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特許拒絶査定不服審判

2024-007200

ビーム形成方法およびビームを使用するための方法

審判番号
2024-007200
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-089607外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2024年04月26日
審決日
2024年12月16日
公報発行日
2025年06月27日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .561-Z (H04B) / P18 .113-Z (H04B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022- 89607「ビーム形成方法およびビームを使用するための方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 8月23日出願公開、特開2022-122961〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 12項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、2013年(平成25年)11月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年11月9日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2015-541948号の一部を平成29年8月7日に新たな特許出願(特願2017-152719号)とし、その一部を令和元年10月7日に新たな特許出願(特願2019-184624号)とし、その一部を令和4年6月1日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和 4年 7月 1日 手続補正書

令和 5年 2月27日 手続補正書

令和 5年 6月21日付け 拒絶理由通知書

令和 5年 9月27日 意見書、手続補正書

令和 5年12月21日付け 拒絶査定

令和 6年 4月26日 審判請求書、手続補正書

以下では、令和5年12月21日付け拒絶査定を「原査定」という。

第2 令和6年4月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和6年4月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

本件補正により、以下(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の記載が、以下(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の記載に補正された。なお、下線は補正箇所を示す目的で請求人が付したものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲

「 【請求項1】
複数のアンテナを備えた第1の局(STA)によって行われる方法であって、
前記複数のアンテナのうちのアンテナの第1のグループと前記複数のアンテナのうちのアンテナの第2のグループとを用いて複数のビーム形成トレーニングフレームを、第2のSTAに送信することであって、アンテナの前記第1のグループは第1のパスに関連付けられ、アンテナの前記第2のグループは第2のパスに関連付けられ、前記第1および第2のパスは、測定されるチャネル特性に基づいて2つ以上のパスの中から選択される、ことと、
アンテナの前記第1のグループにて信号を送信するために第1のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信することと、
続きを表示(全43行)
アンテナの前記第2のグループにて信号を送信するために第2のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信することと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記測定されるチャネル特性は、チャネルゲインを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2のパスは、前記2つ以上のパスの中から最も大きい、測定されるチャネルゲインを有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のSTAは、アクセスポイント(AP)または非APのSTAのうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アンテナの前記第1のグループと、前記第1のビーム形成重みベクトルと、アンテナの前記第2のグループと、前記第2のビーム形成重みベクトルとを用いて第2の複数のビーム形成トレーニングフレームを、前記第2のSTAに送信することと、
アンテナの前記第1のグループにて信号を送信するために、修正された第1のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信することと、
アンテナの前記第2のグループにて信号を送信するために、修正された第2のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信することと
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2のビーム形成重みベクトルは、少なくとも1つのフィードバックフレームにて受信されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の局(STA)であって、
トランシーバ、
プロセッサ、および
複数のアンテナを備え、
前記トランシーバ、前記プロセッサ、および前記複数のアンテナは、
前記複数のアンテナのうちのアンテナの第1のグループと前記複数のアンテナのうちのアンテナの第2のグループとを用いて複数のビーム形成トレーニングフレームを、第2のSTAに送信し、アンテナの前記第1のグループは第1のパスに関連付けられ、アンテナの前記第2のグループは第2のパスに関連付けられ、前記第1および第2のパスは、測定されるチャネル特性に基づいて2つ以上のパスの中から選択され、
アンテナの前記第1のグループにて信号を送信するために第1のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信し、
アンテナの前記第2のグループにて信号を送信するために第2のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信する
ように構成されることを特徴とする第1のSTA。
【請求項8】
前記測定されるチャネル特性は、チャネルゲインを含むことを特徴とする請求項7に記載の第1のSTA。
【請求項9】
前記第1および第2のパスは、前記2つ以上のパスの中から最も大きい、測定されるチャネルゲインを有することを特徴とする請求項8に記載の第1のSTA。
【請求項10】
前記第1のSTAは、アクセスポイント(AP)または非APのSTAのうちの1つであることを特徴とする請求項7に記載の第1のSTA。
【請求項11】
前記トランシーバ、前記プロセッサ、および前記複数のアンテナは、
アンテナの前記第1のグループと、前記第1のビーム形成重みベクトルと、アンテナの前記第2のグループと、前記第2のビーム形成重みベクトルとを用いて第2の複数のビーム形成トレーニングフレームを、前記第2のSTAに送信し、
アンテナの前記第1のグループにて信号を送信するために、修正された第1のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信し、
アンテナの前記第2のグループにて信号を送信するために、修正された第2のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信する
ようにさらに構成されることを特徴とする請求項7に記載の第1のSTA。
【請求項12】
前記第1および第2のビーム形成重みベクトルは、少なくとも1つのフィードバックフレームにて受信されることを特徴とする請求項7に記載の第1のSTA。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲

「 【請求項1】
複数のアンテナを備えた第1の局(STA)によって行われる方法であって、
前記複数のアンテナのうちのアンテナの第1のグループと前記複数のアンテナのうちのアンテナの第2のグループとを用いて複数のビーム形成トレーニングフレームを、第2のSTAに送信することであって、アンテナの前記第1のグループは第1のパスに関連付けられ、アンテナの前記第2のグループは第2のパスに関連付けられ、前記第1および第2のパスは、測定されるチャネル特性に基づいて2つ以上のパスの中から選択され、前記第1のSTAは、前記第1および第2のパスと、対応する信号対ノイズ(SNR)情報とに関する情報を前記第2のSTAに報告する、ことと、
アンテナの前記第1のグループを用いて前記第1のパスにて信号を送信するために第1のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信することと、
続きを表示(全43行)
アンテナの前記第2のグループを用いて前記第2のパスにて信号を送信するために第2のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信することと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記測定されるチャネル特性は、チャネルゲインを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2のパスは、前記2つ以上のパスの中から最も大きい、測定されるチャネルゲインを有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のSTAは、アクセスポイント(AP)または非APのSTAのうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アンテナの前記第1のグループと、前記第1のビーム形成重みベクトルと、アンテナの前記第2のグループと、前記第2のビーム形成重みベクトルとを用いて第2の複数のビーム形成トレーニングフレームを、前記第2のSTAに送信することと、
アンテナの前記第1のグループにて信号を送信するために、修正された第1のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信することと、
アンテナの前記第2のグループにて信号を送信するために、修正された第2のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信することと
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2のビーム形成重みベクトルは、少なくとも1つのフィードバックフレームにて受信されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の局(STA)であって、
トランシーバ、
プロセッサ、および
複数のアンテナを備え、
前記トランシーバ、前記プロセッサ、および前記複数のアンテナは、
前記複数のアンテナのうちのアンテナの第1のグループと前記複数のアンテナのうちのアンテナの第2のグループとを用いて複数のビーム形成トレーニングフレームを、第2のSTAに送信し、アンテナの前記第1のグループは第1のパスに関連付けられ、アンテナの前記第2のグループは第2のパスに関連付けられ、前記第1および第2のパスは、測定されるチャネル特性に基づいて2つ以上のパスの中から選択され、前記第1のSTAは、前記第1および第2のパスと、対応する信号対ノイズ(SNR)情報とに関する情報を前記第2のSTAに報告し、
アンテナの前記第1のグループを用いて前記第1のパスにて信号を送信するために第1のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信し、
アンテナの前記第2のグループを用いて前記第2のパスにて信号を送信するために第2のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信する
ように構成されることを特徴とする第1のSTA。
【請求項8】
前記測定されるチャネル特性は、チャネルゲインを含むことを特徴とする請求項7に記載の第1のSTA。
【請求項9】
前記第1および第2のパスは、前記2つ以上のパスの中から最も大きい、測定されるチャネルゲインを有することを特徴とする請求項8に記載の第1のSTA。
【請求項10】
前記第1のSTAは、アクセスポイント(AP)または非APのSTAのうちの1つであることを特徴とする請求項7に記載の第1のSTA。
【請求項11】
前記トランシーバ、前記プロセッサ、および前記複数のアンテナは、
アンテナの前記第1のグループと、前記第1のビーム形成重みベクトルと、アンテナの前記第2のグループと、前記第2のビーム形成重みベクトルとを用いて第2の複数のビーム形成トレーニングフレームを、前記第2のSTAに送信し、
アンテナの前記第1のグループにて信号を送信するために、修正された第1のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信し、
アンテナの前記第2のグループにて信号を送信するために、修正された第2のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信する
ようにさらに構成されることを特徴とする請求項7に記載の第1のSTA。
【請求項12】
前記第1および第2のビーム形成重みベクトルは、少なくとも1つのフィードバックフレームにて受信されることを特徴とする請求項7に記載の第1のSTA。」

2 補正の適否

(1)本件補正により、請求項1及び7に係る発明には、「前記第1のSTAは、前記第1および第2のパスと、対応する信号対ノイズ(SNR)情報とに関する情報を前記第2のSTAに報告」するとの発明特定事項が追加された。

(2)しかしながら、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、第1のSTAは、第1および第2のパスと、対応する信号対ノイズ(SNR)情報とに関する情報を第2のSTAに報告することについて、何ら記載されていない。

