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特許拒絶査定不服審判

2023-003731

ガス検出器

審判番号
2023-003731
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-536458
請求日
2023年03月06日
審決日
2024年02月07日
公報発行日
2024年04月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】フィガロ技研株式会社
  • 【請求人代理人】塩入 明
  • 【請求人代理人】塩入 みか
  • 【請求人】新コスモス電機株式会社
  • 【請求人代理人】塩入 明
  • 【請求人代理人】塩入 みか
  • 【請求人】公立大学法人大阪
  • 【請求人代理人】塩入 明
  • 【請求人代理人】塩入 みか
審判長/審判官
  • 審判長 加々美 一恵
  • 審判官 ▲高▼見 重雄
  • 審判官 櫃本 研太郎
分類
P18 .121-WZ (G01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-536458「ガス検出器」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 2月13日国際公開、WO2020/031724〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2019年(令和元年)7月25日(優先権主張 平成30年8月10日)を国際出願日とする出願であって、令和4年3月7日付けで拒絶理由が通知され、同年4月6日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月2日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年10月3日に意見書が提出され、令和5年1月20日付けで拒絶査定(謄本の送達日:1月24日)されたところ、同年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がされた。 その後、当審において、同年8月21日付けで拒絶理由が通知され、同年10月10日に期間延長請求がされ、同年11月14日に意見書、手続補正書及び手続補足書(実験成績報告書)が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1~4に係る発明は、令和5年11月14日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次に特定されるとおりである。 「 【請求項1】 フィルタを介して雰囲気をガス検出部へ導入するガス検出器において、 前記ガス検出器はガスセンサであり、前記ガス検出部と前記フィルタに加えて、前記ガス検出部を収容しかつ前記フィルタが取り付けられているハウジングを備え、 前記フィルタは、 通気性でシロキサンを除去し、検出対象ガスを透過させるフッ素樹脂の気体選択性膜から成る有機高分子フィルタ、及び アルコールを除去し検出対象ガスを透過させる無機フィルタ、を備え、 前記ハウジング内での位置関係で、前記有機高分子フィルタが外気側に、前記無機フィルタがガス検出部側に配置されていることを特徴とする、ガス検出器。」 第3 拒絶の理由 当審において通知した令和5年8月21日付け拒絶理由の概要は、次のとおりである。 理由(進歩性) この請求項1~5に係る発明は、この出願前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、この出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:国際公開第2018/053656号(査定時の引用文献3) 引用文献2:特開平6-160323号公報(査定時の引用文献2) 引用文献3:特開昭61-172045号公報(査定時の引用文献8) 引用文献4:特開平8-285803号公報(査定時の引用文献5) 引用文献5:特開2017-154080号公報(査定時の引用文献6) 引用文献6:特開2015-184202号公報(査定時の引用文献9) 引用文献7:国際公開第2016/152645号(最初の拒絶理由時の引用文献4) 引用文献8:国際公開第2017/138190号(新たに引用された文献) 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載 引用文献1には、次の記載がある(下線は当審において付与した。以下同様)。 ア(1頁23~28行) 「According to a first aspect of the present invention, a gas sensor is provided comprising a support structure with a cavity. A sensing element is arranged in the cavity. The sensing element is sensitive at least to the gas desired to be sensed or detected. A filter spans the cavity. The filter is a size selective filter.」 (当審訳:本発明の第一の側面によれば、空洞を有する支持構造体からなるガスセンサが提供される。空洞内に検知素子が配置される。検知素子は、少なくとも検知又は検出が望まれるガスに対して感度を有する。フィルタは空洞を覆う。フィルタはサイズ選択フィルタである。) イ(3頁16~23行) 「For the purpose of the gaseous medium to be investigated by means of the sensing element, the medium is required to enter the cavity which preferably is achieved through the filter covering the cavity. Preferably, an opening in the support structure is completely spanned by the filter in order to define the cavity, and in order to block any gas molecules to reach the cavity that has not passed the filter.」 (当審訳:検知素子によって調査されるガス状媒体の目的のためには、ガス状媒体が空洞に入ることが必要であり、これは好ましくは空洞を覆うフィルタを通して達成される。