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特許拒絶査定不服審判

2023-021290

エアロゾル発生デバイス用の装置

審判番号
2023-021290
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-577349外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年12月14日
審決日
2026年01月05日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A24F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-577349「エアロゾル発生デバイス用の装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年12月30日国際公開、WO2020/260886、令和 4年 9月 1日国内公表、特表2022-538289〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)6月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年(令和元年)6月28日 (GB)英国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和5年 3月16日付け:拒絶理由通知 令和5年 6月28日 :意見書、手続補正書の提出 令和5年 8月14日付け:拒絶査定 令和5年12月14日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和7年 3月13日付け:拒絶理由通知 令和7年 6月18日 :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~13に係る発明は、令和7年6月18日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「エアロゾル発生デバイス用の装置であって、前記装置は、 サセプタ装置を誘導加熱してエアロゾル発生材を加熱し、これにより加熱操作モードでエアロゾルを発生させるインダクタ素子を含む共振回路と、 前記インダクタ素子に流れる電流を測定する電流センサと、 前記測定された電流の値に基づいてエアロゾル発生デバイス、装置およびサセプタ装置のうちの少なくとも1つについての1つ以上の特徴を特定するためのプロセッサと、を含み、 前記プロセッサによって特定される前記1つ以上の特徴は前記サセプタ装置の有無を含み、 前記サセプタ装置は取り外し可能な物品の一部として提供され、 前記プロセッサによって特定される前記取り外し可能な物品の特性は、前記取り外し可能な物品の有無を含むエアロゾル発生デバイス用の装置。」 第3 当審における拒絶の理由 令和7年3月13日付けで当審が通知した拒絶の理由のうち、請求項1~6、8~10、14~19、21~23に係る発明に対する拒絶の理由は、概ね次のとおりである。 本願の請求項1~6、8~10、14~19、21~23係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記1~3の引用文献に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:国際公開第2018/178113号(主たる引用例) 引用文献2:特開2016-207544号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3:特開2000-150126号公報(周知技術を示す文献) 第4 引用文献 1 引用文献1 令和7年3月13日付けで通知された拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である国際公開第2018/178113号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、日本語訳は、引用文献1の日本語ファミリーである特表2020-516014号公報を用いた。また下線部は当審が付した。 (1)引用文献1の記載 「 [図:0001435505000001.jpg] 」(明細書第1ページ第3~6行) (日本語訳) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、エアロゾル発生装置のサセプタ、より詳細には、RLC共振回路によって誘導加熱されるためのサセプタの温度を決定するための装置及び方法に関する。」 