特許拒絶査定不服審判
2022-012138
凝集体を有する被覆研磨剤
- 審判番号
- 2022-012138
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-536169
- 請求日
- 2022年08月04日
- 審決日
- 2023年10月03日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サンーゴバン アブレイシブズ,インコーポレイティド
- 【請求人代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 【請求人】サン-ゴバン アブラジフ
- 【請求人代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 大山 健
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P18 .121-WZ (B24D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-536169「凝集体を有する被覆研磨剤」拒絶査定不服審判事件〔令和1年7月4日国際公開、WO2019/133502、令和 3年 3月11日国内公表、特表2021-508609〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件審判に係る出願は、2018年12月21日(パリ条約に基づく優先権主張 外国庁受理 2017年12月27日 米国)を国際出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和3年 8月18日付け:拒絶理由の通知
令和3年11月26日 :意見書・手続補正書の提出
令和4年 3月31日付け:拒絶査定
令和4年 6月28~30日:電話等による応対
令和4年 8月 4日 :拒絶査定不服審判の請求
拒絶査定不服審判の請求と同時:手続補正書の提出
令和4年11月29日 :上申書の提出
令和5年 5月 9日付け:当審による拒絶理由の通知
令和5年 8月15日 :意見書・手続補正書の提出
第2 本件発明
本件の請求項1~19に係る発明は、令和5年8月15日に提出の手続補正書により補正(以下、当該補正を「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定されるとおりのものであって、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
被覆研磨物品であって、
バッキング基材と、
前記バッキング基材上に配置されたポリマー性メイクコートバインダ組成物と、
前記メイクコートバインダ組成物の上又は中に配置された複数の研磨粒子と、
前記メイクコートバインダ組成物の上方に配置されたポリマー性サイズコート組成物と、
ポリマー性バインダ組成物と粉砕助剤組成物との混合物を含む複数の粉砕助剤凝集体と、
を含み、
前記粉砕助剤凝集体は、前記メイクコートバインダ組成物上又は中に、前記サイズコート組成物上又は中に、又はそれらの組合せで配置され、
前記複数の粉砕助剤凝集体が、平均粒子高さ(HGAA)を有するように配置され、前記複数の研磨粒子が、平均粒子高さ(HABR)を有するように配置され、HGAA/HABRの比が、0.5~10の範囲にわたり、前記平均粒子高さは、前記バッキング基材から前記粒子の垂直方向における上端までの垂直に測定された距離であり、前記研磨粒子の形状は棒状、三角形、角錐、又は円錐を含む、被覆研磨物品。」(下線は、本件補正の際に請求人が付したものである。)
第3 当審拒絶理由
当審が、令和5年5月9日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、本件補正前の請求項1に係る発明(以下「補正前発明」という。)に対する、進歩性欠如の理由(理由2)の概要は、以下のとおりである。
補正前発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:実願平3-81620号(実開平4-89660号)のマイクロフィルム
第4 引用文献1に記載された事項及び発明
1 引用文献1に記載された事項
(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は被覆研削材料に関し、さらに詳しくは浸蝕性凝集体(erodable agglomerates)を有する被覆研削製品に関する。
・・・
【0016】
本考案により作製される被覆研削材料の一実施態様を図1に示す。図1に示すように、被覆研削製品10は裏材料12を有する。裏材料12上にメイク被覆14が積層され、これに浸蝕性凝集体16および個々の補助研削粒子18が接着される。サイズ被覆20はメイク被覆14、浸蝕性凝集体16、および個々の補助研削粒子18上に設けられる。浸蝕性凝集体16はバインダーバインダー22および無機微粒子材料24を含有する。
