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特許異議申立

2024-700219

故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法

審判番号
2024-700219
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-093854
登録番号
7340901
請求日
2024年03月08日
審決日
2024年08月28日
公報発行日
2024年11月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社リスクベネフィット
  • 【権利者代理人】弁理士法人みなとみらい特許事務所
  • 【異議申立人】狩野 芳正
審判長/審判官
  • 審判長 原 賢一
  • 審判官 三崎 仁
  • 審判官 金 公彦
分類
P1651.111-YAA(A61L) / P1651.121-YAA(A61L) / P1651.536-YAA(A61L) / P1651.537-YAA(A61L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7340901号発明「故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7340901号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-7〕について訂正することを認める。 特許第7340901号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7340901号の請求項1~7に係る特許についての出願(以下「本件出願」という。)は、平成30年12月17日に出願した特願2018-235742号の一部を令和2年6月17日に新たな特許出願とし、その特願2020-104222号の一部を令和3年5月17日に新たな特許出願とし、その特願2021-082986号の一部を令和4年11月9日に新たな特許出願とし、その特願2022-179884号の一部を令和5年6月7日に新たな特許出願としたものであって、同年8月31日にその特許権の設定登録がされ、同年9月8日に特許掲載公報が発行されたものである。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年 3月 8日 :特許異議申立人狩野芳正(以下「申立人」という。)による請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 4月 5日 :申立人による手続補正書(方式)の提出 同年 6月28日付け:取消理由通知書 同年 7月11日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年 8月 7日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出 なお、令和6年4月5日に申立人により提出された手続補正書(方式)は、同年3月8日に提出された特許異議申立書の方式上の不備を補正するものであるから、当該手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書を単に「特許異議申立書」といい、同年8月7日に特許権者により提出された手続補正書(方式)は、同年7月11日に提出された訂正請求書の方式上の不備を補正するものであるから、当該手続補正書(方式)により補正された訂正請求書を単に「本件訂正請求書」という。 また、本件訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の第2の1で記載するとおり、「汚物清掃作業」、「オゾン燻蒸作業」を発明特定事項として含む請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~7において「前記」が付されていない「オゾン燻蒸作業」、「汚物清掃作業」に「前記の」を付すものであり、「前記」を付していないとの特許異議申立理由以外の申立理由に対する実質的な判断に影響を与えるものではない。 そして、訂正の請求があったときには、特許法第120条の5第5項に「審判長は、第1項の規定により指定した期間内に第2項の訂正の請求があったときには、第1項の規定により通知した特許の取消しの理由を記載した書面並びに訂正の請求書及びこれに添付された訂正した明細書、特許請求の範囲又は図面の副本を特許異議申立人に送付し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、特許異議申立人から意見書の提出を希望しない旨の申出があるとき、又は特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるときは、この限りでない。」(下線は当審において付与)と定められている。 ここで、この条文中の「意見書を提出する機会を与えなければならない」としているのに対し、「この限りでない」とされる「特別の事情」について、審判便覧(改定20版 特許庁審判部編)67-05.4 Pの「2.特別な事情について」に、「迅速かつ効率的な審理の観点から、訂正の請求の内容が実質的な判断に影響を与えるものではない場合等、特許異議申立人に意見を聴くまでもないことが明らかなときは、特別の事情にあたるとして、特許異議申立人に意見書を提出する機会は与えない。特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えない場合としては、以下のものが挙げられる。・・・(2)訂正が誤記の訂正等軽微なものである場合」と記載されている。これによれば、以下の第2の1で記載する訂正は「訂正が誤記の訂正等軽微なもの」といえることから、本件訂正の内容は、同条で規定される「特別の事情」に該当するものである。 したがって、当審では、特許法第120条の5の規定及び上記審判便覧の記載に則り、申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないものとした。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求書による請求の趣旨は、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2~7について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項2に「汚物清掃作業」とあるのを、「前記の汚物清掃作業」に訂正する(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に「オゾン燻蒸作業」とあるのを、「前記のオゾン燻蒸作業」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に「オゾン燻蒸作業前」及び「オゾン燻蒸作業後」とあるのを、「前記のオゾン燻蒸作業前」及び「前記のオゾン燻蒸作業後」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無 訂正事項1~3は、いずれも、「汚物清掃作業」、「オゾン燻蒸作業」を発明特定事項として含む特許請求の範囲の請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~7において、請求項5では「前記オゾン燻蒸作業」、請求項6では「前記汚物清掃作業」と記載されている一方で、同じく請求項1を直接的又は間接的に引用する、請求項2では「汚物清掃作業」、請求項3及び4では「オゾン燻蒸作業」と記載されており、「前記」が付されていないことから、これら各々に「前記の」を付し、記載を正す点において特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものであるといえ、あるいは、請求項1で特定される「汚物清掃作業」、「オゾン燻蒸作業」と同じ作業であることを明確にする点において特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる そして、「前記の」を付し、記載を正したあるいは明確にした訂正事項1~3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 3 一群の請求項について 訂正前の請求項2~7について、請求項3~7は、請求項2を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項2~7に対応する訂正後の請求項2~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 4 訂正の適否についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 よって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-7〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明7」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法であって、 体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物を清掃する汚物清掃作業と、 汚物清掃作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、 を含み、 消臭対象とする部屋の大きさが10m3以上の部屋であり、 前記オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上のオゾンを用いることを特徴とし、 弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業を行うことを含む、消臭方法。 【請求項2】 前記の汚物清掃作業前に、安定化二酸化塩素及び/又は次亜塩素酸を含む液剤を散布する消毒液散布作業を含むことを特徴とする、請求項1に記載の消臭方法。 【請求項3】 前記のオゾン燻蒸作業後に、塗布対象の内壁と同色の樹脂材料を、前記汚物の残存する内壁に塗布する塗布作業を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の消臭方法。 【請求項4】 前記のオゾン燻蒸作業前に汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、 前記のオゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で解体した箇所をアクリル樹脂塗料、漆塗料、ビニル樹脂塗料から選ばれる一又は二以上の油性下地塗料で覆う被覆作業と、を含むことを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の消臭方法。 【請求項5】 前記オゾン燻蒸作業は、オゾン散布前に、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼから選ばれる一以上の酵素を含む消臭剤を散布し、 前記消臭剤を適用した後及び/又は前記消臭剤を適用する前に、界面活性剤を散布することを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の消臭方法。 【請求項6】 前記汚物清掃作業は、過酸化水素水を用い部屋を清掃する作業を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の消臭方法。 【請求項7】 前記オゾン燻蒸作業は、オゾンを3日以上に分けて噴霧することを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載の消臭方法。」 なお、明細書及び図面には訂正がなかったことから、本件特許明細書を以下「本件明細書」といい、さらに図面を含めて「本件明細書等」という。 第4 取消理由通知について 1 取消理由の内容 令和6年6月28日付け取消理由通知書において通知した取消理由は、本件訂正前の請求項2~4に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものであることを指摘したものであり、その具体的内容は、以下のとおりである。 「汚物清掃作業」、「オゾン燻蒸作業」を発明特定事項として含む請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~7において、請求項5では「前記オゾン燻蒸作業」、請求項6では「前記汚物清掃作業」と記載されている一方で、請求項2では「汚物清掃作業」、本件発明3及び4では「オゾン燻蒸作業」と記載されており、「前記」が記載されていないことから、請求項2に係る発明での「汚物清掃作業」、請求項3及び4に係る発明での「オゾン燻蒸作業」が、請求項1に係る発明で特定される「汚物清掃作業」、「オゾン燻蒸作業」と同じ作業なのか、別の作業であるのか明確に特定できない。 2 当審の判断 本件訂正より、本件発明2では「前記の汚物清掃作業」に、本件発明3及び4ではいずれも「前記のオゾン燻蒸作業」に訂正されたことから、上記1の取消理由によって、本件発明2~4に係る特許を取り消すことはできない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要について 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について整理すると、以下の申立理由1~5となる。 なお、以下の申立理由において「請求項1」~「請求項7」は、本件訂正前の「請求項1」~「請求項7」のことを意味する。 1 申立理由1(分割要件を満たす場合の新規性及び進歩性) (1)請求項1、5及び7に係る発明は、本件特許出願前(以下、申立理由1における「出願」時は、特願2018-235742号の出願日とする。)に日本国内又は外国において公然知られた発明であり、特許法第29条第1項第1号に該当するから、請求項1、5及び7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 また、請求項1~7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第7号証、甲第9号証~甲第14号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 よって、請求項1~7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきであるというものである。 (2)申立理由1の主張内容の概要 申立人は、甲第1号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明を「公然知られた発明」としており、請求項1及び7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、請求項1、5及び7に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であることから、請求項1、5及び7に係る発明は、特許法第29条第1項第1号に該当することを主張している。 そして、それらの甲第1号証又は甲第3号証を主引用例として、請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明、及び甲第5号証、甲第7号証、甲第9号証~甲第14号証に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであることを主張している。 (3)甲号証一覧 上記(2)で記載した甲号証を含め、申立理由1に関わる証拠方法として、申立人は、以下の甲号証を提示している。以下、甲第○号証を「甲○」という。 甲1:「オゾンショックトリートメント法による脱臭技術」、Kai Corporation株式会社カイコーポレーション 甲2:「脱臭マイスター資格講習会」の開催案内 甲3:「プロバイオティクスエ法原理と事例」、株式会社レリック専務取締役間瀬友秀 甲4:「脱臭サービス施工技術研修会」の申込書 甲5:「特殊清掃にて脱臭終了までの流れ」MIND特殊清掃・遺品整理代表鷹田了 甲6:「脱臭マイスター資格講習会」の開催案内 甲7:「特殊清掃と消臭サービスの重要性 信頼を得るために何をすべきか!」、メモリーズ株式会社代表取締役横尾将臣 甲8:「片付け業、消臭業、特殊清掃業のスキルアップセミナー」の開催案内 甲9:「オゾン脱臭機の活躍シーン」、Kai Corporation株式会社カイコーポレーション 甲10:ブログ「【特殊清掃】孤独死の現場で必要な処置~安定化二酸化塩素による消毒除菌~」ライター/角田真一、(ウェブ出力物)http://web.archive.org/web/20160903072700/https://benriya-alpha.jp/ihinseiri/%E3%80%90%E7%89%B9%E6%AE%8A%E6%B8%85%E6%8E%83%E3%80%91%E5%AD%A4%E7%8B%AC%E6%AD%BB%E3%81%AE%E7%8F%BE%E5%AO%B4%E3%81%A7%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%AA%E5%87%A6%E7%BD%AE%EF%BD%9E%E5%AE%89%E5%AE%9A%E5%8C%96/ 甲11:お役立ちコラムブログ「特殊清掃の消臭・脱臭方法を現役特殊清掃士が公開!」、(ウェブ出力物)https://ihin-asu1.com/blog/1027/#link-to-me2 甲12:「特殊清掃を必要とするひとへ」(ウェブ出力物)https://web.archive.org/web/20161024205743/https://www.tokusyuseisouguide. com/example/deodorization.html 甲13:「特殊清掃」(株)富山遺品整理本舗、(ウェブ出力物)https://web.archive. org/web/20180817152231/http://toyama-ihinseiri.com/specialcleaning 甲14:「特殊清掃における材料選定・塗装方法について「猫屋敷の復旧ノウハウ講座」株式会社クリーンメイト代表取締役西村訓典 ここで、甲2は、甲1が公知であること及び公表日を証明するための証拠、甲4は、甲3及び甲14の公表日を証明するための証拠、甲6は、甲5の公表日を証明するための証拠、甲8は、甲7及び甲9の公表日を証明するための証拠であり、技術的内容を示すための証拠ではない。 2 申立理由2(分割要件を満たさない場合の進歩性) (1)分割要件について 本件出願は、上記第1の手続の経緯で記載したように、平成30年12月17日に出願した特願2018-235742号(以下「親出願」という。)の一部を令和2年6月17日に新たな特許出願とし、その特願2020-104222号(以下「第1世代出願」という。)の一部を令和3年5月17日に新たな特許出願とし、その特願2021-082986号(以下「第2世代出願3」という。)の一部を令和4年11月9日に新たな特許出願とし、その特願2022-179884号(以下「第3世代出願」という。)の一部を令和5年6月7日に新たな特許出願としたものである。 申立人は、親出願においては、親出願の出願当初の請求項2に「前記オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500g以上のオゾンを用いることを特徴とする、請求項1に記載の消臭方法。」と記載されているように、オゾン量の単位は「g」である一方、本件特許の請求項1に係る発明は「前記オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上のオゾンを用いることを特徴とし」を含むものであり、オゾン量の単位は「mg」であるから、本件出願の明細書等に記載された事項が、親出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であるとの要件を満たしておらず、本件出願の出願日は親出願の出願日に遡及しないことを主張している。 (2)進歩性 そして、申立人は、本件出願の出願日が親出願の出願日に遡及しないことを前提に、請求項1~7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲15に記載された発明及び甲16に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであることを主張している。 よって、請求項1~7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきであるというものである。 (3)甲号証一覧 上記(2)で記載した甲号証を含め、申立理由2に関わる証拠方法として、申立人は、以下の甲号証を提示している。 甲15:特開2020-96694号公報(親出願の公開公報) 甲16:特開2020-182854号公報における特許法第17条の2の規定による補正の掲載 甲15の1:特願2021-65402号の審査における令和3年6月4日付け手続補正書、(ウェブ出力物)URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/h0101 甲15の2:特願2021-65402号の審査における令和4年5月10日(発送日)付け拒絶理由通知書、(ウェブ出力物)URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/h0101 甲15の3:特願2021-65402号の審査における令和4年8月31日付け手続補正書、(ウェブ出力物)URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/h0101 甲15の4:特願2021-65403号の審査における令和3年6月4日付け手続補正書、(ウェブ出力物)URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/h0101 甲15の5:特願2021-65403号の審査における令和4年5月10日(発送日)付け拒絶理由通知書、(ウェブ出力物)URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/h0101 甲第15の6:特願2021-65403号の審査における令和4年6月1日付け手続補正書、(ウェブ出力物)URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/h0101 甲15の7:特願2018-235742号の審査における令和2年4月27日付け手続補正書、(ウェブ出力物)URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/h0101 甲15の8:特開2020-96695号公報 甲15の9:特願2020-104222号の審査における令和3年2月19日付け上申書、(ウェブ出力物)URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/h0101 甲15の10:特開2020-182854号公報 ここで、甲15の1~甲15の10については、申立人が、本件出願の出願日が親出願の出願日に遡及しないことを主張するために提示した証拠である。 3 申立理由3(実施可能要件) (1)請求項1~7に係る特許は、その発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 よって、請求項1~7に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきであるというものである。 (2)申立理由3の主張内容の概要 ア 故人の放置された部屋の消臭について 請求項1の「弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業を行うこと」は、「動物の放置された部屋の消臭方法」である実施例3及び4に記載されており、「故人の放置された部屋の消臭方法」の実施例である実施例1及び2には記載されていない。例えば、甲1の25頁(下記第6の1(1ア)で摘記)にあるように、臭気物質に適した消臭剤を使用することが知られており、また、本件明細書の【0067】に「塩素系漂白剤の水希釈液を消臭剤として用いることで、部屋内を損傷させることなく、猫の尿に存在するフェリニン(3-メルカプト-3-メチルブタン-1-オール)を効率よく分解することができ、猫の放置された部屋内をより効率よく消臭することができる。」と、【0066】に「揮発性を有するエタノールに不揮発性の界面活性剤を組み合わせ使用することで、噴霧した消臭液を壁面に染み込ませることができ、犬の放置された部屋内をより効率よく消臭することができる。」と記載されており、動物が放置された場合において、動物が犬か猫であるかで好適な消臭方法が異なる旨への言及がある。 加えて、故人の放置された部屋の消臭に関する実施例では、「入室すると、汚物(体液)を原因とする臭気が強く感じられる。」(【0089】、【0103】)、「本消臭作業により、部屋内の故人の体液を原因とする臭気は感じられなくなった。」(【0099】、【0112】) との記載がある。次に、犬が放置された部屋の消臭に関する実施例では、「入室すると、犬の糞尿、体液を原因とする臭気が強く感じられる。」(【0114】)、「本消臭作業により、部屋内の犬の糞尿、体液を原因とする臭気は感じられなくなった。」(【0123】) とある。更に、猫が放置された部屋の消臭に関する実施例では、「入室すると、猫の糞尿、体液を原因とする臭気が強く感じられる。」(【0125】)や、「本消臭作業により、部屋内の猫の糞尿、体液を原因とする臭気は感じられなくなった。」(【0134】) と記載されている。これらの記載から、本件明細書に開示される発明は「故人」については体液が悪臭原因であり、「動物」については糞尿、体液が悪臭原因であり、両者の原因が異なることが分かる。 したがって、故人の放置された部屋と動物の放置された部屋とでも同様に好適な方法が異なることが当然であり、動物の放置された部屋に適用される消臭方法を、そのまま故人の放置された部屋の消臭方法に適用しても効果が得られるとは限らない。 なお、本件明細書の【0058】では、「<故人の放置された部屋の消臭> には、後述の<動物の放置された部屋の消臭> に記載の作業を含む形態とすることもできる。」との記載があるが、動物の放置された部屋の消臭方法を故人の放置された部屋の消臭方法に援用できることを意味するものではない。 よって、故人の放置された部屋の消臭方法について、本件明細書は、請求項1に係る発明を当業者が実施可能に記載されていない。請求項2~7に係る発明についても同様である。 イ 残存している可能性がある液剤について 実施例3及び実施例4において、弱アルカリ性液剤の散布作業(S22)や弱酸性液剤の散布作業(S24)を行っているものの、オゾン燻蒸作業(S23)、(S25)は、酵素処理とそれに続くオゾン燻蒸作業で構成されるものであり、残存している可能性があるのは弱アルカリ性液剤や弱酸性液剤ではなく、酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ)を含む消臭剤である。したがって、実施例3及び実施例4は、請求項1に係る発明の効果を裏付ける実験例ではない。 ウ 弱アルカリ性液剤と弱酸性液剤の両方の散布について 実施例3及び実施例4においては、弱アルカリ性液剤の散布作業(S22)及びオゾン燻蒸作業(S23)と、弱酸性液剤の散布作業(S24)及びオゾン燻蒸作業(S25)と、を両方実施する場合にのみ、効果が確認されており、いずれか一方のみを使用して、消臭効果が得られる点について開示はなく、効果も確認されていない。 エ 酵素を含む消臭剤について 実施例3及び実施例4において得られた消臭効果は、少なくとも酵素を含む消臭剤が残存した状態で発現したものであるが、酵素を含む消臭剤が残存していない状態でオゾン燻蒸作業を行った場合に同様の効果が得られることについて、本件明細書には、記載も示唆もない。 オ 請求項5について 請求項5に「前記オゾン燻蒸作業は、オゾン散布前に、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼから選ばれる一以上の酵素を含む消臭剤を散布し、前記消臭剤を適用した後及び/又は前記消臭剤を適用する前に、界面活性剤を散布する」と記載されているが、「消臭剤」が、「塩素系消臭剤」を示すのか、「酵素含有消臭剤」を示すのか、又は「酸性」の消臭液を示すものであるのか、当業者が実施可能に記載されていない。