特許拒絶査定不服審判
2024-007618
β-ラクタム化合物とプロベネシドの組み合わせとその使用
- 審判番号
- 2024-007618
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-568390
- 請求日
- 2024年05月08日
- 審決日
- 2026年02月12日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】イテルム セラピューティクス インターナショナル リミティド
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】三橋 真二
- 【請求人代理人】鶴田 準一
- 【請求人代理人】南山 知広
- 【請求人代理人】渡辺 陽一
- 【請求人代理人】中村 和広
- 審判長/審判官
- 審判長 前田 佳与子
- 審判官 川口 裕美子
- 審判官 井上 千弥子
- 分類
- P18 .121-Z (A61K) / P18 .575-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-568390「β-ラクタム化合物とプロベネシドの組み合わせとその使用」拒絶査定不服審判事件〔令和元年12月12日国際公開、WO2019/234240、令和3年9月27日国内公表、特表2021-525787〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年(2019年)6月7日(パリ条約による優先権主張 2018年6月7日、2019年2月13日、いずれも(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であり、その主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和 4年 6月 7日 手続補正書の提出
令和 5年 5月25日付け 拒絶理由通知書
同年11月29日 意見書及び手続補正書の提出
同年12月26日付け 拒絶査定
令和 6年 5月 8日 審判請求書及び手続補正書の提出
同年 6月27日 手続補正書(方式)の提出
第2 令和6年5月8日提出の手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年5月8日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は補正箇所を示す。)
「【請求項1】
疾患を治療または予防するための組合せ医薬であって、β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩と、プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩を含み、
約400mg~約600mgの前記β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩と、約400mg~約600mgの前記プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩は1日より長い期間にわたり1日あたり2回同時に経口投与され、
当該β-ラクタム化合物は式(III-2):
【化1】
[図:0001436579000001.jpg]
で示される化合物またはその医薬として許容可能な塩であり、
前記疾患は、単純性尿路感染症、複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、淋菌性尿道炎、骨盤内炎症性疾患、前立腺炎、骨感染症、関節感染症、糖尿病足病性感染症、感染性下痢である、
当該組合せ医薬。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和5年11月29日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
疾患を治療または予防するための組合せ医薬であって、β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩と、プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩を含み、
前記β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩と、前記プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩は1日より長い期間にわたり経口投与され、
当該β-ラクタム化合物は式(I):
【化1】
[図:0001436579000002.jpg]
で示され、式中、R1はH又は置換されていてもよいアルキルである、
当該組合せ医薬。」
2 本件補正の適否
(1)補正の目的
請求項1についての補正は、以下の補正事項1~4を含むものである。
ア 補正事項1
本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「式(I):
【化1】
[図:0001436579000003.jpg]
で示され、式中、R1はH又は置換されていてもよいアルキルである」「β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩」を、「式(III-2):
【化1】
[図:0001436579000004.jpg]
で示される化合物またはその医薬として許容可能な塩であ」る「β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩」に限定する。
イ 補正事項2
本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩」と、「プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩」を、「約400mg~約600mgの」「β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩」と、「約400mg~約600mgの」「プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩」に限定する。
ウ 補正事項3
本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「1日より長い期間にわたり経口投与」を、「1日より長い期間にわたり1日あたり2回同時に経口投与」に限定する。
エ 補正事項4
本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「疾患」を、「疾患は、単純性尿路感染症、複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、淋菌性尿道炎、骨盤内炎症性疾患、前立腺炎、骨感染症、関節感染症、糖尿病足病性感染症、感染性下痢である」に限定する。
上記補正事項1~4は、いずれも、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定する補正であって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の、請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(2)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(3)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
令和5年12月26日付け拒絶査定(以下「原査定」という。)における拒絶の理由において「引用文献1」として引用され、本願優先日前に公開された、「特表2009-542616号公報」(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、原文にない下線は、当審が付した。(以下同様。)
(摘記1a)「【請求項1】
下式の化合物。
【化1】
[図:0001436579000005.jpg]
・・・
【請求項7】
1種または複数の賦形剤および/または1種または複数の他の活性成分を用いてまたは用いずに経口投与用に製剤化された、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項8】
1種または複数の賦形剤および/または1種または複数の他の活性成分を用いてまたは用いずに経口投与用に製剤化された、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物およびプロベネシドを含む医薬組成物。
・・・」(特許請求の範囲)
(摘記1b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、抗感染剤、抗生物質、経口抗生物質、およびプロドラッグ、特にスロペネム(sulopenem)プロドラッグ、それらの調製、ならびに使用に関する。」(【0001】)
(摘記1c)「【発明を実施するための形態】
【0011】
化合物
本発明は、上に示し記載した、式IおよびIIのプロドラッグ化合物を包含する。立体中心でのRおよびS立体配置の両方を可能にし、それらを含む、上図に示したすべての立体異性体およびその混合物が企図され包含される。
・・・
【0015】
例えば、(2-エチル-1-オキソブトキシ)メチル(5R,6S)-6-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-7-オキソ-3-[[(1R,3S)-テトラヒドロ-1-オキシド-3-チエニル]チオ]-4-チア-1-アザビシクロ[3.2.0]ヘプト-2-エン-2-カルボキシラート(本明細書では化合物1)が提供され、これを下に図示する。
【0016】
【化5】
[図:0001436579000006.jpg]
」(【0011】~【0015】)
(摘記1d)「【0021】
使用
本発明のプロドラッグは、ヒトにおいて、気道、外科、中枢神経系、胃腸、泌尿生殖器、婦人科、皮膚軟組織、および眼の感染、ならびに市中肺炎などの多様な院内および市中感染を治療するために用いることができる。これらのプロドラッグの抗菌活性は、予防的使用にも有利に利用することができる。経口投与が好ましい。生物活性データは以下に示す。」(【0021】)
(摘記1e)「【0027】
プロドラッグの使用は、他の活性剤と併用できる。スロペネムまたはスロペネムプロドラッグの使用は、腎尿細管分泌の抑制作用を有するプロベネシドまたは類似の活性剤と併用できる。」(【0027】)
(摘記1f)「【0037】
プロドラッグ経口有効性
化合物を、3種の異なるin vivo感染モデルで、経口有効性に関してプロファイルした。それぞれの感染を確立するために用いた細菌性病原体は、それらの耐性プロファイル、およびヒト疾患に関連するモデルで感染を引き起こす能力に基づいて選択した。クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)分離菌1109および6485は、基質拡張型β-ラクタマーゼ陽性(ESBL+)株の最近の臨床分離菌のコレクションに由来し、シプロフロキサシンおよびセフタジジム、ならびに他のβ-ラクタム抗生物質に対して高いMICを有している。両分離菌は、マウスで致死性全身感染を引き起こす能力が実証されている。ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)1095は、マウス全身および気道感染モデルにおいて病原性である、ペニシリン耐性、マクロライド耐性株である。ヘモフィルス・インフルエンザ株Rd/AH5-3は実験室株Rdから得たものであり、PBP3での特定部位変異はこのβ-ラクタマーゼ陰性株をアンピシリン耐性にする(BLNAR)。この株は、この疾患のスナネズミ(Mongolian gerbil)モデルで中耳炎を起こすことができる。結果を下の表2に要約する。
【0038】
マウス急性全身感染モデル:このモデルでは、CF-1マウスを、致死接種源のクレブシエラ・ニューモニエ1109、6485、またはストレプトコッカス・ニューモニエ1095の腹腔内注射によって感染させた。広範囲の用量レベルを網羅するために、群当たり8から10頭のマウスからなる4つの用量群を感染および処置した。マウスに感染後30分/4時間、または感染後1/5時間にBID療法を投与し、感染後第4日の生存動物数に基づいて、PD50(感染、処置マウスの50%が生存する用量)を算出した。
【0039】
マウス気道感染モデル:このモデルは致死惹起(challenge)のストレプトコッカス・ニューモニエ1095の鼻腔内接種によって開始し、肺炎を引き起こした。広範囲の用量レベルを網羅するために、群当たり8から10頭のマウスからなる4つの用量群を感染および処置した。感染後18時間にBID療法を開始し、2日間継続した。感染後第10日に各用量群で生存しているマウスの数を用いて、PD50を求めた。
【0040】
スナネズミ中耳炎モデル:中耳炎を確立するために、スナネズミを、ヘモフィルス・インフルエンザのBLNAR株で胞内(intrabulla)接種によって感染させた。広範囲の用量レベルを網羅するために、群当たり5頭のスナネズミからなる4つの用量群を感染および処置した。感染後18時間にTID療法を開始し、2日間継続した。感染後第4日に、動物を安楽死させ、中耳液洗浄物を収集し、そこに含有される細菌数を求めた。細菌レベルに基づいてED50を算出し、100コロニー形成単位/ml未満のカウント数を有する中耳液洗浄試料は浄化されているとみなした。
【0041】
化合物1および2の化合物、化合物A(下に示す)、および下に示すスロペネムのピバロイルオキシメチルエステル(POM-エステル)((1R,3S)オキソチオラン立体化学)である化合物B1に関してデータを収集した。化合物B2は、ジアステレオマー混合物である(下に示す)。
・・・
【0045】
【表2】
[図:0001436579000007.jpg]
」(【0037】~【0045】)
イ 引用文献2
原査定における拒絶の理由において「引用文献2」として引用され、本願優先日前に公開された、「"1839. A PHASE 1 STUDY TO ASSESS THE PHARMACOKINETICS OF SULOPENEM ETZADROXIL (PF-03709270)",[ONLINE],2017年,PAGE(S):S525-S526,https://academic.oup.com/ofid/article/4/suppl_1/S525/4295836」(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。なお、原文が外国語のため、表を除き、日本語訳で示す。
(摘記2a)「1839.スロペネムエトザドロキシル(PF-03709270)の薬物動態を評価する第1相試験」(S525頁の表題)
(摘記2b)「背景.スロペネムエトザドロキシルは、スロペネム(CP-70,429)のプロドラッグであり、その生物学的利用能を高めるために設計されている。スロペネムエトザドロキシルの薬物動態、安全性、及び忍容性に対する食事及びプロベネシドの影響を評価するため、第1相試験を実施した。
方法.本試験は、健康なボランティアを対象に、プロベネシドを併用又は併用せずに、PF-03709270を食後又は空腹時に投与する、プラセボ対照、多回投与試験の無作為化二重盲検(治験責任医師及び被験者は盲検、治験依頼者はオープン)である。被験者は6日間にわたり1日2回、7日目に1回投与された。食後投与の治療群では、食事開始から約30分後に投与された。薬物動態学的検査は、各治療群8名で実施された。」(S525頁の「Background.」及び「Methods.」の項目)
(摘記2c)「結果.
