部12に記憶した情報(充電器の機種情報、設置情報、充電時間情報)とをやりとりする。このとき、充電器10の無線通信部11は、受信した電気自動車の車種と電池残量に基づいて、充電器情報記憶部12から該当する充電時間情報を読み出し、他の充電器情報と共に電気自動車20に送信する。電気自動車20の表示部22は、送信された充電器情報を運転者に表示する。運転者は、その表示された充電器情報、特に充電器の設置位置と予想充電時間を確認し、その充電器10で充電しようとする場合には、操作部23の所定のボタン等を押下するなどして、充電器10に対してこれから充電に向かう信号を送信する。その信号を受信した充電器10は、電気自動車20を待つ間、表示ランプ(図示せず)を点滅させるなどして電気自動車20を誘導するようにしてもよい。
【0039】
すなわち、本システムでは、電気自動車20と充電器10が必要な情報を自動的に瞬時にやりとりして、電気自動車20が充電器10のある駐車スペースにたどりつけるための案内情報を電気自動車の表示部22に表示させる。このようにすることで、特別な装備や係員がなくとも、電気自動車と充電器を直接交信させることで、地図などを頼りに近くまできたが充電器の設置場所等が分からない電気自動車の運転者を容易に案内することができる。」
(ウ) 【0045】~【0049】、【図4】
「【0045】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る充電器情報通知システムの処理フローを示す図である。ここでは、充電器10と電気自動車20の交信開始から、電気自動車20が充電器の駐車スペースに移動するまでの処理手順を示している。」
「【図4】
[図:0001437868000003.jpg]
」
「【0046】
まず、電気自動車20において、近隣の充電器を探したい場合、運転者がカーナビなど車載器の所定のボタンを押下すると(ステップS20)、交信可能な距離範囲にある充電器10に交信要求の電波を発信する(ステップS21)。充電器側では、ステップS10において、常に電気自動車からの交信要求がないかを監視している。この交信要求の監視は、既に充電器10が使用中であってもよい。充電器10が電気自動車20から交信要求を検知すると、ステップS11に処理が移り、交信が確立したことを示す信号を電気自動車20に送る。この交信確立信号を受信した電気自動車20は、自車の車種と電気走行用バッテリの電池残量を送信する(ステップS22)。このとき、電気自動車20から充電器10に、自車の電気特性または平均的な電力消費状況を送信し、電池の定格情報を修正して走行距離を算出してもよい。電気特性は、経年劣化して規格からはずれる場合があるからであり、平均的な電力消費状況は、常時高速運転、エアコンの負荷が高いなどから同じエネルギーでも可能走行距離が異なる可能性があるからである。さらにこのとき、運転者が入力した停車可能時間(待ち時間+予想充電時間)や、その他の希望条件(充電器の種類、駐車スペースの大きさ、上限料金等)を送信するようにしてもよい。
【0047】
充電器10では、電気自動車20から少なくとも車種及び電池残量を受信すると、充電器情報記憶部12に記憶したデータに基づいて、予想充電時間を計算し(ステップS12)、電気自動車20に送信する(ステップS13)。このとき、現在の電池残量からフル充電した場合、同じく80%充電した場合、同じく60%充電した場合など複数のケースを送信することが望ましい。また、充電器情報記憶部12に記憶した充電器の種類や設置場所情報等の充電器情報も同時に送信する。充電器10が既に使用中の場合は、充電状況監視部13からの情報に基づいて待ち時間も合わせて送信する。
【0048】
電気自動車20は、充電器情報と予想充電時間を受信すると、その内容を車載器の表示部22に表示する(ステップS23)。そしてステップS24において、運転者にその充電器を利用するかどうかの判断を仰ぎ、利用する場合は、運転者の所定の操作によって、利用開始要求の信号を充電器10に送信する(ステップS25)。ステップS24において、利用しないと判断した場合には、運転者に確認後、ステップS20に戻り、別の充電器と交信を試みるようにする。この際、通信可能範囲に別の充電器がない場合は、従来のナビゲージョン・システム等で充電器のある別の施設を探すことになる。
【0049】
充電器10は、電気自動車20から利用開始要求の信号を受信すると、電気自動車20を誘導するための誘導処理を行う(ステップS14)。誘導処理では、例えば、充電器10の表示ランプを点滅させ、電気自動車20が充電器10の横の駐車スペースに駐車完了すると(ステップS26)、操作パネルや音声ガイドを使って充電手順を示す。運転者が充電器10の操作パネルから所定の操作をすると(ステップS27)、それが充電器側に伝わり充電が開始される(ステップS15)。その後、充電器10は、ステップS10に戻り、他の電気自動車から交信要求がないかをチェックする。なお、図4では、充電器10と電気自動車20が一対一である場合を示したが、複数の充電器がある場合は、後述の実施形態で説明する。」
(エ) 【0050】、【図5】
「【0050】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る充電器詳細情報表示画面の一例を示す図である。図示するように、充電器詳細情報表示画面100には、充電器設備のある店舗や施設全体の見取図または構内図101が表示される。そして、施設内における充電器の場所が明示され、さらに充電器周辺の写真等の充電器外観画像情報102や充電器詳細文字情報103が表示される。好ましくは、施設の入口から充電器にいたる入庫経路等も表示する。」
「【図5】
[図:0001437868000004.jpg]
」
(オ) 【0062】~【0067】、【図9】
「【0062】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る充電器情報通知システムの機能ブロックを示す図である。第2の実施形態では、比較的小規模な施設内で複数の充電器が互いに交信して、電気自動車に対して施設内の全ての充電器の情報を提供するようにしたが、第3の実施形態では、充電器どうしの無線交信では対応が難しい比較的大規模な施設(以下、充電ステーションと呼ぶ)での実施形態を示す。」
「【図9】
[図:0001437868000005.jpg]
」
「【0063】
