特許拒絶査定不服審判
2024-000266
ビデオ符号化のための動きベクトル予測
- 審判番号
- 2024-000266
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-201577
- 請求日
- 2024年01月09日
- 審決日
- 2025年11月17日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ベイジン、ターチア、インターネット、インフォメーション、テクノロジー、カンパニー、リミテッド
- 【請求人代理人】宮嶋 学
- 【請求人代理人】関根 毅
- 【請求人代理人】三並 大悟
- 審判長/審判官
- 審判長 畑中 高行
- 審判官 宮下 誠
- 審判官 伊藤 隆夫
- 分類
- P18 .572-WZ (H04N) / P18 .121-WZ (H04N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-201577「ビデオ符号化のための動きベクトル予測」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 3月 7日出願公開、特開2023- 30061〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)6月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2019年6月13日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願である特願2021-572067号の一部を、令和4年12月16日に分割して新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和 4年12月21日 :手続補正書、上申書の提出
令和 5年 3月24日付け:拒絶理由通知(最初)
同年 6月28日 :意見書の提出
同年 9月 7日付け:拒絶査定
令和 6年 1月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 3月19日付け:前置報告書
同年 5月28日 :上申書の提出
令和 7年 2月28日付け:拒絶理由通知(当審・最初)
同年 6月 3日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月14日付け:拒絶理由通知(当審・最後)
同年10月14日 :意見書、手続補正書の提出
第2 令和7年10月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年10月14日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、令和7年6月3日にされた手続補正により補正された本件補正前の特許請求の範囲の請求項1から9を、本件補正により本件補正後の特許請求の範囲の請求項1から9に補正するものであって、本件補正前の請求項1を本件補正後の請求項1とする以下の補正を含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「【請求項1】
ビデオ符号化方法であって、
ビデオ信号から符号化ブロックを決定することと、
前記符号化ブロックに基づいて、複数の空間近隣ブロックを決定することであって、前記複数の空間近隣ブロックが、2つの左方空間近隣ブロックおよび3つの上方空間近隣ブロックを含むことと、
前記2つの左方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つのスケーリングされていない左方空間動きベクトル予測子(MVP)を決定することと、
前記3つの上方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPを決定することであって、前記最大1つのスケーリングされていない左方空間MVPと前記最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPを決定する処理において、動きベクトルを条件付きでスケーリングする動作は実行されないことと、
前記最大1つのスケーリングされていない左方空間MVPおよび前記最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPに基づいて、MVP候補リストを決定することと、
時間動きベクトル予測に使用される配列ピクチャが第1の参照ピクチャリストまたは第2の参照ピクチャリストのどちらから導出されているかを示す明示的なフラグをシグナリングすることと、
前記MVP候補リストの中で前記符号化ブロックの予測に使用されるMVPを示すインデックスをシグナリングすること、
を含む方法。」
(2) 本件補正後の請求項1
「【請求項1】
ビデオ符号化方法であって、
ビデオ信号から符号化ブロックを決定することと、
前記符号化ブロックに基づいて、複数の空間近隣ブロックを決定することであって、前記複数の空間近隣ブロックが、2つの左方空間近隣ブロックおよび3つの上方空間近隣ブロックを含むことと、
前記2つの左方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つのスケーリングされていない左方空間動きベクトル予測子(MVP)を決定することと、
前記3つの上方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPを決定することであって、前記最大1つのスケーリングされていない左方空間MVPと前記最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPを決定する処理において、前記複数の空間近隣ブロックのうちの1つの参照ピクチャのピクチャ順序カウント(POC)が前記符号化ブロックの参照ピクチャのPOCと同じであるかまたは異なるかにかかわらず、動きベクトルをスケーリングする動作は実行されないことと、
前記最大1つのスケーリングされていない左方空間MVPおよび前記最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPに基づいて、MVP候補リストを決定することと、
時間動きベクトル予測に使用される配列ピクチャが第1の参照ピクチャリストまたは第2の参照ピクチャリストのどちらから導出されているかを示す明示的なフラグをシグナリングすることと、
前記MVP候補リストの中で前記符号化ブロックの予測に使用されるMVPを示すインデックスをシグナリングすること、
を含む方法。」
2 本件補正の目的
(1)補正事項
本件補正による請求項1の補正は、以下の補正事項1からなる。
ア 補正事項1
「前記2つの左方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つのスケーリングされていない左方空間動きベクトル予測子(MVP)を決定することと、
前記3つの上方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPを決定することであって、前記最大1つのスケーリングされていない左方空間MVPと前記最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPを決定する処理において」、本件補正前に「動きベクトルを条件付きでスケーリングする動作は実行されないこと」とあったものを、本件補正後に「前記複数の空間近隣ブロックのうちの1つの参照ピクチャのピクチャ順序カウント(POC)が前記符号化ブロックの参照ピクチャのPOCと同じであるかまたは異なるかにかかわらず、動きベクトルをスケーリングする動作は実行されないこと」とする補正。
(2)補正の目的要件についての判断
ア 本件補正前は、「動きベクトルを条件付きでスケーリングする動作は実行されないこと」と記載されていたから、「動きベクトルを」「スケーリングする動作は実行されないこと」に、何らかの条件が付けられていたと解される。例えば、該何らかの条件に合致した場合にだけ、動きベクトルをスケーリングする動作は実行されないことが規定されていたと解される。
イ 本件補正後の「前記複数の空間近隣ブロックのうちの1つの参照ピクチャのピクチャ順序カウント(POC)が前記符号化ブロックの参照ピクチャのPOCと同じであるかまたは異なるかにかかわらず、動きベクトルをスケーリングする動作は実行されない」のピクチャ順序カウント(POC)はピクチャの出力順序を示す情報であるから、「前記複数の空間近隣ブロックのうちの1つの参照ピクチャのピクチャ順序カウント(POC)」と「前記符号化ブロックの参照ピクチャのPOC」との関係として取り得る関係は、同じかまたは異なるかだけといえる。
