特許拒絶査定不服審判
2024-005091
撮像装置およびレンズ装置
- 審判番号
- 2024-005091
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-014225外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年03月26日
- 審決日
- 2025年12月18日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (G03B) / P18 .561-Z (G03B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 14225「撮像装置およびレンズ装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月19日出願公開、特開2021-120721〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年 1月30日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 1月18日 :手続補正書の提出
同年 9月28日付け:拒絶理由通知書
同年11月29日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月14日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月26日 :原査定の謄本の送達)
令和6年 3月26日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和7年 8月28日付け:審尋
同年10月 2日 :回答書
第2 令和6年3月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年3月26日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和6年3月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年11月29日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1及び11の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1及び11の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
フォーカスレンズが合焦位置に自動で調整される第一の制御と前記フォーカスレンズがユーザの操作量に基づいて調整される第二の制御が可能な光学系における被写体距離を示す距離目盛を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記距離目盛と、現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報と、前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲に関する情報とが共に表示されるように前記表示部を制御し、
前記第一の範囲は、前記光学系のズーム位置に応じて変化することを特徴とする撮像装置。」
「【請求項11】
フォーカスレンズが合焦位置に自動で調整される第一の制御と前記フォーカスレンズがユーザの操作量に基づいて調整される第二の制御が可能な光学系と、
前記光学系における被写体距離を示す距離目盛を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記距離目盛と、現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報と、前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲に関する情報とが共に表示されるように前記表示部を制御し、
前記第一の範囲は、前記光学系のズーム位置に応じて変化することを特徴とするレンズ装置。」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
フォーカスレンズが合焦位置に自動で調整される第一の制御と前記フォーカスレンズがユーザの操作量に基づいて調整される第二の制御が可能な光学系における被写体距離を示す距離目盛を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、を有し、
前記表示部は、前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲に関する情報の表示に対応しておらず、前記第一の制御が制限される第二の範囲に関する情報の表示に対応しており、
前記制御部は、前記距離目盛と、現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報とを共に表示するように前記表示部を制御し、前記第一の範囲に関する情報を前記第二の範囲に関する情報として共に表示するように前記表示部を制御し、
前記第一の範囲は、前記光学系のズーム位置に応じて変化することを特徴とする撮像装置。」
「【請求項11】
フォーカスレンズが合焦位置に自動で調整される第一の制御と前記フォーカスレンズがユーザの操作量に基づいて調整される第二の制御が可能な光学系と、
前記光学系における被写体距離を示す距離目盛を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、を有し、
前記表示部は、前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲に関する情報の表示に対応しておらず、前記第一の制御が制限される第二の範囲に関する情報の表示に対応しており、
前記制御部は、前記距離目盛と、現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報とを共に表示するように前記表示部を制御し、前記第一の範囲に関する情報を前記第二の範囲に関する情報として表示するように前記表示部を制御し、
前記第一の範囲は、前記光学系のズーム位置に応じて変化することを特徴とするレンズ装置。」
(3) 本件補正の内容
本件補正は、本件補正前の請求項1、請求項11に対して、「前記表示部は、前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲に関する情報の表示に対応しておらず、前記第一の制御が制限される第二の範囲に関する情報の表示に対応しており」との補正事項(以下、それぞれ「本件請求項1補正事項」及び「本件請求項11補正事項」という。)を追加する補正を含むものである。
そこで、本件請求項1補正事項及び本件請求項11補正事項を追加する本件補正が、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「出願当初の明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものか、以下検討する。
2 本件補正の適否
(1) 出願当初の明細書等の記載
出願当初の明細書等には、本件請求項1補正事項及び本件請求項11補正事項に関連する記載として、以下の記載がある(下線は、特に関連する記載について当合議体が付した。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカスレンズを駆動して焦点調節が可能な撮像装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォーカスレンズを駆動して焦点調節を行う方法として、オートフォーカス(AF)およびマニュアルフォーカス(MF)が知られている。AFは、AFセンサから生成されるAF評価値に基づいてフォーカスレンズの合焦位置を算出して焦点調節を行う方法である。MFは、ユーザが手動でフォーカスリングを操作して焦点調節を行う方法である。ここで、AFとMFの両方で焦点調節が可能なフォーカスレンズの駆動領域をAF可能領域、MFでのみ焦点調節が可能な駆動領域をMF専用領域という。
【0003】
特許文献1には、レンズから被写体までの距離に関する距離指標表示をデジタル的に表現する撮像装置が開示されている。