(3)詳述すれば、当初明細書等には、次の記載がある。なお、下線は強調のため当審にて付した。

ア 「 【0370】
較正を伴わないタイプIIデバイスおよびタイプIデバイスのためのビームスイープ基礎空間多重化が遂行され得る。図18は、較正を伴わないビームスイープ基礎空間多重化タイプIIデバイスおよびタイプIデバイスのための例ビーム形成トレーニング方法1800の線図である。
【0371】
反復iに対してSTA1(イニシエータ)1802は、それが第1の送信RFチェーン(TX1)を使用してトレーニングすることを意図するすべての送信ビームをスイープしてトレーニングシーケンスのN個の繰り返しを送信することが可能である(1806)。次いでSTA1 1802は、第2のRFチェーン(TX2)によって同じ手順を繰り返すことが可能である(1808)。Nは、送信アンテナの数に必ずしも関係付けられない場合がある。例えば、TX1に対して使用されるビームパターンは、TX2に対するものと同じでない場合がある。
【0372】
STA2(応答機)1804は、以前の反復からトレーニングされる2つの受信ビームを有し得る。これが第1の反復であるならば、STA21804は、2つのビームをランダムに選択する、オムニ重みを使用する、または、異なる方途で2つのビームを選択することが可能である。第1の受信RFチェーン(RX1)1810は、すべてのアンテナ要素から受信される信号の重み付けされた組み合わせとして信号を取得することが可能である。<・・・後略>」
イ 「 【0380】
<前略・・・>それらをベースバンドおよびデジタルドメインに変換した後、STA2 1804は、実効SNRまたは等価的なパラメータを測定することが可能である。時間スロットkに対してSTA2 1804は、2つの受信RFチェーンを使用してSNR測定を遂行することが可能である。
【0381】
【数107】
続きを表示(全17行)
[図:0001423232000001.jpg]
【0382】
第1のN個の時間スロットによってSTA2 1804は、STA1 1802のTX1に対応し得る
【0383】
【数108】
[図:0001423232000002.jpg]
【0384】
を受信することが可能である。最後のN個の時間スロットによってSTA2 1804は、STA1 1802のTX2に対応し得る
【0385】
【数109】
[図:0001423232000003.jpg]
【0386】
を受信することが可能である。図18では信号の受信は、パケットを受信する間の受信機動作の例図解として、破線で示されている。」
ウ 「 【0387】
STA2 1804は、STA1 1802に、2つのビームインデックスをフィードバックすることが可能である(1814)。ビーム選択方法は、実行依存的であり得る。例えばSTA2 1804は、インデックスの対
【0388】
【数110】
続きを表示(全17行)
[図:0001423232000004.jpg]
【0389】
を選択し得るものであり、その対は、
【0390】
【数111】
[図:0001423232000005.jpg]
【0391】
および
【0392】
【数112】
[図:0001423232000006.jpg]
【0393】
を満足し得るものである。」
エ 「 【0402】
デバイスの対が空間多重化に適さないということを表示する失敗判定基準を定義するための、いくつもの方途が存在し得る。例えば失敗判定基準は、STA2 1804が、ビームを選択するときに、
【0403】
【数116】
続きを表示(全22行)
[図:0001423232000007.jpg]
【0404】
および
【0405】
【数117】
[図:0001423232000008.jpg]
【0406】
を中に記録し、この情報をSTA1 1802にフィードバックすることが可能であるときに同じように定義され得る。別の例失敗判定基準ではSTA2 1804は、ビームをスイープするときに
【0407】
【数118】
[図:0001423232000009.jpg]
【0408】
および
【0409】
【数119】
[図:0001423232000010.jpg]
【0410】
を中に記録し、この情報をSTA1 1802にフィードバックすることが可能である。」

オ 【図18】

「
[図:0001423232000011.jpg]
」

カ 前記ア~オによれば、STA1(イニシエータ)1802(「第1のSTAに相当」)からSTA2(応答機)1804(「第2のSTA」に相当)へ送信されるものとしてトレーニングシーケンスが記載され、逆にSTA2からSTA1へ送信(フィードバック)されるものとしてΔSNR11~ΔSNR22(【数116】~【数119】を参照)が記載されているものの、STA1からSTA2へ、第1および第2のパスと、対応する信号対ノイズ(SNR)情報とに関する情報を送信(報告)することは、記載も示唆もされていない。

(4)以上のとおり、本件補正により追加された発明特定事項(前記(1))は、当初明細書等には記載がなく、当初明細書等から自明でもないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3 本件補正についてのむすび

前記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~12に係る発明は、令和5年9月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項(前記第2[理由]1(1))により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。なお、後の参照の便宜のため、本願発明を以下のA~Dに分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。

「A 複数のアンテナを備えた第1の局(STA)によって行われる方法であって、
B 前記複数のアンテナのうちのアンテナの第1のグループと前記複数のアンテナのうちのアンテナの第2のグループとを用いて複数のビーム形成トレーニングフレームを、第2のSTAに送信することであって、アンテナの前記第1のグループは第1のパスに関連付けられ、アンテナの前記第2のグループは第2のパスに関連付けられ、前記第1および第2のパスは、測定されるチャネル特性に基づいて2つ以上のパスの中から選択される、ことと、
C アンテナの前記第1のグループにて信号を送信するために第1のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信することと、
D アンテナの前記第2のグループにて信号を送信するために第2のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信することと
A を備えることを特徴とする方法。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。

理由1.この出願の請求項1、2、4、6-8、10、12に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2.この出願の請求項1-12に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特表2012-506661号公報

引用文献2.米国特許出願公開第2010/0190450号明細書

3 引用文献

(1)引用文献1の記載

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2012-506661号公報(平成24年3月15日公表。以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審にて付した。