【0017】
本考案により作製される被覆研削材料の他の実施態様を図2に示す。図2に示すように、被覆研削製品30は裏材料32を有する。裏材料32の上にメイク被覆34が積層されており、これには浸蝕性凝集体36および個々の補助研削粒子38が接着される。メイク被覆34、浸蝕性凝集体36および個々の補助研削粒子38の上にサイズ被覆40が設けられている。浸蝕性凝集体36は樹脂バインダー42と無機粉体材料44を含有する。
【0018】
本考案により作製される被覆研削材料の他の実施態様を図3に示す。図3に示すように、被覆研削製品50は裏材料52を有する。裏材料52の上にメイク被覆54が積層されており、これには浸蝕性凝集体56および個々の補助研削粒子58が接着される。メイク被覆54、浸蝕性凝集体56および個々の補助研削粒子58の上にサイズ被覆60が設けられている。浸蝕性凝集体56は樹脂バインダー62と無機微粒子材料64を含有する。
【0019】
図1の実施態様と図2の実施態様との違いは浸蝕性凝集体の特性である。図1においては、浸蝕性凝集体16はバインダーバインダー22および無機微粒子材料24を含有する。図2では、浸蝕性凝集体36はバインダーバインダー42と無機粉体材料44を含有する。
【0020】
図3の実施態様と図1および図2の実施態様との差は個々の補助研削粒子の配置である。図3では、すべての個々の補助研削粒子がメイク被覆に接着されている。図1および図2では、個々の補助研削粒子の一部が浸蝕性凝集体上にあり、それらは浸蝕性凝集体間に隣接して設けられていない。
・・・
【0023】
・・・本考案の被覆研削材料に好ましい浸蝕性凝集体は、好ましくは、フェノール樹脂からなるバインダー、およびナトリウム氷晶石またはアンモニウム氷晶石のような無機フィラーを含有する。・・・
【0024】
浸蝕性凝集体のバインダーバインダーに適する材料には、フェノール樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂およびにかわが包含される。にかわは樹脂ではないけれども、浸蝕性凝集体のバインダーバインダーとして用いるのに適する。浸蝕性バインダーに好ましい樹脂はフェノール樹脂である。
浸蝕性凝集体に適するフィラー材料には、無機粉体材料、無機微粒子材料またはこれらの両方が包含される。
【0025】
浸蝕性凝集体に適する無機粉体フィラー材料には、例えば、ナトリウム氷晶石、カリウム氷晶石、アンモニウム氷晶石のような氷晶石、例えば、カリウムテトラフルオロボレート(KBF4)、ナトリウムテトラフルオロボレート(NaBF4)およびアンモニウムテトラフルオロボレートのようなフルオロボレート、例えば、ナトリウムヘキサフルオロシリケート(Na3SiF6)およびカリウムヘキサフルオロシリケート(K3SiF6)のようなシリコンフルオリド、例えば、カルシウムカルボネート(CaCO3)のようなカルボネート、例えば、ナトリウムスルフェート(Na2SO4)のようなスルフェート、例えば、アルミニウムヒドロキシドモノヒドレート(Al(OH)3・H2O)およびアルミニウムヒドロキシドトリヒドレート(Al(OH)3・3H2O)のようなヒドロキシド、例えば、ガラスビーズのようなシリカ、および例えば、タルクのようなシリケートなどのような従来のフィラー材料が包含される。
【0026】
浸蝕性凝集体に適する無機微粒子フィラー材料には、例えば、コランダム、セラミック酸化アルミニウム、シリコンカーバイド、シリコンニトライド被覆シリコンカーバイド(SNAG)、アルミニウムジルコニア、ダイヤモンド、立方体ホウ素ニトライド、ホウ素カーバイド、タングステンカーバイド、フリント、クォーツ(SiO2)、エメリー、ざくろ石などのような研削用ミネラルが包含される。
浸蝕性凝集体に適する無機微粒子フィラー材料には、例えば、大理石(CaCO3)、せっこう(CaSO4)およびひる石が含まれる。
・・・
【0028】
浸蝕性凝集体中のフィラー材料の寸法はそれらの物理的形態に依存する。無機粉体フィラー材料の寸法は0.5~200μm、好ましくは10~50μmの範囲である。浸蝕性凝集体中の個々の研削粒子の寸法は浸蝕性凝集体中に複数個の個々の粒子が提供されるために十分に微小でなければならない。無機微粒子フィラー材料の寸法は50~700μm、好ましくは170~650μmの範囲である。これらの範囲はグレード240およびコーサー(coarser)のスクリーン寸法に対応する。粉体フィラー材料の寸法は、典型的には、コールター(Coulter)カウンターのようなアパーチュア技術により典型的に測定された直径に基づく。微粒子フィラー材料の寸法はスクリーン寸法に基づく。
【0029】