そうすると、本件補正後の「前記複数の空間近隣ブロックのうちの1つの参照ピクチャのピクチャ順序カウント(POC)が前記符号化ブロックの参照ピクチャのPOCと同じであるかまたは異なるかにかかわらず、動きベクトルをスケーリングする動作は実行されない」は、「前記複数の空間近隣ブロックのうちの1つの参照ピクチャのピクチャ順序カウント(POC)」と「前記符号化ブロックの参照ピクチャのPOC」を用いることによる条件なしに「動きベクトルをスケーリングする動作は実行されないこと」と解される。
また、当該「前記複数の空間近隣ブロックのうちの1つの参照ピクチャのピクチャ順序カウント(POC)が前記符号化ブロックの参照ピクチャのPOCと同じであるかまたは異なるかにかかわら」ないこと以外に、「動きベクトルをスケーリングする動作は実行されない」に係る条件は規定されていない。
したがって、本件補正後の「前記複数の空間近隣ブロックのうちの1つの参照ピクチャのピクチャ順序カウント(POC)が前記符号化ブロックの参照ピクチャのPOCと同じであるかまたは異なるかにかかわらず、動きベクトルをスケーリングする動作は実行されない」は、「動きベクトルを」何らの条件なしに(つまり、条件なしで)「スケーリングする動作は実行されない」ことを規定しているといえる。
ウ 上記ア~イのとおり、本件補正により、「前記2つの左方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つのスケーリングされていない左方空間動きベクトル予測子(MVP)を決定することと、
前記3つの上方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPを決定することであって、前記最大1つのスケーリングされていない左方空間MVPと前記最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPを決定する処理において」、「動きベクトルをスケーリングする動作は実行されないこと」について、本件補正前に何らかの条件が付いていたのが、本件補正後に該条件がないものとなった。
そうすると、本件補正により、「動きベクトルをスケーリングする動作は実行されないこと」の条件が実質的に削除されており、条件が減縮されたといえないから、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、いわゆる特許請求の範囲の限定的減縮には該当しない。
エ また、本件補正前の請求項1の記載は明瞭であり、また、令和7年7月14日付けの拒絶理由通知において明確性の拒絶理由は通知されていないから、補正事項1は、同項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものには該当しない。
オ さらに、補正事項1が、「請求項の削除」(同項第1号)又は「誤記の訂正」(同項第3号)のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
カ なお、補正事項1について、請求人は令和7年10月14日に提出された意見書の「2.補正の内容について」で、本件補正は、技術的範囲を減縮するものである旨主張している。
しかしながら、上記ア~ウのとおり、補正事項1は、特許請求の範囲の限定的減縮には該当しない。
キ したがって、補正事項1は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものにも該当しない。
(3)補正の目的要件についての判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するもの(目的要件違反)であるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定される次のとおりのものである。符号A~Iは当審が付与した(以下、「構成A」などという。)。
「A ビデオ符号化方法であって、
B ビデオ信号から符号化ブロックを決定することと、
C 前記符号化ブロックに基づいて、複数の空間近隣ブロックを決定することであって、前記複数の空間近隣ブロックが、2つの左方空間近隣ブロックおよび3つの上方空間近隣ブロックを含むことと、
D 前記2つの左方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つのスケーリングされていない左方空間動きベクトル予測子(MVP)を決定することと、
E 前記3つの上方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPを決定することであって、前記最大1つのスケーリングされていない左方空間MVPと前記最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPを決定する処理において、動きベクトルを条件付きでスケーリングする動作は実行されないことと、
F 前記最大1つのスケーリングされていない左方空間MVPおよび前記最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPに基づいて、MVP候補リストを決定することと、
G 時間動きベクトル予測に使用される配列ピクチャが第1の参照ピクチャリストまたは第2の参照ピクチャリストのどちらから導出されているかを示す明示的なフラグをシグナリングすることと、
H 前記MVP候補リストの中で前記符号化ブロックの予測に使用されるMVPを示すインデックスをシグナリングすること、
I を含む方法。」
2 当審の拒絶理由通知における拒絶の理由の概要
当審の拒絶理由通知における本願発明に対する拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
理由1.(進歩性)本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.C.Rosewarne et al.,High Efficiency Video Coding(HEVC) Test Model 16(HM 16)Improved Encoder Description Update 8, Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 27th Meeting: Hobart,AU,31 March - 7 April 2017, [JCTVC-AA1002],ITU-T,2017年04月07日,<URL: https://mpeg.expert/jct/files/JCTVC-AA1002-v1.zip>: JCTVC-AA1002.docx: pp.1-2,16-21(新たに引用する文献)
引用文献2.SERIES H: AUDIOVISUAL AND MULTIMEDIA SYSTEMS Infrastructure of audiovisual services - Coding of moving video,Recommendation ITU-T H.265 (04/2013) High efficiency video coding,ITU-T,2013年06月07日,pp.79,124-125,<URL:https://www.itu.int/rec/dologin_pub.asp?lang=e&id=T-REC-H.265-201304-S!!PDF-E&type=items>(前置報告の引用文献2;周知技術を示す文献)
引用文献3.大久保、鈴木、高村、中條、インプレス標準教科書シリーズ H.265/HEVC教科書、株式会社インプレスジャパン、2013年10月21日発行、pp.136-137(新たに引用する文献;周知技術を示す文献)
3 引用発明
引用文献1には、以下の記載がある。
(1)「1 Introduction
This document provides an overview of the coding tools defined in HEVC Version 1 and the Range Extension (RExt) of HEVC Version 2, both of which are implemented in the HEVC test model (HM) software. In addition, some of the algorithms that the HM encoder uses to control these tools and user-controlled configuration options are also described.