第3の実施形態では、充電ステーション内のローカルネットワーク50に、充電ステーション管理サーバ30、及び全ての充電器(10a~10d)が接続されている。ローカルネットワーク50は、施設の広さに応じて有線であっても無線であってもよい。充電ステーション管理サーバ30は、ローカルネットワーク50を介した通信を制御する通信部31、各充電器の情報を管理するステーション情報記憶部32、電気自動車(EV)ごとの情報を格納したEV情報DB34、充電ステーションに近づき交信可能となったEVの情報をEV情報DB34から検索し抽出するEV情報抽出部33、充電ステーション内の充電器ごとの状況を各充電器から得て管理する充電器管理部35を備えている。また、充電ステーション管理サーバ30は、インターネット60を介して外部のWebサーバ70と接続可能に構成されることが望ましい。なお、充電器側の構成は、ローカルネットワーク50への接続部が追加されることを除いて、第1、第2の実施形態とほぼ同様なので説明は省略する。
【0064】
ステーション情報記憶部32は、充電ステーション内の全ての充電器の構成情報(図3の機種情報、及び設置情報に相当)を格納する。EV情報DB34には、図3で示した充電時間情報を、各充電器ごとに市販されているすべてのEV車種に対して格納する。EVの情報は、インターネット等を介して、外部から随時更新されるもとのとする。また、充電器管理部35は、各充電器の稼働状況(空き、使用中、待機中、充電完了予測時間など)を受信し、ステーション情報記憶部32と連動して充電器を管理する。
【0065】
充電ステーション管理サーバ30は、サーバに記憶している情報及び各充電器の稼動状況から、外部のWebサーバ70に対して、施設内の充電器の全体情報を提供することができる。提供する情報は、施設の名称,住所,アクセスマップ,施設内の充電器の数,及び空き充電器の状況などである。このようにすることで、外部の充電施設広域検索システムと本システムが連動することが可能となり、広範囲から利用者を集めることもできる。例えば、広域での充電施設検索サービスを行うWebサーバと連動させ、電気自動車が目的とする施設に所定の距離近づいた後は、検索サービスから本システムに導くようなことができる。
【0066】
図示するように、電気自動車20が従来のナビゲーション・システムを利用するなどしてこの充電ステーションに近づいたとき、最初に交信できたのが使用中の充電器10aであったとする。このとき充電器10aは、充電ステーション管理サーバ30に問い合わせ、他の充電器の情報と自らの情報を合わせて電気自動車20に送信する。一つの中継充電器が代表して他の充電器の情報を電気自動車20に伝えることは第2の実施形態の場合と同じであるが、第3の実施形態では、中継充電器が問い合わせる先は、充電ステーション管理サーバ30のみである。このサーバとのやりとりの処理について詳しくは図10の処理フローで説明する。
【0067】
上記の機能ブロックの構成(図2、図6、図9)は、あくまでも一例であり、一つの機能部を更に分割したり、複数の機能部をまとめて一つの機能部として構成してもよい。各機能部は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)またはハードディスク等の記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わない。」
(カ) 【0068】~【0072】、【図10】
「【0068】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る充電器情報通知システムの処理フローを示す図である。本図では、電気自動車20(以下、ここでは単にEVと呼ぶ)と、中継充電器と、充電ステーション管理サーバ30(以下、ここでは単にサーバと呼ぶ)とのやりとりを示す。電気自動車側の処理は、図4、図7の場合とまったく同じなので、以下、サーバ側と中継充電器側のみを説明する。」
「【図10】
[図:0001437868000006.jpg]
」
「【0069】
中継充電器は、ステップS11においてEVと交信が確立したら、サーバに対して問い合わせ要求を送信する(ステップS12b)。この際、EVの車種や電池残量のデータを同時に送信する。その後、自らを含む全ての充電器の情報をサーバから受信したらその全ての情報をEVに対して送信する(ステップS13a)。中継充電器は、以後原則として、EVからの無線交信をそのEVが入庫完了するまでサーバに中継する。ただし、構内が広い場合など、EVの移動に応じて中継をEVにより近接した充電器にリレーするようにしてもよい。
【0070】
なお、ここで、第2の実施形態と同様に、運転者が停車可能時間を入力している場合には、その停車可能時間と各充電器の充電時間(待ち時間含む)を比較し、停車可能時間内にあるか、停車可能時間との差が小さいと判断した充電器の情報を優先してEVに送信するようにしてもよい。そして、特定の充電器に対しての利用開始要求をEVから受信したら、該当充電器への転送要求をサーバに対して送信する(ステップS14b)。
【0071】
サーバ側では、ステップS40において、中継充電器から問い合わせ要求があったら、まず一つの充電器を選択し(ステップS41)、予想充電時間を計算し(ステップS42)、充電器が使用中の場合はその待ち時間を求め充電器情報に含めて中継充電器に送信する(ステップS43)。そして次の充電器を選択し、この処理を全ての充電器に対して順次行う(ステップS44)。これらの一連の処理は、各充電器の情報をサーバ側で全て把握しているので各充電器に問い合わせすることなくサーバ側で処理することが好ましい。
【0072】
また、サーバはその後、ステップS45において、EVからの利用開始要求があった場合、その要求を該当充電器に転送する。前述の誘導処理を行わせるためである。このように第3の実施形態では、サーバが全ての充電器の情報を集中管理するので、充電器の数が多い施設の場合には特に適している。」
(キ) 【0073】、【図11】
「【0073】
図11は、本発明の第3の実施形態に係る充電ステーション情報表示画面の一例を示す図である。この充電ステーション情報表示画面300には、図8の場合と同様に、施設構内図301,複数の充電器の外観画像情報302a,302b、充電器詳細文字情報303a,303bが表示される。特に、この例の充電器詳細文字情報303aには、残り時間(待ち時間)と充電時間の合計が表示され、運転者が入力した停車可能時間との対比が示されている。」
「【図11】
[図:0001437868000007.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された事項から読み取れる事項の認定
(ア) 認定事項1
第1の実施形態に関して、段落【0033】の記載を踏まえて図2をみると、「充電器情報通知システムが、充電器10と電気自動車20を含むこと。」(以下「認定事項1」という。)が看取できる。
(イ) 認定事項2