浸蝕性凝集体中のフィラー材料の含有量はフィラー材料の特性に依存して変化する。微粒子材料のみの場合は、フィラーは凝集体の約5~約90重量%を占める。粉体材料のみの場合は、フィラーは凝集体の約5~約90重量%、好ましくは50~70重量%を占める。凝集体が微粒子フィラー材料と粉体フィラー材料の両方を含有する場合は、それは約5~約15重量%の粉体フィラー材料を含有することが好ましい。
【0030】
浸蝕性凝集体の寸法の範囲は個々の補助研削粒子の寸法の範囲に依存する。一般に、個々の補助研削粒子の寸法と浸蝕性凝集体の寸法との割合は約2.5:1~約0.5:1の範囲である。個々の補助研削粒子と比較して浸蝕性凝集体が小さすぎる場合は、個々の補助研削粒子に対する支持が不十分となり、性能は悪影響を被る。個々の補助研削粒子と比較して浸蝕性凝集体が大きすぎる場合は、浸蝕性凝集体が個々の補助研削粒子のワークピースへの接触を妨害する。浸蝕性凝集体の寸法は300~1,500μm、好ましくは500~1,200μmの範囲である。浸蝕性凝集体の寸法が減少するにつれて、浸蝕性能も低減し、その結果、研磨性能が低下する。
・・・
【0033】
本考案の個々の補助研削粒子18、および研削粒子38および58に適する研削粒子にはセラミック酸化アルミニウム(例えば、「キュービトロン」、ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチャリング社より市販されており、すべてここに参照として挙げる米国特許第4,314,827号、同第4,744,802号、同第4,770,671号および同第4,881,951号に記載されている)、アルミナジルコニア、シリコンニトライド被覆シリコンカーバイド(SNAG)、タングステンカーバイド、立方体ホウ素ニトライド、ホウ素カーバイドおよびダイヤモンドが包含される。SNAGはここに参照として挙げる米国特許第4,505,720号にしたがって調製しうる。
・・・
【0035】
サイズ被覆の上にスーパーサイズ被覆を設けることも本考案の視野に含まれる。典型的には、スーパーサイズ被覆はバインダーおよび研磨助剤を含有する。好ましいスーパーサイズ被覆においては、バインダーはエポキシ樹脂であり、研磨助剤はカリウムフルオロボレートである。
【0036】
浸蝕性凝集体の被覆重量は、40~150粒子/4×6インチ(167~628g/m2)、好ましくは90~110粒子/4×6インチ(377~460g/m2)の範囲である。個々の補助研削粒子の被覆重量は50~250粒子/4×6インチ(209~1,047g/m2)、好ましくは90~100粒子/4×6インチ(377~419g/m2)の範囲である。浸蝕性凝集体の体積と個々の補助研削粒子の体積との割合は0.08:1~0.75:1、好ましくは0.5:~1:1の範囲である。上記被覆重量範囲はグレード24の凝集体に基づく。
【図1】
「
[図:0001407164000001.jpg]
」
【図2】
「
[図:0001407164000002.jpg]
」
【図3】
「
[図:0001407164000003.jpg]
」
(2)上記(1)から、引用文献1には以下の事項が記載されていると理解することができる。
ア 段落【0016】~【0018】の記載、及び図1~3から、メイク被覆14、34、54に複数の補助研削粒子18、38、58が接着されることから、複数の補助研削粒子18、38、58は、メイク被覆14、34、54の上又は中に配置されているといえる。
イ 段落【0016】~【0018】の記載、及び図1~3から、メイク被覆14、34、54に浸蝕性凝集体16、36、56が接着されることから、複数の浸蝕性凝集体16、36、56は、メイク被覆14、34、54上又は中、サイズ被覆20、40、60上又は中、又はそれらの組合せで配置されているといえる。
ウ 段落【0033】の記載、及び図1~3、並びに技術常識から、補助研削粒子18、38、58の形状は棒状を含むものであるといえる。
2 引用発明1
上記1(1)及び(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「被覆研削材料10、30、50であって、
裏材料12、32、52と、
前記裏材料12、32、52上に積層されたメイク被覆14、34、54と、
前記メイク被覆14、34、54の上又は中に配置された複数の補助研削粒子18、38、58と、
前記メイク被覆14、34、54の上方に設けられたサイズ被覆20、40、60と、
バインダーバインダー22又は樹脂バインダー42、62と無機微粒子材料24、64、無機粉体材料44又は両方が含有される無機フィラー材料24、44、64との混合物を含む複数の浸蝕性凝集体16、36、56と、
を含み、
前記浸蝕性凝集体16、36、56は、前記メイク被覆14、34、54上又は中、前記サイズ被覆20、40、60上又は中、又はそれらの組合せで配置され、