「 [図:0001435505000002.jpg] 」(明細書第6ページ第15~21行) (日本語訳) 「【0034】 図1は、サセプタ116によってエアロゾル発生材料164を誘導加熱するためのRLC共振回路100を備えた例示的なエアロゾル発生装置150を概略的に示している。いくつかの例では、サセプタ116とエアロゾル発生材料164は一体のユニットを形成し、エアロゾル発生装置150に挿入することができ、及び/又はそれから取り外すことができ、使い捨てにすることができる。エアロゾル発生装置150は携帯型である。エアロゾル発生装置150は、エアロゾル発生材料164を加熱して、使用者が吸入するためのエアロゾルを発生させるように構成される。」 「 [図:0001435505000003.jpg] 」(明細書第7ページ第4~13行) (日本語訳) 「【0036】 図1に戻ると、エアロゾル発生装置150は、RLC共振回路100と、サセプタ116と、エアロゾル発生材料164と、制御器114と、バッテリー162とを収容する外装体151を備える。バッテリーは、RLC共振回路100に電力を供給するように構成される。制御器114は、RLC共振回路100を制御するように、例えば、バッテリー162からRLC共振回路100に供給される電圧、及びRLC共振回路100が駆動される周波数fを制御するように構成される。RLC共振回路100は、サセプタ116を誘導加熱するように構成される。サセプタ116は、使用時にエアロゾル発生材料364を加熱してエアロゾルを発生させるように構成される。外装体151は、使用時に発生したエアロゾルが装置150から出ることができるように吸い口160を備える。」 「 [図:0001435505000004.jpg] [図:0001435505000005.jpg] 」(明細書第7ページ第24行~第8ページ第2行) (日本語訳) 「【0038】 制御器114及び装置150全体は、エアロゾル発生材料を燃焼させることなく、エアロゾル発生材料をある温度範囲に加熱して、エアロゾル発生材料の少なくとも1つの成分を揮発させるように構成することができる。例えば、その温度範囲は約50℃~約350℃、例えば、約50℃~約250℃、約50℃~約150℃、約50℃~約120℃、約50℃~約100℃、約50℃~約80℃、又は約60℃~約70℃とすることができる。いくつかの例では、その温度範囲は約170℃~約220℃である。いくつかの例では、その温度範囲はこの範囲以外であってもよく、温度範囲の上限は300℃より高くてもよい。」 「 [図:0001435505000006.jpg] 」(明細書第9ページ第1~4行) (日本語訳) 「【0041】 次に、図2aを参照すると、サセプタ116を誘導加熱するための例示的なRLC共振回路100が示されている。共振回路100は、直列に接続された、抵抗器104と、コンデンサ106と、インダクタ108とを備える。共振回路10は、抵抗Rと、インダクタンスLと、キャパシタンスCとを有する。」 「 [図:0001435505000007.jpg] 」(明細書10ページ第10~21行) (日本語訳) 「【0045】 回路100は、Hブリッジドライバ102によって駆動される。Hブリッジドライバ102は、共振回路100に交流電流を与えるための駆動要素である。Hブリッジドライバ102は、DC電圧供給部VSUPP110に接続され、アースGND112に接続される。DC電圧供給部VSUPP110は、例えば、バッテリー162からであってもよい。Hブリッジ102は、集積回路であってもよく、或いは、半導体式又は機械式の場合がある個別のスイッチング部品(図示せず)を備えてもよい。Hブリッジドライバ102は、例えば、高効率ブリッジ整流器であってもよい。それ自体知られているように、Hブリッジドライバ102は、スイッチング部品(図示せず)によって回路の両端間の電圧を逆転させる(次いで、戻す)ことによって、DC供給部VSUPP110から回路100に交流電流を与えることができる。これは、DCバッテリーによってRLC共振回路に電力を供給することができ、交流電流の周波数を制御することができるので有用となり得る。」 「 [図:0001435505000008.jpg] [図:0001435505000009.jpg] [図:0001435505000010.jpg] 」(明細書第13ページ第8行~第14ページ第4行) (日本語訳) 「【0053】 例えば、図2aに示された例を再び参照すると、電気的特性は、RLC回路100のインダクタ108によってセンスコイル120aに誘導された電流を示すことができる。