特許異議申立
2023-701268
離型フィルム付き粘着シートおよびその製造方法
- 審判番号
- 2023-701268
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-240341
- 登録番号
- 7285641
- 請求日
- 2023年12月01日
- 審決日
- 2025年05月20日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日東電工株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人はるか国際特許事務所
- 【権利者代理人】新宅 将人
- 【権利者代理人】吉本 力
- 【異議申立人】佐々木 香織
- 審判長/審判官
- 審判長 村守 宏文
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 関根 裕
- 分類
- P1651.121-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第2項第3号、特許法第126条第7項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7285641号発明「離型フィルム付き粘着シートおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7285641号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~7〕について」)訂正することを認める。
特許第7285641号の請求項1、3~5、7に係る特許を維持する。
特許第7285641号の請求項2、6に対する特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7285641号(以下「本件特許」ともいう。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年12月21日の出願であって、令和5年5月25日にその特許権の設定登録がされ、同年6月2日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後の特許異議の申立ての手続の経緯は、次のとおりである。
令和5年12月 1日 特許異議申立人 佐々木 香織(以下「申立
人」という。)による全請求項に係る特許に
対する特許異議の申立て
令和6年 4月 4日付け 取消理由通知書
同年 6月 6日 意見書(特許権者)
同年10月23日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年12月25日 意見書及び訂正請求書(特許権者)
令和7年 1月22日付け 訂正請求があった旨の通知書
なお、令和7年1月22日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年12月25日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、次の訂正事項1~7からなるものである。下線は、訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備える離型フィルム付き粘着シートであって、
前記第一離型フィルムは、フィルム基材上に離型層を備え、
前記離型層と前記粘着シートとが接しており、
前記粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーを含み、
前記離型層は、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂、およびヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、
前記第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも小さい、離型フィルム付き粘着シート。」と記載されているのを、
「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備える離型フィルム付き粘着シートであって、
前記第一離型フィルムおよび前記第二離型フィルムは、それぞれ、フィルム基材上に離型層を備え、
前記第一離型フィルムの離型層が前記粘着シートの第一主面に接しており、前記第二離型フィルムの離型層が前記粘着シートの第二主面に接しており、
前記粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーを含み、
前記第一離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第一離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量が、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計100重量部に対して、0.5重量部以下であり、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂およびヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を20~80重量部含み、
前記第二離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第二離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、少なくとも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、前記第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物よりも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量が多く、
前記第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも小さい、離型フィルム付き粘着シート。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項3、4も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3において、
「請求項1または2に記載の」と記載されているのを、
「請求項1に記載の」に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4において、
「請求項1~3のいずれか1項に記載の」と記載されているのを、
「請求項1または3に記載の」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5において、
「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備え、前記第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも小さい離型フィルム付き粘着シートの製造方法であって、
アクリル系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの部分重合物、ならびに光重合開始剤を含む光硬化性粘着剤組成物が、前記第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間に層状に設けられた積層体を形成する工程;および
前記第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間の前記光硬化性粘着剤組成物に光を照射して、光硬化性粘着剤組成物を光硬化する工程を有し、
前記第一離型フィルムは、フィルム基材上の前記光硬化性粘着剤組成物と接する側の面に離型層を備え、
前記離型層は、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂、およびヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層である、離型フィルム付き粘着シートの製造方法。」と記載されているのを、
「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備え、前記第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも小さい離型フィルム付き粘着シートの製造方法であって、
アクリル系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの部分重合物、ならびに光重合開始剤を含む光硬化性粘着剤組成物が、前記第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間に層状に設けられた積層体を形成する工程;および前記第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間の前記光硬化性粘着剤組成物に光を照射して、光硬化性粘着剤組成物を光硬化する工程を有し、
前記第一離型フィルムおよび前記第二離型フィルムは、それぞれ、フィルム基材上の前記光硬化性粘着剤組成物と接する側の面に離型層を備え、
前記第一離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第一離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量が、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計100重量部に対して、0.5重量部以下であり、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂およびヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を20~80重量部含み、
前記第二離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第二離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、少なくとも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、前記第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物よりも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量が多い、離型フィルム付き粘着シートの製造方法。」に訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7において、
「請求項5または6に記載の」と記載されているのを、
「請求項5に記載の」に訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~7において、請求項2~4は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
また、請求項6、7は、請求項5を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項5によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は一群の請求項であり、訂正前の請求項5~7に対応する訂正後の請求項5~7は一群の請求項である。