第3の実施形態に関して、段落【0063】における「充電器側の構成は、ローカルネットワーク50への接続部が追加されることを除いて、第1」「の実施形態とほぼ同様なので説明は省略する。」との記載、及び、段落【0068】における「電気自動車側の処理は、図4」「の場合とまったく同じなので、以下、サーバ側と中継充電器側のみを説明する。」との記載に接した当業者にとって、第3の実施形態に係る発明を把握するにあたって、矛盾が生じない範囲で、第1の実施形態における充電器10及び電気自動車20に関する構成を備えたものを観念することができるといえる(以下「認定事項2」という。)。
(ウ) 認定事項3
第3の実施形態に関して、段落【0062】の記載を踏まえて図9をみると、「充電器情報通知システムが、電気自動車20と、充電器10a~10dと、充電ステーション管理サーバ30を含むこと。」(以下「認定事項3」という。)が看取できる。
(エ) 認定事項4
第3の実施形態に関して、図10をみると、「中継充電器が、S13aにおいて、電気自動車20に対して、全ての充電器についての予想充電時間と充電器情報を送信すること」(以下「認定事項4」という。)が看取できる。
ウ 引用発明の認定
(ア) 引用発明1
前記イ(ア)において認定した事項及び前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、第1の実施形態(【図2】等)に係る次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示している(後記(イ)の引用発明2についても同様である。)。
<引用発明1>
「充電器10と電気自動車20を含む充電器情報通知システムであって、(図2、認定事項1)
充電器10は、無線通信部11、充電器情報記憶部12、充電状況監視部13及び電力供給部14から構成され、(【0034】)
無線通信部11は、近距離無線通信手段を備え、接近した電気自動車20と無線交信を行うものであって、(【0034】)
ここで使用する近距離無線通信手段は、数10メートルから数100メートル程度の到達距離を持つものが望ましく、例えば、Bluetooth(登録商標)のClass1等であり、(【0034】)
充電器情報記憶部12は、充電器10のメーカ・品番をはじめ、充電器の種類(充電器の定格出力)、市販されている電気自動車ごとの充電時間、及び設置情報等を記憶する記憶装置であり、(【0035】)
電力供給部14は、入力交流から直流への変換部、絶縁トランス、出力清流部等から構成され、電気自動車20と充電コード15によって接続されることによって充電のための電力を供給するものであり、(【0036】)
充電状況監視部13は、使用者に対する表示部・操作部を備え、電力供給部14からの充電状況、充電時間を監視する機能を果すものであり、(【0036】)
電気自動車20は、充電器10と無線交信する無線通信部21、車載器に搭載され運転者に各種情報を表示する表示部22、運転者からの各種操作を受付ける操作部23、電気モーターを駆動するためのリチウムイオン2次電池等のバッテリ25及びバッテリ25の電池残量を計測する電池残量計測部24を備えており、(【0037】)
電気自動車20の無線通信部21は、所定の無線到達距離内に近づいたときに、充電器10と自動的に交信を行い、電気自動車20の情報(車種、電池残量、停車可能時間等)と、充電器10の充電器情報記憶部12に記憶した情報(充電器の機種情報、設置情報、充電時間情報)とをやりとりし、(【0038】)
充電器10の無線通信部11は、受信した電気自動車の車種と電池残量に基づいて、充電器情報記憶部12から該当する充電時間情報を読み出し、他の充電器情報と共に電気自動車20に送信し、(【0038】)
電気自動車20の表示部22は、送信された充電器情報を運転者に表示するものであり、(【0038】)
電気自動車20において、近隣の充電器を探したい場合、運転者がカーナビなど車載器の所定のボタンを押下すると、交信可能な距離範囲にある充電器10に交信要求の電波を発信し、(【0046】)
充電器側では、常に電気自動車からの交信要求がないかを監視していて、充電器10が電気自動車20から交信要求を検知すると、交信が確立したことを示す信号を電気自動車20に送り、(【0046】)
この交信確立信号を受信した電気自動車20は、自車の車種と電気走行用バッテリの電池残量を送信し、(【0046】)
充電器10では、電気自動車20から少なくとも車種及び電池残量を受信すると、充電器情報記憶部12に記憶したデータに基づいて、予想充電時間を計算し、電気自動車20に送信し、(【0047】)
電気自動車20は、充電器情報と予想充電時間を受信すると、その内容を車載器の表示部22に表示する、(【0048】)
充電器情報通知システム。」
(イ) 引用発明2
前記イ(イ)~(エ)において認定した事項及び前記アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、第3の実施形態(【図9】等)に係る次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明2>
「電気自動車20と、充電器10a~10dと、充電ステーション管理サーバ30を含む充電器情報通知システムであって、(認定事項3)
充電ステーション内のローカルネットワーク50に、充電ステーション管理サーバ30、及び全ての充電器(10a~10d)が接続されており、(【0063】)
ローカルネットワーク50は、施設の広さに応じて有線であっても無線であってもよく、(【0063】)
電気自動車20は、充電器10と無線交信する無線通信部21、車載器に搭載され運転者に各種情報を表示する表示部22、運転者からの各種操作を受付ける操作部23、電気モーターを駆動するためのリチウムイオン2次電池等のバッテリ25及びバッテリ25の電池残量を計測する電池残量計測部24を備えており、(【0037】、認定事項2)
電気自動車20の無線通信部21は、所定の無線到達距離内に近づいたときに、充電器10と自動的に交信を行い、電気自動車20の情報(車種、電池残量、停車可能時間等)をやりとりし、(【0038】、認定事項2)
充電ステーション管理サーバ30は、ローカルネットワーク50を介した通信を制御する通信部31、各充電器の情報を管理するステーション情報記憶部32、電気自動車(EV)ごとの情報を格納したEV情報DB34、充電ステーションに近づき交信可能となったEVの情報をEV情報DB34から検索し抽出するEV情報抽出部33、充電ステーション内の充電器ごとの状況を各充電器から得て管理する充電器管理部35を備えており、(【0063】)
