特許拒絶査定不服審判
2024-005739
非免疫抑制性の抗原特異的免疫治療薬の反復投与
- 審判番号
- 2024-005739
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-012994
- 請求日
- 2024年04月05日
- 審決日
- 2026年02月09日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】セレクタ バイオサイエンシーズ インコーポレーテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人葛和国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 松波 由美子
- 審判官 伊藤 幸司
- 審判官 吉田 佳代子
- 分類
- P18 .575-Z (A61K) / P18 .537-Z (A61K) / P18 .121-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 12994「非免疫抑制性の抗原特異的免疫治療薬の反復投与」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月24日出願公開、特開2022- 78020〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、2014年(平成26年)6月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年6月4日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願である特願2016-517969号の一部を、令和元年11月8日に新たな特許出願である特願2019-202936号とし、さらにその一部を令和4年1月31に新たな特許出願としたものであって、その主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和4年 3月 2日 翻訳文及び手続補正書の提出
同年 6月 1日 手続補正書の提出
令和5年 3月 3日付 拒絶理由通知書(50条の2の通知を
伴う)
同年 9月 7日 意見書及び手続補正書の提出
同年12月 1日付 補正却下の決定及び拒絶査定
令和6年 4月 5日 手続補正書及び審判請求書の提出
同年 5月24日 手続補正書(方式)の提出
令和7年 7月30日付 前置報告書
第2 令和6年4月5日提出の手続補正書による手続補正についての補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年4月5日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1) 本件補正の内容
ア 本件補正前(令和4年6月1日提出の手続補正書)の特許請求の範囲の記載
令和5年9月7日提出の手続補正は、同年12月1日付で補正却下されているため、本件補正前の特許請求の範囲は、令和4年6月1日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲に記載される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
抗原または免疫モジュレーターが、カプセル化によって連結されている合成ナノ担体を含む、抗原特異的免疫治療薬であって、
抗原または免疫モジュレーターの反復投与の際に免疫抑制を誘導しないことが過去に示されているプロトコルの1または2以上の要素に従って該抗原特異的免疫治療薬を対象へ反復して投与することを含む方法における使用のための、前記抗原特異的免疫治療薬。
【請求項2】
抗原または免疫モジュレーターが、カプセル化によって連結されている合成ナノ担体を含む、抗原特異的免疫治療薬であって、
被験体において、免疫抑制をもたらさない抗原特異的免疫治療薬を反復して投与するためにプロトコルを決定すること;および
プロトコルの1または2以上の要素を使用して、別の被験体に抗原特異的免疫治療薬を反復して投与すること
を含み、
任意に、決定することが、プロトコルの1または2以上の要素が被験体において抗原特異的寛容をもたらすことを実証することをさらに含む、
方法における使用のための、前記抗原特異的免疫治療薬。
【請求項3】
抗原特異的免疫治療薬が、
(a)外因性免疫モジュレーターを含み、任意に、外因性免疫モジュレーターが、スタチン;mTORインヒビター;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;コルチコステロイド;ミトコンドリア機能のインヒビター;P38インヒビター;NF-κβインヒビター;レクチン受容体リガンド;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼインヒビター;プロテアソームインヒビター;キナーゼインヒビター;Gタンパク質連結受容体アゴニスト;Gタンパク質連結受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカインインヒビター;サイトカイン受容体インヒビター;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;カルシニューリンインヒビター;ホスファターゼインヒビター;酸化されたATP;IDO;ビタミンD3;シクロスポリンA;アリール炭化水素受容体インヒビター;レスベラトロール;アザチオプリン;6-メルカプトプリン;アスピリン;ニフルム酸;エストリオール;トリポリド;インターロイキン;シクロスポリンA、または、サイトカインまたはサイトカイン受容体を標的とするsiRNAを含み、例えば外因性免疫モジュレーターが、ラパマイシン、ミコフェノール酸またはCD22リガンドを含む;
(b)外因性抗原を含み、任意に、(i)抗原特異的免疫治療薬がまた、外因性免疫モジュレーターをも含み、外因性抗原および外因性免疫モジュレーターが、互いに連結されておらず、および、反復投与が、外因性抗原および外因性免疫モジュレーターの併用反復投与を含む;および/または(ii)外因性抗原が、治療用タンパク質、修飾抗原または発現された抗原を含み、例えば発現された抗原が、修飾メッセンジャーRNAから発現される;
(c)内因性抗原に対する抗原特異的寛容をもたらし、任意に、内因性抗原が、自己抗原を含み、例えば自己抗原が、強直性脊椎炎;水疱性類天疱瘡;関節リウマチ;多発性硬化症;糖尿病;湿疹;炎症性腸疾患;ループスまたは全身性エリテマトーデス;多発性硬化症;原発性胆汁性肝硬変;乾癬;サルコイドーシス;全身性硬化症;強皮症;甲状腺炎;自己免疫性甲状腺疾患;橋本甲状腺炎;甲状腺中毒症;円形脱毛症;グレーブス病;ギラン-バレー症候群;セリアック病;シェーグレン症候群;リウマチ熱;胃炎自己免疫性萎縮性胃炎;自己免疫性肝炎;インスリン炎;卵巣炎;精巣炎;ブドウ膜炎;水晶体起因性ブドウ膜炎;重症筋無力症;原発性粘液水腫;悪性貧血;原発性硬化性胆管炎;自己免疫性溶血性貧血;アジソン病;強皮症;グッドパスチャー症候群;腎炎;乾癬;尋常性天疱瘡;天疱瘡;交感性眼炎;特発性血小板減少性紫斑病;特発性白血球減少症;ウェゲナー肉芽腫症または多発性/皮膚筋炎において見出されたものを含む;
(d)外因性抗原を含み、および、内因性免疫モジュレーターの存在下で投与されたとき、抗原特異的寛容をもたらし、任意に、内因性免疫モジュレーターが、アポトーシスまたは関連シグナル伝達に関与する物質および/または物質の組み合わせ、TまたはB細胞の生態に関与する物質および/または物質の組み合わせ、または、樹状細胞の生態に関与する物質および/または物質の組み合わせを含む;
