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特許拒絶査定不服審判

2024-007352

ドア装置

審判番号
2024-007352
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-186070
請求日
2024年04月30日
審決日
2025年04月23日
公報発行日
2025年07月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社アスタリスク
  • 【請求人代理人】浅野 哲平
  • 【請求人代理人】福屋 好泰
審判長/審判官
  • 審判長 渋谷 知子
  • 審判官 ▲高▼橋 祐介
  • 審判官 稲荷 宗良
分類
P18 .113-Z (E05B) / P18 .121-Z (E05B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-186070「ドア装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 6年 5月31日出願公開、特開2024- 74723〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯の概要 この出願は、令和4年11月21日の出願であって、その手続の経緯は概略、以下のとおりである。 令和 5年 7月 3日付け:拒絶理由通知書 同年11月 9日 :意見書、手続補正書の提出 令和 6年 1月25日付け:拒絶査定(謄本の送達:同月30日) 同年 4月30日 :審判請求書の提出 同年11月 7日付け:拒絶理由通知書 令和 7年 1月14日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年1月14日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(符号A等は分説するために当審で付した。また、それぞれの符号により分説された事項を、以下では「構成A」等という。)。 「【請求項1】 A ドアまたはドア周りの壁を構成する、磁性体を含む既設の構成体に取り付けられるドア装置であって、 B1 前記ドアの施解錠または開閉を電気的に制御する機能を有する機能部と、 C1 前記機能部を前記構成体に取り付ける取付部と、 を備え、 C2 前記取付部は、 第一磁石体と、 C3 前記第一磁石体の周りに配され、前記構成体の方向に磁束を誘導する磁性体と、 を有し、 B2 前記機能部は、前記取付部の磁性体における、前記第一磁石体が設けられている側と、前記構成体に対して反対側に配置される、 D ことを特徴とする、ドア装置。」 第3 当審における拒絶の理由の概要(令和6年11月7日付け) 当審における拒絶の理由は、以下の拒絶理由を含むものである。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 ●理由2(進歩性)について ・請求項1-2、5 ・引用文献1及び3、1及び4、2及び3、又は2及び4 ・請求項3 ・引用文献1及び4、又は2及び4 ・請求項6 ・引用文献2及び3、又は2及び4 <引用文献一覧> 1.特開2017-95977号公報 2.特開2011-94468号公報 3.特開2008-277581号公報 4.特開2004-146758号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 (1) 引用発明 ア 引用文献1に記載された事項 当審における拒絶の理由において引用された、本願の出願前である平成29年6月1日に出願公開された引用文献1(特開2017-95977号公報)には以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同じ。)。 「【0018】 <錠開閉装置10の構成> 次に、錠開閉装置10の構成について説明する。 【0019】 錠開閉装置10は、図2に示すように例えば扉41の内側(部屋側)にあるサムターン40に取り付け自在である。錠開閉装置10は、例えば磁石により扉41に着脱自在である。錠開閉装置10は、例えばサムターン40とその周囲を覆う筐体60を備えている。 