3 訂正の適否についての当審の判断
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1の「第一離型フィルム」の離型層についてさらなる特定を加えるとともに、「第二離型フィルム」が離型層を備えることを特定しつつ、第二離型フィルムの離型層についてさらなる特定を加える訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正である。
具体的には、「第一離型フィルム」について、本件特許明細書の【0008】の「・・・粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルムを備える。第一離型フィルムは、フィルム基材上に離型層を備え、離型層と粘着シートとが接している。」との記載に基づいて、第一離型フィルムの離型層が粘着シートの第一主面に接することを特定し、同【0042】の「シリコーン系離型層15の形成には、付加反応により硬化するタイプのシリコーン系樹脂組成物が用いられる。付加反応により硬化するタイプのシリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基(SiH)を有するポリオルガノシロキサン化合物(架橋剤)とを含み、さらに硬化触媒(ヒドロシリル化触媒)を含むことが好ましい。」との記載に基づいて、第一離型フィルムの離型層が、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むことを特定し、同【0051】の「反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量は、付加反応の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計100重量部に対して・・・0.5重量部以下がさらに好ましい。」との記載に基づいて、第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物において、反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量が、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計100重量部に対して、0.5重量部以下であることを特定し、同【0043】の「付加反応性の官能基としては、アルケニル基が挙げられる。アルケニル基の例としては、ビニル基、・・・ヘキセニル基・・・等が挙げられる。」及び同【0062】の「離型フィルム10の離型層15が、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂、およびヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であることにより、高速剥離時のピール強度が小さく、かつせん断力が大きい。」との記載に基づいて、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂およびヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含むことを特定し、さらに、同【0047】の「ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の含有量は、20~80重量部が好ましく・・・」との記載に基づいて、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を20~80重量部含みことを特定するものである。
また、「第二離型フィルム」について、本件特許明細書の【0008】の「・・・離型フィルム付き粘着シートは、粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備えていてもよい。」との記載に基づいて、第二離型フィルムの離型層が粘着シートの第二主面に接することを特定し、同【0042】の「シリコーン系離型層15の形成には、付加反応により硬化するタイプのシリコーン系樹脂組成物が用いられる。付加反応により硬化するタイプのシリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基(SiH)を有するポリオルガノシロキサン化合物(架橋剤)とを含み、さらに硬化触媒(ヒドロシリル化触媒)を含むことが好ましい。」との記載に基づいて、第二離型フィルムの離型層が、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であることを特定し、同【0043】の「付加反応性の官能基としては、アルケニル基が挙げられる。アルケニル基の例としては、ビニル基・・・等が挙げられる。」との記載に基づいて、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、少なくとも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含むことを特定するものであり、同【0067】の「離型層15に加えて、離型層25も、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂、およびヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であってもよい。例えば、離型層15と離型層25の樹脂組成(ビニル基を有するポリオルガノシロキサンとヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサンの比率)を変えることにより、粘着シート50の表裏に仮着された離型フィルム10,20の剥離力に差異を持たせてもよい。」との記載及び同【0063】の「シリコーン系樹脂組成物中のビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の比率が高いほど、剥離速度10m/分の180°ピール試験によるピール強度(高速剥離力)、およびせん断力が大きくなる傾向があり、シリコーン系樹脂組成物中のヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の比率が高いほど、高速剥離力およびせん断力が小さくなる傾向がある。」との記載に基づいて、請求項1の「前記第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも小さい」との記載を「前記第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物よりも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量が多く」との記載で具体化したものである。
そうすると、本件訂正1に係る訂正事項は、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、新たな技術事項を導入するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項により準用する第126条第5項及び同第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で訂正するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないから、特許法第120条の5第9項により準用する第126条第5項及び同第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3、4
訂正事項3、4は、前記(2)の訂正事項2により請求項2が削除されたため、特許請求の範囲の請求項3、4の引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮ないしは特許法第120条の5第2項第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないから、特許法第120条の5第9項により準用する第126条第5項及び同第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項5
訂正事項5は、請求項5の「離型フィルム付き粘着シートの製造方法」について、前記(1)の請求項1に対する訂正事項1と同様の特定を加える訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とした訂正であって、前記(1)で検討したとおり、いずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、新たな技術事項を導入するものにも該当しないから、特許法第120条の5第9項により準用する第126条第5項及び同第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項6
訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で訂正するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないから、特許法第120条の5第9項により準用する第126条第5項及び同第6項の規定に適合する。
(6)訂正事項7
訂正事項7は、前記(5)の訂正事項6により請求項6が削除されたため、特許請求の範囲の請求項7の引用する請求項から請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮ないしは特許法第120条の5第2項第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないから、特許法第120条の5第9項により準用する第126条第5項及び同第6項の規定に適合する。
4 独立特許要件についての判断
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。
5 小括
以上のとおりであるから、本件特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~7〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
本件訂正は前記第2のとおり認められたので、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~9に係る発明(以下、項番順に「本件発明1」等ともいう。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備える離型フィルム付き粘着シートであって、
前記第一離型フィルムおよび前記第二離型フィルムは、それぞれ、フィルム基材上に離型層を備え、
前記第一離型フィルムの離型層が前記粘着シートの第一主面に接しており、前記第二離型フィルムの離型層が前記粘着シートの第二主面に接しており、
前記粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーを含み、
前記第一離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第一離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量が、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計100重量部に対して、0.5重量部以下であり、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂およびヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を20~80重量部含み、