(e)外因性抗原および外因性免疫モジュレーターを含み、外因性抗原が、外因性免疫モジュレーターとは異なる経路で反復して投与され、任意に、反復投与が、併用反復投与を含む;
(f)1より多くの外因性抗原を含み、任意に、抗原特異的免疫治療薬が、外因性抗原および外因性免疫モジュレーターを含むとき、外因性抗原が、外因性免疫モジュレーターとは異なる経路で反復して投与され、例えば反復投与が、併用反復投与を含む;および/または
(g)互いに連結されている外因性抗原および外因性免疫モジュレーターを含み、および、外因性免疫モジュレーターが、ERY1ペプチドを含む、
請求項1または2に記載の使用のための免疫治療薬。
【請求項4】
(a)抗原特異的免疫治療薬が、プロトコルの要素の全てまたは実質的に全てを使用して、別の被験体に反復して投与される;および/または(b)抗原特異的免疫治療薬が、外因性免疫モジュレーターに連結されたポリマー合成ナノ担体を含み、任意に、(i)ポリマー合成ナノ担体に付着された免疫モジュレーターの積載量が、ポリマー合成ナノ担体全体の平均で、0.1%と50%(重量/重量)との間、例えば0.1%と20%(重量/重量)との間である;および/または(ii)抗原特異的免疫治療薬が、外因性免疫モジュレーターおよび外因性抗原を含むとき、ポリマー合成ナノ担体が、外因性抗原にさらに連結される;および/または(iii)抗原特異的免疫治療薬が、外因性免疫モジュレーターおよび外因性抗原を含むとき、ポリマー合成ナノ担体が、外因性抗原と併用投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための免疫治療薬。
【請求項5】
反復投与を、(a)抗原特異的免疫治療薬の初回投与または過去の反復投与から1週間~10年後に行う;(b)抗原特異的免疫治療薬の初回投与または過去の反復投与の1週間後に行う;(c)抗原特異的免疫治療薬の初回投与または過去の反復投与の2週間後に行う;および/または(d)抗原特異的免疫治療薬の初回投与または過去の反復投与の1~12ヶ月後に行う、
請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための免疫治療薬。
【請求項6】
抗原または免疫モジュレーターが、カプセル化によって連結されている合成ナノ担体を含む、抗原特異的免疫治療薬であって、外因性抗原または外因性免疫モジュレーターが、反復投与の際に免疫抑制を誘導しないことをプロトコルにおいて過去に実証された量である、前記抗原特異的免疫治療薬
を含む、組成物。
【請求項7】
抗原または免疫モジュレーターが、抗原特異的寛容をもたらすことがさらに示された量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
外因性免疫モジュレーターが、スタチン;mTORインヒビター;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;コルチコステロイド;ミトコンドリア機能のインヒビター;P38インヒビター;NF-κβインヒビター;レクチン受容体リガンド;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼインヒビター;プロテアソームインヒビター;キナーゼインヒビター;Gタンパク質連結受容体アゴニスト;Gタンパク質連結受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカインインヒビター;サイトカイン受容体インヒビター;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;カルシニューリンインヒビター;ホスファターゼインヒビター;酸化されたATP;IDO;ビタミンD3;シクロスポリンA;アリール炭化水素受容体インヒビター;レスベラトロール;アザチオプリン;6-メルカプトプリン;アスピリン;ニフルム酸;エストリオール;トリポリド;インターロイキン;シクロスポリンA、または、サイトカインまたはサイトカイン受容体を標的とするsiRNAを含み、任意に、外因性免疫モジュレーターが、ラパマイシン、ミコフェノール酸またはCD22リガンドを含む、請求項6または7の組成物。
【請求項9】
外因性抗原が、治療用タンパク質、修飾抗原または発現された抗原を含み、任意に、発現された抗原が、修飾メッセンジャーRNAから発現される、請求項6または7に記載の組成物。
【請求項10】
抗原特異的免疫治療薬が、ポリマー合成ナノ担体を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
抗原特異的免疫治療薬が、1より多くの外因性抗原をさらに含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、キットである、請求項6~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
抗原または免疫モジュレーターが、カプセル化によって連結されている合成ナノ担体を含む、抗原特異的免疫治療薬を製造する方法であって、方法が、外因性抗原または外因性免疫モジュレーターを、反復投与の際に免疫抑制を誘導しないことがプロトコルにおいて過去に実証された量で、生成することまたは得ることを含む、前記方法。
【請求項14】
(a)抗原特異的免疫治療薬が、前の請求項のいずれか一項に定義されたとおりである;および/または(b)方法が、プロトコルを決定することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
被験体において免疫抑制の誘導ではなく抗原特異的寛容を達成するための、外因性免疫モジュレーターまたは外因性抗原を含む、抗原特異的免疫治療薬であって、抗原特異的免疫治療薬が、前の請求項のいずれか一項に定義されたとおりである、前記抗原特異的免疫治療薬。」
イ 本件補正後(令和6年4月5日提出の手続補正書)の特許請求の範囲の記載
上記アの本件補正前の特許請求の範囲の記載は、以下のとおり、本件補正後の特許請求の範囲の記載に補正された。なお、下線は補正箇所を示す。
「【請求項1】
抗原および免疫モジュレーターが、カプセル化によって連結されている合成ナノ担体を含む、抗原特異的免疫治療薬であって、
前記免疫治療薬は、前記免疫治療薬の反復投与の際に前記抗原に対する抗体形成の防止を達成するが他の抗原に対しては免疫応答の統計的に有意なダウンレギュレーションを誘導しないことが過去に示されているプロトコルに従って、該抗原特異的免疫治療薬を被験体へ反復して投与することを含む方法における使用のためのものであり、
ここで前記プロトコルは、
前記免疫治療薬を提供すること;および
前記免疫治療薬を、被験体へ反復して投与すること、ここで、前記抗原と前記免疫モジュレーターとは、異なる医薬製剤において別個に反復して投与される;
を含む、
前記抗原特異的免疫治療薬。
【請求項2】
抗原特異的免疫治療薬が、
