特許異議申立
2023-700732
UV-LEDフォトリアクタのための放熱装置および方法
- 審判番号
- 2023-700732
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-555798
- 登録番号
- 7204485
- 請求日
- 2023年07月14日
- 審決日
- 2023年11月16日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】関根 毅
- 【権利者代理人】赤岡 明
- 【権利者代理人】鈴木 健之
- 【異議申立人】伊藤 晃子
- 審判長/審判官
- 審判長 塩見 篤史
- 審判官 安積 高靖
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P1652.121-Y (A61L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7204485号発明「UV-LEDフォトリアクタのための放熱装置および方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7204485号の請求項1及び29に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許(特許第7204485号)の請求項1~31に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)1月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年1月19日 米国)を国際出願日とする出願であって、令和5年1月5日に特許権の設定登録がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1及び29に係る特許に対し、令和5年7月14日に特許異議申立人 伊藤 晃子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許の特許請求の範囲
本件特許の請求項1及び29に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び29に記載された以下のとおりのものである(請求項1及び29に係る発明を、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明29」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。
「【請求項1】
紫外線(UV)放射線を流体流に照射するための紫外線(UV)リアクタであって、
熱伝導性材料を含む流体導管と、
回路領域を含む第1の表面を有する熱伝導基板を備えるプリント回路基板(PCB)と、
前記熱伝導基板の前記第1の表面の前記回路領域を覆うはんだマスクと、
前記PCBに動作可能に接続されているUV発光ダイオード(UV-LED)であり、放射線を前記流体導管へと方向付けるように配向されている、UV-LEDと、
を備え、
前記PCBの前記熱伝導基板の前記第1の表面の熱接触領域は、はんだマスクコーティングがなく、前記熱伝導性材料は、前記熱伝導基板の前記第1の表面の前記熱接触領域に熱結合されている、紫外線(UV)リアクタ。」
「【請求項29】
流体流に紫外線(UV)放射線を照射するための紫外線(UV)リアクタであって、
流体が流れることを可能にするための1つまたは複数の熱伝導壁によって画定される流体導管と、
熱伝導性プリント回路基板上に動作可能に取り付けられた少なくとも1つのUV発光ダイオード(UV-LED)であって、前記UV-LEDは、放射線を前記流体導管に導くように配向されている、UV-LEDと
を備え、
前記プリント回路基板ははんだマスクコーティングがない熱接触領域を含み、
前記プリント回路基板の前記熱接触領域は、前記流体導管の前記1つまたは複数の熱伝導壁に熱接触し、
前記UV-LEDは、前記プリント回路基板の第1の側にあり、前記プリント回路基板の前記熱接触領域は、前記プリント回路基板の第1の側の裏側の前記プリント回路基板の第2の側にある、リアクタ。」
第3 特許異議申立理由の概要
1 証拠方法の一覧
申立人が提示した証拠方法は、甲第1号証~甲第4号証である。以下、甲第1号証を「甲1」などという。
甲1:特開2011-16074号公報
甲2:特開2015-65041号公報
甲3:NPOサーキットネットワーク編、「プリント板と実装技術 キーテーマ&キーワードのすべて」、第105頁、日刊工業新聞社、2005年5月30日発行
甲4:特開2015-225878号公報
2 申立理由(進歩性欠如)