前記第二離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第二離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、少なくとも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、前記第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物よりも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量が多く、
前記第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも小さい、離型フィルム付き粘着シート。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
剥離速度10m/分の180°ピール試験により求められる前記粘着シートから前記第一離型フィルムを剥離する際のピール強度が、0.05~0.3N/50mmである、請求項1に記載の離型フィルム付き粘着シート。
【請求項4】
前記光硬化型アクリル系ポリマーが、共重合モノマー成分として、1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含む、請求項1または3に記載の離型フィルム付き粘着シート。
【請求項5】
第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備え、前記第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも小さい離型フィルム付き粘着シートの製造方法であって、
アクリル系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの部分重合物、ならびに光重合開始剤を含む光硬化性粘着剤組成物が、前記第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間に層状に設けられた積層体を形成する工程;および前記第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間の前記光硬化性粘着剤組成物に光を照射して、光硬化性粘着剤組成物を光硬化する工程を有し、
前記第一離型フィルムおよび前記第二離型フィルムは、それぞれ、フィルム基材上の前記光硬化性粘着剤組成物と接する側の面に離型層を備え、
前記第一離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第一離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量が、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計100重量部に対して、0.5重量部以下であり、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂およびヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を20~80重量部含み、
前記第二離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第二離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、少なくとも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、前記第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物よりも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量が多い、離型フィルム付き粘着シートの製造方法。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
前記光硬化性粘着剤組成物が、1分子中に2以上の重合性官能基を有する多官能モノマーを含む、請求項5に記載の離型フィルム付き粘着シートの製造方法。」
第4 特許異議の申立ての理由及び取消理由の概要等
1 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、後記2の申立理由を主張し、その証拠方法として後記3の甲第1号証~甲第3号証(以下「甲1」等という。)を提出した。甲1~甲3は、いずれも、本件特許の出願日前に公開されたものである。
2 申立理由
(1)申立理由1(進歩性)
本件発明1~7は、後記3の甲1又は甲2に記載された発明、並びに甲1~甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、本件発明1~7に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
具体的には、本件発明1及び5において、ビニル基を有するオルガノポリシロキサンとヘキセニル基を有するオルガノポリシロキサンの含有量の合計に対するビニル基を有するオルガノポリシロキサンの含有量が特定されていないが、例えば、両者の含有量の合計100重量部に対して、ビニル基を有するオルガノポリシロキサンの含有量が99重量部の場合には、高速剥離性に劣ると考えられるため、本件特許に係る発明が解決しようとする課題を解決できるものではない。
3 証拠方法
甲1:特開2017-200973号公報
甲2:特開2016-188265号公報
甲3:国際公開第2010/147047号
4 取消理由(決定の予告)の概要
(1)取消理由1(甲1を主引例とした進歩性)
本件発明1~7は、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(甲2を主引例とした進歩性)
本件発明1~4は、甲2に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(3)取消理由3(サポート要件)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
5 甲号証の記載事項
(1)甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】
第一剥離フィルムと、前記第一剥離フィルム上に設けられた粘着剤層と、前記粘着剤層上に設けられた第二剥離フィルムとを有する基材レス両面粘着シートであって、
前記第一剥離フィルムが、第一の二軸延伸ポリエステルフィルムと、前記第一の二軸延伸ポリエステルフィルムの前記粘着剤層側に設けられた第一剥離層とを有し、
前記第二剥離フィルムが、第二の二軸延伸ポリエステルフィルムと、前記第二の二軸延伸ポリエステルフィルムの前記粘着剤層側に設けられた第二剥離層とを有し、
前記第一の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みと、前記第二の二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みとが、いずれも19~50μmであり、
前記基材レス両面粘着シートの配向主軸の傾きが-12度以上12度以下である、基材レス両面粘着シート。」
「【請求項4】
前記第一剥離層及び前記第二剥離層が、いずれもシリコーン樹脂から形成された層である、請求項1~3のいずれか一項に記載の基材レス両面粘着シート。」
「【請求項6】
前記第一剥離フィルムと、前記第二剥離フィルムとの剥離力差が5mN/25mm以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の基材レス両面粘着シート。」
「【0001】
本発明は、基材レス両面粘着シートに関する。」
「【0021】
第一剥離層、及び第二剥離層は、剥離フィルムに剥離性を付与する機能を有する。第一剥離層、及び第二剥離層は、例えば、離型剤を含む剥離層形成用組成物の硬化物で形成される。
離型剤としては、特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、及び長鎖アルキル樹脂等が挙げられるが、シリコーン樹脂を用いて形成することが好ましい。
【0022】
シリコーン樹脂としては、基本骨格としてジメチルポリシロキサンを有するシリコーン樹脂が挙げられる。また、シリコーン樹脂としては、付加反応型、縮合反応型、紫外線硬化型、電子線硬化型等がある。中でも、付加反応型シリコーン樹脂は、反応性が高く生産性に優れるとともに、縮合反応型と比較すると、製造後の剥離力の変化が小さい、硬化収縮がない等のメリットがあり、好ましく用いられる。
【0023】
上記付加反応型シリコーン樹脂の具体例としては、分子の末端および/または側鎖に、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~10のアルケニル基を2個以上備えたオルガノポリシロキサンが挙げられる。このような付加反応型シリコーン樹脂を用いる際には、架橋剤および触媒を併用することが好ましい。」
「【0033】
(粘着剤層)
粘着剤層は、粘着剤を用いて形成される。粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、ポリエステル系、ウレタン系、シリコーン系等が挙げられる。本発明では、粘着剤として、特に、アクリル系粘着剤を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含むことが、接着耐久性の観点から好ましい。
なお、粘着剤の形態としては、溶剤型、エマルション型、無溶剤型等が挙げられる。」
「【0046】
また、本発明の基材レス両面粘着シートにおける粘着剤層が無溶剤型のアクリル系粘着剤で形成される場合には、側鎖にラジカル重合性不飽和二重結合性基を有する(メタ)アクリル酸エステルのポリマー(A1)、(メタ)アクリレートオリゴマー(A2)、及び(メタ)アクリル酸エステルモノマー(A3)から選択される少なくとも1種と、光重合開始剤(B)とを含有する粘着剤層形成用組成物(i)を用いることもできる。
【0047】
上記(メタ)アクリル酸エステルのポリマー(A1)および上記(メタ)アクリレートオリゴマー(A2)が有するラジカル重合性不飽和二重結合性基の数は、粘着剤層の強度や凝集力を高める観点から、2個以上であることが好ましい。」
「【0075】
[粘着剤組成物aの調製]
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置および窒素導入管を備えた反応容器に、アクリル酸n-ブチル95.0質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル5.0質量部、酢酸エチル200質量部、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.08質量部を仕込み、上記反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。この窒素雰囲気下中で攪拌しながら、反応溶液を60℃に昇温し、16時間反応させた後、室温まで冷却した。ここで、得られた溶液の一部をGPC測定し、質量平均分子量160万の重合体(A)の生成を確認した。上記重合体(A)100質量部(固形分)にポリイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートL)4質量部、及びシランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM-403)0.1質量部を添加混合したものに、さらに溶剤としてトルエンを加えて固形分を15質量%に調整し、溶剤型アクリル粘着剤である粘着剤組成物aを調製した。
