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特許拒絶査定不服審判

2024-007413

結合研磨剤及びその形成方法

審判番号
2024-007413
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-537538
請求日
2024年05月01日
審決日
2025年08月26日
公報発行日
2026年02月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】サンーゴバン アブレイシブズ,インコーポレイティド
  • 【請求人代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
  • 【請求人】サン-ゴバン アブラジフ
  • 【請求人代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 貴雄
  • 審判官 本庄 亮太郎
  • 審判官 田々井 正吾
分類
P18 .113-Z (B24D) / P18 .121-Z (B24D) / P18 .537-Z (B24D) / P18 .56 -Z (B24D) / P18 .572-Z (B24D) / P18 .575-Z (B24D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第1項第4号、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-537538「結合研磨剤及びその形成方法」拒絶査定不服審判事件〔2021年(令和3年)6月24日国際公開、WO2021/127425、令和5年2月24日国内公表、特表2023-507582〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)12月18日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2019年12月20日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする国際特許出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。 1 令和4年 6月17日 国内書面の提出 2 令和4年 8月 9日 翻訳文の提出 3 令和5年 6月 8日付け 拒絶の理由(以下「拒絶理由」という。)の通知 4 令和5年10月10日 意見書の提出 5 令和5年12月21日付け 拒絶をすべき旨の査定(以下「原査定」という。) 6 令和6年 5月 1日 拒絶査定不服審判の請求書及び手続補正書の提出 7 令和6年 8月14日 上申書の提出 第2 令和6年5月1日の手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年5月1日提出の手続補正書によりされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 請求項1に対する本件補正の内容について 本件補正は、特許法第17条の2第1項第4号に掲げる拒絶査定不服審判の請求と同時にされたものであって、その特許請求の範囲(同法第184条の6第2項)の請求項1についてする補正は、国際出願日における請求の範囲の翻訳文に記載した次の(1)の記載を(2)の記載に補正をするものである。((2)の本件補正による補正箇所に下線を付した。) (1)本件補正前の本願の国際出願日における請求の範囲の翻訳文の請求項1の記載 「【請求項1】 研磨物品であって、 結合材料内に含有される研磨粒子を含む結合研磨体を備え、 前記研磨粒子の少なくとも一部が多相アルミノシリカートを含む、 研磨物品。」 (2)本件補正後における特許請求の範囲の請求項1の記載 「【請求項1】 研磨物品であって、 結合材料内に含有される研磨粒子を含む結合研磨体を備え、 前記研磨粒子の少なくとも一部が多相アルミノシリカートを含み、前記多相アルミノシリカートが、前記多相アルミノシリカートの総質量に対して少なくとも5質量%~99質量%以下の多結晶アルミノシリカートを含む第1の相と、前記多相アルミノシリカートの総質量に対して少なくとも10質量%~90質量%以下のアモルファス相を含む第2の相と、を含む、 研磨物品。」 