「【0007】
したがって、本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために案出されたもので、その目的は、プリコーティング過程で特異値分解(Singular Value Decomposition:SVD)方式を適用する多重入出力システムと分割型アンテナグループを通じたビームフォーミング技術とを結合させることにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、使用するサブチャネル個数を最小個数に減らし、MIMOシステムに含まれたエンコーダ及びデコーダの行列次元を、アンテナ個数ではなくアンテナグループ数及びサブチャネル個数で具現することによって、信号処理過程を簡単化させることにある。」
「【0039】
図5は、本発明の一実施例によるWVANにおいて多数のアンテナを有するデバイスの一例を示すブロック図である。
【0040】
図5を参照すると、送信デバイスは、複数個の送信部50、複数個の送信部50から出力される信号の転送をしやすくするように、コーディングなどの信号処理を行う送信側MIMO信号処理部51及び複数個の送信アンテナ52で構成される。受信デバイスは、送信デバイスから出力された送信信号を受信する複数個の受信アンテナ53、これら受信した信号にデコーディングなどを行って複数個の独立した送信信号を検出できる受信側MIMO信号処理部54及びプロセッサー55で構成される。
【0041】
MIMO技術は、送信デバイス及び受信デバイスに設けられた複数個のアンテナに様々なMIMO手法を適用して同時に並列転送する方法で、多数のそれぞれ異なるデータパケットを転送することによってデータ転送効率を上げたり、同一のデータパケットを同時にそれぞれ異なるアンテナを用いて転送することによってアンテナダイバーシティ利得を得ることができる。例えば、図5に示す送信デバイスがN個の送信アンテナ52を有し、受信デバイスがN個の受信アンテナ53を用いて同時にデータパケットを受信する場合、データレート(data rate)はN倍に増加することができる。」
「【0044】
このようなMIMOシステムには、同一周波数、同一空間、同一時間を使用すると、多重アンテナを通じて同時にそれぞれ異なる信号を転送することによって信号転送能力を増大させることができる空間多重化多重入力多重出力(SM MIMO:Spatial Multiplexing MIMO)方式がある。空間多重化(SM)MIMO方式は、各アンテナ間の相関度が低いため、時間及び周波数で混在された異なるデータは安定的にデコーディングされ、このため、無線区間における受信SNRを一定値以上に保つことができ、同時に、多重経路数を増加させることができる。このように、最適なスループットを得ることができる。」
「【0048】
一般のMIMOシステムでは、同一時間及び同一周波数帯域でそれぞれ異なるアンテナでそれぞれ異なる信号を転送するため、様々な信号が入り混じる場合、受信し難くなる。したがって、送信デバイスでは、転送しようとするビットストリームにプリコーティングを行う。プリコーティング行列(W)によってMIMOの性能が異なってくることがあり、送信デバイスは、受信デバイスから受信した転送率またはストリーム個数に関する情報に基づいて所定のプリコーティング行列(W)を選択することができる。
【0049】
この時、送信側は、最適のプリコーティング行列を選択するためにチャネル行列(H)を特異値分解(Singular Value Decomposition:SVD)方式により分解し、プリコーティング行列(W)を得ることができる。特異値分解(SVD)とは、行列を特定の構造に分解する方式で、行列のスペクトル理論を任意の矩形行列に対して一般化したものをいう。すなわち、SVD方式は、直交正方形を固有値(eigen value)に基づいて対角行列に分解できる方式である。
【0050】
上記のSVD方式に用いて得たプリコーティング行列を適用してプリコーティング過程を行うSM MIMOシステムを、SVD方式のSM MIMOと定義することができる。」
「【0075】
したがって、SVD方式のSM MIMOシステムは、K個の独立したシングルチャネルシステムで、K個の独立したサブチャネルを用いることとなる。このサブチャネル利得係数は、チャネル行列Hの固有値により決定される。チャネル行列Hは、送信アンテナグループ個数(M)、受信アンテナグループ個数(N)及び各アンテナグループを構成するn個のアンテナによって(N×n)×(M×n)次元になる。したがって、アンテナグループ数または使用するサブチャネル個数が多くなるほどチャネル行列の次元も増加し、上記の数学式によるコーディング、デコーディング過程が複雑になる。
【0076】
したがって、本発明の一実施例によるSVD方式のSM MIMOシステムでは、データ転送時に、サブチャネルのうち、所定個数のサブチャネルのみを使用するように制限する。また、信号対雑音比を最大化するために、特定対象に対する指向性信号、すなわち、ビーム(beam)を利用することができる。
続きを表示(全32行)
【0077】
ビームフォーミング(beamforming)は、スマートアンテナの1つのタイプで、効率性を高めるために多数のアンテナを用いて特定対象に指向性信号を転送することを意味する。多数のアンテナを送信デバイス及び受信デバイスの両方に具現したMIMOの一例で、SM MIMOシステムにおいてWVANデバイスは、他のデバイスにHRPチャネルを通じてビームフォーミングしながら信号を転送することができる。すなわち、ビームフォーミングを通じてSMHRPデータパケットを転送することができる。
【0078】
SM MIMOシステムにおいてデバイスに含まれる多数のアンテナは、一つ以上のビームフォーミングアンテナ(beam-forming)グループに区分することができる。
【0079】
ビームフォーミングアンテナグループとは、指向性信号、すなわち、ビーム(beam)を形成するための一つ以上のアンテナを含むアンテナアレイ(antenna array)のことをいう。以下、特定ビームを形成するアンテナアレイをビームフォーミングアンテナグループと定義する。ビームフォーミングアンテナグループは、ビームパターンを形成するビームフォーマ(Beamformer)またはアンテナポート(port)と同じ意味を有することができる。
【0080】
ビームフォーミングアンテナグループは、一つのアンテナグループに含まれるアンテナ数及び配列形態によって、分割型ビームフォーミングアンテナグループ(split beam-forming antenna group)と共有型ビームフォーミングアンテナグループ(shared beam-forming antenna group)とに大別することができる。以下、アンテナグループ方式によるMIMOシステムについて、図7及び図8を参照して簡略に説明する。
【0081】
図7は、本発明の一実施例によるSM MIMOシステムにおいて多数のアンテナグループを有するデバイスの一例を示すブロック図である。特に、HRPビームフォーミングを行うために分割型アンテナグループを備えたデバイスの一例を示している。
【0082】
図7を参照すると、送信デバイスは、転送しようとするデータを多数個のビットストリームに分割するためのエンコーディングを行うMIMOエンコーダ70、信号転送の便宜のためにアナログ信号をデジタル信号に変換するデジタル-アナログ変換回路部72、及び多数個のビームフォーミングアンテナグループ74を含むことができる。受信デバイスも同様、多数個のビームフォーミングアンテナグループ75、アナログ-デジタル変換回路部73、及びMIMOデコーダ71を含む。
【0083】
ビームフォーミングアンテナグループ74,75は、分割型ビームフォーミングアンテナグループで、各アンテナグループに同一個数で分割された連続したアンテナ列を含む。分割型ビームフォーミングアンテナグループは、グループごとに同一個数の連続アンテナ列で固定して構成されるので、具現が容易である。また、多数個の送信部から伝達された転送信号を一つのアンテナグループを通じて転送するので、信号処理過程が簡単であり、転送電力を集中化させることができるという利点があるが、チャネル状態によって、各アンテナグループに含まれたアンテナを変更したり、使用しているアンテナグループを変更する等の適応的調整が難しい。このため、分割型ビームフォーミングアンテナグループは、非適応的(non-adaptive)アンテナグループとも呼ばれる。