…(中略)…
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された撮像装置の距離指標表示では、MF専用領域が表示されず、ユーザがAF可能領域とMF専用領域との区切り位置を把握することができない。
【0006】
そこで本発明は、ユーザが距離指標表示を見た際に、現在のフォーカスレンズの駆動領域がAF可能領域またはMF専用領域のいずれであるかを容易に把握することが可能な撮像装置、レンズ装置、制御方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての撮像装置は、フォーカスレンズを合焦位置に自動で調整する第一の制御手段と、前記フォーカスレンズをユーザの操作量に基づいて調整する第二の制御手段と、表示部とを有し、前記第一の制御手段および前記第二の制御手段は、前記フォーカスレンズの第一の駆動領域において有効であり、前記第一の制御手段は、前記フォーカスレンズの第二の駆動領域において無効であり、前記表示部は、現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報と前記第二の駆動領域とを表示する。
【0008】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユーザが距離指標表示を見た際に、現在のフォーカスレンズの駆動領域がAF可能領域またはMF専用領域のいずれであるかを容易に把握することが可能な撮像装置、レンズ装置、制御方法、およびプログラムを提供することができる。」
「【実施例1】
【0036】
まず、図6および図7を参照して、本発明の実施例1について説明する。図6は、本実施例における制御方法(MF専用領域を含む距離指標表示方法)を示すフローチャートである。図7は、本実施例におけるMF専用領域を含む距離指標表示を示す図である。」
「【図6】
[図:0001432506000001.jpg]
【図7】
[図:0001432506000002.jpg]
」
「【0037】
まずステップS601において、カメラ本体200のカメラマイコン206は、表示部204に距離指標バーを表示する。続いてステップS602において、カメラマイコン206は、交換レンズ100のレンズマイコン111と通信を行い、被写体距離数値(表示する距離目盛の数値)、および、表示位置(数値を表示する位置)に関する情報を取得する。続いてステップS603において、カメラマイコン206は、表示部204に被写体距離(距離目盛)を表示する。
【0038】
続いてステップS604において、カメラマイコン206は、レンズマイコン111と通信を行い、レンズ駆動不可領域に関する情報を取得する。続いてステップS605において、カメラマイコン206は、交換レンズ100にレンズ駆動不可領域が存在するか否かを判定する。交換レンズ100にレンズ駆動不可領域が存在する場合、ステップS606へ進む。一方、交換レンズ100にレンズ駆動不可領域が存在しない場合、ステップS607へ進む。
【0039】
ステップS606において、カメラマイコン206は、表示部204にレンズ駆動不可領域を表示する。ステップS607において、カメラマイコン206は、レンズマイコン111と通信を行い、現在のレンズ位置に関する情報を取得する。続いてステップS608において、カメラマイコン206は、表示部204にレンズ位置を表示する。
【0040】
続いてステップS609において、カメラマイコン206は、レンズマイコン111と通信を行い、MF専用領域の位置情報を取得する。続いてステップS610において、カメラマイコン206は、交換レンズ100にMF専用領域があるか否かを判定する。交換レンズ100にMF専用領域がある場合、ステップS611へ進む。ステップS611において、カメラマイコン206は、表示部204にMF専用領域を表示し、本フローを終了する。一方、ステップS610にて交換レンズ100にMF専用領域がない場合、本フロー(距離指標表示方法)を終了する。本フローを所定の周期で繰り返すことにより、レンズ位置などの表示を更新することができる。
【0041】
図7は、本実施例におけるMF専用領域を含む距離指標表示を示す図であり、距離指標バー上に距離目盛の数値、駆動不可領域、およびMF専用領域を加えた図である。図7に示されるように、表示部204は、最短撮影距離から所定の被写体距離までを表示するとともに、フォーカスレンズ105のAF可能領域、MF専用領域、および、現在の駆動可能領域を表示する。図7の例では、被写体距離が0.2mから0.5mの範囲がMF専用領域となっている。ユーザは、フォーカスレンズ105がこのMF専用領域のレンズ駆動可能領域に位置している場合にはMFのみでフォーカスレンズ105を駆動可能であることを、表示部204を介して知ることができる。このように距離指標表示にMF専用領域に関する情報を加えて表示することで、ユーザは、MF専用領域とAF可能領域との切り替わり位置を視覚的に知ることができ、操作性が向上する。
【0042】
なお本実施例では図7に示される表示を例に説明を行ったが、距離目盛はメートル表の他にヤードポンド法などの他の表記方法を用いてもよい。また、本実施例にて説明した数値以外の数値の距離目盛を表示してもよい。また図7では、距離指標バーの色や模様を変化させることでMF専用領域を表現しているが、これに限定されるものではない。すなわち表示部204は、AF可能領域とMF専用領域とを区別して表示するように構成されていればよい。このため、AF可能領域とMF専用領域とを互いに異なる色や模様で表示するだけでなく、太さ、縁取り、または線種を互いに異ならせてもよい。また表示部204は、フォーカスレンズ105がMF専用領域に位置していることを通知するように構成してもよい。例えば、距離表示バーを含む表示部204の少なくとも一部を点滅させることや、メッセージやアイコンなどを表示することでユーザにMF専用領域にいることを通知することができる。また、距離指標に関する各情報は、図6のフロー通りに表示しなくてもよい。」
「【実施例3】
【0050】
次に、図12および図13を参照して、本発明の実施例3について説明する。距離指標にMF専用領域を表示するには、MF専用領域の表示に対応するカメラ本体200を用いる必要がある。図12は、本実施例における制御方法(距離指標表示方法)を示すフローチャートであり、MF専用領域の表示に対応していないカメラ本体(MF専用領域を表示する機能を有しないカメラ本体)について、MF専用領域を含む距離指標表示を行う方法を示す。図13は、AFリミット領域でMF専用領域を表現する距離指標表示を示す図である。なお図12において、ステップS601~S611は図6と同様であるため、それらの説明を省略する。また図12において、ステップS901~S903は図9と同様であるため、それらの説明を省略する。」
「【図12】
[図:0001432506000003.jpg]
【図13】
[図:0001432506000004.jpg]
」
「【0051】
ステップS1201において、レンズマイコン111は、カメラ本体200がMF専用領域の表示に対応しているか否かを判定する。カメラ本体200がMF専用領域の表示に対応している場合、ステップS609へ進む。一方、カメラ本体200がMF専用領域の表示に対応していない場合、ステップS1202へ進む。カメラ本体200がMF専用領域の表示に対応していないとは、カメラ本体200がMF専用領域を表示する機能を有しないことを意味する。例えば、カメラ本体200がMF専用領域に関する通信に対応していない場合や、カメラ本体200がMF専用領域とAFリミット領域を区別して表示できない場合を含むが、これらに限定されるものではない。
【0052】
ステップS1202において、レンズマイコン111は、AFリミット領域に関する情報を現在のMF専用領域に応じて変更し、ステップS901へ進む。すなわち、レンズマイコン111は現在のMF専用領域がAFリミット領域に関する情報としてカメラ本体200に送信されるように、AFリミット領域に関する情報を変更する。
【0053】
