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特許拒絶査定不服審判

2024-001067

直接相互接続機能をもつ低電圧、低電力MEMSトランスデューサ

審判番号
2024-001067
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-063296
請求日
2024年01月22日
審決日
2024年12月17日
公報発行日
2025年06月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】エコー イメージング,インク.
  • 【請求人代理人】山本 修
  • 【請求人代理人】宮前 徹
  • 【請求人代理人】松尾 淳一
審判長/審判官
  • 審判長 南 宏輔
  • 審判官 伊藤 幸仙
  • 審判官 萩田 裕介
分類
P18 .121-Z (A61B) / P18 .113-Z (A61B) / P18 .575-Z (A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022- 63296「直接相互接続機能をもつ低電圧、低電力MEMSトランスデューサ」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月 2日出願公開、特開2022- 82708〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件出願(以下「本願」と記す。)は、2017年(平成29年)11月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年12月4日 米国、2016年12月4日 米国、2016年12月13日 米国、2017年11月29日 米国)を国際出願日とする出願である特願2019-550547号(以下「原出願」という。)の一部を令和4年4月6日に新たな特許出願としたものであって、令和5年3月9日付けで拒絶理由が通知され、これに対し同年7月11日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月20日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされたところ、令和6年1月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。その後同年8月26日に上申書が提出された。 第2 令和6年1月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 令和6年1月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 1.補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の全文を補正するものであって、その補正内容は、特許請求の範囲について、【請求項1】を 「【請求項1】 超音波画像を生成するように構成されたトランスデューサと、 制御回路と、 通信回路と、 プログラム可能なメモリとを有する、 ポータブルなプログラム可能な撮像デバイスであって、 前記トランスデューサはさらに、圧電素子の平面状アレイを有し、 各圧電素子は複数の動作モードで動作するよう構成されており、前記動作モードのそれぞれは前記プログラム可能なメモリに記憶されており、前記制御回路によって実行可能な一つまたは複数の構成プロファイルに対応する、 ポータブルなプログラム可能な撮像デバイス。」 から 「【請求項1】 超音波画像を生成するように構成されたトランスデューサと、 制御回路と、 通信回路と、 プログラム可能なメモリとを有する、 ポータブルなプログラム可能な撮像デバイスであって、 前記トランスデューサはさらに、圧電素子の平面状アレイを有し、 各圧電素子は複数の動作モードで動作するよう構成されており、前記動作モードのそれぞれは前記プログラム可能なメモリに記憶されており、前記制御回路によって実行可能な一つまたは複数の構成プロファイルに対応する、 ポータブルなプログラム可能な撮像デバイスにおいて、 前記動作モードは、少なくとも、 動作パラメータ値の第一の集合を指定する第一の構成プロファイルを有する第一の動作モードであって、前記動作パラメータ値の第一の集合は、少なくとも、制御すべき一つまたは複数の圧電素子の第一の組み合わせを指定する、第一の動作モードと、 前記動作パラメータ値の第一の集合とは異なる動作パラメータ値の第二の集合を指定する第二の構成プロファイルを有する第二の動作モードであって、前記動作パラメータ値の第二の集合は、少なくとも、制御すべき一つまたは複数の圧電素子の第二の組み合わせを指定する、第二の動作モードと、 を含む、 ポータブルなプログラム可能な撮像デバイス。」(下線部は補正箇所を示す。) と補正するものを含むものである。 2.本件補正の目的 本件補正のうち、請求項1についての補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、動作モードを 「少なくとも、 動作パラメータ値の第一の集合を指定する第一の構成プロファイルを有する第一の動作モードであって、前記動作パラメータ値の第一の集合は、少なくとも、制御すべき一つまたは複数の圧電素子の第一の組み合わせを指定する、第一の動作モードと、 前記動作パラメータ値の第一の集合とは異なる動作パラメータ値の第二の集合を指定する第二の構成プロファイルを有する第二の動作モードであって、前記動作パラメータ値の第二の集合は、少なくとも、制御すべき一つまたは複数の圧電素子の第二の組み合わせを指定する、第二の動作モードと、 を含む、」(本願明細書の段落【0071】、【0145】ないし【0147】、【0170】ないし【0214】と本願の特許請求の範囲の【請求項7】及び【請求項15】参照。) ものに限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明1」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 3.独立特許要件について (1)本願補正発明 本願補正発明1は、前記「1.」に記載したとおりのものである。以下の「(3)対比」及び「(4)判断」で用いるために、当該本願補正発明1について、以下のように各構成単位に分けることを行う。ここで、各構成単位冒頭の「1A」等は当審にて付した分説記号であり、以下当該構成単位について「構成1A」などという。 「【請求項1】 1A 超音波画像を生成するように構成されたトランスデューサと、 1B 制御回路と、 1C 通信回路と、 1D プログラム可能なメモリと 1E を有する、ポータブルなプログラム可能な撮像デバイスであって、 1F 前記トランスデューサはさらに、圧電素子の平面状アレイを有し、 1G 各圧電素子は複数の動作モードで動作するよう構成されており、 1H1 前記動作モードのそれぞれは前記プログラム可能なメモリに記憶されており、前記制御回路によって実行可能な一つまたは複数の構成プロファイルに対応する、 1E ポータブルなプログラム可能な撮像デバイスにおいて、 1H2 前記動作モードは、少なくとも、 動作パラメータ値の第一の集合を指定する第一の構成プロファイルを有する第一の動作モードであって、前記動作パラメータ値の第一の集合は、少なくとも、制御すべき一つまたは複数の圧電素子の第一の組み合わせを指定する、第一の動作モードと、 前記動作パラメータ値の第一の集合とは異なる動作パラメータ値の第二の集合を指定する第二の構成プロファイルを有する第二の動作モードであって、前記動作パラメータ値の第二の集合は、少なくとも、制御すべき一つまたは複数の圧電素子の第二の組み合わせを指定する、第二の動作モードと、 を含む、 1E ポータブルなプログラム可能な撮像デバイス。」 (2)引用文献、引用発明等 ア 引用例1 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の優先日前である平成27年11月26日に頒布された「特開2015-211726号公報」(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下同様。) (ア)「【発明を実施するための形態】 【0009】 以下、図面を参照しながら本実施形態に係る超音波診断装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。 【0010】 図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、超音波診断装置1は、超音波プローブ3と装置本体5とを有する。超音波プローブ3は、無線通信により装置本体5に接続される。 【0011】 超音波プローブ3は、超音波振動子11と、超音波送受信部13と、読み取り部15と、第1記憶部17と、判定部19と、警告出力部21と、第1無線通信確立部23と、第1表示部25と、第1入力部27と、第1送受信部29と、第1制御部31と、図示していない電源部とを有する。電源部は、超音波プローブ3の各部に電力を供給するバッテリーである。超音波プローブ3は、被検体に対する超音波の送受信により発生されたデータを、装置本体5に無線送信可能な構成を有する。 【0012】 装置本体5は、第2無線タグ51と、第2無線通信確立部53と、第2送受信部55と、超音波画像発生部57と、インターフェース部59と、第2入力部61と、第2記憶部63と、第2表示部65と、第2制御部67とを有する。装置本体5は、第1送受信部29を介して超音波プローブ3から送信されたデータに基づいて超音波画像を発生し、表示可能な構成を有する。 【0013】 (超音波プローブ3) 超音波振動子11は、圧電セラミックス等の音響/電気可逆的変換素子としての複数の圧電振動子により構成される。複数の圧電振動子は並列され、超音波プローブ3の先端に装備される。各圧電振動子は、供給される駆動信号(電圧パルス)に従って所定のタイミングで超音波を発生する。なお、超音波プローブ3は、複数の圧電振動子が1方向に沿って配列された1次元アレイプローブ、複数の圧電振動子が2次元マトリックス状に配列された2次元アレイプローブのいずれであってもよい。以下、一つの圧電振動子が一チャンネルを構成するものとして説明する。 【0014】 超音波送受信部13は、図示していない送信部と受信部とを有する。送信部は、図示していないパルス発生器、送信遅延回路、パルサを有する。パルス発生器は、所定のレート周波数で送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。パルス発生器は、例えば5kHzのレート周波数でレートパルスを繰り返し発生する。このレートパルスは、チャンネル数に分配され、送信遅延回路に送られる。送信遅延回路は、チャンネル毎に超音波をビーム状に収束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間を、各レートパルスに与える。なお、送信遅延回路には、図示していないトリガ信号発生器からのトリガが、タイミング信号として供給される。パルサは、送信遅延回路からレートパルスを受けたタイミングで、圧電振動子ごとに電圧パルスを印加する。これにより、超音波ビームが被検体に送信される。 【0015】 受信部は、図示していないプリアンプ、アナログディジタル変換器、受信遅延回路、加算器を有する。プリアンプは、超音波プローブ3を介して取り込まれた被検体からのエコー信号をチャンネル毎に増幅し、アナログディジタル変換機でアナログ信号からディジタル信号(以下、受信データと呼ぶ)に変換する。受信遅延回路は、ディジタルデータに変換されたエコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、第1制御部31からの受信遅延パターンに従って複数のエコー信号を加算する。この加算により受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。この送信指向性と受信指向性とにより超音波送受信の総合的な指向性が決定される(この指向性により、いわゆる「超音波走査線」が決まる)。なお、受信部は、1回の超音波送信で複数の走査線上に生じたエコー信号を同時に受信する並列受信機能を有していてもよい。 【0016】 超音波送受信部13は、受信部により発生されたデータを、第1送受信部29に出力する。、(当審注:読点は誤記)なお、超音波送受信部13は、受信部により発生されたデータを、第1記憶部17に出力してもよい。 ・・・ 【0021】 第1記憶部17は、超音波プローブのプローブ情報を記憶する。プローブ情報とは、例えば、送信中心周波数、プローブの形状(矩形(リニア)、扇形(セクタ、コンベックス)など)、プローブIDなどである。なお、第1記憶部17は、超音波送受信部13により発生されたデータ、読み取り部15により読み取られた患者情報および装置情報などを記憶してもよい。また、第1記憶部17は、第1送受信部29および第2送受信部55を介して受信した被検体の超音波検査に係る検査情報を記憶してもよい。なお、第1記憶部17は、フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターンおよび複数の送信遅延パターン、診断プロトコル、送受信条件等の各種データ群を記憶する。 ・・・ 【0025】 第1無線通信確立部23は、判定部19からの出力を契機として、装置本体5に対して無線通信セッションを確立する。すなわち、第1無線通信確立部23は、超音波プローブ3が装置本体5に適用可能であると判定された場合、装置本体5の第2無線通信確立部53との間で、無線通信セッションを確立する。具体的には、第1無線通信確立部23は、第2無線通信確立部53とともに、装置情報における無線チャンネル、IPアドレスまたはホスト名、AEタイトルを用いて、装置本体5と通信を開始する。これにより、超音波プローブ3と装置本体5との間で、無線セッションが確立する。」 (イ)「【0031】 図3は、本超音波プローブ3の外観の一例を示す斜視図である。図3に示すように、超音波プローブ3の外装の前面には、第1表示部25が設けられる。第1表示部25の前面には、第1入力部27としてタッチパネルが設けられている。超音波プローブ3の外装の背面には、読み取り部15が設けられる。なお、第1表示部25は、超音波プローブ3の超音波放射面に対向する対向面(上面)に設けられてもよい。図3における第1表示部25の表示画面における表示内容は、超音波プローブ3と装置本体5との無線通信セッションの確立後であって、被検体に対する検査開始の確認を操作者に提示している状態である。