【0084】
図8は、本発明の一実施例によるSM MIMOシステムにおいて多数のアンテナグループを有するデバイスの他の例を示すブロック図である。特に、HRPビームフォーミングを行うために共有型アンテナグループを備えたデバイスの一例を示している。
【0085】
このビームフォーミングアンテナグループ76,77は共有型アンテナグループで、各アンテナグループ別に異なる個数のアンテナを含むことができ、任意の分散されたアンテナを含めてグループを構成することもできる。共有型ビームフォーミングアンテナグループは、各アンテナグループを構成するアンテナの個数をチャネル条件に応じて適応的に調節して、転送容量を最大化できる組み合わせに再構成することができる。したがって、共有型ビームフォーミングアンテナグループは、適応的(adaptive)アンテナグループとも呼ばれる。
【0086】
MIMOシステムでは、一つ以上構成されたビームフォーミングアンテナグループうち、少なくとも一つのビームフォーミングアンテナグループを選択してデータパケットを転送することができる。そして、多数のビームフォーミングアンテナグループを選択して、各ビームフォーミングアンテナグループに含まれるアンテナを通じてデータパケットを転送することもできる。
【0087】
この場合、上記のように各ビームフォーミングアンテナグループを通じて送信される信号は、指向性を有する信号であり、各ビームフォーミングアンテナグループを通じて送信される信号間の干渉が最小化されることが好ましい。すなわち、送信デバイス及び受信デバイスは、各ビームフォーミングアンテナグループを構成するアンテナアレイを通じて信号を送信するが、このとき、それぞれ異なる位相(phase)、例えば直交(orthogonal)位相を有するアンテナアレイを通じて信号を送信する。
【0088】
本発明の一実施例によるMIMOシステムは、図6で説明したSVD方式のSM MIMOシステムが、図7で説明した非適応型ビームフォーミングアンテナグループを含む場合を説明している。
【0089】
図9は、本発明の一実施例によるSM MIMOシステムにおいてHRPを通じてビームフォーミングを行うデバイスの一例を示すブロック構成図である。
【0090】
図9を参照すると、SVD方式のSM MIMOシステムを構成する送信デバイス及び受信デバイスは、指向性信号を送受信するための一つ以上のビームフォーミングアンテナグループを含む。そして、最小限のサブチャネルを用いて信号を転送するように具現する。例えば、2個のサブチャネルを使用するように具現することができる。」
「【0143】
図9に示すように、多数のビームフォーミングアンテナグループを構成しているSM MIMO送信デバイス及び受信デバイス間にビームフォーミングを用いる前に、まず、ビームサーチング過程(Beam Searching Process)を行わなければならない。ビームサーチングとは、デバイス間の信号送受信時に使用する一つ以上のビームフォーミングアンテナグループを選択するためのプロセスを意味する。
【0144】
図13は、本発明の一実施例によるSVD方式のSM MIMOデバイス間ビームサーチング過程を行うために信号を送受信する過程の一例を示すフローチャートである。ビームサーチングは必ずしも通信初期に行われるべきものではなく、通信中に必要に応じて行うこともできる。また、ビームサーチングは、HRPチャネル及びビームフォーミングLRPチャネルにおけるビームサーチングを含む。
続きを表示(全12行)
【0145】
図13を参照すると、まず、本発明の一実施例による送信デバイスは、各アンテナグループを通じてトレーニング信号(training signal)を受信デバイスに転送する(S10)。受信デバイスでは、転送されたトレーニング信号を通じてチャネル推定及び信号検出を行う(S11)。チャネル推定は、図9に示す実施例の場合、M個のビームフォーマを備えた送信デバイスとN個のビームフォーマを備えた受信デバイスとで構成される(M×N×n)SM MIMOシステムにおいて、M×Nチャネル係数hmnで構成されるチャネル行列Hを推定しなければならない。受信デバイスは、該チャネル推定及び信号検出結果によるフィードバック情報を送信デバイスに転送する(S12)。この時、送信デバイスの多数のビームフォーミングアンテナグループで転送されるトレーニング信号は、図10に示すように順次に転送することが好ましい。すなわち、第1ビームフォーミングアンテナグループを通じて第1トレーニング信号を転送した後に第2ビームフォーミングアンテナグループを通じて第2トレーニング信号を転送し、以降のビームフォーミングアンテナグループでも順次にトレーニング信号を転送することが好ましい。また、一つ以上のビームフォーミングアンテナグループごとに所定の時間間隔をおいて転送することもできる。そして、受信デバイスから送信デバイスにフィードバック情報を転送する段階も、送信デバイスから転送されるトレーニング信号によって順次に行われることが好ましい。このように、トレーニング信号及びそれによるフィードバック情報は、多数のビームフォーミングアンテナグループのそれぞれに対する性能検出のために反復することができ、同時にチャネル行列(H)のランクを測定できるように数回反復することができる(S13、S14、S15)。
【0146】
このような過程を反復した後に、送信デバイスはフィードバック情報を用いて一つ以上のビームフォーミングアンテナグループを決定する(S16)。送信デバイスは、上に基づいて所定基準値以上の性能を示すビームフォーミングアンテナグループのうち、最適のアンテナグループを選択することができる。
【0147】
また、受信デバイスが転送するフィードバック情報には、段階S11またはS14で信号検出結果によって受信した信号の強度情報を含むこともできる。したがって、送信デバイスは、使用するビームフォーミングアンテナグループを選択する他、選択されたビームフォーミングアンテナグループに適用するアンテナアレイ重み値ベクトル(Antenna array Weight vector:AWV)も決定することができる。
【0148】
AWVは、ビームフォーミングを行う送信デバイス及び受信デバイス間の受信強度情報に基づいて決定する。本発明の一実施例による受信デバイスは、上記段階S11またはS14で信号検出時にAWV情報を算出してそれをフィードバック情報に含めて送信デバイスに転送することができる。または、本発明の一実施例による送信デバイスでフィードバック情報に含まれた受信信号強度情報に基づいてアンテナグループ決定段階(S16)で決定することもできる。そして、決定されたビームフォーミングアンテナグループに関する情報を受信デバイスに転送し、該当のアンテナグループを用いてデバイス間通信を行う(S17)。」
「【0150】
この時、送信デバイスが転送するトレーニング信号は、送信デバイス及び受信デバイス間に共有する所定の既に設定されたトレーニングシーケンスによる信号で、場合によって送信デバイスに関する識別情報を含むことができる。
【0151】
トレーニングシーケンスに使用可能なシーケンスには、直交コードシーケンス、PN(Pseudo Noise)シーケンス、アダマールコード(Hadamard Code)シーケンス、CAZACシーケンスなどを挙げることができる。トレーニングシーケンスを含むデータフォーマットの一例を、図14及び図15を参照して説明する。」
「【0242】
以上で使われた用語は、別の用語に代替可能である。例えば、デバイスは、ユーザ装置(または機器)、ステーション(station)等に取り替えることができ、調整器は、調整(または制御)装置、調整(または制御)デバイス、調整(または制御)ステーション、コーディネータ(coordinator)、PNC(piconet coordinator)などに取り替えることができる。また、WVANを構成するWVANパラメータは、ネットワーク構成情報と同じ意味で使用することができる。」