充電ステーション管理サーバ30は、インターネット60を介して外部のWebサーバ70と接続可能に構成されることが望ましく、(【0063】)
ステーション情報記憶部32は、充電ステーション内の全ての充電器の構成情報を格納しており、(【0064】)
EV情報DB34には、充電時間情報を、充電器ごとに市販されているすべてのEV車種に対して格納しており、(【0064】)
充電器管理部35は、各充電器の稼働状況(空き、使用中、待機中、充電完了予測時間など)を受信し、ステーション情報記憶部32と連動して充電器を管理するものであり、(【0064】)
充電ステーション管理サーバ30は、サーバに記憶している情報及び各充電器の稼動状況から、外部のWebサーバ70に対して、施設内の充電器の全体情報を提供することができ、(【0065】)
電気自動車20において、近隣の充電器を探したい場合、運転者がカーナビなど車載器の所定のボタンを押下すると、交信可能な距離範囲にある充電器10(中継充電器)に交信要求の電波を発信し、(【0046】、認定事項2)
充電器側では、常に電気自動車からの交信要求がないかを監視していて、充電器10(中継充電器)が電気自動車20から交信要求を検知すると、交信が確立したことを示す信号を電気自動車20に送り、(【0046】、認定事項2)
この交信確立信号を受信した電気自動車20は、自車の車種と電気走行用バッテリの電池残量を送信し、(【0046】、認定事項2)
中継充電器は、電気自動車20と交信が確立したら、充電ステーション管理サーバ30に対して問い合わせ要求を送信し、この際、電気自動車20の車種や電池残量のデータを同時に送信し、(【0068】、【0069】)
その後、自らを含む全ての充電器の情報をサーバから受信したらその全ての情報をEVに対して送信し、(【0068】、【0069】)
充電ステーション管理サーバ側では、中継充電器から問い合わせ要求があったら、まず一つの充電器を選択し、予想充電時間を計算し、充電器が使用中の場合はその待ち時間を求め充電器情報に含めて中継充電器に送信し、そして次の充電器を選択し、この処理を全ての充電器に対して順次行い、(【0068】、【0071】)
中継充電器は、電気自動車20に対して、全ての充電器についての予想充電時間と充電器情報を送信し、(認定事項4)
電気自動車20は、充電器情報と予想充電時間を受信すると、その内容を車載器の表示部22に表示する、(【0048】、認定事項2)
充電器情報通知システム。」
(3) 引用文献8、9の記載事項及び技術常識1等の認定
ア 引用文献8に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2022-35777号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
(ア) 【0001】~【0005】
「【0001】
本発明は、車両充電システム、情報処理法、及びプログラムに関する。
…(中略)…
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、車両の充電による課金に関する処理を効率的に行うことができる車両充電システム等を提供することを目的とする。」
(イ) 【0012】~【0017】、【図1】
「【0012】
(実施形態1)
以下、本開示に関し、実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。図1は、実施形態1に係る車両充電システムに関するロケーションを例示する説明図である。図2は、実施形態1に係る車両充電システムSの概要を示す説明図である。図3は、車両充電システムSに含まれる制御装置1等の構成例を示すブロック図である。車両充電システムSは、複数の中速充電器2と、当該複数の中速充電器2の出力電力値を制御する制御装置1と、制御装置1と通信可能に接続され、制御装置1から出力(送信)される中速充電器2の利用実績に関する情報を保存及び管理する外部サーバ3とを含む。
…(中略)…
【0017】
外部サーバ3は、制御装置1から取得した情報に基づき、利用者による充電に対する課金処理を行い、当該課金処理結果である請求額を、例えばETCカードに関する決済を行うクレジット会社の決済サーバKSに送信する。更に、外部サーバ3は制御装置1から取得した情報に基づき、例えば、充電開始時点にて導出(推定)した充電完了の予定時刻(充電完了予定時)又は、充電が完了した際には充電完了日時及び充電電力量を、利用者に関連付けられた携帯端末KT(利用者側端末)に送信する。更に、外部サーバ3は制御装置1から取得した情報に基づき、それぞれの充電ステーションにおける中速充電器2の稼働状況を集計した要約情報(実績情報)を生成し、当該要約情報を、充電ステーションの所有者又は運用責任者等の管理者に関連付けられた情報端末JT(管理者側端末)に送信する。外部サーバ3は、単一サーバによる場合に限定されず、複数のサーバが協働して分散処理を行う構成によるものであってもよい。また、外部サーバ3と決済サーバKSとが、実質的に単一サーバによって構成されるサーバ形態であってもよい。」
「【図1】
[図:0001437868000008.jpg]
」
(ウ) 【0031】~【0035】
「【0031】
外部サーバ3は、インターネット等の外部ネットワークNに接続されるクラウドサーバ等のサーバ装置(情報処理装置)であり、制御装置1と同様に制御部31、記憶部32及び通信部33を備える。外部サーバ3は、中速充電器2(充電ステーション)の利用者の登録又は削除等のユーザ管理、利用者による利用の履歴管理などを行うデータベースサーバとして機能する。
…(中略)…
【0035】
管理者の情報端末JT(管理者側端末)は、利用者の携帯端末KTと同様に、例えばパーソナルコンピュータ、タブレットPC又はスマートホン等であり、制御装置1と同様に制御部、記憶部及び通信部(図示せず)を備える。情報端末JTと外部サーバ3とは、例えば、外部ネットワークNを介して通信可能に接続され、情報端末JTは、外部サーバ3から送信された情報を、自端末のディスプレイ等の表示部に表示する。」
(エ) 【0036】~【0046】、【図6】
「【0036】
図4は、利用者マスタテーブルのデータレイアウトを例示する説明図である。図5は、充電ステーションマスタテーブルのデータレイアウトを例示する説明図である。図6は、利用者による利用履歴テーブルのデータレイアウトを例示する説明図である。外部サーバ3は、利用者の情報を保存及び管理するデータベースサーバとして機能し、当該外部サーバ3の記憶部32には、当該データベースに含まれる各種テーブルが、記憶されている。当該データベースに含まれる各種テーブルは、例えば、利用者マスタテーブル、充電ステーションマスタテーブル、及び利用履歴テーブルを含み、外部サーバ3に実装されているRDBMS(Relational DataBase Management System)等のデータベース管理ソフトウェアにより構成される。