好ましくは、支持構造体の開口部は、空洞を画定するためにフィルタによって完全に覆われ、フィルタを通過しなかった気体分子が空洞に到達するのを阻止する。) ウ(4頁16~25行) 「In each case, the material of the sensing element may contain a metal oxide material, which may for instance include one or more of tin oxide, zinc oxide, titanium oxide, tungsten oxide, indium oxide and gallium oxide. Metal oxides may be used for the detection of analytes such as volatile organic compounds (VOCs), carbon monoxide, nitrogen dioxide, methane, ammonia, hydrogen or hydrogen sulphide. In a preferred embodiment, the sensing element comprises SnO2, doped with 0.01 - 5.0 Wt% platinum and/or palladium.」 (当審訳:それぞれの場合において、検知素子の材料は金属酸化物材料を含むことができ、例えば、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化タングステン、酸化インジウム、酸化ガリウムのうちの1つ以上を含むことができる。金属酸化物は、揮発性有機化合物(VOCs)、一酸化炭素、二酸化窒素、メタン、アンモニア、水素、硫化水素などの嫌気性物質の検出に使用することができる。好ましい実施形態では、検知素子は、0.01-5.0Wt%の白金及び/又はパラジウムをドープしたSnO2からなる。) エ(6頁7~28行) 「Hence, it is preferred that the filter is permeable for the gas to be detected by the sensing element and non-permeable for one or more other gases. Such other gases may in particular include siloxane and variants thereof which are prone to react with the material of the sensing element and degrade its sensing capabilities over time. Hence, the size selective filter counteracts ingress of one or more types of atmospheric gases to the sensing element, i.e. preferably, the MOX, while allowing other types of gas molecules to diffuse there through and reach the sensing element. Thus, the filter makes it possible to counteract the ingress of inhibiting and/or poisoning species to the sensing element, and this operates by size exclusion. In a very preferred embodiment, the size of a majority of the pores in the filter material is 1 nm or less. This dimension, in particular, is preferred in case the sensing element is configured to sense one or more of CO, Ethanol, H2, H2S. Here, gas molecules of the subject gases of interest are sufficiently small to pass the filter while many kinds of siloxane molecules are too big in size to pass, and hence, will be blocked by the filter.」 (当審訳:したがって、フィルタは、検知素子によって検知されるガスに対しては透過性であり、1つ以上の他のガスに対しては非透過性であることが好ましい。このような他のガスには、特に、検知素子の材料と反応しやすく、経時的に検知能力を低下させやすいシロキサン及びその変種が含まれる。よって、サイズ選択フィルタは、検知素子、すなわち好ましくはMOXへの1種類以上の大気ガスの侵入を阻止する一方で、他の種類のガス分子がそこを拡散して検知素子に到達することを可能にする。このように、フィルタは、検知素子への阻害種及び/又は被毒種の侵入を打ち消すことを可能にし、これはサイズ排除によって作動する。 非常に好ましい実施形態では、フィルタ材料の大部分の孔のサイズは1nm以下である。この寸法は、特に、検知素子がCO、エタノール、H2、H2Sの1つ以上を検知するように構成されている場合に好ましい。ここで、対象となるガスのガス分子はフィルタを通過するのに十分小さいが、多くの種類のシロキサン分子はサイズが大きすぎて通過できず、したがってフィルタによってブロックされる。) オ(7頁3~18行) 「In a preferred embodiment, an average thickness of the filter is less than 20 um, and more preferably, is between 0.5 um and 5 um. The filter may also be considered as a filter layer spanning the access opening in the support structure. The thickness of the filter layer may not necessarily impact the filtering effect thereof. However, the thicker the filter layer is, the longer it may take gas molecules to pass the filter layer and reach the sensing element. Hence, a thick filter layer may increase a response time of the subject gas sensor. Hence, it is preferred to make the filter layer rather thin, e.g. in the above ranges, in order not only to provide a size selective separation of gas molecules by the filter but also to allow a fast response time of the gas sensor. The filter may be embodied as single filter layer or as multiple filter layer stacked.」 (当審訳:好ましい実施形態では、フィルタの平均厚さは20um未満であり、より好ましくは0.5umから5umの間である。フィルタは、支持構造体のアクセス開口部を覆うフィルタ層とみなすこともできる。フィルタ層の厚さは、そのフィルタ効果に必ずしも影響しない場合がある。しかし、フィルタ層が厚くなればなるほど、ガス分子がフィルタ層を通過して検出素子に到達するまでの時間が長くなる可能性がある。したがって、フィルタ層が厚いと、対象ガスセンサの応答時間が長くなる可能性がある。したがって、フィルタによるガス分子のサイズ選択的分離を提供するだけでなく、ガスセンサの高速応答時間を可能にするために、フィルタ層をむしろ薄く、例えば上記範囲にすることが好ましい。フィルタは、単一のフィルタ層として、又は積層された複数のフィルタ層として具現化することができる。) カ(9頁18~26行) 「A material of the filter preferably comprises or consist of a fluoropolymer. Preferably, the fluoropolymer is an amorphous fluoropolymer with a free fraction per volume of at least 19%, and preferably with a free fraction per volume between 20% and 40%. For example, amorphous fluoroplastics, e.g., Hyflon AD 80 or Hyflon AD 60 can be used, or amorphous fluoroplastics Teflon AF, e.g., Teflon AF 1600 or Teflon AF 2400, or a TTD homopolymer, or a Cytop homopolymer.」 (当審訳:フィルタの材料は、好ましくはフッ素樹脂を含むか、フッ素樹脂からなる。好ましくは、フッ素樹脂は、体積あたりの自由分率が少なくとも19%、好ましくは体積あたりの自由分率が20%~40%の非晶質フッ素樹脂である。例えば、非晶質フッ素樹脂、例えばHyflon AD 80又はHyflon AD 60を使用することができ、又は非晶質フッ素樹脂Teflon AF、例えばTeflon AF 1600又はTeflon AF 2400、又はTTDホモポリマー、又はCytopホモポリマーを使用することができる。) キ(13頁19~22行) 「In a preferred embodiment, the sensing element is configured to detect one of CO, Ethanol, H2, H2S, and hence, the gas sensor is a sensor for detecting one or more of these gases.」 (当審訳:好ましい実施形態では、検知素子は、CO、エタノール、H2、H2Sのうちの1つを検知するように構成されており、したがって、ガスセンサは、これらのガスのうちの1つ以上を検知するためのセンサである。) ク(13頁28行~14頁10行) 「The present approaches prevent a degradation of a gas sensor, and specifically its sensing element, by an exposure to harmful gases. For example, siloxane, or more generally volatile Si compounds, may damage sensing elements, and in particular metal oxide sensing elements, whereby the response time of the sensing element is usually increased and the sensor signal is reduced. An exposure to such harmful gases preferably is prevented or at least mitigated by providing a filter distant from the sensing element, which filter acts as a physical separator for gas molecules of different size. It was found, that in particular a fluoropolymer filter provides for pores of the desired size letting gas molecules of smaller size to be sensed pass while, for example, blocking various siloxane gas molecules a size of which increases the size of gas molecules typically desired to be sensed. The fluorinated filter protects the sensing element against aggressive chemicals such as acids or bases, and further prevents, by design, buildup of solids and liquids on the surface of the sensing element.」 (当審訳:本発明のアプローチは、有害ガスへの暴露によるガスセンサ、特にその検知素子の劣化を防止する。例えば、シロキサン、より一般的には揮発性Si化合物は、検知素子、特に金属酸化物検知素子を損傷する可能性があり、これにより検知素子の応答時間が通常長くなり、センサ信号が低下する。このような有害ガスへの暴露は、好ましくは、検知素子から離れた場所にフィルタを設けることによって防止されるか、少なくとも軽減される。