図2aに示されているように、センスコイル120aは、インダクタ108からエネルギー伝達されるように配置され、回路100に流れる電流Iを検出するように構成される。センスコイル120aは、例えば、ワイヤのコイル、又はプリント回路基板上のトラックであってもよい。例えば、インダクタ108がプリント回路基板上のトラックの場合、センスコイル120aは、プリント回路基板上のトラックとすることができ、例えば、インダクタ108の平面に平行な平面に、インダクタ108の上方又は下方に配置することができる。別の例では、2つ以上のインダクタ108がある例では、センスコイル120aは、インダクタの両方からエネルギー伝達されるように、これらのインダクタ108間に配置することができる。例えば、これらのインダクタ108がプリント回路基板上のトラックであり、互いに平行な平面にある場合、センスコイル120aは、2つのインダクタの中間で、これらのインダクタ108に平行な平面にある、プリント回路基板上のトラックとすることができる。 【0054】 いずれの場合も、回路100、したがってインダクタ108に流れる交流電流Iによって、インダクタ108は交流磁場を発生する。交流磁場は、センスコイル120a内に電流を誘導する。センスコイル120a内に誘導された電流は、センスコイル120aの両端間に電圧VINDを生成する。センスコイル120aの両端間の電圧VINDは測定することができ、RLC回路100に流れる電流Iに比例する。センスコイル120aの両端間の電圧VINDは、Hブリッジドライバ104が共振回路100を駆動している駆動周波数fの関数として記録することができ、したがって、決定された回路100の周波数応答300を記録することができる。例えば、制御器114は、Hブリッジドライバ104を制御して共振回路100で交流電流を駆動している周波数fの関数としてセンスコイル120aの両端間の電圧VINDの測定値を記録することができる。次いで、制御器は、周波数応答300を分析して、周波数応答300のピークの周波数特性、例えば、ピークの中心にある共振周波数fr、又はピークのバンド幅Bを決定することができる。」 「 [図:0001435505000011.jpg] 」(明細書第15ページ第7~20行) (日本語訳) 「【0058】 図2cは、RLC回路の電気的特性の能動的な測定の例を示している。図2cは、図2aのセンスコイル120aが、インダクタ108の両端間の電圧VLを測定するように構成された要素120c、例えば、受動的な差動回路120cに取り替えられていることを除いて図2aと同じである。共振回路100の電流Iが変化すると、インダクタ108の両端間の電圧VLは変化する。インダクタ108の両端間の電圧VLは、Hブリッジドライバ104が共振回路100を駆動する駆動周波数fの関数として測定及び記録することができ、したがって、回路100の決定された周波数応答300を測定及び記録することができる。例えば、制御器114は、Hブリッジドライバ104を制御して共振回路100の交流電流を駆動する周波数fの関数としてインダクタ108の両端間の電圧VLの測定値を記録することができる。次いで、制御器114は、周波数応答300を分析して、周波数応答300のピークの周波数特性、例えば、ピークの中心にある共振周波数fr、又はピークのバンド幅Bを決定することができる。」 「 [図:0001435505000012.jpg] [図:0001435505000013.jpg] 」(明細書第17ページ第9~24行) (日本語訳) 「【0064】 図3bは、サセプタ116が2つの異なる温度T1(実線の曲線360)及びT2(破線の曲線370)のときの共振回路100の周波数応答360、370を概略的に示している。ここで、T2はT1より高い。図3bの例では、共振回路100の周波数応答360、370は、回路100が駆動される駆動周波数fの関数として回路100に流れる電流Iを概略的にプロットすることによって示されている。上記のように、サセプタ116が低い温度T1のとき、回路100のインダクタンスLはL1で、共振周波数frはfr1である。しかしながら、サセプタ116が高い温度T2(サセプタ116を構成する材料のキュリー温度TCより下であるがそれに近い)のときは、回路100のインダクタンスLはL2に下がり、したがって、回路100の共振周波数frはfr2に上がる。 【0065】 したがって、回路100の共振周波数frを決定することによって、制御器114は、(下記でより詳細に説明するように)サセプタ116の温度を決定、例えば、推定又は計算することができる。」 