(2)引用発明

したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、後の参照の便宜のため、引用発明を以下のa~hに分説し、「構成a」のようにして参照する。

「a SVD方式のSM MIMOデバイス間ビームサーチング過程を行うために信号を送受信する過程であって、ここで、ビームサーチングとは、デバイス間の信号送受信時に使用する一つ以上のビームフォーミングアンテナグループを選択するためのプロセスを意味し、(【0143】、【0144】)
b SM MIMO方式は、多重経路数を増加させることができ、(【0044】)
b1 SM MIMOシステムにおいてデバイスは、他のデバイスにビームフォーミングしながら信号を転送することができ、ここで、ビームフォーミングは、スマートアンテナの1つのタイプで、効率性を高めるために多数のアンテナを用いて特定対象に指向性信号を転送することを意味し、(【0077】)
b2 SM MIMOシステムにおいてデバイスに含まれる多数のアンテナは、一つ以上のビームフォーミングアンテナグループに区分することができ、(【0078】)
続きを表示(全14行)
c 送信デバイスは、各アンテナグループを通じてトレーニング信号を受信デバイスに転送し、(【0145】)
c1 この時、送信デバイスの多数のビームフォーミングアンテナグループで転送されるトレーニング信号は順次に転送、すなわち、第1ビームフォーミングアンテナグループを通じて第1トレーニング信号を転送した後に第2ビームフォーミングアンテナグループを通じて第2トレーニング信号を転送し、(【0145】)
d 受信デバイスでは、転送されたトレーニング信号を通じてチャネル推定及び信号検出を行い、(【0145】)
e 受信デバイスは、該チャネル推定及び信号検出結果によるフィードバック情報を送信デバイスに転送し、(【0145】)
e1 受信デバイスから送信デバイスにフィードバック情報を転送する段階も、送信デバイスから転送されるトレーニング信号によって順次に行われ、(【0145】)
e2 受信デバイスが転送するフィードバック情報には、信号検出結果によって受信した信号の強度情報を含むこともでき、(【0147】)
e3 受信デバイスは、信号検出時にAWV(ビームフォーミングアンテナグループに適用するアンテナアレイ重み値ベクトル)情報を算出してそれをフィードバック情報に含めて送信デバイスに転送し、(【0147】、【0148】)
f トレーニング信号及びそれによるフィードバック情報は、多数のビームフォーミングアンテナグループのそれぞれに対する性能検出のために反復することができ、(【0145】)
g このような過程を反復した後に、送信デバイスはフィードバック情報を用いて一つ以上のビームフォーミングアンテナグループを決定する、(【0146】)
h 過程。」