前記補助研削粒子18、38、58の形状は棒状を含む、被覆研削材料10、30、50。」
第5 本件発明と引用発明1との対比
1 本件発明と引用発明1との相当関係
本件発明と、引用発明1とを対比すると、以下の関係にある。
(1)引用発明1における「被覆研削材料10、30、50」は、その機能及び構造からみて、本件発明における「被覆研磨物品」に相当し、以下同様に、「裏材料12、32、52」は「バッキング基材」に、「積層された」は「配置された」に、「メイク被覆14、34、54」は「ポリマー性メイクコートバインダ組成物」に、「補助研削粒子18、38、58」は「研磨粒子」に、「設けられた」は「配置された」に、「サイズ被覆20、40、60」は「ポリマー性サイズコート組成物」に、「バインダーバインダー22又は樹脂バインダー42、62」は「ポリマー性バインダ組成物」に、「無機微粒子材料24、64、無機粉体材料44又は両方が含有される無機フィラー材料24、44、64」は「粉砕助剤組成物」に、「浸蝕性凝集体16、36、56」は「粉砕助剤凝集体」に、それぞれ相当する。
(2)引用発明1における、「前記補助研削粒子18、38、58の形状は棒状を含む」ことは、本件発明における、「前記研磨粒子の形状は棒状、三角形、角錐、又は円錐を含む」ことに包含される。
2 本件発明と引用発明1との一致点
上記1を踏まえると、本件発明と引用発明1とは以下の<一致点>にて一致する。
<一致点>
「被覆研磨物品であって、
バッキング基材と、
前記バッキング基材上に配置されたポリマー性メイクコートバインダ組成物と、
前記メイクコートバインダ組成物の上又は中に配置された複数の研磨粒子と、
前記メイクコートバインダ組成物の上方に配置されたポリマー性サイズコート組成物と、
ポリマー性バインダ組成物と粉砕助剤組成物との混合物を含む複数の粉砕助剤凝集体と、
を含み、
前記粉砕助剤凝集体は、前記メイクコートバインダ組成物上又は中に、前記サイズコート組成物上又は中に、又はそれらの組合せで配置され、
前記研磨粒子の形状は棒状、三角形、角錐、又は円錐を含む、被覆研磨物品。」
3 本件発明と引用発明1との相違点
他方、本件発明と引用発明1とは、以下の<相違点1>で相違する。
<相違点1>
本件発明では、「前記複数の粉砕助剤凝集体が、平均粒子高さ(HGAA)を有するように配置され、前記複数の研磨粒子が、平均粒子高さ(HABR)を有するように配置され、HGAA/HABRの比が、0.5~10の範囲にわたり、前記平均粒子高さは、前記バッキング基材から前記粒子の垂直方向における上端までの垂直に測定された距離であり、」とされているのに対し、引用発明1では、浸蝕性凝集体16、36、56(粉砕助剤凝集体)及び補助研削粒子18、38、58(研磨粒子)について、それらの平均粒子高さの比が「0.5~10の範囲」にあるか不明である点。
第6 判断
1 相違点1について
(1)引用発明1において、複数の浸蝕性凝集体16、36、56(粉砕助剤凝集体)の高さ(垂直方向上端と裏材料12、32、52の表面との間の距離)の平均値と、複数の補助研削粒子18、38、58(研磨粒子)の高さ(垂直方向上端と裏材料12、32、52の表面との間の距離)の平均値との比を「0.5~10の範囲」とすることは、研削性能等の自明の技術課題を考慮して、当業者が適宜設定する設計事項の範ちゅうに過ぎない。
(2)詳述すると、引用文献1には、上記第4の1(1)の段落【0030】において、一般に、個々の補助研削粒子の寸法と浸蝕性凝集体の寸法との割合は約2.5:1~約0.5:1の範囲である、すなわち、個々の補助研削粒子の寸法と浸蝕性凝集体の寸法との比(以下「個々の粒子寸法の比」という。)が「0.4~2の範囲」であることが記載される。
そして、個々の粒子寸法の比から、個々の補助研削粒子の高さ(補助研削粒子18、38、58の垂直方向上端と裏材料12、32、52の表面との間の距離)と浸蝕性凝集体16、36、56の高さ(浸蝕性凝集体16、36、56の垂直方向上端と裏材料12、32、52の表面との間の距離)の比(以下「個々の粒子高さの比」という。)、さらには、補助研削粒子18、38、58及び浸蝕性凝集体16、36、56の平均粒子高さの比(補助研削粒子18、38、58の垂直方向上端と裏材料12、32、52の表面との間の距離の平均値と、浸蝕性凝集体16、36、56の垂直方向上端と裏材料12、32、52の表面との間の距離の平均値との比、以下「平均粒子高さの比」という。)を推算すると、以下のとおりとなる。
まず、図3の実施態様でみると、上記第4の1(1)の段落【0020】の記載からみて、すべての個々の補助研削粒子58と浸蝕性凝集体56とがメイク被覆54に接着されている。補助研削粒子58は棒状であることから、傾き等の配向状態により粒子高さは低くなる一方、浸蝕性凝集体56は補助研削粒子に比して球形に近いことから、粒子高さは補助研削粒子に比して低くならない。そのため、個々の粒子高さの比は個々の粒子寸法の比である「0.4~2の範囲」よりも、やや大きな値になるといえるところ、図3を合わせて看取すれば、「0.5~10の範囲」を逸脱するような値とはならないことは、明らかである。