「 [図:0001435505000014.jpg] [図:0001435505000015.jpg] [図:0001435505000016.jpg] 」(明細書第25ページ第7行~第26ページ第9行) (日本語訳) 「【0087】 例えば、制御器114は、サセプタ116が特定の温度であることを知る、又は推測することができるとき、周波数特性を決定するように構成することができる。例えば、制御器114は、装置150の開始時に、(例えば、上記の方法を使用して)周波数特性を決定するように構成することができる。そのとき、サセプタ116の温度は大気温度、例えば20℃であると仮定することができる。次いで、制御器114は、この決定された周波数特性を、20℃の参照温度での参照周波数特性として記憶することができる。後の段階、例えば、サセプタ116が誘導加熱されているとき、制御器114は、再び、周波数特性を決定することができる。次いで、制御器114は、この決定された周波数特性を参照周波数特性と比較することができる。例えば、制御器114は、決定された周波数特性と参照周波数特性との間の差を計算することができる。次いで、制御器114は、この差に基づいてサセプタ116の温度を決定することができる。例えば、この差は、上記と同様な方法で、例えば、予め記憶された校正データ、又は校正関数、又は比例定数により、サセプタ116の温度と対応させることができる。 【0088】 決定された周波数特性の参照温度での参照特性との比較に基づいてサセプタ116の温度を決定することによって、所与の温度での共振回路の周波数特性を仮定する必要性が除去され、したがって、温度をより正確に決定することができる。さらに、この温度決定は、サセプタ116又は共振回路100又は装置全体350の変化に対してよりロバストである。例えば、サセプタ116は交換可能とすることができる。例えば、サセプタ116は使い捨て可能とすることができ、例えば、加熱するように配置されたエアロゾル発生材料164と一体化することができる。したがって、参照周波数特性の決定は、サセプタ116が交換されたとき、異なるサセプタ116間の違い、及び/又は、インダクタ108に対するサセプタ116の配置の違いを考慮することができる。さらに、インダクタ108は、又は、実際、共振回路100のいかなる構成部品も、例えば、一定の使用後、又は損傷後、交換可能とすることができる。したがって、同様に、インダクタ108が交換されたとき、参照周波数特性の決定は、異なるインダクタ108間の違い、及び/又は、サセプタ116に対するインダクタ108の配置の違いを考慮することができる。」 「 [図:0001435505000017.jpg] 」(図1) 「 [図:0001435505000018.jpg] 」(図2a) 「 [図:0001435505000019.jpg] 」(図2c) 「 [図:0001435505000020.jpg] 」(図3b) (2)引用文献1から理解できる事項 上記(1)の引用文献1の記載事項等から、以下の事項が理解できる。 制御器114は、センスコイル120aの両端間の電圧VINDをRLC共振回路100を駆動している駆動周波数fの関数である周波数応答300として記録することができ、周波数応答300を分析して周波数応答300のピークの周波数特性であるピークの中心にある共振周波数fr又はピークのバンド幅Bを決定することができ、RLC共振回路100の周波数応答300から、サセプタ116の温度を推定又は計算でき、サセプタ116とエアロゾル発生材料164は一体のユニットを形成し、エアロゾル発生装置150に挿入することができると理解できる。 (3)引用発明 上記(1)、(2)から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「エアロゾル発生装置であって、 エアロゾル発生装置は、サセプタ116によってエアロゾル発生材料164を誘導加熱し、RLC共振回路100は、サセプタ116を誘導加熱して使用時にエアロゾル発生材料364を加熱してエアロゾルを発生させるインダクタ108を備え、 RLC共振回路100のインダクタ108によってセンスコイル120aに誘導された電流を示し、センスコイル120a内に誘導された電流は、センスコイル120aの両端間に電圧VINDを生成し、センスコイル120aの両端間の電圧VINDは測定することができ、 センスコイル120aの両端間の電圧VINDをRLC共振回路100を駆動している駆動周波数fの関数である周波数応答300として記録することができ 、周波数応答300を分析して周波数応答300のピークの周波数特性であるピークの中心にある共振周波数fr又はピークのバンド幅Bを決定することができ、RLC共振回路100の周波数応答300から、サセプタ116の温度を推定又は計算できる制御器114を含み、 サセプタ116はエアロゾル発生材料164と一体のユニットとしてエアロゾル発生装置150に挿入される、エアロゾル発生装置。」 