【0020】 錠開閉装置10は、例えば図3に示すように筐体60内に、サムターン40を回転させるサムターン回転部70と、駆動源の動力によりサムターン回転部70を回転させる回転駆動機構71と、手動によりサムターン回転部70を回転させる手動回転部72と、電源部73と、端末20と通信するための通信部74と、制御部75等を有している。」 「【0025】 図3に示すように回転駆動機構71は、例えば遠隔操作により駆動する駆動源としてのモータ90と、サムターン回転部70の同軸上に設けられサムターン回転部70に係止可能な回転駆動部材91と、モータ90の動力を回転駆動部材91に伝達する伝達機構92を有している。」 「【0028】 電源部73は、一つ又は複数の電池を備えている。電源部73は、通信部74、制御部75及びモータ90等に電力を供給できる。」 イ 引用発明 前記アの記載事項から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。また、符号a~dは対比の便宜のため合議体が付した。 「a、c 磁石により扉41に着脱自在である錠開閉装置10であって(【0019】)、 b1、3 電源部73が駆動源としてのモータ90に電力を供給し、駆動源の動力によりサムターン回転部70を回転させることで 扉41の内側にあるサムターン40を回転させる回転駆動機構71を備える(【0019】、【0020】、【0025】、【0028】)、 d 錠開閉装置10(【0018】)。」 (2) 引用文献3に記載された技術 ア 引用文献3に記載された事項 当審における拒絶の理由において引用された、本願の出願前である平成20年11月13日に出願公開された引用文献3(特開2008-277581号公報)には、以下の記載がある。 「【0014】 吸着装置本体180aは、図1及び図2に示すように、平面視リング状のNd-Fe-B系永久磁石(以下ネオジム磁石と称する。)111と、ネオジム磁石111を収容するキャップ状のヨーク181とを備えており、ヨーク181のネオジム磁石111と反対側の面にはねじ軸部186が形成されている。また、ヨーク181とネオジム磁石111との隙間には防食部材142a、142bが設けられている。本実施形態において、ネオジム磁石111と、ネオジム磁石111に接触する防食部材142a、142bとが、耐食性磁石176を構成している。」 「【0020】 ヨーク181は、ネオジム磁石111の背面側の磁石面に吸着する円盤状のバックヨーク部183と、ネオジム磁石111の外周面と対向する円筒状の外周ヨーク部184と、ネオジム磁石111の内周面と対向する内周ヨーク部185と、バックヨーク部183のネオジム磁石111と反対側に延出されたねじ軸部186と、を一体に形成した構成である。そして、ヨーク181は、バックヨーク部183と外周ヨーク部184と内周ヨーク部185とにより形成された平面視リング状の溝部181b内に耐食性磁石176を収容している。 【0021】 上記のようにリング状のネオジム磁石111の内周及び外周にそれぞれ内周ヨーク部185、外周ヨーク部184を設けていることで、本実施形態の磁気吸着装置180は、強力な吸着力を得られるようになっている。」 「【0035】 また、ボルト188は、磁気吸着装置180を吸着対象物1001から取り外すときにも有効に機能する。 まず、本実施形態に係る磁気吸着装置180では、ネオジム磁石111の磁力を有効に利用し、極めて強力な吸着力を得られるようになっている。具体的には、ネオジム磁石として、表面積36cm2、外形70mm、内径32mm、厚さ15mmのリング状のものを用い、ヨーク181を鋼材で作製した場合において、水平方向(吸着面の法線方向;引っ張り荷重)で約170kg(4.7kg/cm2)、垂直方向(吸着面方向;剪断荷重)で約80kg(2.2kg/cm2)の吸着力が得られる。さらに、外形が100mmのネオジム磁石を用いた場合には、水平方向で約310kgもの吸着力が得られる。」 「【0049】 (磁気吸着装置の使用例) 上記構成を備えた本実施形態の磁気吸着装置は、設備機器を鋼構造物に固定する用途に好適に用いることができ、例えば、鋼矢板式岸壁の電気防食に用いられている流電陽極の設置に用いることができる。 図6(a)は、本発明に係る磁気吸着装置を備えた流電陽極の平面図であり、図6(b)は、図6(a)のD-D’線に沿う断面図である。」 「【0050】 図6に示すように、本実施形態の流電陽極100は、側面視台形状の陽極本体101と、陽極本体101の長手方向端部の側面から進出する取り付け部103と、取り付け部103のボルト穴に取り付けられた、先の実施形態に係る磁気吸着装置180とを備えている。 