本件発明1及び29は、甲1に記載された発明及び甲2~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1及び29に係る特許は、同法113条2号に該当する。
第4 甲号証の記載
1 甲1の記載
甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】
水を溜める容器又は水を流す流路の内壁に、水に対して紫外線を照射する紫外線LEDユニットが配された紫外線殺菌浄水装置において、
前記紫外線LEDユニットは、中心発光波長275±5nmに選定されたLEDチップがベース表面にマウントされると共に、前記LEDチップの発光面から水接触面となるウィンドウまで、水の屈折率に実質的に等しい屈折率の紫外線透過性アモルファスフッ素樹脂が充填されたことを特徴とする紫外線殺菌浄水装置。」
「【請求項6】
前記流路が、所定長さの直管で形成され、前記紫外線LEDユニットが、管端部の一方又は双方から対向する管端部に向けて配され、上流となる一方の管端部にはその側面に流入口が形成され、下流となる他方の管端部にはその側面に流出口が形成されて成る請求項1乃至3いずれか記載の紫外線殺菌浄水装置。
【請求項7】
前記流路が、所定長さの直管で形成され、前記紫外線LEDユニットが管内壁に配されて成る請求項1乃至3いずれか記載の紫外線殺菌浄水装置。」
「【0005】
図5は、このような従来の紫外線殺菌浄水装置61を示し、容器62の内壁63に紫外線LEDユニット64…が配されている。
紫外線LEDユニット64は、メタル缶ケース65のベース66にLEDチップ67が取り付けられてワイヤボンディングされている。そして、水接触面となるウィンドウ68に石英ガラス(硬質ガラス)などの透光部材が嵌め付けられて缶ケース65が気密シールされている。
この容器62に殺菌処理しようとする水を入れ、紫外線LEDユニット51を点灯させると、LEDチップ67の発光面69から照射された紫外線は、メタル缶ケース65内の空気層L1、ウィンドウ68となるガラス層L2を透過して水中に放射され、水が殺菌処理される。」
「【0014】
図1に示す紫外線殺菌浄水装置1は、旅行などに携帯可能なタイプで、水を溜めるコップ状の容器2の底面内側(内壁)2Bに、水に対して紫外線を照射する紫外線LEDユニット3が配されている。
紫外線LEDユニット3は、メタル缶ケース4のベース表面5に、中心発光波長275±5nmに選定されたLEDチップ6がマウントされると共に、当該LEDチップ6の発光面6aから水接触面となるウィンドウ7まで、水の屈折率に実質的に等しい紫外線透過性アモルファスフッ素樹脂8が充填されている。
LEDチップ6の中心発光波長を275±5nmとしたのは、発光波長が280nmを超えると水中吸収率の低下による効率上昇より、殺菌効果の低下による効率低下が影響し、発光波長が270nm以下の場合は、殺菌効果の上昇による効率上昇より水中吸収率の上昇による効率低下の影響を受けるためである。
なお、本例では、中心発光波長が275nmのLEDチップ6を用いた。」
「【0017】
容器2は、水を入れる容器本体11と、その底部に対して例えばバヨネット式に着脱可能に装着されるドライブユニット12と、上面開口を塞ぐ蓋体13を備えている。
容器本体11は、その内面に陽極酸化法により鏡面状酸化チタン膜14が形成されたチタン容器でなる。
酸化チタン膜は、紫外線が照射されたときに光触媒として機能し、浄化処理しようとする水に含まれる有機物を分解する。
また、底面2に設けられたLEDユニット3が発熱すると、その熱がチタン製の容器本体から水に伝導されて、容器本体11内の水が対流を生じて効率よく光触媒となる酸化チタン膜14に接触される。
【0018】
なお、容器本体11の底部には、紫外線LEDユニット3を嵌め付けられる透孔15が形成され、LEDユニット3を装着したときにウィインドウ6が底面内側2Bに面一に固定されるように設計されており、透孔15とLEDユニット3の隙間から水が漏れないようにパッキンリング16が設けられている。
【0019】
また、容器本体11の底部外側にはLEDユニット3に電源を供給するためにコネクタ17が配され、先端にプラグ18を取り付けた給電線19を介して、ドライブユニット12に接続されている。
ドライブユニット12は、スイッチ20をオンすることによりバッテリ21から紫外線LEDユニット3に電源を供給する電源回路22が内蔵されている。」
「【0026】
図3はさらに他の実施形態を示し、本例の紫外線殺菌浄水装置41は、直管状の金属パイプ42で形成された水を流す流路の管端部内壁43に、水に対して紫外線を照射する紫外線LEDユニット3が配されている。
紫外線LEDユニット3は、管端部42a及び42bの一方又は双方から対向する管端部に向けて配されており、本例では、双方の管端部42a及び42bに設けられている。