【0076】
[粘着剤組成物bの調製]
2-エチルヘキシルアクリレート40質量部、イソボルニルアクリレート20質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート10質量部、ウレタンアクリレート系オリゴマー30質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1質量部、及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.2質量部を混合し、無溶剤型アクリル粘着剤である粘着剤組成物bを調製した。
ウレタンアクリレート系オリゴマーは、以下のようにして合成した。まず、重量平均分子量3000のポリプロピレングリコール100質量部に対して、ヘキサメチレンジイソシアナート4質量部と、ジオクチル錫ジラウレート0.02質量部とを加え、80℃で6時間撹拌し、第1の反応物を得た。次いで、得られた第1の反応物のIRスペクトルからイソシアナート基がほぼ消失したことを確認した後、2-イソシアナトエチルアクリレート1質量部を加え、80℃で3時間撹拌し、第2の反応物を得た。次いで、得られた第2の反応物のIRスペクトルからイソシアナート基がほぼ消失したことを確認し、重量平均分子量25,000のウレタンアクリレート系オリゴマーを得た。
【0077】
(実施例1)
1.剥離層形成用組成物(A)の調製
ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンおよびヒドロシリル基を備えたオルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂溶液(東レ・ダウコーニング社製、商品名:BY24-561、固形分30質量%)を固形分換算で30質量部と、ビニル基を備えたMQレジン(東レ・ダウコーニング社製、商品名:SD7292、固形分71質量%)を固形分換算で15質量部とを、トルエン溶媒にて固形分濃度が1.0質量%となるように希釈混合した。この溶液に白金系触媒(東レ・ダウコーニング社製、商品名:SRX-212、固形分100質量%)を2質量部添加し、剥離層形成用組成物(A)を調製した。
【0078】
2.第一剥離フィルムの作製
厚み38μm、配向角6度、ヘイズ10%の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。
次に、二軸延伸PETフィルム(第一の二軸延伸PETフィルム)の一方の面に、上記で得られた剥離層形成用組成物(A)を、乾燥後の厚みが0.1μmとなるようにバーコーターにて塗布し、120℃で1分間乾燥して剥離層(第一剥離層)を形成し、第一剥離フィルムを得た。
【0079】
3.剥離層形成用組成物(B)の調製
ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンおよびヒドロシリル基を備えたオルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂溶液(東レ・ダウコーニング社製、商品名:BY24-561、固形分30質量%)を固形分換算で30質量部をトルエン溶媒にて固形分濃度が1.0質量%となるように希釈混合した。この溶液に白金系触媒(東レ・ダウコーニング社製、商品名:SRX-212、固形分100質量%)を2質量部添加し、剥離層形成用組成物(B)を調製した。
【0080】
4.第二剥離フィルムの作製
厚み38μm、配向角6度、ヘイズ10%の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。
次に、二軸延伸PETフィルム(第二の二軸延伸PETフィルム)の一方の面に、上記で得られた剥離層形成用組成物(B)を、乾燥後の厚みが0.1μmとなるようにバーコーターにて塗布し、120℃で1分間乾燥して剥離層(第二剥離層)を形成し、第二剥離フィルムを得た。
【0081】
5.基材レス両面粘着シートの作製
第一剥離フィルムの第一剥離層側の面に、粘着剤組成物aを乾燥後の膜厚が20μmになるようにアプリケーターで塗工し、105℃で2分間乾燥させた。その後、第二剥離フィルムの第二剥離層側の面を貼合し、23℃50RHで1週間エージングして基材レス両面粘着シートを作製した。
【0082】
(実施例2)
1.第一剥離フィルム、及び第二剥離フィルムの作製
実施例1と同様にして第一剥離フィルム、及び第二剥離フィルムを作製した。
【0083】
2.基材レス両面粘着シートの作製
第一剥離フィルムの第一剥離層側の面に、粘着剤組成物bを膜厚が125μmとなるようにアプリケーターで塗工し、塗布層を形成した。次いで、得られた塗布層の露出面側から紫外線を下記条件で照射して、塗布層を予備硬化させ、予備硬化塗布層とした。
[紫外線照射条件]
・ランプ :高圧水銀ランプ
・積算光量(波長365nm):40mJ/cm2
【0084】
次いで、得られた予備硬化塗布層の露出面に対し、第二剥離フィルムの第二剥離層側の面を貼合した。その後、第二剥離フィルムが積層された状態の予備硬化塗布層に対し、第二剥離フィルムの二軸延伸PETフィルム側から、紫外線を下記条件で照射し、予備硬化塗布層を本硬化させ、膜厚が125μmの粘着剤層とし、第一剥離フィルム/粘着剤層/第二剥離フィルムの層構成の基材レス両面粘着シートを得た。
[紫外線照射条件]
・ランプ :高圧水銀ランプ
・積算光量(波長365nm):1200mJ/cm2」
「【0093】
【表1】
[図:0001425718000001.jpg]
」
(2)甲2には、次の記載がある。
「【請求項1】
ヘキセニル基、ビニル基、フェニル基、およびヒドロシリル基を官能基として有する反応性シリコーン樹脂と、質量平均分子量が50000~100000の未反応性シリコーン樹脂と、白金系触媒とを含有する塗布液から形成されたシリコーン系離型層をポリエステルフィルムの片面に有することを特徴とする離型フィルム。」
「【0003】
偏光板用途だけではなく、物体間を面接着する粘着シート用途においても、離型フィルムの剥離力による不具合が多数報告されている。粘着シートは種々知られており、粘着シートの1つとして基材レス両面粘着シートが知られている。基材レス両面粘着シートは、粘着層の両面に剥離力の相対的に低い軽剥離フィルムと、剥離力の相対的に高い重剥離フィルムが積層された積層体構成からなり、両面の剥離フィルムを除去した後には、支持基材を有さない粘着層のみとなる両面粘着シートである。」
「【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、粘着剤からの離型性が良好で、移行性が少なく、例えば、静電容量方式のタッチパネル製造用等、液晶ディスプレイ(LCD)に用いられる偏光板、位相差板等のLCD構成部材製造用、プラズマディスプレイパネル構成部材製造用、有機エレクトロルミネッセンス構成部材製造用等、各種ディスプレイ構成部材製造用のほか、各種粘着剤層保護用途に好適な離型フィルムを提供することにある。」
「【0026】
本発明において得られたポリエステルフィルムの片方の最外層に形成する離型層硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等何れの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0027】
本発明において使用する、アルケニル基およびアルキル基を官能基として有するシリコーン樹脂の例としては以下のようなものが挙げられる。まず、アルケニル基を含む硬化型シリコーン樹脂は、ジオルガノポリシロキサンとして、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位96モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位4モル%、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位97モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位3モル%)、分子鎖両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位95モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位5モル%)が挙げられる。次に、アルキル基を含む硬化型シリコーン樹脂は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体が挙げられる。」
「【0039】
本発明において使用するシリコーン樹脂に含まれるヘキセニル基とビニル基とフェニル基とヒドロシリル基の比は、ヒドロシリル基を100とした時にヘキセニル基は35~65、ビニル基は5~35、フェニル基は1~20であることが好ましい。望ましくはヘキセニル基は45~55、ビニル基は15~25、フェニル基は2~10であることがさらに好ましい。ヘキセニル基が35未満だと、シリコーン硬化反応が不十分となり、30000mm/分での剥離力が高くなり、離型フィルムを粘着剤から高速で剥離した時に、綺麗に剥がれなくなる不具合が発生する場合がある。ヘキセニル基が65を超えると、シリコーン硬化において、架橋点が多くなり過ぎ、300mm/分での剥離力が高くなり、離型フィルムが粘着剤から綺麗に剥がれなくなる不具合が発生する場合がある。ビニル基が15未満だと、シリコーン硬化反応が不十分となり、30000mm/分での剥離力が高くなり、離型フィルムを粘着剤から高速で剥離した時に、綺麗に剥がれなくなる不具合が発生する場合がある。ビニル基が35を超えると、シリコーン硬化において、架橋点が多くなり過ぎ、300mm/分での剥離力が高くなり、離型フィルムが粘着剤から綺麗に剥がれなくなる不具合が発生する場合がある。へきせにるフェニル基が1未満だと(当審注:フェニル基の誤記)、シリコーン膜が柔らかくなりとなり、30000mm/分での剥離力が高くなり、離型フィルムを粘着剤から高速で剥離した時に、綺麗に剥がれなくなる不具合が発生する場合がある。フェニル基が20を超えると、シリコーン膜が硬くなりすぎ、300mm/分での剥離力が高くなり、離型フィルムが粘着剤から綺麗に剥がれなくなる不具合が発生する場合がある。」
「【0045】
本発明において使用するシリコーン樹脂に含まれる未反応性シリコーン樹脂は、1~10重量%の範囲であり、好ましくは1~5重量%である。未反応性シリコーン樹脂の含有量が1%より低いと軽剥離にならず、5重量%を超えると、硬化性が著しく低下し、密着性も悪化する不具合がある。」
「【0050】
本発明において日東電工株式会社製No.31Bテープによる30000mm/分での剥離力は80mN/cm未満であることが好ましい。30000mm/分での剥離力が80mN/cmを超えると、離型フィルムを粘着剤から高速で剥離した時に、綺麗に剥がれなくなる不具合が発生する場合がある。」
「【0056】