さらに、実施例1~4で、オゾン燻蒸作業の下準備として「酵素を含む消臭剤」の散布の後、若しくは散布前に「界面活性剤」を使用する構成については一切開示がなく、「酵素を含む消臭剤」の散布の後、若しくは散布前に「界面活性剤」を使用することによる消臭効果についても、当業者が実施可能に記載されていない。 したがって、請求項5の「前記消臭剤を適用した後及び/又は前記消臭剤を適用する前に、界面活性剤を散布する」ことについて、本件明細書には、当業者が実施可能に記載されていない。 カ 請求項3、4、6について 請求項3、4、6に特定されている技術的事項は、本件明細書の「動物の放置された部屋の消臭」についての記載箇所、実施例3、4及び図2には一切記載されておらず、本件明細書等においては、「故人の放置された部屋の消臭」について記載されている事項であり、「動物の放置された部屋」の消臭方法として好適であるとはいえない。 よって、動物の放置された部屋の消臭方法について、本件明細書は、請求項3、4、6に係る発明を当業者が実施可能に記載されていない。 4 申立理由4(サポート要件) (1)請求項1~7に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 よって、請求項1~7に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきであるというものである。 (2)申立理由4の主張内容の概要 ア 請求項1~7について 申立人は、特許異議申立書で、故人が放置された部屋及び動物が放置された部屋について「3.(4)カ.実施可能要件の(ア)本件特許発明1~7において述べたように、本件特許明細書には、本件特許発明1~7を実施することにより、故人又は動物が放置された部屋を十分に消臭することができることについて、記載も示唆もない。したがって、本件請求項1~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。」(故人の場合は75頁4~9行、動物の場合は同頁16~21行)と、「3.(4)カ.実施可能要件の(ウ)本件特許発明5において述べたように、・・・本件特許発明5は、本件特許明細書に記載したものではない。」(77頁10行~24行)と、「3.(4)力. 実施可能要件の(イ)本件特許発明3、4、6において述べたように、・・・本件特許発明3、4、6は、本件特許明細書に記載したものではない。」(77頁26~33行)と主張しており、これは上記3の申立理由3(実施可能要件)の内容をそのまま申立理由4(サポート要件)としたものである。 イ 請求項3及び4について 請求項5のオゾン燻蒸は「前記オゾン燻蒸作業」と記載されている一方で、請求項3及び4における「オゾン燻蒸作業」は「前記」が記載されていないことから、請求項1の「オゾン燻蒸作業」と異なるものであるのか、同じものであるのか把握できず、前者の場合には、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。 5 申立理由5(明確性) (1)請求項1~7に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 よって、請求項1~7に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきであるというものである。 (2)申立理由5の主張内容の概要 ア 液剤の残存した状態について 請求項1に「弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で」との記載があり、当該「液剤の残存した状態」について、本件明細書の【0079】に「また、散布した液剤は、必ずしもふき取る必要はなく、液剤の残存した状態で後述のオゾン燻蒸作業を行うこともできる。」との記載はあるが、「残存」しているとは、表面が濡れた程度でよいのか、水滴など、液面が明確な程度に残存している必要があるのか、どの程度残存していることを意図するのかが明確ではない。 イ 解体した箇所について 請求項4における「オゾン燻蒸作業前に汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、オゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で解体した箇所をアクリル樹脂塗料、漆塗料、ビニル樹脂塗料から選ばれる一又は二以上の油性下地塗料で覆う被覆作業」について、「解体した箇所」とは解体によって取り除かれた箇所を示すものと解釈されるから、解体によって取り除かれた箇所を被覆することは理論上不可能であって、「解体した箇所」を把握することができない。 第6 甲号証の記載 1 甲1について (1)記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 (1ア) 「 [図:0001416482000001.jpg] 」(9頁) (1イ) 「 [図:0001416482000002.jpg] 」(25頁) (1ウ) 「 [図:0001416482000003.jpg] 」(27頁) (1エ) 「 [図:0001416482000004.jpg] 」(30頁) (1オ) 「 [図:0001416482000005.jpg] 」(33頁) (2)記載事項の整理 ア 上記(1エ)には「1LDK 孤独死、死後2週間経過」と記載されていることから、1LDKの部屋で人が孤独死したといえる。そうすると、上記(1エ)に記載されている消臭作業の手順(消臭する方法)として、1LDKの部屋で人が孤独死し、死後2週間経過した部屋を、消臭剤噴霧として脱臭応援隊を30倍に希釈して噴霧し、Panther-Jを使って5時間オゾン燻蒸し、換気し、Panther-Jにより(0時~ 5時(5h)、16時~ 19時(3h)、10時~ 13時(3h))×2日間オゾン燻蒸を行うことにより、消臭を行うことが記載されている。 イ 上記(1ウ)には、オゾン作業工程として、に、まず最初に(消臭剤散布及びオゾン燻蒸の前に)、臭気発生源の除去である清掃を行うことが記載されている。 ウ 上記(1イ)には、脱臭応援隊として、pH2.0±0.5の強酸性溶液、pH8.0±0.5の弱アルカリ性溶液、9.0±0.5の弱アルカリ性溶液が記載されている。 (3)甲1発明 上記(2)の記載事項の整理を踏まえると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「1LDKの部屋で人が孤独死し、死後2週間経過した部屋を消臭する方法であって、 臭気発生源の除去である清掃を行い、 消臭剤噴霧として、pH2.0±0.5の強酸性溶液、又はpH8.0±0.5もしくは9.0±0.5の弱アルカリ性溶液を30倍に希釈して噴霧し、 Panther-Jを使って5時間オゾン燻蒸し、 換気し、 Panther-Jにより(0時~ 5時(5h)、16時~ 19時(3h)、10時~ 13時(3h))×2日間オゾン燻蒸を行う、方法。」(以下「甲1発明」という。) 2 甲3について (1)記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。なお、甲3には、「頁」が記載されていないことから、文書として提出された証拠の各紙面を順番に「頁」とする。 (3ア) 「 [図:0001416482000006.jpg] 」(3頁) (3イ) 「 [図:0001416482000007.jpg] 」(13頁)(3ウ) 「 [図:0001416482000008.jpg] 」(14頁) (3エ) 「 [図:0001416482000009.jpg] 」(18頁) (2)記載事項の整理 ア 上記(3イ)に記載されている事例2の工法は、上記(3ア)に「プロバイオティクス工法? 清掃と消臭が可能になる!」と記載されていることから、プロバイオティクス工法であり、消臭もするものであるから、消臭方法ともいえる。 また、上記(3イ)には「孤立死現場 1Kマンション 死後1か月(7月) フローリング(CF)上でお亡くなりになられていた。」と記載されていることから、1Kの部屋で人が孤立死したといえる。 そうすると、上記(3イ)には、1Kマンションの部屋で人が孤立死し、死後1か月後の部屋の消臭方法であって、グランバイオプロの噴霧をして血液・体液を拭き取り、家財の整理・撤去を行い、クロス・CFを除去し、フルクリーニングとしてアルカリ性洗浄剤で建具等の洗浄を行い、オゾン燻蒸を3日間行い、グランバイオエアーを散布することが記載されている。 イ 上記(3ウ)には、上記(3イ)と同じ事例2として、「以前は、アルカリ系洗浄剤での拭き上げ後、家財整理→建具の除去→OST法の流れで施工していたが、アルカリ系洗浄剤での拭き上げ前にグランバイオを使用することで、作業員や近隣への臭いの対策ができた。」と記載されてように、「アルカリ系洗浄剤での拭き上げ」工程の前にグランバイオを使用することで、臭いの対策ができることが記載されている。 そうすると、上記(3イ)の「アルカリ性洗浄剤で建具等の洗浄」は、「アルカリ系洗浄剤での拭き上げ」を行うものである。 ウ 上記(3エ)には、オゾン脱臭機として「Panther-J」が記載されていることから、上記(3イ)記載の「オゾン燻蒸」は「Panther-J」で行えるものである。 (3)甲3発明 上記(2)の記載事項の整理を踏まえると、甲3には、以下の発明が記載されていると認められる。 「1Kマンションの部屋で人が孤立死し、死後1か月後の部屋の消臭方法であって、 グランバイオプロの噴霧をして血液・体液を拭き取り、 家財の整理・撤去を行い、クロス・CFを除去し、 フルクリーニングとしてアルカリ性洗浄剤での拭き上げにより建具等の洗浄を行い、 Panther-Jによるオゾン燻蒸を3日間行い、 グランバイオエアーを散布する、方法。」(以下「甲3発明」という。) 3 甲5について 甲5には、以下の事項が記載されている。 (甲5ア) 「 [図:0001416482000010.jpg] 」(8頁) 4 甲7について 甲7には、以下の事項が記載されている。 (甲7ア) 「 [図:0001416482000011.jpg] [図:0001416482000012.jpg] [図:0001416482000013.jpg] [図:0001416482000014.jpg] 」(25~28頁) 5 甲9について 甲9には、以下の事項が記載されている。 (甲9ア) 「 [図:0001416482000015.jpg] 」(17頁) (甲9イ) 「 [図:0001416482000016.jpg] 」(18頁) (甲9ウ) 「 [図:0001416482000017.jpg] 」(24頁) 6 甲10について 甲10には、以下の事項が記載されている。 (甲10ア) 「 [図:0001416482000018.jpg] 」(ウェブ出力物) 7 甲11について 甲11には、以下の事項が記載されている。 (甲11ア) 「 [図:0001416482000019.jpg] 」(ウェブ出力物) 8 甲12について 甲12には、以下の事項が記載されている。 (甲12ア) 「 [図:0001416482000020.jpg] [図:0001416482000021.jpg] 」(ウェブ出力物) 9 甲13について 甲13には、以下の事項が記載されている。 (甲13ア) 「 [図:0001416482000022.jpg] 」(ウェブ出力物) 10 甲14について 甲14には、以下の事項が記載されている。なお、甲14には、「頁」が記載されていないことから、文書として提出された証拠の各紙面を順番に「頁」とする。 (甲14ア) 「 [図:0001416482000023.jpg] [図:0001416482000024.jpg] 」(17~18頁) 第7 本件明細書等の記載 1 本件明細書等(なお、下線は当審において付与したものであり、「・・・」は記載を略していることを意味する。以下同様。)には、本件発明の背景技術及び発明が解決しようとする課題として、以下のとおり記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法に関する。 【背景技術】 【0002】 一人暮らしの人が生活中の突発的な疾病、事故などによって、誰にも看取られることなく死亡することがある。かかる状況は孤独死といわれ、社会的な問題となっている。 【0003】 また、ペットが繁殖しすぎて飼育できなくなる状況、飼育していたペットを放置する状況も、社会的な問題となっている。 【0004】 そして、故人や動物の放置から発見までに時間が経過してしまうと、腐敗、体液、糞、尿などの要因から、部屋は汚れ、強い臭いが残ってしまう。 【0005】 以上の事情から、故人の放置された部屋や、ペットの放置された部屋を消臭する手段が求められていた。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 上記先行技術のあるところ、本発明は、故人及び/又は動物の放置された部屋を消臭する方法を提供することを課題とする。」 2 本件発明1(及びそれを引用する本件発明2~7)が、「弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業を行うことを含む、消臭方法」であることに鑑みるに、当該工程を含む消臭の作業フローを示す図として以下の図2が記載されている。 「【図2】 [図:0001416482000025.jpg] 」 そして、上記図2の「動物の放置された部屋の消臭」に対応する記載として、【0059】~【0085】の記載、さらに【0058】の記載も併せて摘記すると、以下のとおりである。 「【0058】 また<故人の放置された部屋の消臭>には、後述の<動物の放置された部屋の消臭>に記載の作業を含む形態とすることもできる。 【0059】 <動物の放置された部屋の消臭> 本実施形態にかかる消臭方法は、動物の放置された部屋も消臭対象とする。 【0060】 消臭対象とする部屋の材質、部屋の種類、消臭対象とする部屋の大きさは、前述の<故人の放置された部屋の消臭>に記載の技術事項を適用することができる。 【0061】 ここで、動物の放置時間にも特に制限はない。例えば、動物が放置されてから3週間以上経過した部屋であっても、消臭対象とすることもできる。また、放置された動物の生死についても、特に制限はない。 【0062】 また、放置された動物の種類にも特に制限はなく、例えば、犬、猫の放置した部屋であっても、消臭対象とすることもできる。 放置された動物の数に特に制限はなく、例えば、3匹以上の動物が放置された部屋であっても、消臭対象とすることもできる。 【0063】 本実施形態にかかる消臭方法は、汚物清掃作業S21と、液剤散布作業S22、S24と、オゾン燻蒸作業S23、S25と、を有する。 以下各作業について、詳細に説明する。 