[図:0001436579000008.jpg]
」(S526頁の「Results.」の項目)
(摘記2d)「結論.食物とプロベネシドは、いずれもPF-03709270の吸収を増加させ、結果として、スロペネムの血清中濃度を上昇させた。食物とプロベネシドの併用は、スロペネムの血清中曝露量をさらに増加させた。プロベネシド、食物、又は、両者の併用は、いずれも、スロペネムのT>MICを有意に延長させた。これらのデータは、第III相試験における用量設定におけるPKPDモデルの構築に役立つであろう。」(S526頁の「Conclusion.」の項目)
ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由において「引用文献3」として引用され、本願優先日前に公開された「R. CHANDRA; ET AL,PHARMACOKINETICS (PK), SAFETY AND TOLERABILITY OF SINGLE ORAL DOSES OF PF-03709270,[ONLINE],2008年10月25日,1 PAGE,https://d1io3yog0oux5.cloudfront.net/_676e5c2d77aec9723e22234a059ba464/iterumtx/db/395/2620/pdf/Chandra+et+al+-+PHARMACOKINETICS+%28PK%29%2C+SAFETY+AND+TOLERABILITY+OF+SINGLE+ORAL+DOSES+OF+PF-03709270%2C+WITH+AND+WITHOUT+CO-ADMINISTRATION+OF+PROBENEC,WITH AND WITHOUT CO-ADMINISTRATION OF PROBENECID
」(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。なお、原文が外国語のため、図及び表を除き、日本語訳で示す。
(摘記3a)「要約
・背景 PF-03709270は、院内感染及び市中感染を対象として開発中の注射用ペネム系抗生物質であるスロペネム(スロペネム)の新規経口プロドラッグである。経口吸収後、PF-03709270は加水分解され、活性スロペネムを生成することが期待される。ペネム系抗生物質の有効性のPK/薬力学的決定因子である最小発育阻止濃度(MIC)超過時間は、その有効性と相関する。スロペネムの有効性の目標MIC値は、市中感染及び院内感染において、それぞれ0.5μg/mL及び1μg/mLである。」(左欄の「ABSTRACT」の「Background」の項目)
(摘記3b)「はじめに
・スロペネム(スロペネム)は、一般的な院内及び市中病原体による感染症の治療を目的として開発されている、広域スペクトルの注射用ペネム系抗生物質である。
・スロペネムは、一般的な呼吸器病原体(ペニシリン耐性肺炎球菌を含む)、腸内細菌科細菌(ESBL産生株及びキノロン耐性株を含む)、及び特定の臨床的に重要な嫌気性菌に対して活性を示す。」(左欄の「INTRODUCTION」の項目の1~2番目の記載事項)
(摘記3c)「・カルバペネム系薬剤と同様に、スロペネムは経口投与では生物学的利用能がない。しかし、スロペネムの経口エステルプロドラッグ(PF-03709270)が開発されており(図1)、吸収されると循環血中にスロペネムを速やかに放出することが期待される。
[図:0001436579000009.jpg]
」(左欄の「INTRODUCTION」の項目の6番目の記載事項)
(摘記3d)「・プロベネシド併用の影響:プロベネシド500mg及び1000mgをPF-0307290と併用した場合、プラセボ併用投与と比較して、スロペネムの総平均AUClastはそれぞれ33.8%及び65.1%増加した。500mg群の個体間変動は、プロベネシド1000mg群と比較して大きかった。本試験では、プロベネシドとの併用又は非併用で、PF-03709270 600mgを投与したところ、血漿中濃度を1μg/mL以上で平均2.8時間以上維持することができた。プロベネシドとの併用により、MIC超過時間が約20~30%延長した(図4)。
結果(続き)
図4
プロベネシド(500mg及び1000mg)が、PF-03709270 600mgとの併用投与後のスロペネムの曝露パラメータ(CMAX及びAUC)に及ぼす影響
[図:0001436579000010.jpg]
表中の500mg及び1000mgの用量はプロベネシドの用量を示す。PF-03709270は、各投与期間において600mg投与された。」(右から2番目の欄~右欄の「・Effect of Probenecid Co-administration」の項目)
(摘記3e)「考察
・ スロペネムは、その経口プロドラッグであるPF-03709270と共に、市中肺炎、医療関連肺炎、複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、骨盤内炎症性疾患、複雑性皮膚・皮膚構造感染症、糖尿病性足病、淋病など、様々な感染症における感受性菌の治療に、静脈投与から経口までの投与レジメンを提供できる可能性がある。」(右欄の「DISCUSSION」の項目の1番目の記載事項)
(摘記3f)「・ 他のベータラクタム系薬剤と同様に、尿酸排泄促進剤であるプロベネシドは、腎クリアランス(スロペネムの主な排泄経路)を低下させ、スロペネムの全身曝露を増加させるために、必要に応じてPF-03709270と併用することができる。」(右欄の「DISCUSSION」の項目の4番目の記載事項)
エ 引用文献4
原査定の拒絶の理由において「引用文献4」として引用され、本願優先日前に公開された文献である、「米国特許出願公開第2005/0031685号明細書」(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。なお、原文が外国語のため、日本語訳で示す。
(摘記4a)「[0001]本発明は、周辺及び促進条件で、活性物質の制御された放出を提供し、保存時に溶解特性を維持することができる、ベータラクタム抗生物質、又はその薬学的に許容される水和物、塩若しくはエステルを含む有効成分の放出が改変された錠剤の、改善された安定化医薬組成物に関する。本発明の安定化された組成物は、また、胃及び小腸の蠕動圧力に抵抗することができ、組成物の完全性を維持し、それにより、急速放出現象の問題を回避するのに適している。有利には、本発明の組成物は、医薬組成物の1日1回又は2回の投与に適した速度での治療的に有効な活性成分の所望の放出を有利に選択的に提供することができる。組成物は任意に、プロベネシドを抗生物質アジュバントとして含む。」([0001])
(摘記4b)「[0031]多くの薬物及び薬物代謝物は、近位尿細管の能動輸送機構によって能動的に分泌されており、これらの機構をめぐる競合から相互作用が生じることがある。特に抗生物質療法では、能動尿細管分泌は重要な排泄経路である。尿細管で同じ能動輸送機構を利用する薬物は、分泌をめぐって競合する可能性がある。プロベネシドはこのクラスの薬物に属し、尿細管での能動分泌機構をめぐって他の薬物とうまく競合することができる。これにより、薬物が尿細管濾液に分泌されるのを防ぐ。プロベネシドはその後、尿細管から受動的に再吸収される。プロベネシドは、ペニシリンが登場した初期の頃、この併用によりペニシリンの血漿中濃度が上昇し、その持続時間が長くなったため、非常に有用であった。ペニシリン及び一部のセファロスポリンの尿中排泄の阻害は、これらの薬剤の胆汁中排泄を増加させ、それによって胆道内の抗生物質濃度を上昇させる手段として使用されてきた。これは、抗生物質による治療の有効性を高めるために使用されてきた(Antibiotic and Chemotherapy:Anti-infective agents and their use in therapy、第7版、O‘grady F.、Finch R.G.、Lambert H.P.、Greenwood D.編、Churchill Livingstone、1997)。
[0032]本発明では、プロベネシドを抗生物質アジュバントとして用い、治療有効成分の消失速度を低下させ、半減期を延長させる。プロベネシドを添加することで、親水性ポリマーマトリックスに配合される有効成分の量を低減しつつ、所望の1日1回投与プロファイルを維持することができる。」([0031]~[0032])
(摘記4c)「[0097]プロベネシド含有製剤
実施例12
[0098]セファレキシン、均一に予備混合された親水性ポリマーと硫酸カルシウムの混合物と乳糖を均一に混合し、ステアリン酸マグネシウムで滑沢剤を付与した。混合物を圧縮し、得られたスラグを粉砕して顆粒を作製した。整粒した顆粒を微粒及び残りの滑沢剤と混合した。
[0099]プロベネシド、微結晶性ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウムを30メッシュのふるいにかけて篩過した。混合物を圧縮し、得られたスラグを再び粉砕して顆粒を作製した。整粒した顆粒を残りのデンプングリコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、及び微粒と混合し、その後、予め圧縮したプロベネシド顆粒上にセファレキシン顆粒を圧縮した。
・・・
実施例13