このとき、検査開始の領域が操作者により指定されると、超音波プローブ3及び装置本体5は、被検体に対する超音波検査が実行可能な状態となる。 【0032】 図4は、図3に示す超音波プローブ3の外観とは異なる超音波プローブ3の外観の一例を示す斜視図である。図4に示す超音波プローブ3には、第1入力部27として、検査開始、フリーズ、静止画保存、動画保存に対応するボタンが設けられている。なお、ボタンの数およびボタンに対応する各種指示内容は、図4に限定されない。また、ボタンの位置は、超音波プローブ3の外装の任意の位置に設置可能である。ボタンは、例えば、超音波プローブ3において、操作者がブラインドで操作できるような位置に設けられる。また、ボタンの押下による感触は、操作者がブラインドで操作できるクリック感を有する。図4における第1表示部25は、静止画保存の入力に応じて、保存対象の超音波画像に対応する縮小画像を、患者情報とともに表示している。」 (ウ)「【0034】 第1制御部31は、図示していないメモリを有する。メモリは、フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、各種モードに関する超音波送受信部13の制御プログラムなどを記憶する。具体的には、第1制御部31は、第1入力部27を介して入力された送受信条件と選択されたモードとに基づいて、メモリに記憶された受信遅延パターンと制御プログラムとを読み出す。第1制御部31は、入力された送受信条件と読み出された制御プログラムとに従って、本超音波プローブ3の各部を制御する。」 (エ)「【図1】 [図:0001423129000001.jpg] 」 (オ)「【図3】 [図:0001423129000002.jpg] 」 (カ)「【図4】 [図:0001423129000003.jpg] 」 (キ)上記「(イ)、(オ)及び(カ)」より、超音波プローブ3は「ポータブルな」ものであることが看取される。 (ク)上記引用例1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 当該引用発明1についても、上記本願補正発明1と同様に、以下のように各構成単位に分けることを行う。ここで、各構成単位冒頭の「a,b,・・」等は当審にて付した分説記号であり、以下当該構成単位について「構成a,b,・・」などという。また、括弧内の段落番号及び図番号は、各構成単位を認定した参照箇所を示す。 「a 超音波プローブ3と装置本体5とを有する超音波診断装置1における超音波プローブ3であって、(【0010】) b 超音波プローブ3は、超音波振動子11と、超音波送受信部13と、読み取り部15と、第1記憶部17と、判定部19と、警告出力部21と、第1無線通信確立部23と、第1表示部25と、第1入力部27と、第1送受信部29と、第1制御部31と、電源部とを有し、(【0011】) c 超音波振動子11は、圧電セラミックス等の音響/電気可逆的変換素子としての複数の圧電振動子により構成され、複数の圧電振動子は並列され2次元マトリックス状に配列されて超音波プローブ3の先端に装備され、各圧電振動子は、供給される駆動信号(電圧パルス)に従って所定のタイミングで超音波を発生し、(【0013】) d 超音波送受信部13は、送信部と受信部とを有し、(【0014】)受信部により発生されたデータを、第1送受信部29に出力し、(【0016】) e 第1記憶部17は、フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターンおよび複数の送信遅延パターン、診断プロトコル、送受信条件等の各種データ群を記憶し、(【0021】) f 第1無線通信確立部23は、装置本体5に対して無線通信セッションを確立し、(【0025】) g 第1制御部31は、フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、各種モードに関する超音波送受信部13の制御プログラムなどを記憶するメモリを有し、第1入力部27を介して入力された送受信条件と選択されたモードとに基づいて、メモリに記憶された受信遅延パターンと制御プログラムとを読み出し、入力された送受信条件と読み出された制御プログラムとに従って、本超音波プローブ3の各部を制御し、(【0034】) h 超音波プローブ3は、無線通信により装置本体5に接続され、(【0010】)被検体に対する超音波の送受信により発生されたデータを、装置本体5に無線送信し、(【0011】) i 装置本体5は、第1送受信部29を介して超音波プローブ3から送信されたデータに基づいて超音波画像を発生し、表示可能な構成を有し、(【0012】) j 超音波プローブ3は、ポータブルなものである、(【0031】【0032】【図3】【図4】) a 超音波プローブ3と装置本体5とを有する超音波診断装置1における超音波プローブ3。」 イ 引用例2 当審で新たに周知技術の例を示す文献として引用する、本願の優先日前である平成16年4月8日に頒布された刊行物である「特開2004-105257号公報」(以下「引用例2」という。)には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、超音波を送信し、エコー信号を受信することにより超音波画像を得るために用いられる超音波送受信装置に関する。」 (イ)「【0011】 本実施形態に係る超音波送受信装置は、フレネル方式によって形成される超音波ビームを、異なる複数の位置から同時に、或いは、ほぼ同時に送信することにより、被検体に関する情報を得るものである。以下において、複数の超音波ビームを同時に、或いは、ほぼ同時に送信することをマルチビーム送信という。 【0012】 フレネル方式とは、次のような超音波ビームの形成方法である。即ち、図2の(a)に示すように、2次元に配置された複数の超音波トランスデューサV1、V2、…を複数の同心のリング状領域R1、R2、…、R5に分け、それぞれのリング状領域に含まれる超音波トランスデューサを同じタイミングで駆動するように設定する。以下、このような同心のリング状領域R1、R2、…、R5を輪帯と呼ぶ。これらの超音波トランスデューサを、外側の輪帯R5から所定の時間差で順次駆動する。例えば、図2の(b)に示すように、まず、輪帯R5に含まれる複数の超音波トランスデューサを、基準時刻(t=0)から遅延時間DT5経過後に所定の波形に基づいて駆動し、次いで、輪帯R4に含まれる複数の超音波トランスデューサを、基準時刻から遅延時間DT4経過後に同様に駆動する。さらに、輪帯R3、R2、R1にそれぞれ含まれる複数の超音波トランスデューサについても同様に駆動する。これにより、図2の(a)に示すように、点Fに向けてフォーカスされた超音波ビームが形成される。」 (ウ)「【0017】 駆動情報設定部12は、駆動パターン記憶部11に記憶されている駆動パターンの中から、超音波ビームをフォーカスする深さやビーム形状等に応じて適当な駆動パターンを選択し、その駆動パターンに含まれる駆動情報P1、P2、…、P5を、輪帯R1、R2、…、R5に対応付ける。これにより、複数のサブアレイSA1、SA2、…の間では、対応する輪帯(例えば、R1)に等しい遅延時間(例えば、DT1)が設定され、異なるサブアレイの間で遅延回路を共用することができる。」 (エ)「【0022】 なお、送信される超音波ビームの焦点の深さを変更する場合には、輪帯ごとに設定される遅延時間を変更すれば良い。