【0051】 陽極本体101は、亜鉛、マグネシウム、又はこれらやアルミニウムの合金からなるものとされ、典型的には、アルミニウム合金が用いられる。 取り付け部103は、鋼材を用いて作製される。取り付け部103は、図6(b)に示すように、陽極本体101の内部を長手方向に貫通する芯金であり、その両端部にはボルト穴が設けられており、かかるボルト穴に磁気吸着装置180のねじ軸部186を挿通し、ナット180bで締結することで磁気吸着装置180が取り付けられている。 【0052】 以上の構成を備えた流電陽極100は、図6に示すように、磁気吸着装置180のヨーク181の開口側の吸着面を、鋼矢板1000に向けた状態で接近させることで、鋼矢板1000に吸着固定することができる。磁気吸着装置180の構成部材はいずれも導電性を有しているため、鋼矢板1000と接触するヨーク181から取り付け部103を介して陽極本体101と鋼矢板1000とが電気的に接続される。これにより、海水中に流電陽極100を設置することで、陽極本体101から鋼矢板1000に持続的に防食電流が供給され、鋼矢板1000の腐食を防止することができる。」 「【0060】 なお、上記の例では、鋼矢板に取り付けられる流電陽極に用いた場合について説明したが、本発明に係る磁気吸着装置は、陸上、海中を問わず、種々の用途に用いることができる。例えば、土木、建築用途では、鉄柱や鉄板などの鋼構造物の組み付けや、鋼構造物に対する付属品の取り付け等に好適に用いることができる。」 図6 実施形態に係る磁気吸着装置の使用例を示す平面図及び断面図 「 [図:0001424317000001.jpg] 」 イ 認定事項 図6からは、ヨーク181のバックヨーク部183の一方側にネオジム磁石111及び鋼矢板1000が設けられて、他方側に取り付け部103が取り付けられていることが見て取れる。 したがって、引用文献3には、「ヨーク181のバックヨーク部183のネオジム磁石111及び鋼矢板1000が設けられている側と反対側の面に取り付け部103が取り付けられている」(以下「認定事項」という。)ことが記載されていると認められる。 ウ 引用文献3に記載された技術 前記アの記載事項及び前記イに示した認定事項から、引用文献3には、以下の技術(以下「引用文献3に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。 「設備機器を鋼構造物に固定する用途に好適に用いることができる磁気吸着装置180であって(【0049】)、ネオジム磁石111と、ネオジム磁石111を収容するキャップ状のヨーク181とを備え(【0014】)、ヨーク181は鋼材で作製され(【0035】)、ネオジム磁石111の背面側の磁石面に吸着する円盤状のバックヨーク部183を有し(【0020】)、ヨーク181の開口側の吸着面を、鋼矢板1000に向けた状態で接近させることで、鋼矢板1000に吸着固定し(【0052】)、ヨーク181のバックヨーク部183のネオジム磁石111及び鋼矢板1000が設けられている側と反対側の面に(認定事項)、流電陽極100が備える取り付け部103が取り付けられる磁気吸着装置180(【0050】、【0051】)」 (3)引用文献4に記載された技術 ア 引用文献4に記載された事項 当審における拒絶の理由において引用された、本願の出願前である平成16年5月20日に出願公開された引用文献4(特開2004-146758号公報)には、以下の記載がある。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は強力な磁石を用いてスチール製の柱や機器に磁気吸着させ、重量物を吊したり固定するために用いられるマグネットホルダーに関わり、特に強力な希土類磁石を用いて保持力を大きくした上に小型化し取り付け取り外しが容易に行えるように工夫したものである。」 「【0021】 【実施の形態】 以下に本発明の実施形態を図を用いて説明する。 (第1の実施形態) 図1は第1の実施形態に係わる本発明のマグネットホルダーを斜下方から眺めた斜視図を示し、図2は中心を通る断面図を示したものである。図1および図2に示すよう本発明のマグネットホルダー1は円形のキャップ状ヨーク11の内側にリング状の磁石31を配置してある。