2 請求項1に対する本件補正の目的について 本件補正で請求項1に新たに記載された上記1(2)の「前記多相アルミノシリカートが、前記多相アルミノシリカートの総質量に対して少なくとも5質量%~99質量%以下の多結晶アルミノシリカートを含む第1の相と、前記多相アルミノシリカートの総質量に対して少なくとも10質量%~90質量%以下のアモルファス相を含む第2の相と、を含む」の事項(以下「本件補正事項」という。)は、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項である多相アルミノシリカートの内容を限定するものである。 さらに、本件補正において、補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載されている発明の産業上の利用分野は共に研磨物品(本願明細書の段落0001)であり、解決しようとする課題は共に改善された研磨物品を求められていること(本願明細書の段落0003)というもので、いずれも同一である。したがって、本件補正の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とする。 このため、本件補正後における請求項1に記載される事項により特定される発明(以下「本願補正発明1」という。)は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定により、特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないため(独立特許要件)、本願補正発明1に関し、同法第36条第6項第2号(明確性)に規定する要件、及び同法第29条第2項(進歩性)に規定する要件について、以下の2~3で検討する。 3 第36条第6項第2号(明確性)の要件について 本件補正後における請求項1に記載されている上記2の本件補正事項は、多相アルミノシリカートの第1の相の多相アルミノシリカートの総質量に対する最大成分量が99質量%、第2の相の成分の多相アルミノシリカートの総質量に対する最小成分量が10質量%であって、両者の和が100質量%を超えており、技術的に正しくない記載を含んでいる(審査基準第II部第3章第3節2.2(2)b「発明特定事項の内容に技術的な欠陥があるため、発明が不明確となる場合」に記載された例2を参照。)。 したがって、本件補正事項を含む本願補正発明1は、発明特定事項に技術的な不備がある結果、発明が不明確である。 よって、本願補正発明1は、請求項に記載されている事項により特定される発明が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、同法第17条の2第6項において前項第2号の場合に準用する同法第126条第7項の規定に違反しているものと認められる。 4 特許法第29条第2項(進歩性)の要件について 上記3のとおり、本願補正発明1は明確ではないが、まずは上記1(2)の記載のとおりに本願補正発明1を認定するとともに、令和6年8月14日提出の上申書にて示された補正の準備を踏まえ、多相アルミノシリカートの総質量に対する多結晶アルミノシリカートを含む第1の相の質量割合が「5質量%~90質量%以下」であると認定した場合の判断を、下記(4)イにて併せて示す。 (1)引用文献1について ア 書誌事項 特表2004-510675号公報(平成16年(2004年)4月8日国内公表) イ 引用文献1の記載事項(下線は当審で付した。) (ア)明細書 【0002】 発明の分野 本発明は、セラミック凝集粒子に関する。実施態様の1つでは、本発明は、セラミックバインダーと複数の砥粒とを含む研磨セラミック凝集粒子に関する。 ・・・ 【0006】 発明の要約 本発明は、セラミック凝集粒子、およびそのような粒子の提供方法を提供する。実施態様の1つでは、本発明は、研磨セラミック凝集粒子を提供する。 【0007】 実施態様の1つでは、本発明は、複数のセラミック凝集粒子を提供し、これらの粒子はセラミック接合材料によって互いに接合された複数の固体粒子を含み、これらの複数の固体粒子は約0.5ミクロン~約1500ミクロンの範囲内の平均粒度を有し、セラミック接合材料と複数の固体粒子は分離した相であり、過半量の前記複数のセラミック凝集粒子は実質的に均一な断面形状を有する。「過半量」とは、少なくとも50%、好ましくは約90%の粒子が実質的に均一な断面形状を有することを意味する。 ・・・ 【0010】 本発明のセラミック凝集粒子、例えば、研磨材、屋根用粒剤、ろ過製品、硬質コーティング、ショットブラスト媒体、混転媒体、ブレーキライニング、スリップ防止および耐摩耗性コーティング、人工骨、歯科用組成物、再帰反射シーティング、および積層複合構造体などの製品に使用できる。