例えば、焦点を遠ざける場合には、輪帯間の遅延時間の差を小さくし、反対に、焦点を近付ける場合には、輪帯間の遅延時間の差を大きくする。また、超音波ビームの形状を変更する場合には、超音波を発生させる際に用いられる輪帯を変更すれば良い。例えば、焦点におけるビーム半径を絞り、方位分解能を高めたい場合には、半径の大きい輪帯まで(例えば、R1~R5)を用いて開口を大きくする。反対に、焦点深度を長く取りたい場合には、ビーム半径の小さい輪帯まで(例えば、R1~R3)を用いて開口を小さくする。ここで、焦点深度とは、被検体を焦点から前後させても画像のボケが許容範囲に収まる距離を意味する。このような超音波ビームの形状等に応じた駆動パターンを駆動パターン記憶部11に記憶しておくことにより、所望の形状を有する超音波ビームを、所望の深さにフォーカスするように送信することができる。」 (オ)「【図2】 [図:0001423129000004.jpg] 」 (カ)上記引用例2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例2には、次の技術(以下「引用例2開示技術」という。)が記載されていると認められる。 「超音波を送信し、エコー信号を受信することにより超音波画像を得るために用いられる超音波送受信装置において、 2次元に配置された複数の超音波トランスデューサV1、V2、…を複数の同心のリング状領域R1、R2、…、R5に分け、 駆動パターン記憶部11に記憶されている駆動パターンの中から、超音波ビームをフォーカスする深さやビーム形状等に応じて適当な駆動パターンを選択し、その駆動パターンに含まれる駆動情報P1、P2、…、P5を、輪帯R1、R2、…、R5に対応付けて、それぞれのリング状領域に含まれる超音波トランスデューサを同じタイミングで駆動するように設定し、これらの超音波トランスデューサを、外側の輪帯R5から所定の時間差で順次駆動して、所望の形状を有する超音波ビームを、所望の深さにフォーカスするように送信する技術。」 ウ 引用例3 当審で新たに周知技術の例を示す文献として引用する、本願の優先日前である平成17年2月10日に頒布された刊行物である「特開2005-34634号公報」(以下「引用例3」という。)には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。 (ア)「【0041】 まず図18を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置の基本構成を説明する。超音波診断装置は、プローブ(プローブユニット)240と、装置本体242と、で構成される。プローブ240は、プローブヘッド244、プローブケーブル246、及び、図示されていないケーブルコネクタ、を有する。装置本体242は、送受信制御部248、受信部250、信号処理モジュール252、画像形成部254、及び、表示器256を有する。プローブヘッド244により、超音波の送波及び受波がなされる。それにより得られた受信信号は、受信部250及び信号処理モジュール252を経由して、画像形成部254に入力される。この画像形成部254において、受信信号に基づいて超音波画像が形成される。その超音波画像は表示器256の画面上に表示される。超音波画像としては、二次元断層画像、二次元血流画像、三次元画像などが知られている。本実施形態では、生体内の三次元空間から取得されたボリュームデータをボリュームレンダリング処理することによって、三次元画像が形成される。三次元画像の形成方法としては、それ以外にも各種の方法が知られている。 【0042】 図1には、第1の実施形態における主要部の構成がブロック図として示されている。超音波診断装置は、図18を用いて説明したように、プローブユニット、及び、装置本体12、で構成される。プローブユニットは、プローブヘッド10、プローブケーブル14、及び、図示されていないケーブルコネクタ、によって構成される。ケーブルコネクタは、装置本体12に対し、着脱自在に接続される。装置本体12には、プローブコネクタが接続されるコネクタが設けられている。 【0043】 プローブヘッド10は、例えば、生体表面上に当接して用いられ、その当接状態において、超音波パルスを送波し、反射波を受波する。プローブヘッド10は、2Dアレイ振動子16を有している。この2Dアレイ振動子16は、複数の振動素子16aで構成される。それらの振動素子16aは二次元的に配列されている。この2Dアレイ振動子16によって超音波ビームが形成される。その超音波ビームは二次元的に電子走査される。その電子走査方式としては、例えば、電子セクタ走査方式、電子リニア走査方式、など、をあげることができる。超音波ビームの二次元的な電子走査により、三次元空間(三次元エコーデータ取込空間)が形成される。本実施形態において、2Dアレイ振動子16は、例えば、4000個程度の振動素子16aによって構成される。 【0044】 2Dアレイ振動子16に対して、複数の2Dサブアレイ18が設定される(後に図3に示す)。それらのサブアレイ18は、2Dアレイ振動子16上において、相互に密に連結するように設定されている。本実施形態において、複数のサブアレイ18は四角形の形態を有しており、各サブアレイ18の位置及び形状は固定的に設定されている。しかし、各サブアレイの位置及び形状を適応的に可変設定するようにしてもよい。」 (イ)「【0051】 装置本体12内の送受信制御部32は、図示されていない主制御部からの制御信号106にしたがって動作し、図1に示される各構成の動作制御を行っている。すなわち、装置本体12内において、送受信制御部32は、複数のFIFOメモリ28に対する書き込み制御及び読み出し制御を行っており、そのような制御により受信ダイナミックフォーカスが実現されている。また、送受信制御部32は、制御線102を用いてコントロール信号をプローブヘッド10に対して供給している。そのようなコントロール信号にしたがって、サブ送信制御部22及びサブ受信制御部24が、プローブヘッド10内における複数のサブ送受信部20の動作を制御する。また、そのようなコントロール信号により、以下に図2に示すマルチプレクサが実行するグルーピング処理におけるパターンの選択が行われる。ちなみに、図1においては、装置本体12からプローブヘッド10に対して供給される電力ライン及びクロック信号などは図示省略されている。」 (ウ)「【0059】 図3には、アレイ振動子16が示されている。アレイ振動子16は、例えば、X方向に50個の振動素子を有し、且つ、Y方向に50個の振動素子を有する2Dアレイ振動子である。上記のように、そのアレイ振動子16に対して複数のサブアレイが設定される。具体的には、複数のサブアレイは、それぞれ矩形(正方形)の形状を有し、それらは隙間無くアレイ振動子16の全体にわたって密に設定されている。図3においては、その内で1つのサブアレイ18が代表して示されている。上述したように、各サブアレイに対して複数のグループが設定される。各グループには、フォーカス及びビームステアリングに従った送信遅延量及びサブ受信遅延量が与えられる。なお、メイン受信遅延量は、各サブアレイ単位で付与され、つまり、各サブアレイを構成する複数の振動素子の全部に共通のメイン受信遅延量が与えられる。よって、個々の振動素子に対しては、全体として、サブ受信遅延量及びメイン受信遅延量を加算した遅延量が与えられる。」 (エ)「【0071】 図9及び図10には送受信条件がテーブルとして示されている。図9に示されるように、送信ビームアドレスが定められると、各サブアレイごとにグルーピングパターン、送信遅延量セット、及び、受信サブ遅延量セット(符号229参照)が決定される。送信遅延量セットは、この例では、サブアレイを構成する4つのグループに与える4つの遅延量からなるものである。受信サブ遅延量セットは、この例では、サブアレイを構成する4つのグループに与える4つのサブ遅延量からなるものである。ちなみに、受信サブ遅延量セットを構成する各サブ遅延量の値を受信点深さに応じて動的に変更するようにしてもよい。 【0072】 図10には、送信ビームアドレスごとに設定される受信ビームごとの受信メイン遅延量セット230が示されている。この受信メイン遅延量セット230は本実施形態において128個のメイン遅延量で構成され、各メイン遅延量は受信ダイナミックフォーカスを実現するために受信点の深さに応じて動的に可変設定される。」 (オ)「【図3】 [図:0001423129000005.jpg] 」 (カ)「【図9】 [図:0001423129000006.jpg] 」 (キ)「【図10】 [図:0001423129000007.jpg] 」 (ク)上記引用例3の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例3には、次の技術(以下「引用例3開示技術」という。)が記載されていると認められる。 「プローブヘッド10を有するプローブユニットと、装置本体12と、で構成される超音波診断装置において、 プローブヘッド10は、二次元的に配列されている複数の振動素子16aで構成された2Dアレイ振動子16を有し、この2Dアレイ振動子16によって超音波ビームが形成され、 2Dアレイ振動子16に対して、複数の2Dサブアレイ18が設定され、 装置本体12内の送受信制御部32は、主制御部からの制御信号106にしたがって動作し、 制御線102を用いてコントロール信号をプローブヘッド10に対して供給し、そのようなコントロール信号にしたがって、サブ送信制御部22及びサブ受信制御部24が、プローブヘッド10内における複数のサブ送受信部20の動作を制御し、 各サブアレイに対して複数のグループが設定され、各グループには、フォーカス及びビームステアリングに従った送信遅延量及びサブ受信遅延量が与えられ、メイン受信遅延量は、各サブアレイ単位で付与され、つまり、各サブアレイを構成する複数の振動素子の全部に共通のメイン受信遅延量が与えられ、よって、個々の振動素子に対しては、全体として、サブ受信遅延量及びメイン受信遅延量を加算した遅延量が与えられる、技術」 エ 引用例4 当審で新たに周知技術の例を示す文献として引用する、本願の優先日前である平成11年8月17日に頒布された刊行物である「特開平11-221215号公報」(以下「引用例4」という。)には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。 (ア)「【0013】 【発明の概要】本発明は、素子ピッチを動作モードに応じてイメージング・システムによって制御するようにした適応トランスジューサ・アレイである。これにより、一定のピッチを持つ従来のシステムに比べて感度がより高く且つ空間(横方向)およびコントラスト分解能がより良好になる。本発明は全てのイメージング・モード(B、M、カラー、PDIおよびドップラー)に適用される。 【0014】本発明の方法によれば、開口の寸法が、一列のトランスジューサ素子のピッチを増大させることによって増大される。複数列トランスジューサ・アレイの場合、ピッチは2列またはそれ以上の列において増大される。複数のトランスジューサ素子が、複数の状態を持つマルチプレクサ手段(または選択接続用のスイッチング手段)によって複数のビーム形成チャネルに接続される。1つのマルチプレクサ状態において、相次ぐトランスジューサ素子が相次ぐビーム形成チャネルにそれぞれ接続されて、隣り合う2つのトランスジューサ素子の中心線相互の離隔距離に等しい素子ピッチ(以後、「小さいピッチ」と呼ぶ)を持つ開口を作成する。別のマルチプレクサ状態においては、選択されたトランスジューサ素子が相次ぐビーム形成チャネルにそれぞれ接続されて、小さいピッチの2倍以上に等しい増大した素子ピッチを持つ開口を作成する。 【0015】開口を増大する3つの技術が開示される。本発明を1.25D、1.5Dおよび2Dアレイに適用した場合について説明する。好ましい方法は、ピッチを増大することによって一層大きいアクティブ開口を形成するために、アレイ内の隣接する素子同士を接続することである。この代わりに、一つ置きの素子をそれぞれビーム形成チャネルに接続することにより、一層大きい開口を持つ素子間隔が密でないアレイを形成することが出来る。最後の方法は上記の2つの技術の組合せであり、この場合、アクティブ開口は複数のセグメントに分割され、各々のセグメントは小さいピッチを持つ領域、隣接する素子を短絡することによって得られる一層大きいピッチを持つ領域、或いは素子間隔が密でない素子によって得られる一層大きいピッチを持つ領域を有する。また、アレイ内の異なる素子に対して異なるピッチを使用したハイブリッド開口を形成することも出来る。素子ピッチは所与の開口にわたるビーム形成装置の遅延分布の導関数に比例するようにすることが出来る。3種類のセグメントの分布は、開口の設計上の制約に応じて定められる。 【0016】本発明に従ってトランスジューサ・アレイの素子ピッチを選択的に増大させる方法は、大きい開口を提供することによって、深さの一層深い所でのビーム・プロフィールを改善する。この方法はまた、遠距離場における2方向感度を増大させる。更に、送信および受信中心周波数が典型的にはイメージング深さの関数として変化するので、それに適応してトランスジューサのピッチを変更する方法が必要になる。これは、トランスジューサのピッチが所与のトランスジューサで全てのイメージング周波数に対して一定数の波長に留まることを保証する。この方式を使用すると、より高い周波数でイメージングするのに細かいピッチが使用される。より低い周波数で作動するとき、より大きいピッチを使用することが出来る。」 (イ)「【0022】本発明の別の実施態様によれば、上記の2つの技術の組合せを使用してピッチが増大される。この場合、アクティブ開口が複数のセグメントに分割される。図4(D)に示した好ましい実施態様によれば、マルチプレクサ手段が次のように設計される。すなわち、第1組のセグメントの各々が、小さいピッチのマルチプレクサ状態または隣接した素子同士が短絡される一層大きいピッチのマルチプレクサ状態のいずれかに従って作動することの出来るトランスジューサ素子を含み、また第2組のセグメントの各々が、小さいピッチのマルチプレクサ状態または作動される素子がまばらな間隔である一層大きいピッチのマルチプレクサ状態のいずれかに従って作動することの出来るトランスジューサ素子を含むようにされる。別の変形によれば、第3組のセグメントをアレイ内に設け、その各々のセグメントは小さいピッチのみを持つトランスジューサ素子で構成される。図4(D)は、セグメントCで形成される近距離場開口内の素子がピッチPを持ち、セグメントCの両側にあるセグメントBのようなセグメントで形成される中距離場開口内の素子が一対ずつ短絡されて2Pに等しいピッチを形成し、またその外側のセグメントAのようなセグメントで形成される遠距離場開口内の素子がピッチ2Pの素子間隔が密でないアレイを形成することを示している。