そしてリング状磁石31の内側にキャップ状ヨーク11と中心が一致し、かつ磁気吸着面側の端面がキャップ状ヨーク11の端面とほぼ同一面となるようにした円筒体形状の小径ヨーク21がキャップ状ヨーク11に固定され、さらに小径ヨーク21の内周面にはネジが切られており、該小径ヨーク21にネジが外周に切られたディスク状のプランジャー41を噛合させてある。」 「【0030】 なお、キャップ状ヨークや内側の小径ヨーク等に用いる材料としては、例えば電磁軟鉄材料、軟鋼、炭素鋼等を用いることができる。あるいは、磁性ステンレス鋼であるSUS430等のフェライト系ステンレス鋼を用いることができる。特にSUS444等のC、N等の侵入型不純物元素を低減したフェライト系ステンレス鋼がより最適な材料として選択しうる。特に、フェライト系ステンレス鋼は耐食性が優れており、メッキ等の表面処理を施すことなく使用できる利点がある。」 「【0046】 (実施例2) 実施例1と同じようにして作製したキャップ状ヨークと小径ヨークならびにプランジャーを用いて、それに直径16mm、高さ(厚さ)8mmのディスク状のNd系磁石を回転対称に6個組み込み、図3に斜視図で示すようなマグネットホルダー3を作製した。」 図2 第1の実施形態に係わるマグネットホルダーの中心を通る断面図 [図:0001424317000002.jpg] 図3 第2の実施形態に係わるマグネットホルダーの斜視図 [図:0001424317000003.jpg] イ 引用文献4に記載された技術 前記アの記載事項及び図面から、引用文献4には、以下の技術(以下「引用文献4に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。 「磁石を用いてスチール製の柱や機器に磁気吸着させ、重量物を吊したり固定するために用いられるマグネットホルダーにおいて(【0001】、円周状に配置される6個のNd系磁石と(【0046】、図3)、Nd系磁石の磁気吸着面と反対側を覆う電磁軟鉄材料、軟鋼、炭素鋼等からなるキャップ状ヨーク(【0021】、【0030】、図2)によって、保持力を大きくしたマグネットホルダー(【0001】)」 第5 対比、判断 (1) 本願発明と引用発明の対比 本願発明と引用発明を対比する。 ア 本願発明の構成Aについて 本願発明の「ドア装置」は、本願明細書の【0016】、【0017】より、「ドアの錠を施解錠する装置」を含み、「既存の建物のドア10に取り付けて用いられる装置」であるから、引用発明のa、cの「着脱自在である」こと、「錠開閉装置10」は、それぞれ本願発明の構成Aの「取り付けられる」こと、「ドア装置」に相当する。 そして、引用発明のa、cにおいて「磁石により扉41に着脱自在である」ことは、「扉41」が磁性体を含む構成体により構成されている既設の構造物であることを意味することは当業者にとって自明であるから、引用発明のa、cの「扉41」は、本願発明の構成Aの「ドア」に相当するとともに、「ドアまたはドア周りの壁を構成する、磁性体を含む既設の構成体」に相当する。 したがって、引用発明は、本願発明の構成Aに相当する構成を備える。 イ 本願発明の構成B1について 引用発明のb1、3の「モータ90に電力を供給し、駆動源の動力によりサムターン回転部70を回転させることでサムターン40を回転させる」ことは、本願発明の構成B1の「ドアの施解錠または開閉を電気的に制御する」ことに相当する。 そして、「錠開閉装置10」が上記の「モータ90に電力を供給し、駆動源の動力によりサムターン回転部70を回転させることでサムターン40を回転させる」「回転駆動機構71を備える」ことから、引用発明のb1、3の「錠開閉装置10」は、本願発明の構成B1の「前記ドアの施解錠または開閉を電気的に制御する機能を有する機能部」に相当する構成を含んでいる。 したがって、引用発明は、本願発明の構成B1に相当する構成を備える。 ウ 本願発明の構成C1、C2について 引用発明の「錠開閉装置10」は「磁石により扉41に着脱自在である」ことから、「磁石」が設けられる部位、すなわち、「磁石」により取付けるための部位を備えることは自明であり、当該部位は本願発明の構成C1の「前記機能部を前記構成体に取り付ける取付部」に相当する。 そして、上記部位に設けられる「磁石」は、本願発明の構成C2の「第一磁石体」に相当する。 したがって、引用発明は、本願発明の構成C1、C2に相当する構成を備える。 エ 本願発明の構成Dについて アで検討したとおり、引用発明の「錠開閉装置10」は、本願発明の「ドア装置」に相当する。 したがって、引用発明は、本願発明の構成Dに相当する構成を備える。 (2) 一致点、相違点 上記(1)の対比の結果、本願発明と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 ア 一致点 「A ドアまたはドア周りの壁を構成する、磁性体を含む既設の構成体に取り付けられるドア装置であって、 B1 前記ドアの施解錠または開閉を電気的に制御する機能を有する機能部と、 C1 前記機能部を前記構成体に取り付ける取付部と、 を備え、 C2 前記取付部は、第一磁石体を有する、 D ドア装置。」 イ 相違点 (ア)相違点1(構成C3) 取付部について、本願発明では、「前記第一磁石体の周りに配され、前記構成体の方向に磁束を誘導する磁性体」を備えるのに対し、 引用発明は、「磁石」の周りに配される「磁性体」を備えていない点。 (イ)相違点2(構成B2) 本願発明では、「機能部」が「前記取付部の磁性体における、前記第一磁石体が設けられている側と、前記構成体に対して反対側に配置される」のに対し、 引用発明は、「磁石」の周りに配される「磁性体」を備えておらず、したがって「磁性体」と「錠開閉装置10」の位置関係について特定していない点。 (3) 相違点についての判断 ア 引用文献3に記載された技術を適用する場合について (ア) 相違点1(構成C3)について 引用文献3に記載された技術の「ネオジム磁石111を収容する」、「鋼材で製作され」た「開口側の吸着面を、鋼矢板1000に向けた状態で接近させることで、鋼矢板1000に吸着固定」する「キャップ状のヨーク181」は、「ネオジム磁石111」の磁束を「鋼矢板1000」に誘導することは明らかであるから、本願発明の構成C3における「記第一磁石体の周りに配され、前記構成体の方向に磁束を誘導する磁性体」に相当する。 引用発明と引用文献3に記載された技術とは、ともに磁力により機器を構造物に取り付けるものであり、保持力を維持することは当業者にとって自明な共通の課題であると考えられるところ、引用発明における「扉41に着脱」するための「磁石」を備える部位(本願発明の「第一磁石体」を有する「取付部」に相当)に、引用文献3に記載された技術における、「ネオジム磁石111の背面側の磁石面に吸着する円盤状のバックヨーク部183」を有する「キャップ状のヨーク181」を備えさせる構成を採用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (イ) 相違点2(構成B2)について 引用文献3に記載された技術の「磁気吸着装置180」の「ヨーク181のバックヨーク部183のネオジム磁石111及び鋼矢板1000が設けられている側と反対側の面」は、本願発明の構成B2における「前記取付部の磁性体における、前記第一磁石体が設けられている側と、前記構成体に対して反対側」に相当する。 引用発明と引用文献3に記載された技術とは、ともに磁力により機器を構造物に取り付けるものであり、保持力を維持することは当業者にとって自明な共通の課題であると考えられるところ、引用発明における「扉41に着脱」するための「磁石」を備える部位(本願発明の「第一磁石体」を有する「取付部」に相当)に、引用文献3に記載された技術における「ヨーク181のバックヨーク部183のネオジム磁石111及び鋼矢板1000が設けられている側と反対側の面」に、「設備機器」(本願発明の「機能部」に相当)を取り付ける構成を採用し、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (ウ) 本願発明の作用効果について 本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献3に記載された技術の作用効果に照らして、当業者が予測し得る程度のものにすぎない。 (エ) 小括 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献3に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 引用文献4に記載された技術を適用する場合について (ア) 相違点1(構成C3)について 引用文献4に記載された技術の「磁石を用いてスチール製の柱や機器に磁気吸着させるマグネットホルダー」における「Nd系磁石の磁気吸着面と反対側を覆う電磁軟鉄材料、軟鋼、炭素鋼等からなるキャップ状ヨーク」は、「Nd系磁石」の磁束を「スチール製の柱や機器」との「磁気吸着面」に誘導することは明らかであるから、本願発明の構成C3における「記第一磁石体の周りに配され、前記構成体の方向に磁束を誘導する磁性体」に相当する。 