1.1 Overview of coding structures
HEVC has a block-based hybrid coding architecture, combining inter and intra prediction and transform coding with high efficiency entropy coding. However, in contrast to previous video coding standards, HEVC employs a quadtree coding block partitioning structure that enables a flexible use of large and small coding, prediction, and transform blocks. HEVC also allows for improved intra prediction and coding, adaptive motion parameter prediction and coding, a new loop filter and an enhanced version of context-adaptive binary arithmetic coding (CABAC) entropy coding over that defined by previous standards. New high-level structures have also been designed to aid parallel processing.
Figure 1-1 shows a (simplified) general block diagram of the HM encoder.
[図:0001434541000001.jpg]
The picture partitioning structure, which is further described in Section 4.2, divides the input video into blocks called coding tree units (CTUs). These CTUs have a role that is broadly analogous to that of macroblocks in previous standards. A CTU is split using a quadtree into coding units (CUs), with a leaf coding unit (CU) defining a region sharing the same prediction mode (intra, inter or skip). The leaf CU also defines the shape of prediction units (PUs) present, with each PU detailing the prediction information to be used for the respective picture region. Leaf CUs also define another quadtree that defines the residual-quadtree (RQT) containing transform units (TUs), which define a region sharing the same transformation and quantization process. The term 'unit' defines a region of an image covering all components; the term 'block' is used to define a region covering a particular component (e.g. luma), and may differ in spatial location when considering chroma sub-sampling such as 4:2:0.
・・・
The inter picture prediction processes, which are further described in Section 4.4, select the motion parameters, which includes the option of a skip mode, a merge mode, with motion vectors being coded relative to predictors and able to describe offsets with 1/4 pixel accuracy.」(1頁下から12行目~2頁9行目、2頁14行目~2頁16行目)
(当審仮訳:
1 はじめに
この文書では、HEVC バージョン1で定義されているコーディングツールと、HEVC バージョン2のRange Extension(RExt)の概要を説明します。これらはいずれもHEVCテストモデル(HM)ソフトウェアに実装されています。さらに、HMエンコーダがこれらのツールを制御するために使用するアルゴリズムの一部と、ユーザー制御の設定オプションについても説明します。
1.1 コーディング構造の概要
HEVCは、インターおよびイントラ予測と変換符号化を高効率エントロピー符号化と組み合わせた、ブロックベースのハイブリッド符号化アーキテクチャを採用しています。しかし、従来のビデオ符号化規格とは異なり、HEVCは4分木符号化ブロック分割構造を採用しており、これにより、大小さまざまな符号化、予測、変換ブロックを柔軟に使用できます。また、HEVCでは、改良されたイントラ予測と符号化、適応型動きパラメータ予測と符号化、新しいループフィルタ、そして従来の規格で定義されたものよりも強化されたコンテキスト適応型2値算術符号化(CABAC)エントロピー符号化も可能になっています。さらに、並列処理を支援するための新しい高レベル構造も設計されています。
図1-1は、HMエンコーダの(簡略化された)一般的なブロック図を示しています。
セクション4.2でさらに説明するピクチャ分割構造は、入力ビデオをコーディングツリーユニット(CTU)と呼ばれるブロックに分割します。これらのCTUの役割は、以前の標準規格におけるマクロブロックの役割とほぼ同様です。CTUはクアッドツリーを用いてコーディングユニット(CU)に分割され、リーフコーディングユニット(CU)は同じ予測モード(イントラ、インター、またはスキップ)を共有する領域を定義します。リーフCUは、存在する予測ユニット(PU)の形状も定義し、各PUはそれぞれのピクチャ領域に使用される予測情報を詳細に示します。リーフCUは、同じ変換および量子化プロセスを共有する領域を定義する変換ユニット(TU)を含む残差クアッドツリー(RQT)を定義する別のクアッドツリーも定義します。「ユニット」という用語は、すべてのコンポーネントをカバーする画像領域を定義します。 「ブロック」という用語は、特定のコンポーネント(例:輝度)をカバーする領域を定義するために使用され、4:2:0などの彩度サブサンプリングを考慮すると空間的な位置が異なる場合があります。
・・・
セクション 4.4 でさらに説明されているピクチャ間予測プロセスでは、スキップ モード、マージ モードのオプションを含む動きパラメータが選択され、動きベクトルは予測子に対して符号化され、1/4 ピクセルの精度でオフセットを記述できます。)
(2)「4.4.1.2 Spatial candidates derivation
In the derivation of spatial merge candidates, a maximum of four merge candidates are selected among candidates located in the positions depicted in Figure 4-13. The order of derivation is A1, B1, B0, A0 and B2. Position B2 is considered only when any PU of position A1, B1, B0, A0 is not available (e.g. because it belongs to another slice or tile) or is intra coded. After candidate at position A1 is added, the addition of the remaining candidates is subject to a redundancy check which ensures that candidates with same motion information are excluded from the list so that coding efficiency is improved. To reduce computational complexity, not all possible candidate pairs are considered in the mentioned redundancy check. Instead only the pairs linked with an arrow in Figure 4-14 are considered and a candidate is only added to the list if the corresponding candidate used for redundancy check has not the same motion information. Another source of duplicate motion information is the "second PU" associated with partitions different from 2N×2N. As an example, Figure 4-15 depicts the second PU for the case of N×2N and 2N×N, respectively. When the current PU is partitioned as N×2N, candidate at position A1 is not considered for list construction. In fact, by adding this candidate will lead to two prediction units having the same motion information, which is redundant to just have one PU in a coding unit. Similarly, position B1 is not considered when the current PU is partitioned as 2N×N.