本発明における、剥離力とは、両面粘着テープ(日東電工製「No.31B」)を離型層面に貼り付け、室温にて1時間放置した後に、基材フィルムと剥離角度180°、任意の引張速度でテープを剥離したときに引張試験機で測定した値を言う。本発明において特定の剥離力を調整する方法は、離型層中の組成を選択することにより達成することができるが、その他の手段も採用でき、主にシリコーン離型層の離型剤の種類を、所望の剥離力に応じて変更することが好ましく、さらには、剥離力は用いる離型剤の塗布量に大きく依存するため、その離型剤の塗布量を調整する方法がさらに好ましい。
【0057】
本発明におけるポリエステルフィルムの剥離力の値については、300mm/分速度域での低速剥離力が通常10~20mN/cmの範囲である。当該剥離力が10mN/cm未満の場合、剥離力が軽くなりすぎて本来剥離する必要がない場面においても容易に剥離する不具合を生じることがある。剥離力が20mN/cmを超える場合、剥離力の重い方の離型フィルムとの剥離力差が小さくなり、剥離工程で不具合を生じたり、剥離力の重い方の離型フィルムの選定幅が狭くなったりすることがある。
【0058】
さらに、加工性を考慮に入れた60000mm/分速度域での高速剥離力が通常90mN/cm以下である。当該剥離力が90mN/cmよりも大きい場合、剥離力が重い方の離型フィルムとの剥離力差が小さくなり、剥離工程で剥離が上手くできなかったり、粘着剤ごと剥がれてしまったりする。」
「【0061】
(3)離型フィルムの剥離力(F)の評価
試料フィルムの離型層表面に両面粘着テープ(日東電工製「No.31B」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットした後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分と30000mm/分条件下、180°剥離を行った。」
「【0065】
実施例1:
<ポリエステルフィルムの製造>
先に述べたポリエステルを原料として、ベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して厚さ約550μmの無定形フィルムを得た。
このフィルムを85℃で縦方向に3.7倍延伸し、100℃で横方向に3.9倍延伸し、210℃で熱処理して、厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た
【0066】
得られたポリエステルフィルムに、下記に示す離型剤組成-Aからなる離型剤を塗布量(乾燥後)が0.12g/m2になるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度150℃、ライン速度30m/分の条件でロール状の離型ポリエステルフィルムを得た。
【0067】
<離型剤化合物>
・a1:メチル基とヘキセニル基とフェニル基の比が100:1:0.1である前記一般式(I)の硬化型シリコーン樹脂(分子量200000)
・a2:メチル基とビニル基の比が100:0.2である前記一般式(II)の硬化型シリコーン樹脂(分子量200000)
・a3:メチル基とヒドロシリル基の比が100:1.5である前記一般式(III)の硬化型シリコーン樹脂(分子量200000)
・a4:メチル基とヒドロシリル基の比が100:0.4である前記一般式(III)の硬化型シリコーン樹脂(分子量200000)
・b1:前記一般式(IV)のの未反応性シリコーン樹脂(分子量80000)
・c1:付加型白金触媒(PL-50T:信越化学工業製)
【0068】
<離型剤組成-A>
硬化型シリコーン樹脂a1 20部
未反応性シリコーン樹脂b1 0.2部
付加型白金触媒c1 0.2部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)
【0069】
実施例2~4:
実施例1において、離型剤組成を下記表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。得られた結果をまとめて下記表2に示す。
【0070】
【表1】
[図:0001425718000002.jpg]
【0071】
【表2】
[図:0001425718000003.jpg]
」
(3)甲3は、粘着シートが光硬化型アクリル系ポリマーを含むことを示す周知例であって、前記(1)の甲1の【0084】と内容が重複するため、摘記を省略する。
第5 当審における判断
1 取消理由1(甲1を主引例とした進歩性)
(1)甲1に記載された発明
ア 物の発明
甲1の【0082】~【0084】及び【0093】の【表1】に示された「実施例2」に着目し、同【0076】~【0081】の記載を参酌すれば、甲1には、次の発明(以下「甲1A発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1A発明)
「第一剥離フィルムの第一剥離層側の面に、粘着剤組成物bを塗工して紫外線を照射して予備硬化塗布層とし、得られた予備硬化塗布層の露出面に対し、第二剥離フィルムの第二剥離層側の面を貼合して紫外線を照射して予備硬化塗布層を本硬化させて得た、第一剥離フィルム/粘着剤層/第二剥離フィルムの層構成の基材レス両面粘着シートであって、
粘着剤組成物bは、無溶剤型アクリル粘着剤であり、
第一剥離フィルムは、ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンおよびヒドロシリル基を備えたオルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂溶液と、ビニル基を備えたMQレジン(東レ・ダウコーニング社製、商品名:SD7292、固形分71質量%)とを含む剥離層形成用組成物(A)を、二軸延伸PETフィルムの一方の面に塗布して第一剥離層を形成したものであり、
第二剥離フィルムは、ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンおよびヒドロシリル基を備えたオルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂溶液を含む剥離層形成用組成物(B)を、二軸延伸PETフィルムの一方の面に塗布して第二剥離層を形成したものであり、
第一剥離フィルムの剥離力は90mN/25mmであり、第二剥離フィルムの剥離力は40mN/25mmである、
基材レス両面粘着シート。」
イ 方法の発明
同様に、甲1には、次の発明(以下「甲1B発明」という。)も記載されているものと認められる。
(甲1B発明)
「第一剥離フィルムの第一剥離層側の面に、粘着剤組成物bを塗工して紫外線を照射して予備硬化塗布層とし、得られた予備硬化塗布層の露出面に対し、第二剥離フィルムの第二剥離層側の面を貼合して紫外線を照射して予備硬化塗布層を本硬化させて得た、第一剥離フィルム/粘着剤層/第二剥離フィルムの層構成の基材レス両面粘着シートの製造方法であって、
粘着剤組成物bは、無溶剤型アクリル粘着剤であり、
第一剥離フィルムは、ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンおよびヒドロシリル基を備えたオルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂溶液と、ビニル基を備えたMQレジン(東レ・ダウコーニング社製、商品名:SD7292、固形分71質量%)とを含む剥離層形成用組成物(A)を、二軸延伸PETフィルムの一方の面に塗布して第一剥離層を形成したものであり、
第二剥離フィルムは、ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンおよびヒドロシリル基を備えたオルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂溶液を含む剥離層形成用組成物(B)を、二軸延伸PETフィルムの一方の面に塗布して第二剥離層を形成したものであり、
第一剥離フィルムの剥離力は90mN/25mmであり、第二剥離フィルムの剥離力は40mN/25mmである、
基材レス両面粘着シートの製造方法。」
(2)甲1に記載された発明との対比、判断
ア 本件発明1
(ア)対比
a 本件発明1と甲1A発明を対比すると、甲1A発明の「基材レス両面粘着シート」は、「両面」タイプであり、かつ、「紫外線を照射して」「硬化させる」「無溶剤型アクリル粘着剤」を含むものであるから、本件発明1の「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート」及び「粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーを含み」に相当する。
b 後記eで検討するとおり、甲1A発明において、第一剥離フィルムの剥離力は90mN/25mmであり、第二剥離フィルムの剥離力は40mN/25mmであって、第一剥離フィルムの剥離力よりも、第二剥離フィルムの剥離力の方が小さいから、甲1A発明の「第一剥離フィルム」及び「第一剥離層」は、本件発明1の「粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルム」及び「第二離型フィルムの離型層」に相当し、甲1A発明の「第二剥離フィルム」及び「第二剥離層」は、本件発明1の「粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム」及び「第一離型フィルムの離型層」に相当する。
c 甲1A発明の「第二剥離層」は、「ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンおよびヒドロシリル基を備えたオルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂溶液」を原料とするものであるから、本件発明1の「前記第一離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層」に相当する。
d 甲1A発明の「第一剥離層」は、「ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンおよびヒドロシリル基を備えたオルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂溶液と、ビニル基を備えたMQレジン(東レ・ダウコーニング社製、商品名:SD7292、固形分71質量%)とを含む剥離層形成用組成物」を原料とするものであるから、本件発明1の「前記第二離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層」に相当し、さらに、本件発明1の「前記第二離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、少なくとも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み」を充足する。
また、甲1A発明の「第一剥離層」は、反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量が0であるから、本件発明1の「反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量が、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計100重量部に対して、0.5重量部以下」を充足する。