…(中略)…
【0046】
利用履歴テーブルにて管理される項目の種類(メタデータ)は、例えば、ユーザID、ステーションID、充電器番号、ETC車載器管理番号、車両番号、撮像画像、充電開始日時、充電完了日時、充電開始時の充電率、充電電力量、及び利用料を含む。」
「【図6】
[図:0001437868000009.jpg]
」
(オ) 【0108】~【0112】
「【0108】
(実施形態2)
図11は、実施形態2(要約情報)に係る外部サーバ3の制御部31に含まれる機能部を例示する機能ブロック図である。外部サーバ3の制御部31は、外部サーバ3の記憶部32に記憶されているプログラムを実行することにより、更に、要約情報生成部315として機能する。
…(中略)…
【0112】
要約情報生成部315は利用履歴テーブル等を参照し利用実績に関する要約情報(実績情報)を生成するとしたが、これに限定されず、要約情報生成部315は利用履歴テーブル等を参照し、所定期間における利用実績のデータそのものを抽出し、出力部は、抽出した当該データを管理者の情報端末JTに出力するものであってもよい。管理者の情報端末JTは、自端末に予めインストールされているクライアントアプリケーションにより、外部サーバ3から取得したデータに基づき、当該データに含まれる利用実績を集計等行い、要約情報として自端末のディスプレイに表示するものであってもよい。」
イ 引用文献9に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2021-156035号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の記載がある。
(ア) 【0001】~【0008】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ駆動式の建設機械を充電するための給電車配車システムに関する。
…(中略)…
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バッテリ駆動式の建設機械へ適時に給電することができる給電車配車システムを低コストで提供することにある。」
(イ) 【0016】~【0020】、【図1】
「【0016】
図1は、本発明に係る給電車配車システム1の全体構成を表す構成図である。給電車配車システム1は、建設現場で作業を行う複数の建設機械2を少数の給電車で適時に給電するためのシステムであり、複数の建設機械2のほか、配車センタ3、管理センタ4、及び管理者端末5を備える。
【0017】
建設機械2は、例えば搭載したバッテリで駆動するバッテリ駆動式油圧ショベルであり、本実施形態においては第1ショベル2a~第5ショベル2eを含む。また、それぞれの建設機械2は、後述する管理センタ4との間で通信を行うほか、例えばGPS端末を搭載することにより自己の位置情報を取得する。ここで、建設機械2は、ショベルに限定されるものではなく他の作業機械であってもよい。また、建設機械2の数は必要に応じて適宜変更することができる。
…(中略)…
【0019】
配車センタ3は、互いに充電性能が異なる複数の給電車を有しており、建設機械2を充電する必要が生じた場合に、後述する管理センタ4からの指示に基づいて給電車を建設現場へ配車する。本実施形態に係る配車センタ3は、急速充電が可能な急速給電車3a、通常充電が可能な通常給電車3b、及び充電設備3cを備える。
【0020】
急速給電車3a及び通常給電車3bのそれぞれは、給電用バッテリを搭載し、バッテリの充電状態(SOC:State Of Charge)が低下した建設機械2に配車されることにより、建設現場において充電ケーブルで建設機械2に接続され、建設機械2に搭載されたバッテリを充電する。」
「【図1】
[図:0001437868000010.jpg]
」
(ウ) 【0023】~【0042】
「【0023】
管理センタ4は、コンピュータからなる管理端末システムであり、建設機械管理部4a及びデータベース4bを含み、給電車配車システム1の各構成部との通信を行うことにより給電車配車システム1の全体を統括管理する。…(中略)…
【0024】
管理者端末5は、例えば携帯端末やパーソナルコンピュータであり、管理センタ4が建設機械2の管理者と連絡を取るための通信機器である。当該管理者は、管理センタ4からの問い合わせに対し、建設機械2の充電に関する要望を管理者端末5で返答する。管理センタ4と管理者端末5との間における情報の送受信は、メールを利用してもよく、又は専用のアプリケーション上で行なってもよい。
…(中略)…
【0026】
次に、建設機械2が管理センタ4へ充電要求を送信する手順について説明する。図2は、建設機械2における充電要求の手順を表すフローチャートである。それぞれの建設機械2は、作業開始時にメインスイッチがオンに操作されることにより、図2のフローチャートに沿った手順の実行を開始する。
【0027】
当該手順が開始されると、建設機械2は、作業を開始する前に、搭載されたバッテリの端子電圧を測定することによりSOC残量を読み込む(ステップS1)。また、建設機械2は、当該SOCの値がバッテリに規定されたSOC下限値以下であるかを確認する(ステップS2)。ここで、SOC下限値とは、建設機械2を稼働させるのに必要な最低限のSOC残量を意味し、バッテリごとに設定されるSOCの閾値である。
…(中略)…
【0032】
また、建設機械2は、算出した作業可能時間を含む運用情報を管理センタ4に送信することにより、バッテリのSOC残量が上記のSOC下限値以下に低下する前に給電が必要であるとの給電要求とすることができる。この場合、建設機械2は、SOC残量、位置情報、及びバッテリ切れが予想される要充電時刻に加え、バッテリ消費に関係する車体環境データ、すなわちモータ回転数、外気気温、油圧の圧力及び流量等を含む運用情報を管理センタ4に送信する。」
…(中略)…
【0041】
更に、管理センタ4は、緊急度の設定後に管理者端末5に対して要望確認情報を送信することにより、建設機械2の管理者へ給電要望に係る問い合わせを行う(ステップS16)。より具体的には、管理センタ4は、充電が必要な建設機械2のID、建設機械2のSOC残量、建設機械2への給電予定時間等の情報を送信することで、それぞれの建設機械2の充電方法に関する要望を確認する。
【0042】
これに対し、管理者は、建設機械2ごとの充電の要否、充電希望時間、充電量、及び充電速度(急速給電車3a又は通常給電車3bの選択)等の要望を、管理者端末5を介して管理センタ4に返答する。」