(a)外因性免疫モジュレーターを含み、任意に、外因性免疫モジュレーターが、スタチン;mTORインヒビター;TGF-βシグナル伝達剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;コルチコステロイド;ミトコンドリア機能のインヒビター;P38インヒビター;NF-κβインヒビター;レクチン受容体リガンド;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼインヒビター;プロテアソームインヒビター;キナーゼインヒビター;Gタンパク質連結受容体アゴニスト;Gタンパク質連結受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカインインヒビター;サイトカイン受容体インヒビター;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;カルシニューリンインヒビター;ホスファターゼインヒビター;酸化されたATP;IDO;ビタミンD3;シクロスポリンA;アリール炭化水素受容体インヒビター;レスベラトロール;アザチオプリン;6-メルカプトプリン;アスピリン;ニフルム酸;エストリオール;トリポリド;インターロイキン;シクロスポリンA、または、サイトカインまたはサイトカイン受容体を標的とするsiRNAを含み、例えば外因性免疫モジュレーターが、ラパマイシン、ミコフェノール酸またはCD22リガンドを含む;
(b)外因性抗原を含み、任意に、(i)抗原特異的免疫治療薬がまた、外因性免疫モジュレーターをも含み、外因性抗原および外因性免疫モジュレーターが、互いに連結されておらず、および、反復投与が、外因性抗原および外因性免疫モジュレーターの併用反復投与を含む;および/または(ii)外因性抗原が、治療用タンパク質、修飾抗原または発現された抗原を含み、例えば発現された抗原が、修飾メッセンジャーRNAから発現される;
(c)内因性抗原に対する抗原特異的寛容をもたらし、任意に、内因性抗原が、自己抗原を含み、例えば自己抗原が、強直性脊椎炎;水疱性類天疱瘡;関節リウマチ;多発性硬化症;糖尿病;湿疹;炎症性腸疾患;ループスまたは全身性エリテマトーデス;多発性硬化症;原発性胆汁性肝硬変;乾癬;サルコイドーシス;全身性硬化症;強皮症;甲状腺炎;自己免疫性甲状腺疾患;橋本甲状腺炎;甲状腺中毒症;円形脱毛症;グレーブス病;ギラン-バレー症候群;セリアック病;シェーグレン症候群;リウマチ熱;胃炎自己免疫性萎縮性胃炎;自己免疫性肝炎;インスリン炎;卵巣炎;精巣炎;ブドウ膜炎;水晶体起因性ブドウ膜炎;重症筋無力症;原発性粘液水腫;悪性貧血;原発性硬化性胆管炎;自己免疫性溶血性貧血;アジソン病;強皮症;グッドパスチャー症候群;腎炎;乾癬;尋常性天疱瘡;天疱瘡;交感性眼炎;特発性血小板減少性紫斑病;特発性白血球減少症;ウェゲナー肉芽腫症または多発性/皮膚筋炎において見出されたものを含む;
(d)外因性抗原を含み、および、内因性免疫モジュレーターの存在下で投与されたとき、抗原特異的寛容をもたらし、任意に、内因性免疫モジュレーターが、アポトーシスまたは関連シグナル伝達に関与する物質および/または物質の組み合わせ、TまたはB細胞の生態に関与する物質および/または物質の組み合わせ、または、樹状細胞の生態に関与する物質および/または物質の組み合わせを含む;
(e)外因性抗原および外因性免疫モジュレーターを含み、外因性抗原が、外因性免疫モジュレーターとは異なる経路で反復して投与され、任意に、反復投与が、併用反復投与を含む;
(f)1より多くの外因性抗原を含み、任意に、抗原特異的免疫治療薬が、外因性抗原および外因性免疫モジュレーターを含むとき、外因性抗原が、外因性免疫モジュレーターとは異なる経路で反復して投与され、例えば反復投与が、併用反復投与を含む;および/または
(g)互いに連結されている外因性抗原および外因性免疫モジュレーターを含み、および、外因性免疫モジュレーターが、ERY1ペプチドを含む、
請求項1に記載の使用のための免疫治療薬。
【請求項3】
(a)抗原特異的免疫治療薬が、プロトコルを使用して、別の被験体に反復して投与される;および/または(b)抗原特異的免疫治療薬が、外因性免疫モジュレーターに連結されたポリマー合成ナノ担体を含み、任意に、(i)ポリマー合成ナノ担体に付着された免疫モジュレーターの積載量が、ポリマー合成ナノ担体全体の平均で、0.1%と50%(重量/重量)との間、例えば0.1%と20%(重量/重量)との間である;および/または(ii)抗原特異的免疫治療薬が、外因性免疫モジュレーターおよび外因性抗原を含むとき、ポリマー合成ナノ担体が、外因性抗原にさらに連結される;および/または(iii)抗原特異的免疫治療薬が、外因性免疫モジュレーターおよび外因性抗原を含むとき、ポリマー合成ナノ担体が、外因性抗原と併用投与される、請求項1または2に記載の使用のための免疫治療薬。
【請求項4】
反復投与を、(a)抗原特異的免疫治療薬の初回投与または過去の反復投与から1週間~10年後に行う;(b)抗原特異的免疫治療薬の初回投与または過去の反復投与の1週間後に行う;(c)抗原特異的免疫治療薬の初回投与または過去の反復投与の2週間後に行う;および/または(d)抗原特異的免疫治療薬の初回投与または過去の反復投与の1~12ヶ月後に行う、
請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための免疫治療薬。
【請求項5】
外因性免疫モジュレーターおよび外因性抗原を含む、被験体において前記外因性抗原に対する抗体形成の防止を達成するが他の抗原に対しては免疫応答の統計的に有意なダウンレギュレーションを誘導しないための、抗原特異的免疫治療薬であって、抗原特異的免疫治療薬が、請求項1~4のいずれか一項に記載されたものである、前記抗原特異的免疫治療薬。」
(2) 本件補正の目的について
本件補正は、補正前の請求項1における「抗原または免疫モジュレーターが、カプセル化によって連結されている合成ナノ担体を含む、抗原特異的免疫治療薬」との記載を、「抗原および免疫モジュレーターが、カプセル化によって連結されている合成ナノ担体を含む、抗原特異的免疫治療薬」とする補正事項を含むものである。
そして、上記補正事項により、補正前の請求項1に係る発明においては、「カプセル化によって連結されている合成ナノ担体」の連結対象が、「抗原」のみである態様、「免疫モジュレーター」のみである態様及び「抗原および免疫モジュレーター」である態様が含まれていたところ、補正後の請求項1に係る発明においては、「抗原」のみである態様及び「免疫モジュレーター」のみである態様は含まれないこととなった。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする補正事項を含むものといえる。
2 独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものといえるので、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて検討する。
補正後の請求項1には、「抗原および免疫モジュレーターが、カプセル化によって連結されている合成ナノ担体を含む、抗原特異的免疫治療薬」(下線は合議体が付したものである。以下同様。)につき、「前記免疫治療薬の反復投与の際に」「前記抗原に対する抗体形成の防止を達成するが他の抗原に対しては免疫応答の統計的に有意なダウンレギュレーションを誘導しないことが過去に示されているプロトコル」に従って、「被験体へ反復して投与することを含む方法における使用のためのもの」であることが記載され、さらに、上記「プロトコル」につき、「前記免疫治療薬を提供すること;および前記免疫治療薬を、被験体へ反復して投与すること、ここで、前記抗原と前記免疫モジュレーターとは、異なる医薬製剤において別個に反復して投与される」ことが記載されている。