[図:0001434541000002.jpg]
[図:0001434541000003.jpg]
・・・
4.4.1.3 Temporal candidates derivation
In this step, only one candidate is added to the list. Particularly, in the derivation of this temporal merge candidate, a scaled motion vector is derived based on co-located PU belonging to the picture which has the smallest POC difference with current picture within the given reference picture list. The reference picture list to be used for derivation of the co-located PU is explicitly signalled in the slice header. The scaled motion vector for temporal merge candidate is obtained as illustrated by the dotted line in Figure 4-16, which is scaled from the motion vector of the co-located PU using the POC distances, tb and td, where tb is defined to be the POC difference between the reference picture of the current picture and the current picture and td is defined to be the POC difference between the reference picture of the co-located picture and the co-located picture. The reference picture index of temporal merge candidate is set equal to zero. A practical realization of the scaling process is described in the HEVC specification [2]. For a B-slice, two motion vectors, one is for reference picture list 0 and the other is for reference picture list 1, are obtained and combined to make the bi-predictive merge candidate.
[図:0001434541000004.jpg]
」(17頁下から14行目~19頁2行目)
(当審仮訳:
4.4.1.2 空間候補の導出
空間マージ候補の導出では、図4-13に示す位置にある候補の中から最大4つのマージ候補が選択されます。導出順序はA1、B1、B0、A0、B2です。位置B2は、位置A1、B1、B0、A0のいずれかのPUが利用できない(例えば、別のスライスまたはタイルに属している)場合、またはイントラ符号化されている場合にのみ考慮されます。位置A1の候補が追加された後、残りの候補の追加は冗長性チェックの対象となり、同じ動き情報を持つ候補はリストから除外されるため、符号化効率が向上します。計算量を削減するため、前述の冗長性チェックではすべての候補ペアが考慮されるわけではありません。代わりに、図4-14の矢印で結ばれたペアのみが考慮され、冗長性チェックに使用された対応する候補が同じ動き情報を持たない場合にのみ、候補がリストに追加されます。動き情報の重複のもう1つの発生源は、2N×2Nとは異なるパーティションに関連付けられた「2番目のPU」です。例として、図4-15は、それぞれN×2Nおよび2N×Nの場合の2番目のPUを示しています。現在のPUがN×2Nに分割されている場合、位置A1の候補はリスト構築に考慮されません。実際、この候補を追加すると、同じ動き情報を持つ2つの予測ユニットが生成され、符号化ユニットに1つのPUしかない場合よりも冗長になります。同様に、現在のPUが2N×Nに分割されている場合、位置B1は考慮されません。
図4-13. 空間マージ候補の位置。
図4-14. 空間マージ候補の冗長性チェックで考慮される候補ペア。
・・・
4.4.1.3 時間的候補の導出
このステップでは、1つの候補のみがリストに追加されます。特に、この時間的マージ候補の導出では、指定された参照ピクチャリスト内で現在のピクチャとのPOC差が最小となるピクチャに属する、同じ場所にあるPUに基づいて、スケーリングされた動きベクトルが導出されます。同じ場所にあるPUの導出に使用される参照ピクチャリストは、スライスヘッダーで明示的に示されます。時間マージ候補のスケーリングされた動きベクトルは、図4-16の点線で示されるように、同一位置PUの動きベクトルからPOC距離tbとtdを用いてスケーリングされます。ここで、tbは現在のピクチャの参照ピクチャと現在のピクチャとのPOC差、tdは同一位置ピクチャの参照ピクチャと同一位置ピクチャとのPOC差と定義されます。時間マージ候補の参照ピクチャインデックスは0に設定されます。スケーリング処理の実際的な実現方法は、HEVC仕様[2]に記載されています。Bスライスの場合、参照ピクチャリスト0と参照ピクチャリスト1の2つの動きベクトルが取得され、それらを組み合わせて双予測マージ候補を作成します。)
(3)「4.4.2 Motion vector prediction
Motion vector prediction exploits spatio-temporal correlation of motion vector with neighbouring PUs, which is used for explicit transmission of motion parameters. It constructs a motion vector candidate list by firstly checking availability of left, above temporally neighbouring PU positions, removing redundant candidates and adding zero vector to make the candidate list to be constant length. Then, the encoder can select the best predictor from the candidate list and transmit the corresponding index indicating the chosen candidate. Similarly with merge index signalling, the index of the best motion vector candidate is encoded using truncated unary. The maximum value to be encoded in this case is 2 (see Figure 4-19). In the following sections, details about derivation process of motion vector prediction candidate are provided.
4.4.2.1 Derivation of motion vector prediction candidates
Figure 4-19 summarizes derivation process for motion vector prediction candidate.
[図:0001434541000005.jpg]
Figure 4-19. Derivation process for motion vector prediction candidates.
In motion vector prediction, two types of motion vector candidates are considered: spatial motion vector candidate and temporal motion vector candidate. For spatial motion vector candidate derivation, two motion vector candidates are eventually derived based on motion vectors of each PU located in five different positions as depicted in Figure 4-13.
For temporal motion vector candidate derivation, one motion vector candidate is selected from two candidates, which are derived based on two different co-located positions. After the first list of spatio-temporal candidates is made, duplicated motion vector candidates in the list are removed. If the number of potential candidates is larger than two, motion vector candidates whose reference picture index within the associated reference picture list is larger than 1 are removed from the list. If the number of spatio-temporal motion vector candidates is smaller than two, additional zero motion vector candidates is added to the list.