以上のように、本実施例において、第一の制御手段111aは、フォーカスレンズ105の第一の駆動領域において有効であり、フォーカスレンズ105の第二の駆動領域において制限される。レンズ通信部(通信手段)112は、光学部材の状態(ズーム位置や絞り値(F値)など)の変化に応じた第二の駆動領域の変化に関する情報をカメラ本体200へ送信する。カメラ本体200に送信される第二の駆動領域の変化に関する情報としては、第二の駆動領域の変化量であっても良いし、刻々と変化する第二の駆動領域そのものの情報であっても良い。好ましくは、第二の駆動領域は、第一の制御手段111aの機能の全てが無効になるMF専用領域、および、第一の制御手段111aの機能の一部が制限されるAFリミット領域を有する。レンズ通信部112は、カメラ本体200の表示部204にMF専用領域を表示可能な場合、MF専用領域の表示情報をカメラ本体200へ送信する。一方、レンズ通信部112は、表示部204にMF専用領域を表示不可能な場合、MF専用領域の表示情報をAFリミット領域の表示情報としてカメラ本体200へ送信する。また好ましくは、AFリミット領域の表示情報は、光学部材の状態に基づいて変化する。
【0054】
このようにカメラ本体がMF専用領域の表示に対応していない場合、AFリミット領域に関する情報を変更することで、AFリミット領域表示を疑似的にMF専用領域のように表示することができる。AFリミット領域とMF専用領域とは互いに異なる領域であるが、AF可能領域との違いを表すことができるため、ユーザの操作性の向上を図ることが可能である。また、図12のフローは所定の周期ごとに繰り返すことにより、レンズ位置などの表示を更新する。図12のステップS1201において、交換レンズ100は、周期的にAFリミット領域に関する情報を変更することにより、AFリミット領域の表示範囲を変更してもよい。」
「【0061】
各実施例において、表示部204はカメラ本体200に設けられているが、これに限定されるものではなく、交換レンズ100に表示部を設けてもよい。また各実施例において、レンズマイコン111は、第一の制御手段111a、第二の制御手段111b、および第三の制御手段111cとしての機能を実行するが、これに限定されるものではない。例えば、カメラマイコン206が、第一の制御手段、第二の制御手段、または第三の制御手段の少なくとも一つの機能を実行するように構成してもよい。また各実施例において、表示部204は、第二の制御手段111bでフォーカスレンズ105が調整された場合に、MF専用領域を表示するように構成してもよい。」
(2) 新規事項についての判断
ア 当合議体の判断
(ア) 本件請求項11補正事項について
a まず、出願当初の明細書等には、本件請求項11補正事項、すなわち、「レンズ装置」が備える「表示部」が、第一の範囲に関する情報の表示に対応しておらず、前記第一の制御が制限される第二の範囲に関する情報の表示に対応しているとの技術的事項についての直接的な記載は存在しない。
b すなわち、本件請求項11補正事項に関連する記載としては、MF専用領域(本件請求項11補正事項でいう「第一の範囲」)の表示に対応していないカメラ本体(MF専用領域を表示する機能を有しないカメラ本体)について、MF専用領域を含む距離指標表示を行う方法である実施例3に係る記載が挙げられるが、実施例3は、「MF専用領域の表示に対応していないカメラ本体(MF専用領域を表示する機能を有しないカメラ本体)について、MF専用領域を含む距離指標表示を行う方法を示す」(【0050】)と記載されているとおり、カメラ本体に表示部を設けることを前提とするものであって、レンズ装置に表示部を設けるものではないから、本件請求項11補正事項を開示するものではない。
c 次に、出願当初の明細書等の【0061】には、「各実施例において、表示部204はカメラ本体200に設けられているが、これに限定されるものではなく、交換レンズ100に表示部を設けてもよい」と記載されている。以下、これを踏まえて実施例3に係る記載についてさらに検討する。
(a) まず、本件請求項11補正事項では、「表示部」が「第一の範囲に関する情報の表示に対応して[いない]」ことが特定されている。
(b) 一方、前記実施例3は、前記bのとおり「MF専用領域の表示に対応していないカメラ本体(MF専用領域を表示する機能を有しないカメラ本体)」を前提とするものであるが、実施例3に係る【0051】には、「カメラ本体200がMF専用領域の表示に対応していないとは、カメラ本体200がMF専用領域を表示する機能を有しないことを意味する。例えば、カメラ本体200がMF専用領域に関する通信に対応していない場合や、カメラ本体200がMF専用領域とAFリミット領域を区別して表示できない場合を含むが、これらに限定されるものではない。」と記載されているところ、カメラ本体200がMF専用領域の表示に対応していないことが、「表示部」がMF専用領域の表示に対応しないことを意味することの明記はない。そして、本件請求項11補正事項を含む請求項11においては、「表示部」と「表示部を制御する制御部」が別構成であることを踏まえると、当該記載中の「カメラ本体200がMF専用領域とAFリミット領域を区別して表示できない」ことは、当然に「表示部」がMF専用領域の表示に対応していないことを意味するものではなく、「表示部を制御する制御部」(実施例1における「カメラマイコン206」。【0040】参照。)がMF専用領域の表示に対応していないことを意味すると解するのがむしろ自然である。これは、「表示部を制御する制御部」がMF専用領域の表示に対応しているにも関わらず、その制御対象である「表示部」がMF専用領域の表示に対応していないという構成は、制御部が行う制御は一般に、その制御対象が動作可能なものであるという技術常識からみても考えがたいからである。
(c) そうすると、実施例3において【0061】の記載のように交換レンズに表示部を設けることとした場合、「MF専用領域の表示に対応していない交換レンズ(MF専用領域を表示する機能を有しない交換レンズ)」を前提とすることとなるが、この場合についても前記(b)と同様に、請求項11で特定されるように、「表示部」が「第一の範囲に関する情報の表示に対応して[いない]」ことを当然に意味するものではない。
(d) さらにいえば、実施例3は、「交換レンズのレンズ通信部112がMF専用領域の表示情報をAFリミット領域の表示情報としてカメラ本体200へ送信する」(【0053】)ことにより、「AFリミット領域に関する情報を変更することで、AFリミット領域表示を疑似的にMF専用領域のように表示する」(【0054】)ものであり、前記(c)のように「MF専用領域の表示に対応していない交換レンズ(MF専用領域を表示する機能を有しない交換レンズ)」を前提とした場合には、前記(b)で説示したように、「表示部を制御する制御部」がMF専用領域の表示に対応していないと考えるのが自然であることから、どのようにしてAFリミット領域に関する情報をMF専用領域の表示情報に変更することができるのか、理解することができない。
(e) したがって、出願当初の明細書等の【0061】の記載を考慮したとしても、本件請求項11補正事項は、出願当初の明細書等に記載されているものとはいえず、また、出願当初の明細書等の記載から自明であるものともいえない。
(イ) 本件請求項1補正事項について
a 請求項1では、カメラ本体とレンズ装置のいずれが表示部を有するのかは特定されていないから、レンズ装置が表示部を有する構成を包含している。そして、レンズ装置が表示部を有する構成については、前記(ア)で本件請求項11補正事項について指摘した点は、全て本件請求項1補正事項についても該当する。
b また、前記(ア)a及び同c(b)で指摘した点は、カメラ本体が表示部を有する構成についても該当する。
c したがって、本件請求項1補正事項は、出願当初の明細書等に記載されているものとはいえず、また、出願当初の明細書等の記載から自明であるものともいえない。
(ウ) 小括
以上検討のとおり、本件請求項1補正事項及び本件請求項11補正事項は、出願当初の明細書等に記載されておらず、また、出願当初の明細書等の記載から自明なものでもないから、本件請求項1補正事項及び本件請求項11補正事項を追加する本件補正は、「表示部」が、第一の範囲に関する情報の表示に対応しておらず、前記第一の制御が制限される第二の範囲に関する情報の表示に対応しているという、新たな技術的事項を導入するものであり、新規事項を追加するものであるから、本件補正は、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
イ 請求人の主張について
