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特許異議申立

2023-700800

潤滑油組成物及び基油

審判番号
2023-700800
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-564658
登録番号
7219232
請求日
2023年08月03日
審決日
2023年11月07日
公報発行日
2023年12月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ENEOS株式会社
  • 【権利者代理人】棚井 澄雄
  • 【権利者代理人】寺本 光生
  • 【権利者代理人】川渕 健一
  • 【異議申立人】笠原 ケイ子
審判長/審判官
  • 審判長 関根 裕
  • 審判官 安積 高靖
  • 審判官 瀬下 浩一
分類
P1652.121-Y (C10M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7219232号発明「潤滑油組成物及び基油」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7219232号の請求項1、2、4、5、7~9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本件特許(特許第7219232号)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成30年12月28日(優先権主張 平成30年1月10日)の出願であって、令和5年1月30日に特許権の設定登録がされ、同年2月7日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1、2、4、5、7~9に係る特許に対し、令和5年8月3日に特許異議申立人 笠原 ケイ子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許の特許請求の範囲 本件特許の請求項1、2、4、5、7~9に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2、4、5、7~9に記載された以下のとおりのものである(請求項1、2、4、5、7~9に係る発明を、それぞれ「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。 「【請求項1】 基油と酸化防止剤とを含有する潤滑油組成物であって、 前記基油は、波長274nmにおける吸光度が0.3以上2.8以下であり、 前記基油は鉱油であり、 前記基油は、硫黄分の含有割合が0.05質量%以下である、潤滑油組成物。 【請求項2】 前記基油は、波長274nmにおける吸光度が0.3以上0.95以下である、請求項1に記載の潤滑油組成物。」 「【請求項4】 前記基油は、さらに、芳香族炭化水素成分の含有割合(%CA)が1.0以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。 【請求項5】 前記基油は、さらに、粘度指数が95以上130以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。」 「【請求項7】 前記酸化防止剤は、芳香族アミン系酸化防止剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。 【請求項8】 さらに、さび止め剤を含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。 【請求項9】 発電用タービン油である、請求項1~8のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。」 第3 特許異議申立理由の概要 1 証拠方法の一覧 申立人が提示した証拠方法は、甲第1号証~甲第2号証である。以下、甲第1号証を「甲1」などという。 甲1:特開平7-228882号公報 甲2:今井真弓外3名、「最近の潤滑油基油についての一考察」、関税中央分析所報、第44号、第55~61頁、財務省関税中央分析所、2004年12月発行 2 申立理由(新規性欠如・進歩性欠如) 本件発明1、2、4、5、7~9は、甲1に記載された発明であって、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものであるか、または、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1、2、4、5、7~9に係る特許は、同法113条2号に該当する。 第4 甲号証の記載 1 甲1の記載 甲1には、次の記載がある。 