[0103]セファレキシン、均一にプレブレンドされた親水性ポリマー、硫酸カルシウム、微結晶セルロースを均一に混合し、ステアリン酸マグネシウムで滑沢剤を付与した。混合物を圧縮し、得られたスラグを粉砕して顆粒を作製した。整粒した顆粒を微粉及び残りの滑沢剤と混合した。
[0104]プロベネシド、乳糖、グリコール酸ナトリウムデンプンを30メッシュのふるいにかけた。混合物を圧縮し、得られたスラグを粉砕して顆粒を作製した。整粒された顆粒は、残りのグリコール酸ナトリウムデンプン、ステアリン酸マグネシウム及び微粉と混合され、続いて、予め圧縮されたプロベネシド顆粒の上にセファレキシン顆粒が圧縮された。
・・・
実施例14
[0108]セファレキシン、プロベネシド、均一に混合された親水性ポリマー、硫酸カルシウム、微結晶セルロースの混合物を30メッシュの篩で篩い分け、ステアリン酸マグネシウムと混合した。混合物を圧縮し、得られたスラグを粉砕して顆粒を得た。整粒した顆粒を微粉及び残りの滑沢剤と混合し、さらに圧縮して錠剤とした。
・・・
実施例15
[0111]セファクロル、均一に予混合された親水性ポリマーと硫酸カルシウム、微結晶セルロースの混合物は均一に混合され、ステアリン酸マグネシウムで滑沢剤が付与された。混合物を圧縮し、得られたスラグを粉砕して顆粒を作製した。整粒された顆粒は、残りの微粉及び滑沢剤と混合された。
[0112]プロベネシド、デンプン、グリコール酸デンプンナトリウムは、30メッシュのふるいを通して篩い分けられた。混合物を圧縮し、得られたスラグを粉砕して顆粒を作製した。整粒された顆粒は、残りのグリコール酸デンプンナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、及び微粉と混合され、その後、予圧縮されたプロベネシド顆粒上にセファクロル顆粒が圧縮された。」([0097]~[0112])
オ 参考文献5(技術常識を示す文献)
本願優先日前に公開された文献である、「R F Cunningham et.al.、Clinical pharmacokinetics of probenecid、Clin Pharmacokinet、1981年、Mar-Apr;6(2):pp.135-51、doi: 10.2165/00003088-198106020-00004」(以下「参考文献5」という。)には、以下の記載がある。なお、原文が外国語のため、日本語訳で示す。
(摘記5a)「プロベネシドの臨床薬物動態」(標題)
(摘記5b)「要約
プロベネシドの臨床応用及びヒトにおける体内動態(薬物相互作用を含む)に関するレビューを示す。プロベネシドは、腎臓及び他の臓器における有機酸輸送の古典的な競合阻害剤である。プロベネシドの主な臨床用途は2つある。慢性痛風治療における尿酸排泄促進剤、及び抗生物質(ペニシリン系及びセファロスポリン系など)の血中濃度を高めるための補助剤である。プロベネシドは経口投与後、ほぼ完全に吸収される。本剤はグルクロン酸抱合及びアルキル側鎖の酸化によって広範に代謝されるが、芳香環の酸化は起こらない。血漿中のプロベネシドの半減期(4~12時間)は用量依存的である。代謝物の主な排泄経路は腎排泄であり、親薬物の排泄はごくわずかで、尿pHに依存する。プロベネシドとその酸化代謝物は、血漿タンパク質、特にアルブミンに広く結合する。動物実験に基づく組織濃度は、一般的に血漿濃度よりも低くなる。プロベネシドに関連する薬物間相互作用のほとんどは、腎臓における酸性薬物の輸送阻害によるものである。同様に、プロベネシドは腎臓による多くの酸性内因性物質の尿細管排泄にも影響を及ぼす。プロベネシドはまた、脳におけるカテコールアミンの酸性代謝物(例えばホモバニリン酸やヒドロキシインドール酢酸)の輸送阻害にも関与している。プロベネシドの分析には、分光光度法、分光蛍光法、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、放射免疫測定法に基づく様々な分析法がある。」(Abstract)
カ 参考文献6(技術常識を示す文献)
本願優先日前に公開された文献である、「H.G.Kampffmeyer et.al.、Serum concentrations of ampicillin andprobenecid and ampicillin excretion afterrepeated oral administration of a pivampicillin-probenecid salt(MK-356)、European Journal of Clinical Pharmacology、1975年、Vol.9,pp.125-129」(以下「参考文献6」という。)には、以下の記載がある。なお、原文が外国語のため、日本語訳で示す。
(摘記6a)「ピバンピシリン-プロベネシド塩(MK-356)の反復経口投与後のアンピシリン及びプロベネシドの血清濃度とアンピシリン排泄」(標題)
(摘記6b)「要約
男性ボランティア20名に、モル比1:1のピバンピシリン-プロベネシド塩(MK-356)を12時間間隔で経口投与(2100、1050、525mg)した。各投与後、プロベネシドの最高血清濃度はアンピシリンの最高血清濃度より2時間遅れて観察された。MK-356の初回投与後、アンピシリンの見かけの消失速度は用量依存的であり、一次速度論には従わなかった。これは、高用量投与後には見かけの半減期が長くなるためである。12時間後に同量のMK-356を投与したところ、前回の投与後のアンピシリン濃度から予想されるよりも大きな血清アンピシリン最高濃度の上昇が認められた。12名の男性ボランティアにMK-356を525mg又はピバンピシリンを350mg、それぞれ1日3回、4日間無作為に投与したところ、両薬剤の初回投与後及び最終投与後のアンピシリン濃度曲線下面積は同一であった。初回投与量としてMK-356を2100mg又は1050mg、投与した場合、投与後12時間以内に尿からアンピシリンの30~40%が回収された。この結果は、プロベネシド400mg以上をピバンピシリン(MK-356)700mgと併用して1日2回投与した場合、アンピシリンの最高血清濃度が上昇し、連続投与後の排泄速度が遅くなることを示している。」(Summary)
(4)引用文献2に記載された発明
引用文献2には、健康なボランティアを対象に、プロベネシドを併用又は併用せずに、PF-03709270を食後又は空腹時に投与する試験が記載され、被験者は6日間にわたり1日2回、7日目に1回投与されたことが記載されている(摘記2b)。
そして、上記試験の結果が記載された表の左端の「治療(Treatment)」の上から3番目と4番目の項目によれば、500mgのPF-03709270と500mgのプロベネシド(probenecid)を併用する試験が行われたことが記載されている(摘記2c)。
以上によれば、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
<引用発明>
「健康なボランティアを対象に、500mgのPF-03709270と500mgのプロベネシドを併用して、食後又は空腹時に投与する医薬であって、6日間にわたり1日2回、7日目に1回投与するための医薬。」
(5)本件補正発明と引用発明の対比
ア 引用発明の「PF-03709270」は、「スロペネムエトザドロキシル」であると引用文献2には記載されており(摘記2a)、引用文献3には、「PF-03709270」は、スロペネムの経口エステルプロドラッグであり、化学構造式は以下のとおりであると記載されている(摘記3c)。
[図:0001436579000011.jpg]
そして、PF-03709270(スロペネムエトザドロキシル)の化学構造式が上記のとおりであることは、本願明細書の【0223】に以下のとおり記載されていることと整合する。
「【0223】
いくつかの実施態様では、β-ラクタム化合物は、
【化11】
[図:0001436579000012.jpg]
である。」
すなわち、引用発明のPF-03709270(スロペネムエトザドロキシル)は、スロペネムの経口エステルプロドラッグであって、本件補正発明の「式(III-2):
【化1】
[図:0001436579000013.jpg]
で示される化合物」に相当する。
そうすると、引用発明の「PF-03709270」は、本件補正発明の「β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩」であって、「当該β-ラクタム化合物は式(III-2):
【化1】
[図:0001436579000014.jpg]
で示される化合物またはその医薬として許容可能な塩」に相当する。
また、引用発明における「500mgのPF-03709270」は、本件補正発明の「約400mg~約600mgの前記β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩」に相当する。
イ 引用発明の「プロベネシド」は、本件補正発明の「プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩」に相当し、また、引用発明の「500mgのプロベネシド」は、本件補正発明の「約400mg~約600mgの前記プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩」に相当する。
ウ 引用発明は、PF-03709270とプロベネシドを併用するものであるから、本件補正発明の「組合せ医薬」に相当する。