4 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)発明特定事項Aについて

ア 引用発明の「デバイス」は「多数のアンテナ」を含み(構成b2)、引用文献1で使われた用語「デバイス」は「ステーション」に取り替えることができる(【0242】)ところ、引用発明の「多数アンテナ」を含む「送信デバイス」(送信ステーション)(構成c)は、本願発明の「複数のアンテナを備えた第1の局(STA)」に相当する。

イ 引用発明の「SVD方式のSM MIMOデバイス間ビームサーチング過程を行うために信号を送受信する過程」(構成a)において、「送信デバイス」(送信ステーション)によって行われる過程が、本願発明の「第1の局(STA)によって行われる方法」に相当する。

ウ 前記ア及びイによれば、本願発明と引用発明とは、複数のアンテナを備えた第1の局(STA)によって行われる方法である点で一致する。

(2)発明特定事項Bについて

ア 引用発明の「受信デバイス」(受信ステーション)(構成c)は、本願発明の「第2のSTA」に相当する。

イ 引用発明において、「トレーニング信号」は「ビームフォーミングアンテナグループで転送され」(構成c1)、「トレーニング信号を通じてチャネル推定及び信号検出を行い」(構成d)、「チャネル推定及び信号検出結果によるフィードバック情報」が「転送」され(構成e)、「フィードバック情報を用いて一つ以上のビームフォーミングアンテナグループを決定する」(構成g)。

したがって、引用発明の「トレーニング信号」は、「ビームフォーミング」、すなわちビーム形成に使用されると認められ、引用発明が想定する無線通信システム(【0247】)と本願発明が想定するラジオ技術(【0017】)が同様のものであることに鑑み、これら無線通信システムの技術常識を踏まえれば、引用発明の「トレーニング信号」は、本願発明の「ビーム形成トレーニングフレーム」に相当する。

ウ 引用発明は、「デバイスに含まれる多数のアンテナは、一つ以上のビームフォーミングアンテナグループに区分することができ」る(構成b2)ところ、引用発明の「送信デバイスの多数のビームフォーミングアンテナグループ」のうち「第1ビームフォーミングアンテナグループ」、「第2ビームフォーミングアンテナグループ」(構成c1)は、それぞれ、本願発明の「複数のアンテナのうちのアンテナの第1のグループ」、「複数のアンテナのうちのアンテナの第2のグループ」に相当する。

エ 前記ア~ウによれば、引用発明の「送信デバイスは、各アンテナグループを通じてトレーニング信号を受信デバイスに転送」する(構成c)、この時、「第1ビームフォーミングアンテナグループを通じて第1トレーニング信号を転送した後に第2ビームフォーミングアンテナグループを通じて第2トレーニング信号を転送」する(構成c1)ことは、本願発明の「前記複数のアンテナのうちのアンテナの第1のグループと前記複数のアンテナのうちのアンテナの第2のグループとを用いて複数のビーム形成トレーニングフレームを、第2のSTAに送信する」ことに相当する。

オ 引用発明は、「受信デバイスでは、転送されたトレーニング信号を通じてチャネル推定及び信号検出を行い」(構成d)、「該チャネル推定及び信号検出結果によるフィードバック情報」(構成e)には、「信号検出結果によって受信した信号の強度情報を含む」(構成e2)ところ、当該「信号検出結果によって受信した信号の強度情報」は、本願発明の「測定されるチャネル特性」に相当する。

カ 引用発明は、「送信デバイスはフィードバック情報を用いて一つ以上のビームフォーミングアンテナグループを決定する」(構成g)ものである。

キ 前記ア~カによれば、本願発明と引用発明とは、複数のアンテナのうちのアンテナの第1のグループと複数のアンテナのうちのアンテナの第2のグループとを用いて複数のビーム形成トレーニングフレームを、第2のSTAに送信することで共通する。

ただし、本願発明には、「アンテナの前記第1のグループは第1のパスに関連付けられ、アンテナの前記第2のグループは第2のパスに関連付けられ、前記第1および第2のパスは、測定されるチャネル特性に基づいて2つ以上のパスの中から選択される」ことが特定されているのに対し、引用発明には、「第1のパス」及び「第2のパス」について特定されていない点で相違する。

(3)発明特定事項C、Dについて

ア 引用発明は、「受信デバイスは、信号検出時にAWV(ビームフォーミングアンテナグループに適用するアンテナアレイ重み値ベクトル)情報を算出してそれをフィードバック情報に含めて送信デバイスに転送」する(構成e3)ものであり、当該「AWV(ビームフォーミングアンテナグループに適用するアンテナアレイ重み値ベクトル)情報」は、本願発明の「ビーム形成重みベクトル」に相当する。