本明細書で使用される場合、用語「セラミック」は、結晶質相、非結晶質相(例えばガラス)、または結晶質相と非結晶質相の両方の組み合わせ(例えば、磁気、ガラスセラミックス)を含みうる無機で非金属の材料を意味する。 【0011】 別の態様では、本発明は、表面の研磨方法を提供し、その方法は、本発明による研磨セラミック凝集体を工作物表面と接触させて、その表面の少なくとも一部を研磨するために凝集体または表面を互いに対して移動させることを含む。 【0012】 さらなる態様では、本発明は、被覆研磨用途および接合研磨用途の両方で優れた研削性能(例えば、長寿命、高切削速度、均一な切削速度、均一な表面仕上など)を有する研磨凝集体を提供する。さらに、本発明のセラミック凝集体の本発明の製造方法は、在庫、資本設備の場所、資本設備の費用、およびその他の関連する製造コストを最小限にする。本発明は、比較的狭い場所しか必要としない方法を提供し、そのため資本経費および運転費が比較的少ない。 【0013】 説明 セラミックバインダー材料 セラミックバインダー材料としては、結晶質および/または非結晶質セラミック材料が挙げられる。・・・ ・・・ 【0015】 結晶質および非結晶質が組み合わされたセラミックバインダー材料である有用なセラミックバインダー材料としては、リチウムアルミノケイ酸塩ガラスセラミック、マグネシウムアルミノケイ酸塩ガラスセラミック、フルオロマイカケイ酸塩ガラスセラミック、磁器、陶器、石器、およびこれらの材料の組み合わせが挙げられる。 【0016】 固体粒子 好ましくは、複数の固体粒子の少なくとも一部は、砥粒、充填剤、研削助剤、繊維、電子活性粒子、顔料、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。通常、複数の固体粒子は、加熱中に粒子が分解しないように選択される。・・・ ・・・ 【0029】 製造方法 本発明のセラミック凝集粒子の製造方法の実施態様の1つは、硬化性バインダー前駆材料、セラミックバインダー前駆材料、および複数の固体粒子を含む組成物をセラミック凝集前駆体粒子に成形することを含む。・・・このような粒子の成形方法の1つは、穿孔基材の少なくとも1つのオリフィスに組成物を通し、穿孔基材からセラミック凝集前駆体粒子を分離し、セラミック凝集前駆体粒子を少なくとも部分的に硬化させることを含む。 ・・・ 【0043】 セラミックバインダー前駆材料 セラミックバインダー前駆体は、結晶質および/または非結晶質セラミック材料を含む。通常、セラミックバインダー前駆材料は、ガラス粉末、フリット、クレー、融剤鉱物(fluxing mineral)、シリカゾル、焼結性セラミック粉末、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される。加熱後、セラミックバインダー前駆材料はセラミックバインダーを形成する。通常、本発明の方法を使用すると、セラミックバインダーは砥粒などの固体粒子を互いに接合させて、セラミック凝集粒子を形成する。 ・・・ 【0090】 本発明の方法により製造されるセラミック凝集粒子は、例えば、研磨材、屋根用粒剤、ろ過製品、硬質コーティング、ショットブラスト媒体、混転媒体、ブレーキライニング、スリップ防止および耐摩耗性コーティング、人工骨、歯科用組成物、再帰反射シーティング、および積層複合構造体などに使用可能である。実施態様の1つでは、本発明による方法は、硬化セラミック凝集粒子の少なくとも一部を研磨物品バインダー材料および研磨材料と組み合わせて研磨物品を得ることを含む。好適な研磨物品としては、被覆研磨物品(不織研磨物品を含む)および接合研磨物品が挙げられる。 【0091】 本発明による研磨セラミック凝集体は、被覆研磨製品、接合研磨製品(ビトリファイド、レジノイド、および金属接合研削砥石、カットオフホイール、マウンテッドポイント、およびホーニング砥石など)、不織研磨製品、および研磨ブラシなどの従来の研磨製品に使用することができる。通常、研磨製品(すなわち、研磨物品)は、バインダーと、バインダーによって研磨製品内に固定される研磨粒子(本発明が実施される場合は本発明による研磨凝集体を含む)とを含む。このような研磨製品の製造方法および研磨製品の使用方法は、当業者には公知である。さらに、本発明による研磨凝集体は、研磨用コンパウンド(例えば、つや出しコンパウンド)のスラリー、粉砕媒体、ショットブラスト媒体、振動ミル媒体などを利用する研磨用途に使用することができる。 ・・・ 【0094】 通常、接合研磨製品は、有機、金属、またはガラス状のバインダーで互いに保持される研磨粒子(本発明が実施される場合は研磨セラミック凝集体を含む)の成形塊状体を有する。