「【請求項1】 芳香族分含有量0.5重量%以下、硫黄含有量5ppm以下、粘度指数100以上の鉱油又は合成油を基油とし、その基油にアルキル化ジフェニルアミンを0.1~2重量%、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミンを0.1~3重量%、フォスファイトを0.1~1重量%、ベンゾトリアゾール及びその誘導体の少なくとも1種を0.001~0.5重量%の割合で配合してなることを特徴とするガスタービン油組成物。」 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ガスタービン油組成物に関し、詳しくは高温条件下においても非常に高い酸化安定性を示すと共に、スラッジ発生が極めて少なく色安定性に優れ、長期に亘り高い酸化安定性を有するガスタービン油組成物に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、ガスタービン油のような酸化安定性を重視する潤滑油は、酸化防止剤やさび止め剤、消泡剤などの各種添加剤を鉱油からなる基油に配合して製造されている。・・・」 「【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、基油として特定の性状を有する鉱油を使用し、さらに添加剤としてアルキル化ジフェニルアミン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、フォスファイト、ベンゾトリアゾール又はその誘導体を特定量配合することにより、高温においても非常に高い酸化安定性を示すと同時に、スラッジ発生が極めて少なく色安定性に優れ、長期に亘り酸化安定性を有することを見い出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。」 「【0007】本発明のガスタービン油組成物において使用される基油は、特定の性状を有する鉱油又は合成油である。この基油の芳香族分含有量は、0.5重量%以下であることが必要であり、好ましくは0.1重量%以下であり、特に好ましくは0重量%である。この芳香族分含有量は、環分析法(n-d-m)、ASTM D3238により測定したものである。また、この基油の硫黄含有量は、5ppm以下であることが必要であり、好ましくは2ppm以下である。この硫黄含有量は、JIS K2541、微量電量滴定式酸化法により測定したものである。さらに、この基油は、潤滑油として使用できる粘度を有するものであり、基油の粘度指数が100以上であることが必要であり、好ましくは粘度指数が100~150であり、さらに好ましくは110~150であり、特に好ましくは115~150である。この粘度指数は、JIS K2283に規定されている方法により測定したものである。基油が上記の範囲の性状を満たさない場合は、所望の性能が得られない。この基油の好適なものとしては、例えば減圧蒸留留出油をフルフラールなどの溶剤で抽出処理し、得られたラフィネートをメチルエチルケトンなどの溶剤で溶剤脱ろう処理した後、さらに高圧下にて水素精製し、硫黄分などの不純物を除去したものが挙げられる。」 「【0018】本発明のガスタービン油組成物においては、アルキルコハク酸又はその誘導体を添加することにより、さらに長期の酸化安定性、色安定性を向上させることができる。アルキルコハク酸の誘導体の好適なものは、化5の一般式(5)又は化6の一般式(6)で表されるものである。」 「【0026】 【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明は、これらの例によって何ら制限されるものではない。実施例及び比較例における評価方法は、次の方法に従って行った。 【0027】酸化安定性の評価方法 (1)RBOT(分) 潤滑油の酸化防止性能を評価する方法の一つで、JIS K2514に制定されている回転ボンベ式酸化安定度試験によるもの。 (2)COST後の全酸価増加(mgKOH/g)、粘度変化率(%)、スラッジ生成量(mg/100ml)、色相(ASTM) COSTは、航空用潤滑油の評価方法の一つで、FTM-791b-5308-6に制定されている。本実施例においては、MIL-L-223699に従い、試験片、試験温度を変更して試験を実施した。すなわち、試験片はカドミウムメッキ鋼の代わりに銀を使用し、試験温度は175℃にした。また、試験時間についても、規定の72時間に加えてさらに長い96時間についても試験を実施し、油の長期にわたる酸化安定性について確認した。そして、調製したタービン油組成物についての試験後の全酸価増加、粘度変化率(@37.8℃)、スラッジ生成量を比較評価した。全酸価増加、粘度変化率、スラッジ生成量が少ないほど酸化安定性に優れたガスタービン油あり、特にガスタービン油としての実用性の面からスラッジ生成の少ないものが好ましい。また、色相についても、ASTMD-1500により測定し、比較を行った。 【0028】(3)TOST後の全酸価増加、RBOT(分)、色相(ASTM) TOSTは、潤滑油の酸化防止性能を評価する方法の一つで、JIS K2514に制定されているタービン油酸化安定度試験法によるもので、規定された試験時間後の全酸価にて試験結果を表す。