4.4.2.2 Spatial motion vector candidates
In the derivation of spatial motion vector candidates, a maximum of two candidates are considered among five potential candidates, which are derived from PUs located in positions as depicted in Figure 4-13, those positions being the same as those of motion merge. The order of derivation for the left side of the current PU is defined as A0, A1,and scaled A0,scaled A1. The order of derivation for the above side of the current PU is defined as B0, B1, B2, scaled B0, scaled B1, scaled B2. For each side there are therefore four cases that can be used as motion vector candidate, with two cases not required to use spatial scaling, and two cases where spatial scaling is used. The four different cases are summarized as follows.
・No spatial scaling
‐(1) Same reference picture list, and same reference picture index (same POC)
‐(2) Different reference picture list, but same reference picture (same POC)
・Spatial scaling
‐(3) Same reference picture list, but different reference picture (different POC)
‐(4) Different reference picture list, and different reference picture (different POC)
The no-spatial-scaling cases are checked first followed by the spatial scaling. Spatial scaling is considered when the POC is different between the reference picture of the neighbouring PU and that of the current PU regardless of reference picture list. If all PUs of left candidates are not available or are intra coded, scaling for the above motion vector is allowed to help parallel derivation of left and above MV candidates. Otherwise, spatial scaling is not allowed for the above motion vector.
[図:0001434541000006.jpg]
Figure 4-20. Illustration of motion vector scaling for spatial motion vector candidate.
In a spatial scaling process, the motion vector of the neighbouring PU is scaled in a similar manner as for temporal scaling, as depicted as Figure 4-20. The main difference is that the reference picture list and index of current PU is given as input; the actual scaling process is the same as that of temporal scaling.
4.4.2.3 Temporal motion vector candidates
Apart for the reference picture index derivation, all processes for the derivation of temporal merge candidates are the same as for the derivation of spatial motion vector candidates (see Figure 4-17). The reference picture index is signalled to the decoder.
」(20頁11行目~21頁下から6行目)
(当審仮訳:
4.4.2 動きベクトル予測
動きベクトル予測は、隣接するPUとの動きベクトルの時空間相関を利用し、動きパラメータの明示的な伝送に利用します。動きベクトル予測では、まず左、その上の時間的に隣接するPUの位置が利用可能かどうかを確認し、冗長な候補を削除し、ゼロベクトルを追加して候補リストの長さを一定にすることで、動きベクトル候補リストを構築します。次に、エンコーダは候補リストから最適な予測子を選択し、選択された候補を示す対応するインデックスを送信します。マージインデックスシグナリングと同様に、最良の動きベクトル候補は、切り捨て単項符号化を用いて符号化されます。この場合、符号化される最大値は2です(図4-19を参照)。以下のセクションでは、動きベクトル予測候補の導出プロセスの詳細について説明します。
4.4.2.1 動きベクトル予測候補の導出
図4-19は、動きベクトル予測候補の導出プロセスをまとめたものです。
図4-19. 動きベクトル予測候補の導出プロセス
動きベクトル予測では、空間動きベクトル候補と時間動きベクトル候補の2種類の動きベクトル候補が考慮されます。空間動きベクトル候補の導出では、図4-13に示すように、5つの異なる位置にある各PUの動きベクトルに基づいて、最終的に2つの動きベクトル候補が導出されます。