ここで、本件補正後の請求項1において特定される「免疫治療薬」とは、補正により「抗原および免疫モジュレーターが、カプセル化によって連結されている合成ナノ担体を含む」ものであるから、上記「プロトコル」において提供される「免疫治療薬」も、必然的に「抗原および免疫モジュレーターが、カプセル化によって連結されている合成ナノ担体を含む」ものであるところ、「前記抗原」と「前記免疫モジュレーター」とを「異なる医薬製剤」として「別個に」投与することはできないものであることは明らかである。
そうすると、補正後の請求項1は、明らかに矛盾する記載が含まれるものであるから、補正後の請求項1に記載される「プロトコル」がどのようなものであるのか不明であって、補正後の請求項1に係る発明を明確に把握することができない。
したがって、補正後の請求項1に係る特許請求の範囲の記載が不明確である。
よって、補正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしておらず、補正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明1
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、令和4年6月1日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】
抗原または免疫モジュレーターが、カプセル化によって連結されている合成ナノ担体を含む、抗原特異的免疫治療薬であって、
抗原または免疫モジュレーターの反復投与の際に免疫抑制を誘導しないことが過去に示されているプロトコルの1または2以上の要素に従って該抗原特異的免疫治療薬を対象へ反復して投与することを含む方法における使用のための、前記抗原特異的免疫治療薬。」
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明1は、本願の優先日前に頒布された下記引用文献2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
<引用文献等一覧>
2.国際公開第2012/149259号[参照用対応日本語公報2:特表2014-514332号公報]
3 引用文献及び引用発明
ア 引用文献2に記載された事項
引用文献2には以下の事項が記載されている。なお、引用文献2は英文であるため、摘記は合議体による翻訳文により示し、摘記箇所については、引用文献2に対応する日本語公報2の記載箇所を併記する。下線は合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。
(摘記2-1) 請求の範囲(【特許請求の範囲】)
「38 1例以上の被験対象において抗原に対する望ましくない体液性免疫応答を低下させることが既に示されたプロトコルに従い対象に組成物を投与するステップ
を含む方法であって、
前記組成物が、
(i)免疫抑制薬に結合された合成ナノ担体の第1の集団と、
(ii)前記抗原のMHCクラスII拘束性エピトープに結合された合成ナノ担体の第2の集団と
を含む、方法。
39 前記第1の集団と前記第2の集団とが同じ集団である、請求項36~38のいずれか一項に記載の方法。
40 前記対象を提供するステップ又はそれを同定するステップを更に含む、請求項32~39のいずれか一項に記載の方法。
41 前記組成物が、前記望ましくない体液性免疫応答を生じさせる抗原のB細胞エピトープを実質的に含まない、請求項36~40のいずれか一項に記載の方法。
42 前記望ましくない体液性免疫応答が抗原特異的抗体の産生である、請求項36~40のいずれか一項に記載の方法。
43 前記望ましくない体液性免疫応答が、CD4+ T細胞増殖及び/又は活性、及び/又はB細胞増殖及び/又は活性である、請求項36~40のいずれか一項に記載の方法。
44 前記合成ナノ担体の第1及び/又は第2の集団が、MHCクラスI拘束性エピトープにも結合される、請求項36~40のいずれか一項に記載の方法。
45 前記免疫抑制薬が、スタチン、mTOR阻害薬、TGF-βシグナル伝達剤、コルチコステロイド、ミトコンドリア機能の阻害薬、P38阻害薬、NF-κβ阻害薬、アデノシン受容体作動薬、プロスタグランジンE2作動薬、ホスホジエステラーゼ4阻害薬、HDAC阻害薬又はプロテアソーム阻害薬を含む、請求項36~40のいずれか一項に記載の方法。
46 前記mTOR阻害薬がラパマイシンである、請求項45に記載の方法。
47 前記抗原が、アレルゲン、自己抗原又は治療用タンパク質であるか、又は炎症性疾患、自己免疫疾患、臓器若しくは組織拒絶反応又は移植片対宿主病に関連する、請求項36~46のいずれか一項に記載の方法。
・・・
87 対象における抗原に対する望ましくない体液性免疫応答を低下させる方法、アレルギー、自己免疫疾患、炎症性疾患、臓器若しくは組織拒絶反応又は移植片対宿主病の治療又は予防、又は請求項32~73のいずれか一項に記載の方法で用いるための、請求項1~30及び85のいずれか一項に記載の組成物又は請求項31に記載の剤形。」
(摘記2-2) 1頁13~31行(【0002】、【0003】)
「 技術分野
本発明は、免疫抑制薬と、望ましくない体液性免疫応答を(例えば対象において)生じさせる抗原のMHCクラスII拘束性エピトープとを含む合成ナノ担体組成物、及び関連する方法に関する。提供される組成物及び方法は、望ましくない体液性免疫応答を低下させることができる。この組成物及び方法は、APCによる効率的な取り込みを可能にし、抗原に特異的な望ましくない体液性免疫応答の発生を低下させるのに有利になるよう免疫応答をシフトさせる。この組成物及び方法は、抗原特異的CD4+ T細胞ヘルプの低下によるなどして、寛容原性免疫応答の刺激を可能にする。
背景技術
抗体反応は、典型的には胚中心反応の確立及びアイソタイプスイッチングの誘導にCD4+ Tヘルパー細胞を必要とする。CD4+ Tヘルパー細胞の数及び/又は機能を低下させると、望ましくない抗体反応が改善され得る。しかしながら、広域作用型である従来の免疫抑制薬物でそれを行うのは、望ましくないこともある。加えて、免疫抑制の維持のため、概して免疫抑制薬物療法は生涯続く問題である。残念ながら、広域作用型免疫抑制薬の使用は、腫瘍、感染症、腎毒性及び代謝疾患などの重度の副作用のリスクを伴う。従って、新しい免疫抑制薬療法が有益であり得る。」
(摘記2-3) 8頁32行~9頁12行(【0042】、【0043】)
「 ・・・
図面の簡単な説明
図1 Tregのフローサイトメトリー分析の結果を示す。
図2 免疫抑制薬(ラパマイシン又はシンバスタチン)を含む本発明の合成ナノ担体(単回注射後)による抗原特異的エフェクターT細胞の数に対する効果を示す。
図3 免疫抑制薬(ラパマイシン又はシンバスタチン)を含む本発明の合成ナノ担体(複数回注射後)による膝窩リンパ節細胞の数の減少を示す。
図4 免疫抑制薬ラパマイシンとova抗原とを含む合成ナノ担体による抗OVA IgG抗体の低下を実証する。
図5 対照群及び受身群において、免疫抑制薬ラパマイシンとOVA抗原とを含む合成ナノ担体による抗OVA IgG抗体の低下を実証する。」
(摘記2-4) 10頁23行~11頁11行(【0049】)
「A.序論