当審において、令和7年8月28日付け審尋で本件請求項1補正事項及び本件請求項11補正事項を追加する本件補正の根拠の説明を求めたのに対して、請求人は同年10月2日に回答書を提出したが、回答書において本件補正の根拠の説明はなされていない。
(3) 本件補正の適否についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法17条の2第3項の規定に違反しているから、同法159条1項により読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
(1) 本願発明の認定
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
<本願発明>
「【請求項1】
フォーカスレンズが合焦位置に自動で調整される第一の制御と前記フォーカスレンズがユーザの操作量に基づいて調整される第二の制御が可能な光学系における被写体距離を示す距離目盛を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記距離目盛と、現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報と、前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲に関する情報とが共に表示されるように前記表示部を制御し、
前記第一の範囲は、前記光学系のズーム位置に応じて変化することを特徴とする撮像装置。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Dまでに分説する。
<本願発明の分説>
構成A フォーカスレンズが合焦位置に自動で調整される第一の制御と前記フォーカスレンズがユーザの操作量に基づいて調整される第二の制御が可能な光学系における被写体距離を示す距離目盛を表示する表示部と、
構成B 前記表示部を制御する制御部と、を有し、
構成C 前記制御部は、前記距離目盛と、現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報と、前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲に関する情報とが共に表示されるように前記表示部を制御し、
構成D 前記第一の範囲は、前記光学系のズーム位置に応じて変化することを特徴とする
構成X 撮像装置。
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由である理由3(新規性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由3(新規性の欠如) 本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2019-219583号公報
3 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に発行された引用文献1(特開2019-219583号公報)には、次の記載がある(下線は、当合議体が付した。)。
「【0010】
●(第1実施形態)
以下、添付図面を参照して本発明の例示的な実施形態について説明する。なお、以下では本発明に係る電子機器の一例としてのレンズ交換式のデジタルカメラシステムに本発明を適用した実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、レンズ交換式のデジタルビデオカメラシステムなど、レンズ交換式の撮像システム一般に適用可能である。また、実施形態で説明するユーザインタフェース(UI)の表示は、撮像システムの表示部だけでなく、撮像システムと通信可能な電子機器の表示部においても実施可能である。従って、本発明はレンズ交換式の撮像システムと通信可能な電子機器に対しても適用可能である。このような電子機器にはパーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン、ゲーム機、メディアプレーヤなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
図1は本発明を適用可能な電子機器の一例としてのレンズ交換式一眼レフデジタルカメラシステム(以下、単にカメラシステムと呼ぶ)の外観図を示す。図1(a)はカメラシステムの前面斜視図であり、図1(b)はカメラシステムの背面斜視図である。カメラシステムは、レンズユニット150を装着可能なカメラ本体100(以下、単に本体100と呼ぶ)と、本体100に着脱可能なレンズユニット150とを有する。」
「【図1】
[図:0001432506000005.jpg]
」
「【0012】
表示部28は、例えばタッチディスプレイであり、撮影された画像、各種情報、GUI(Graphical User Interface)などを表示する。シャッターボタン61はユーザ操作により、本体100に撮影準備指示および撮影開始指示を与える。モード切替ダイヤル60はユーザ操作に従って、設定可能な複数のモードの1つを本体100に設定する。開閉可能な端子カバー40は、外部機器を本体100に接続するための接続ケーブルを挿入するためのコネクタなどを保護する。メイン電子ダイヤル71は、ユーザ操作に従って、設定値(シャッタ速度や絞りなど)の変更もしくは設定指示を本体100に与える。電源スイッチ72は、ユーザ操作に従い、本体100に電源のON及びOFFの指示を与える。サブ電子ダイヤル73は、ユーザ操作に従い、選択枠の移動や画像送りの指示を本体100に与える。
…(中略)…
【0017】
図2は、カメラシステムの内部構成例を示すブロック図であり、図2(a)が本体100,図2(b)がレンズユニット150の構成例を示している。図2において、図1に示した構成要素については同じ参照数字を付してある。」
「【図2】
[図:0001432506000006.jpg]
」
「【0018】
本体100とレンズユニット150とは、本体100に設けられた通信端子10とレンズユニット150に設けられた通信端子6とが接触することにより電気的に接続される。通信端子10および6を通じて本体100とレンズユニット150とは双方向に通信することができる。
【0019】
AEセンサー17は、レンズユニット150がクイックリターンミラー12を介してフォーカシングスクリーン13上に結像した被写体の輝度に応じた出力をシステム制御部50に供給する。
【0020】
焦点検出部11(AFセンサー)は、クイックリターンミラー12(以下、単にミラー12と呼ぶ)を透過して入射する被写体像を瞳分割して1対の像信号を生成する。そして、焦点検出部11は、生成した像信号の位相差に基づいてレンズユニット150のデフォーカス量および方向を求め、システム制御部50に供給する。システム制御部50はデフォーカス量に基づいてレンズユニット150内のフォーカスレンズを駆動し、レンズユニット150の合焦距離を調節する自動焦点検出(AF)処理を実現する。
…(中略)…
【0025】
メモリ制御部15は、A/D変換器23または画像処理部24からの画像データをメモリ32に格納する。また、メモリ制御部15は、メモリ32に格納された画像データを読み出して画像処理部24に出力する。
【0026】
画像処理部24は、A/D変換器23またはメモリ制御部15が出力する画像データに対し、ノイズ抑制、ホワイトバランス調整、画素補間(デモザイキング)、リサイズ、色変換、階調補正、符号化、復号などの画像処理を適用する。また、画像処理部24は、画像データに対し、顔や人体といった特定の被写体が含まれる領域の検出や認識、追尾といった処理を適用してもよい。画像処理部24は、処理を適用した画像データをメモリ制御部15に出力する。また、画像処理部24は、画像データから自動焦点検出(AF)や自動露出制御(AE)に用いる評価値を生成し、システム制御部50に供給することができる。これら評価値を用いてシステム制御部50は、AFおよび/またはAE処理を実行することができる。
【0027】
メモリ32は、主に画像データを格納するために用いられる。メモリ32は、所定枚数の静止画データや、所定時間分の動画および音声データを格納可能な容量を有する。また、メモリ32は表示部28用のビデオメモリとしても用いられる。
【0028】