また、引用文献2は、「スロペネムエトザドロキシル(PF-03709270)の薬物動態を評価する第1相試験」について記載されたものであり(摘記2a)、「薬物動態」を評価し、「第1相試験」、すなわち、医薬品の有効性と安全性を評価するための試験である以上、引用発明は、「疾患を治療又は予防するための」医薬であり、本件補正発明における「疾患を治療または予防するための」組合せ医薬に相当する。
エ 引用発明のPF-03709270は、「経口投与」されるプロドラッグであり(摘記1a、1b、1f、3a、3c)、プロベネシドも「経口投与」されるものである(摘記4c、5b、6b)。そして、引用発明は、「6日間にわたり1日2回」、PF-03709270とプロベネシドを併用、すなわち、同時に投与するものであるから、本件補正発明の「1日あたり2回同時に経口投与され」るものに相当する。
オ 本件補正発明における「1日より長い期間にわたり1日あたり2回」投与とは、「1日あたり2回同時に経口投与」される期間が、「1日より長い期間にわたる」ことを特定していると認められるから、引用発明における「6日間にわたり1日2回」は、本件補正発明における「1日より長い期間にわたり1日あたり2回」に相当する。
カ 以上によれば、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「疾患を治療または予防するための組合せ医薬であって、β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩と、プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩を含み、
約400mg~約600mgの前記β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩と、約400mg~約600mgの前記プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩は1日より長い期間にわたり1日あたり2回同時に経口投与され、
当該β-ラクタム化合物は式(III-2):
【化1】
[図:0001436579000015.jpg]
で示される化合物またはその医薬として許容可能な塩である、
当該組合せ医薬。」
<相違点>
対象とする疾患が、本件補正発明は、「単純性尿路感染症、複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、淋菌性尿道炎、骨盤内炎症性疾患、前立腺炎、骨感染症、関節感染症、糖尿病足病性感染症、感染性下痢」であるのに対し、引用発明は、対象とする疾患が特定されていない点。
(6)判断
ア 相違点について
(ア)引用文献1は、スロペネムの経口プロドラッグについて記載された文献であり(摘記1a、1b)、当該プロドラッグは、市中肺炎などの多様な感染を治療するために用いることができること(摘記1d)、具体例として、肺炎を引き起こしたマウス気道感染モデルや中耳炎のスナネズミモデルに対して、化合物1が有効であったこと(摘記1f、特に、【0039】、【0040】、【表2】)、化合物1は、下式
[図:0001436579000016.jpg]
で示されることが記載されている(摘記1c)。
上記化合物1は、引用発明における「PF-03709270」であるから(摘記3c)、引用文献1には、スロペネムの経口プロドラッグであるPF-03709270の対象疾患として、肺炎や中耳炎が記載されているといえる。
(イ)また、引用文献3には、PF-03709270は、院内感染及び市中感染を対象疾患とするスロペネムの経口プロドラッグであると記載され(摘記3a)、スロペネムとその経口プロドラッグであるPF-03709270の対象疾患として、市中肺炎、医療関連肺炎、複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、骨盤内炎症性疾患、糖尿病性足病、淋病など、様々な感染症が記載されている(摘記3e)。
(ウ)上記(ア)、(イ)によれば、スロペネムのプロドラッグであるPF-03709270の対象疾患として、「肺炎や中耳炎」、「市中肺炎、医療関連肺炎、複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、骨盤内炎症性疾患、糖尿病性足病、淋病」が知られていたから、PF-03709270を含む引用発明の対象疾患を「肺炎や中耳炎」、「市中肺炎、医療関連肺炎、複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、骨盤内炎症性疾患、糖尿病性足病、淋病」、すなわち、「単純性尿路感染症、複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、淋菌性尿道炎、骨盤内炎症性疾患、前立腺炎、骨感染症、関節感染症、糖尿病足病性感染症、感染性下痢」とすることは、当業者が容易に行うことである。
イ 本件補正発明の効果について
(ア)対象疾患について
a 上記(5)カのとおり、本件補正発明は、対象とする疾患を「単純性尿路感染症、複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、淋菌性尿道炎、骨盤内炎症性疾患、前立腺炎、骨感染症、関節感染症、糖尿病足病性感染症、感染性下痢」に特定した点で引用発明とは相違している。
そこで、疾患を特定したことによる効果について検討すると、本願明細書には、対象とする疾患について、【0175】~【0200】に、以下のとおり記載されている。
「【0175】
治療する対象と疾患
いくつかの実施態様では、上記それを必要とする対象は動物である。いくつかの実施態様では、上記それを必要とする対象はヒトである。
・・・
【0178】
いくつかの実施態様では、疾患は、対象における1つ以上の微生物(例えば細菌)の集団の増加または減少と関係している。
【0179】
いくつかの実施態様では、疾患は、対象における1つ以上の微生物(例えば細菌)の集団の増加と関係している。いくつかの実施態様では、本開示の方法を適用した結果として、対象において1つ以上の微生物(例えば細菌)の集団が減少する。
【0180】
いくつかの実施態様では、疾患は、対象における1つ以上の微生物(例えば細菌)の集団の減少と関係している。いくつかの実施態様では、本開示の方法を適用した結果として、対象において1つ以上の微生物(例えば細菌)の集団が増加する。
【0181】
いくつかの実施態様では、疾患は、1つ以上の細菌の集団の増加または減少と関係しており、その細菌の選択は、大腸菌、肺炎桿菌、プロテウス・ミラビリス、エンテロバクター・クロアカ、クレブシエラ・オキシトカ、シトロバクター・フレウンディイコンプレックス、クロストリジウム・クロストリジオフォルム、ユーバクテリウム・レンタム、ペプトストレプトコッカス属の種、バクテロイデス・フラジリス、バクテロイデス・ディスタソニス、バクテロイデス・バクテロイデス・オバツス、バクテロイデス・テタイオタオミクロン、バクテロイデス・ユニフォルミス、バクテロイデス・コプロコラ、プレボテラ・コプリ、ポルフィロモナス・アサッカロリチカ、プレボテラ・ビビアからなされるか、スクシニビブリオ属、アリスティペス属、プレボテラ属、パラプレボテラ属、パラバクテロイデス属、オドリバクター属の任意の細菌からなされる。
【0182】
いくつかの実施態様では、疾患は、スタフィロコッカス・エピデリミティス、肺炎レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、ストレプトコッカス・アガラクチア、化膿レンサ球菌から選択された1つ以上の細菌の集団の増加または減少と関係している。
【0183】
いくつかの実施態様では、疾患は、シトロバクター・フレウンディイ、シトロバクター
・コセリ、エンテロバクター・アエロゲネス、エンテロバクター・クロアカ、ヘモフィルス・インフルエンザ、ヘモフィルス・パラインフルエンザ、クレブシエラ・オキシトカ、モラクセラ・カタラーリス、モーガネラ・モーガニイ、プロテウス・ブルガリス、プロビデンシア・レットゲリ、プロビデンシア・スチュアルティイ、セラチア・マルセッセンスから選択された1つ以上の細菌の集団の増加または減少と関係している。
【0184】
いくつかの実施態様では、疾患は、バクテロイデス・ブルガリス、ウェルシュ菌、フソバクテリウム属の種から選択された1つ以上の細菌の集団の増加または減少と関係している。
【0185】
いくつかの実施態様では、疾患は感染症と関係している。いくつかの実施態様では、感染症はグラム陰性菌感染症である。いくつかの実施態様では、感染症はグラム陽性菌感染症である。
【0186】
いくつかの実施態様では、感染症は、プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩なしに投与するときの1つ以上の抗生剤に対して耐性である。
【0187】
いくつかの実施態様では、感染症は、プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩なしに投与するときの1つ以上のβ-ラクタム化合物に対して耐性である。
【0188】
いくつかの実施態様では、疾患は、単純性尿路感染症、複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、単純性腹腔内感染症、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、淋菌性尿道炎、骨盤内炎症性疾患、前立腺炎、骨感染症、関節感染症、糖尿病足病性感染症、感染性下痢である。