このような成形塊状体は、例えば、研削砥石やカットオフホイールなどのホイールの形態であってよい。一般に、研削砥石の直径は約1cm~1m超であり、カットオフホイールの直径は約1cm~80cm超(より一般的には3cm~約50cm)である。カットオフホイールの厚さは一般に約0.5mm~約5cmであり、より一般的には約0.5mm~約2cmである。成形塊状体は、例えば、ホーニング砥石、セグメント、マウンテッドポイント、ディスク(例えば二重ディスクグラインダー)、または他の従来の接合研磨材の形状であってもよい。通常、接合研磨製品は、接合研磨製品の全体積を基準にして、約3~50体積%の接合材料、約30~90体積%の研磨材料、最大50体積%の添加剤(研削助剤を含む)、および最大70体積%の孔隙を有する。通常、研削砥石の多孔度は少なくとも10%、20%であり、ばあいによってはより大きな値となる。 【0095】 代表的な接合研磨材は研削砥石である。図7を参照すると、本発明による研磨セラミック凝集体111を有し、ホイールに成形され、ハブ112に取り付けられた研削砥石110が示されている。本発明による研磨凝集体の実施態様の利点は、研削砥石などの接合研磨材を使用すると、金属除去中にチップクリアランスのための空間が形成されうることである。すなわち、本発明による研磨凝集体のある実施態様で存在する孔隙によって、金属除去中にチップクリアランスのための空間が形成されうる。」 (イ)図面 「【図7】 [図:0001431670000001.jpg] 」 ウ 引用文献1の記載事項の整理 (ア)段落0095、図7には、ホイールに成形され、ハブ112に取り付けられた研削砥石110が示されており、この研削砥石110は、研磨セラミック凝集体111を有している。 (イ)段落0090~0091、0094~0095、図7の記載からみて、引用文献1に記載された方法は、硬化セラミック凝集粒子の少なくとも一部を研磨物品バインダー材料および研磨材料と組み合わせて研磨物品(研磨製品)を得ることを含んでおり、研削砥石110は代表的な接合研磨材の研磨製品であって、上記研磨物品バインダー材料としての有機、金属、またはガラス状のバインダーと、このバインダーによって接合研磨材の研磨製品内に固定される研磨粒子を含み、この研磨粒子は研磨セラミック凝集体111を含むことが理解される。 したがって、研削砥石110は、有機、金属、またはガラス状のバインダーよって固定される研磨セラミック凝集体111を有する接合研磨材を備えるものであることが把握される。 (ウ)段落0043の記載からみて、研磨セラミック凝集体111としてのセラミック凝集粒子は、セラミックバインダーが砥粒などの固体粒子を互いに接合させて形成されるものであり、段落0015には、このセラミックバインダーとして、結晶質および非結晶質が組み合わされたセラミックバインダー材料であるリチウムアルミノケイ酸塩ガラスセラミック、マグネシウムアルミノケイ酸塩ガラスセラミックのアルミノケイ酸塩ガラスセラミックが挙げられることが記載されている。 したがって、研磨セラミック凝集体111はアルミノケイ酸塩ガラスセラミックを含み、このアルミノケイ酸塩ガラスセラミックは、結晶質アルミノケイ酸塩ガラスセラミックと、非結晶質アルミノケイ酸塩ガラスセラミックを含むことが理解できる。 エ 引用文献1に記載された発明 上記イ~ウより、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「 研削砥石110であって、 有機、金属、またはガラス状のバインダーによって固定される研磨セラミック凝集体111を有する接合研磨材を備え、 前記研磨セラミック凝集体111がアルミノケイ酸塩ガラスセラミックを含み、前記アルミノケイ酸塩ガラスセラミックが、結晶質アルミノケイ酸塩ガラスセラミックと、非結晶質アルミノケイ酸塩ガラスセラミックと、を含む、 研削砥石110。」 (2)本願補正発明1と引用発明1との対比 本願補正発明1は、上記1(2)に記載した事項により特定されるとおりのものであって、引用発明1を対比すると、以下のことがいえる。 ア 引用発明1の「研削砥石110」は本願補正発明1の「研磨物品」に相当する。 イ 引用発明1の「有機、金属、またはガラス状のバインダー」は本願補正発明1の「結合材料」に相当し、以下同様に、「固定される」は「含有される」に、「有する」は「含む」に相当する。そして(1)ウ(イ)の内容、並びに、本願明細書の段落0020の「少なくとも1つの態様では、多相アルミノシリカートを含む研磨粒子の一部は、多相アルミノシリカートを含む凝集体・・・であり得る。」