メモリ制御部15は、メモリ32に格納されている表示用の画像データをD/A変換器19に供給する。D/A変換器19は、画像データを表示部28に適した電気信号に変換して表示部28に供給する。こうして、メモリ32に書き込まれた表示用の画像データは表示部28で表示される。動画撮影を行い、表示部28で直ちに表示させることにより、表示部28を電子ビューファインダ(EVF)として機能させることができる。表示部28をEVFとして機能させるために表示する画像をライブビュー画像と呼ぶ。
【0029】
不揮発性メモリ56は、システム制御部50によって電気的に書き替え可能なメモリであり、例えばEEPROMである。不揮発性メモリ56には、システム制御部50が実行可能なプログラム、各種の設定値、GUIデータなどが記憶される。
【0030】
システム制御部50は、少なくとも1つのプログラマブルプロセッサを有し、不揮発性メモリ56に記憶されたプログラムをシステムメモリ52に読み込んで実行することにより、カメラシステム全体の動作を制御する。システムメモリ52は、システム制御部50がプログラムを実行する際に必要なデータを記憶するために用いられる。
…(中略)…
【0037】
図2(b)は、レンズユニット150の構成例を示す図である。フォーカスリング7は、円筒状のレンズユニット150の外周に沿って回転可能に取り付けられている。本実施形態では、フォーカスリング7の回転によって機械的にフォーカスレンズを移動させる構成ではなく、フォーカスリング7の回転方向および回転量を検出し、モータによってフォーカスレンズを駆動するフォーカスバイワイヤ方式を採用している。ユーザは、フォーカスリング7を回転させる焦点調節操作により、マニュアルフォーカスが可能である。
【0038】
図2(b)は、レンズユニット150の一例として単焦点レンズを示しているが、ズームレンズであってもよい。単焦点のレンズには、広角レンズ、標準レンズ、望遠レンズがある。レンズユニット150には通常、フォーカスレンズを含む複数枚のレンズが含まれるが、図2(b)では1枚のレンズ103として記載している。レンズ制御部4は、通信端子6と、本体100に設けられた通信端子10を通じて本体100(システム制御部50)と双方向通信が可能である。
【0039】
絞り102は、絞り制御回路2によって駆動され、開口の大きさを調整可能である。また、レンズ103には、AF駆動回路3によって駆動され、光軸方向に移動可能なフォーカスレンズが含まれる。絞り制御回路2は絞り102に現在の開口量に関する情報を、AF駆動回路3は現在のフォーカスレンズの位置に関する情報を、それぞれレンズ制御部4に通知する。あるいは、レンズ制御部4は周期的にこれらの情報を絞り制御回路2やAF駆動回路3から取得する。
【0040】
レンズ制御部4は、1つ以上のプログラマブルプロセッサと、プログラム、設定値、レンズユニット150の固有情報(レンズ静的情報)などを記憶するROMと、プログラムの実行時に用いるシステムメモリとを有する。レンズ静的情報には撮影可能な距離範囲や、代表的な距離とその表示位置に関する情報などが含まれる。撮影可能な距離範囲は、フォーカスレンズの可動範囲全体に対応する。プログラマブルプロセッサによってROMからシステムメモリにプログラムを読み込んで実行することにより、レンズユニット150全体の動作を制御する。システムメモリは、レンズユニット150の情報であって、設定や動作に応じて変化する情報(レンズ動的情報)の一時的な記憶にも用いられる。レンズ動的情報の例としてはフォーカスレンズの位置、絞り値、動作モードなどがある。
【0041】
レンズ制御部4はまた、通信端子6を通じてシステム制御部50から受信する要求や指示に応じて、レンズユニット150の情報をシステム制御部50に送信したり、絞り制御回路2およびAF駆動回路3を含む各部の動作を制御したりする。例えば、レンズ制御部4は、通信端子6を通じてシステム制御部50から受信した絞り102およびフォーカスレンズの駆動量や駆動方向に基づいて、絞り制御回路2およびAF駆動回路3を制御する。
【0042】
フォーカスリング7の回転量および回転方向は、ロータリーエンコーダなどを有する回転検知部7aによって検知され、レンズ制御部4に通知される。フォーカスリング7の操作が有効である場合、レンズ制御部4は、フォーカスリング7の回転方向および回転量に応じた方向および量、フォーカスレンズを移動させるようにAF駆動回路3を制御する。また、レンズ制御部4は、フォーカスリング7の操作によってフォーカスレンズが移動した場合、移動後のフォーカスレンズの位置に関する情報でレンズ動的情報を更新する。なお、フォーカスレンズの位置の情報は、フォーカス駆動範囲全体を1~100(%)としたときの値(%)とすることができる。これにより、フォーカスレンズの位置の情報を、そのまま撮影距離指標(後述)の表示位置の情報として用いることができる。
【0043】
必要に応じて設けられる設定スイッチ5は、ユーザがレンズユニット150に関する設定を選択もしくは変更するために用いられる。レンズ制御部4は、設定スイッチ5の状態をレンズ動的情報としてシステムメモリに記憶するとともに、設定スイッチ5の状態に応じてレンズユニット150の動作を変更する。
【0044】
例えば、フォーカスモードスイッチ、撮影距離範囲スイッチ(フォーカスリミッタースイッチ)、マクロモードスイッチ、手ぶれ補正機能スイッチなどが設定スイッチ5の代表例である。フォーカスモードスイッチは、レンズユニット150のフォーカスモードを、オートフォーカス(AF)モード、マニュアルフォーカス(MF)モード、フルタイムマニュアルモード(マニュアルオーバーライドモード)の1つに設定する。なお、フルタイムマニュアルモードは、シャッターボタン半押し状態でAFによってフォーカスレンズが駆動された後、フォーカスリング7の操作を有効とするモードである。フルタイムマニュアルモードは、カメラによってはAFモードに含まれる場合もある。本実施形態では、フォーカスモードスイッチにより、マニュアルフォーカスモードとオートフォーカスモードとを切り替え可能であるものとする。
【0045】
フォーカスリミッタースイッチは、主に望遠レンズに設けられ、AF時に被写体を探索する距離範囲(オートフォーカス可能な距離範囲)を予め定められた範囲の1つに制限するか、制限しない(全範囲とする)かを切り替える。AF時の探索距離範囲を制限することにより、AF速度の向上を図ることができる。
…(中略)…
【0048】
図3は、撮影距離バーの具体例を模式的に示す図である。
表示部28はEVFとして機能しており、表示画面301はライブビュー画像304を表示している。以下に説明する表示項目は、システム制御部50がOSD画像データを生成して、メモリ32に書き込むことにより、ライブビュー画像304に重畳表示される。」
「【図3】
[図:0001432506000007.jpg]
」
「【0049】
アイコン302は、本体100に現在設定されている撮影モードを表す。ここではシャッター速度優先モード(Tv)が設定されてものとする。
撮影条件表示領域303には、シャッター速度や絞り値、露出補正設定値、ISO感度など、現在設定されている撮影条件に関する情報が表示される。
【0050】
305~312は、本実施形態における撮影距離バーを構成する要素である。
撮影距離バーの本体305は横長の矩形状を有し、本実施形態では横方向に500画素の大きさを有する。本体305は、装着されたレンズユニット150で撮影可能な距離範囲(フォーカスレンズの可動範囲)と、レンズユニット150が無限遠に合焦するフォーカスレンズの位置との関係を示すことができる。また、レンズユニット150のオートフォーカス可能な距離範囲が制限されている場合、本体305は、撮影可能な距離範囲とオートフォーカス可能な距離範囲との関係を示すことができる。具体例については後述する。
【0051】
距離表示306は、装着されているレンズユニット150が撮影可能な距離範囲に含まれる代表的な複数の距離を、本体305の上方近傍に表示する。距離表示306では、少なくともレンズユニット150が撮影可能な最短距離と無限遠(∞)とを含む3つ以上の距離を表示する。距離表示306に含める距離と、各距離の横方向の表示座標は、レンズユニット150に記憶されているレンズ静的情報と、撮影距離バーの本体305の横方向の大きさとに基づいて決定される。基本的には、本体305の左端が撮影可能な最短距離を表すように距離を表示する。
【0052】