そして、その個々の粒子高さの比から、平均粒子高さの比を推算すれば、当然に個々の粒子高さの比の範囲の中で収束することも、自明である。
また、図1~2の実施態様でみると、補助研削粒子18、38の一部が浸蝕性凝集体16、36上にあることから、補助研削粒子18、38の平均粒子高さが図3の実施態様に比して、必然的にやや高くなるため、補助研削粒子18、38及び浸蝕性凝集体16、36の平均粒子高さの比は、図3の実施態様よりもやや低くなるものの、図1~2を合わせて看取すれば、「0.5~10の範囲」を逸脱するような値とはならないことは、明らかである。
してみると、引用発明1においても、平均粒子高さの比を、本件発明のように「0.5~10の範囲」とすることは、当業者が容易になし得るものである。
(3)また、本願明細書における「HGAA/HABRの比」に関する記載についてみても、その段落【0047】に「特定の実施形態では、被覆研磨物品700は、少なくとも約0.5の特定の比(HGAA/HABR)を有することができる。一実施形態によれば、被覆研磨物品700は、少なくとも約0.5、例えば少なくとも約0.6、又は少なくとも約0.7、又は少なくとも約0.8、又は少なくとも約0.9、又は少なくとも約1、又は少なくとも約1.1、又は少なくとも約1.2、又は少なくとも約1.3、又は少なくとも約1.4、又は更には少なくとも約1.5のHGAA/HABRの比を有することができる。更に他の実施形態では、被覆研磨物品700は、約15以下、例えば約10以下、又は約5以下、又は約3以下、又は更には約2以下のAGAA/AABR比を有することができる。被覆研磨物品700は、上述の最小値及び最大値のいずれかの間の範囲で、AGAA/AABRの比を有することができることが理解されよう。」(当審注:「AGAA/AABR」は「HGAA/HABR」の誤記と認める。)と記載されている程度であり、「HGAA/HABR」が「0.5~10の範囲」に限定されていることによる技術的意義や臨界的意義は何ら記載されていない。
2 請求人の主張及び当該主張に対する当審の見解
(1)請求人の主張
請求人は、令和5年8月15日提出の意見書において、当審拒絶理由通知の理由2(進歩性欠如)に対して、概ね以下のとおり主張する。
引用文献1に記載された発明は、被覆研磨材料に関するものであるものの、引用文献1は、基材から測定される、研磨粒子の高さに対する粉砕助剤凝集体の高さの比が0.5から10の範囲であることを開示しておらず、代わって「個々の補助研削粒子の寸法と浸蝕性凝集体の寸法との割合は約2.5:1~約0.5:1の範囲である」を開示している(段落[0036](当審注:段落[0030]の誤記と認める。)参照)。)。これは、0.4から2.0の研磨粒子に対する凝集体のサイズ比に相当するが、本願の図7に示されるように、基材から測定される高さは、凝集体および研磨粒子の配向に依存するか、またはそれによって画定され、引用文献1に開示された粒径は、本件発明のような基材から測定した高さと同等ではない。なぜなら、凝集体および研磨粒子は、不規則または非対称な形状を有し得、特定の方法で配向されたとき、凝集体および研磨粒子のサイズとは別個の、基材から測定したときの高さを与えるからである。そのため、引用文献1は、請求項1の全ての構成を記載も示唆もしていない。
(2)請求人の主張に対する当審の見解
本件発明における、「HGAA/HABRの比」(「HGAA」は複数の粉砕助剤凝集体の平均粒子高さ、「HABR」は複数の研磨粒子の平均粒子高さ。)が、「0.5~10の範囲」にわたることについて、請求人による審判請求書4ページ、上申書2ページ等の内容を考慮して、「平均粒子高さ」(「HGAA」及び「HABR」)は、バッキング基材から粒子(粉砕助剤凝集体及び研磨粒子)の垂直方向における上端までの垂直に測定された距離であり得るとみなしても、上記1及び当審拒絶理由の理由2(3)のとおり、「HGAA/HABRの比」を「0.5~10の範囲」とすることは、当業者が適宜設定する設計事項の範ちゅうであるか、引用文献1の段落【0016】~【0018】、【0030】の記載、及び図1~3の図示に鑑みれば、引用発明の被覆研削材料全体について、「HGAA/HABRの比」を「0.5~10の範囲」とすることは当業者が容易になし得ると判断できるものであるから、引用文献1に開示された粒径は、本件発明のような基材から測定した高さと同等ではない旨を論拠とする請求人の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-012138