【0189】
いくつかの実施態様では、疾患は、対象における微生物叢の変化と関係している(に起因する)。
【0190】
いくつかの実施態様では、疾患は、ヒト対象における微生物叢の変化と関係している(に起因する)。
【0191】
いくつかの実施態様では、疾患は神経変性疾患である。
【0192】
いくつかの実施態様では、疾患は、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症、ハンチントン病のいずれかである。
【0193】
いくつかの実施態様では、疾患はアルツハイマー病である。プロベネシドは、脳脊髄液の中のβ-ラクタム化合物の濃度を増大させることが見いだされていることに注意されたい(Ralph G. DaceyとMerle A. Sande、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 第6巻:437~441ページ(1974年))。より最近になり、病原菌ポルフィロモナス・ジンジバリスが、脳においてアルツハイマー病と関係する病巣と関係していることが見いだされ(Dominy他、Sci.Adv.第5巻:eaau3333ページ(2019年))、スロペネムはこの細菌に対して活性である(Lois M. EdnieとPeter C. Appelbaum、Antimicrobial Agents and Chemotherapy第53巻:2163~2170ページ(2009年))。理論に囚われることを望まないため、β-ラクタム化合物(例えば化合物III-2b)は、プロベネシドとともに投与されるとき、スロペネムだけを用いた治療と比べて、この細菌による脳感染症のより効果的な治療につながる可能性がある。
【0194】
いくつかの実施態様では、疾患はがんである。
【0195】
いくつかの実施態様では、がんは固形腫瘍である(例えば卵巣がん、乳がん、頭頸部がん、腎臓がん、膀胱がん、肝細胞がん、大腸がん、リンパ腫のいずれか、またはこれらの任意の組み合わせ)。
【0196】
いくつかの実施態様では、がんは、肉腫または癌腫であり、その例は、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨形成性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管無い非肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸がん、膵臓がん、前立腺がん、扁平細胞がん、基底細胞がん、腺癌、汗腺がん、脂線がん、乳頭がん、乳頭腺癌、嚢胞腺がん、髄様がん、気管支原性がん、肝細胞がん、胆管がん、絨毛がん、精上皮がん、胚性がん、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺がん、小細胞肺がん、上皮がん、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠細胞腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫である。
【0197】
いくつかの実施態様では、がんは白血病であり、その例は、急性リンパ球性白血病と急性骨髄性白血病(骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病と慢性リンパ球性白血病)である。
【0198】
いくつかの実施態様では、がんは、真性多血症、リンパ腫(ホジキン病と非ホジキン病)、多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症、重鎖病のいずれかである。
【0199】
いくつかの実施態様では、疾患は炎症性腸疾患である。
【0200】
いくつかの実施態様では、炎症性腸疾患は、クローン病、潰瘍性大腸炎、鑑別が困難な大腸炎、過敏性腸症候群、顕微鏡的大腸炎、空置大腸炎、ベーチェット病のいずれかである。」
b 上記aのとおり、本願明細書には、様々な疾患が多数列挙され、そのうちの一つとして、本件補正発明で特定された疾患が記載されている(【0188】)。
しかしながら、実際に、本件補正発明で特定された疾患に対して効果があることを確認した具体例は記載されていない。
そうすると、本件補正発明で特定された疾患とすることで優れた効果を奏することは、本願明細書において、何ら確認されていない。
また、上記のとおり、本件補正発明で特定された疾患は、本願明細書中、多数列挙された様々な疾患のうちの一つとして記載されているにすぎず、多数列挙された様々な疾患の中でも、特に、本件補正発明の疾患に対して予測し得ないような優れた効果を奏するとの説明が記載されているものでもない。
そうすると、本件補正発明が、対象とする疾患を特定したことにより、引用文献2に記載された発明及び引用文献1~3に記載された事項から予測し得ないような優れた効果を奏するということはできない。
(イ)本願明細書記載の実施例について
a 本願明細書の記載
本件補正発明は、式(III-2)の化合物とプロベネシドを経口投与する組合せ医薬に関する発明であるところ、本願明細書には、式(III-2)の化合物とプロベネシドを経口投与する組合せ医薬の具体例として、以下の実施例が記載されている。
「【実施例】
【0472】
実施例1:β-ラクタム化合物の血漿薬物動態パラメータに対するプロベネシドの効果の評価
無作為化二重盲検(治療者盲検、被験者盲検、治験依頼者非盲検)プラセボ対照多用量研究において、スロプネムとそのプロドラッグ、化合物III-2b、化合物III-1bの薬物動態に対するプロベネシドの効果を、給食状態または絶食状態にて、プロベネシドの共投与ありまたは共投与なしで調べた。192人の対象を無作為に複数の治療群に分け、給食状態または絶食状態にて、500mgのプロベネシドの共投与ありまたは共投与なしで、活性薬またはプラセボを与えた。
【0473】
対象に1日に2回(12時間ごと)、6日間にわたって投与した後、7日目に1回投与した。すべての治療群を並列または逐次的に走らせることができた。対象は無作為化リストに基づいて割り当てた。対象が研究への登録順に基づいて群に入るのに合わせて順番に無作為化番号を割り当てた。安全性に関係しない理由で辞退した対象は置き換えることができた可能性がある。血液サンプルをあらかじめ決められた間隔で取得し、薬物動態を特徴づけた。この研究の結果を表1~表3に示す。
【表1】
[図:0001436579000017.jpg]
17日目についてだけ表示
Tmaxは中央値(最小-最大)として記録。
AUCinf=無限遠まで外挿した濃度-時間曲線よりも下の面積;AUClast=時刻0から最後の時刻(1日目)までの定量可能な濃度のAUC;AUCtau=時刻0から12時間までの濃度-時間曲線よりも下の面積;%CV=変動係数;Cmax=観察された最大濃度;SD=標準偏差;t1/2=半減期;Tmax=観察された最大濃度までの時間
【表2】
[図:0001436579000018.jpg]
17日目についてだけ表示
Tmaxは中央値(最小-最大)として記録。
AUCinf=無限遠まで外挿した濃度-時間曲線よりも下の面積;AUClast=時刻0から最後の時刻(1日目)までの定量可能な濃度のAUC;AUCtau=時刻0から12時間までの濃度-時間曲線よりも下の面積;%CV=変動係数;Cmax=観察された最大濃度;SD=標準偏差;t1/2=半減期;Tmax=観察された最大濃度までの時間
【表3】
[図:0001436579000019.jpg]
1線形モデルで使用した各治療に曝露した対象の数を示している。
AUCtau=時刻0から12時間までの濃度-時間曲線よりも下の面積;CI=信頼区間;Cmax=観察された最大濃度;GM=幾何平均;GMR=幾何平均の比
【0474】
化合物III-2bの第1相、無作為化、治療者盲検、被験者盲検、治験依頼者非盲検、プラセボ対照、単回投与と多数回投与研究をさらに実施した。対象に関する計画されたコホートが6つ存在していた。計画された合計で72人の対象について、各コホートに12人の対象が登録されるようにした。多数回投与コホートの対象には10日間投与し;各コホートのために新たな対象を募集した。コホート2と3からの結果を下記の表4に示す。これらコホートの対象は、1日目から9日目までほぼ08時00と20時00にBID投与された(12時間間隔)。10日目、対象にはほぼ08時00にだけ1回投与された。血液サンプルをあらかじめ決められた間隔で取得し、薬物動態を特徴づけた。
【表4】
[図:0001436579000020.jpg]
aAUCinf、AUCtau、Cmax、CL/Rに関しては幾何平均(%CV);t1/2、AE%に関しては算術平均(%CV);Tmax、Tlast、TAMIC1、TAMIC2に関する中央値(範囲)。