【0064】 (汚物清掃作業S21) (1)汚物の除去 汚物清掃作業は、体液(血液、唾液等)、糞、尿といった汚物を清掃する作業である。 汚物清掃作業を行うことで、後のオゾン燻蒸作業において、動物の放置された部屋をより確実に消臭することができる。 【0065】 (2)消臭液の噴霧 汚物清掃作業は、(1)汚物の除去の後に、消臭液の噴霧を行う形態とすることが好ましい。 以下、放置された動物の種類に応じた、消臭液のより好ましい組成について説明する。 【0066】 (2-1)犬の放置された部屋の場合 犬の放置された部屋の場合、消臭液として、エタノール及び界面活性剤を含む酸性液剤を用いることが好ましい。上記の液剤を消臭液として用いることで、犬の放置された部屋内をより効率よく消臭することができる。より具体的には、揮発性を有するエタノールに不揮発性の界面活性剤を組み合わせ使用することで、噴霧した消臭液を壁面に染み込ませることができ、犬の放置された部屋内をより効率よく消臭することができる。 【0067】 (2-2)猫の放置された部屋の場合 猫の放置された部屋の場合、消臭液として、塩素系漂白剤及び水を含む液剤を用いることが好ましい。上記の液剤を消臭液として用いることで、猫の放置された部屋内をより効率よく消臭することができる。より具体的には、塩素系漂白剤の水希釈液を消臭剤として用いることで、部屋内を損傷させることなく、猫の尿に存在するフェリニン(3-メルカプト-3-メチルブタン-1-オール)を効率よく分解することができ、猫の放置された部屋内をより効率よく消臭することができる。 【0068】 ここで、塩素系漂白剤は、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とするものであることが好ましい。次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする漂白剤として、ハイター(花王株式会社 製)を好ましく挙げることができる。 【0069】 また、塩素系漂白剤と水との混合割合は、好ましくは3:7~7:3、より好ましくは4:6~6:4、さらに好ましくは4.5:5.5~5.5:4.5である。塩素系漂白剤と水との混合割合を上記範囲内とすることで、部屋の壁面を損傷させることなく、猫の尿に存在するフェリニン(3-メルカプト-3-メチルブタン-1-オール)を効率よく分解することができ、猫の放置された部屋内をより効率よく消臭することができる。 【0070】 (3)高圧水蒸気処理 また、汚物清掃作業は、(2)消臭液の噴霧の後に、高圧水蒸気処理を行う形態とすることが好ましい。 本明細書において、高圧水蒸気処理とは、水蒸気を高出力で噴射する処理をいう。 ここで、高圧水蒸気処理は、部屋内に残存した汚物の固着した壁面に高圧水蒸気装置の噴射口をあてがい、水蒸気を高出力で噴射することにより汚物を除去する形態とすることが好ましい。 なお、高圧水蒸気処理には、公知の高圧水蒸気機器を用いることができる。 【0071】 消臭効率を向上させる観点から、高圧水蒸気処理において噴射する水蒸気の温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは95℃以上である。 下限以上の温度で高圧水蒸気処理を行うことで、壁面に固着した汚物をより効率よく剥がすことができ、動物の放置された部屋内をより効率よく消臭することができる。 【0072】 なお、高圧水蒸気処理には、高圧水蒸気装置(ケルヒャー 社製)を用いることができる。 【0073】 また、本発明においては、(2)消臭液の噴霧と(3)高圧水蒸気処理とを繰り返し行うことが好ましい。(2)消臭液の噴霧と(3)高圧水蒸気処理の繰り返し回数は、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上である。 【0074】 (液剤散布作業S22、S24) 液剤散布作業は、弱アルカリ性液剤及び弱酸性液剤を散布する作業である。 弱アルカリ性液剤及び弱酸性液剤を用いて部屋内を洗浄することで、糞、尿などの汚物由来の臭いを軽減することができる。 【0075】 弱アルカリ性液剤は、pHが8-10の範囲内であるものが好ましく、例えば、セスキ炭酸ソーダ、重曹を含む液剤を好ましく挙げることができる。 【0076】 また、弱酸性液剤は、pHが1.5-4の範囲内にあるものが好ましく、例えば、クエン酸を含む液剤を好ましく挙げることができる。 【0077】 ここで、弱アルカリ性液剤と弱酸性液剤は、必ずしも双方を同時に使用する必要はなく、弱アルカリ性液剤を散布した後に弱酸性液剤を散布する形態、弱酸性液剤を散布した後に、弱アルカリ性液剤を散布する形態の何れであってもよい。 【0078】 また、弱アルカリ性液剤と弱酸性液剤は、必ずしもオゾン燻蒸作業前に双方を使用する必要はなく、例えば、弱アルカリ性液剤を散布した後にオゾン燻蒸作業を行い、その後弱酸性液剤を散布し、再度オゾン燻蒸作業を行う形態であってもよく、また、弱酸性液剤を散布した後にオゾン燻蒸作業を行い、その後弱アルカリ性液剤を散布し、再度オゾン燻蒸作業を行う形態であってもよい。 【0079】 また、散布した液剤は、必ずしもふき取る必要はなく、液剤の残存した状態で後述のオゾン燻蒸作業を行うこともできる。 液剤の残存した状態で後述のオゾン燻蒸作業を行うことで、より効率よく動物の放置された部屋を消臭することができる。 【0080】 (オゾン燻蒸作業S23) (1)下準備(酵素含有消臭剤の散布) 本発明においては、オゾン散布前にプロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼを含む消臭剤を散布することが好ましい。酵素を含む消臭剤を散布することで、汚物に含まれるたんぱく質、脂肪、でんぷん質、繊維質を分解することができ、より確実に動物の放置された部屋を消臭することができる。 【0081】 ここで、消臭剤に含まれる酵素、消臭剤の種類、消臭剤の形態、併用する物質に関する技術事項については、前述の<故人の放置された部屋の消臭>に記載の技術事項を適用することができる。 【0082】 (2)オゾン燻蒸 オゾン燻蒸作業は、部屋内にオゾンを噴霧する作業である。 【0083】 オゾン燻蒸作業における、オゾンの使用量は、1m3あたり、好ましくは1500mg以上、より好ましくは3000mg以上、さらに好ましくは4500mg以上、特に好ましくは6000mg以上である。 下限以上の量のオゾンを噴霧することで、動物の放置された部屋をより確実に消臭することができる。 【0084】 また、オゾン燻蒸作業における、オゾンの使用量は、1m3あたり、好ましくは25000mg以下、より好ましくは20000mg以下、さらに好ましくは15000mg以下、特に好ましくは12000mg以下である。 上限以下のオゾン使用量であっても、動物の放置された部屋をより確実に消臭することができる。 【0085】 オゾン燻蒸作業には、公知のオゾン燻蒸装置を用いることができる。」 3 また、上記2で摘記した「動物の放置された部屋の消臭」に対応する実施例として、以下の記載がある。 「【0113】 [実施例3]犬の放置された部屋の消臭 (1-1)事例 犬3匹の放置現場 【0114】 (1-2)消臭開始時点での部屋内の状態 犬の放置された期間は不明。消臭開始時点で、犬3頭は餓死していた。 入室すると、犬の糞尿、体液を原因とする臭気が強く感じられる。 消臭対象は、およそ60m3の部屋である。 【0115】 (2)消臭工程 (2-1)汚物清掃作業S21 次に、部屋内に残存する体液、糞、尿といった汚物を清掃した。また、エタノール及び界面活性剤を含む酸性液剤を室内に散布した。 エタノール及び界面活性剤を含む酸性液剤の散布後に、部屋内に残存した汚物の固着した壁面に高圧水蒸気装置(ケルヒャー 社製)の噴射口をあてがい、水蒸気を高出力で噴射すること(高圧水蒸気処理)により汚物を除去した。 【0116】 エタノール及び界面活性剤を含む酸性液剤の散布及び、高圧水蒸気処理は、汚物の固着した壁面から、固着した汚物がなくなるまで繰り返し行った。 【0117】 (2-2)液剤散布作業(弱アルカリ性液剤の散布)S22 セスキ炭酸ソーダ、重曹を含む弱アルカリ性液剤を散布し、部屋内の洗浄を行った。 【0118】 (2-3)オゾン燻蒸作業S23 (2-3-1)酵素処理 オゾン散布前に、酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ)を含む消臭剤を散布した。 【0119】 (2-3-2)オゾン燻蒸作業 オゾン燻蒸装置を用いて、オゾンの噴霧を行った。 【0120】 (2-4)液剤散布作業(弱酸性液剤の散布)S24 クエン酸を含む弱酸性液剤を散布し、部屋内の洗浄を行った。 【0121】 (2-5)オゾン燻蒸作業S25 (2-3)と同様の方法により、オゾンの噴霧を行った。 【0122】 上記の(2-2)液剤散布作業(弱アルカリ性液剤の散布)、(2-3)オゾン燻蒸作業、(2-4)液剤散布作業(弱酸性液剤の散布)、(2-5)オゾン燻蒸作業を、室内の消臭が感じられなくなるまで繰り返すことにより、室内を消臭した。 ここで、オゾンの総使用量は、およそ60m3の空間に対し、540000mg程度(1m3あたり、9000mg)であった。 【0123】 (3)消臭作業後の臭気 本消臭作業により、部屋内の犬の糞尿、体液を原因とする臭気は感じられなくなった。 【0124】 [実施例4]猫の放置された部屋の消臭 (1-1)事例 猫7匹の放置現場 【0125】 (1-2)消臭開始時点での部屋内の状態 猫の放置された期間は不明。消臭開始時点で、猫7匹は死亡していた。 入室すると、猫の糞尿、体液を原因とする臭気が強く感じられる。 消臭対象は、およそ100m3の部屋である。 【0126】 (2)消臭工程 (2-1)汚物清掃作業S21 次に、部屋内に残存する体液、糞、尿といった汚物を清掃した。また、ハイター(花王株式会社 製)と水とを1:1の割合で混合した液剤を室内に散布した。 また、部屋内に残存した汚物の固着した壁面に高圧水蒸気装置(ケルヒャー 社製)の噴射口をあてがい、水蒸気を高出力で噴射すること(高圧水蒸気処理)により汚物を除去した。 【0127】 ハイター(花王株式会社 製)と水とを1:1の割合で混合した液剤の散布及び、高圧水蒸気処理は、汚物の固着した壁面から、固着した汚物がなくなるまで繰り返し行った。 【0128】 (2-2)液剤散布作業(弱アルカリ性液剤の散布)S22 セスキ炭酸ソーダ、重曹を含む弱アルカリ性液剤を散布し、部屋内の洗浄を行った。 【0129】 (2-3)オゾン燻蒸作業S23 (2-3-1)酵素処理 オゾン散布前に、酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ)を含む消臭剤を散布した。 【0130】 (2-3-2)オゾン燻蒸作業 オゾン燻蒸装置を用いて、オゾンの噴霧を行った。 【0131】 (2-4)液剤散布作業(弱酸性液剤の散布)S24 クエン酸を含む弱酸性液剤を散布し、部屋内の洗浄を行った。 【0132】 (2-5)オゾン燻蒸作業S25 (2-3)と同様の方法により、オゾンの噴霧を行った。 【0133】 上記の(2-2)液剤散布作業S22(弱アルカリ性液剤の散布)、(2-3)オゾン燻蒸作業S23、(2-4)液剤散布作業S24(弱酸性液剤の散布)、(2-5)オゾン燻蒸作業S25を、室内の消臭が感じられなくなるまで繰り返すことにより、室内を消臭した。 ここで、オゾンの総使用量は、およそ100m3の空間に対し、1040000mg程度(1m3あたり、10400mg)であった。 【0134】 (3)消臭作業後の臭気 本消臭作業により、部屋内の猫の糞尿、体液を原因とする臭気は感じられなくなった。」 第8 特許異議申立理由の判断 上記第5で記載した申立理由1~5については、事案に鑑み、まず最初に、申立理由2(分割要件を認めない場合の進歩性)について検討し、その後、申立理由5(明確性)、申立理由1(分割要件を認めた場合の新規性及び進歩性)、申立理由4(サポート要件)、申立理由3(実施可能要件)の順に検討する。 1 申立理由2(分割要件を認めない場合の進歩性)について (1)分割要件について ア 単位(g/h→mg/h)の経緯 (ア)オゾン燻蒸作業を行う際の1m3あたりのオゾン量(単位)に着目すると、申立人の主張するとおり、親出願の出願当初の請求項2には「前記オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500g以上のオゾンを用いる」と記載されている。その後、第1世代出願の出願当初の請求項1に「オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500g以上・・・のオゾンを用いる」と記載されていたものの、令和3年2月19日提出の手続補正書により請求項3として「オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上・・・のオゾンを用いる・・・」と補正され、同日提出の上申書において、以下の参考文献1及び2を添付したうえで、以下のとおり説明している。 (イ)上申書の内容 「孤独死現場や火災現場の消臭、部屋の除菌を目的として使用されるオゾン燻蒸装置は、オゾン発生量が2000mg/h~12000mg/h程度であることが当時の技術常識として知られていました。 本願発明においてもオゾン燻蒸装置として公知のオゾン燻蒸装置を用いることができることが記載されており、具体的には、「スーパーアクティボ(株式会社カイコーポレーション社製)、Panther-J(プラズマオゾン脱臭装置、エコゾン社製)」が列挙されております(段落0049)。前記オゾン燻蒸装置は、単位時間当たりのオゾン発生量が、ActivOでは12,000mg/h、Panther-Jでは7,500mg/hであることが、下記に示す参考文献1及び2に開示されております。 オゾン燻蒸装置の規格に記載されたオゾン発生量の単位が「mg/h」であることを踏まえると、本願明細書においてオゾン使用量を「g」と記載しているのは明らかに「mg」の誤記であると、オゾン燻蒸を行う当業者であれば容易に推測することができます。 また、本願明細書の実施例2に記載された量(390000g)のオゾンを用いてオゾン燻蒸を行うとすると、上記ActivOを用いてオゾン燻蒸を行った場合であっても32500時間(すなわち、3年以上)連続してオゾン燻蒸装置を稼働し続ける計算となることからも、本願発明のオゾン使用量の単位「g」が誤記であることは明らかです。 したがって、本願明細書内において、オゾンの使用量の単位「g」を「mg」に変更する補正は、出願時の技術常識から自明な事項に基づく誤記の訂正であるため、新たな技術事項を追加する補正に該当しません。」 ・参考文献1“ActivO-J|株式会社カイコーポレーション」”,[online], [2021.02.08検索], インターネット,URL:https://www.kaicorp.co.jp/product/deodorization/activo-j.html (製品スペックのみ一部抜粋) [図:0001416482000026.jpg] ・参考文献2“オゾン脱臭機、脱臭装置なら世界のエコゾン/Panther パンサー”, [online], [2020.02.08検索], インターネット,URL:http://www.ecozone-technologies.jp/products/panther.html (製品スペックのみ一部抜粋) [図:0001416482000027.jpg] (ウ)そして、それ以降、第2世代出願3の出願当初の請求項1で「オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上・・・のオゾンを用いる」と記載され、第3世代出願の出願当初の請求項1で「オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上・・・のオゾンを用いる」と記載され、本件出願の出願当初の請求項1でも「オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上のオゾンを用いる」と記載されている。 イ 当審の判断 まず、単位時間当たりのオゾン発生量が、ActivOでは12,000mg/h、Panther-Jでは7,500mg/hであることは、上記第6の1(1)(1ア)で摘記したように、申立人が親出願の平成30年12月17日前に公表されていると主張する甲1にも記載されていることである。 そうすると、第1世代出願の当初明細書に記載されている実施例2に対する上記上申書の「実施例2に記載された量(390000g)のオゾンを用いてオゾン燻蒸を行うとすると、上記ActivOを用いてオゾン燻蒸を行った場合であっても32500時間(すなわち、3年以上)連続してオゾン燻蒸装置を稼働し続ける計算となることからも、本願発明のオゾン使用量の単位「g」が誤記であることは明らかです。」との主張は妥当なものであり、「g」の単位を「mg」にすると、上記時間は32.5時間となり、オゾン燻蒸作業として想定される範囲の時間となる。すなわち、オゾンの使用量の単位「g」を「mg」に変更する補正は誤記を正すものであり、第1世代出願において、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 そうすると、上記実施例2をはじめ、第1世代出願の当初明細書と同じ親出願の明細書においても、オゾンの使用量の単位は実質的に「mg」であるといえることから、親出願の一部を第1世代出願とし、その一部を第2世代出願3とし、その一部を第3世代出願とし、その一部を本件出願としたものは、オゾンの使用量の単位は実質的に「mg」すなわち「mg/h」であるという点において、分割要件を満たすことになる。 したがって、本件出願の出願日は、親出願の出願日に遡及することとなる。 ウ 甲15の1~10について (ア)甲15の1~6 本件出願は、上記イで記載したとおり、親出願の一部を第1世代出願とし、その一部を第2世代出願3とし、その一部を第3世代出願とし、その一部を本件出願としたものであるところ、第2世代出願3の他に、第1世代出願の一部を第2世代出願1(特願2021-65402号)及び第2世代出願2(特願2021-65403号)の特許出願としたものもある。そして、甲15の1~3は、第2世代出願1についての手続書類(手続補正書、拒絶理由通知書)、甲15の4~6は、第2世代出願2についての手続書類(手続補正書、拒絶理由通知書)である。ここで、第2世代出願1及び第2世代出願2では、オゾン量に関する記載が削除されたことを、本件出願が分割要件を満たしていないことの根拠事実の一つとしているが、甲15の1~6は、第2世代出願3の手続書類ではないことから、本件出願の分割要件を判断するうえで、直接的な影響を及ぼすものではない。そうすると、第2世代出願1及び2において、オゾン量に関する記載を削除したことが、第2世代出願3におけるオゾンの使用量の単位の判断に影響を及ぼすものではなく、ましてや、ア(イ)で摘記した上申書の内容を否定できるものではない。 よって、甲15の1~6によって、本件出願が、分割要件を満たすものではないと判断することはできない。 (イ)甲15の7 甲15の7は、親出願における手続補正書であり、申立人は、当該手続補正書による補正が、親出願から1年以上経過した時点でされたにもかかわらず、依然としてオゾン量の単位として「g」を使用していることから、明らかな誤記ではないと主張している。しかし、誤記であることは、認識した時点で把握されるものであり、経過時間によって、誤記であるか否か変わるものではない。 よって、甲15の7によって、本件出願が、分割要件を満たすものではないと判断することはできない。 (ウ)甲15の8 甲15の8は、親出願の出願日と同日に出願された特願2018-235743号の公開公報であり、その請求項1及び2には、 「【請求項1】 火災事故のあった部屋の消臭方法であって、 煤臭の除去を行う煤臭除去工程を有し、 前記煤臭除去工程は、 部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、 活性炭を含む塗料を、煤の残存する内壁に塗布する塗布作業と、 を含むことを特徴とする、消臭方法。 【請求項2】 前記オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、6500g以上の量のオゾンを用いることを特徴とする、請求項1に記載の消臭方法。」と記載されている。 申立人は、上記記載を根拠に、親出願の出願当時において、オゾン量を表す単位として「mg」を使用するのが当業者の技術常識であったとはいえないことを主張しているが、親出願の「故人及び又は/動物の放置された部屋の消臭」に対して、甲15の8は「火災事故のあった部屋の消臭」であり、一般常識として必要なオゾン量が両者によってどれだけ異なるものなのか不明であるから、後者が「1m3あたり、6500g以上」の量のオゾンを用いるから、前者も「1m3あたり、1500g以上」であり、「1m3あたり、1500mg以上」ではないとはいえない。また、親出願の出願日に出願された甲15の8の特許出願の出願人が親出願の出願人と同じであることに鑑みると、火災事故のあった部屋の消臭におけるオゾン量が1m3あたり「6500g以上」についても「6500mg」の誤記であることも否定できないことから、オゾン量を表す単位の技術常識を甲15の8から判断することはできない。 よって、甲15の8によって、本件出願が、分割要件を満たすものではないと判断することはできない。 (エ)甲15の9及び10 甲15の10は、第1世代出願の公開公報であり、甲15の9は、その第1世代出願に対して提出された上記ア(イ)で摘記した上申書である。 ここで、申立人は、親出願の手続補正書(甲15の7)の提出日から2か月も経過していない令和2年6月17日〔第1世代分割出願の現実の出願日〕に、オゾンの使用量の単位として「mg」を使用することが技術常識になったとも考えにくく、この期間において技術常識が変化したことは上記上申書には記載されていないことから、上申書の「したがって、本願明細書内において、オゾンの使用量の単位「g」を「mg」に変更する補正は、出願時の技術常識から自明な事項に基づく誤記の訂正であるため、新たな技術事項を追加する補正に該当しません。」との記載は妥当性を欠くことを主張している。 しかし、上記(イ)で述べたように、甲15の7の手続補正書の提出時点において「g」が誤記であることが認識されたのであり、仮に、少なくとも その時点において「mg」を用いることが技術常識であったとしても、誤記に関する技術常識が変化するとは考え難いから、第1世代分割出願の現実の出願日における技術常識であるともいえる。そうすると、親出願の手続補正書の提出日から第1世代分割出願の現実の出願日の間の2ヶ月弱の期間に1m3あたりオゾン使用量の単位についての技術常識が変化したものではないから、申立人の「この期間において技術常識が変化したことは上記上申書には記載されていない」との主張は失当であり、上記上申書の記載は妥当性を欠くものであるとの主張は適切ではない、 (オ)小括 したがって、甲15の1~10の証拠方法及びそれに基づく申立人の主張により、上記イで述べた判断が覆ることはない。 エ 分割についてのまとめ 以上のことから、本件出願は、親出願の一部を第1世代出願とし、その一部を第2世代出願3とし、その一部を第3世代出願とし、その一部を本件出願としたものであり、それらは分割要件を満たすものであるから、特許法第44条の特許出願の分割に関する規定を満たしている。 よって、本件出願についての分割は適法になされたものであるから、本件出願は、親出願の出願時である平成30年12月17日(以下「遡及日」という。)になされたものとみなす。 以下、本件出願の「出願」時は「遡及日」とする。 (2)進歩性の判断 甲15の公知日は令和2年6月25日、甲16の公知日は令和3年4月1日であり、いずれも本件出願の遡及日より後のものであるから、甲15及び甲16の記載に基づいて本件発明1~7の進歩性を判断することはできない。 よって、申立理由2によって、本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 2 申立理由5(明確性)について (1)液剤の残存した状態について 本件発明1における「該液剤の残存した状態」について、「残存」とは「のこりとどまること」(広辞苑第四版)であるから、文言上、「液」剤が「液体」としてのこりとどまっている状態であり、上記第7の2で摘記した本件明細書の【0079】には、 「また、散布した液剤は、必ずしもふき取る必要はなく、液剤の残存した状態で後述のオゾン燻蒸作業を行うこともできる。 液剤の残存した状態で後述のオゾン燻蒸作業を行うことで、より効率よく動物の放置された部屋を消臭することができる。」と記載されている。 そうすると、本件発明1における「該液剤の残存した状態」とは、液剤がふき取れるほど液体としてのこりとどまっている状態のことであり、状態として明確に特定できないとはいえない。 (2)解体した箇所について 本件明細書には、本件発明4における「前記のオゾン燻蒸作業前に汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、前記のオゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で解体した箇所をアクリル樹脂塗料、漆塗料、ビニル樹脂塗料から選ばれる一又は二以上の油性下地塗料で覆う被覆作業」に対応して以下の記載がある。 「【0050】 (解体作業S14) 解体作業は、汚物の付着した箇所を解体する作業である。 より具体的には、汚物の付着した部屋の表層部分を解体する作業であって、例えば、壁紙、床板、フローリング、畳等を解体する作業をいう。 解体作業により、壁紙、床板、フローリング、畳といった部屋の表層部分を解体することで、部屋の柱、梁、土台、骨組み等を表層に露出させることができ、後のオゾン燻蒸作業において、故人の放置された部屋をより確実に消臭することができる。 【0051】 (被覆作業S15) 被覆作業は、前述の解体作業S14により露出した箇所(部屋の柱、梁、土台、骨組み等)を被覆することにより、前述の解体作業S14で解体することのできない部屋の柱、梁、土台、骨組み等に由来する臭いを軽減する作業である。以下、具体的な作業について説明する。 (1)下準備(ラッカーの塗布) 本発明においては、下準備として、前述の解体作業S14により露出した箇所(部屋の柱、梁、土台、骨組み等)に対し、ラッカーの塗布を行うことが好ましい。ラッカーの塗布を行うことで、前述の解体作業S14で解体することのできない部屋の柱、梁、土台、骨組み等に由来する臭いを軽減することができる。 ・・・ 【0053】 (2)被覆作業 本発明においては、前述の解体作業S14により露出した箇所(部屋の柱、梁、土台、骨組み等)に対し、油性下地塗料を塗布する形態とすることが好ましい。また、本発明においては、ラッカーの塗布の後に、油性下地塗料を塗布する形態とすることが好ましい。」 上記の記載によれば、本件発明4において、解体されるのは、壁紙、床板、フローリング、畳といった部屋の表層部分であるが、「解体箇所」とは、解体作業により露出した箇所(部屋の柱、梁、土台、骨組み等)であることは明らかである。 また、「解体箇所」との文言では、「実際の解体部分を含む箇所」との理解が可能であることや、本件発明は消臭を前提にするものであることから、消臭のための被覆作業がなされる「解体箇所」とは、そのまま廃棄されるようなものではなく、「実際の解体部分を含む箇所で消臭のための被覆作業がなされる必要があるもの」との理解が可能であることから、本件発明4において、「解体箇所」が「解体によって取り除かれた箇所を示す」との解釈は、妥当ではない。 (3)まとめ よって、申立人が主張する申立理由5についての内容は、いずれも採用できないことから、本件発明1~7に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、申立理由5によって本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由1(分割要件を満たす場合の新規性及び進歩性)について (1)甲1を主引用例とした場合 ア 本件発明1について (ア)対比 a 甲1発明の「人が孤独死し、死後2週間経過した部屋」は、本件発明1の「故人の放置された部屋」に相当するから、甲1発明の「1LDKの部屋で人が孤独死し、死後2週間経過した部屋を消臭する方法」は、甲1発明の「故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法」に相当する。 また、建築基準法の天井高さが2.1mであり、1LDKの部屋の床面積が一般に40m2ぐらいであることを考慮すると、1LDKの部屋の大きさ(体積)は84m3と計算され、10m3以上であるから、甲1発明の「消臭する」「1LDKの部屋」は、本件発明1の「消臭対象とする部屋の大きさが10m3以上の部屋」に相当する。 b 一般に、死亡した人は括約筋等が緩み、体液、糞、尿が流れ出てくることから、引用発明の「孤独死」した「部屋」の「臭気発生源」は、「体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物」が相当する。