また、上流となる一方の管端部42aにはその側面に流入口44inが形成され、下流となる他方の管端部42bにはその側面に流出口44outが形成されて成る。
そして、パイプ42の内周面には、鏡面状酸化チタン膜45が形成されている。
【0027】
なお、LEDユニット3は、実施例1と同じ構造のものが用いられており、メタル缶ケース4のベース表面5に、中心発光波長275nmのLEDチップ6がマウントされ、当該LEDチップ6の発光面6aから水接触面となるウィンドウ7まで、結合性フッ素樹脂8Aの薄膜及び非結合性フッ素樹脂8Bの二層構造の紫外線透過性アモルファスフッ素樹脂8が充填されている。
【0028】
本例によれば、パイプ42に水を流しながら紫外線LEDユニット3を点灯させて紫外線を水中に照射するときの反射損失が少なく、また、パイプ42の双方の管端部42a及び42bから水中に拡がりながら放射された紫外線はパイプ42の内周面に形成された鏡面状酸化チタン膜45で反射されてパイプ42内にくまなく照射されるので、効率的に紫外線浄水処理を行うことができる。
また、パイプ42内を水が流れることにより、水中の有機物が酸化チタン膜45に触れれると、酸化チタン膜45の光触媒作用により有機物が分解されて水質浄化される。」
「
[図:0001404826000001.jpg]
」
「
[図:0001404826000002.jpg]
」
「
[図:0001404826000003.jpg]
」
2 甲2の記載
甲2には、次の記載がある。
「【請求項1】
一面に絶縁層が形成された金属ベース基板と;
前記絶縁層上に設けられ、動作時に発熱する表面実装部品と;
前記絶縁層の表面に形成され、前記表面実装部品が実装される複数個のランドおよびこのランドに接続されるとともに前記表面実装部品の発熱部に近い前記ランドの近傍を通過するように設けられる導電パターンを有する導体と;
この導体を埋めるように前記表面実装部品の周囲の前記絶縁層上に塗布されたソルダーレジストと:
前記導電パターンの前記表面実装部品の発熱部に近い前記ランドの近傍部分に設けられ、前記表面実装部品の周囲の前記ソルダーレジストに亀裂が発生したときに前記導電パターンを電気的に遮断する遮断手段と;
を具備していることを特徴とする電気装置。」
「【0008】
本実施形態の電気装置は、金属ベース基板、表面実装部品、導体、ソルダーレジストおよび遮断手段を有して形成される。
【0009】
金属ベース基板は、一面に絶縁層が形成され、この絶縁層上に表面実装部品が設けられる。表面実装部品は、動作時に発熱するものである。当該発熱は、比較的大きい発熱を意味する。
【0010】
導体は、金属ベース基板の絶縁層の表面に形成された複数個のランドおよび導電パターンを有してなる。複数個のランドには、表面実装部品が実装される。導電パターンは、ランドに接続されるとともに、表面実装部品の発熱部に近いランドの近傍を通過するように設けられている。
【0011】
ソルダーレジストは、導体を保護するとともに外部空間と絶縁するものであり、導体を埋めるように表面実装部品の周囲の絶縁層上に塗布されている。遮断手段は、導体の導電パターンの表面実装部品の発熱部に近いランドの近傍部分に設けられている。そして、表面実装部品の周囲のソルダーレジストに亀裂が発生したときに導電パターンを電気的に遮断するものである。」
「【0015】
本実施形態の電気装置1は、LED電球などの照明装置に光源として用いられる発光体であり、図1ないし図5に示すように構成される。以下、電気装置1を発光体1と称して説明する。図2において、発光体1は、金属ベース基板2、表面実装部品としてのLED素子3、導体4、ソルダーレジストとしての白色レジスト5および遮断手段6を有して形成されている。
【0016】
金属ベース基板2は、例えば、図1に示すように、円形に形成された厚さ1mmの板状のアルミニウム(Al)からなり、図3に示すように、その一面2aに例えば厚さ80μmの絶縁層7が形成されている。絶縁層7は、例えばエポキシ材および無機フィラー材からなり、高熱伝導性を有している。そして、絶縁層7の表面7aに、導体4が形成されている。
【0017】
導体4は、複数個のランド8a~8cおよび導電パターン9を有して形成されている。ランド8a~8cおよび導電パターン9は、それぞれ例えば厚さ10μmの金属箔例えば銅(Cu)からなっている。ランド8a~8cは、図5に示すように、例えば長方形に形成されており、LED素子3を実装している。
【0018】
LED素子3は、例えば直方体に形成され、内部に不図示のLEDチップ等が収納されている。LEDチップの収納部位は、LED素子3の発熱部10となっている。すなわち、LED素子3の動作時(通電時)に、LEDチップは、発熱して発光する。当該発熱は、比較的大きいものである。そして、LED素子3は、LEDチップの発光に伴って例えば白色光を放射する。