超音波トランスジューサ・アレイ内での上述のセグメントの分布は、ビーム形成遅延分布のような開口の設計上の制約に応じて定められる。」 (ウ)「【図4】 [図:0001423129000008.jpg] 」 (エ)上記引用例4の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例4には、次の技術(以下「引用例4開示技術」という。)が記載されていると認められる。 「2Dアレイのトランスジューサ・アレイに対し、素子ピッチを動作モードに応じてイメージング・システムによって制御する技術であって、アクティブ開口は複数のセグメントに分割され、各々のセグメントは小さいピッチを持つ領域、隣接する素子を短絡することによって得られる一層大きいピッチを持つ領域、或いは素子間隔が密でない素子によって得られる一層大きいピッチを持つ領域を有する、技術。」 (3)対比 本願補正発明1を、引用発明1と比較する。 ア 本願補正発明1の構成1A及び1Fについて (ア)引用発明1の項目aの「超音波プローブ3と装置本体5とを有する超音波診断装置1における超音波プローブ3」は、同項目bより「超音波振動子11」を備えるものであり、当該「超音波振動子11」は同項目cより「圧電セラミックス等の音響/電気可逆的変換素子としての複数の圧電振動子により構成され、複数の圧電振動子は並列され2次元マトリックス状に配列されて超音波プローブ3の先端に装備され、各圧電振動子は、供給される駆動信号(電圧パルス)に従って所定のタイミングで超音波を発生」するものである。よって、引用発明1の「2次元マトリックス状に配列され」た「複数の圧電振動子により構成され」た「超音波振動子11」は、本願補正発明1の「圧電素子の平面状アレイを有」する「トランスデューサ」に相当する。よって、引用発明1は本願補正発明1の構成1Fに相当する構成を備えているといえる。 (イ)引用発明1の項目iより、引用発明1の超音波診断装置1の「装置本体5は、」「超音波プローブ3から送信されたデータに基づいて超音波画像を発生し、表示可能な構成を有」するものである。そして超音波プローブ3から装置本体5に送信されるデータは、同項目hより「被検体に対する超音波の送受信により発生されたデータ」である。さらに、超音波プローブ3から被検体に対して超音波の送受信を行うのは、同項目cに記載された超音波振動子11であることは明らかである。よって、超音波プローブ3が備える超音波振動子11は、超音波画像を生成するように構成されたものである。 (ウ)上記「(ア)及び(イ)」を総合勘案すると、引用発明1の超音波プローブ3が備える超音波振動子11は、本願補正発明1の「超音波画像を生成するように構成されたトランスデューサ」に相当する。よって、引用発明1は本願補正発明1の構成1Aに相当する構成を備えているといえる。 イ 本願補正発明1の構成1Bについて 引用発明1の項目bの超音波プローブ3が備える「第1制御部31」は、同項目gより「フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、各種モードに関する超音波送受信部13の制御プログラムなどを記憶するメモリを有し、第1入力部27を介して入力された送受信条件と選択されたモードとに基づいて、メモリに記憶された受信遅延パターンと制御プログラムとを読み出し、入力された送受信条件と読み出された制御プログラムとに従って、本超音波プローブ3の各部を制御」するものであることから、本願補正発明1の「制御回路」に相当する。よって、引用発明1は本願補正発明1の構成1Bに相当する構成を備えているといえる。 ウ 本願補正発明1の構成1Cについて 引用発明1の項目bの超音波プローブ3が備える「第1無線通信確立部23」は、同項目fより「装置本体5に対して無線通信セッションを確立」するものであることから、本願補正発明1の「通信回路」に相当する。よって、引用発明1は本願補正発明1の構成1Cに相当する構成を備えているといえる。 エ 本願補正発明1の構成1Dについて (ア)引用発明1の項目bの超音波プローブ3が備える「第1制御部31」は、同項目gより「フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、各種モードに関する超音波送受信部13の制御プログラムなどを記憶するメモリを有」するものである。 (イ)そして、上記「第1制御部31」が備える「フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、各種モードに関する超音波送受信部13の制御プログラムなどを記憶するメモリ」は、当該メモリに様々なプログラムを記憶できることから、プログラム可能なメモリであると認められる。よって、引用発明1の「第1制御部31」が備える「フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、各種モードに関する超音波送受信部13の制御プログラムなどを記憶するメモリ」は、本願補正発明1の「プログラム可能なメモリ」に相当する。よって、引用発明1は本願補正発明1の構成1Dに相当する構成を備えているといえる。 オ 本願補正発明1の構成1Eについて (ア)引用発明1の項目aの「超音波プローブ3と装置本体5とを有する超音波診断装置1における超音波プローブ3」は、超音波画像を撮像する「撮像デバイス」であり、かつ同項目jより「ポータブルなもの」である。 (イ)また、引用発明1の超音波プローブ3は、超音波プローブ3が備える第1制御部31において、同項目gより「第1入力部27を介して入力された送受信条件と選択されたモードとに基づいて、メモリに記憶された受信遅延パターンと制御プログラムとを読み出し、入力された送受信条件と読み出された制御プログラムとに従って、本超音波プローブ3の各部を制御」することから、超音波プローブ3の制御及びその制御による動作を「第1入力部27を介して入力された送受信条件と選択されたモードとに」よりプログラム可能であると認められる。 (ウ)上記「(ア)及び(イ)」を総合勘案すると、引用発明1の超音波プローブ3は、本願補正発明1の「ポータブルなプログラム可能な撮像デバイス」に相当する。 (エ)さらに、引用発明1の超音波プローブ3は、上記「アないしウ」より、本願補正発明1の構成1Aないし1Dに相当する構成を備えているといえる。 (オ)上記「(ウ)及び(エ)」を総合勘案すると、引用発明1の超音波プローブ3は、本願補正発明1の構成1Aないし1Dに相当する構成を備え、かつ本願補正発明1の「ポータブルなプログラム可能な撮像デバイス」に相当する。ゆえに、引用発明1は本願補正発明1の構成1Dに相当する構成を備えているといえる。 カ 本願補正発明1の構成1G及び1H1について (ア)引用発明1の超音波プローブ3が備える超音波振動子11は、上記「ア(ア)」で説示したとおり、「2次元マトリックス状に配列され」た「複数の圧電振動子により構成され」たものである。 (イ)そして、引用発明1の超音波振動子11は、項目gより、「第1入力部27を介して入力された送受信条件と選択されたモードとに基づいて、」「フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、各種モードに関する超音波送受信部13の制御プログラムなどを記憶するメモリ」「に記憶された受信遅延パターンと制御プログラムとを読み出し、入力された送受信条件と読み出された制御プログラムとに従って」「第1制御部31」により「制御」されるものである。 (ウ)上記「(イ)」及び「イ及びウ」を総合勘案すると、引用発明1の第1制御部31の制御に用いられる、メモリに記憶された受信遅延パターンと制御プログラムは、本願補正発明1の「プログラム可能なメモリに記憶されており、」「制御回路によって実行可能な一つまたは複数の構成プロファイル」に相当する。また、プログラムを用いる制御の際に、複数のパラメータ値が用いられることは当業者にとって自明であるから、引用発明1において、メモリに記憶された受信遅延パターンと制御プログラムが、パラメータ値の集合を有していることは自明である。 (エ)上記「(イ)」より、引用発明1の超音波プローブ3が備える超音波振動子11の「2次元マトリックス状に配列され」た「複数の圧電振動子」は、「入力された送受信条件と読み出された制御プログラムとに従」った制御により動作すると認められ、したがって、引用発明1の「入力された送受信条件と読み出された制御プログラムとに従」った制御による「複数の圧電振動子」の動作は、本願補正発明1の「トランスデューサ」の「各圧電素子」が動作する「動作モード」に相当する。そして、上記「(ウ)」より「入力された送受信条件と読み出された制御プログラム」は複数存在することは自明であることから、上記「複数の圧電振動子」の動作も複数存在することも自明である。ゆえに、引用発明1と本願補正発明1とは、構成1Gの「各圧電素子は複数の動作モードで動作するよう構成されて」いる点で共通する。すなわち、引用発明1は本願補正発明1の構成1Gに相当する構成を備えているといえる。 (オ)上記「(ウ)及び(エ)」を総合勘案すると、引用発明1においては、超音波プローブ3が備える超音波振動子11の「2次元マトリックス状に配列され」た「複数の圧電振動子」が、「入力された送受信条件と読み出された制御プログラムとに従」った制御により動作し、その動作は「メモリ」から「読み出された」「制御プログラム」に基づくものであるから、引用発明1と本願補正発明1とは、構成1H1の「動作モードのそれぞれは」「プログラム可能なメモリに記憶されており、」「制御回路によって実行可能な一つまたは複数の構成プロファイルに対応する」点で共通する。すなわち、引用発明1は本願補正発明1の構成1H1に相当する構成を備えているといえる。 キ 本願補正発明1と引用発明1との一致点、相違点について 以上「アないしカ」より、本願補正発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。 <一致点> 「1A 超音波画像を生成するように構成されたトランスデューサと、 1B 制御回路と、 1C 通信回路と、 1D プログラム可能なメモリと 1E を有する、ポータブルなプログラム可能な撮像デバイスであって、 1F 前記トランスデューサはさらに、圧電素子の平面状アレイを有し、 1G 各圧電素子は複数の動作モードで動作するよう構成されており、 1H1 前記動作モードのそれぞれは前記プログラム可能なメモリに記憶されており、前記制御回路によって実行可能な一つまたは複数の構成プロファイルに対応する、 1E ポータブルなプログラム可能な撮像デバイス。」 一方で、両者は、次の点で相違する。 <相違点> 構成1H2における、「動作モード」が、本願補正発明1では、「少なくとも、動作パラメータ値の第一の集合を指定する第一の構成プロファイルを有する第一の動作モードであって、前記動作パラメータ値の第一の集合は、少なくとも、制御すべき一つまたは複数の圧電素子の第一の組み合わせを指定する、第一の動作モードと、前記動作パラメータ値の第一の集合とは異なる動作パラメータ値の第二の集合を指定する第二の構成プロファイルを有する第二の動作モードであって、前記動作パラメータ値の第二の集合は、少なくとも、制御すべき一つまたは複数の圧電素子の第二の組み合わせを指定する、第二の動作モードと、を含む、」のに対し、引用発明1では、「第1制御部31」の「フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、各種モードに関する超音波送受信部13の制御プログラムなどを記憶するメモリ」「に記憶された受信遅延パターンと制御プログラム」により制御される動作が、圧電素子の第1の組み合わせや第2の組み合わせを指定することを含む動作であるか不明である点。 (4)判断 ア 相違点についての検討 (ア)超音波診断装置において、選択された各種モードに対応する制御プログラムを用いて、複数の超音波振動子を制御することは、広く一般的に行われていることである。 (イ)上記「(2)イないしエ」において認定した引用例2ないし4開示技術はいずれも、2次元に配列された圧電素子(トランスデューサ)を用いた超音波プローブにおいて、所望するフォーカス深さ、ビーム形状、ビームステアリング、アクティブ開口等に応じて駆動する圧電素子群、すなわち制御すべき複数の圧電素子の組み合わせを異ならせて超音波の送受信を行う技術であり、上記「(ア)」で述べたとおり、本願の優先日前において広く行われていた、いわゆる周知の技術(以下、「周知技術」という。)であると認められる。そして、上記圧電素子群を異ならせて超音波の送受信を行う駆動パターンが駆動パターン記憶部に記憶してあることは、当業者にとって自明であり、引用例2開示技術にも開示されている。 (ウ)引用発明1は、超音波診断装置1における超音波プローブ3であることから、引用発明1と、引用例2ないし4にも記載された周知技術は、超音波プローブを制御して用いる超音波診断装置という同一の技術分野に属する。したがって引用発明1において、「第1制御部31」の「フォーカス深度の異なる複数の受信遅延パターン、各種モードに関する超音波送受信部13の制御プログラムなどを記憶するメモリ」「に記憶された受信遅延パターンと制御プログラム」により制御される動作として、当該技術分野における上記周知技術を採用することにより、圧電素子群の組み合わせが異なる駆動パターンを行う制御プログラムをメモリに記憶し、それを読み出して圧電素子群の組み合わせが異なる駆動パターンを行う動作を行うようにして、上記相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者ならば容易になし得たことである。 イ 本願補正発明1の効果について 本願補正発明1の効果は、引用発明1及び上記引用例2ないし4にも開示された上記周知技術から、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。 ウ 審判請求書における請求人の主張について (ア)請求人は令和6年1月22日付審判請求書において、原査定における引用文献1(上記引用例1)、引用文献2(米国特許出願公開第2016/0221353号明細書)及び引用文献3(特開2010-142637号公報)には、本願補正発明1が有する以下の「前記動作モードは、少なくとも、動作パラメータ値の第一の集合を指定する第一の構成プロファイルを有する第一の動作モードであって、前記動作パラメータ値の第一の集合は、少なくとも、制御すべき一つまたは複数の圧電素子の第一の組み合わせを指定する、第一の動作モードと、前記動作パラメータ値の第一の集合とは異なる動作パラメータ値の第二の集合を指定する第二の構成プロファイルを有する第二の動作モードであって、前記動作パラメータ値の第二の集合は、少なくとも、制御すべき一つまたは複数の圧電素子の第二の組み合わせを指定する、第二の動作モードと、を含む」(上記構成1H2)が開示されていないことから、本願補正発明1は引用文献1~3記載の発明に基づき当業者が容易に発明できたとはいえない旨主張する。 (イ)しかしながら、上記「ア」で検討したとおり、上記構成1H2の技術は、本願の優先日前において周知の技術であり、当該周知技術を引用発明1に採用することは、当業者ならば容易になしえたことである。 (ウ)以上のことから、請求人の上記主張は採用することができない。 エ 令和6年8月26日提出の上申書における請求人の主張について (ア)請求人は、令和6年3月28日作成日の前置報告書に記載された理由を考慮し、令和6年8月26日提出の上申書(以下「上申書」という。)により補正案を提出し、当該上申書において当該補正案に記載された請求項1ないし47に係る発明は、原査定の引用文献1ないし3から当業者が容易に発明できたとはいえないことから、原査定を取り消し本願発明を特許すべきものとする審決を求める旨主張する。 (イ)上記上申書の補正案に記載された請求項1に係る発明は、上記本願補正発明1において、第二の動作モードの「前記動作パラメータ値の第二の集合で指定される一つまたは複数の圧電素子の第二の組み合わせ」を「前記動作パラメータ値の第一の集合で指定されるとは異なる組み合わせ一つまたは複数の圧電素子の第一の組み合わせとは異なる」と新たに特定して減縮するものである。 (ウ)しかしながら、上記上申書の補正案に記載された請求項1に係る発明は、 a 「前記動作パラメータ値の第一の集合で指定されるとは異なる組み合わせ一つまたは複数の圧電素子の第一の組み合わせとは異なる」という日本語として明確でない記載により特定される事項であり、そのような明確でない記載により特定される発明もまた明確であるとはいえないことから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものではなく、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 b また「前記動作パラメータ値の第一の集合で指定されるとは異なる組み合わせ一つまたは複数の圧電素子の第一の組み合わせとは異なる」という日本語として明確でない記載が、「前記動作パラメータ値の第一の集合で指定される一つまたは複数の圧電素子の第一の組み合わせとは異なる」という記載であると釈明したとしても、第一の動作モードにより駆動する圧電素子の組み合わせと、第二の動作モードにより駆動する圧電素子の組み合わせとが異なることは、上記「ア(ア)及び(イ)」で示した引用例2ないし4開示技術が備える技術事項にすぎず、上記「ア」で説示したとおり、引用発明1に周知技術を採用することにより当業者が容易になし得たものである。ゆえに、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (エ)以上のことから、上記上申書の補正案に記載された請求項1に係る発明における請求人の主張は、採用することができない。 (5)小括 したがって、本願補正発明1は、引用発明1、及び引用例2ないし4にも開示された周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明1 令和6年1月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし51に係る発明は、令和5年7月11日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし51に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。ここで、各構成単位冒頭の「1A」等は、当審にて付した分説記号であり、上記「第2 3.(1)」で本願補正発明1に付した分節記号と同内容の分説については同じ分説記号を用いている。 「【請求項1】 1A 超音波画像を生成するように構成されたトランスデューサと、 1B 制御回路と、 1C 通信回路と、 1D プログラム可能なメモリと 1E を有する、ポータブルなプログラム可能な撮像デバイスであって、 1F 前記トランスデューサはさらに、圧電素子の平面状アレイを有し、 1G 各圧電素子は複数の動作モードで動作するよう構成されており、 1H1 前記動作モードのそれぞれは前記プログラム可能なメモリに記憶されており、前記制御回路によって実行可能な一つまたは複数の構成プロファイルに対応する、 1E ポータブルなプログラム可能な撮像デバイス。」 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、 <理由3>この出願の請求項1、2、4-7、10、11、14、17、24-25、29及び30に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 <理由4>この出願の請求項1-19、24-25、29-30及び32に係る発明は、その出願の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 というものである。 なお、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明と差異が無いと説示されている。 引用文献1:特表2015-211726号公報 引用文献2:米国特許出願公開第2016/0221353号明細書 引用文献3:特開2010-142637号公報 3.引用された刊行物に記載された発明及び周知技術 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1と、本審決における引用例1は同一である。 そして、引用例1の記載事項及び引用発明1は、上記「第2 3.(2)ア」に記載したとおりである。 4.対比・判断 (1)本願発明1は、上記「第2 3.」で検討した本願補正発明1から、構成1H2を削除して、当該構成1H2による限定を外したものである。 (2)上記「(1)」より、引用例2ないし4にも開示された周知技術に対応する本願補正発明1の構成1H2は、本願発明1では発明特定事項とされていない事項であることが分かる。 (3)上記「第2 3.」で検討したとおり、本願補正発明1は、引用発明1及び引用例2ないし4にも開示された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。そして、本願補正発明1から上記「(1)」で述べたとおりに構成1H2の限定を削除した本願発明1は、上記「第2 3.(3)」に示した相違点に係る技術事項を備えていない発明となる。したがって、上記「第2 3.(3)ないし(5)」で検討したのと同様の理由により、本願発明1は、引用発明1である、または引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明1であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。 また、本願の請求項1に係る発明は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-001067

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