図3では、装着されているレンズユニット150の撮影可能な距離範囲が0.45m~∞である場合の距離表示306の例を示し、ここでは最短距離0.45と無限遠∞の他に、0.6、0.8、1、1.5、3、5[m]が表示されている。ここで、距離表示306のうち、無限遠307の表示位置が本体305の右端よりも左側に位置している。これは、レンズユニット150のフォーカスレンズの可動範囲の望遠端の位置とレンズユニット150が無限遠に合焦する位置とが対応せず、ずれがあることを示している。なお、本実施形態のように、レンズユニット150がフォーカスバイワイヤ方式である場合、フォーカスリング7の最大回転位置とは、フォーカスレンズの可動範囲の望遠端に対応する位置とする。本明細書において、レンズユニット150が無限遠に合焦する位置より遠距離側に存在するフォーカスレンズの可動範囲を、オーバー無限領域と呼ぶ。オーバー無限領域の大きさについてもレンズ静的情報としてレンズユニット150に記憶されている。
【0053】
単位表示308は、距離表示306の数値の単位を示す。なお、本実施形態では、距離表示の単位としてフィート(ft)とメートル(m)とが選択可能である。例えばメニュー画面を通じたユーザ指示によって距離表示の単位にフィートが選択されている場合、単位表示308が「ft」となる。
【0054】
本体305内に縦線状もしくは縦長の矩形状に表示される撮影距離指標309は、レンズユニット150の現在の合焦距離を示す。図3では撮影距離指標309が距離表示306における1.5mの表示の真下に表示されているため、撮影距離はおおよそ1.5mであることを示している。
【0055】
上述した様に、レンズユニット150によっては、AF時に被写体を探索する距離範囲(AF可能な距離範囲)を予め定められた範囲の1つに制限可能である。本実施形態では、レンズユニット150において、オートフォーカス可能な距離範囲が制限されている場合、オートフォーカス不能な距離範囲310を本体305の内部パターンによってユーザに報知する。ここでは、レンズユニット150のAF可能な距離範囲が1m~無限遠に制限されているものとする。そのため、本体305の、AF不能な距離範囲に対応する領域(至近端から1mまでの領域)と、AF可能な距離範囲に対応する領域(1m~無限遠までの領域)との表示形態を視覚的に異ならせている。図3の例では、AF不能な距離範囲310は、AF可能な距離範囲よりも薄い色で表示されている。レンズユニット150において設定されているAF可能な距離範囲と、AF不能な距離範囲とを視覚的に異ならせる方法としては、本体305内部の色、パターン、輝度を異ならせるなど、任意の方法を用いることができる。また、本体305内部の表示ではなく、別の範囲指標を用いてもよい。
【0056】
また、少なくともマニュアルフォーカス可能な距離範囲(フォーカス可能な距離範囲)を示す指標311を、本体305とは別に表示している。ここでは、本体305の直下で、フォーカス可能な距離範囲に対応する範囲に、線状または横長の矩形状の指標311を表示した例を示している。したがって、本体305が表す距離範囲のうち、AF不能な距離範囲310と、指標311の両方が表示される距離範囲は、MFのみによってフォーカス可能な距離範囲を示す。また、AF不能な距離範囲310が表示され、指標311が表示されていない距離範囲は、AFでもMFでもフォーカス不能な距離範囲を示す。
【0057】
指標311は本体305と接していなくてもよい。また、本体305の直上に表示してもよい。図3の例では、AF不能な距離範囲310が0.45mから1mの範囲に表示されている。一方、フォーカス可能範囲の指標311は、0.45mから無限遠の範囲に表示されている。したがって、現在、レンズユニット150は、0.45mから1mまでの距離範囲についてはMFでのみフォーカス可能であり、1mから無限遠までの距離範囲についてはMF、AFのいずれでもフォーカス可能であることを示している。システム制御部50は、レンズユニット150の設定スイッチ5の状態、もしくは現在の設定内容(例えばAFおよびMFが可能または不能な距離範囲)に関する情報をレンズ動的情報として取得する。これによって、図3だけでなく、後述する図8や図9にも示すように距離範囲310や指標311の表示を制御することができる。」
「【0095】
図8は、レンズユニット150が設定スイッチ5としてフォーカスリミッタースイッチを有する場合の撮影距離バーの表示例を示している。ここでは、「フォーカスリミッタースイッチがオフ(AF可能な距離範囲に制限がない)」の状態である場合、AFが可能な距離範囲は、0.45mから無限遠であるとする。一方、「フォーカスリミッタースイッチがオン(AF可能な距離範囲に制限がある)」の状態である場合には、AFが可能な距離範囲が1mから無限遠に制限されるものとする。つまり、フォーカスリミッタースイッチがオンの場合には、0.45mから1mまではAF不能な距離範囲となる。そして、AF不能な距離が発生したことを通知するために、本体内305において、AF不能な距離範囲をAF可能な距離範囲とは異なる表示態様で表示するように制御する。」
「【図8】
[図:0001432506000008.jpg]
」
「【0096】
801は、フォーカスリミッタースイッチがオフの場合の撮影距離バーの表示である。MF、AFいずれでも、フォーカス可能な距離範囲が0.45mから無限遠であることを示す。
【0097】
802は、フォーカスリミッタースイッチがオンの場合の撮影距離バーの表示であり、AF不能な距離範囲310が本体305内に描画されている。AF不能な距離範囲は0.45mから1mまでであり、AF可能な距離範囲は1mから無限遠であることを示す。一方、指標311が、MF操作でフォーカス可能な距離範囲が0.45mから無限遠であることを示している。
【0098】
803は、フォーカスリミッタースイッチがオンで、MF操作によって合焦距離を至近方向に移動させている場合における撮影距離バーの表示例である。MF操作することで、AF不能な距離範囲にもフォーカスレンズを移動させることができる。そのため、803では撮影距離指標309がAF不能な距離範囲310に表示されている。また、合焦距離が至近方向に移動していることを示すアイコン313が表示されている。
…(中略)…
【0107】
また、本実施形態では、レンズユニットが単焦点である場合について説明したが、レンズユニットがズームレンズであっても基本的な動作は同じである。ただし、ズームレンズの場合、画角によって撮影可能な最短距離が変化するのが一般的である。そのため、レンズ静的情報として、撮影可能な距離範囲に含まれる代表的な複数の距離と表示位置を、画角に応じて複数保存しておくとともに、レンズ動的情報として、現在の画角を含める。そして、システム制御部50は、図6のS604またはS608において、現在の画角に対応した数値のセットを選択して描画する。これにより、ユーザに、レンズユニットの現在の画角に応じた情報を提供することができる。
【0108】
以上説明したように、本実施形態によれば、装着されたレンズユニットの特性に応じて、ユーザの焦点調節操作を支援するユーザインタフェースの表示を行うようにした。そのため、レンズユニットに固有なオーバー無限領域や撮影可能な距離範囲などを反映した、使い勝手のよいユーザインタフェースを提供することができる、ユーザのフォーカシング操作を支援することができる。」
(2) 引用発明の認定
前記アで摘記した引用文献1の記載事項から、引用文献1には、第1実施形態に係るデジタルカメラシステムついて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(以下、引用発明の認定に用いた箇所の段落番号等を参考までに括弧内に付した。)。
<引用発明>
「レンズ交換式のデジタルカメラシステムであって、(【0010】)
カメラシステムは、レンズユニット150を装着可能なカメラ本体100(以下、単に本体100と呼ぶ)と、本体100に着脱可能なレンズユニット150とを有し、(【0011】)
表示部28は、撮影された画像、各種情報、GUI(Graphical User Interface)などを表示し、(【0012】)
焦点検出部11(AFセンサー)は、クイックリターンミラー12(以下、単にミラー12と呼ぶ)を透過して入射する被写体像を瞳分割して1対の像信号を生成し、(【0020】)
焦点検出部11は、生成した像信号の位相差に基づいてレンズユニット150のデフォーカス量および方向を求め、システム制御部50に供給し、(【0020】)