【0019】
LED素子3は、図3に示すように、その下面3a側に一対の電極11a,11bおよび固定極12を設けている。すなわち、LED素子3は、表面実装型のLEDに形成されている。一対の電極11a,11bは、LED素子3の一端側に並設され、LED素子3の内部においてLEDチップに電気接続されている。電極11aは、LED素子3の正極側、電極11bは、同じく負極側となっている。固定極12は、電気絶縁されて設けられているとともに、LED素子3の他端側に一部を外方に突出させて設けられている。一対の電極11a,11bおよび固定極12は、それぞれ銅板からなり、導体4のランド8a~8cと同形状の長方形に形成されている。
【0020】
そして、一対の電極11a,11bおよび固定極12は、ランド8a~8cに不図示の導電性の接着剤により取り付けられている。こうして、LED素子3は、導体4のランド8a~8cを介して、金属ベース基板2の絶縁層7上に設けられている。ここで、固定極12は、LED素子3を絶縁層7上に安定して取り付けている。LED素子3は、その一対の電極11a,11bが導体4によって通電されることにより、LEDチップが発熱して発光する。
【0021】
そして、LED素子3は、図1に示すように、その複数個が絶縁層7上に設けられている。複数個のLED素子3は、図1中、横方向に例えば4個が設けられているとともに、縦方向に例えば6列に設けられている。また、複数個のLED素子3は、横方向および縦方向にそれぞれ等間隔のマトリックス状に設けられている。
【0022】
そして、LED素子3は、図4に示すように、導体4により、列毎に直列接続されて、一対の接続端子13a,13bに接続されている。一対の接続端子13a,13bは、導体4と同様に、例えば厚さ10μmの金属箔例えば銅箔からなり、例えば正四角形に形成されている。
【0023】
図5において、導体4は、そのランド8a~8cがLED素子3の一対の電極11a,11bおよび固定極12を実装可能に設けられている。導電パターン9は、一対の電極11a,11bに接続されるとともに、LED素子3の発熱部10に近いランド、本実施形態ではランド8cの近傍を通過するように、金属ベース基板2の絶縁層7の表面7aに設けられている。例えば、ランド8cと導電パターン9との最小距離L1が1~8mmとなるように設けられている。
【0024】
そして、金属ベース基板2の絶縁層7上には、導体4を埋めるように白色レジスト5が設けられている。白色レジスト5は、例えば電気絶縁性を有するシリコーン製であり、LED素子3の周囲の絶縁層7上に塗布されている。また、白色レジスト5は、図1に示すように、接続端子13a,13bが露出するようにして塗布されている。また、白色レジスト5は、絶縁層7の表面7aに例えば30μm以上の膜厚に形成されている。なお、金属ベース基板2には、複数個の取付け孔14が形成されており、白色レジスト5は、当該取付け孔14を露出させている。」
「
[図:0001404826000004.jpg]
」
「
[図:0001404826000005.jpg]
」
3 甲3の記載
甲3には、次の記載がある。
「
[図:0001404826000006.jpg]
」
4 甲4の記載
甲4には、次の記載がある。
「【請求項1】
上端面と下端面とを含み、上端面には間隔をおいた複数の銅箔が設けられ、下端面には少なくとも1つの銅箔若しくは金属板または金属部材が設けられている基板と、
底面に正、負極を構成する2つの電極が設けられ、前記2つの電極が前記基板の上端面にある2つの銅箔にそれぞれ固着されることで導電通路として構成される少なくとも1つのSMD LEDと、
前記基板の上端面にあるいずれか1つの銅箔及び前記基板の上、下端面を貫通する少なくとも1つの結合孔と、
高導熱の金属材料からなり、前記少なくとも1つの結合孔に挿入され、上端が前記上端面にある銅箔と結合され、下端が前記下端面にある銅箔若しくは金属板または金属部材と結合される少なくとも1つの結合部材と、
を備えることを特徴とするSMD LEDの放熱構造。」
「【0009】
図4は、本発明の第1の実施例の表面接着型発光ダイオード(SMD LED)モジュール30及びその放熱構造を示す。SMD LEDモジュール30は、基板32と、少なくとも1つのSMD LED34(SMD LED34の内部にLEDチップが封止されている)と、少なくとも1つの結合部材36とを備える。この実施例において、基板32は、金属基板であり、上端面38と、下端面40とを含み、上端面38に導熱可能な繊維絶縁層42が設けられることで、SMD LED34の正、負極と基板32とが導電せず、繊維絶縁層42の外端面には、間隔をおいた複数の導電導熱銅箔44が設けられている。SMD LED34の底面には、正、負極を構成する2つの導電導熱電極46が設けられており、該2つの電極46は、間隔をおいたいずれか2つの銅箔44にそれぞれ固着されることで、導電通路として構成される。SMD LED34に近接するいずれか1つの銅箔44には、銅箔44、繊維絶縁層42、及び基板32の上、下端面38、40を貫通する結合孔48が設けられている。