2 引用文献2及び3(周知技術を示す文献) 上記拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2016-207544号公報(以下「引用文献2」という。)及び特開2000―150126号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 (1)引用文献2の記載 「【0018】 また、制御手段61は、・・・入力電流検出手段2により検出された入力電流および内加熱コイル電流検出手段55(第1の出力電流検出手段に相当)により検出された内加熱コイル15aの電流に基づいて、内加熱コイル15aの上方の鍋200(調理容器)の材質又は有無を判別する第1の判別手段と、入力電流検出手段2により検出された入力電流および外加熱コイル電流検出手段56(第2の出力電流検出手段)により検出された外加熱コイル15bの電流に基づいて、外加熱コイル15bの上方の鍋200の材質又は有無を判別する第2の判別手段とを備えている。」 (2)引用文献3の記載 「【0026】 図1において、21は高周波インバータ装置1の出力電圧を検出する出力電圧検出器、22は高周波インバータ装置1の出力電流を検出する出力電流検出器、23は検出された出力電圧を整流する整流回路、24は検出された出力電流を整流する整流回路、25は判断回路であり、この判断回路25は加熱コイル内における被加熱材の有無を出力電圧検出結果と出力電流検出結果より判断し、有ると判断されたならば高周波インバータ装置1に停止指令を出すと共に、作業員に警告を与えるため表示器26を点灯させる。他の構成は前記図4に示す構成と同じである。」 (3)周知技術1 引用文献2及び3の記載を鑑みれば、本願の優先日前に以下の事項が周知の技術(以下「周知技術1」という。)であると認められる。 「誘導加熱装置において、コイルに流れる電流の電圧値及び電流値を検出して、当該コイルに流れる電圧値及び電流値から被加熱部材の有無を検知すること。」 3 引用文献4及び5(周知技術を示す文献) 新たに引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特表2015-506170号公報(以下「引用文献4」という。)及び国際公開第2019/088559号(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。なお、引用文献5の日本語訳は日本語ファミリーである特表2020-531015号公報を用いた。 (1)引用文献4の記載 「【0045】 電気加熱式エアロゾル発生システム100は、ハウジング10及び例えばシガレットであるエアロゾル形成基材2を備える。エアロゾル形成基材2は、ハウジング10の内部に押し込まれて加熱器20に熱的に近接した状態になる。エアロゾル形成基材2は、異なる温度でさまざまな揮発性化合物を放出することになる。エアロゾル形成基材2から放出されるいくつかの揮発性化合物は、加熱プロセスを通してのみ形成される。各揮発性化合物は、特有の放出温度以上で放出されることになる。エアロゾル発生システム100の最大作動温度を一部の揮発性化合物の放出温度未満に制御することによって、これらの煙成分の放出又は形成を避けることができる。 【0046】 さらに、ハウジング10は、例えば充電式リチウムイオンバッテリである電気エネルギ供給部40を含む。コントローラ30が、加熱要素20、電気エネルギ供給部40、エアロゾル形成基材検出部32、及び例えば表示部である図形ユーザインタフェース36に接続される。コントローラ30は、加熱器20に供給される電力を制御してその温度を調節する。一般的に、エアロゾル形成基材は、約250℃から440℃の間の温度に加熱される。 【0047】 エアロゾル形成基材検出部32は、加熱器20に熱的に近接した状態のエアロゾル形成基材2の存在及び識別情報を検出して、エアロゾル形成基材2の存在をコントローラ30に信号で伝えることができる。」 「 [図:0001435505000021.jpg] 」(図1) (2)引用文献5の記載 「 [図:0001435505000022.jpg] 」 (日本語訳) 「【0027】 図1及び図2を参照すれば、エアロゾル生成装置10000は、バッテリ11000、制御部12000、ヒータ13000及び蒸気化器14000を含む。また、エアロゾル生成装置10000の内部空間には、シガレット20000が挿入される。」 