特にフッ素樹脂フィルタは、感知されるより小さなサイズのガス分子を通過させる一方で、例えば、感知されることが一般的に望まれるガス分子のサイズを増大させる様々なシロキサンガス分子をブロックする、所望のサイズの孔を提供することが見出された。フッ素化フィルタは、酸や塩基のような攻撃的な化学物質から検知素子を保護し、さらに設計上、検知素子の表面に固形物や液体が蓄積するのを防ぐ。) (2)引用文献1に記載された発明 前記(1)の記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位末尾の括弧内には、主たる認定根拠となる引用文献1の記載箇所を示す。 「空洞を有する支持構造体からなるガスセンサであって、(ア) 空洞内に検知素子が配置され、検知素子は、少なくとも検知が望まれるガスに対して感度を有し、フィルタは空洞を覆い、フィルタはサイズ選択フィルタであり、(ア) 検知素子によって調査されるガスがフィルタを通して空洞に入り、(イ) 支持構造体の開口部は、空洞を画定するためにフィルタによって完全に覆われ、フィルタを通過しなかった気体分子が空洞に到達するのを阻止し、(イ) フィルタは、検知素子によって検知されるガスに対しては透過性であり、1つ以上の他のガスに対しては非透過性であり、このような他のガスには、検知素子の材料と反応しやすく、経時的に検知能力を低下させやすいシロキサンが含まれ、検知素子がCO、エタノール、H2、H2Sの1つ以上を検知するように構成され、(エ) フィルタは、単一のフィルタ層として、又は積層された複数のフィルタ層として具現化することができ、ガス分子のサイズ選択的分離を提供し、(オ) フィルタの材料は、フッ素樹脂を含むか、フッ素樹脂からなり、フッ素樹脂は、非晶質フッ素樹脂である、(カ) ガスセンサ。」 2 引用文献2について 引用文献2には、次の記載がある。 「【0002】 【従来の技術】COガス検出用のセンサと、アルコールやNOxガス等を除去するフィルターとを備えたCOガス検出装置の一例として実公平2-20682号公報に開示された考案があり、図7にこのCOガス検出装置の構成図を示す。 【0003】図において、1は例えばプラスチックなどの合成樹脂からなる円筒状の筐体、2は筐体1の上部に配設された活性炭フィルターで、例えばステンレスなどの耐食性金属からなる金属メッシュ3a,3bにより活性炭を保持したものである。この活性炭フィルター2によれば、図8に示すように、大気中や例えば火災等で発生した煙、ガス等に含まれるエタノールやNO、NO2等のNOxはこの活性炭フィルター2を通過することによって吸着されて除去されるが、COはそのまま通過する。4は筐体1の下部に配設された絶縁材料からなるステムで、このステム4と活性炭フィルター2によって筐体1内に中空室5が形成されている。 【0004】6は例えばSnO2(二酸化スズ)に、SnO21g当り3mgのPd(金属換算の添加量、以下同じ)を添加して焼結した化合物半導体からなり、内部に自らを加熱するコイルを備えたセンサで、このセンサ6は例えばCOが吸着する温度、つまり80℃程度に加熱されており、センサ6にCOガスが吸着すると電気抵抗が低下し、この電気抵抗の低下によってCOが検出されるように構成されている。また、センサ6は定期的に500℃程度にヒートアップし、一度、センサ6に吸着したCO等を熱分解して脱着し、ヒートクリーニングする。7は一端がセンサ6に接続され、他端がセンサ6に電源を提供する電源部(図示せず)に接続される電極端子で、ステム4に保持されており、ステム4と電極端子7によってセンサ6は中空室5内のほぼ中央に配置されている。 【0005】なお、センサ6のSnO2に添加する貴金属は、Pdに代えてPt、Rh、Ir、Os、Ru、Au、Agなどの貴金属の一員あるいは複数員を用いてもよく、また、添加量はSnO21g当り1mg~15mgの範囲で変化させてもよい。 【0006】このように構成したCOガス検出装置で燃料の不完全燃焼によって発生したCOガスを検出する場合、COガス等が混合している空気は活性炭フィルター2を通過し、中空室5へと送られる。この時、空気内に混合しているエタノールやNOx等は活性炭フィルター2に吸着されて除去され、CO等の炭酸ガスのみとなって中空室5内へ送られる。そして、中空室5内へ送られた炭酸ガス中のCOガスは、80℃に加熱されたセンサ6に吸着する。COが吸着すると、COの濃度変化に伴ってセンサ6の電気抵抗は低下するので、この電気抵抗の低下によってCOガスの有無およびCOガスの濃度を検出する。」 ・図7、図8 「 [図:0001408754000001.jpg] 」 3 引用文献3について 引用文献3には、次の記載がある。 (1)1頁右下欄4行~2頁左上欄1行 「最近、地下食堂街等に取り付けられたガス漏れ警報器の誤報が多発し、大きな問題となっている。 ガス漏れにより生ずるCH4、H2、C3H8、C4H10などのガスを選択的に検出するため、活性炭、活性アルミナ、ゼオライト、シリカゲルなどのガス弁別のためのフイルタをガス検知素子に取り付けて、そのフィルタにより妨害ガス、ミスト、粉塵などを吸着してこれらの妨害ガスなどをガス感応体に到達させないようにしたフイルタ付ガス検知素子が古くから特許等で知られている。しかし、かつては、地下街等でのガス漏れ警報器設置義務もなく、従つて誤報問題もなく、地下街特有に起こるガス感応体の高感度化要因を知るすべもなかつた。このフイルタの使用目的は、主として調理時に発生するエタノールなどによるガス漏れ警報器の誤報を防止することにあり、それなりの効果があったと思われる。」 (2)2頁右下欄14行~3頁左下欄8行 「そこで、発明者らは、活性酸化亜鉛と活性アルミナを併用し、フィルタとして用いると、S02およびH2Sの両者を除去できるため、ガス感応体の特性を安定に保持できると考えて、この発明を完成させた。 すなわち、この発明は、ガス感応体の検知能力を妨げる物質を除去するためのフィルタを備えたフィルタ付ガス検知素子において、前記フィルタが活性アルミナのフィルタ層と活性酸化亜鉛のフィルタ層を備えていることを特徴とするフィルタ付ガス検知素子をその要旨とする。 このようにフィルタが活性アルミナのフィルタ層と活性酸化亜鉛のフィルタ層を備えていると、被毒物質であるS02およびH2Sは、活性アルミナおよび活性酸化亜鉛の両者に接触され、S02は活性アルミナで除去され、H2Sは活性酸化亜鉛で除去される。そのため、この発明にかかるフィルタを使用すれば、S02とH2Sの混合雰囲気であっても、ガス感応体にこれらの被毒物質が到達せず、ガス感応体が特性変化を起こすことがないのである。 ・・・ (実施例1) 第1図にみるようなフィルタ付ガス検知素子を作製した。 図にみるように、4本の電極ピン1を備えた基体2に、ガス感応体3、コイル状ヒータ4および防爆用ネット5がそれぞれ配置されている。電極ピン1はニッケルからなり、基体2はアルミナからなる。ガス感応体3の2本の電極は4本の電極ピン1のうちの2本に接続されている。