先述のとおり、現行の従来免疫抑制薬は広域作用型であり、概して免疫系の全体的な全身性下方制御をもたらす。本明細書に提供される組成物及び方法により、例えば目的の免疫細胞への標的送達が可能になることで、標的性を高めた免疫効果が可能となる。従って、本組成物及び方法は、より特異性のある形で免疫抑制を実現することができる。免疫抑制薬と、望ましくない体液性免疫応答を生じさせる抗原のMHCクラスII拘束性エピトープとを、目的の細胞、特にAPCの作用点に一層直接的に送達することにより、利用可能なCD4+ T細胞ヘルプの量が低下し、抗原に特異的な、有益な寛容原性免疫応答がもたらされ得ることが分かっている。かかる送達はまた、概して、オフターゲット効果及び毒性が低下することも予想される。この発明は、例えば、アレルギー、自己免疫疾患、又は炎症性疾患を有するか、又はそれを有するリスクがある対象における寛容原性免疫応答の促進に有用である。この発明はまた、臓器若しくは組織拒絶反応又は移植片対宿主病を有するか、又はそれを有するリスクがある対象における寛容原性免疫応答の促進にも用いられ得る。この発明はまた、移植を受けたことがあるか、又は移植を受けることになる対象における寛容原性免疫応答の促進にも有用であり得る。この発明はまた、望ましくない体液性免疫応答を生じさせるか、又はそれを生じさせると予想される治療用タンパク質の投与を受けたことがあるか、それを受けているか、又はそれを受けることになる対象における寛容原性免疫応答の促進にも有用であり得る。本発明は、一部の実施形態では、特定の治療処置の有益な効果を中和し得る望ましくない体液性免疫応答を回避又は抑制する。」
(摘記2-5) 12頁15行~28頁2行(【0055】、【0064】、【0078】、【0081】、【0088】、【0104】)
「B.定義
・・・
「抗原特異的な」は、抗原、又はその部分の存在から得られるか、或いは抗原を特異的に認識又は結合する分子を生成する任意の免疫応答を指す。例えば、免疫応答が、抗原特異的な抗体産生である場合、抗原を特異的に結合する抗体が産生される。別の例として、免疫応答が、抗原特異的なB細胞又はCD4+ T細胞増殖及び/又は活性である場合、増殖及び/又は活性は、B細胞などによる、抗原、又はその部分のみの認識或いはMHC分子と複合した抗原、又はその部分の認識から得られる。
・・・
「結合」又は「結合された」又は「結合する」(など)は、物質(例えば部分)を互いに化学的に関連することを意味する。ある実施形態において、結合は、共有であり、これは、結合が、2つの物質間の共有結合が存在する状況で起こることを意味する。非共有の実施形態において、非共有結合には、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理吸着、ホスト-ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子間相互作用、及び/又はそれらの組合せを含むがこれらに限定されない非共有相互作用が介在する。実施形態において、カプセル化が、結合の形態である。
・・・
「カプセル化する」は、物質の少なくとも一部を合成ナノ担体中に入れることを意味する。ある実施形態において、物質が、合成ナノ担体中に完全に入れられる。他の実施形態において、封入される物質の殆ど又は全てが、合成ナノ担体の外部の局所環境に曝されない。他の実施形態において、50%、40%、30%、20%、10%又は5%(重量/重量)以下が、局所環境に曝される。封入は、合成ナノ担体の表面に物質の殆ど又は全てを配置し、物質を合成ナノ担体の外部の局所環境に曝されたままにする吸収とは異なる。
・・・
「免疫抑制剤」は、APCが、免疫抑制効果(例えば、寛容原性効果)を有するようにする化合物を意味する。免疫抑制効果は、一般に、望ましくない免疫応答を、減少、阻害若しくは防止するか又は望ましい免疫応答を促進するAPCによるサイトカイン又は他の因子の産生又は発現を指す。APCが、APCによって提示される抗原を認識する免疫細胞に対する免疫抑制効果をもたらす場合、免疫抑制効果は、提示される抗原に特異的であると考えられる。このような効果は、本明細書において寛容原性効果とも呼ばれる。いかなる特定の理論にも制約されるものではないが、免疫抑制即ち寛容原性効果は、好ましくは、抗原(例えば、投与される抗原又は生体内に既に存在する抗原)の存在下で、APCに送達される免疫抑制剤の結果であると考えられる。従って、免疫抑制剤は、同じ組成物又は異なる組成物中に提供されても又は提供されなくてもよい、抗原に寛容原性免疫応答を与える化合物を含む。一実施形態において、免疫抑制剤は、APCに、1つ以上の免疫エフェクター細胞における制御性表現型を促進させるものである。例えば、調節性の表現型は、抗原特異的CD4+ T細胞又はB細胞の産生、誘導、刺激又は動員の阻害、抗原特異的抗体の産生の阻害、Treg細胞(例えば、CD4+CD25highFoxP3+ Treg細胞)の産生、誘導、刺激又は動員等によって特徴付けられ得る。・・・
・・・
「プロトコル」は、被験体への1種以上の物質の任意の投与計画を指す。投与計画は、投与の量、頻度及び/又は形態を含み得る。ある実施形態において、このようなプロトコルは、本発明の1つ以上の組成物を一人以上の被験体に投与するのに使用され得る。次に、これらの被験体における免疫応答は、プロトコルが望ましくない免疫応答の減少又は望ましい免疫応答の生成(例えば、寛容原性効果の促進)に有効であったか否かを判定するために評価され得る。任意の他の治療及び/又は予防効果も、上記の免疫応答の代わりに又はそれに加えて評価され得る。プロトコルが所望の効果を有していたか否かは、本明細書に提供されるか或いは当該技術分野において公知の方法の何れかを用いて判定され得る。特定の免疫細胞、サイトカイン、抗体などが減少、生成、活性化されたか否かなどを判定するために、例えば、細胞の集団が、本明細書に提供される組成物が特定のプロトコルに従って投与された被験体から取得され得る。免疫細胞の存在及び/又は数を検出するための有用な方法としては、以下に限定はされないが、フローサイトメトリー法(例えば、FACS)及び免疫組織化学法が挙げられる。免疫細胞マーカーの特定の染色のための抗体及び他の結合剤が市販されている。このようなキットは、通常、不均一な細胞集団からの所望の細胞集団のFACSに基づいた検出、分離及び/又は定量を可能にする複数の抗原のための染色試薬を含む。」
(摘記2-6) 76頁12行~84頁5行(【0269】~【0305】)
「実施例12:インビボでの免疫抑制薬とAPC提示可能抗原とを含む合成ナノ担体による寛容原性免疫応答の評価
合成ナノ担体作成の材料及び方法
ナノ担体1
ラパマイシンを、・・・から購入した。・・・
溶液を以下のとおり調製した:
・・・
水中油型エマルションを使用してナノ担体を調製した。・・・
ナノ担体サイズを、動的光散乱法により決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量を、HPLC分析により決定した。懸濁液1mLあたりのナノ担体総乾燥質量を、重量測定法により決定した。
[図:0001436551000001.jpg]
ナノ担体2
オボアルブミンタンパク質のT細胞及びB細胞エピトープであることが分かっている17アミノ酸ペプチドであるオボアルブミンペプチド323-339を、・・・から購入した。・・・
溶液を以下のとおり調製した:・・・
ナノ担体サイズを、動的光散乱法により決定した。ナノ担体中のペプチドの量を、HPLC分析により決定した。懸濁液1mLあたりのナノ担体総乾燥質量を、重量測定法により決定した。
[図:0001436551000002.jpg]
ナノ担体3
シンバスタチンを、・・・から購入した。・・・
溶液を以下のとおり調製した:・・・
水中油型エマルションを使用してナノ担体を調製した。・・・
ナノ担体サイズを、動的光散乱法により決定した。ナノ担体中のシンバスタチンの量を、HPLC分析により決定した。懸濁液1mLあたりのナノ担体総乾燥質量を、重量測定法により決定した。
[図:0001436551000003.jpg]