システム制御部50はデフォーカス量に基づいてレンズユニット150内のフォーカスレンズを駆動し、レンズユニット150の合焦距離を調節する自動焦点検出(AF)処理を実現し、(【0020】)
フォーカスリング7は、円筒状のレンズユニット150の外周に沿って回転可能に取り付けられており、(【0037】)
フォーカスリング7の回転によって機械的にフォーカスレンズを移動させる構成ではなく、フォーカスリング7の回転方向および回転量を検出し、モータによってフォーカスレンズを駆動するフォーカスバイワイヤ方式を採用しており、(【0037】)
ユーザは、フォーカスリング7を回転させる焦点調節操作により、マニュアルフォーカスが可能であり、(【0037】)
レンズユニット150は、ズームレンズであってもよく、レンズユニット150には、フォーカスレンズを含む複数枚のレンズが含まれ、(【0038】)
表示部28はEVFとして機能しており、表示画面301はライブビュー画像304を表示し、(【0048】)
表示項目は、システム制御部50がOSD画像データを生成して、メモリ32に書き込むことにより、ライブビュー画像304に重畳表示され、(【0048】)
撮影距離バーの本体305は横長の矩形状を有し、(【0050】)
本体305は、装着されたレンズユニット150で撮影可能な距離範囲(フォーカスレンズの可動範囲)と、レンズユニット150が無限遠に合焦するフォーカスレンズの位置との関係を示すことができ、(【0050】)
レンズユニット150のオートフォーカス可能な距離範囲が制限されている場合、本体305は、撮影可能な距離範囲とオートフォーカス可能な距離範囲との関係を示すことができ、(【0050】)
距離表示306は、装着されているレンズユニット150が撮影可能な距離範囲に含まれる代表的な複数の距離を、本体305の上方近傍に表示し、(【0051】)
距離表示306では、少なくともレンズユニット150が撮影可能な最短距離と無限遠(∞)とを含む3つ以上の距離を表示し、(【0051】)
本体305内に縦線状もしくは縦長の矩形状に表示される撮影距離指標309は、レンズユニット150の現在の合焦距離を示し、(【0054】)
レンズユニット150によっては、AF時に被写体を探索する距離範囲(AF可能な距離範囲)を予め定められた範囲の1つに制限可能であり、(【0055】)
オートフォーカス可能な距離範囲が制限されている場合、オートフォーカス不能な距離範囲310を本体305の内部パターンによってユーザに報知し、(【0055】)
レンズユニット150のAF可能な距離範囲が1m~無限遠に制限されているものとして、本体305の、AF不能な距離範囲に対応する領域(至近端から1mまでの領域)と、AF可能な距離範囲に対応する領域(1m~無限遠までの領域)との表示形態を視覚的に異ならせており、(【0055】)
少なくともマニュアルフォーカス可能な距離範囲(フォーカス可能な距離範囲)を示す指標311を、本体305とは別に表示しており、(【0056】)
本体305の直下で、フォーカス可能な距離範囲に対応する範囲に、線状または横長の矩形状の指標311を表示し、(【0056】)
本体305が表す距離範囲のうち、AF不能な距離範囲310と、指標311の両方が表示される距離範囲は、MFのみによってフォーカス可能な距離範囲を示し、(【0056】)
レンズユニットがズームレンズであっても基本的な動作は同じであり、(【0107】)
ズームレンズの場合、画角によって撮影可能な最短距離が変化するのが一般的であり、(【0107】)
レンズ静的情報として、撮影可能な距離範囲に含まれる代表的な複数の距離と表示位置を、画角に応じて複数保存しておくとともに、レンズ動的情報として、現在の画角を含め、システム制御部50は、現在の画角に対応した数値のセットを選択して描画する、【0107】)
レンズ交換式のデジタルカメラシステム。」
4 対比・判断
(1) 対比分析
ア 構成Xの観点(撮像装置について)
(ア) 構成Xは、「撮像装置」の発明であることを特定するものである。
(イ) 引用発明の「レンズ交換式のデジタルカメラシステム」は、本願発明の「撮像装置」に相当する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、「撮像装置」の発明である点で一致する。
イ 構成Aの観点(表示部について)
(ア) 構成Aは、「フォーカスレンズが合焦位置に自動で調整される第一の制御と前記フォーカスレンズがユーザの操作量に基づいて調整される第二の制御が可能な光学系における被写体距離を示す距離目盛を表示する表示部」を有することを特定するものである。
(イ) 引用発明の「フォーカスレンズ」、「オートフォーカス」、「マニュアルフォーカス」、「フォーカスレンズを含む複数枚のレンズ」、「距離表示306」、「表示部28」は、本願発明の「フォーカスレンズ」、「第一の制御」、「第二の制御」、「光学系」、「距離目盛」、「表示部」にそれぞれ相当する。
(ウ) 引用発明の「オートフォーカス」は、「自動焦点検出(AF)処理」を意味するところ、これは、「レンズユニット150の合焦距離を調節する」ものであるから、本願発明でいうところの「フォーカスレンズが合焦位置に自動で調整される」ものであるといえる。
(エ) 引用発明の「マニュアルフォーカス」は、「ユーザ」が「フォーカスリング7を回転させる焦点調節操作により」行われるものであるから、本願発明でいうところの「前記フォーカスレンズがユーザの操作量に基づいて調整される」ものであるといえる。
(オ) 引用発明は、「フォーカスレンズを駆動し、レンズユニット150の合焦距離を調節する自動焦点検出(AF)処理を実現[する]」ものであるとともに、「フォーカスリング7を回転させる焦点調節操作により、マニュアルフォーカスが可能であ[る]」ものであることから、引用発明の「レンズユニット150」に含まれる「フォーカスレンズを含む複数枚のレンズ」は、本願発明でいう「フォーカスレンズが合焦位置に自動で調整される第一の制御と前記フォーカスレンズがユーザの操作量に基づいて調整される第二の制御が可能な」ものであるといえる。
(カ) 引用発明の「距離表示306」は、「装着されているレンズユニット150が撮影可能な距離範囲に含まれる代表的な複数の距離を、本体305の上方近傍に表示[する]」ものであるから、本願発明でいう「被写体距離を示す」ものであるといえる。
(キ) 引用発明の「表示部28」は、「表示画面301はライブビュー画像304を表示[する]」ものであるところ、「ライブビュー画像304に重畳表示され[る]」「表示項目」もまた、「表示部28」に表示されるものである。そして、「距離表示306」が「ライブビュー画像304に重畳表示され[る]」「表示項目」の一部であることを踏まえると、引用発明の「表示部28」は、本願発明でいう「距離目盛を表示する」ものであるといえる。
(ク) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「フォーカスレンズが合焦位置に自動で調整される第一の制御と前記フォーカスレンズがユーザの操作量に基づいて調整される第二の制御が可能な光学系における被写体距離を示す距離目盛を表示する表示部」を有する点。
ウ 構成Bの観点(制御部について)
(ア) 構成Bは、「前記表示部を制御する制御部」を有することを特定するものである。
(イ) 引用発明は、「表示項目は、システム制御部50がOSD画像データを生成して、メモリ32に書き込むことにより、ライブビュー画像304に重畳表示され[る]」ことから、前記イ(キ)も踏まえると、引用発明の「システム制御部50」は、本願発明における「表示部を制御する制御部」に相当する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記表示部を制御する制御部」を有する点。
エ 構成Cの観点(制御部による表示部の制御について)
(ア) 構成Cは、「前記制御部は、前記距離目盛と、現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報と、前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲に関する情報とが共に表示されるように前記表示部を制御[する]」ことを特定するものである。
(イ) 引用発明の「撮影距離指標309」は、「レンズユニット150の現在の合焦距離を示[す]」ものであるから、本願発明の「現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報」に相当する。