そうすると、甲1発明の「孤独死」した「部屋」の「臭気発生源の除去である清掃」は、本件発明1の「体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物を清掃する汚物清掃作業」に相当する。 c 本件発明1における「弱アルカリ性液剤」、「弱酸性液剤」は、各々、本件明細書の【0075】に「弱アルカリ性液剤は、pHが8-10の範囲内であるものが好ましく」、【0076】に「弱酸性液剤は、pHが1.5-4の範囲内にあるものが好ましく」と記載されているものであるから、甲1発明の「pH2.0±0.5の強酸性溶液、又はpH8.0±0.5もしくは9.0±0.5の弱アルカリ性溶液」は、本件発明1の「弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤」に相当する。 そして、甲1発明の「pH2.0±0.5の強酸性溶液、又はpH8.0±0.5もしくは9.0±0.5の弱アルカリ性溶液を」「噴霧」する「消臭剤噴霧」は、本件発明1の「弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業」に相当する。 d 甲1発明の「Panther-Jを使って5時間オゾン燻蒸し」「Panther-Jにより(0時~ 5時(5h)、16時~ 19時(3h)、10時~ 13時(3h))×2日間オゾン燻蒸を行う」ことは、Panther-Jを使って、27時間(5h+(5h+3h+3h)x2=27h)オゾン燻蒸を行うことである。そして、「Panther-J」は、上記(1ア)によれば、「Panther-J」のオゾン発生量は「7500mg/h」であるから、上記27時間オゾン燻蒸を行ったオゾン量は7500mg/h×27時間で202500mgであり、これを上記aで記載した1LDKの部屋の大きさである84m3で割ると、1m3あたり2412mgとなり、本件発明1の「1m3あたり、1500mg以上のオゾン」を満たしている。 そうすると、甲1発明の「Panther-Jを使って5時間オゾン燻蒸し」「Panther-Jにより(0時~ 5時(5h)、16時~ 19時(3h)、10時~ 13時(3h))×2日間オゾン燻蒸を行う」ことは、本件発明1の「オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上のオゾンを用いること」に相当する。 e そして、甲1発明の「部屋を消臭する方法であって、」「清掃を行い、」「消臭剤噴霧」し「オゾン燻蒸を行う、方法」は、本件発明1の「部屋の消臭方法であって、」「汚物清掃作業と、汚物清掃作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、」「液剤散布作業後に」「前記オゾン燻蒸作業を行うことを含む、消臭方法」に相当する。 f 一致点及び相違点 上記a~eを踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 (一致点) 「故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法であって、 体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物を清掃する汚物清掃作業と、 汚物清掃作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、 を含み、 消臭対象とする部屋の大きさが10m3以上の部屋であり、 前記オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上のオゾンを用いることを特徴とし、 弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、前記オゾン燻蒸作業を行うことを含む、消臭方法。」 (相違点1) 液剤散布作業後に、前記オゾン燻蒸作業を行う際に、本件発明1では、「該液剤の残存した状態で」行うのに対し、甲1発明では、「該液剤の残存した状態で」行うとは特定されていない点。 (イ)相違点1の判断 a 本件発明1における「該液剤の残存した状態」とは、上記2(1)で述べたように、液剤がふき取れるほど液体としてのこりとどまっている状態のことである。 b 一方、甲1には、消臭剤噴霧とオゾン燻蒸との作用関係について、上記(1イ)に「消臭剤が蒸発し室内の湿度が上昇する。湿度が高い状態でオゾン燻蒸を行った方が、よりオゾンと臭気物質の反応が進む。」(上段の文章)と記載され、上記(1ウ)には「消臭剤散布(湿度を上げる) 室内全体に消臭剤を散布する。」(No3の欄)及び「4. 5を繰り返す 消臭剤噴霧した箇所が乾燥したら、消臭剤の噴霧も行う。」(No5の欄)と記載され、(1オ)に「湿度が高いと、オゾンと臭気物質の反応が高まる。・冬場など空気が乾いている際:加湿器を併用するとより効果的」(湿度を上げるの欄)と記載されており、消臭剤が蒸発し室内の湿度が上昇した状態でオゾン燻蒸を行うことは記載されているものの、「消臭剤」がふき取れるほど液体としてのこりとどまっている状態で、オゾン燻蒸を行うことについて記載されていない。 なお、上記(1ウ)のNo5の欄には「4. 5を繰り返す 消臭剤噴霧した箇所が乾燥したら、消臭剤の噴霧も行う。」との記載もあるが、「4」は「オゾン燻蒸」で「5」は「換気」であり、その前の行程であるNo3において「室内全体に消臭剤を散布する」と記載されていることから、「消臭剤噴霧」する「箇所」は室内の空間であり、消臭剤を噴霧した空間が「乾燥」(湿度が下がる)したら、湿度を上げるべく「消臭剤の噴霧も行う」ということであり、当該記載から「消臭剤がふき取れるほど液体としてのこりとどまっている状態」を読み取ることはできない。 むしろ、上記「消臭剤が蒸発し室内の湿度が上昇する。湿度が高い状態でオゾン燻蒸を行った方が、よりオゾンと臭気物質の反応が進む。」、「消臭剤散布(湿度を上げる) 室内全体に消臭剤を散布する。」及び「湿度が高いと、オゾンと臭気物質の反応が高まる。」との記載からすると、オゾンと臭気物質の反応を高めるためには、消臭剤を蒸発させた方が好ましいことから、本件発明1の「液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業を行う」ことは、甲1発明とは技術思想的に相反するものである。 そうすると、甲1発明において、「消臭剤噴霧」後の「オゾン燻蒸」を、該消臭剤である「液剤の残存した状態で」行うことはないから、阻害要因にもなる。 c また、甲1のほかに、技術的内容を開示しているものとして甲3、甲5、甲7、甲9~14があるが、そのうち上記相違点1に関与するものが記載されているのは甲3及び9である。 (a)甲3については、下記の(2)ア(イ)bで述べるように、液剤散布作業後に、「該液剤の残存した状態で」オゾン燻蒸作業を行うものではない。 (b)甲9について検討するに、上記(甲9イ)には、オゾン脱臭の進め方として、「(1)清掃(発生源の除去)、(2)部屋を密閉・養生、(3)室温の調整、(4)消臭補助剤散布、(5)オゾン燻蒸、(6)換気、(6)3~5を繰り返す 消臭補助剤を噴霧した箇所が乾燥していたら、消臭補助剤の噴霧も行う」(()数字は原文では○数字である)と記載されている。 ここで、「消臭補助剤を噴霧した箇所が乾燥していたら、消臭補助剤の噴霧も行う」との記載もあるが、消臭補助剤を噴霧する「箇所」は対象室内の空間であり、消臭補助剤を噴霧した空間が「乾燥」(湿度が下がる)したら、「消臭補助剤の噴霧も行う」ということである。特に、上記(甲9ウ)に「薬剤の過剰噴霧を避ける → 薬剤の過剰噴霧は過湿度につながる」と記載されていることから、噴霧した消臭補助剤が「ふき取れるほど液体としてのこりとどまっている状態」まで過剰噴霧することはあり得ない。 そうすると、甲9には、上記相違点1に係る事項は記載されていない。 (c)また、甲5、甲7、甲10~14には、弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を「部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業を行う」ことは何ら記載されていない。 d したがって、上記相違点1は実質的な相違点であり、甲1発明に基づいて、さらには、その他の甲3、甲5、甲7、甲9~14の記載を参照しても、当業者が容易になし得たものではない。 (ウ)小括 よって、本件発明1は、甲1発明ではないことから、甲1発明を「公然知られた発明」としても、特許法第29条第1項第1号に該当しない。また、本件発明1は、甲1発明に基づいて、さらには、甲3、甲5、甲7、甲9~甲14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものである。 そうすると、本件発明1と同様に、本件発明7は、甲1発明を「公然知られた発明」として、特許法第29条第1項第1号に該当しないし、また、本件発明2~7は、甲1発明に基づいて、さらには、甲3、甲5、甲7、甲9~甲14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)甲3を主引用例とした場合 ア 本件発明1について (ア)対比 a 甲3発明の「人が孤立死し、死後1か月後の部屋」は、本件発明1の「故人の放置された部屋」に相当するから、甲1発明の「1Kマンションの部屋で人が孤立死し、死後1か月後の部屋の消臭方法」は、甲1発明の「故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法」に相当する。 また、建築基準法の天井高さが2.1mであり、1Kの部屋の床面積が一般に20m2ぐらいであることを考慮すると、1Kの部屋の大きさ(体積)は42m3と計算され、10m3以上であるから、甲3発明の「消臭する」「1Kの部屋」は、本件発明1の「消臭対象とする部屋の大きさが10m3以上の部屋」に相当する。 b 甲3発明の「血液・体液を拭き取り、家財の整理・撤去を行い、クロス・CFを除去」することは、少なくとも「体液を拭き取」っており、体液からなる汚物を清掃しているといえることから、本件発明1の「体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物を清掃する汚物清掃作業」に相当する。 c 甲3発明の「アルカリ性洗浄剤での拭き上げ」と、本件発明1の「弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業」とは、「アルカリ性液剤を適用する」という限りにおいて共通する。 d 甲3発明の「Panther-Jによるオゾン燻蒸を3日間行」うことは、上記第6の1(1)の(1ア)によれば、「Panther-J」のオゾン発生量は「7500mg/h」であるから、上記「3日間」すなわち72時間オゾン燻蒸を行ったオゾン量は7500mg/h×72時間で540000mgであり、これを上記aで記載した1Kの部屋の大きさである42m3で割ると、1m3あたり12857mgとなり、本件発明1の「1m3あたり、1500mg以上のオゾン」を満たしている。 そうすると、甲3発明の「Panther-Jによるオゾン燻蒸を3日間行」うことは、本件発明1の「オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上のオゾンを用いること」に相当する。 e そして、甲3発明の「部屋の消臭方法であって、」「血液・体液を拭き取り、家財の整理・撤去を行い、クロス・CFを除去し」、「アルカリ性洗浄剤での拭き上げ」、「オゾン燻蒸を行う、方法」と、本件発明1の「部屋の消臭方法であって、」「汚物清掃作業と、汚物清掃作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、」「液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で」「前記オゾン燻蒸作業を行うことを含む、消臭方法」とは、「部屋の消臭方法であって、」「汚物清掃作業と、汚物清掃作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、」「液剤の適用後に、」「前記オゾン燻蒸作業を行うことを含む、消臭方法」の点で共通する。 f 一致点及び相違点 上記a~eを踏まえると、本件発明1と甲3発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 (一致点) 「故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法であって、 体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物を清掃する汚物清掃作業と、 汚物清掃作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、 を含み、 消臭対象とする部屋の大きさが10m3以上の部屋であり、 前記オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上のオゾンを用いることを特徴とし、 アルカリ性液剤の適用後に、前記オゾン燻蒸作業を行うことを含む、消臭方法。」 (相違点2) アルカリ性液剤の適用後に、前記オゾン燻蒸作業を行う際に、本件発明1では、「弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で」前記オゾン燻蒸作業を行うのに対し、甲3発明では、「アルカリ性洗浄剤での拭き上げ」後にオゾン燻蒸を行う点。 (イ)相違点2の判断 a 本件発明1における「該液剤の残存した状態」とは、上記(1)ア(イ)aで記載したとおり、液剤がふき取れるほど液体としてのこりとどまっている状態のことである。 b それに対し、甲3発明では、「アルカリ性洗浄剤での拭き上げ」を行うものであり、拭き上げた後には、液剤がふき取れるほど液体としてのこりとどまっている状態ではない。 そうすると、甲3発明の「アルカリ性洗浄剤での拭き上げ」後にオゾン燻蒸を行うことと、本件発明1の「液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業を行う」こととは、液剤の状態が技術的に相反するものであり、甲3発明において、「アルカリ性洗浄剤での拭き上げ」後の「オゾン燻蒸」を、該アルカリ性洗浄剤である「液剤の残存した状態で」行うことはないから、阻害要因にもなる。 