ナノ担体4
オボアルブミンタンパク質のT細胞及びB細胞エピトープであることが分かっている17アミノ酸ペプチドであるオボアルブミンペプチド323-339を、・・・から購入した。・・・ラパマイシンは、・・・から購入した。・・・
溶液を以下のとおり調製した:
・・・
ナノ担体サイズを、動的光散乱法により決定した。ナノ担体中のペプチド及びラパマイシンの量を、HPLC分析により決定した。懸濁液1mLあたりのナノ担体総乾燥質量を、重量測定法により決定した。
[図:0001436551000004.jpg]
ナノ担体5
オボアルブミンタンパク質のT細胞及びB細胞エピトープであることが分かっている17アミノ酸ペプチドであるオボアルブミンペプチド323-339を、・・・から購入した。シンバスタチンを、・・・から購入した。・・・
溶液を以下のとおり調製した:
・・・
ナノ担体サイズを、動的光散乱法により決定した。ナノ担体中のペプチド及びシンバスタチンの量を、HPLC分析により決定した。懸濁液1mLあたりのナノ担体総乾燥質量を、重量測定法により決定した。
[図:0001436551000005.jpg]
生体内投与1
B6.Cg-Tg(TcraTcrb)425Cbn/J(OTII)マウス(合議体注:免疫優性オボアルブミン(323-339)に特異的なトランスジェニックT細胞受容体を有するマウス。68頁31~32行(【0245】)を参照。)及びC57BL/6(B6)マウスの脾臓を採取し、機械的に解離させ、70μM篩で個別にろ過して単一細胞懸濁液を得た。次に二段階法で精製CD4+CD25-細胞を抽出した。Miltenyi Biotec AutoMACS磁気セルソーターを使用して、初めに脾臓細胞をCD4+ T細胞単離キットIIで標識し、CD25枯渇キットで非標識画分からCD25+細胞を枯渇させた。精製B6細胞を細胞内色素カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で染色した後、精製OTII細胞と等濃度で混合した。次にそれをB6.SJL-Ptprca/BoyAi(CD45.1)レシピエントマウスに静脈内(i.v.)注入した。
翌日、レシピエントCD45.1マウスを標的化寛容原性合成ワクチン粒子(t2SVP)で処置した。この粒子にはオボアルブミンペプチド(323-339)(OVA323-339)、ラパマイシン(Rapa)及び/又はシンバスタチン(Simva)の組み合わせが負荷され、皮下(s.c.)投与された。
この注射は寛容誘導処置をなすもので、続いて更に4回、各々2週間の間隔を置いて注射した。処置スケジュールの完了後、レシピエントCD45.1動物を殺処分し、その脾臓及び膝窩リンパ節を採取し、機械的に解離させ、70μM篩で個別にろ過して単一細胞懸濁液を得た。RBC溶解緩衝液(Stem Cell Technologies)とインキュベートすることにより脾臓細胞から赤血球(RBC)を枯渇させ、脾臓及びリンパ節の両方で細胞計数を実施した。
脾臓細胞又はリンパ節細胞を、10U/ml IL-2を補足したCM(完全培地)で培養し、96ウェル丸底(RB)プレートにおいて0.3×106細胞/ウェルのOPIIで再刺激し、37℃、5%CO2でインキュベートした。2日目に細胞を分割し、5日目に採集した。上清を回収して凍結すると同時に、フローサイトメトリーによる表現型分析用に細胞を染色した。Becton Dickinson FacsCantoフローサイトメーターで細胞を分析した。
生体内投与2
B6.Cg-Tg(TcraTcrb)425Cbn/J(OTII)マウス及びC57BL/6(B6)マウスの脾臓を採取し、機械的に解離させ、70μM篩で個別にろ過して単一細胞懸濁液を得た。次に、Miltenyi Biotec AutoMACS磁気セルソーターを使用して、二段階法で精製CD4+CD25-細胞を抽出した。MiltenyiのCD4+ T細胞単離キットIIを使用して脾臓細胞を標識した。次にCD25枯渇キットで非標識CD4+ T細胞画分からCD25+細胞を枯渇させた。次にB6マウスからの精製CD4細胞を細胞内色素カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で染色した後、精製OTII細胞と等濃度で混合した。次にそれをB6.SJL-Ptprca/BoyAi(CD45.1)レシピエントマウスに静脈内(i.v.)注入した。
翌日、レシピエントCD45.1マウスを標的化寛容原性合成ワクチン粒子で処置した。この粒子はオボアルブミンペプチド(323-339)(OVA 323-339)、ラパマイシン(Rapa)及びシンバスタチン(Simva)の組み合わせを含み、皮下(s.c.)投与又は静脈内(i.v.)投与された。
処置スケジュールの完了後、レシピエントCD45.1動物を殺処分し、その脾臓及び膝窩リンパ節を採取し、機械的に解離させ、70μM篩で個別にろ過して単一細胞懸濁液を得た。RBC溶解緩衝液(Stem Cell Technologies)での取り込みにより脾臓細胞から赤血球(RBC)を枯渇させ、脾臓及びリンパ節の両方で細胞計数を実施した。
脾臓細胞又はリンパ節細胞を、10U/ml IL-2を補足したCMで培養し、96ウェル丸底(RB)プレートにおいて0.3×106細胞/ウェルの1μM OPIIで再刺激し、37℃、5%CO2でインキュベートした。2日目に細胞を分割し、5日目に採集した。上清を回収して凍結すると同時に、フローサイトメトリーによる表現型分析用に細胞を染色した。Becton Dickinson FacsCantoフローサイトメーターで細胞を分析した。
結果
結果を図2及び図3に示す(免疫調節薬1:ラパマイシン;免疫調節薬2:シンバスタチン)。これらの図はインビボ効果を示し、抗原単独、或いは、免疫賦活分子との併用有り又は無しの抗原を含む合成ナノ担体と比較したとき、抗原及び免疫抑制薬を含む合成ナノ担体によりエフェクター免疫細胞の抗原特異的な増殖が低下することを実証している。」
(摘記2-7) 図2、図3(枠は当審合議体が付した。)
「
[図:0001436551000006.jpg]
」
(摘記2-8) 84頁7行~89頁20行(【0306】~【0326】)
「実施例13:合成ナノ担体による寛容原性免疫応答
材料及び方法
ナノ担体1
オボアルブミンタンパク質を、・・・から購入した。・・・
・・・
ナノ担体サイズを、動的光散乱法により決定した。ナノ担体中のタンパク質の量を、o-フタルアルデヒド蛍光定量アッセイにより決定した。懸濁液1mLあたりのナノ担体総乾燥質量を、重量測定法により決定した。
[図:0001436551000007.jpg]
ナノ担体2
オボアルブミンタンパク質を、・・・から購入した。ラパマイシンは、・・・から購入した。・・・
・・・
ナノ担体サイズを、動的光散乱法により決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量を、HPLC分析により決定した。ナノ担体中のタンパク質の量を、o-フタルアルデヒド蛍光定量アッセイにより決定した。懸濁液1mLあたりのナノ担体総乾燥質量を、重量測定法により決定した。
[図:0001436551000008.jpg]
免疫化