e 甲1A発明の「第一剥離フィルムの剥離力は90mN/25mmであり、第二剥離フィルムの剥離力は40mN/25mmである」は、本件発明1の「第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも小さい」に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備える離型フィルム付き粘着シートであって、
前記第一離型フィルムおよび前記第二離型フィルムは、それぞれ、フィルム基材上に離型層を備え、
前記第一離型フィルムの離型層が前記粘着シートの第一主面に接しており、前記第二離型フィルムの離型層が前記粘着シートの第二主面に接しており、
前記粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーを含み、
前記第一離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第一離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量が、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計100重量部に対して、0.5重量部以下であり、
前記第二離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第二離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、少なくとも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、
前記第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも小さい、離型フィルム付き粘着シート。」
<相違点1A-1>
第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物について、本件発明1は「第一離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂およびヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を20~80重量部含」むのに対し、甲1A発明は、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂は含むものの、ヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含むものではないから、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を100重量部含むものである点。
<相違点1A-2>
第二離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物について、本件発明1は、「第二離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物は、」「第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物よりも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量が多」いのに対し、甲1A発明は、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂は含むものの、ヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含むものではないから、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を100重量部含むものであり、したがって、第一剥離層の剥離層形成用組成物(第二離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物」は、第二剥離層の剥離層形成用組成物(第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物)と、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量が同じである点。
(イ)判断
相違点1A-1及び相違点1A-2について検討するにあたり、対応関係がわかりにくいので、以下、本件発明1の「第一離型フィルムの離型層」と甲1A発明の「第二剥離層」を「軽剥離層」ともいい、本件発明1の「第二離型フィルムの離型層」と甲1A発明の「第一剥離層」を「重剥離層」ともいう。
甲1A発明を認定した甲1の【0021】~【0023】には、甲1A発明の軽剥離層及び重剥離層を形成する離型剤として、付加反応型シリコーン樹脂が好ましく用いられること、及び付加反応型シリコーン樹脂の具体例としては、分子の末端および/または側鎖に、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~10のアルケニル基を2個以上備えたオルガノポリシロキサンが挙げられることが記載されている。
そうすると、甲1A発明の軽剥離層及び重剥離層を形成する離型剤として、ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンのみならず、ヘキセニル基を備えたオルガノポリシロキサンも含有するようにすることは、当業者が容易になし得たことといえる。
しかしながら、甲1の明細書には、ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンとヘキセニル基を備えたオルガノポリシロキサンの添加量の量比と、剥離力との関係については、記載も示唆もないから、甲1の記載に基づいて、前記相違点1A-1のように、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を20~80重量部含むように調整することは容易とはいえない。
また、甲1A発明は、重剥離層に「ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンおよびヒドロシリル基を備えたオルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂溶液と、ビニル基を備えたMQレジン(東レ・ダウコーニング社製、商品名:SD7292、固形分71質量%)とを含む剥離層形成用組成物(A)」を用い、軽剥離層に「ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンおよびヒドロシリル基を備えたオルガノポリシロキサンを含有するシリコーン樹脂溶液を含む剥離層形成用組成物(B)」を用いていることから、「ビニル基を備えたMQレジン」を添加したものが重剥離層となり、添加しないものが軽剥離層となる関係を理解できるかもしれないが、この関係から、前記相違点1A-2のように、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量について、重剥離層の方が、軽剥離層よりも多くなるように調整するような技術思想を読み取ることはできない。
そうすると、甲1A発明において、甲1の記載に基づいて、前記相違点1A-1に係る構成や、前記相違点1A-2に係る構成を想到することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
この点について、甲2の【0009】に「粘着剤からの離型性が良好で、移行性が少な」い「各種粘着剤層保護用途に好適な離型フィルムを提供すること」との課題が記載され、同【0039】には、当該離型フィルムの離型層に使用する硬化型シリコーン樹脂に含まれるヘキセニル基とフェニル基とヒドロシリル基の比について、「ヒドロシリル基を100とした時にヘキセニル基は35~65、ビニル基は5~35、フェニル基は1~20であることが好ましい」ことが記載されているものの、同【0039】には「ヘキセニル基が35未満だと、・・・30000mm/分での剥離力が高くなり、・・・ヘキセニル基が65を超えると、・・・300mm/分での剥離力が高くなり、・・・ビニル基が15未満だと、・・・30000mm/分での剥離力が高くなり、ビニル基が35を超えると、・・・300mm/分での剥離力が高くな」るとも記載されており、これは、ヘキセニル基とビニル基は、いずれも少なすぎると高速剥離力が高くなりすぎ、多すぎると低速剥離力が高くなりすぎる、ということであって、これらの記載に基づいて、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量について、重剥離層の方が、軽剥離層よりも多いように調整するような技術思想を読み取ることはできない。
そうすると、甲1A発明において、甲2の記載に基づいて、少なくとも前記相違点1A-2に係る構成を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、甲3は、粘着シートが光硬化型アクリル系ポリマーを含むことを示す周知例であって、ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンとヘキセニル基を備えたオルガノポリシロキサンの添加量の量比と、剥離力との関係については記載も示唆もないから、甲1A発明において、甲3の記載に基づいて、前記相違点1A-1に係る構成や、前記相違点1A-2に係る構成を想到することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1A発明及び甲1~甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明3、4
本件発明3、4は、本件発明1の記載を引用する形式で記載されたものであって、いずれも、前記アの相違点1A-1及び相違点1A-2に係る特定事項を備えるものである。
そうすると、本件発明3、4は、前記ア(イ)と同じ理由により、甲1A発明及び甲1~甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明5
本件発明5と甲1B発明を対比すると、前記ア(ア)と同様の対応関係に加え、甲1B発明の「第一剥離フィルムの第一剥離層側の面に、粘着剤組成物bを塗工して紫外線を照射して予備硬化塗布層とし、得られた予備硬化塗布層の露出面に対し、第二剥離フィルムの第二剥離層側の面を貼合して紫外線を照射して予備硬化塗布層を本硬化させ」は、本件発明5の「第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間に層状に設けられた積層体を形成する工程;および前記第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間の前記光硬化性粘着剤組成物に光を照射して、光硬化性粘着剤組成物を光硬化する工程を有し」に相当するから、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備え、前記第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも小さい離型フィルム付き粘着シートの製造方法であって、
アクリル系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの部分重合物、ならびに光重合開始剤を含む光硬化性粘着剤組成物が、前記第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間に層状に設けられた積層体を形成する工程;および前記第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間の前記光硬化性粘着剤組成物に光を照射して、光硬化性粘着剤組成物を光硬化する工程を有し、