AE24=投与後に尿中に排泄されて24時間にわたって変化しなかったスロペネムの量、AE%=尿中に排泄されるスロペネムの割合、AUCinf=時刻0から無限遠の時刻までの濃度-時間曲線よりも下の面積;AUCtau=時刻0から時刻τ(投与間隔)までの濃度-時間曲線よりも下の面積;BID=1日に2回、CL/R=腎クリアランス、Cmax=単回投与後に観察された薬濃度の最大値(ピーク)、Ctrough=観察された薬濃度の最小値(谷)、MIC0.5=血漿中濃度が0.5μg/mlを超えていた時間、MIC1.0=血漿中濃度が1.0μg/mlを超えていた時間、N=対象の数;n=平均に寄与する対象の数、NC=まとめた統計値を計算せず、Rac=蓄積比、t1/2=消失半減期、TAMIC1=最小濃度が0.5μg/mlのとき、最小阻止濃度を超えていた時間、TAMIC2=最小濃度が1.0μg/mlのとき、最小阻止濃度を超えていた時間、Tmax=薬を投与した後にピーク濃度または最大濃度に達するまでの時間。
【0475】
実施例2:経口投与と連続輸液によるβ-ラクタム化合物の血漿薬物動態パラメータに対するプロベネシドの効果の比較
無作為化、被験者盲検、治療者非盲検、治験依頼者非盲検、プラセボ対照、多数回投与研究を並列なコホートで実施し、化合物III-2bの薬物動態を調べた。それぞれ約10人の対象(4:1=活性化合物:プラセボ)からなるコホートが7つ存在していた。対象にはBID(12時間ごと)で6日間投与した後、7日目には1回だけ投与した。血液サンプルをあらかじめ決められた間隔で取得し、薬物動態を特徴づけた。結果を表5に示す。
【表5】
[図:0001436579000021.jpg]
a中央値(範囲)。
b算術平均(CV%)。
cコホート1と2だけについて回収。
dスロペネム(MW=349.45)と化合物III-2b(MW=477.62)の間のMWの差を調整した比。コホート1は、給食状態で化合物III-2bを1gBIDであった。
コホート2は、絶食状態で化合物III-2bを1gBIDであった。
コホート3は、給食状態で化合物III-2bを1.5gBIDであった。
コホート4は、絶食状態で化合物III-2bを0.5gBIDであった。
コホート6は、絶食状態で化合物III-2bを1g+プロベネシドを1gBIDであった。
コホート7は、給食状態で化合物III-2bを1gTIDであった。
N=示されている集団内の治療群に含まれる対象の総数。n=AUCinfとt1/2を推定した対象の数。CV=変動係数;Cmax=投与期間内に観察された血漿中濃度の最大値;AUCinf=時刻0から無限遠まで外挿した濃度-時間曲線よりも下の面積;AUClast=時刻0から最後に定量可能な濃度であった時刻までの濃度-時間曲線よりも下の面積;Tmax=Cmaxに到達するまでの時間;t1/2=消失半減期;TAMIC0.5=血漿中薬濃度が0.5μg/mlを超えていた時間;TAMIC1.0=血漿中薬濃度が1.0μg/mlを超えていた時間;Rac=蓄積比;Ae24=投与後に尿中に排泄されて24時間にわたって変化しなかった薬の量;Ae24%=投与してから24時間後までに尿の中で回収された変化しなかった薬の累積量(投与した用量に対する%として表示);CLr=腎クリアランス;BID=1日に2回;TID=1日に3回;MW=分子量。
【0476】
静脈内投与されたスロペネムの薬物動態を、無作為化、治療者盲検、被験者盲検、治験依頼者非盲検、プラセボ対照、多数回投与研究で調べた。
・・・
【0477】
実施例3:実施例1と実施例2におけるさまざまな研究のまとめ
実施例1と実施例2に記載したさまざまな研究の結果を下記の表7A~表7Cにまとめ、それをさらに図1にまとめた。経口経路を通じて化合物III-1bまたは化合物III-2bを単独で投与したときには、7日目のスロペネムのAUCは1日目よりも小さいことが観察された。さらに、化合物III-1bまたは化合物III-2bをプロベネシドとともに投与したときには、スロペネムのAUCは、7日目には1日目に見られたよりも大きいことが観察された。
【表7A】
[図:0001436579000022.jpg]
AUCtau=時刻0から12時間までの濃度-時間曲線よりも下の面積。
【表7B】
[図:0001436579000023.jpg]
AUCtau=時刻0から12時間までの濃度-時間曲線よりも下の面積。
【表7C】
[図:0001436579000024.jpg]
AUCinf=時刻0から無限遠までの濃度-時間曲線よりも下の面積。
【0478】
実施例4:同じ投与経路でβ-ラクタム化合物とプロベネシドを投与することの効果
正常で健康な対照にβ-ラクタム化合物(化合物III-2b;スロペネムエトザドロキシル)とプロベネシドを2つの別々の研究で与えた。研究1では、対象に500mgのスロペネムエトザドロキシルを経口懸濁液のための粉末として投与すると同時に、500mgのプロベネシドを単層錠剤として投与した。研究2では、対象に500mgのスロペネムエトザドロキシルと500mgのプロベネシドを経口合剤にして投与した。これら2つの研究の結果を図2~図5と下記の表8に示す。
【表8】
[図:0001436579000025.jpg]
【0479】
合剤にしたスロペネムエトザドロキシルとプロベネシドを投与すると、別々の製剤にしたそれぞれの薬の投与と比べて血液中のスロペネムの量が増加することが観察される。
【0480】
絶食状態でスロペネムエトザドロキシルとプロベネシドの組み合わせを合剤にして投与すると、曲線下の面積によって測定するとき、瓶の中の粉末としての同量のスロペネムエトザドロキシルを単層錠剤中のプロベネシドとともに送達する場合と比べて血液中のスロペネムの量が17.9%増加する。
【0481】
同様に、給食状態でスロペネムエトザドロキシルとプロベネシドの組み合わせを合剤にして投与すると、曲線下の面積によって測定するとき、瓶の中の粉末としての同量のスロペネムエトザドロキシルを単層錠剤中のプロベネシドとともに送達する場合と比べて血液中のスロペネムの量が11.3%増加する。」
「【図1】
[図:0001436579000026.jpg]
【図2】
[図:0001436579000027.jpg]
【図3】
[図:0001436579000028.jpg]
【図4】
[図:0001436579000029.jpg]
【図5】
[図:0001436579000030.jpg]
」
「【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、経口経路を通じて経口スロペネムのプロドラッグを送達したときの血漿中スロペネムの曲線下面積(AUC)に対するプロベネシドの効果を示すグラフである。
【0032】
【図2】図2は、絶食状態でのβ-ラクタム化合物(化合物III-2b)とプロベネシドの投与がβ-ラクタム化合物(化合物IIb)の血漿中レベルに及ぼす効果を示すダイヤグラムである。
【0033】
【図3】図3は、給食状態でのβ-ラクタム化合物(化合物III-2b)とプロベネシドの投がβ-ラクタム化合物(化合物IIb)の血漿中レベルに及ぼす効果を示すダイヤグラムである。
【0034】
【図4】図4は、同じ投与経路によるβ-ラクタム化合物(化合物III-2b)とプロベネシドの投与がβ-ラクタム化合物(化合物IIb)の曲線下面積(AUC)に及ぼす効果を(異なるさまざまな投与経路による場合と比較して)示すグラフである。
【0035】
【図5】図5は、同じ投与経路によるβ-ラクタム化合物(化合物III-2b)とプロベネシドの投与がβ-ラクタム化合物(化合物III-2b)の最大血漿中濃度(Cmax)に及ぼす効果を(異なるさまざまな投与経路による場合と比較して)示すグラフである。」
b 本件補正発明の具体例
そこで、上記aの実施例について検討すると、上記(ア)のとおり、本件補正発明で特定される疾患の実施例は存在しないことに加えて、以下の(a)~(d)のとおり、実施例は、いずれも、「約400mg~約600mgの前記β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩」と「約400mg~約600mgの前記プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩」を含む組合せ医薬ではない点でも、本件補正発明の具体例であるとはいえない。
(a)実施例1
本件補正発明は、式(III-2)で示されるβ-ラクタム化合物の用量が、「約400mg~約600mg」に特定された発明であるところ、実施例1のうち、【0472】~【0473】に記載された試験は、式(III-2)で示されるβ-ラクタム化合物の用量について記載されておらず不明であるから、本件補正発明の具体例であるとはいえない。
また、【0474】に記載された試験は、式(III-2)で示されるβ-ラクタム化合物を1200mg、プロベネシドを1000mgで組み合わせた試験と、式(III-2)で示されるβ-ラクタム化合物を単独で2000mg投与した試験であるから、いずれも、本件補正発明の具体例ではない。
(b)実施例2
実施例2のうち、【0475】に記載された試験は、式(III-2)で示されるβ-ラクタム化合物を1g、プロベネシドを1gで組み合わせた試験(コホート6)と、式(III-2)で示されるβ-ラクタム化合物を単独で投与した試験(コホート1~5、7)であるから、いずれも、本件補正発明の具体例ではない。
また、【0476】に記載された試験は、静脈投与であって、経口投与ではないから、本件補正発明の具体例ではない。
(c)実施例3