引用発明と引用文献4に記載された技術とは、ともに磁力により物体を取り付けるものであり、保持力を維持することは自明な共通の課題であると考えられるところ、引用発明における「扉41に着脱」するための「磁石」を備える部位について、引用文献4に記載された技術における「6個のNd系磁石と、Nd系磁石の磁気吸着面と反対側を覆うキャップ状ヨーク」を設ける構成を採用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (イ) 相違点2(構成B2)について 物体を磁石を用いて対象物に吸着する際に、物体を磁石の吸着面に対して反対側に取り付けることは当業者にとって自明である。 引用文献4に記載された技術では、「キャップ状ヨーク」が「Nd系磁石の磁気吸着面と反対側を覆う」ことが特定されている。 上記(ア)で検討したとおり引用発明に引用文献4に記載された技術における「6個のNd系磁石と、Nd系磁石の磁気吸着面と反対側を覆うキャップ状ヨーク」の構成を採用した場合には、磁石の吸着面に対して反対側に「キャップ状ヨーク」が設けられることから、「錠開閉装置10」は、「キャップ状ヨーク」における「Nd系磁石」及び「Nd系磁石」によって吸着される物体に対して反対側(本願発明の「磁性体における、前記第一磁石体が設けられている側と、前記構成体に対して反対側」に相当)に配置されることとなる。 したがって、引用発明に引用文献4に記載された技術における構成を採用し、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (ウ)本願発明の作用効果について 本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献4に記載された技術の作用効果に照らして、当業者が予測し得る程度のものにすぎない。 (エ) 小括 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び引用文献4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ なお、磁石を対象物に取り付ける技術分野において、磁石に対して対象物とは反対側にヨークを設けることは、引用文献3及び引用文献4に記載されているように周知技術であるから、引用発明に周知技術を適用して本願発明のようになすことも、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。 (4) 請求人の主張について 請求人は、令和7年1月14日提出の意見書の「5.拒絶理由2(特許法第29条第2項)(1)本願発明1について」において、以下のとおり主張する。 「本願発明者は、ヨーク(本願の磁性体)を用いて磁束を制御した場合に、ドア用装置の機能部(電子部品や回路)に対する影響がなくなること、及び強固な吸着力がえられることを発見し、このような発見に基づいて本願発明が創作されました。審判官殿が言うように、「機器を磁石の吸着面側に配置すると、磁石と構成体との距離が離れて固定が安定しないから、磁石の非吸着面側に機器が配置した」ものではありません。したがって、本願発明において、発明の目的・効果における「磁力による影響」は本願特有の目的・効果であり、当該目的・効果に対応する「機能部を前記取付部の磁性体における、前記第一磁石体が設けられている側と、前記構成体に対して反対側に配置するという構成」は、自明なものではなく、本願特有の構成であると思料します。」 しかしながら、磁石を利用する際にヨークを用いることは、引用文献3に加えて、引用文献4にも記載されているように周知の技術であるところ、磁石によって吸着される対象物と反対側にヨークを設けることで対象物に磁束が集中し、吸着力が向上することは技術常識であり、ヨークが備える通常の機能である。 そして、吸着対象に磁束が集中するということは、磁束が対象物以外の方向に発散しなくなるということであるから、ヨークを備えることによって目的の部分以外に磁界の影響を起こさないようにすることも、ヨークを用いることによって、当然にもたらされる作用効果であるといえる。 また、本願発明は、「構成体」、「機能部」、「第一磁石体」、「磁性体」の位置関係を規定するにとどまり、「磁性体」の形状や素材についての限定もされていないことから、本願発明が有する効果は、引用文献3、4に記載のような一般的なヨークを用いる構成を超えるものを含むものではない。 