JIS K2514には、規定されていないが、試験後のガスタービン油のRBOT、色相(ASTM)についても測定、比較を行った。これらが優れているほど、長期にわたる酸化安定性を有するタービン油であることを示している。 【0029】次に、実施例及び比較例において使用した鉱油及び各添加剤を以下に示す。 鉱油(基油) 基油A~Dは、減圧蒸留留出油をフルフラールで溶剤抽出し、メチルエチルケトンで溶剤脱ろう後、さらに水素化精製した基油で、粘度がISO VG32のものであり、基油に含まれる芳香族分はASTM D3238の環分析法(n-d-m)による測定結果である。 アルキルジフェニルアミン 一般式(1)において、R1、R2が、水素原子、-C4H9、-C8H17のいずれかの組み合わせの混合物。 【0030】アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン 一般式(2)において、R3が、-C8H17のもの。 ベンゾトリアゾール 一般式(4)で表されるベンゾトリアゾール。 ヒンダードフェノール 下記構造のもの。 【0031】 [図:0001404837000001.jpg] 【0032】アルキルコハク酸誘導体(1) 一般式(5)において、R6が炭素数12のアルケニル基であり、R7が炭素数5のアルキル基であるのもの。 【0033】アルキルコハク酸誘導体(2) 一般式(6)において、R8が炭素数12のアルキル基であり、R9が炭素数12のアルキル基であるのもの。 【0034】実施例1 基油Aに、アルキル化ジフェニルアミン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、トリイソオクチルフォスファイト、ベンゾトリアゾール、アルキルコハク酸誘導体(1)及び消泡剤を、表1に示される配合割合で配合し、ガスタービン油組成物を調製した。ガスタービン油組成物の評価を行い、その結果を表1に示した。 【0035】実施例2 実施例1において、トリイソオクチルフォスファイトの代わりにジフェニルイソデシルフォスファイトを使用し、アルキルコハク酸誘導体(1)の代わりにアルキルコハク酸誘導体(2)を使用した以外は実施例1と同じ成分を表1に示される配合割合で配合し、ガスタービン油組成物を調製した。 【0036】実施例3 実施例1において、トリイソオクチルフォスファイトの代わりにトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトを使用し、さらにアルキルコハク酸誘導体(1)と共にアルキルコハク酸誘導体(2)を使用した以外は実施例1と同じ成分を表1に示される配合割合で配合し、ガスタービン油組成物を調製した。 【0037】実施例4 実施例1において、トリイソオクチルフォスファイトの代わりにトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトを使用した以外は実施例1と同じ成分を表1に示される配合割合で配合し、ガスタービン油組成物を調製した。 【0038】実施例5 実施例1において、トリイソオクチルフォスファイトの代わりにトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトを使用し、さらにアルキルコハク酸誘導体(1)の代わりにアルキルコハク酸誘導体(2)を使用した以外は実施例1と同じ成分を表1に示される配合割合で配合し、ガスタービン油組成物を調製した。 【0039】比較例1 基油Aに、トリイソオクチルフォスファイトを添加せず、アルキルコハク酸誘導体(1)に代えてアルキルコハク酸誘導体(2)を添加した以外は実施例1と同じ成分を、表2に示される配合割合で配合し、ガスタービン油組成物を調製した。ガスタービン油組成物の評価を行い、その結果を表2に示した。 【0040】比較例2 基油Aに、トリイソオクチルフォスファイトの代わりにトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトを使用し、アルキルコハク酸誘導体(1)に代えてアルキルコハク酸誘導体(2)を使用し、ベンゾトリアゾール誘導体を添加しなかった以外は実施例1と同じ成分を、表2に示される配合割合で配合し、ガスタービン油組成物を調製した。ガスタービン油組成物の評価を行い、その結果を表2に示した。 【0041】比較例3 基油Aの代わりに基油Bを使用した以外は、実施例5と同様にしてガスタービン油組成物を調製した。ガスタービン油組成物の評価を行い、その結果を表3に示した。 【0042】比較例4 基油Aの代わりに基油Cを使用した以外は、実施例5と同様にしてガスタービン油組成物を調製した。ガスタービン油組成物の評価を行い、その結果を表3に示した。 【0043】比較例5 基油Aの代わりに基油Dを使用した以外は、実施例5と同様にしてガスタービン油組成物を調製した。ガスタービン油組成物の評価を行い、その結果を表3に示した。 