前記第一離型フィルムおよび前記第二離型フィルムは、それぞれ、フィルム基材上の前記光硬化性粘着剤組成物と接する側の面に離型層を備え、
前記第一離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第一離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量が、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計100重量部に対して、0.5重量部以下であり、
前記第二離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第二離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、少なくとも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含む、離型フィルム付き粘着シートの製造方法。」
<相違点1B-1>
第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物について、本件発明1は「第一離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂およびヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を20~80重量部含」むのに対し、甲1A発明は、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂は含むものの、ヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含むものではないから、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を100重量部含むものである点。
<相違点1B-2>
第二離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物について、本件発明1は、「第二離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物は、」「第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物よりも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量が多い」のに対し、甲1A発明は、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂は含むものの、ヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含むものではないから、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を100重量部含むものであり、したがって、第一剥離層の剥離層形成用組成物(第二離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物」は、第二剥離層の剥離層形成用組成物(第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物)と、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量が同じである点。
相違点1B-1及び相違点1B-2について検討すると、相違点1B-1及び相違点1B-2は、実質的に前記ア(ア)の相違点1A-1及び相違点1A-2と同じであるから、前記ア(イ)で検討したのと同様の理由により、本件発明5は、甲1B発明及び甲1~甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明7
本件発明7は、本件発明5の記載を引用する形式で記載されたものであって、いずれも、前記ウの相違点1B-1及び相違点1B-2に係る特定事項を備えるものである。
そうすると、本件発明7は、前記ウと同じ理由により、甲1B発明及び甲1~甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 取消理由2(甲2を主引例とした進歩性)
(1)甲2に記載された発明
甲2(前記2(2)参照。)の【0070】の【表1】に示された「離型層3」に着目し、同【0065】~【0069】の記載を参酌すれば、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲2発明)
「厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムに、離型層3の離型剤組成(a1:メチル基とヘキセニル基とフェニル基の比が100:1:0.1である硬化型シリコーン樹脂(分子量200000)を24重量部と、a2:メチル基とビニル基の比が100:0.2である硬化型シリコーン樹脂(分子量200000)を33重量部と、a3:メチル基とヒドロシリル基の比が100:1.5である硬化型シリコーン樹脂(分子量200000)を8重量部と、a4:メチル基とヒドロシリル基の比が100:0.4である硬化型シリコーン樹脂(分子量200000)を33重量部と、b1:未反応性シリコーン樹脂(分子量80000)を1重量部と、c1:付加型白金触媒(PL-50T:信越化学工業製)を1重量部)の離型剤を塗布し、ドライヤー温度150℃、ライン速度30m/分の条件で得られた離型ポリエステルフィルム。」
(2)甲2発明との対比・判断
ア 本件発明1
本件発明1と甲2発明を対比すると、甲2発明の「厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフィルム」及び「離型剤」は、それぞれ、本件発明1の「第一離型フィルム」及び「離型層」に相当する。
甲2発明の「a1:メチル基とヘキセニル基とフェニル基の比が100:1:0.1である硬化型シリコーン樹脂(分子量200000)」は、本件発明1の「ヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂」に相当する。
甲2発明の「a2:メチル基とビニル基の比が100:0.2である硬化型シリコーン樹脂(分子量200000)」は、本件発明1の「ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂」に相当する。
甲2発明において、反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量はb1の1重量部であり、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計は、a1+a2+a3+a4の98重量部であるから、甲2発明の反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計100重量部に対して、1.02重量部であり、
ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計はa1+a2の57重量部であり、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂はa2の33重量部であるから、甲2発明のビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量は、33×100/57≒57.9重量部である。
甲2発明は、粘着剤層を有しない離型ポリエステルフィルムであるから、仮に、本件発明1の「第一離型フィルム」に対応するものとして対比すると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「第一離型フィルムであって、
前記第一離型フィルムは、フィルム基材上に離型層を備え、
前記第一離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第一離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂およびヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を20~80重量部含む、第一離型フィルム。」
<相違点2-1>
本件発明1は「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備える離型フィルム付き粘着シートであって、前記第一離型フィルムおよび前記第二離型フィルムは、それぞれ、フィルム基材上に離型層を備え、前記第一離型フィルムの離型層が前記粘着シートの第一主面に接しており、前記第二離型フィルムの離型層が前記粘着シートの第二主面に接しており、前記粘着シートは、光硬化型アクリル系ポリマーを含」む「離型フィルム付き粘着シート」であるのに対し、甲2発明は、離型剤を塗布して得られた離型ポリエステルフィルムである点。
<相違点2-2>
本件発明1の「前記第一離型フィルムの離型層は、」「反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量が、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計100重量部に対して、0.5重量部以下」であるのに対し、甲2発明は、上記計算のとおり、1.02重量部である点。
<相違点2-3>
本件発明1の「第二離型フィルムの離型層は、」「付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第二離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、少なくとも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、前記第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物よりも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量が多く、前記第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも小さい」のに対し、甲2発明は、第二離型フィルム自体を備えていない点。
<相違点2-1>についての検討
甲2発明の変形例として、甲2発明を認定した甲2の【0003】には、甲2発明の「離型フィルム」の適用対象として、「粘着層の両面に剥離力の相対的に低い軽剥離フィルムと、剥離力の相対的に高い重剥離フィルムが積層された積層体構成からな」る「基材レス両面粘着シート」が挙げられ、同【0056】には、剥離力の調整について、「本発明において特定の剥離力を調整する方法は、離型層中の組成を選択することにより達成することができるが、その他の手段も採用でき、主にシリコーン離型層の離型剤の種類を、所望の剥離力に応じて変更することが好ましく、さらには、剥離力は用いる離型剤の塗布量に大きく依存するため、その離型剤の塗布量を調整する方法がさらに好ましい。」と記載され、さらに同【0063】には、甲2発明の「離型ポリエステルフィルム」に、アクリル系粘着剤組成物を塗工して、その離型特性を評価したことも記載されている。
また、アクリル系粘着剤組成物として、光硬化型のものと、そうでないものが存在することは、例示するまでもなく周知である。