ウ 技術常識1の認定
車両が備えるバッテリーの充電に関するシステムの例としては、前記アに摘記した引用文献8の記載事項が例示されるが、次の技術事項は、計測技術に関する一般的な知見を有する当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。)
<技術常識1>
「計測システムにおいて、計測装置が測定したデータを、サーバ等の計測装置以外の装置に対して、インターネットを介して送信するように構成できること。」
エ 周知技術1の認定
前記ア及びイに摘記した引用文献8及び9の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって周知の技術であったと認められる。(以下「周知技術1」という。)
<周知技術1>
「車両が備えるバッテリーの充電に関するシステムにおいて、サーバを介して管理者用の端末に充電前のバッテリーの充電率(SOC)を含む様々な情報を送信したり、管理者用の端末をスマートフォンやタブレットなどの携帯端末を用いて構成したりすること。」
(4) 引用発明1を主引用発明とする場合
ア 本件補正発明と引用発明1の対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明1を対比する。
a 構成Xの観点
(a) 構成Xは、「測定システム」の発明であることである。
(b) 引用発明1の「充電器情報通知システム」は、「バッテリ25の電池残量を計測する電池残量計測部24を備え[る]」「電気自動車20」を「含む」から、計測すなわち測定を行う機能を備えたシステムであるといえる。
(c) したがって、本件補正発明の「測定システム」と引用発明1の「充電器情報通知システム」は、「測定システム」の発明である点において一致する。
b 構成Aの観点
(a) 構成Aは、「スマートフォン又はタブレットからなる外部装置」を備えることである。
(b) 引用発明1は、本件補正発明の構成Aに相当する構成を備えていないから、本件補正発明と引用発明1は、次の点において相違する。
本件補正発明においては、「スマートフォン又はタブレットからなる外部装置」を備えるのに対して、
引用発明1においては、そのような構成を備えない点。
c 構成Bの観点
(a) 構成Bは、「車両に搭載され、当該車両のバッテリに接続された測定装置」を備えることである。
(b) 引用発明1は「電気モーターを駆動するためのリチウムイオン2次電池等の」「バッテリ25の電池残量を計測する電池残量計測部24」を備えており、引用発明1における「無線通信部21」は、「充電器10と自動的に交信を行い、」「電池残量」等の「電気自動車20の情報」「をやりとり」するものである。
(c) そのため、引用発明1における「電池残量計測部24」や「無線通信部21」 を含む構成は、電池残量の測定や測定結果の通信等の処理に関する機能を担うといえるから、本件補正発明における「測定装置」に相当する。
(d) 引用発明1における「電池残量計測部24」や「無線通信部21」 を含む構成は、「電気自動車20」が「備えて」いるものであって、「バッテリ25の電池残量を計測する電池残量計測部24」が車両のバッテリに接続されたものであることは明らかであるから、前記(c)も踏まえると、引用発明1は、本件補正発明における「車両に搭載され、当該車両のバッテリに接続された測定装置」に相当する構成を備えるといえる。
(e) したがって、本件補正発明と引用発明1は、次の点において一致する。
「車両に搭載され、当該車両のバッテリに接続された測定装置」を備える点。
d 構成B1の観点
(a) 構成B1は、「測定装置」が「前記バッテリを測定する測定部」を有することである。
(b) 引用発明1における「バッテリ25の電池残量を計測する電池残量計測部24」は、本件補正発明における「前記バッテリを測定する測定部」に相当する。
(c) したがって、前記c(c)も踏まえると、本件補正発明と引用発明1は、次の点において一致する。
「測定装置」が「前記バッテリを測定する測定部」を有する点。
e 構成B2の観点
(a) 構成B2は、「測定装置」が「外部通信部と無線通信可能かどうかを判断する制御部」を有することである。
(b) 引用発明1における「電気自動車20」は、「運転者がカーナビなど車載器の所定のボタンを押下すると、交信可能な距離範囲にある充電器10に交信要求の電波を発信し、」「充電器10が電気自動車20から交信要求を検知すると」「電気自動車20に送[る]」「交信が確立したことを示す信号」である「交信確立信号を受信した」場合に、「電気走行用バッテリの電池残量を送信」する制御を行うものである。
(c) 前記(b)に関し、引用発明1における「充電器10」は、「電気自動車20」の外部に配置された装置であって、「電気自動車20」との間で通信を行うものであるから、本件補正発明における「外部通信部」に相当する。
(d) また、前記(b)に関し、引用発明1における「電気自動車20」が、「充電器10が」「送[る]」「交信確立信号を受信した」かどうかの判断を行う構成を備えていることは明らかであって、そのような構成は、前記(c)も踏まえると、本件補正発明における「外部通信部と無線通信可能かどうかを判断する制御部」に相当する。
(e) そして、前記(d)において示した、引用発明1における「電気自動車20」において、「充電器10が」「送[る]」「交信確立信号を受信した」かどうかの判断を行う構成は、測定結果の通信に関連する機能を担うから、前記c(c)において示した、引用発明1における、電池残量の測定や測定結果の通信等の処理に関する機能を担う構成(本件補正発明における「測定装置」に相当する。)の一部であると観念することができるといえる。
(f) したがって、本件補正発明と引用発明1は、次の点において一致する。
「測定装置」が「外部通信部と無線通信可能かどうかを判断する制御部」を有する点。
f 構成B3の観点
(a) 構成B3は、「測定装置」が「前記制御部が前記外部通信部との通信が可能であると判断した場合に、インターネットを介して前記スマートフォン又は前記タブレットからなる前記外部装置に前記測定部による前記バッテリの測定結果を送信するために、前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する内部通信部」を有することである。
(b) 引用発明1における「無線通信部21」は、「電気自動車20」内に配置され、「充電器10」(「外部通信部」に相当する。)と「電池残量」(「バッテリの測定結果」に相当する。)等の「情報」「をやりとり」するから、前記c(c)も踏まえると、本件補正発明における「測定装置」が有する「前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する内部通信部」に相当する。