との記載、及び、段落0074の「多相アルミノシリカートを含む研磨粒子の一部が、多相アルミノシリカートを含む研磨凝集体を含む」との記載からみて、引用発明1の「研磨セラミック凝集体111」は本願補正発明1の「研磨粒子」に相当し、また、引用発明1の「接合研磨材」は本願補正発明1の「結合研磨体」に相当する。 ウ 引用発明1の「アルミノケイ酸塩ガラスセラミック」は、(1)ウ(ウ)のとおり、結晶質および非結晶質が組み合わされたものであって、ガラス相と結晶相が共存する多相構造を有するものであるから、本願補正発明1の「多相アルミノシリカート」に相当する。 そして、引用発明1の「結晶質アルミノケイ酸塩ガラスセラミック」は本願補正発明1の「多結晶アルミノシリカート」に相当し、同様に「非結晶質アルミノケイ酸塩ガラスセラミック」は「アモルファス相」に相当する。 ここで、引用発明1の「結晶質アルミノケイ酸塩ガラスセラミック」と「非結晶質アルミノケイ酸塩ガラスセラミック」は、アルミノケイ酸塩ガラスセラミックの異なる相であり、アルミノケイ酸塩ガラスセラミックのそれぞれ「第1の相」と「第2の相」に含まれるといえる。 したがって、引用発明1の「前記アルミノケイ酸塩ガラスセラミックが、結晶質アルミノケイ酸塩ガラスセラミックと、非結晶質アルミノケイ酸塩ガラスセラミックと、を含む」と、本願補正発明1の「前記多相アルミノシリカートが、前記多相アルミノシリカートの総質量に対して少なくとも5質量%~99質量%以下(又は90質量%以下)の多結晶アルミノシリカートを含む第1の相と、前記多相アルミノシリカートの総質量に対して少なくとも10質量%~90質量%以下のアモルファス相を含む第2の相と、を含む」とを対比すると、両者は、「前記多相アルミノシリカートが、多結晶アルミノシリカートを含む第1の相と、アモルファス相を含む第2の相と、を含む」という点に限り一致する。 (3)本願補正発明1と引用発明1の一致点及び相違点 上記(1)~(2)より、本願補正発明1と引用発明1は、次のアの点で一致し、イの点で相違する。 ア 一致点 研磨物品であって、 結合材料内に含有される研磨粒子を含む結合研磨体を備え、 前記研磨粒子の少なくとも一部が多相アルミノシリカートを含み、前記多相アルミノシリカートが、多結晶アルミノシリカートを含む第1の相と、アモルファス相を含む第2の相と、を含む、 研磨物品。 イ 相違点 多相アルミノシリカートの多結晶アルミノシリカートを含む第1の相と、アモルファス相を含む第2の相に関し、本願補正発明1が、第1の相が多相アルミノシリカートの総質量に対して少なくとも5質量%~99質量%以下(又は90質量%以下)、第2の相が多相アルミノシリカートの総質量に対して少なくとも10質量%~90質量%以下であるのに対して、引用発明1の第1の相と第2の相のアルミノシリカートの総質量に対する質量の比率は不明である点。 (4)相違点の検討 ア 相違点の数値限定について 上記(3)イの相違点は、本願補正発明1における本件補正事項の数値限定を用いて発明を特定しようとする発明特定事項に対応しており、引用発明1との相違点がその数値限定のみにあり、実験的に数値範囲を最適化又は好適化することは、通常、当業者の通常の創作能力の発揮といえるから、通常、本願補正発明1は進歩性を有していないといえる。(審査基準第III 部第2章第4節6「数値限定を用いて発明を特定しようとする記載がある場合」を参照。) そして、本願補正発明1における、上記相違点に係る数値範囲は、多相アルミノシリカートの総質量に対する、第1の相及び第2の相のそれぞれの質量割合を特定するものであるものの、それぞれの数値範囲は、5質量%~99質量%(又は90質量%)及び10質量%~90質量%であって、現実的に設定可能な数値範囲である0質量%~100質量%のうち、大部分の数値範囲を網羅するものであるから、当該数値範囲は、実質的に、本願補正発明1が「第1の相と第2の相とをともに有する」ことを単に特定する程度のものと解釈せざるを得ない。また、当該数値範囲の上限値又は下限値につき、それらの境界値において特性等が大きく変化するかの臨界的意義の存否に関して検討すると、本願明細書の段落0078~0082の実施形態14~18に関する記載や他の箇所の記載、あるいは技術常識を参酌しても、各境界値に技術的意義を認めることができない。 