【0010】
結合部材36は、高導熱の金属材料からなり、中空または中実である。この実施例において、結合部材36は、中空のリベットであり、結合孔48に挿入されることで、銅箔44と、繊維絶縁層42と、基板32とが接続される。結合部材36の上端50及び下端52は、それぞれ接続面として形成され、それぞれ銅箔44の上端面及び基板32の下端面40に結合される。これにより、銅箔44に固着されたSMD LED34から生成された熱は、低導熱の繊維絶縁層42を飛ばして、該2つの電極46を介して結合部材36に伝達され、直接結合部材(リベット)36により金属基板32の下端面40(この下端面40にはコーティングが被覆されていない)に伝達され、基板32の露出した下端面40により放熱が促進される。従って、SMD LED34のチップから生成された熱が銅箔44及び基板32に累積してLEDの光減衰になることを回避することができる。銅箔44と結合部材36との接触箇所は、良好な接触となっているため、コーティングを行う必要がなくなる。他の実施例において、結合部材36は、ネジであり、結合孔48に挿入されることで、銅箔44と、繊維絶縁層42と、基板32とが接続される。」
「
[図:0001404826000007.jpg]
」
第5 当審の判断
1 甲1に記載された発明
甲1の請求項1を引用する請求項6には、「水を流す流路の内壁に、水に対して紫外線を照射する紫外線LEDユニットが配された紫外線殺菌浄水装置において、
前記紫外線LEDユニットは、中心発光波長275±5nmに選定されたLEDチップがベース表面にマウントされると共に、前記LEDチップの発光面から水接触面となるウィンドウまで、水の屈折率に実質的に等しい屈折率の紫外線透過性アモルファスフッ素樹脂が充填され、
前記流路が、所定長さの直管で形成され、前記紫外線LEDユニットが、管端部の一方又は双方から対向する管端部に向けて配され、上流となる一方の管端部にはその側面に流入口が形成され、下流となる他方の管端部にはその側面に流出口が形成されて成る、紫外線殺菌浄水装置。」が記載されている。また、【0026】、【0027】、図3には、実施例3として、「本例の紫外線殺菌浄水装置41は、直管状の金属パイプ42で形成された水を流す流路の管端部内壁43に、水に対して紫外線を照射する紫外線LEDユニット3が配されている。」、「紫外線LEDユニット3は、管端部42a及び42bの一方又は双方から対向する管端部に向けて配されており、本例では、双方の管端部42a及び42bに設けられている。」、「なお、LEDユニット3は、実施例1と同じ構造のものが用いられており、メタル缶ケース4のベース表面5に、中心発光波長275nmのLEDチップ6がマウントされ、当該LEDチップ6の発光面6aから水接触面となるウィンドウ7まで、結合性フッ素樹脂8Aの薄膜及び非結合性フッ素樹脂8Bの二層構造の紫外線透過性アモルファスフッ素樹脂8が充填されている。」と記載されている。
そうすると、甲1には、「水を流す流路の内壁に、水に対して紫外線を照射する紫外線LEDユニットが配された紫外線殺菌浄水装置において、
前記紫外線LEDユニットは、中心発光波長275nmに選定されたLEDチップがベース表面にマウントされると共に、前記LEDチップの発光面から水接触面となるウィンドウまで、水の屈折率に実質的に等しい屈折率の紫外線透過性アモルファスフッ素樹脂が充填され、
前記流路が、所定長さの直管で形成され、前記紫外線LEDユニットが、管端部の一方又は双方から対向する管端部に向けて配され、上流となる一方の管端部にはその側面に流入口が形成され、下流となる他方の管端部にはその側面に流出口が形成されて成る、紫外線殺菌浄水装置であって、
直管状の金属パイプ42で形成された水を流す流路の管端部内壁43に、水に対して紫外線を照射する紫外線LEDユニット3が配され、
紫外線LEDユニット3は、管端部42a及び42bの双方から対向する管端部に向けて配されており、
LEDユニット3は、メタル缶ケース4のベース表面5に、中心発光波長275nmのLEDチップ6がマウントされ、当該LEDチップ6の発光面6aから水接触面となるウィンドウ7まで、結合性フッ素樹脂8Aの薄膜及び非結合性フッ素樹脂8Bの二層構造の紫外線透過性アモルファスフッ素樹脂8が充填されている、紫外線殺菌浄水装置」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
2 本件発明1について
(1)対比
甲1発明と本件発明1を対比する。