時間動きベクトル候補の導出では、2つの異なる共存位置に基づいて導出された2つの候補から1つの動きベクトル候補が選択されます。最初の時空間候補リストが作成された後、リスト内の重複した動きベクトル候補は削除されます。候補となる可能性のある動きベクトルの数が2つより多い場合、関連する参照画像リスト内の参照画像インデックスが1より大きい動きベクトル候補はリストから削除されます。時空間動きベクトル候補の数が2つより少ない場合、ゼロ動きベクトル候補がリストに追加されます。
4.4.2.2 空間動きベクトル候補
空間動きベクトル候補の導出では、図4-13に示す位置にあるPU(モーションマージの位置と同じ位置)から導出された5つの候補の中から最大2つの候補が考慮されます。現在のPUの左側の導出順序は、A0、A1、スケーリングされたA0、スケーリングされたA1と定義されます。現在のPUの上部の導出順序は、B0、B1、B2、スケーリングされたB0、スケーリングされたB1、スケーリングされたB2と定義されます。したがって、各側において、動きベクトル候補として使用できるケースは4つあり、空間スケーリングを必要としないケースが2つ、空間スケーリングを使用するケースが2つあります。4つの異なるケースは以下のようにまとめられます。
・空間スケーリングなし
-(1) 参照画像リストと参照画像インデックスが同じ(POCが同じ)
-(2) 参照画像リストが異なるが、参照画像は同じ(POCが同じ)
・空間スケーリングあり
-(3) 参照画像リストは同じだが、参照画像が異なる(POCが異なる)
-(4) 参照画像リストと参照画像が異なる(POCが異なる)
空間スケーリングなしのケースが最初にチェックされ、次に空間スケーリングがチェックされます。空間スケーリングは、参照画像リストに関係なく、隣接PUの参照画像と現在のPUの参照画像間でPOCが異なる場合に考慮されます。左側の候補PUがすべて利用できない、またはイントラ符号化されている場合、左側と上部のMV候補の並列導出を支援するために、上部の動きベクトルのスケーリングが許可されます。それ以外の場合、上記の動きベクトルに対して空間スケーリングは許可されません。
図4-20. 空間動きベクトル候補の動きベクトルスケーリングの図解。
空間スケーリング処理では、図4-20に示すように、隣接PUの動きベクトルが時間スケーリングと同様の方法でスケーリングされます。主な違いは、現在のPUの参照ピクチャリストとインデックスが入力として与えられることです。実際のスケーリング処理は時間スケーリングと同じです。
4.4.2.3 時間的動きベクトル候補
参照ピクチャインデックスの導出を除き、時間的マージ候補の導出プロセスはすべて、空間的動きベクトル候補の導出プロセスと同様です(図4-17参照)。参照ピクチャインデックスはデコーダに通知されます。)
(4)上記(1)の摘記事項によれば、HEVCは、インターおよびイントラ予測と変換符号化を高効率エントロピー符号化と組み合わせた、ブロックベースのハイブリッド符号化アーキテクチャを採用しているところ、ピクチャ分割構造は、入力ビデオをコーディングツリーユニット(CTU)と呼ばれるブロックに分割することが記載され、図1-1の左上には入力ビデオが記載されているから、図1-1に示されるHMエンコーダは、ビデオ符号化方法を行うものであるといえる。
(5)上記(1)の摘記事項によれば、ピクチャ分割構造は、入力ビデオをコーディングツリーユニット(CTU)と呼ばれるブロックに分割され、該CTUはクアッドツリーを用いてコーディングユニット(CU)に分割され、リーフコーディングユニット(CU)は同じ予測モード(イントラ、インター、またはスキップ)を共有する領域を定義するものであるから、入力ビデオからコーディングユニット(CU)と呼ばれる領域を決定しているといえる。
(6)上記(2)の摘記事項によれば、空間マージ候補の導出では、図4-13に示す位置にある候補の中から最大4つのマージ候補が選択され、導出順序はA1、B1、B0、A0、B2であるところ、位置B2は、位置A1、B1、B0、A0のいずれかのPUが利用できない(例えば、別のスライスまたはタイルに属している)場合、またはイントラ符号化されている場合にのみ考慮され、上記(1)の摘記事項によれば、該PU は予測ユニットである。
このことから、該A1、B1、B0、A0、B2自体は5つあって、図4-13からみて、位置A1、A0の予測ユニットは、左方にあるから左方の予測ユニットといえ、位置B1、B0、B2の予測ユニットは上方にあるから上方の予測ユニットといえる。
ここで、位置A1、B1、B0、A0、B2の予測ユニットは図4-13における中央の領域を囲む位置にあるところ、上記(1)の摘記事項によれば、該中央の領域は入力ビデオを分割したコーディングユニット(CU)に当たる。
以上のことから、引用文献1に記載のビデオ符号化方法は、コーディングユニット(CU)と呼ばれる領域に基づいて、5つの予測ユニットを決定することであって、前記5つの予測ユニットは、2つの左方の予測ユニットA1、A0および3つの上方の予測ユニットB1、B0、B2を含む、方法といえる。
(7)上記(3)の摘記事項によれば、空間動きベクトル候補の導出では、図4-13に示すように、5つの異なる位置にある各予測ユニットの動きベクトルに基づいて、最終的に2つの動きベクトル候補が導出している。
上記(3)の摘記事項によれば、(1)参照画像リストと参照画像インデックスが同じ(POCが同じ)、又は、(2)参照画像リストが異なるが、参照画像は同じ(POCが同じ)場合は、空間スケーリングをしないところ、該空間スケーリングの対象となる動きベクトル候補は、2つの左方の予測ユニットA1、A0および3つの上方の予測ユニットB1、B0、B2の5つの予測ユニットに対応する動きベクトル候補であるから、該5つの予測ユニット各々について、「参照画像リストと参照画像インデックスが同じ(POCが同じ)、又は、参照画像リストが異なるが、参照画像は同じ(POCが同じ)」との条件に合致する予測ユニットの動きベクトル候補は、スケーリングする動作が実行されないといえる。
したがって、引用文献1記載の符号化方法は、2つの左方の予測ユニットA1、A0および3つの上方の予測ユニットB1、B0、B2の5つの予測ユニットの異なる位置にある各予測ユニットの動きベクトルに基づいて、最終的に2つの動きベクトル候補を導出することであって、参照画像リストと参照画像インデックスが同じ(POCが同じ)、又は、参照画像リストが異なるが、参照画像は同じ(POCが同じ)との条件に合致する予測ユニットの動きベクトル候補は、スケーリングする動作が実行されないといえる。
(8)上記(2)の摘記事項によれば、冗長性チェックに使用された対応する候補が同じ動き情報を持たない場合にのみ、候補が「リスト」に追加されるところ、当該候補は、2つの左方の予測ユニットA1、A0と、3つの上方の予測ユニットB1、B0、B2の位置にある動きベクトル候補である。
そして、上記(7)のとおり、2つの左方の予測ユニットA1、A0と3つの上方の予測ユニットB1、B0、B2に基づいて、2つのスケーリングされていない動きベクトル候補を決定するから、該2つのスケーリングされていない動きベクトル候補はリストに候補として追加されるといえる。