「 [図:0001435505000023.jpg] 」(図1) 「 [図:0001435505000024.jpg] 」 (日本語訳) 「【0037】 一方、他の例として、ヒータ13000は、誘導加熱式ヒータでもある。具体的に、ヒータ13000には、シガレットを誘導加熱方式で加熱するための電気伝導性コイルを含み、シガレットは、誘導加熱式ヒータによって加熱されるサセプタを含んでもよい。」 「 [図:0001435505000025.jpg] 」 (日本語訳) 「【0047】 一方、エアロゾル生成装置10000は、バッテリ11000、制御部12000及びヒータ13000外に汎用的な構成をさらに含んでもよい。例えば、エアロゾル生成装置10000は、視覚情報の出力が可能なディスプレイ及び/または触覚情報の出力のためのモータを含んでもよい。また、エアロゾル生成装置10000は、少なくとも1つのセンサ(パフ感知センサ、温度感知センサ、シガレット挿入感知センサなど)を含んでもよい。また、エアロゾル生成装置10000は、シガレット20000が挿入された状態でも、外部空気が流入されたり、内部気体が流出されたりする構造にも作製される。」 「 [図:0001435505000026.jpg] 」 (日本語訳) 「【0123】 センサ850は、パフ感知(puff detect)センサ(温度感知センサ、流量(flow)感知センサ、位置感知センサなど)、シガレット挿入感知センサ、ヒータ820の温度感知センサなどの多様な種類のセンサを含んでもよい。センサ850によってセンシングされた結果は、制御部810に伝達し、制御部810は、センシング結果によってヒータ温度の制御、喫煙の制限、シガレット挿入有無の判断、お知らせ表示のような多様な機能が行われるようにエアロゾル生成装置800を制御する。」 (3)周知技術2 上記引用文献4及び5の記載を鑑みれば、本願の優先日前に以下の事項が周知の技術(以下「周知技術2」という。)であると認められる。 「電気加熱式又は誘導加熱式のエアロゾル発生装置において、装置に挿入するシガレット(誘導加熱式の場合はサセプタを含む)を検出するセンサを設けて、シガレットの挿入有無の判断をすること。」 第5 対比 1 本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「エアロゾル発生装置」は、本願発明の「エアロゾル発生デバイス用の装置」に相当し、同様に「サセプタ116」は「サセプタ装置」、「誘導加熱」は「誘導加熱」、「エアロゾル発生材料164」は「エアロゾル発生材」及び「取り外し可能な物品」、「インダクタ108」は「インダクタ素子」、「RLC共振回路100」は「共振回路」に相当する。 引用発明の「エアロゾル発生装置であって、エアロゾル発生装置は、サセプタ116によってエアロゾル発生材料164を誘導加熱」することは、本願発明の「エアロゾル発生デバイス用の装置であって、前記装置は、サセプタ装置を誘導加熱してエアロゾル発生材を加熱」することに相当する。 引用発明の「使用時」は、RLC共振回路100でサセプタ116を誘導加熱しているのであるから、本願発明の「加熱操作モード」に相当する。 してみると、引用発明の「サセプタ116を誘導加熱して使用時にエアロゾル発生材料364を加熱してエアロゾルを発生させるインダクタ108を備え」る「RLC共振回路100」は、本願発明の「加熱モードでエアロゾルを発生させるインダクタ素子を含む共振回路」に相当する。 引用発明の「電圧VINDを測定する」ことは、電圧を測定するセンサを備えることが技術的に自明である。 してみると、引用発明の「RLC共振回路100のインダクタ108によってセンスコイル120aに誘導された電流を示し、センスコイル120a内に誘導された電流は、センスコイル120aの両端間に電圧VINDを生成し、センスコイル120aの両端間の電圧VINDは測定することができ」るセンサを備えることと、本願発明の「前記インダクタ素子に流れる電流を測定する電流センサ」とは、「前記インダクタ素子に流れる電流を測定するセンサ」の限りにおいて一致する。 引用発明の「周波数特性であるピークの中心にある共振周波数fr又はピークのバンド幅B」及び「サセプタ116の温度」は、本願発明の「エアロゾル発生デバイス、装置およびサセプタ装置のうち少なくとも1つについての1つ以上の特徴」に相当する。 引用発明の「制御器114」は、本願発明1の「プロセッサ」に相当する。 