イ 引用発明は、「トレーニング信号及びそれによるフィードバック情報は、多数のビームフォーミングアンテナグループのそれぞれに対する性能検出のために反復することができ」る(構成f)から、受信デバイスは、第1トレーニング信号によるフィードバック情報(第1ビームフォーミングアンテナグループに適用するAWV情報を含む)及び第2トレーニング信号によるフィードバック情報(第2ビームフォーミングアンテナグループに適用するAWV情報を含む)を送信デバイスに転送しているといえる。

ウ 前記(2)ア及びウ、前記ア及びイによれば、本願発明と引用発明とは、アンテナの第1のグループにて信号を送信するために第1のビーム形成重みベクトルを第2のSTAから受信すること、アンテナの第2のグループにて信号を送信するために第2のビーム形成重みベクトルを第2のSTAから受信すること、で一致する。

(4)前記(1)~(3)によれば、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>

「 複数のアンテナを備えた第1の局(STA)によって行われる方法であって、
前記複数のアンテナのうちのアンテナの第1のグループと前記複数のアンテナのうちのアンテナの第2のグループとを用いて複数のビーム形成トレーニングフレームを、第2のSTAに送信することと、
アンテナの前記第1のグループにて信号を送信するために第1のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信することと、
アンテナの前記第2のグループにて信号を送信するために第2のビーム形成重みベクトルを、前記第2のSTAから受信することと
を備える方法。」

<相違点>

本願発明は、「アンテナの前記第1のグループは第1のパスに関連付けられ、アンテナの前記第2のグループは第2のパスに関連付けられ、前記第1および第2のパスは、測定されるチャネル特性に基づいて2つ以上のパスの中から選択される」のに対して、引用発明は、これが特定されていない点。

5 当審の判断

(1)相違点についての判断

ア 本願発明の「アンテナの」「グループは」「パスに関連付けられ」ることについて、本願の明細書には、「アンテナグループ1および最も強いパスに対応する最良の送信ビーム形成重みを決定することが可能であり、」(【0084】)との記載、及び、「アンテナグループ2および第2の最も強いパスに対応する最良の送信ビーム形成重みは、<・・・中略・・・>であり得る。」(【0091】~【0093】)との記載があり、アンテナグループとパスとはビーム形成重みにより対応づけられていると解される。

イ 引用発明は、「SM MIMOシステムにおいてデバイスに含まれる多数のアンテナは、一つ以上のビームフォーミングアンテナグループに区分する」(構成b2)ものであり、「ビームフォーミングは、スマートアンテナの1つのタイプで、効率性を高めるために多数のアンテナを用いて特定対象に指向性信号を転送することを意味」する(構成b1)から、引用発明の「ビームフォーミングアンテナグループ」は、それぞれが特定対象に指向されており、指向された方向に沿う経路(パス)を通じて信号を転送しているので、特定対象に向かうパスと対応しているといえる。このことは、引用発明の「SM MIMO方式は、多重経路数を増加させることができ」る(構成b、下線は強調のため当審で付した。)こととも整合する。

そして、引用発明におけるビームフォーミングは、「AWV(ビームフォーミングアンテナグループに適用するアンテナアレイ重み値ベクトル)」(構成e3)により実現されていると解されるから、引用発明において、「ビームフォーミングアンテナグループ」とパスとは「AWV」と称される重み値ベクトルにより対応づけられていると解される。

ウ 前記ア及びイによれば、引用発明の「ビームフォーミングアンテナグループ」とパスとは、本願発明の「アンテナグループ」と「パス」と同様に、重みにより対応づけられているのだから、引用発明の「第1ビームフォーミングアンテナグループ」は第1のパスに対応し(第1のパスに関連付けられ)、「第2ビームフォーミングアンテナグループ」は第2のパスに対応する(第2のパスに関連付けられている)といえる。そうすると、前記4(2)ウを踏まえれば、本願発明の「アンテナの前記第1のグループは第1のパスに関連付けられ、アンテナの前記第2のグループは第2のパスに関連付けられ」ることは、引用発明に特定されているに等しい事項である。

エ 引用発明は、「送信デバイスはフィードバック情報を用いて一つ以上のビームフォーミングアンテナグループを決定する」(構成g)ものであり(前記4(2)カ)、前記4(2)オ(フィードバック情報は、「測定されるチャネル特性」を含むこと)、並びに「ビームサーチングとは、<・・・中略・・・>一つ以上のビームフォーミングアンテナグループを選択するためのプロセスを意味」すること(構成a)を踏まえれば、測定されるチャネル特性に基づいて一つ以上のビームフォーミングアンテナグループを選択するといえ、前記ア~ウによれば、本願発明の「前記第1および第2のパスは、測定されるチャネル特性に基づいて2つ以上のパスの中から選択される」ことは、引用発明に特定されているに等しい事項である。

オ したがって、前記相違点は、引用発明に特定されているに等しい事項であり、本願発明と引用発明とは同一である。

(2)請求人の主張についての判断

請求人は、意見書において、「引用文献1」「は、本願請求項1に記載の「アンテナの前記第1のグループは第1のパスに関連付けられ、アンテナの前記第2のグループは第2のパスに関連付けられ、前記第1および第2のパスは、測定されるチャネル特性に基づいて2つ以上のパスの中から選択される」という特徴を記載も開示もしていません。」と主張している。

しかしながら、前記(1)のとおり、当該主張は採用できない。

(3)まとめ

したがって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当する引用発明と同一であるから、同項の規定に違反し、特許を受けることができない。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2024-007200

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