コイル状ヒータ4はガス感応体3を囲むように配置され、その両端が残りの2本の電極ピン1に接続されている。防爆用ネット5は、ガス感応体3およびコイル状ヒータ4を覆っている。基体2には、バイブ状のパイレックスガラス6の一端が接着されている。パイレックスガラス6の他端開口部6aは、フィルタ7によって塞がれており、ガスがフィルタ7を通ることなしにガス感応体3に達することができないようになっている。フィルタ7は、ガラスフィルタ層8、活性アルミナのフィルタ層9、活性酸化亜鉛のフィルタ層10を備えている。これらのフィルタ層は、内側からガラスフィルタ層8、活性アルミナのフィルタ9、ガラスフィルタ層8、活性酸化亜鉛のフィルタ層10、ガラスフィルタ層8の順に積層されている。」 ・第1図 「 [図:0001408754000002.jpg] 」 4 引用文献5について 引用文献5には、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 この発明は、フィルタおよびセンサに関し、特に、活性炭を備えるフィルタおよびセンサに関する。 【背景技術】 【0002】 従来、活性炭を備えるフィルタが知られている(たとえば、特許文献1参照)。 【0003】 上記特許文献1には、ガス漏れ警報器などに用いられるフィルタであって、硫酸第一鉄または硫酸第二鉄が活性炭に担持されたフィルタが開示されている。 【0004】 また、家屋などの建物において使用されるコーキング剤や、結露防止スプレーおよびヘアースプレーなどの各種スプレーなどに用いられる化合物には、シロキサン化合物が含まれている場合がある。シロキサン化合物とは、シロキサン結合(Si-O-Si結合、Si:ケイ素、O:酸素)を有する有機化合物を示す。 【0005】 また、家屋などの建物において使用される芳香剤、消臭剤、除菌剤、防虫剤などの各種化合物からは、シロキサン化合物以外の有機ガス(以下、VOC(Volatile Organic Compounds)ガスという)が発生する場合がある。 【0006】 ここで、シロキサン化合物がガス検知素子(センサ素子)に付着した場合、ガス検知素子の検知感度が低下したり、選択的に検出すべきガス以外のガスに対してガス検知感度が上昇してガス検知素子が誤作動する場合がある。そこで、上記特許文献1においては、上記のようなフィルタを用いて、シロキサン化合物を吸着することによって、シロキサン化合物がガス検知素子に付着するのを抑制している。すなわち、上記特許文献1では、フィルタにより、ガス検知素子の検知感度が低下したり、選択的に検出すべきガス以外のガスに対してガス検知感度が上昇して、ガス検知素子が誤作動するのを抑制している。また、VOCガスについてもシロキサン化合物と同様である。詳細には、VOCガスがガス検知素子(センサ素子)に付着した場合、ガス検知素子の検知感度が低下したり、選択的に検出すべきガス以外のガスに対してガス検知感度が上昇してガス検知素子が誤作動する場合があるが、上記のようなフィルタを用いて、VOCガスを吸着することによって、VOCガスがガス検知素子に付着するのを抑制することもできる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0007】 【特許文献1】特開昭60-222144号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 しかしながら、近年、シロキサン化合物やVOCガスの発生源となる各種化合物の使用量が増加していることに起因してフィルタの劣化速度が大きくなる(フィルタが短時間で劣化する)ことに対して、上記特許文献1に記載のフィルタでは十分に対応できていないという問題点があると考えられる。このため、上記特許文献1に記載のフィルタを用いたセンサでは、短期間でガス検知素子に各種化合物が付着されてしまい、その結果、ガス検知素子が誤作動しやすくなると考えられる。」 5 引用文献6について 引用文献6には、次の記載がある。 「【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 家庭において使用される結露防止スプレーやヘアースプレー等にはシロキサン化合物が含まれている場合がある。当該シロキサン化合物とは、「Si-O-Si」のシロキサン結合を骨格中に有する有機ポリマーである。 【0006】 当該シロキサン化合物がガス検知素子に付着した場合、ガス検知素子の検知感度が低下したり、選択的に検出すべきガス以外のガスに対してガス検知感度が上昇して、誤作動したりしやすくなることがあった。これは、被検知ガス中に含まれるシロキサン化合物が妨害成分としてガス検知素子にまで達し、ガス検知素子にシロキサン化合物又はその分解物等が付着することで、ガス検知素子のガス検知特性を変化させるものと考えられる。 【0007】 そのため、例えば可燃性ガスセンサにおいては、特許文献1のように吸着剤として活性炭を用いた吸着フィルタを配置することで、当該吸着フィルタによってシロキサン化合物を吸着させ、シロキサン化合物がガス検知素子の表面に到達するのを防止することができる。 【0008】 吸着フィルタを装着した可燃性ガスセンサを台所などの室内に設置した場合、当該吸着フィルタが室内に浮遊するシロキサン化合物等の妨害成分を吸着してしまう。そのため、該吸着フィルタの吸着能力が早期に低下し易くなり、当該妨害成分を吸着する能力が低下する問題があった。 【0009】 また、シロキサン化合物等の妨害成分に対する可燃性ガスセンサの耐久性を向上させる為に、吸着フィルタに導入する吸着剤の量を大幅に増量させた場合や、ガス導入口の面積を小さくした場合は、当該妨害成分に対する耐久性が向上する一方で、被検知ガスに対する応答性が著しく低下してしまう。」 6 引用文献7について 引用文献7には、次の記載がある。 「[0001] 本発明は、シロキサン化合物を流体中(特に、空気中)から除去するためのケミカルフィルタに関する。また、本発明は、該ケミカルフィルタを用いた流体浄化方法、該ケミカルフィルタを備えたガスセンサに関する。 [0002] 生活環境において、あらゆる環境下にシロキサン化合物が存在している。例えば、シロキサン化合物は、一般家庭、クリーンルーム内等の建物内に存在するパッキング部やシール材、建築現場等で使用される接着剤、シャンプー、化粧品等、生活環境内に存在するあらゆる物質に用いられている。 [0003] また、半導体製造プロセスの露光工程において、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)のようなジシラザン化合物が、フォトレジスト密着剤として使用されることが知られている。HMDSは、例えばガスとしてウエハ表面に吹き付けられることにより、ウエハ表面の水酸基をトリメチルシラノール基に置換させることで、ウエハ表面を疎水化させて、ウエハ表面のレジスト剤との密着性を向上させている。しかしながら、空気中にシロキサン化合物が存在する場合、シロキサン化合物がウエハ表面に付着すると半導体の特性を変えてしまい、低濃度でも製品歩留まりを低下させるおそれがある。 [0004] シロキサン化合物の除去には、通常、吸着剤として活性炭を用いたケミカルフィルタが使用されている。活性炭を用いた吸着剤としては、例えば、平均細孔径が異なる2種類の活性炭を有するシロキサン除去用活性炭が知られている(特許文献1参照)。 [0005] また、活性炭の他に、シロキサン化合物の吸着剤として、スルホン酸基等の酸性官能基が導入された樹脂又は多孔質材料が使用されている。このような吸着剤としては、例えば、スルホン酸基を有する樹脂を含むシロキサン除去剤(特許文献2参照)、スルホン酸基修飾金属酸化物ゾルを多孔質材料に添着させた多孔質物質(特許文献3、4参照)、平均細孔直径が3~20nmの無機多孔質体に解離指数が2.2以下で、分子量が1000以下である酸性化合物を含有したシロキサン除去剤(特許文献5参照)等が知られている。吸着剤として、このような酸性官能基が導入された樹脂又は多孔質材料を用いると、シロキサン類を選択的に効率良く除去できると記載されている。 先行技術文献 特許文献 [0006] 特許文献1:特開2005-177737号公報 特許文献2:特開2011-212565号公報 特許文献3:特開2013-103153号公報 特許文献4:特開2013-103154号公報 特許文献5:特開2015-44175号公報 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0007] しかしながら、上記特許文献1のように、吸着剤として活性炭を用いた場合、一旦吸着されたシロキサン類が脱離することがあった。 [0008] また、シロキサン化合物は、通常の環境においては有機ガス成分等の他のガス成分と共に大気中に存在することが多い。このため、他のガス成分が多く存在する場合、上記特許文献1に記載のような、活性炭を用いた吸着剤では、シロキサン化合物の除去と他のガス成分の除去とは競合になるため、シロキサン化合物の除去効率(除去性能、又は除去能力)は他のガス成分の存在量に応じて変動する。さらに、他のガス成分が大気中に存在する量は日々異なることが多い。このため、活性炭が除去するシロキサン化合物と他のガス成分の量が日々変動するため、活性炭を用いた吸着剤や該吸着剤を用いたフィルタの残り寿命の予測が困難であった。 ・・・ [0134] さらに、吸着剤として活性炭を用いたケミカルフィルタは、流体中のシロキサン化合物以外に有機ガス成分等の他のガス成分が存在する場合、シロキサン化合物の除去は上記有機ガス成分の除去と競合になる。このため、シロキサン化合物の除去効率は低下する。これに対し、本発明の吸着剤は、上述のように、主に無機シリカ系多孔質材料中のシラノール基によってシロキサン化合物を除去するため、上記有機ガス成分の除去と競合にはならず、シロキサン化合物を選択的に効率的に除去することができる。 ・・・ [0138] 本発明のケミカルフィルタが、シロキサン化合物を選択的に除去可能な場合、本発明のケミカルフィルタは、上記の中でも、ガスセンサ用途に用いることが特に好ましい。一般家庭などでは、プロパンやブタンを検知するためのセンサ(検知器)として、ガスセンサが用いられている。このようなガスセンサは、検知部の表面にシロキサン化合物が付着するとセンサの感度が低下し、検知能力に影響を及ぼすことが知られている。シロキサン化合物からセンサを保護するために、ガスセンサには、シロキサン化合物を吸着するためのフィルタが取りつけられている。上記フィルタには、一般的に、吸着剤として活性炭が用いられているが、このような吸着剤を用いたフィルタは、プロパンやブタンなどのガスセンサで検知する必要があるガスまでも吸着してしまうため、ガスセンサが作動しにくい場合がある。これに対し、上記の本発明のケミカルフィルタは、シロキサン化合物を選択的に高効率で除去することができる。このため、本発明のケミカルフィルタは、ガスセンサ用途(好ましくは、ガスセンサ内の検知器の上流側に設置する用途)として用いられることが特に好ましい。」 7 引用文献8について 引用文献8には、次の記載がある。 「[0002] ガスセンサにはシロキサンガスによる被毒との問題が有る。メタンあるいはCOの検出では活性炭フィルタによりシロキサンガスを吸着除去できるが、イソブタン、LPG等の検出では活性炭がこれらの検出対象ガスを吸着する。これに対して、出願人はゼオライトと活性アルミナとを混合したフィルタを提案した(特許文献1 特開2013-88267)。」 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 1 引用発明の「フィルタ」、「ガス」、「検知素子」及び「ガスセンサ」は、それぞれ、本願発明の「フィルタ」、「雰囲気」、「ガス検出部」及び「ガス検出器」に相当する。 よって、引用発明の「ガスがフィルタを通して」「検知素子によって調査される」「ガスセンサ」は、本願発明の「フィルタを介して雰囲気をガス検出部へ導入するガス検出器」に相当する。 2 前記1での対比を踏まえると、引用発明の「ガスセンサ」は、本願発明の「前記ガス検出器はガスセンサであ」ることに相当する。 3 引用発明の「支持構造体」は、本願発明の「ハウジング」に相当する。 よって、前記1での対比を踏まえると、引用発明の「検知素子」と「フィルタ」に加えて、「空洞内に検知素子が配置され、」「開口部」が「空洞を画定するためにフィルタによって完全に覆われ」ている「支持構造体」を備えることは、本願発明の「前記ガス検出部と前記フィルタに加えて、前記ガス検出部を収容しかつ前記フィルタが取り付けられているハウジングを備え」ることに相当する。 4 引用発明の「CO、エタノール、H2、H2Sの1つ以上」の「検知されるガス」は、本願発明の「検出対象ガス」に相当する。また、引用発明の「フッ素樹脂からな」る「フィルタ層として、」「ガス分子のサイズ選択的分離を提供」する「サイズ選択フィルタ」は、本願発明の「フッ素樹脂の気体選択性膜から成る有機高分子フィルタ」に相当する。 よって、引用発明の「フィルタは、検知素子によって」「CO、エタノール、H2、H2Sの1つ以上」の「検知されるガスに対しては透過性であり、」「シロキサン」「に対しては非透過性であり、」「フッ素樹脂からな」る「フィルタ層として、」「ガス分子のサイズ選択的分離を提供」する「サイズ選択フィルタであ」ることと、 本願発明の「前記フィルタは、 通気性でシロキサンを除去し、検出対象ガスを透過させるフッ素樹脂の気体選択性膜から成る有機高分子フィルタ、及び アルコールを除去し検出対象ガスを透過させる無機フィルタ、を備え」ることとは、 「前記フィルタは、 通気性でシロキサンを除去し、検出対象ガスを透過させるフッ素樹脂の気体選択性膜から成る有機高分子フィルタ」「を備え」ることの点で共通する。 第6 一致点・相違点 よって、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、次の各点で相違する。 (一致点) 「 フィルタを介して雰囲気をガス検出部へ導入するガス検出器において、 前記ガス検出器はガスセンサであり、前記ガス検出部と前記フィルタに加えて、前記ガス検出部を収容しかつ前記フィルタが取り付けられているハウジングを備え、 前記フィルタは、 通気性でシロキサンを除去し、検出対象ガスを透過させるフッ素樹脂の気体選択性膜から成る有機高分子フィルタ、を備える、ガス検出器。」 (相違点1) 前記フィルタは、本願発明では、「アルコールを除去し検出対象ガスを透過させる無機フィルタ、を備え」ているのに対し、引用発明では、そのようなフィルタを備えていない点。 (相違点2) 本願発明では、「前記ハウジング内での位置関係で、前記有機高分子フィルタが外気側に、前記無機フィルタがガス検出部側に配置されている」のに対し、引用発明では、「前記無機フィルタ」をそもそも備えていないことに伴い、ハウジング内における「有機高分子フィルタ」との位置関係についても当然に規定がない点。 第7 判断 前記各相違点について検討する。 1 相違点1について ガス漏れ又は燃料の不完全燃焼の検知は、いずれもガス検出器の用途として本願優先日前からよく知られているところ、ガス漏れにより生ずるCH4、H2、C3H8、C4H10を検出するガス検出器又は燃料の不完全燃焼によって発生したCOを検出するガス検出器において、エタノールを吸着し検出対象ガスを透過させる活性炭フィルタを備えることは、例えば引用文献2(前記第4の2参照)・引用文献3(前記第4の3(1)参照)などに記載されているように周知技術である。 そして、引用発明の「検知素子は、少なくとも検知が望まれるガスに対して感度を有し、」「CO、エタノール、H2、H2Sの1つ以上を検知する」ものであり、前述したよく知られたガス検出器の用途を踏まえると、引用発明において、ガス漏れ又は燃料の不完全燃焼の検知のために、H2又はCOを検出しエタノールを検出しない態様が想定される。そして、引用発明において、当該態様を得るためには、目的物質であるH2又はCOだけでなく、夾雑物質であるエタノールに対しても検知素子が感度を有することが一般的であることを踏まえると、エタノールが検知素子に達する前にエタノールを除去しようとすることは、当業者にとってごく自然なことであるから、前記周知技術を適用する動機は存在するといえる。 また、ガス検出器において、異なる種類のガスを除去するフィルタを複数用いることは、例えば引用文献3(前記第4の3(2)参照)などに記載されているように技術常識にすぎないことから、シロキサンをブロックしエタノールを透過させるサイズ選択フィルタを備えている引用発明において、前記周知技術を適用すること(エタノールを吸着する活性炭フィルタをさらに備えること)に特段の阻害要因は見当たらない。 してみると、シロキサンをブロックしエタノールを透過させるサイズ選択フィルタを備えている引用発明において、H2又はCOを検出するために前記周知技術を適用し、エタノールを吸着する活性炭フィルタをさらに備え、前記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 2 相違点2について (1)シロキサンの吸着に活性炭フィルタを用いることは、例えば引用文献5(前記第4の4参照)・引用文献6(前記第4の5参照)・引用文献7(前記第4の6参照)・引用文献8(前記第4の7参照)に記載されているように本願優先日前からよく知られているところ、引用文献5・6では、活性炭フィルタを備えたガスセンサを、シロキサンが多く存在する環境において用いた場合、活性炭フィルタの劣化速度が大きくなる(活性炭フィルタが短時間で劣化する)という活性炭フィルタの問題点が指摘されており、また、引用文献7では、シロキサンは、通常の環境においては有機ガス成分等の他のガス成分と共に大気中に存在することが多いため、他のガス成分が多く存在する場合、活性炭を用いた吸着剤では、シロキサンの除去と他のガス成分の除去とは競合になり、シロキサンの除去効率(除去性能、又は除去能力)は他のガス成分の存在量に応じて変動するという活性炭フィルタの問題点が指摘されている。 してみれば、シロキサンをブロックしエタノールを透過させるサイズ選択フィルタを備えている引用発明において、前記周知技術を適用し、エタノールを吸着する活性炭フィルタをさらに備える場合、前述した活性炭フィルタの問題点を踏まえると、引用発明が、そもそもシロキサンをブロックしエタノールを透過させるサイズ選択フィルタを備えている以上、活性炭フィルタでは極力、シロキサンを吸着させないこと、すなわちサイズ選択フィルタでシロキサンをブロックした後、活性炭フィルタでエタノールを吸着すること、そのための構成として、支持構造体の開口部において、シロキサンをブロックしエタノールを透過させるサイズ選択フィルタを外気側に、エタノールを吸着する活性炭フィルタを検知素子側に配置することは、当業者が適宜設計し得る程度のことであるといえる。 (2)さらに、本願明細書の【0010】には、「有機高分子フィルタと無機フィルタは、どちらが外気側に配置されてもかまわない」と記載されているところ、シロキサンをブロックしエタノールを透過させるサイズ選択フィルタを備えている引用発明において、前記周知技術を適用し、エタノールを吸着する活性炭フィルタをさらに備える場合、そのための構成としては、支持構造体の開口部において、サイズ選択フィルタを外気側に、活性炭フィルタを検知素子側に配置する態様、又は活性炭フィルタを外気側に、サイズ選択フィルタを検知素子側に配置する態様の2通りの選択しかないことから、どちらの態様を採用するかは、当業者が実験・シミュレーション等により適宜決定すべき設計事項ともいえる。そして、前者が後者よりも有利な効果を有するかについては、実験による実証がされておらず、実証をもった確認をすることができない。 (3)してみると、前記(1)・(2)から、引用発明において前記周知技術を適用し、前記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 3 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用文献1~3・5~8の記載から当業者が予測し得る程度を超えるものではない。 4 したがって、本願発明は、引用発明及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第8 請求人の主張 1 請求人は、令和5年11月14日提出の意見書において、 (1)「2) 補正後の請求項1(旧請求項3)の発明の進歩性について、意見を述べます。御認定のように引用文献1は、フッ素樹脂膜のフィルタによりシロキサンをブロックすることを記載しています。また活性炭がシロキサンを吸着すること自体は、本願出願前から良く知られています。 しかしながら、「活性炭がシロキサンの除去とアルコールの除去の競合となる」ことは引用文献1~8には記載も示唆もされていませんし、このような現象が実際に発生するのかどうかは疑問です。