(9)上記(2)の摘記事項によれば、Bスライスの場合、参照ピクチャリスト0と参照ピクチャリスト1の2つの動きベクトルが取得され、それらを組み合わせて双予測マージ候補を作成するところ、1つの候補のみがリストに追加されるから、Bスライスの場合、参照ピクチャリスト0と参照ピクチャリスト1のどちらかの動きベクトルがリストに含まれるといえる。
さらに、上記(2)の摘記事項によれば、予測ユニットの導出に使用される参照ピクチャリストはスライスヘッダーで明示的に示され、上記(3)の摘記事項によれば、参照ピクチャインデックスは通知されることからみて、スライスヘッダーに、予測ユニットの導出に使用される参照ピクチャリストの参照ピクチャインデックスをシグナリングしているといえる。
したがって、引用文献1記載の時間的動きベクトル候補の導出において、予測ユニットの導出に使用される参照ピクチャリストが、参照ピクチャリスト0か参照ピクチャリスト1であるかを示す参照ピクチャインデックスをシグナリングしている。
(10)上記(3)の摘記事項と図4-19によれば、符号化される動きベクトル候補の最大値は2であるから、動きベクトル予測候補の導出プロセスにおける最後のステップは、2つの動きベクトル候補を決定しているといえる。
(11)上記(1)~(10)によれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
(引用発明)
「ビデオ符号化方法であって、
入力ビデオからコーディングユニット(CU)と呼ばれる領域を決定しており、
コーディングユニット(CU)と呼ばれる領域に基づいて、5つの予測ユニットを決定することであって、前記5つの予測ユニットは、2つの左方の予測ユニットA1、A0および3つの上方の予測ユニットB1、B0、B2を含み、
2つの左方の予測ユニットA1、A0および3つの上方の予測ユニットB1、B0、B2の5つの予測ユニットの異なる位置にある各予測ユニットの動きベクトルに基づいて、最終的に2つの動きベクトル候補を導出することであって、参照画像リストと参照画像インデックスが同じ(POCが同じ)、又は、参照画像リストが異なるが、参照画像は同じ(POCが同じ)との条件に合致する予測ユニットの動きベクトル候補は、スケーリングする動作が実行されず、
該2つのスケーリングされていない動きベクトル候補はリストに候補として追加され、
時間的動きベクトル候補の導出において、予測ユニットの導出に使用される参照ピクチャリストが、参照ピクチャリスト0か参照ピクチャリスト1であるかを示す参照ピクチャインデックスをシグナリングし、
2つの動きベクトル候補を決定する、
ビデオ符号化方法。」
4 対比
以下、本願発明と引用発明を対比する。
(1)構成A並びに構成B及び構成Iについて
引用発明の「入力ビデオ」が、信号として入力されることは自明であるから、当該「入力ビデオ」は本願発明の「ビデオ信号」に相当する。
また、引用発明の「コーディングユニット(CU)」は、符号化ユニットを意味するから、引用発明の「コーディングユニット(CU)と呼ばれる領域」は、本願発明の「符号化ブロック」に相当する。
そうすると、引用発明の「入力ビデオからコーディングユニット(CU)と呼ばれる領域を決定」することは、本願発明の「ビデオ信号から符号化ブロックを決定すること」に相当する。
(2)構成Cについて
引用発明の「2つの左方の予測ユニットA1、A0」、「3つの上方の予測ユニットB1、B0、B2」は、本願発明の「2つの左方空間隣接ブロック」、「3つの上方空間隣接ブロック」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用発明における「2つの左方の予測ユニットA1、A0」及び「3つの上方の予測ユニットB1、B0、B2」を含む「5つの予測ユニット」は、本願発明の「複数の空間隣接ブロック」に相当する。
したがって、引用発明の「コーディングユニット(CU)と呼ばれる領域に基づいて、5つの予測ユニットを決定することであって、前記5つの予測ユニットは、2つの左方の予測ユニットA1、A0および3つの上方の予測ユニットB1、B0、B2を含」むことは、本願発明の「前記符号化ブロックに基づいて、複数の空間近隣ブロックを決定することであって、前記複数の空間近隣ブロックが、2つの左方空間近隣ブロックおよび3つの上方空間近隣ブロックを含むこと」に相当する。
(3)構成D及び構成Eについて
引用発明の「動きベクトル候補」は、空間隣接ブロックに基づいて決定するものである符号化ブロックの予測に使用されるものであるから、本願発明の「動きベクトル予測子(MVP)」及び「空間MVP」に相当する。
また、引用発明は、「参照画像リストと参照画像インデックスが同じ(POCが同じ)、又は、参照画像リストが異なるが、参照画像は同じ(POCが同じ)との条件に合致する予測ユニットは、スケーリングする動作が実行されない」から、「参照画像リストと参照画像インデックスが同じ(POCが同じ)、又は、参照画像リストが異なるが、参照画像は同じ(POCが同じ)との条件」付きでスケーリングする動作は実行されていないといえる。
ここで、本願発明は、「前記2つの左方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つのスケーリングされていない左方空間動きベクトル予測子(MVP)を決定すること」と「前記3つの上方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つのスケーリングされていない上方空間MVPを決定する」のに対し、引用発明は、「2つの左方の予測ユニットA1、A0および3つの上方の予測ユニットB1、B0、B2の5つの予測ユニットの異なる位置にある各予測ユニットの動きベクトルに基づいて、最終的に2つの動きベクトル候補を導出する」から、「2つの左方空間隣接ブロック」及び「3つの上方空間隣接ブロック」を含む5つの空間隣接ブロックに基づいて、2つのスケーリングされていない空間MVPを決定している点で共通している。
そうすると、本願発明と引用発明は、「2つの左方空間隣接ブロック」と「3つの上方空間隣接ブロック」の5つの空間隣接ブロックに基づいて、2つのスケーリングされていない空間MVPを決定する処理において、動きベクトルを条件付きでスケーリングする動作は実行されないことを含む点で共通している。
(4)構成Fについて
引用発明は「該2つのスケーリングされていない動きベクトル候補はリストに候補として追加され」るところ、上記(3)によれば、「動きベクトル候補」は、本願発明の「動きベクトル予測子(MVP)」であって、符号化方法において最終的に選択される2つの動きベクトル候補になる候補であるから、引用発明のリストは、本願発明の「MVP候補リスト」に対応する。
そうすると、引用発明と本願発明は、2つのスケーリングされていない空間MVPに基づいて、MVP候補リストを決定する点で共通している。
(5)構成Gについて