対して、引用発明1は、上記(1)ウ(ウ)で整理したように、結晶質および非結晶質が組み合わされた、「結晶質アルミノケイ酸塩ガラスセラミック」と「非結晶質アルミノケイ酸塩ガラスセラミック」という、2つの異なる相を含むものであって、「組み合わされた」との記載からみても、それぞれの相が、アルミノケイ酸塩ガラスセラミックの総質量に対し、ごく少量(10%以下)又は大部分(90%以上)に偏って含有されるというよりは、両者が適当な割合で含有されていると解するのが相当であるといえるから、上記相違点は、実質的な相違点であるとまではいえないし、あるいは、引用発明1において、この両者が含有される適当な割合を、上記の大部分の数値範囲を網羅する範囲から選択して本願補正発明1とすることは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。 したがって、本願補正発明1は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件補正事項を請求人提示の補正案で読み替えた本願補正発明1と引用発明1の相違点について なお、本願補正発明1は、上記2で検討したとおり、本件補正事項において、第1の相の多相アルミノシリカートの総質量に対する最大成分量が99質量%、第2の相の成分の多相アルミノシリカートの総質量に対する最小成分量が10質量%であって、両者の和が100質量%を超えている点で明確でない。 この数値範囲について、本件補正事項を、請求人が令和6年8月14日に提出した上申書(以下、単に「上申書」という。)で提示した補正案のとおりに「前記多相アルミノシリカートが、前記多相アルミノシリカートの総質量に対して少なくとも5質量%~90質量%以下の多結晶アルミノシリカートを含む第1の相と、前記多相アルミノシリカートの総質量に対して少なくとも10質量%~90質量%以下のアモルファス相を含む第2の相と、を含む」(補正箇所に下線を付与。)と置き換えて、本願補正発明1を認定したとしても、この補正案の数値範囲は、上記本件補正事項の第1の相の数値範囲の上限値を99%から90%に変更し、明確でない部分を除いたものにすぎず、上記アで検討したのと同様に、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして、請求人は上申書において、上記の補正案の数値範囲に関し、本件補正事項を置き換えた場合の本願補正発明1の進歩性について、特段の主張はしておらず、他に当該数値範囲が進歩性を有すると判断できる根拠も存在しない。 (5)請求人の主張について 次に、請求人の令和5年10月10日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)、及び審判請求書の請求の理由(以下、単に「請求の理由」という。)における主張について検討する。 ア 請求人の意見書における主張 請求人の意見書における主張は次のとおりである。 「バインダーと研磨粒子とは異なる機能を有するものであり、バインダーは研磨粒子ではありません。さらに、たとえ、引用文献1のバインダー前駆体材料が多相アルミノシリカートを含んでいたとしましても、バインダー前駆体材料を結合することによって形成された凝集体(バインダー)は粒子ではありません。そのため、引用文献1の「多相アルミノシリカートを含むセラミックバインダー」は、請求項1に係る発明の「多相アルミノシリカートを含む研磨粒子」に相当しませんから、引用文献1は、請求項1に係る発明を開示していません。 さらに、引用文献1に記載された発明において、「多相アルミノシリカートを含むセラミックバインダー」を研磨粒子として採用する動機はありません。そのため、当業者は、引用文献1に基づいて、請求項1に係る発明に到達し得ません。」 イ 請求人の請求の理由における主張 請求人の請求の理由における主張は次のとおりである。 (ア)「原査定において、引用文献1の「セラミックバインダー」が本件発明の「多相アルミノシリカートを含む研磨粒子の第1の群」に相当するとされています。 しかしながら、本件発明の多相アルミノシリカートを含む研磨粒子の第1の群に相当するとされている、引用文献1の多相アルミノシリカートはバインダシステムであり、研磨粒子ではありません。さらに、引用文献1に記載された発明において、「多相アルミノシリカートを含むセラミックバインダー」を研磨粒子として採用する動機はありません。そのため、当業者は、引用文献1に基づいて、請求項1に係る発明に到達し得ません。」 (イ)「さらに、引用文献1は、どこにも、結合材料内に含有される研磨粒子が、多相アルミノシリカートの総質量に対して少なくとも5質量%~99質量%以下の多結晶アルミノシリカートを含む第1の相と、多相アルミノシリカートの総質量に対して少なくとも10質量%~90質量%以下のアモルファス相を含む第2の相と、を含む多相アルミノシリカートを含むことを記載していません。」 (6)請求人の主張の検討 ア 上記(5)ア及び(5)イ(ア)の主張について 請求人は、上記(5)ア及び(5)イ(ア)において、(a)引用発明1における研磨セラミック凝集体111が含むアルミノケイ酸塩ガラスセラミック、すなわちセラミックバインダーが、本願補正発明1の多相アルミノシリカートを含む研磨粒子に相当しない旨の主張、及び(b)引用文献1に記載された発明において、多相アルミノシリカートを含むセラミックバインダーを研磨粒子として採用する動機がない旨の主張をしていると解される。 (ア)上記(a)の主張について これに対して、引用文献1においては、段落0043の記載からみて、セラミックバインダーは砥粒などの固体粒子を互いに接合させて、セラミック凝集粒子を形成するものであり、段落0094~0095の記載、図7の図示内容からみて、このセラミック凝集粒子(研修セラミック凝集体111)は研磨粒子に含まれ、有機、金属、またはガラス状のバインダーで互いに保持されて成形塊状体である接合研磨材(研削砥石110)に成形されるものである。 すなわち、ここでは、セラミックバインダーが砥粒などの固体粒子を互いに接合させて、セラミック凝集粒子(研磨セラミック凝集体111)を形成し、このセラミック凝集粒子(研磨セラミック凝集体111)が、有機、金属、またはガラス状のバインダーで互いに保持されて成形塊状体である接合研磨材(研削砥石110)に成形されるものである。 そうすると、セラミックバインダーは、接合研磨材(研削砥石110)を成形するための凝集粒子(研磨セラミック凝集体111)を互いに保持する「有機、金属、またはガラス状のバインダー」とは異なり、砥粒などの固体粒子を互いに接合させて、研磨粒子としてのセラミック凝集粒子(研磨セラミック凝集体111)を形成することで研磨粒子の一部となっており、研磨粒子が「含む」ものであることが把握される。 そして、段落0015には、このセラミックバインダーの材料としてアルミノケイ酸塩ガラスセラミック(多相アルミノシリカート)が挙げられている。 また、本願補正発明1の「研磨粒子」は、以下のとおり、凝集体を含むと解するのが相当である。すなわち、本件補正後の請求項4に係る発明は、請求項1の記載を引用するものであって、本願補正発明1をさらに限定する発明であるといえるところ、請求項4には「研磨粒子の一部」が「凝集研磨粒子」を含むことが特定される。また、上記(2)イに示したように、発明の詳細な説明においても、研磨粒子の一部が凝集体であり得ることを説明している。 以上のとおり、引用発明1の「前記研磨セラミック凝集体111がアルミノケイ酸塩ガラスセラミックを含み」の技術的事項は、本願補正発明1の「研磨粒子の少なくとも一部が多相アルミノシリカートを含み」の発明特定事項に対応するのであるから、セラミックバインダーが、本願補正発明1の多相アルミノシリカートを含む研磨粒子に相当しない旨の上記(a)の主張は採用することができない。 (イ)上記(b)の主張について 上記(b)の引用文献1に記載された発明において、多相アルミノシリカートを含むセラミックバインダーを研磨粒子として採用する動機がない旨の主張は、上記(ア)で検討したとおり、引用文献1において、セラミックバインダーは研磨粒子としてのセラミック凝集粒子の一部であって、セラミック凝集粒子に含まれることが記載されているから、当該主張は引用文献1の記載と整合していない。 また、仮に、この主張が、本願補正発明1において、多相アルミノシリカートを含むセラミックバインダーを、砥粒のような研磨機能を備えた粒子として採用する動機がないことを意味するのであれば、請求項1には研磨粒子の少なくとも一部が多相アルミノシリカートを含むことしか記載されていないのであるから、請求項の記載に基づかない主張といわざるを得ない。 したがって、上記(b)の請求人の主張は採用することができない。 イ 上記(5)イ(イ)の主張について 請求人の上記(5)イ(イ)の主張は、(c)引用文献1において「研磨粒子」が多相アルミノシリカートを含んでいないこと、及び(d)引用文献1に多相アルミノシリカートの総質量に対する第1の相と第2の相の質量比に関する技術的事項が記載されていないこと、を内容とするものであると解される。 (ア)上記(c)の主張について (c)の主張の「研磨粒子」に関しては、多相アルミノシリカートを材料とするセラミックバインダーが研磨粒子としての研磨セラミック凝集体111に含まれ、セラミックバインダーが研磨粒子でない旨の主張が当を得ていないことは、既に上記ア(ア)で示したとおりである。 (イ)上記(d)の主張について (d)の主張のとおり、多相アルミノシリカートの総質量に対する第1の相と第2の相の質量比に関する技術的事項は、引用文献1には記載されていないものの、上記(3)イにおいて本願補正発明1と引用発明1の相違点として認定し、上記(4)で検討したとおり、本願補正発明1が引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求人の主張も、単に当該質量比に関する事項が、引用文献1に記載されていないことを指摘するにとどまるから、(d)の主張により本願補正発明1に対する引用発明1に基づく容易想到性が否定されることはない。 (7)特許法第29条第2項(進歩性)の理由についてのまとめ よって、本願補正発明1は、請求人が上申書で提示した補正案を含めて検討しても、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、同法第17条の2第6項において前項第2号の場合に準用する同法第126条第7項の規定に違反しているものと認められる。 5 小括 以上のとおり、拒絶査定不服審判の請求と同時にされた本件補正(特許法第17条の2第1項第4号)は、同条第5項第2号に掲げる事項を目的とするものであるものの、上記3で検討した特許法第36条第6項第2号(明確性)の要件、及び上記4で検討した同法第29条第2項の要件のいずれによっても、同法第17条の2第6項にて準用する同法第126条第7項に規定される要件を満たさず、同法第17条の2第6項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において、読み替えて拒絶査定不服審判に準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明1 本件補正は、第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~15に係る発明は、国際特許出願である本願の国際出願日における請求の範囲の翻訳文の請求項1~15に記載した事項により特定されるとおりのものであって、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、上記第2の[理由]1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定の拒絶理由 本願発明1に対する原査定の拒絶理由は、概略、次の(1)~(2)のとおりであり、当該拒絶理由において引用した文献は、次の(3)のとおりである。 (1)理由A(新規性) (新規性)本願発明1は、本願の出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記(3)の刊行物(引用文献1)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (2)理由B(進歩性) (進歩性)本願発明1は、本願の出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記(3)の刊行物(引用文献1)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (3)引用文献 本願発明1に対し、上記理由A及び理由Bで引用された引用文献1は、特表2004-510675号公報であって、その内容は第2の[理由]4(1)ア~ウのとおりであり、引用文献1に記載された引用発明1も同エに示したとおりである。 3 理由の検討 本願発明1は、第2の[理由]4で進歩性に係る独立特許要件を検討した本願補正発明1から本件補正事項を省いたものであり、第2の[理由]4(3)イの本願補正発明1と引用発明1の相違点が、本件補正事項に対応している。 そうすると、本願発明1の発明特定事項は、本願補正発明1に全て含まれる一方で、本願補正発明1と引用発明1との相違点である本件補正事項を、本願補正発明1の発明特定事項から省いたものであるため、本願発明1は引用発明1と差異がなく、同一である。 したがって、本願発明1は引用文献1に記載された発明であるから、本願発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当する。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第1項第3号(原査定の理由A(新規性))に該当し、特許を受けることができないから、他の理由、及び他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をされるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-007413

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