(ウ) 引用発明は、「本体305の、AF不能な距離範囲に対応する領域と、AF可能な距離範囲に対応する領域との表示形態を視覚的に異ならせて[いる]」ものであり、「本体305が表す距離範囲のうち、AF不能な距離範囲310と、指標311の両方が表示される距離範囲は、MFのみによってフォーカス可能な距離範囲を示[す]」ものであるから、前記イ(イ)も踏まえると、引用発明の「AF不能な距離範囲310と、指標311の両方が表示される距離範囲」は、本願発明の「前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲」に相当する。また、引用発明の「AF不能な距離範囲310に対応する領域」及び「指標311」は、前記イ(イ)も踏まえると、本願発明でいう「前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲に関する情報」に相当する。
(エ) 引用発明は、「表示項目は、システム制御部50がOSD画像データを生成して、メモリ32に書き込むことにより、ライブビュー画像304に重畳表示され[る]」ものであるところ、引用発明の「距離表示306」、「撮影距離指標309」、「AF不能な距離範囲310に対応する領域」を含む「本体305」及び「指標311」はいずれも、「ライブビュー画像304に重畳表示され[る]」「表示項目」を構成するものであることが理解できるから、前記イ(イ)、前記(イ)及び(ウ)並びに前記ウ(イ)も踏まえると、引用発明の「システム制御部50」は、本願発明でいう「前記距離目盛と、現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報と、前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲に関する情報とが共に表示されるように前記表示部を制御[する]」ものであるといえる。
(オ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記制御部は、前記距離目盛と、現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報と、前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲に関する情報とが共に表示されるように前記表示部を制御[する]」点。
オ 構成Dの観点(第一の範囲について)
(ア) 構成Dは、「前記第一の範囲は、前記光学系のズーム位置に応じて変化する」ことを特定するものである。
(イ) 引用発明は、「レンズユニット150のAF可能な距離範囲が1m~無限遠に制限されているものとして、本体305の、AF不能な距離範囲に対応する領域」が「至近端から1mまでの領域」であること、及び、「ズームレンズの場合、画角によって撮影可能な最短距離が変化するのが一般的であり、レンズ静的情報として、撮影可能な距離範囲に含まれる代表的な複数の距離と表示位置を、画角に応じて複数保存しておくとともに、レンズ動的情報として、現在の画角を含め、システム制御部50は、現在の画角に対応した数値のセットを選択して描画する」ものであることを踏まえれば、画角を変化させることで、撮影可能な最短距離(すなわち至近端)が変化するから、画角、すなわちズーム位置を変化させることで、「オートフォーカス不能な距離範囲310」も当然に変化することになり、この結果、「AF不能な距離範囲310と、指標311の両方が表示される距離範囲」もまた、当然に変化することになる。
(ウ) したがって、前記エ(ウ)も踏まえると、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「前記第一の範囲は、前記光学系のズーム位置に応じて変化する」点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析より、本願発明と引用発明の一致点は次のとおりであり、相違点は存在しない。
<一致点>
「フォーカスレンズが合焦位置に自動で調整される第一の制御と前記フォーカスレンズがユーザの操作量に基づいて調整される第二の制御が可能な光学系における被写体距離を示す距離目盛を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記距離目盛と、現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報と、前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲に関する情報とが共に表示されるように前記表示部を制御し、
前記第一の範囲は、前記光学系のズーム位置に応じて変化する撮像装置」である点。
(3) 小括
したがって、本願発明は、引用発明である。
5 付言
請求人は、令和7年10月2日に提出された回答書において補正案を提示し、その請求項1の記載は次のとおりである。
<補正案>
「【請求項1】
フォーカスレンズが合焦位置に自動で調整される第一の制御と前記フォーカスレンズがユーザの操作量に基づいて調整される第二の制御が可能な光学系を有するレンズ装置が着脱可能な撮像装置本体であって、
被写体距離を示す距離目盛を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記第一の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができず前記第二の制御による前記フォーカスレンズの駆動を行うことができる第一の範囲に関する情報を前記表示部に表示させることに対応しておらず、かつ前記第一の制御が制限される第二の範囲に関する情報を前記表示部に表示させることに対応しており、
前記制御部は、前記距離目盛と、現在のフォーカスレンズ位置に対応する情報とを共に表示し、かつ前記第一の範囲に関する情報を前記第二の範囲に関する情報として表示するように前記表示部を制御し、
前記第一の範囲は、前記光学系のズーム位置に応じて変化することを特徴とする撮像装置本体。」
しかしながら、補正案の請求項1に係る発明(以下「補正案発明」という。)は、次のとおり新たな拒絶理由を生じるものであるから、これを受け入れることはできない。
すなわち、補正案発明は、「撮像装置本体」の発明であるところ、「フォーカスレンズが合焦位置に自動で調整される第一の制御と前記フォーカスレンズがユーザの操作量に基づいて調整される第二の制御が可能な光学系を有するレンズ装置が着脱可能」であるとの特定は、「レンズ装置」に係る特定であって、「撮像装置本体」の構成を特定するものではないし、「レンズ装置」に係る当該特定が、「撮像装置本体」の構造、機能等を特定しているとも解されない。
さらに、補正案発明の「前記制御部は、」「前記第一の範囲に関する情報を前記第二の範囲に関する情報として表示するように前記表示部を制御し、」との構成について検討すると、明細書等の【0052】の記載によれば、「撮像装置本体」の「表示部」に「第一の範囲に関する情報」(MF専用領域の表示情報)を「第二の範囲に関する情報」(AFリミット領域の表示情報)に関する情報として表示することの典型的な態様は、レンズ装置のレンズマイコン111がAFリミット領域に関する情報を現在のMF専用領域に応じて変更してカメラ本体に送信する態様であり、この態様においては、カメラ本体の制御部はレンズマイコンが送信した情報をそのまま表示するよう制御しているにすぎない。すなわち、補正案発明の「制御部」は、レンズマイコンが送信された情報をそのまま表示するように表示部を制御する態様を含んでおり、そのような「制御部」は、一般的な撮像装置本体の制御部となんら変わるところはない。
そうすると、補正案発明は、単にAFリミット領域の表示情報が可能で、MF専用領域の表示に対応していないカメラ本体(MF専用領域を表示する機能を有しないカメラ本体)と構成上の差異がない態様を含んでおり、新規性欠如及びサポート要件違反の新たな拒絶理由が生じていることが明らかである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当するから、同項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-005091