したがって、請求人が本願特有の効果であると主張する「ヨーク(本願の磁性体)を用いて磁束を制御した場合に、ドア用装置の機能部(電子部品や回路)に対する影響がなくなること、及び強固な吸着力がえられること」は、引用発明に引用文献3に記載された技術又は引用文献4に記載された技術を適用することで当然に奏される効果であり、当業者が予想できる範囲を超える格別顕著な効果であるとは認められない。 また、請求人は、「5.拒絶理由2(特許法第29条第2項)(2)引用発明1を主引例とし、引用文献3、4に記載された技術を適用する場合について」において、以下のとおり主張する。 「(イ) 引用文献3に記載された技術の適用について 拒絶理由通知書15頁において、相違点1に関する論理付けが記載されており、当該論理付けについて特に意見はございません。 一方、同頁において、相違点2に関する論理付けが次のように記載されています。 『引用発明1と引用文献3に記載された技術とは、ともに磁力により機器を構造物に取り付けるものであり、保持力を維持することは当業者にとって自明な共通の課題でるある(当審注:「課題である」の誤記と認める。)と考えられるところ、引用発明1における「扉41に着脱」するための「磁石」を備える部位に、引用文献3に記載された技術における「磁気吸着装置180のヨーク181のバックヨーク部183の吸着面と反対側の面」で、「設備機器」を取り付ける構成を採用し、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。』 しかし、相違点2に関する論理付けに際しては、本願発明1の特有の目的・効果である「磁力による影響を低減する」ことが評価されるべきであると思料します。この点、上記の通り、引用文献1,3には「磁力による影響を低減する」ことは一切記載されていないので、『「磁気吸着装置180のヨーク181のバックヨーク部183の吸着面と反対側の面」で、「設備機器」を取り付ける構成』を採用する動機付けがありません。 (ウ)引用文献4に記載された技術の適用について 拒絶理由通知書16頁において、相違点1に関する論理付けが記載されており、当該論理付けについて特に意見はございません。 一方、同頁において、相違点2に関する論理付けが次のように記載されています。 『上記(a)で検討したとおり引用発明1に引用文献4に記載された技術における構成を採用した場合には、磁石の吸着面に対して反対側に「キャップ状ヨーク」が設けられることから、「錠開閉装置10」は、「キャップ状ヨーク」が設けられることから、「錠開閉装置10」は、「キャップ状ヨーク」における「磁気吸着面と反対側」に配置されることとなる。したがって、引用発明1に引用文献4に記載された技術における構成を採用し、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。』 しかし、上記(イ)と同様に、引用文献1,4には「磁力による影響を低減する」ことは一切記載されていないので、引用文献4に記載された技術を採用する動機付けがありません。」 しかしながら、引用発明に他の文献に記載された技術における構成を採用する動機付けがあるか否かは、引用文献の内容中の示唆のみでなく、技術分野の関連性や、作用、機能の共通性等に基づいても判断されるものであって、本願発明と同様の目的・効果について明示的に記載されていないことをもって、引用発明に引用文献3に記載された技術又は引用文献4に記載された技術を採用することの動機付けを否定するものではない。 そして、「第5 対比、判断(3) 相違点についての判断」で述べたとおり、引用発明と引用文献3に記載された技術とは、ともに磁力により機器を構造物に取り付けるものであり、保持力を維持することは当業者にとって自明な共通の課題であると考えられ、また、引用発明と引用文献4に記載された技術とは、ともに磁力により物体を取り付けるものであり、保持力を維持することは自明な共通の課題であると考えられるから、引用発明に引用文献3に記載された技術又は引用文献4に記載された技術における構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、請求人の主張は採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-007352

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