この実験の目的は、抗原特異的免疫グロブリン(immunogloblulin)を計測することにより、進行中の抗体反応に対するカプセル化された(t2SVP)免疫抑制薬の効果を評価することであった。1つの動物群は、対照として未免疫のままとした。2つの動物群は、オボアルブミンの「受身投与」、又は、OVA及びCpGによる能動免疫化を用いて3回の注射で(0日目、14日目及び28日目)免疫し、続いて抗体力価を評価し、1週間又は2週間休息させた。別の2群は同じ免疫化を受けたが、処置を受けるのと同時に2週間毎のブーストを受けた。これらの群の各々を3つのサブ群に分割し、誘発されるIg力価の改良に関して異なる処置がどの程度の能力を有するかを試験した。対照のサブ群は寛容誘導処置を受けなかった。OVAタンパク質だけを有するNP又は免疫抑制薬と組み合わせたNPを含む他の2つの処置を、他のサブ群に適用した。
免疫化のため、動物には、20μl/肢のOVA+CpG(12.5μg OVA+10μg CpG)を双方とも後肢皮下投与するか、又は100μl中25μgのOVAを静脈内投与した。寛容誘導処置には、10μgのOVAを使用した200μl t2SVP静脈内投与が含まれた。ナノ粒子は500μg/mlのOVA含量で提供した。全ての群で同量のOVAが注入されるようにt2SVPを希釈した。
・・・
結果
図4は、ペプチドのみを含むナノ担体と比較したときの、ペプチド抗原と免疫抑制薬とを含むナノ担体による抗原特異的抗体産生の減少を示す。パネル3は、強力な免疫賦活剤CpGの使用が、ある場合には、ラパマイシンを含む合成ナノ担体の寛容誘導効果を打ち消したことを示す。」
(摘記2-9) 図4(枠は当審合議体が付した。)
「
[図:0001436551000009.jpg]
」
(摘記2-10) 89頁22行~92頁19行(【0327】~【0337】)
「実施例14:合成ナノ担体による寛容原性免疫応答
材料及び方法
上記の例(実施例13)のとおりナノ担体を調製した。
免疫化
この実験の目的は、免疫原とNP処置とを同時に受ける動物で抗原特異的免疫グロブリン(immunogloblul)を計測することにより、抗体反応の出現に対するカプセル化(t2SVP)免疫抑制薬の効果を評価することであった。1つの動物群は、対照として未免疫のままとした(しかし処置は受けた)。第2の動物群はオボアルブミンの「受身投与」を用いて免疫し、第3の群はOVA及びCpGで肩甲下領域に免疫した。これらの群の各々に隔週でナノ粒子(NP)の注射を投与し、ブーストの前日に抗OVA Igレベルを監視した。免疫化のため、動物には100μlのOVA+CpGを皮下投与し(肩甲下)、又は100μl中25μgのOVAを静脈内投与した。寛容誘導処置は100μl t2SVPの静脈内投与を含んだ。ナノ担体は5mg/mlで提供した。全ての群で同量のOVAが注入されるようにt2SVPを希釈した。注射は0日目、14日目、28日目、42日目、56日目に実施した。
・・・
結果
図5は、抗原のみを含むナノ担体と比較したときの、抗原と免疫抑制薬とを含むナノ担体による抗原特異的抗体産生の減少を示す。ここでもデータは、強力な免疫賦活剤CpGの使用が、ある場合には、ラパマイシンを含む合成ナノ担体の寛容誘導効果を打ち消したことを示す。」
(摘記2-11) 図5(枠は当審合議体が付した。)
「
[図:0001436551000010.jpg]
」
イ 引用文献2に記載された発明
上記アに摘記した事項に基づけば、「従来免疫抑制薬は広域作用型であり、概して免疫系の全体的な全身性下方制御をもたら」すうえ、「免疫抑制の維持のため、概して免疫抑制薬物療法は生涯続く」ため、「腫瘍、感染症、腎毒性及び代謝疾患などの重度の副作用のリスクを伴う」という背景技術(摘記2-2、摘記2-4)が説明されるとともに、「より特異性のある形で免疫抑制を実現する」ために、「免疫抑制薬と、望ましくない体液性免疫応答を生じさせる抗原のMHCクラスII拘束性エピトープとを、目的の細胞、特にAPCの作用点に一層直接的に送達することにより、」「抗原に特異的な、有益な寛容原性免疫応答がもたら」される手段(摘記2-4)として、「1例以上の被験対象において抗原に対する望ましくない体液性免疫応答を低下させることが既に示されたプロトコルに従い対象に組成物を投与するステップを含む方法であって、前記組成物が、(i)免疫抑制薬に結合された合成ナノ担体の第1の集団と、(ii)前記抗原のMHCクラスII拘束性エピトープに結合された合成ナノ担体の第2の集団とを含む、方法」であって、「前記第1の集団と前記第2の集団とが同じ集団である」方法及びその方法で用いるための組成物が記載されている(摘記2-1)。
そして、実施例では、抗原として「オボアルブミンタンパク質のT細胞及びB細胞エピトープである」「オボアルブミンペプチド323-339」を、「免疫抑制薬1」として「ラパマイシン」を、「水中油型エマルションを使用して」「カプセル化した」、「抗原のみを含むナノ担体」及び「抗原及び免疫抑制薬を含むナノ担体」(「t2SVP」)を作成し、オボアルブミンに対する免疫応答を有する「(OTII)マウス(合議体注:免疫優性オボアルブミン(323-339)に特異的なトランスジェニックT細胞受容体を有するマウス)」の「CD4+ T細胞」を移植した「レシピエントマウス」に「2週間の間隔を置いて」5回投与したところ、「免疫賦活分子との併用有り又は無しの抗原を含む合成ナノ担体と比較したとき、抗原及び免疫抑制薬を含む合成ナノ担体によりエフェクター免疫細胞の抗原特異的な増殖が低下すること」(実施例12)、「オボアルブミンの「受身投与」を用いて免疫した」動物に対して、「t2SVP」を「0日目、14日目、28日目、42日目、56日目」に投与したところ、「抗原のみを含むナノ担体と比較したときの抗原及び免疫抑制薬を含む合成ナノ担体による抗原特異的抗体産生の減少を示」したこと(実施例13及び14)が、実験的裏付けをもって記載されている(摘記2-3、摘記2-6~摘記2-11)。
ここで、上記実施例において、「抗原及び免疫抑制薬を含むナノ担体」が数次にわたり投与されていることから、反復して投与されていることは明らかである。
そうすると、引用文献2には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「1例以上の被験対象において抗原に対する望ましくない体液性免疫応答を低下させることが既に示されたプロトコルに従い対象に組成物を反復して投与するステップを含む方法で用いるための、抗原に特異的な寛容原性免疫応答をもたらす組成物であって、
前記抗原及びラパマイシンが、水中油型エマルションを使用してカプセル化された合成ナノ担体を含む、組成物。」
4 判断
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
本願発明1の「免疫モジュレーター」は、本願明細書【0013】に「本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、外因性免疫モジュレーターは、ラパマイシン、ミコフェノール酸またはCD22リガンドを含む。」と説明されているから、引用発明における「ラパマイシン」は、本願発明1の「免疫モジュレーター」に相当する。
本願発明1の「カプセル化によって連結されている」について、本願明細書【0062】には、「ある態様において、カプセル化は、連結の形態である。」と説明されているから、引用発明における「カプセル化された」は、本願発明1における「カプセル化によって連結されている」に相当する。
本願発明1の「抗原特異的免疫治療薬」について、本願明細書【0052】には、「ある態様において、抗原(すなわち、外因性抗原)および/または免疫モジュレーター(すなわち、外因性免疫モジュレーター)を含む抗原特異的免疫治療薬は、・・・好ましくは、抗原特異的寛容をもたらし得る免疫応答をもたらすか、または、それにつながる。」と説明されているから、引用発明における「抗原に特異的な寛容原性免疫応答をもたらす組成物」は、本願発明1における「抗原特異的免疫治療薬」に相当する。