【0044】比較例6 基油Bに、アルキル化ジフェニルアミン、ヒンダードフェノール、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ベンゾトリアゾール、アルキルコハク酸誘導体(1)及び消泡剤を、表3に示される配合割合で配合し、ガスタービン油組成物を調製した。ガスタービン油組成物の評価を行い、その結果を表3に示した。 【0045】比較例7 市販の鉱油系ガスタービン油を比較評価した。その結果を表3に示した。 【0046】 【表1】 [図:0001404837000002.jpg] 【0047】 【表2】 [図:0001404837000003.jpg] 【0048】 【表3】 [図:0001404837000004.jpg] なお、表1、表2及び表3において、フォスファイト欄の英字は、次のものを意味する。 a:トリイソオクチルフォスファイト b:ジフェニルイソデシルフォスファイト c:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト 【0049】 【発明の効果】本発明のガスタービン油組成物は、高温条件下においても非常に高い酸化安定性を示すと共に、スラッジ発生が極めて少なく色安定性に優れ、長期に亘り酸化安定性を示す。」 2 甲2の記載 甲2には、次の記載がある。 「自動車のエンジンオイルなどの調製潤滑剤は、基油として用いられる石油又は歴青油の含有量(以下、「石油分」という)や、比重及び引火点等の物理的特性により関税率表の分類が決定される。」(第55頁左欄「1.緒言」第1~4行)。 「本研究では、国産のVHVI基油を入手し、各種の機器分析によるデータ収集を行い、従来の一般石油系基油(以下、「一般基油」という)と比較した。また、VHVI基油の連続溶出カラムクロマトグラフィーによる分析について検証を行ったので報告する。」(第55頁右欄下から第1~5行) 「2.1 試料 国産VHVI基油(3点) 国産一般基油(6点) 輸入品(神戸税関で輸入申告された調製潤滑油で、SAE10W40のもの1点、SAE15W50のもの2点)」(第56頁左上欄「2.1 試料」) 「3.4 UV 一般基油及びVHVI基油の紫外・可視吸収スペクトルをFig.4に示す。一般基油は270nm付近に不飽和結合によると考えられる吸収が観測されたのに対し、VHVI基油ではほとんど吸収は観測されなかった。これは、VHVI基油は精製過程での過剰な水素添加により、不飽和結合が飽和結合になったためであると考えられる。」(第57頁右欄「3.4 UV」) 「 [図:0001404837000005.jpg] 」(第58頁) 第5 当審の判断 1 甲1に記載された発明 甲1の実施例1(【0034】、【0046】の【表1】)に着目すると、甲1には、「芳香族分0.0重量%、硫黄分1ppm、粘度指数119である基油Aに、アルキル化ジフェニルアミン0.25重量%、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン0.30重量%、フォスファイトa(トリイソオクチルフォスファイト)0.3重量%、ベンゾトリアゾール0.005重量%、アルキルコハク酸誘導体(1)0.05重量%、消泡剤0.002重量%となる配合割合で配合し、RBOT1950分、COST(72時間)後の粘度変化率2.80%、全酸価増加0.05mgKOH/g、スラッジ1.2mg/100ml、色相(ASTM)L4.5、COST(96時間)後の粘度変化率5.0%、全酸価増加0.34mgKOH/g、スラッジ1.8mg/100ml、色相(ASTM)L8.0、TOST2000時間後の全酸価増加0.00mgKOH/g、ROBT1200分、色相(ASTM)L5.5であるガスタービン油組成物」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 2 対比 甲1発明と本件発明1を対比する。 甲1発明の「基油A」は、本件発明1の「基油」に相当する。また、甲1発明の「基油A」は、甲1【0029】に「鉱油(基油)」として「基油A~D」の説明があることから、本件発明1の「前記基油は鉱油であり」を充足する。さらに、甲1発明の「基油A」は、「硫黄分1ppm」を含むものであるから、本件発明1の「前記基油は、硫黄分の含有割合が0.05質量%以下である」を充足する。 甲1発明の「アルキル化ジフェニルアミン」、「アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン」、「フォスファイトa(トリイソオクチルフォスファイト)」、「ベンゾトリアゾール」、「アルキルコハク酸誘導体(1)」は、甲1【0005】の「さらに添加剤としてアルキル化ジフェニルアミン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、フォスファイト、ベンゾトリアゾール又はその誘導体を特定量配合することにより、高温においても非常に高い酸化安定性を示すと同時に、スラッジ発生が極めて少なく色安定性に優れ、長期に亘り酸化安定性を有することを見い出し」という記載、【0018】の「本発明のガスタービン油組成物においては、アルキルコハク酸又はその誘導体を添加することにより、さらに長期の酸化安定性、色安定性を向上させることができる。」