よって、その余の相違点2の事項である「弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業」について検討するまでもなく、「弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で」前記オゾン燻蒸作業を行うことは、当業者が容易になし得たことではない。 c また、甲3のほかに、技術的内容を開示しているものは甲1、甲5、甲7、甲9~14があるが、そのうち上記相違点2に関与するものが記載されているのは甲1及び9であるところ、甲1については、上記の(1)ア(イ)bで述べたように、液剤散布作業後に、「該液剤の残存した状態で」オゾン燻蒸作業を行うものではなく、甲9についても、上記(1)ア(イ)cで述べたように、消臭補助剤を「ふき取れるほど液体としてのこりとどまっている状態」まで噴霧してオゾン燻蒸作業を行うものではない。また、甲5、甲7、甲10~14も、弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を「部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業を行う」ことは何ら記載されていない。 d したがって、上記相違点2は実質的な相違点であり、甲3発明に基づいて、さらには、その他の甲1、甲5、甲7、甲9~14の記載を参照しても、当業者が容易になし得たものではない。 (ウ)小括 よって、本件発明1は、甲3発明ではないことから、甲3発明を「公然知られた発明」としても、特許法第29条第1項第1号に該当しない。また、本件発明1は、甲3発明に基づいて、さらには、甲1、甲5、甲7、甲9~甲14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものである。 そうすると、本件発明1と同様に、本件発明5及び7は、甲3発明を「公然知られた発明」としても、特許法第29条第1項第1号に該当しないし、また、本件発明2~7は、甲3発明に基づいて、さらには、甲1、甲5、甲7、甲9~甲14に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 4 申立理由4(サポート要件)について (1)サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が本件特許の出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、この観点に立って検討する。 (2)本件発明の課題について 本件発明の課題は、上記第7の1で摘記した本件明細書の【0008】に「本発明は、故人及び/又は動物の放置された部屋を消臭する方法を提供することを課題とする」と記載されているとおりである。 以下、「故人及び/又は動物の放置された部屋を消臭する方法を提供すること」を「本件発明の課題」という。 (3)本件発明1~7について 上記第5の4「申立理由4(サポート要件)」の(2)ア「本件発明1~7について」における主張内容は、上記第5の3「申立理由3(実施可能要件)」の(2)ア~カの主張内容を引用するものであるから、「申立理由3(実施可能要件)」の(2)ア~カの項目の内容を、上記(1)でのサポート要件の判断手法にそって、以下のア~カとして検討する。 ア 故人の放置された部屋の消臭について (ア)本件発明の背景技術 a 死臭について 故人を放置したときに発せられる臭い、すなわち死臭は、非常に強烈な臭いであり、一般に、微生物や細菌が死体を分解することによって生成されるカダベリン、プトレシン等の多数の悪臭を発する成分の発生が原因とされている。「カダベリン」は、動物の体組織が腐敗する際にタンパク質の加水分解よって生成する腐敗臭の元となる化合物であり、「プトレシン」も、カダベリンに類似した性質を持つもので、生物中に存在するアミノ酸が分解することによって生成する腐肉臭の元となる化合物である。 そうすると、故人及び死亡した動物の死体を構成する成分としてタンパク質及びアミノ酸は少なからず存在するものであり、それらが分解することにより、強烈な悪臭を発する成分であるカダベリン、プトレシンが発生していることになるから、故人においても、また、死亡した動物においても、悪臭を発生する成分としては共通するものであるといえる。 b 本件明細書の背景技術 上記第7の1で摘記した本件明細書の【0004】には、【背景技術】の記載として「故人や動物の放置から発見までに時間が経過してしまうと、腐敗、体液、糞、尿などの要因から、部屋は汚れ、強い臭いが残ってしまう。」と記載されている。 当該記載によれば、故人の放置された悪臭の原因は、体液だけではなく、腐敗、糞、尿もあることが示されている。そして、故人の放置された悪臭の原因として、腐敗、糞、尿もあることは、故人を構成する成分としてタンパク質及びアミノ酸は少なからず存在するものであり、それらが分解することにより、強烈な悪臭を発する成分であるカダベリン、プトレシンが発生すること、また、一般に死亡した人は括約筋等が緩み、糞、尿が流れ出てくることからも理解できることである。さらに、動物についても、糞尿、体液だけでなく、特に死亡した動物について、腐敗があることから、動物を構成する成分としてタンパク質及びアミノ酸は少なからず存在するものであり、それらが分解することにより、強烈な悪臭を発する成分であるカダベリン、プトレシンが発生することが理解できる。 そうすると、「故人」については体液が悪臭原因であり、「動物」については糞尿、体液が悪臭原因であることを否定するものではないが、上記本件明細書の【0004】に記載されている「故人や動物の放置から発見までに時間が経過してしまうと、腐敗、体液、糞、尿などの要因から、部屋は汚れ、強い臭いが残ってしまう。」との記載も踏まえて、本件発明は理解されるものであり、当該理解のもと、故人の放置された部屋と動物の放置された部屋とでは、悪臭の原因が異なるものとまではいえず、<故人の放置された部屋の消臭方法>と<動物の放置された部屋の消臭方法>とを互いに援用することはできないとまではいえない。 (イ)本件明細書の実施例3(犬)及び4(猫)について 上記第7の3で摘記した実施例3は、「餓死していた」「犬3頭」の放置された部屋の消臭についてのもので、実施例4は「死亡していた」「猫7匹」の放置された部屋の消臭についてのものであり、両者とも、体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物を清掃する汚物清掃作業をし、弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、1m3あたり1500mg以上を満たすオゾンを用いるオゾン燻蒸作業を行うことで、「臭気は感じられなくなった」との結果を得ている。 そして、上記(ア)aで述べたように、故人と死亡した動物の死体で強烈な悪臭を発する成分は共通しているのであるから、死亡した動物の死体の放置された部屋に対して、体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物を清掃する汚物清掃作業をし、弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、1m3あたり1500mg以上を満たすオゾンを用いるオゾン燻蒸作業を行い「臭気は感じられなくなった」との結果が得ているのであれば、「故人」の放置された部屋に対しても、少なくともある程度「臭気は感じられなくなった」との結果が得られるものであるといえる。 ここで、故人と死亡した動物の大きさの違いによって「臭気は感じられなくなった」との結果の程度に違いが出る可能性もあるところ、「餓死していた」「犬3頭」及び「死亡していた」「猫7匹」における犬及び猫の大きさが必ずしも明らかでないが、「犬3頭」及び「猫7匹」におけるタンパク質及びアミノ酸の量が「故人」より極端に少ないものとはいえないことから、「犬3頭」及び「猫7匹」においてタンパク質及びアミノ酸が分解され、発生するカダベリン及びプトレシンの量も「故人」に比較して極端に少ないとはいえない。 (ウ)液剤が残存した状態でのオゾン燻蒸について さらに、本件発明1は、実施例3及び4では明記はされていないが、弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に「該液剤の残存した状態で」オゾン燻蒸作業を行う方法であり、当該方法について、上記第7の2で摘記した本件明細書の【0079】に「また、散布した液剤は、必ずしもふき取る必要はなく、液剤の残存した状態で後述のオゾン燻蒸作業を行うこともできる。液剤の残存した状態で後述のオゾン燻蒸作業を行うことで、より効率よく動物の放置された部屋を消臭することができる。」と記載されている。 そうすると、弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に「該液剤の残存した状態で」オゾン燻蒸作業を行うことにより、より消臭効果が高まるものともいえることから、故人の放置された部屋に本件発明1の消臭方法を適用することは、上記実施例3及び4の消臭方法を適用したこと以上に、より「臭気は感じられなくなった」との結果が得られるものといえる。 (エ)犬と猫の消臭液について 申立人は、本件明細書の【0066】及び【0067】の記載に基づいて、動物が犬か猫であるかで好適な消臭方法が異なる旨の言及があるから、故人の放置された部屋と動物の放置された部屋とでも同様に好適な方法が異なることを主張している。 そこで、当該記載についても検討すると、上記第7の2で摘記した本件明細書の【0066】に「(2-1)犬の放置された部屋の場合」、【0067】に「(2-2)猫の放置された部屋の場合」と、犬と猫で場合を分けて記載されているが、当該記載は、本件明細書の以下の部分、 「【0064】 (汚物清掃作業S21) (1)汚物の除去 汚物清掃作業は、体液(血液、唾液等)、糞、尿といった汚物を清掃する作業である。 汚物清掃作業を行うことで、後のオゾン燻蒸作業において、動物の放置された部屋をより確実に消臭することができる。 【0065】 (2)消臭液の噴霧 汚物清掃作業は、(1)汚物の除去の後に、消臭液の噴霧を行う形態とすることが好ましい。 以下、放置された動物の種類に応じた、消臭液のより好ましい組成について説明する。 【0066】 (2-1)犬の放置された部屋の場合 ・・・ 【0067】 (2-2)猫の放置された部屋の場合 ・・・」 に記載されたものであり、汚物の除去の後に汚物清掃作業として行う消臭液の噴霧において、犬と猫とでは消臭液の好ましい組成が違うことを示したものである。 そうすると、当該記載からは、故人の放置された部屋を消臭する場合には、汚物の除去の後に汚物清掃作業として行う消臭液の噴霧において、消臭液として犬、猫の場合と異なる組成のものを用いることが好ましいということは導き出せるとはいえても、当該記載をもとに、消臭液の噴霧だけではない本件発明1の「体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物を清掃する汚物清掃作業と、汚物清掃作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、を含み、消臭対象とする部屋の大きさが10m3以上の部屋であり、前記オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上のオゾンを用いることを特徴とし、弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業を行うことを含む」消臭方法を、「故人の放置された部屋」に用いても消臭されないということは導き出せない。 (オ)小括 よって、本件発明1は、上記第3で記載したとおり、「故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法」であるところ、「故人」についても、消臭はされるものといえることから、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものである。 イ 残存している可能性がある液剤について 上記第7の2で摘記した【0074】~【0082】には、 「(液剤散布作業S22、S24) 液剤散布作業は、弱アルカリ性液剤及び弱酸性液剤を散布する作業である。 ・・・ また、散布した液剤は、必ずしもふき取る必要はなく、液剤の残存した状態で後述のオゾン燻蒸作業を行うこともできる。 液剤の残存した状態で後述のオゾン燻蒸作業を行うことで、より効率よく動物の放置された部屋を消臭することができる。 (オゾン燻蒸作業S23) (1)下準備(酵素含有消臭剤の散布) 本発明においては、オゾン散布前にプロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼを含む消臭剤を散布することが好ましい。 ・・・ (2)オゾン燻蒸 オゾン燻蒸作業は、部屋内にオゾンを噴霧する作業である。」 と記載されており、「プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼを含む消臭剤」の散布は「好ましい」とされるもので、必ず行うものではないこと、一方、「弱アルカリ性液剤及び弱酸性液剤」の散布では、液剤が残存した状態でオゾン燻蒸を行うことが明記されていることから、残存した状態で存在するのは弱アルカリ性液剤、弱酸性液剤であり、散布するプロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼを含む消臭剤であるとは解されない。そして、「プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼを含む消臭剤」の散布によって、残存した状態で存在する弱アルカリ性液剤、弱酸性液剤が、必然的に消失するともいえないことから、申立人の「残存している可能性があるのは弱アルカリ性液剤や弱酸性液剤ではなく、酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ)を含む消臭剤である」との主張は、当を得ないことである。よって、当を得ない当該主張に基づいて、本件発明1は、本件発明の課題を解決できないとはいえない。 ウ 弱アルカリ性液剤と弱酸性液剤の両方の散布について 実施例3の記載である【0117】及び【0118】には「(2-2)液剤散布作業(弱アルカリ性液剤の散布)S22 セスキ炭酸ソーダ、重曹を含む弱アルカリ性液剤を散布し、部屋内の洗浄を行った。