引用発明の「参照ピクチャリスト0」及び「参照ピクチャリスト1」は、それぞれ、本願発明の構成Gの「第1の参照ピクチャリスト」及び「第2の参照ピクチャリスト」に相当する。
また、引用発明の「参照ピクチャインデックス」は「参照ピクチャリスト0か参照ピクチャリスト1であるかを示す」ものであるから、本願発明の構成Gの「フラグ」に相当するといえる。
(6)構成Hについて
引用発明は「2つの動きベクトル候補を決定する」ところ、該「2つの動きベクトル候補」はMVP候補リストの中から最終的に決定された動きベクトル候補であるから、引用発明は本願発明と、MVP候補リストの中で符号化ブロックの予測に使用されるものを決定する点で共通している。
以上によれば、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点)
A ビデオ符号化方法であって、
B ビデオ信号から符号化ブロックを決定することと、
C 前記符号化ブロックに基づいて、複数の空間近隣ブロックを決定することであって、前記複数の空間近隣ブロックが、2つの左方空間近隣ブロックおよび3つの上方空間近隣ブロックを含むことと、
D′、E′前記2つの左方空間隣接ブロックと前記3つの上方空間隣接ブロックの5つの空間隣接ブロックに基づいて、2つのスケーリングされていない空間MVPを決定する処理において、動きベクトルを条件付きでスケーリングする動作は実行されないことと、
F′前記2つのスケーリングされていない空間MVPに基づいて、MVP候補リストを決定することと、
G 時間動きベクトル予測に使用される配列ピクチャが第1の参照ピクチャリストまたは第2の参照ピクチャリストのどちらから導出されているかを示す明示的なフラグをシグナリングすることと、
H′MVP候補リストの中で前記符号化ブロックの予測に使用されるMVPを決定することと、
I を含む方法。」
(相違点)
相違点1:構成D′、構成E′、構成F′に関し、本願発明は、「前記2つの左方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つの」「左方空間動きベクトル予測子(MVP)を決定することと、」「前記3つの上方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つの」「上方空間MVPを決定する」のに対し、引用発明は、「2つの左方空間近隣ブロックA1、A0と3つの上方空間近隣ブロックB1、B0、B2に基づいて、2つの空間MVPを決定する」点。
相違点2:構成H′に関し、本願発明は「前記MVP候補リストの中で前記符号化ブロックの予測に使用されるMVPを示すインデックスをシグナリングする」のに対し、引用発明は「前記MVP候補リストの中で前記符号化ブロックの予測に使用されるMVPを決定するものの、インデックスをシグナリングするか否か不明な点。
5 判断
以下、当該相違点について検討する。
(1)相違点1について
HEVC規格において、引用文献2の「8.5.3.2.6 Derivation process for motion vector predictor candidates」(当審仮訳:8.5.3.2.6 動きベクトル予測候補の導出プロセス)の欄に
「Outputs of this process are (with N being replaced by A or B):
- the motion vectors mvLXN of the neighbouring prediction units,
・・・
[図:0001434541000007.jpg]
」(124頁下から13行目、同下から3行目~同下から2行目、125頁の上段図)
(当審仮訳:
このプロセスの出力は以下のとおりです(NはAまたはBに置き換えられます)。
- 隣接する予測ユニットの動きベクトルmvLXN、
・・・
図8-3 空間動きベクトル隣接(参考))
と記載されている。
ここで、「NはAまたはBに置き換えられます」と記載されており、隣接する予測ユニットの動きベクトルmvLXNが出力されると記載されているから、隣接する予測ユニットの動きベクトルmvLXAと隣接する予測ユニットの動きベクトルmvLXBの2つの動きベクトルが出力されるところ、図8-3の記載からみて、当該Aは、左方空間隣接ブロックA1、A0、当該Bは上方空間隣接ブロックB1、B0、B2のことであるから、2つの左方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つの左方空間動きベクトル予測子(MVP)を決定し、3つの上方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つの上方空間MVPを決定しているといえる。
さらに、HEVC規格において、引用文献3には、「空間予測動きベクトル候補は、図5-24のように符号化対象のPUの左下側に隣接するブロック群(A0、A1)と、上側に隣接するブロック群(B0、B1、B2)からそれぞれ導出します。」(136頁下から5行目~同下から4行目)と記載されている。
そうすると、上記引用文献2及び引用文献3に開示されているとおり、HEVC規格において、「2つの左方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つの」「左方空間動きベクトル予測子(MVP)を決定すること」及び「前記3つの上方空間近隣ブロックに基づいて、最大1つの」「上方空間MVPを決定する」ことは周知技術と認める。
引用発明はHEVC規格における符号化方法であるから、上記周知技術を採用することで上記相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることと認める。
(2)相違点2について
引用発明における「2つの動きベクトル候補」は、当該符号化方法の後段に行われる処理における予測に使用されるものであるから、該「2つの動きベクトル候補」を該後段の処理へ伝達することは必須であるから、引用発明において相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことと認める。
(3)小括
したがって、本願発明は、引用発明と、引用文献2又は引用文献3に開示された周知技術から、当業者であれば容易になし得るものと認める。
6 請求人の主張について
(1)令和7年10月17日に提出された意見書には、本件補正後の発明に係る主張が記載されているが、本件補正は上記第2のとおり却下されたところ、本件補正前の発明である、本願発明が、引用発明と引用文献2又は引用文献3に開示された周知技術から当業者であれば容易になし得るものと認められることに対する主張はなかった。
また、令和7年6月3日に提出された意見書にも、本願発明が、引用発明と引用文献2又は引用文献3に開示された周知技術から当業者であれば容易になし得るものと認められることに対する主張はなかった。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-000266