甲1発明の「水を流す流路の内壁に、水に対して紫外線を照射する紫外線LEDユニットが配された紫外線殺菌浄水装置」は、本件発明1の「紫外線(UV)放射線を流体流に照射するための紫外線(UV)リアクタ」に相当する。
甲1発明の「水を流す流路」を形成する「直管状の金属パイプ42」は、本件発明1の「熱伝導性材料を含む流体導管」に相当する。
甲1発明の「メタル缶ケース4」は、「ベース表面5」を有し、「ベース表面5に中心発光波長275nmのLEDチップ6がマウントされ」たものであり、板状の部分を有するといえるから、本件発明1の「第1の表面」を有する「熱伝導基板」を備える「基板」に相当する。
甲1発明の「紫外線LEDユニット3」は、本件発明1のPCBに「動作可能に接続されているUV発光ダイオード(UV-LED)であり、放射線を前記流体導管へと方向付けるように配向されている、UV-LED」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「 紫外線(UV)放射線を流体流に照射するための紫外線(UV)リアクタであって、
熱伝導性材料を含む流体導管と、
第1の表面を有する熱伝導基板を備える基板と、
前期基板に動作可能に接続されているUV発光ダイオード(UV-LED)であり、放射線を前記流体導管へと方向付けるように配向されている、UV-LEDと、
を備える、紫外線(UV)リアクタ。」
<相違点1>
基板について、本件発明1は、「回路領域を含む」第1の表面を有する熱伝導基板を備える「プリント回路基板(PCB)」であるのに対し、甲1発明は、「メタル缶ケース4」であり、回路領域を含むことが特定されておらず、プリント回路基板(PCB)ではない点。
<相違点2>
基板について、本件発明1は、「前記回路領域を覆うはんだマスク」を備えるのに対し、甲1発明は、回路領域を含むことが特定されておらず、回路領域を覆うはんだマスクを備えることも特定されていない点。
<相違点3>
基板について、本件発明1は、「熱接触領域」を備え、「熱接触領域は、はんだマスクコーティングがなく、前記熱伝導性材料は、前記熱伝導基板の前記第1の表面の前記熱接触領域に熱結合されている」と特定するのに対し、甲1発明は、メタル缶ケース4のベース表面5が「熱接触領域」を有することが特定されておらず、「熱接触領域」が流体導管の「熱伝導性材料」と熱結合することも特定されていない点。
(2)相違点の検討
<相違点1>~<相違点3>について
甲2【0008】には、「本実施形態の電気装置は、金属ベース基板、表面実装部品、導体、ソルダーレジストおよび遮断手段を有して形成される。」ことが記載され、【0010】には、「導体は、金属ベース基板の絶縁層の表面に形成された複数個のランドおよび導電パターンを有してなる。」こと、【0011】には、「ソルダーレジストは、導体を保護するとともに外部空間と絶縁するものであり、導体を埋めるように表面実装部品の周囲の絶縁層上に塗布されている。」ことが記載されていることから、甲2には、基板上に形成された導体をソルダーレジストで保護する技術が記載されているといえる。ここで、基板上に形成された「導体」が設置された領域は、本件発明1の「回路領域」に相当する。また、甲3に「ソルダレジストの定義」として「プリント配線板上の特定領域に施す耐熱性被覆材料で、はんだ付け作業の際にこの部分にはんだが付かないようにするレジスト」と記載されていることを参酌すると、甲2記載の「導体」を埋めるように塗布され、「導体」を保護する「ソルダーレジスト」は、本件発明1の「回路領域を覆うはんだマスク」に相当するものである。
また甲4【0009】、【0010】、図4には、「表面接着型発光ダイオード(SMD LED)モジュール30及びその放熱構造」が記載され、「結合部材36の上端50及び下端52は、それぞれ接続面として形成され、それぞれ銅箔44の上端面及び基板32の下端面40に結合される。これにより、銅箔44に固着されたSMD LED34から生成された熱は、低導熱の繊維絶縁層42を飛ばして、該2つの電極46を介して結合部材36に伝達され、直接結合部材(リベット)36により金属基板32の下端面40(この下端面40にはコーティングが被覆されていない)に伝達され、基板32の露出した下端面40により放熱が促進される」ことが記載されている。
しかしながら、甲1発明は、「メタル缶ケース4のベース表面5に、中心発光波長275nmのLEDチップ6がマウントされ」たものであるが、甲1には、ベース表面が回路領域を含むことが記載されておらず、また、回路領域を設ける動機も特にないため、甲2に「複数個のランドおよび導電パターン」を有する「導体」と、「導体」を保護する「ソルダーレジスト」が記載されているとしても、甲1発明において、甲2記載の「導体」及び「ソルダーレジスト」を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