そうすると、甲2発明の「離型ポリエステルフィルム」について、前記したような変形例を採用し、また、甲2発明の変形例である「アクリル系粘着剤組成物」を備えた形態において、「アクリル系粘着剤組成物」として光硬化型のものを選択することにより、前記相違点2-1に係る構成を想到することは、当業者が容易になし得たことといえる。
<相違点2-2>についての検討
甲2の【0045】には「本発明において使用するシリコーン樹脂に含まれる未反応性シリコーン樹脂は、1~10重量%の範囲であり、好ましくは1~5重量%である。未反応性シリコーン樹脂の含有量が1%より低いと軽剥離にならず、5重量%を超えると、硬化性が著しく低下し、密着性も悪化する不具合がある。」と記載されている。
そうすると、甲2発明において、反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量が、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計100重量部に対して、1.02重量%であるところ、これを、0.5重量%以下とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
<相違点2-3>についての検討
剥離力の調整について、甲2の【0056】には「本発明において特定の剥離力を調整する方法は、離型層中の組成を選択することにより達成することができるが、その他の手段も採用でき、主にシリコーン離型層の離型剤の種類を、所望の剥離力に応じて変更することが好ましく、さらには、剥離力は用いる離型剤の塗布量に大きく依存するため、その離型剤の塗布量を調整する方法がさらに好ましい。」と記載され、離型層中の組成については、甲2の【0039】に、当該離型フィルムの離型層に使用する硬化型シリコーン樹脂に含まれるヘキセニル基とフェニル基とヒドロシリル基の比について、「ヒドロシリル基を100とした時にヘキセニル基は35~65、ビニル基は5~35、フェニル基は1~20であることが好ましい」ことが記載されているものの、同【0039】には「ヘキセニル基が35未満だと、・・・30000mm/分での剥離力が高くなり、・・・ヘキセニル基が65を超えると、・・・300mm/分での剥離力が高くなり、・・・ビニル基が15未満だと、・・・30000mm/分での剥離力が高くなり、ビニル基が35を超えると、・・・300mm/分での剥離力が高くな」ると記載されており、これは、ヘキセニル基とビニル基は、いずれも少なすぎると高速剥離力が高くなりすぎ、多すぎると低速剥離力が高くなりすぎる、ということであって、これらの記載に基づいて、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量について、重剥離層の方が、軽剥離層よりも多いように調整するような技術思想を読み取ることはできない。
そうすると、前記相違点2-3に係る構成は、甲2の明細書の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。
また、前記1(2)ア(イ)で検討したように、甲1の明細書や、甲3の明細書には、ビニル基を備えたオルガノポリシロキサンとヘキセニル基を備えたオルガノポリシロキサンの添加量の量比と、剥離力との関係については、記載も示唆もないから、前記相違点2-3に係る構成は、甲1や甲3の明細書の記載に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲1~甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明3、4
本件発明3、4は、本件発明1の記載を引用する形式で記載されたものであって、いずれも、前記アの相違点2-2及び相違点2-3に係る特定事項を備えるものである。
そうすると、本件発明3、4は、前記アと同じ理由により、甲2発明及び甲1~甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明5
甲2の記載を参酌すれば、甲2には、前記(1)の甲2発明について、その製造方法も記載されているものと認められる。
そこで、本件発明5と甲2発明の製造方法を対比すると、前記アと同様の対応関係があるから、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「第一離型フィルムの製造方法であって、
前記第一離型フィルムは、フィルム基材上に離型層を備え、
前記第一離型フィルムの離型層は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第一離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂およびヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を20~80重量部含む、離型フィルムの製造方法。」
<相違点2-4>
本件発明5は、「第一主面と第二主面とを有する光硬化型の粘着シート;前記粘着シートの第一主面に仮着された第一離型フィルム;および前記粘着シートの第二主面に仮着された第二離型フィルムを備え、前記第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも小さい離型フィルム付き粘着シートの製造方法であって、アクリル系モノマーおよび/またはアクリル系モノマーの部分重合物、ならびに光重合開始剤を含む光硬化性粘着剤組成物が、前記第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間に層状に設けられた積層体を形成する工程;および前記第一離型フィルムと前記第二離型フィルムとの間の前記光硬化性粘着剤組成物に光を照射して、光硬化性粘着剤組成物を光硬化する工程を有」するものであるのに対し、甲2発明は、離型剤を塗布して得られた離型ポリエステルフィルムの製造法である点。
<相違点2-5>
本件発明5の「前記第一離型フィルムの離型層は、」「反応性官能基を有していないポリオルガノシロキサン樹脂の量が、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物の合計100重量部に対して、0.5重量部以下」であるのに対し、甲2発明は、上記計算のとおり、1.02重量部である点。
<相違点2-6>
本件発明5は、「第二離型フィルム」の「フィルム基材上の」「光硬化性粘着剤組成物と接する側の面に離型層を備え」るものであって、「第二離型フィルムの離型層は、」「付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂と、ヒドロシリル基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含むシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層であり、前記第二離型フィルムの離型層を構成する前記シリコーン系樹脂組成物は、付加反応性の官能基を有するポリオルガノシロキサン樹脂として、少なくとも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を含み、前記第一離型フィルムの離型層を構成するシリコーン系樹脂組成物よりも、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対する、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の量が多く、前記第一離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度が、前記第二離型フィルムの前記粘着シートからのピール強度よりも小さい」のに対し、甲2発明は、第二離型フィルム自体を備えていない点。
事案に鑑み、相違点2-5及び相違点2-6について検討すると、相違点2-5及び相違点2-6は、実質的に前記アの相違点2-2及び相違点2-3と同じであるから、前記相違点2-5について検討するまでもなく、前記アで検討したのと同様の理由により、本件発明5は、甲2発明及び甲1~甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明7
本件発明7は、本件発明5の記載を引用する形式で記載されたものであって、いずれも、前記ウの相違点2-5及び相違点2-6に係る特定事項を備えるものである。
そうすると、本件発明7は、前記ウと同じ理由により、甲2発明及び甲1~甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 取消理由3(サポート要件)
(1)当審の判断
本件発明が解決しようとする課題は、本件特許の明細書の記載から見て「せん断による離型フィルムの剥離が生じ難く、かつ離型フィルムの高速剥離性に優れる離型フィルム付き粘着シートの提供(【0007】参照。)」であると認められる。
そして、本件特許の明細書の【0081】の【表1】には、ビニル基を備えたオルガノポリシロキサン(LTC761)とヘキセニル基を備えたオルガノポリシロキサン(KS-847T)の配合比率を0:100~100:0に変えた比較例1、実施例1~4及び比較例2が記載され、当該配合比率が0:100の比較例1及び100:0の比較例2では、所望のピール強度が得られなかったことが示されている。
これに対し、本件訂正後の本件発明1及び本件発明5では、「ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を20~80重量部含」むことが特定されたことにより、当該配合比率が0:100又は100:0に限りなく近い配合比のシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層を第一離型フィルムの離型層(軽剥離層)に用いたものは、本件発明1及び本件発明5に含まれないものとなった。本件発明1を引用する形式で記載された本件発明3及び本件発明4、並びに本件発明5を引用する形式で記載された保険発明7についても同様である。
そうすると、本件発明1、3~5、7は、明細書に記載された発明であるから、本件特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさないものとはいえない。
(2)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書の66頁下4行~67頁12行において、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂とヘキセニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の合計100重量部に対して、ビニル基を有するポリオルガノシロキサン樹脂の含有量が99重量部の場合には、剥離速度10m/分におけるヒール強度が0.30N/50mmを超え、高速剥離性に劣るものになるとの趣旨の主張をしているが、前記(1)のとおり、当該配合比率が0:100又は100:0に限りなく近い配合比のシリコーン系樹脂組成物の硬化樹脂層を用いたものは、本件発明1及び本件発明5に含まれないものとなったから、申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては、本件訂正後の請求項1、3~5、7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項2、6は本件訂正により削除され、当該請求項に係る特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-701268