という記載を参酌すると、いずれも本件発明1の「酸化防止剤」に相当する。 甲1発明の「ガスタービン油組成物」は、甲1【0002】の「ガスタービン油のような・・・潤滑油」との記載からみて、本件発明1の「潤滑油組成物」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点及び相違点を有する。 <一致点> 「 基油と酸化防止剤とを含有する潤滑油組成物であって、 前記基油は鉱油であり、 前記基油は、硫黄分の含有割合が0.05質量%以下である、潤滑油組成物。」 <相違点> 基油について、本件発明1は、「前記基油は、波長274nmにおける吸光度が0.3以上2.8以下であり」と特定するのに対し、甲1発明は、吸光度について特定がされていない点。 3 相違点の検討 甲2のFig.4には、一般石油系基油A~Fの紫外・可視吸収スペクトルが記載されており、それら一般石油系基油A~Fのいずれも、波長274nmにおける吸光度が0.4~0.8程度の範囲内であることが読み取れる。しかしながら、甲2に記載の一般石油系基油A~Fと甲1発明の基油Aとは異なる基油であるため、成分や物性が同様であるか不明であり、吸光度についても同様であるとまでは認められない。よって、当該相違点は実質的な相違点である。 そして、甲2には、当該吸光度と酸化安定性との関係について何ら記載されておらず、甲1発明において、甲2の記載の吸光度を採用し、基油Aの波長274nmにおける吸光度を0.4~0.8程度とする動機があるとはいえない。 さらに、本件発明1は、当該吸光度の特定により、「潤滑油組成物の酸化安定性が高められて、酸化劣化進行程度の指標となる酸価を、より長時間低い値(例えば、5000時間、0.40mgKOH/g未満)に保つことができ、より長寿命化が図れる」(【0014】)という顕著な効果を奏するものであり、実施例においても、当該吸光度が0.58~0.98の範囲内にある実施例1~4、11、12は、当該吸光度が0.23や2.9等の「0.3以上2.8以下」の範囲外である例と比較して、酸化安定性が高められる効果を奏することが実験により具体的に示されている(【0068】~【0071】)。 そうすると、甲1発明において、基油Aについて、「波長274nmにおける吸光度が0.3以上2.8以下」とすることが、当業者が容易になし得ることとはいえない。 4 申立人の主張 申立人は、「甲1発明には、基油Aに関して、波長274nmにおける吸光度については記載されていないものの、甲第2号証において、一般基油の吸光度が約0.4~0.8の範囲であることが示されていることから、甲1発明に記載の基油Aの274nmの吸光度も約0.4~0.8の範囲内であると推認され」る旨を主張している。しかしながら、甲2記載の一般石油系基油A~Fの吸光度と甲1発明の基油Aの吸光度が同様であることの根拠は示されていないこと、及び基油の吸光度は原料の組成や水素化精製等の製造条件等によって異なり、甲2に示された以外の他の一般的な基油全般について、必ずしも甲2に記載の一般石油系基油と同様の吸光度を有するとはいえないことを考慮すれば、甲1発明の基油Aが甲2に記載の一般石油系基油と同様の吸光度を有するとまでは認められない。よって、当該申立人の主張は採用できない。 5 小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないから、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、また、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。 6 本件発明2、4、5、7~9について 本件発明2、4、5、7~9は、いずれも本件発明1を引用して特定するものであり、本件発明1に発明特定事項をさらに追加したものである。 したがって、本件発明2、4、5、7~9についても、甲1に記載された発明であるとはいえず、また甲1発明に対して進歩性を有するものであり、申立理由によって取り消されるべきものとすることはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、申立人による特許異議申立書の理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1、2、4、5、7~9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2、4、5、7~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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