さらに、甲4に、「表面接着型発光ダイオード(SMD LED)モジュール30及びその放熱構造」が記載されているが、甲2~4のいずれにも、プリント回路基板の表面に、「回路領域を覆うはんだマスク」を設けつつ、「はんだマスクコーティングがな」い「熱接触領域」も設けて、当該「熱接触領域」を流体導管の熱伝導性材料と熱結合させる技術が記載されていないため、甲1発明において、当該技術を採用することが、当業者が容易になし得たこととはいえない。
(3)申立人の主張に対して
ア 申立人は、甲1発明における「ベース表面を有するメタル缶ケース」は、本件発明1における「回路領域を含む第1の表面を有する熱伝導基板を備えるプリント回路基板(PCB)」に相当する旨を主張している(特許異議申立書(4-3)ウ参照。)。
しかしながら、「ベース表面」が「回路領域」を有することは甲1に記載されておらず、また、甲1の図1に記載されているように、LEDユニットへの電源の供給には基板外部から給電線を介して行うことが可能であり、「ベース表面」にLEDチップ6がマウントされていた場合に必ず「回路領域」が「ベース表面」に設けられるともいえないことから、申立人の主張は採用できない。
イ 申立人は、甲2には、「金属ベース基板上の回路領域を覆うはんだマスク」という技術常識が記載されているため、甲1発明において、メタル缶ケースのベース表面を覆うようにはんだマスクを設けることは、当業者が容易になし得たことである旨を主張している(特許異議申立書(4-3)エ参照。)。
しかしながら、甲1発明は、上記のとおり回路領域を含むものとはいえないため、回路領域を覆うはんだマスクを設ける動機がなく、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
ウ 申立人は、甲4には、「熱結合のための導熱材の接触領域にははんだマスクのコーティングがなされない」という技術常識が記載されているため、甲1発明において、メタル缶ケースのベース表面に熱接触領域が形成されていなくとも、熱伝達を容易にする目的で、メタル缶ケースにおいてはんだマスクが存在しない領域で金属パイプに熱結合させることは、単なる設計事項に過ぎない旨を主張している(特許異議申立書(4-3)オ参照。)。
しかしながら、甲4には、導熱材を用いる技術が記載されているが、はんだマスクについての記載はなく、また流体導管と熱結合させて放熱を行うことも記載されていない。そうすると、甲1発明において、甲2記載の技術から「回路領域を覆うはんだマスク」を設けつつ、甲4記載の導熱材を用いる技術を採用する際に「はんだマスク」に着目し、はんだマスクコーティングがな」い「熱接触領域」を形成し、さらに「熱接触領域」を直管状の金属パイプ42と熱結合させることは、単なる設計事項にすぎないとはいえない。
エ 申立人は、甲1の【0017】には、「底面2に設けられLEDユニット3が発熱すると、その熱がチタン製の容器本体から水に伝導されて、容器本体11内の水が対流を生じて効率よく光触媒となる酸化チタン膜14に接触される。」との記載があるから、「甲1発明は、LEDユニットに発生した熱を、容器本体を介して水に伝導させる作用効果を内包するものである。」とし、本件発明1の作用効果は、甲1発明の作用効果と何ら変わるところがないため、「相違点1及び2に係る構成は、甲1発明の作用効果を得るための具体的適用に伴う設計的事項に過ぎないものである。」と主張している(特許異議申立書(4-3)オ参照)。
しかしながら、本件発明1と甲1発明とは、前記<相違点1>~<相違点3>を有するものであり、これら相違点について、甲2~4の記載を参酌しても当業者が容易になし得たこととはいえないことから、仮に作用効果が同様であったとしても、これら相違点の構成が設計的事項であるとはいえない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。
3 本件発明29について
(1)対比
甲1発明と本件発明29を対比する。
甲1発明の「水を流す流路の内壁に、水に対して紫外線を照射する紫外線LEDユニットが配された紫外線殺菌浄水装置」は、本件発明29の「流体流に紫外線(UV)放射線を照射するための紫外線(UV)リアクタ」に相当する。
甲1発明の「水を流す流路」を形成する「直管状の金属パイプ42」は、本件発明29の「流体が流れることを可能にするための1つまたは複数の熱伝導壁によって画定される流体導管」に相当する。
甲1発明の「メタル缶ケース4」の「ベース表面5」に設けられた「紫外線LEDユニット3」は、本件発明29の「熱伝導性」の「基板上に動作可能に取り付けられた少なくとも1つのUV発光ダイオード(UV-LED)であって、前記UV-LEDは、放射線を前記流体導管に導くように配向されている、UV-LED」に相当し、「前記UV-LEDは、前記プリント回路基板の第1の側にあり」を充足する。