(2-3)オゾン燻蒸作業S23」と記載され、同じく実施例3の記載である【0120】及び【0121】には、「(2-4)液剤散布作業(弱酸性液剤の散布)S24 クエン酸を含む弱酸性液剤を散布し、部屋内の洗浄を行った。(2-5)オゾン燻蒸作業S25」と記載されている。また、実施例4の記載である【0128】及び【0129】には「(2-2)液剤散布作業(弱アルカリ性液剤の散布)S22 セスキ炭酸ソーダ、重曹を含む弱アルカリ性液剤を散布し、部屋内の洗浄を行った。(2-3)オゾン燻蒸作業S23」と記載され、同じく実施例4の記載である【0131】及び【0132】には「(2-4)液剤散布作業(弱酸性液剤の散布)S24 クエン酸を含む弱酸性液剤を散布し、部屋内の洗浄を行った。(2-5)オゾン燻蒸作業S25」と記載されている。 ここで、例えば、上記第6の1(1)で摘記した甲1の(1イ)に「消臭剤を散布することにより悪臭成分と消臭剤成分が中和反応により消臭が促進される。」と記載されているように、一般に、悪臭を放つ成分と消臭剤の関係は、アルカリ性の悪臭成分に対しては、酸性の消臭剤が有効であり、酸性の悪臭成分に対しては、アルカリ性の消臭剤が有効であることは当業者において技術常識である。 そうすると、アルカリ性の悪臭成分が存在している場合には、弱酸性液剤の散布作業後にオゾン燻蒸作業を行うことが有効であり、酸性の悪臭成分が存在している場合には、弱アルカリ性液剤の散布作業後にオゾン燻蒸作業を行うことが有効であり、常に、アルカリ性の悪臭成分と酸性の悪臭成分が同時に存在するものでもないことから、弱アルカリ性液剤の散布作業及びオゾン燻蒸作業と弱酸性液剤の散布作業及びオゾン燻蒸作業とを両方実施しなければならないというものでもない。 したがって、本件発明1の「弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業を行うこと」が、「弱アルカリ性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業」又は「弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業」いずれか一方のみの場合について、「消臭」効果が得られないとまではいえない。 よって、本件発明1は、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できないとまではいえない。 エ 酵素を含む消臭剤について 申立人は「実施例3及び実施例4において得られた消臭効果は、少なくとも酵素を含む消臭剤が残存した状態で発現したものである」と主張しているが、上記イで述べたように、上記第7の2で摘記した【0074】~【0082】の記載から、残存した状態で存在するのは弱アルカリ性液剤、弱酸性液剤であり、その後散布する酵素を含む消臭剤であるとは解されない。そして、酵素を含む消臭剤の散布によって、残存した状態で存在する弱アルカリ性液剤、弱酸性液剤が、必然的に消失するともいえないことから、申立人の上記「消臭効果は、少なくとも酵素を含む消臭剤が残存した状態で発現したものである」との主張は、当を得ないことである。 よって、当を得ない当該主張に基づいて、本件発明1は、本件発明の課題を解決できないとはいえない。 オ 本件発明5について 本件明細書の【0036】に「また、本発明においては、消臭剤と共に界面活性剤を散布することが好ましい。界面活性剤と、消臭剤とを併用することで、消臭剤をより効率よく壁面に塗布することができ、故人の放置された部屋をより確実に消臭することができる。ここで、消臭剤と界面活性剤とは、必ずしも同時に使用する必要はなく、消臭剤を適用した後に界面活性剤を適用する形態、界面活性剤を適用した後に消臭剤を適用する形態の何れであってもよい。」と記載されていることから、界面活性剤と消臭剤とを併用することで、消臭剤をより効率よく壁面に塗布することができ、より確実に消臭することができるといえ、実施例1~4において、オゾン燻蒸作業の下準備として酵素を含む消臭剤の散布後又は散布前に「界面活性剤」を使用することが記載されていないからといって、界面活性剤を消臭剤と併用した時の上記消臭効果を否定できるものではない。 よって、本件発明5は、本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものである。 カ 本件発明3、4、6について 本件発明3、4、6に特定されている技術的事項は、本件明細書等においては「故人の放置された部屋の消臭」について記載されている事項であるが、本件明細書の【0086】には「<動物の放置された部屋の消臭>には、前述の<故人の放置された部屋の消臭>に記載の作業を含む形態とすることもできる。」と記載され、さらに、ア(ア)bで述べたように、本件明細書の【0004】に記載されている「故人や動物の放置から発見までに時間が経過してしまうと、腐敗、体液、糞、尿などの要因から、部屋は汚れ、強い臭いが残ってしまう。」との記載も踏まえて、本件発明を理解すると、故人の放置された部屋と動物の放置された部屋とでは、悪臭の原因が異なるものとはいえず、<故人の放置された部屋の消臭方法>と<動物の放置された部屋の消臭方法>とを互いに援用することはできないとまではいえないことから、本件発明3、4及び6は、「動物」についても消臭されるものである。 よって、本件発明3、4及び6は、本件明細書の形式的な記載上は、故人の放置された部屋の消臭についての技術的事項であるものの、実質的には、「動物」についても消臭はされるものであることが理解できるものであるから、「故人及び/又は動物の放置された部屋を消臭する方法を提供する」という本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものである。 (4)「前記」について 上記第4の2で述べたように、本件訂正により、本件発明3及び4において「オゾン燻蒸作業」は「前記のオゾン燻蒸作業」と訂正されたことから、本件発明1の「オゾン燻蒸作業」と同じものとなり、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。 (5)まとめ よって、申立人が主張する申立理由4についての内容は、いずれも採用できないことから、本件発明1~7に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、申立理由4によって本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 5 申立理由3(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断手法 方法の発明における発明の実施とは、その方法の使用をする行為をいうから(特許法第2条第3項第2号)、方法の発明について、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するか否かは、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているか否かを検討して判断すべきであるので、以下、この観点に立って検討する。 (2)故人の放置された部屋の消臭について 上記第7の2で摘記した本件明細書には、「動物の放置された部屋」に対して「体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物を清掃する汚物清掃作業と、汚物清掃作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、を含み、消臭対象とする部屋の大きさが10m3以上の部屋であり、前記オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上のオゾンを用いることを特徴とし、弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業を行うことを含む、消臭方法」が記載されているところ、当該方法を「故人の放置された部屋」に対して使用することができるかどうか検討するに、部屋に放置された物体が「動物」から「故人」に変わっても、「体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物を清掃する汚物清掃作業」及び「汚物清掃作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業」を行うことができるものであり、そして「消臭対象とする部屋の大きさが10m3以上の部屋であり、前記オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、1500mg以上のオゾンを用い」て、「弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業」を行うことができない技術的理由は何らない。 そうすると、「故人の放置された部屋」の消臭方法である本件発明1について、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているといえる。 (3)残存している可能性がある液剤について 上記4(3)イで述べたとおり、残存した状態で存在するのは弱アルカリ性液剤、弱酸性液剤であり、酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ)を含む消臭剤ではないことから、本件発明1の「弱アルカリ性液剤及び/又は弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業を行うこと」は、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているといえる。 (4)弱アルカリ性液剤と弱酸性液剤の両方の散布について 上記4(3)ウで述べたとおり、常に、アルカリ性の悪臭成分と酸性の悪臭成分が同時に存在するものでもなく、弱アルカリ性液剤の散布作業及びオゾン燻蒸作業と弱酸性液剤の散布作業及びオゾン燻蒸作業とを両方実施しなければならないというものでもないことから、本件発明1の「弱アルカリ性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業」又は「弱酸性液剤を部屋内に散布する液剤散布作業後に、該液剤の残存した状態で前記オゾン燻蒸作業」のいずれか一方のみを行うことは、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているといえる。 (5)酵素を含む消臭剤について 上記(3)で述べたとおり、残存した状態で存在するのは弱アルカリ性液剤、弱酸性液剤であり、残存した状態で存在するのは弱アルカリ性液剤、弱酸性液剤であり、酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ)を含む消臭剤ではないことから、「少なくとも酵素を含む消臭剤が残存した状態で」オゾン燻蒸を行うことが、発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されている必要はない。 (6)本件発明5について まず、本件発明5に「前記オゾン燻蒸作業は、オゾン散布前に、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼから選ばれる一以上の酵素を含む消臭剤を散布し、前記消臭剤を適用した後及び/又は前記消臭剤を適用する前に、界面活性剤を散布する」と記載されていることから、「消臭剤」は「酵素を含む消臭剤」のことであり、本件明細書の【0033】に「上記の酵素を含む酵素含有消臭剤として、グランバイオプロ(株式会社カイコーポレーション 社製)を好ましく用いることができる。」と記載されている。 また、本件明細書の【0036】に「また、本発明においては、消臭剤と共に界面活性剤を散布することが好ましい。界面活性剤と、消臭剤とを併用することで、消臭剤をより効率よく壁面に塗布することができ、故人の放置された部屋をより確実に消臭することができる。ここで、消臭剤と界面活性剤とは、必ずしも同時に使用する必要はなく、消臭剤を適用した後に界面活性剤を適用する形態、界面活性剤を適用した後に消臭剤を適用する形態の何れであってもよい。」と記載され、実施例に界面活性剤を使用することが記載されていないとしても、界面活性剤を併用した際の消臭効果は十分に理解することができる。 そうすると、本件発明5の消臭方法について、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているといえる。 (7)本件発明3、4、6について 上記4(3)カで述べたとおり、本件発明3の「オゾン燻蒸作業後に、塗布対象の内壁と同色の樹脂材料を、前記汚物の残存する内壁に塗布する塗布作業」、本件発明4の「オゾン燻蒸作業前に汚物の付着した箇所を解体する解体作業と、前記のオゾン燻蒸作業後に、前記解体作業で解体した箇所をアクリル樹脂塗料、漆塗料、ビニル樹脂塗料から選ばれる一又は二以上の油性下地塗料で覆う被覆作業」、本件発明6の「汚物清掃作業は、過酸化水素水を用い部屋を清掃する作業」のいずれの作業も、本件明細書等においては「故人の放置された部屋の消臭」について記載されている作業であるが、本件明細書の【0086】には「<動物の放置された部屋の消臭>には、前述の<故人の放置された部屋の消臭>に記載の作業を含む形態とすることもできる。」と記載されており、部屋に放置された物体が「故人」から「動物」に変わると、これらの作業は行えなくなるという技術的理由は何らない。 そうすると、本件発明3、4及び6は、本件明細書の形式的な記載上は、故人の放置された部屋の消臭についての技術的事項であるものの、実質的には、「動物の放置された部屋」の消臭方法として行ってよいものであることが理解できることから、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されているといえる。 (8)まとめ よって、申立人が主張する申立理由3についての内容は、いずれも採用できないことから、本件発明1~7に係る特許は、その発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、申立理由3によって本件発明1~7に係る特許を取り消すことはできない。 第9 むすび 本件発明1~7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって、取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700219

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