活性炭でのシロキサンの除去とアルコールの除去の競合に関して、本願の発明者の一人井澤邦之氏の実験成績報告書を提出します。 3) 実験成績報告書に添付の、居住空間でのシロキサン類の濃度に関する論文によると、シロキサン類はSalon(美容室)に高濃度で存在し、Salonでの平均濃度はD5換算で4× 10-4ppm程度です。なおSalonでシロキサン類の濃度が高いのは、リンスやシャンプー等の薬剤にシロキサン類が含まれているためと考えます。4× 10-4ppmのシロキサン濃度は飲酒時等の室内エタノール濃度に比べ極めて低く、活性炭等へのエタノールの吸着を妨げる程の濃度ではありません。 さらに、シロキサンとアルコールでは分子のサイズが異なり、エタノールは分子の極性が高くかつ水酸基を有しますが、シロキサンは極性が高いとはいえずまた水酸基は無く、両者は化学的な性質が異なります。 これらのことから、活性炭等へのシロキサンの吸着と、エタノールの吸着とが競合すると推定する理由は無いと考えます。 4) 井澤邦之氏の実験成績報告書では、エタノール3000ppm単独の場合と、エタノール3000ppm+D5 4ppmの混合雰囲気の場合とに対し、活性炭フィルタの下流側のガスセンサの抵抗値を測定しています。そしてガスセンサの抵抗値から、エタノール等が活性炭フィルタを通過しているかどうかを判断できます。 報告書によると、活性炭がエタノールを通過し始めるまでの時間(破過時間)においても、破過後のガスセンサの抵抗値の挙動においても、D5の有無による有意な差は見られません。 5) 引用文献1~8には、シロキサンが活性炭等へのエタノールの吸着を妨げる(エタノールの吸着と競合する)ことは示唆されていません。従って、シロキサンとエタノールの活性炭等への吸着の競合は、当業者が自然にあるいは一般的に考慮する事項では無いと考えます。 また居住空間でのシロキサン濃度がエタノール等の濃度に比べ極めて低いことから、シロキサンとエタノールの吸着の競合は重要ではないと考えることができます。 さらに井澤邦之氏の実験成績報告によると、活性炭がエタノールを通過し始めるまでの時間(破過時間)においても、破過後のガスセンサの抵抗値の挙動においても、D5の有無による有意な差は見られません。 これらのことから、シロキサンの吸着とエタノール等の吸着とが競合する可能性は、有機高分子フィルタを外気側に、無機フィルタをガス検出部側に配置する動機にはならないと考えます。」 (2)「6) ご参考までに、有機高分子フィルタを外気側に、無機フィルタをガス検出部側に配置することの説明図を添付します。図の左側では、有機高分子フィルタを外気側に無機フィルタをガス検出部側に配置し、右側では配置を逆転しています。また矢印の太さでシロキサン濃度を模式的に表します。 外気中のシロキサンの一部が、有機高分子フィルタを透過することが考えられます。有機高分子フィルタは、ガスは膜内を拡散することにより透過し、ガス分子のサイズの違い、ガス分子とフィルタを構成する有機高分子との親和性の差などにより、ガスの透過への選択性が生じるものと考えられます。 何らかの原因によりシロキサンが高分子膜を透過した場合、図の左の配置では、透過したシロキサンは無機フィルタにより除去されます。無機フィルタが除去すべきシロキサン濃度は低いので破過までの時間は長く、長期間ガス検出部をシロキサンから保護できます。 図の右側の配置では、左側の配置に比べ短時間で無機フィルタが破過します。破過後の無機フィルタを通過したシロキサンは比較的高濃度で、その一部は有機高分子フィルタを透過します。図の右側の配置では、破過後は実質的に有機高分子フィルタのみでシロキサンを除去しています。このため、図の左側の配置に比べ、短時間でガス検出部が被毒される可能性が有ります。 有機高分子フィルタを外気側に、無機フィルタをガス検出部側に配置することの説明図 [図:0001408754000003.jpg] 」 と主張する。 2 前記主張について検討する。 ・前記(1)について ア 請求人は、「「活性炭がシロキサンの除去とアルコールの除去の競合となる」ことは引用文献1~8には記載も示唆もされていません」と主張する。しかし、前記第7の2(1)で説示したとおり、引用文献7では、シロキサンは、通常の環境においては有機ガス成分等の他のガス成分と共に大気中に存在することが多いため、他のガス成分が多く存在する場合、活性炭を用いた吸着剤では、シロキサンの除去と他のガス成分の除去とは競合になり、シロキサンの除去効率(除去性能、又は除去能力)は他のガス成分の存在量に応じて変動するという活性炭フィルタの問題点が指摘されている。そして、引用文献7の[0138]には、ケミカルフィルタは一般家庭でガスセンサとして用いられる旨の記載があることを踏まえると、活性炭フィルタが用いられる通常の環境における有機ガス成分等の他のガス成分には、室内で発生するエタノールが含まれていると考えるのが自然である。してみると、引用文献7には、「活性炭がシロキサンの除去とアルコールの除去の競合となる」ことが記載ないしは示唆されているといえることから、当該主張は採用できない。 イ また、請求人は、活性炭でのシロキサンの除去とアルコールの除去の競合に関して、実験成績報告書を提出し、実験成績報告書によると、活性炭がエタノールを通過し始めるまでの時間(破過時間)においても、破過後のガスセンサの抵抗値の挙動においても、D5の有無による有意な差は見られないことから、「シロキサンの吸着とエタノール等の吸着とが競合する可能性は、有機高分子フィルタを外気側に、無機フィルタをガス検出部側に配置する動機にはならない」と主張する。たしかに実験成績報告書から、活性炭フィルタにおいてシロキサンの吸着とエタノール等の吸着とが競合する可能性は低いという結果が得られたかもしれないが、この結果は今回の意見書提出のために実施された実験により得られた結果であって、この結果が本願優先日当時における技術常識であると伺わせる証拠はない。そして、前記(1)のとおり引用文献7には活性炭フィルタにおける競合の可能性が記載ないしは示唆されている以上、活性炭フィルタにおける競合の可能性が、サイズ選択フィルタ(有機高分子フィルタ)を外気側に、活性炭フィルタ(無機フィルタ)を検知素子側(ガス検出部側)に配置する動機にはならない、といえないことから、実験成績報告書に基づく当該主張は採用できない。 ウ よって、前記ア・イから、請求人の前記主張は採用できない。 ・前記(2)について 請求人は、前記(2)において、有機高分子フィルタを外気側に、無機フィルタをガス検出部側に配置することの技術的意義乃至は作用・効果について説明している。 当該技術的意義乃至は作用・効果は、本願明細書(【0010】)に基づくものとはいえないが、前記第7の2(1)で説示した活性炭フィルタの問題点を踏まえると当業者が予測し得る程度のことである。 第9 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-003731

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