実施例3は、実施例1と実施例2をまとめたものであり、【0477】には、本件補正発明の具体例は記載されていない。また、【0477】には、「実施例1と実施例2に記載したさまざまな研究の結果を下記の表7A~表7Cにまとめ、それをさらに図1にまとめた。」と記載され、【0031】の図1の説明には、「図1は、経口経路を通じて経口スロペネムのプロドラッグを送達したときの血漿中スロペネムの曲線下面積(AUC)に対するプロベネシドの効果を示すグラフである。」と記載され、図1には、「プロベネシドあり」であって、「化合物III-1bまたは化合物III-2bの用量(mg)」が「500」の項目が存在する。仮に、上記「500」の項目が、化合物III-2bの用量が500mgである試験のデータであると解釈したとしても、併用するプロベネシドの用量は図1からは不明である。そして、図1は、実施例1と2の結果をまとめた表であるから、実施例1~2におけるプロベネシドの用量を検討してみても、実施例1~2には、プロベネシドの用量が1000mg(1g)の試験(【0474】の表4、実施例2のコホート6)が記載されており、必ずしも「約400mg~約600mg」ではないから、図1のデータにおけるプロベネシドの用量が、本件補正発明で特定される「約400mg~約600mg」であると理解することもできない。そうすると、図1のデータも、本件補正発明の具体例であるとはいえない。
(d)実施例4
本件補正発明は、「1日より長い期間にわたり1日あたり2回同時に経口投与」されることが特定された発明であるところ、実施例4は、式(III-2)で示されるβ-ラクタム化合物を500mg、プロベネシドを500mgで組み合わせていても、「1日より長い期間にわたり1日あたり2回同時に経口投与」された試験であるか否かは不明であるから、本件補正発明の具体例ではない。むしろ、実施例4の結果を示す図2~図5、表8を検討すると、図2、3は、横軸の「投与後の名目時間(hr)」が12時間までしかなく、図4、表8は、時刻0から最後の時刻(1日目)までの定量可能な濃度のAUCであるAUClast(本願明細書【0473】の表1、2の脚注参照。)の値を検討しており、図5からも「1日より長い期間にわたり投与された」と理解できる事情は見いだせないことから、実施例4は、1日より長い期間にわたり投与された試験ではないと解するのが自然である。
したがって、本願明細書記載の実施例は、いずれも、本件補正発明の具体例ではない。
c 式(III-2)の化合物とプロベネシドの併用について
上記bのとおり、本願明細書記載の実施例は、いずれも、本件補正発明の具体例ではないが、実施例3には、実施例1と実施例2の結果から、「化合物III-2bを単独で投与したときには、7日目のスロペネムのAUCは1日目よりも小さいことが観察された」にもかかわらず、「化合物III-2bをプロベネシドとともに投与したときには、スロペネムのAUCは、7日目には1日目に見られたよりも大きいことが観察された」ことが記載されているから(【0477】)、化合物III-2b、すなわち、本件補正発明における式(III-2)の化合物を単独で投与するよりも、プロベネシドと併用することで、7日目のAUCが大きくなるとの効果を奏することは理解できる。
しかしながら、引用発明も、PF-03709270、すなわち、式(III-2)の化合物をプロベネシドと併用する医薬であるから、本件補正発明と同様に、式(III-2)の化合物を単独で投与するよりも、プロベネシドと併用することで、7日目のAUCが大きくなるという効果を奏するものといえる。
したがって、上記【0477】に記載された効果を検討しても、本件補正発明が、引用発明からは予測し得ないような優れた効果を奏するということはできない。
d プロベネシドについて
また、引用文献2には、プロベネシドが、PF-03709270の吸収を増加させ、結果として、スロペネムの血清中濃度を上昇させることが記載されているところ(摘記2d)、本件優先日当時、プロベネシドは、腎尿細管分泌を抑制する作用を有し、ペニシリン系、セファロスポリン系などのβラクタム系抗生物質の血中濃度を高める補助剤として広く知られており(摘記1e、3f、4a~4c、5b)、βラクタム系抗生物質であるアンピシリンのプロドラッグであるピバンピシリンと併用することで、親化合物であるアンピシリンの血清濃度が上昇し、連続投与後の排泄速度が遅くなることも知られていた(摘記6b)。
そうすると、本件優先日当時の技術常識によれば、スロペネムのプロドラッグであるPF-03709270(式(III-2)の化合物)をプロベネシドと併用することで、スロペネムの血清濃度が上昇するとともに、腎尿細管分泌が抑制されて連続投与後の排泄濃度が遅くなる結果、7日目にはAUCが大きくなることは、当業者が予測し得ないような優れた効果であるとはいえない。
(ウ)本件補正発明の効果についてまとめ
上記(ア)のとおり、本件補正発明は、対象とする疾患を特定したことにより、引用文献2に記載された発明及び引用文献1~3に記載された事項から予測し得ないような優れた効果を奏するということはできない。
そして、上記(イ)bのとおり、本願明細書には、本件補正発明の具体例は記載されておらず、上記(イ)cのとおり、引用発明も、式(III-2)の化合物とプロベネシドを併用する医薬であるから、本件補正発明と同様に、7日目のAUCが大きくなるという効果を奏するものである。また、上記(イ)dのとおり、本件優先日当時の技術常識によれば、式(III-2)の化合物をプロベネシドと併用することで、スロペネムの血清濃度が上昇するとともに、連続投与後の排泄濃度が遅くなる結果、7日目にはAUCが大きくなることは、当業者が予測し得ないような優れた効果であるとはいえない。
したがって、本件補正発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1~4に記載された事項から予測し得ないような優れた効果を奏するものとはいえない。
(7)請求人の主張について
ア 請求人は、以下の主張(1)、(2)を挙げて、本件補正発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1~4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないと主張している。
主張(1)
以下の「参考資料」は、β-ラクタム化合物である500mgの化合物III-2bと500mgのプロベネシドとを、7日間(1日より長い期間)にわたり1日あたり2回同時に経口投与した結果に基づくものであり、参考資料によれば、『増強されたAUC(予測された)』(バツ印を点線で結んだもの)は、投与1日目から7日目にかけてマイナス方向に大きく変化するのに対して、『増強されたAUC(観察された)』(黒塗りの正方形を実線で結んだもの)は投与1日目から7日目にかけてプラス方向に大きく変化するので、「プロベネシド」と併用することにより格別顕著な効果が奏されたと結論することができる。
したがって、本件補正発明は、β-ラクタム化合物である500mgの化合物III-2bと500mgのプロベネシドとを併用することにより、格別顕著な効果を示すものであるから、本件補正発明は、引用文献1~4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。(審判請求書の請求の理由「その1 2剤併用が奏する格別顕著な効果について」の項目、意見書の「(4)併用が奏する格別顕著な効果について」の項目)
[図:0001436579000031.jpg]
主張(2)
引用文献2には、本件補正発明で特定された、治療対象としての、単純性尿路感染症、複雑性尿路感染症、複雑性腹腔内感染症、肺炎、中耳炎、副鼻腔炎、淋菌性尿道炎、骨盤内炎症性疾患、前立腺炎、骨感染症、関節感染症、糖尿病足病性感染症、感染性下痢のいずれも記載されていない。そして、引用文献2では、薬理動態などの検討のため、健常な志願者に対する投与は行われていても、上記の疾患のみならず、その他の疾患についても、それらを、治療や予防をするという課題は存在しない。また、引用文献2には、「参考資料」に示すような、顕著な効果を示唆するデータは存在しない。
したがって、引用文献2には、スロペネムとプロベネシドとの併用が顕著な効果を奏することは記載も示唆もされておらず、また、引用文献2に接した当業者が、「参考資料」に示されるような顕著な効果を認識することは困難である。
更に、言うまでもなく、好ましい投与形態(投与経路や投与時期、投与頻度など)は、投与の目的により異なるのであり、具体的には、本件補正発明の目的は、特定の疾患を治療することであり、引用文献2の目的は、投与した物質の薬理動態を試験することである。したがって、本件補正発明の投与形態である「1日より長い期間にわたり、1日あたり2回同時に経口投与され」ることを、目的を異にする、引用文献2に記載の投与形態に基づいて想到することは、当業者にとって極めて困難である。(審判請求書の請求の理由「その2 個別の引用文献に対する反論」中、「(2)引用文献に対する対応」の「引用文献2に対して」の項目)
イ 上記主張(1)について検討する。
請求人は、「参考資料」を提示して、β-ラクタム化合物である500mgの化合物III-2bと500mgのプロベネシドとを併用することによる格別顕著な効果を主張するが、上記(6)イ(イ)cのとおり、引用発明も、β-ラクタム化合物である500mgの化合物III-2bと500mgのプロベネシドとを併用するものであるから、同じ効果を奏するものである。また、上記(6)イ(イ)dのとおり、本件優先日当時の技術常識によれば、プロベネシドにより、スロペネムの血清濃度が上昇するとともに、腎尿細管分泌が抑制されることで連続投与後の排泄濃度が遅くなる結果、7日目にはAUCが大きくなることは、当業者が予測し得ないほど優れた効果とはいえない。