(c) 前記(b)に加えて、前記e(b)及び(d)において説示した事項を踏まえると、引用発明1における「無線通信部21」は、本件補正発明における「前記制御部が前記外部通信部との通信が可能であると判断した場合に、前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する」ことに相当する構成を備えるといえる。
(d) 以上の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明1の構成B3の観点における一致点及び相違点は、次のi及びiiに示すとおりである。
i 構成B3の観点における一致点
「測定装置」が「前記制御部が前記外部通信部との通信が可能であると判断した場合に、前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する内部通信部」を有する点。
ii 構成B3の観点における相違点
バッテリの測定結果を送信する目的が、
本件補正発明においては、「インターネットを介して前記スマートフォン又は前記タブレットからなる前記外部装置に前記測定部による前記バッテリの測定結果を送信するため」であるのに対して、
引用発明1においては、「充電器10」が「予想充電時間を計算」するためである点。
(イ) 一致点及び相違点
前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明1は、次のaに示す一致点において一致し、後記bに示す相違点において相違すると認められる。
a 一致点
「車両に搭載され、当該車両のバッテリに接続された測定装置であって、前記バッテリを測定する測定部と、外部通信部と無線通信可能かどうかを判断する制御部と、前記制御部が前記外部通信部との通信が可能であると判断した場合に、前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する内部通信部と、を有する測定装置を備える測定システム」の発明である点。
b 相違点
本件補正発明においては、「スマートフォン又はタブレットからなる外部装置」を備えており、バッテリの測定結果を送信する目的が、「インターネットを介して前記スマートフォン又は前記タブレットからなる前記外部装置に前記測定部による前記バッテリの測定結果を送信するため」であるのに対して、
引用発明1においては、本件補正発明における「スマートフォン又はタブレットからなる外部装置」に相当する構成を備えておらず、バッテリの測定結果を送信する目的が「充電器10」が「予想充電時間を計算」するためである点。
イ 判断
(ア) 相違点について
a 前記(3)ウにおいて技術常識1として認定したとおり、次の事項は技術常識であったと認められる。
<技術常識1>
「計測システムにおいて、計測装置が測定したデータを、サーバ等の計測装置以外の装置に対して、インターネットを介して送信するように構成できること。」
b また、前記(3)エにおいて周知技術1として認定したとおり、次の事項は周知の技術であったと認められる。
<周知技術1>
「車両が備えるバッテリーの充電に関するシステムにおいて、サーバを介して管理者用の端末に充電前のバッテリーの充電率(SOC)を含む様々な情報を送信したり、管理者用の端末をスマートフォンやタブレットなどの携帯端末を用いて構成したりすること。」
c ここで、引用発明1は、電気自動車の充電を行うための充電システムを前提とした発明であるところ、そのような充電システムにおいては、システムを運営、管理する管理者が存在するのが一般的であるから、当業者であれば、引用発明1にシステムの管理者が存在することを観念できるといえる。
d そして、システムの管理者が、システムに関する様々なデータを様々な手段を用いて収集できることが、システムの効果的な運営、管理に寄与し得ることは明らかであるから、当業者にとって、引用発明1において前記周知技術1を採用しようとする契機は存在するといえる。
e したがって、引用発明1において、前記dで説示した契機に基づいて前記周知技術1を採用して、「電池残量」等の情報を、何らかのサーバを介してスマートフォンやタブレットなどの携帯端末に送信するように構成することは、当業者にとって自明な設計事項にすぎず、その際に、どのような送信経路で「電池残量」等の情報を送信するかは当業者が適宜決定し得た事項にすぎないから、前記技術常識1を踏まえて、「充電器10」からサーバまでの経路やサーバから携帯端末までの経路の少なくとも一つをインターネットを介したものとすることは、周知技術1の具体的適用に際して適宜選択できる設計変更というべきものであり、格別のものでない。
f そして、引用発明1において、技術常識1を踏まえて周知技術1を採用することで、「電池残量」等の情報を、サーバを介してスマートフォンやタブレットなどの携帯端末に送信するようにし、その際に、「充電器10」からサーバまでの経路やサーバから携帯端末までの経路の少なくとも一つをインターネットを介したものとした場合に、引用発明1は、本件補正発明における「インターネットを介して前記スマートフォン又は前記タブレットからなる前記外部装置に前記測定部による前記バッテリの測定結果を送信する」ことに相当する構成(以下「送信構成」という。)を備えることになるから、システム全体としてみれば、引用発明1において、「無線通信部21」が「充電器10」に「電気走行用バッテリの電池残量を送信」する目的の一つに、上記送信構成を達成することが含まれることになるといえる。
そのため、前記eにおける検討で得られる発明は、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるといえる。
(イ) 総合評価
前記(ア)において検討したとおり、引用発明1において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明1、技術常識1及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明1、技術常識1及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ) 請求人の主張について
a 請求人の主張内容
請求人は、審判請求書において、引用文献1には、充電器10と電気自動車20がBluetooth(登録商標)による通信を行う態様が示されているだけであって、このような引用文献1に記載された発明を主引用発明とした場合、測定装置の内部通信部が、制御部が外部通信部との通信が可能であると判断した場合に、インターネットを介してスマートフォン又はタブレットからなる外部装置に測定部によるバッテリの測定結果を送信するために