そうすると、本件発明29と甲1発明は、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「 流体流に紫外線(UV)放射線を照射するための紫外線(UV)リアクタであって、
流体が流れることを可能にするための1つまたは複数の熱伝導壁によって画定される流体導管と、
熱伝導性基板上に動作可能に取り付けられた少なくとも1つのUV発光ダイオード(UV-LED)であって、前記UV-LEDは、放射線を前記流体導管に導くように配向されている、UV-LEDと
を備え、
前記UV-LEDは、前記プリント回路基板の第1の側にある、リアクタ。」
<相違点4>
基板について、本件発明29は、「プリント回路基板」であるのに対し、甲1発明は、「メタル缶ケース4」であり、「プリント回路」を有する「プリント回路基板」ではない点。
<相違点5>
基板について、本件発明29は、「はんだマスクコーティングがない熱接触領域」を含むと特定し、「前記熱接触領域は、前記流体導管の前記1つまたは複数の熱伝導壁に熱接触し、」「前記熱接触領域は、前記プリント回路基板の第1の側の裏側の前記プリント回路基板の第2の側にある」と特定するのに対し、甲1発明は、はんだマスクコーティングはされていないものの、熱接触領域の有無が不明であり、「メタル缶ケース4」と「直管状の金属パイプ42」の熱接触の有無も不明である点。
(2)相違点の検討
<相違点4>及び<相違点5>について
甲2には、「複数個のランドおよび導電パターン」を有する「導体」が記載され、本件発明1の「プリント回路基板」に相当するものが記載されているが、甲1には、ベース表面がプリント回路を含むことが記載されておらず、また、プリント回路を設ける動機も特にないため、甲1発明において、甲2記載の「プリント回路基板」を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
さらに、甲4に、「表面接着型発光ダイオード(SMD LED)モジュール30及びその放熱構造」が記載されているが、甲2~4のいずれにも、「プリント回路基板」の裏側の面に、「はんだマスクコーティングがない熱接触領域」を設けて、当該「熱接触領域」を「流体導管」の「1つまたは複数の熱伝導壁」に熱接触させる技術が記載されていないため、甲1発明において、当該技術を採用することが、当業者が容易になし得たこととはいえない。
(3)申立人の主張
ア 申立人は、甲1’発明における「ベース表面を有するメタル缶ケース」は、本件発明29における「熱伝導性プリント回路基板」に相当する旨を主張している(特許異議申立書(4-4)ウ参照。)。
しかしながら、上記2(3)アでの検討のとおり、「ベース表面」が「プリント回路」を有することは甲1に記載されておらす、「ベース表面」にLEDチップ6がマウントされていた場合に必ず「プリント回路」が「ベース表面」に設けられるともいえないため、「メタル缶ケース」は「プリント回路基板」に相当するとはいえず、申立人の主張は採用できない。
イ 申立人は、甲4には、「熱結合のための導熱材の接触領域にははんだマスクのコーティングがなされない」という技術常識が記載されているため、甲1’発明において、「熱伝達を容易にする目的で、メタル缶ケースのベース表面の裏側の領域ではんだマスクを介在させることなく金属パイプに熱結合させることは、単なる設計事項に過ぎない。」旨を主張している(特許異議申立書(4-4)エ参照。)。
しかしながら、上記2(3)ウでの検討のとおり、甲4には、はんだマスクについての記載はなく、さらに流体導管と熱結合させて放熱を行うことも記載されていない。そうすると、甲1発明において、甲4記載の導熱材を用いる技術を採用する際に「はんだマスク」に着目し、「はんだマスクコーティングがな」い「熱接触領域」をメタル缶ケース4のベース表面5の裏側の面に形成し、「熱接触領域」を、「直管状の金属パイプ42」と熱結合させることは、単なる設計事項にすぎないとはいえない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明29は、甲1発明及び甲2~4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、申立人による特許異議申立書の理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1及び29に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び29に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700732