してみると、引用発明の「センスコイル120aの両端間の電圧VINDをRLC共振回路100を駆動している駆動周波数fの関数である周波数応答300として記録することができ、周波数応答300を分析して周波数応答300のピークの周波数特性であるピークの中心にある共振周波数fr又はピークのバンド幅Bを決定することができ、RLC共振回路100の周波数応答300から、サセプタ116の温度を推定又は計算できる制御器114」は、本願発明の「前記測定された電流の値に基づいてエアロゾル発生デバイス、装置およびサセプタ装置のうち少なくとも1つについての1つ以上の特徴を特定するためのプロセッサ」とは、「前記測定された電流に基づいてエアロゾル発生デバイス、装置およびサセプタ装置のうち少なくとも1つについての1つ以上の特徴を特定するためのプロセッサ」の限りにおいて一致する。 引用発明の「サセプタ116はエアロゾル発生材料164と一体のユニットとしてエアロゾル発生装置150に挿入される」は、本願発明の「サセプタ装置は取り外し可能な物品の一部として提供され」に相当する。 2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「エアロゾル発生デバイス用の装置であって、前記装置は、 サセプタ装置を誘導加熱してエアロゾル発生材を加熱し、これにより加熱操作モードでエアロゾルを発生させるインダクタ素子を含む共振回路と、 前記インダクタ素子に流れる電流を測定するセンサと、 前記測定された電流に基づいてエアロゾル発生デバイス、装置およびサセプタ装置のうちの少なくとも1つについての1つ以上の特徴を特定するためのプロセッサと、を含み、 前記サセプタ装置は取り外し可能な物品の一部として提供される、エアロゾル発生デバイス用の装置。」 【相違点1】 電流を測定するセンサ及び測定された電流に関して、本願発明は、「電流センサ」であって「電流の値」を測定するのに対して、引用発明は、「センスコイル120a内に誘導された電流は、センスコイル120aの両端間に電圧VINDを生成し、センスコイル120aの両端間の電圧VIND」を測定するセンサであって「RLC共振回路100を駆動している駆動周波数fの関数である周波数応答300として記録することができ、周波数応答300を分析」して求める点。 【相違点2】 本願発明は、「前記プロセッサによって特定される前記1つ以上の特徴は前記サセプタ装置の有無を含み、前記プロセッサによって特定される前記取り外し可能な物品の特性は、前記取り外し可能な物品の有無を含む」のに対して、引用発明は、そのような構成がない点。 第6 判断 1 相違点について 以下、相違点について検討する。 (1)相違点1について 回路に流れる電流の電流値を計測する際、電気回路に抵抗器を組み込み、抵抗器の両端の電圧を測定し、降下した電圧と抵抗値から電流値を計算することで回路に流れる電流を検出すること(シャント抵抗方式)は、技術常識である。 また、引用文献1には、「センスコイル120aの両端間の電圧VINDは測定することができ、RLC回路100に流れる電流Iに比例する。」(日本語訳【0054】、【0058】)、「共振回路100の周波数応答360、370は、回路100が駆動される駆動周波数fの関数として回路100に流れる電流Iを概略的にプロットすることによって示されている。」(日本語訳【0064】)と記載されており、引用発明は、電圧を測定していたとしても、電圧値から電流値を計算して用いているものと解するのが相当である。 してみると、相違点1は、実質的な相違点でないか、実質的な相違点であったとしても、技術常識から当業者が容易に想到し得たことにすぎないものである。 (2)相違点2について 本願の優先日前に周知の技術である周知技術1及び2は、上記第4の2(3)及び3(3)のとおりである。 このうち、かかる周知技術2に照らせば、同じ誘導加熱式のエアロゾル発生装置である引用発明においても、装置に挿入される「一体のユニット」(サセプタ116とエアロゾル発生材料164)を検知するセンサを設けて、シガレットたる「一体のユニット」の挿入有無を判断する動機付けがある。 そうすると、引用発明において、「一体のユニット」を検知するセンサとして、同じ誘導加熱装置における周知技術1を採用して、センスコイル120aの両端間の電圧VIND及び/又は電圧VINDから計算された電流値から、「一体のユニット」の有無を検知するようにし、もって、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、相違点1及び2に係る本願発明の構成は、引用発明並びに周知技術1及び2に基いて、当業者が容易になし得たものである。 