、バッテリの測定結果を外部通信部に送信するという構成には、後知恵が無ければ想到し得ない旨を主張している。
b 請求人の主張についての検討
請求人の主張は、前記相違点(前記ア(イ)b参照)に係る構成に関するものであるところ、引用発明1において、技術常識1を踏まえて周知技術1を採用することで、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることが当業者にとって容易であることは、前記(ア)a~fにおいて説示したとおりであって、請求人の主張を採用することはできない。
(5) 引用発明2を主引用発明とする場合
ア 本件補正発明と引用発明2の対比
前記(4)ア(ア)の対比分析の結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明2は、前記(4)ア(イ)aに示す一致点において一致し、前記(4)ア(イ)bに示す相違点において相違すると認められる(ここで、前記(4)ア(ア)及び(イ)における「引用発明1」との記載を「引用発明2」と読み替えることとする。)。
イ 判断
(ア) 相違点について
引用発明2において、前記(4)イ(ア)dで説示した契機に基づいて前記周知技術1を採用して、「電池残量」等の情報を、「充電ステーション管理サーバ30」又は「Webサーバ70」を介してスマートフォンやタブレットなどの携帯端末に送信するように構成することは、当業者にとって自明な設計事項にすぎず、その際に、どのような送信経路で「電池残量」等の情報を送信するかは当業者が適宜決定し得た事項にすぎないから、前記技術常識1を踏まえて、「充電器10」から「充電ステーション管理サーバ30」までの経路や、「充電ステーション管理サーバ30」から携帯端末までの経路の少なくとも一つをインターネットを介したものとするなどして、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(イ) 総合評価
前記(ア)において検討したとおり、引用発明2において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明2、技術常識1及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明2、技術常識1及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(ウ) 請求人の主張について
請求人の主張については、前記(4)イ(ウ)において検討したとおりである。
(6) 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明1又は引用発明2、技術常識1及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記2において説示したとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、仮に、本件補正が、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当するとした場合であっても、前記3において説示したとおり、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法第159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由である理由1(新規性の欠如)及び理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由1(新規性の欠如) 本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2012-217224号公報
3 引用文献1に記載された事項及び引用発明1等の認定
引用文献1に記載された事項、引用発明1並びに技術常識1及び周知技術1は、前記第2の3(2)ア、ウ並びに(3)ウ及びエにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
(1) 対比
前記第2の3(4)ア(ア) の対比分析の結果を踏まえると、本願発明と引用発明1は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点において一応相違すると認められる。
ア 一致点
「車両に搭載され、当該車両のバッテリに接続された測定装置であって、 前記バッテリを測定する測定部と、
外部通信部と無線通信可能かどうかを判断する制御部と、
前記制御部が前記外部通信部との通信が可能であると判断した場合に、前記バッテリの測定結果を前記外部通信部に送信する内部通信部と、
を備える測定装置」を含む点。
イ 相違点
バッテリの測定結果を送信する目的が、
本願発明においては、「インターネットを介して外部装置に前記測定部による前記バッテリの測定結果を送信するため」であるのに対して、
引用発明1においては、「充電器10」が「予想充電時間を計算」するためである点。
(2) 判断
本願明細書の段落【0019】、【0035】、図1及び図5等の記載を踏まえると、本願発明には、「インターネットを介して外部装置に前記測定部による前記バッテリの測定結果を送信する」処理を担うのが「外部通信部」である態様も含まれると解するのが相当であるところ、本願発明の「測定装置」は、「測定部」、「制御部」及び「内部通信部」を構成要素として含む一方で、「外部通信部」を構成要素として含んでいない。
そのため、本願発明の構成要素に含まれない、「外部通信部」の処理の内容に関する前記相違点が、本願発明と引用発明1との実質的な相違点であるとは認められない。
また、仮に、前記相違点を実質的な相違点とすべきとしても、引用発明1において、技術常識1(及び必要に応じて周知技術1)を踏まえて当該相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。
したがって、前記相違点は実質的な相違点ではないから、本願発明は、引用文献1に記載された発明であり、仮に前記相違点が実質的な相違点であるとしても、本願発明は、引用発明及び技術常識1(並びに、必要に応じて周知技術1)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当するため、又は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-017233