したがって、請求人の主張(1)は、採用することができない。
ウ 上記主張(2)について検討する。
請求人は、引用文献2には、本件補正発明で特定された疾患が記載されていないこと、引用文献2には、薬物動態などの検討のため、健常な志願者に対する投与が行われているだけであり、疾患を治療又は予防するという課題は存在しないことから、上記特定の疾患を対象とすることは、当業者が容易に行うことではないと主張する。
しかしながら、上記(5)ウのとおり、引用文献2に記載された試験は、「薬物動態」を評価し、医薬品の有効性と安全性を評価するための「第1相試験」であるから、引用発明は、「疾患を治療又は予防するための」医薬であり、医薬である以上、引用文献2には、疾患を治療又は予防するという課題が存在するといえる。
そして、引用文献2に「参考資料」に示すようなデータが存在しなくとも、「参考資料」に示される効果は、当業者が予測し得ないほど優れた効果とはいえないことは、上記イのとおりである。
さらに、請求人は、本件補正発明の投与形態である「1日より長い期間にわたり、1日あたり2回同時に経口投与され」ることを、引用文献2に記載の投与形態に基づいて想到することは、当業者にとって極めて困難であると主張するが、上記(4)及び(5)エ、オのとおり、引用文献2に記載された、経口投与されるPF-03709270を「6日間にわたり1日2回、7日目に1回投与」は、本件補正発明の「1日より長い期間にわたり、1日あたり2回同時に経口投与」に相当するから、「1日より長い期間にわたり、1日あたり2回同時に経口投与され」る点は、本件補正発明と引用発明の一致点である。すなわち、引用発明において、「1日より長い期間にわたり、1日あたり2回同時に経口投与され」ることを想到することが極めて困難であるか否かを検討するまでもなく、引用発明自体が「1日より長い期間にわたり、1日あたり2回同時に経口投与され」るものである。
そして、この投与形態を、本件補正発明で特定された疾患に対して適用することが極めて困難であるとの理由も見いだせず、上記(6)アのとおり、引用発明の対象疾患を、本件補正発明で特定された疾患とすることは、当業者が容易に行うことである。
したがって、請求人の主張(2)は、採用することができない。
エ 以上のとおりであるから、請求人の主張(1)、(2)は、採用することができない。
(8)小括
したがって、本件補正発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1~4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1~29に係る発明は、令和5年11月29日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~29に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
疾患を治療または予防するための組合せ医薬であって、β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩と、プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩を含み、
前記β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩と、前記プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩は1日より長い期間にわたり経口投与され、
当該β-ラクタム化合物は式(I):
【化1】
[図:0001436579000032.jpg]
で示され、式中、R1はH又は置換されていてもよいアルキルである、
当該組合せ医薬。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対応する請求項1に係る発明についての拒絶の理由(C)は、次のとおりのものである。
本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2、1、4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 当審の判断
(1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2、1、4の記載事項は、上記第2の2(3)のとおりである。
(2)本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「PF-03709270」は、「スロペネムエトザドロキシル」であると引用文献2には記載されているところ(摘記2a)、本願明細書の【0223】には、スロペネムエトザドロキシルの化学構造は、以下のとおりであると記載されている。
「【0223】
いくつかの実施態様では、β-ラクタム化合物は、
【化11】
[図:0001436579000033.jpg]
である。」
すなわち、引用発明の「PF-03709270」は、
「
[図:0001436579000034.jpg]
」
であって、本願発明の
「式(I):
【化1】
[図:0001436579000035.jpg]
で示され、式中、R1はH又は置換されていてもよいアルキルである」化合物において、R1が置換されていてもよいアルキルである化合物に相当する。
そうすると、引用発明の「PF-03709270」は、本願発明の「β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩」であって、「当該β-ラクタム化合物は式(I):
【化1】
[図:0001436579000036.jpg]
で示され、式中、R1はH又は置換されていてもよいアルキルである」化合物に相当する。
イ 上記第2の2(5)イと同様に、引用発明の「プロベネシド」は、本願発明の「プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩」に相当する。
ウ 上記第2の2(5)ウと同様に、引用発明は、本願発明の「組合せ医薬」及び「疾患を治療または予防するための」組合せ医薬に相当する。
エ 上記第2の2(5)エと同様に、引用発明のPF-03709270は、「経口投与」されるプロドラッグであり(摘記1a、1b、1f)、プロベネシドも「経口投与」されるものであるから(摘記4c)、引用発明における「PF-03709270」と「プロベネシド」を投与する医薬は、本願発明における「β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩」と、「プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩」は「経口投与され」る医薬に相当する。
オ 以上によれば、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「疾患を治療または予防するための組合せ医薬であって、β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩と、プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩を含み、
前記β-ラクタム化合物またはその医薬として許容可能な塩と、前記プロベネシドまたはその医薬として許容可能な塩は経口投与され、
当該β-ラクタム化合物は式(I):
【化1】
[図:0001436579000037.jpg]
で示され、式中、R1はH又は置換されていてもよいアルキルである、
当該組合せ医薬。」
<相違点>
本願発明は、「1日より長い期間にわたり」投与されるものであるのに対し、引用発明は、そのようなものであるか不明な点。
(3)判断
本願発明における「1日より長い期間にわたり」について、本願明細書には、特に定義が記載されていないところ、請求人は、本願発明における「1日より長い期間にわたり」とは、連続する期間ではなく、投与の間隔を意味すると説明している(令和5年11月29日提出の意見書4.(3)の「引用文献2」のアの項目)。
そこで、本願発明における「1日より長い期間にわたり」投与されるとは、投与の間隔が1日より長い期間であると解釈して検討すると、医薬の投与にあたり、有効性や安全性を考慮して、投与の間隔を好ましい範囲とすることは、当業者が容易に行うことであるから、引用発明において、「1日より長い期間」にわたる投与の間隔とすることは、当業者が適宜行うことである。
そして、「1日より長い期間」にわたる投与の間隔とすることにより、当業者が予測し得ないような優れた効果を奏するか、について検討しても、本願明細書には、「1日より長い期間」にわたる投与の間隔とすることにより優れた効果を奏することは記載されていない。むしろ、本願明細書に記載された実施例は、引用発明と同様に1日2回投与した例であるから、実施例で示された効果は、引用発明も同様に奏するものといえる。そして、本願明細書に記載された実施例を検討しても、当業者が予測し得ないほど優れた効果を奏するといえないことは、上記第2の2(6)イのとおりである。
(4)小括
したがって、本願発明は、引用文献2、1及び4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献2、1及び4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-007618