2 作用効果 そして、相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明並びに周知技術1及び2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 3 小括 したがって、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 第7 請求人の主張について 請求人は、令和7年6月18日提出の意見書において、以下の2点を主張しているから検討する。 1 相違点1に係る主張 「(3.2)相違点1について 拒絶理由では、本願発明の「電流センサ」による電流値測定と、引用発明1の「センスコイル」による電圧測定との間に実質的な相違はない、と認定されている。しかし、この認定は両発明の目的と技術思想を看過したものであり、妥当ではない。引用発明1の目的は、周波数応答の精密な分析による、高精度な温度決定である。そのために、複雑な周波数応答の分析を前提とする構成を採用している。一方、本願発明の目的は、より単純な「有無検知」や「真正性判断」である。目的が質的に異なるため、引用発明1に接した当業者が、その高精度なシステムを、より低次元な目的のために、構成を単純化して本願発明に至るという動機付けは存在しない。」 2 相違点2に係る主張 「(3.1)本願発明の特徴に基づいた動機付けの判断 補正後の本願発明の技術的特徴は、単なる誘導加熱装置ではなく、携帯型のデバイス本体と、それに着脱される専用の消耗品(取り外し可能な物品)とで構成されるシステムに関するものである。デバイスと消耗品というシステム構成は、本願発明の技術的な前提であり、文献2、3とは全く異なる課題を解決するものである。」 「(3.3)相違点2について 拒絶理由では、「サセプタ装置の有無」を検出することは、文献2、3のような周知技術を適用すれば容易に想到可能であったと認定された。しかし、審判官が認定する「被加熱部材の有無の検知」という課題は、本願発明が解決する課題を過度に一般化したものであり、承服できない。本願発明が解決しようとする真の課題は、単なる「有無検知」ではなく、携帯型のデバイス本体と、それに着脱される専用の消耗品(取り外し可能な物品)とで構成されるシステムにおいて、消耗品の真正性を確保し、もってシステム全体の性能と安全性を保証できるという、極めて特殊かつ複合的なものである。 本願発明は、明細書0069に記載されるように、「本物の物品」であるか否かを判定できる。これは、調理鍋の最適制御を行う文献2や工業炉内の被加熱材の置き忘れ防止する文献3の技術とは質的に異なる。 本願発明が備える差異点2は、文献2、3には存在しない課題を解決し、予測不可能な顕著な効果を奏するものであり、当業者が容易に想到し得たことではない。」 3 請求人の主張への検討 上記請求人の主張について検討する。 (1)相違点1に係る主張の検討 上述のとおり、電気回路に抵抗器の両端の電圧を測定し、降下した電圧と抵抗値から電流値を計算することで回路に流れる電流を検出することが技術常識である点、及び、引用発明は電圧を測定していたとしても、電圧値から電流値を計算して用いているものと解するのが相当である点を鑑みれば、相違点1は、実質的な相違点でないか、実質的な相違点であったとしても、技術常識から当業者が容易に想到し得たことにすぎない。 そして、かかる当審の判断は、引用発明の目的(サセプタの温度の決定)及び測定された電圧の用途(RLC共振回路100の周波数応答の分析)に左右されるものではないことは、その説示内容から明らかである。 (2)相違点2に係る主張の検討 上述のとおり、周知技術2と同じ誘導加熱式のエアロゾル発生装置である引用発明において、装置に挿入される「一体のユニット」を検知するセンサを設けて、シガレットたる「一体のユニット」の挿入有無を判断する動機付けがあるから、引用発明に周知技術1を適用して、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、容易想到である。 このように、かかる当審の判断は、引用発明と同じ誘導加熱式のエアロゾル発生装置の周知技術(周知技術2)を踏まえたものであって、周知技術1を組み合わせる動機付けの存否において、「課題を過度に一般化したもの」ではない。 なお、『真正性判断』については、そもそも本願発明において『真正性判断』に係る特定事項が存在しないため、当該主張は特許請求の範囲に基づいたものではない。 4 したがって、請求人の主張は採用できない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり、審決する。

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2023-021290

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