本願発明1の「プロトコルの1または2以上の要素」について、本願明細書【0083】には、「「プロトコル」は、被験体に、抗原特異的免疫療法薬を反復して投与するパターンを意味する。プロトコルは要素で構成され;ゆえにプロトコルは1または2以上の要素を含む。プロトコルのかかる要素は、投薬量、投薬頻度、投与経路、投薬期間、投薬速度、投薬の間隔、上記のいずれかの組み合わせ、等を含み得る。」と説明される一方で、引用発明における「プロトコル」も、「被験体への1種以上の物質の任意の投与計画を指す。投与計画は、投与の量、頻度及び/又は形態を含み得る」(摘記2-3)とされるとおり、投与量及び投薬頻度からなる要素を当然に含むものであるから、引用発明における「プロトコルに従い対象に組成物を反復して投与するステップを含む方法で用いるための」は、本願発明1における「プロトコルの1または2以上の要素に従って該抗原特異的免疫治療薬を対象へ反復して投与することを含む方法における使用のための」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
「抗原または免疫モジュレーターが、カプセル化によって連結されている合成ナノ担体を含む、抗原特異的免疫治療薬であって、
過去に示されているプロトコルの1または2以上の要素に従って該抗原特異的免疫治療薬を対象へ反復して投与することを含む方法における使用のための、前記抗原特異的免疫治療薬。」
<相違点>
プロトコルが、本願発明1では、「抗原または免疫モジュレーターの反復投与の際に免疫抑制を誘導しないことが過去に示されているプロトコル」であるのに対し、引用発明では、そのように特定されていない点。
(2) 相違点について
上記相違点について検討する。
引用発明は、「従来免疫抑制薬は広域作用型であり、概して免疫系の全体的な全身性下方制御をもたら」すうえ、「免疫抑制の維持のため、概して免疫抑制薬物療法は生涯続く」ため、「腫瘍、感染症、腎毒性及び代謝疾患などの重度の副作用のリスクを伴う」という技術的背景(摘記2-2、摘記2-4)の下になされた発明であって、「アレルギー、自己免疫疾患、炎症性疾患、臓器若しくは組織拒絶反応又は移植片対宿主病」(摘記2-1、摘記2-4)といった生涯続く疾患の予防や治療のために使用されることを念頭におき、「目的の免疫細胞への標的送達」及び「標的性を高めた免疫効果」を可能とすることによって、「より特異性のある形で免疫抑制を実現する」ことをその技術的思想とするものであるから、引用発明において使用する「ラパマイシン」がもたらす「免疫系の全体的な全身性下方制御」を防止することは、引用発明がそもそも課題として有するものであったといえる。
そして、引用文献2には、「プロトコルが望ましくない免疫応答の減少又は望ましい免疫応答の生成(例えば、寛容原性効果の促進)に有効であったか否かを判定するために評価」(摘記2-5)することも記載されているのであるから、引用発明のプロトコルについて、「望ましくない体液性免疫応答を低下させる」ことのみならず、引用発明がそもそも有していた課題であるラパマイシンの使用による「免疫系の全体的な全身性下方制御」が起きないことを確認したうえで、そのようなプロトコルに従って引用発明の組成物を使用することは、当業者が容易に想到し得るものといえる。
(3) 効果について
本願明細書の実施例1では、オボアルブミン(OVA)で免疫した動物に対して、ラパマイシン及びOPII.323(オボアルブミンペプチド(323-339))を含有する抗原特異的免疫治療薬(t2SVP)と、キーホールリンペット(KLH)を反復投与する試験において、OVAに対する抗体力価は低減するのに対し、KLHに対する抗体力価は低減せず、ラパマイシンとともにカプセル化された抗原に特異的な免疫寛容が誘導される一方で、ラパマイシンとともにカプセル化されていない他の抗原については免疫抑制が誘導されないことが確認されている(【0214】~【0237】、図1)。
しかしながら、引用文献2においても、「免疫抑制薬と、望ましくない体液性免疫応答を生じさせる抗原のMHCクラスII拘束性エピトープとを、目的の細胞、特にAPCの作用点に一層直接的に送達することにより」、「抗原に特異的な、有益な寛容原性免疫応答がもたらされ得ること」、及び「オフターゲット効果及び毒性が低下することも予想される」ことの理論的説明がされている(摘記2-4)。
そのうえで、実施例12では、オボアルブミンで免疫したマウスに対し、OVA及びラパマイシンをカプセル化した合成ナノ担体(t2SVP)を投与したマウス(NPOva+NP免疫抑制薬1)では、OVAのみをカプセル化した合成ナノ担体(NPOva)を投与したマウス(NPOva+ビヒクル)に比べ、CD4+ T細胞の数は減少するとともに、Foxp3+CD25+細胞(合議体注:Treg細胞と同義。(摘記2-5)を参照。)の数が増加し、免疫寛容が誘導されることが確認されると同時に、NPOvaとは別にラパマイシンを投与したマウス(NPOva+s免疫抑制薬1)では、CD4+ T細胞の数が増加し、Foxp3+CD25+細胞は減少していること、すなわち免疫抑制が誘導されないことが確認されている(摘記2-6及び摘記2-7)。
さらに、実施例13及び14においても、予めOVAに対する免疫を誘導した動物(OVA受身、t2SVP-OVA-ラパマイシン処置)においては、OVA及びラパマイシンをカプセル化した合成ナノ担体(t2SVP)の反復投与により、OVAに対する抗体力価が減少し、抗原特異的な寛容原性免疫応答が誘導されることが確認されると同時に、OVAで免疫されていない動物(対象、t2SVP-OVA-ラパマイシン処置)、すなわち望ましくない体液性免疫応答を生じさせる目的の細胞を持たない動物においては、t2SVPの反復投与によって、OVAに対する抗体力価の上昇という通常の体液性免疫応答が誘導されることが確認されており、t2SVPの反復投与は、全身性の免疫抑制を誘導しないものであることが理解できる(摘記2-8~摘記2-11)。
そうすると、「ラパマイシンとともにカプセル化された抗原」に対しては特異的な免疫寛容が誘導される一方で、「ラパマイシンとともにカプセル化されていない他の抗原」については免疫抑制が誘導されないという、本願発明1の実施例において確認された効果は、引用文献2にも記載された効果、或いは引用文献2の記載から予測し得る効果であって、格別顕著なものとは認められない。
(3) 審判請求人の主張
審判請求人は、令和6年5月24日提出の手続補正書(方式)において、引用文献2には、合成ナノキャリアや抗原の投与において、「反復投与の際に」「抗原に対する抗体形成の防止を達成するが他の抗原に対しては免疫応答の統計的に有意なダウンレギュレーションを誘導しないこと」について何ら記載も示唆もしてもおらず、本願発明1が進歩性を有する旨を主張する。
しかしながら、上記(2)で説示したとおり、引用文献2においても、OVA及びラパマイシンをカプセル化した合成ナノ担体(t2SVP)の反復投与により、抗原特異的な寛容原性免疫応答は誘導するが、全身性の免疫抑制は誘導されないことが記載されているから、審判請求人の主張を採用することはできない。
(4) 小括
以上のとおりであるから、本願発明1は引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
本願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布された引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-005739