特許異議申立
2023-700266
運搬台車
- 審判番号
- 2023-700266
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-150241
- 登録番号
- 7134500
- 請求日
- 2023年03月10日
- 審決日
- 2024年03月18日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ジー・オー・ピー株式会社
- 【権利者代理人】久保 司
- 【異議申立人】金山 愼一
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 八木 誠
- 審判官 中村 則夫
- 分類
- P1651.537-YAA(B62B) / P1651.121-YAA(B62B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7134500号発明「運搬台車」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
結論
特許第7134500号の特許請求の範囲及び明細書を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7134500号の請求項1~3、5~8に係る特許を維持する。
特許第7134500号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7134500号の請求項1~8に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成22年9月17日に出願された特願2010-208949号の一部として、平成26年11月4日に出願された特願2014-224004号の一部として、平成27年11月27日に出願された特願2015-231343号の一部として、平成29年2月9日に出願された特願2017-21854号の一部として、平成31年4月4日に出願された特願2019-71881号の一部として令和2年9月8日に出願されたものであり、令和4年9月2日にその特許権の設定登録がされ、同年9月12日に特許掲載公報が発行された。
本件特許についての異議申立人金山愼一(以下「申立人」という。)による本件特許異議申立の経緯は次のとおりである。
令和5年 3月10日 特許異議の申立て
同年 6月 8日付け 取消理由通知
同年 8月 4日 特許権者より意見書・訂正請求書
同年10月13日 申立人より意見書
同年11月 7日付け 訂正拒絶理由通知
同年12月 7日 特許権者より意見書・手続補正書
第2 訂正の適否
特許権者は、令和5年8月4日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。
その後、当審からの訂正拒絶理由通知に対して、特許権者は同年12月7日に手続補正書を提出して、訂正請求書及び訂正請求書に添付した訂正明細書について補正することを求めた(以下「本件補正」という。)。
以下に、本件訂正及び本件補正の内容を列挙し、本件補正が訂正請求書の要旨を変更するものか否かを検討した後、訂正の適否について検討する。
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は以下のとおりである(なお、下線部が訂正箇所である。以下、この項において同様。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「ブレーキ解除時であって前記車輪が前後方向を向いた状態では、前記操作部は、前記車輪よりも後側に位置すると共に、前記コーナー部材のうち前記フレームよりも低く位置する下端よりもさらに低く位置し、前記車輪は、平面視で見たとき、前記台車本体から顕出せず前記台車本体と重なり合い、」とあるのを、
「ブレーキ解除時であって前記車輪が前後方向を向いた状態では、前記操作部は、前記車輪よりも後側であって、前記台車本体の周囲から顕出して位置すると共に、前記コーナー部材のうち前記フレームよりも低く位置する下端よりもさらに低く位置し、前記車輪は、平面視で見たとき、前記台車本体から顕出せず前記台車本体と重なり合い、前記一対の金属板部および前記操作部により形成される中央の隙間の一部は、平面視で見たとき、前記台車本体から顕出し、」に訂正する。
(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~3および請求項5~8も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5の「請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の運搬台車。」とあるのを、「請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の運搬台車。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6の「請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の運搬台車。」とあるのを、「請求項1ないし請求項3のいずれかに、または請求項5に記載の運搬台車。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7の「請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の運搬台車。」とあるのを、「請求項1ないし請求項3のいずれかに、および、請求項5または請求項6に記載の運搬台車。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8の「請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の運搬台車。」とあるのを、「請求項1ないし請求項3のいずれかに、および、請求項5または請求項6に記載の運搬台車。」に訂正する。
(7)訂正事項7
明細書の【0012】を「前記目的を達成するため、本発明は第1に、前後方向に長い略矩形状の台車本体と前記台車本体のコーナー部の裏側に取付けられた旋回キャスターとを有する運搬台車であって、前記台車本体は、前記台車本体の4隅の角部でフレーム同士を、上側から手押し棒が挿入されるコーナー部材を介して接合することで構成され、前記旋回キャスターは、ヨークと、前記ヨークによって回転可能に把持される車輪と、前記車輪の回転を固定するためのブレーキペダルとを有し、前記ブレーキペダルは、一対の金属板部と、前記一対の金属板部の一端にそれぞれ連結されブレーキ時に足で踏みこみブレーキ解除時に足で押し上げる操作部とを有し、ブレーキ解除時であって前記車輪が前後方向を向いた状態では、前記操作部は、前記車輪よりも後側であって、前記台車本体の周囲から顕出して位置すると共に、前記コーナー部材のうち前記フレームよりも低く位置する下端よりもさらに低く位置し、前記車輪は、平面視で見たとき、前記台車本体から顕出せず前記台車本体と重なり合い、前記一対の金属板部および前記操作部により形成される中央の隙間の一部は、平面視で見たとき、前記台車本体から顕出し、前記操作部が足で踏みこまれたブレーキ時には、前記一対の金属板部および前記操作部により形成される中央の隙間に前記車輪が位置することを要旨とするものである。」と訂正する。
(8)訂正事項8
明細書の【0049】を「そして、ブレーキペダル17は、図1、図2に示すように、ブレーキ解除時に車輪2aが前後方向に向いた場合に、平面視して、前記操作部18が台車本体の後端であって、前記台車本体の周囲から顕出するものとした。なお、図1、図2に示すように、この場合、前記車輪2aが前後方向を向いた状態を平面視で見たとき、前記車輪2aは前記台車本体の後端から顕出せず前記台車本体と重なり合う。」と訂正する。
(9)訂正事項9
明細書の【0055】を「その結果、車輪2aの向きやブレーキ状態では、台車本体の裏面に隠れてブレーキペダル17の位置がわからない。すなわち、ブレーキペダル17は、車輪の向きやブレーキ状態では、台車本体の裏面に隠れてブレーキペダルの位置がわからないもので、足で踏みこまれたブレーキ時であって前記車輪が前後方向を向いた状態を平面視で見たとき、前記操作部は、前記台車本体の周囲から顕出せず前記台車本体と重なり合い、前記一対の金属板部および前記操作部により形成される中央の隙間の一部は、平面視で見たとき、前記台車本体から顕出するように位置する。」と訂正する。
(10)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~8は、請求項2~8が、本件訂正前の請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~8〕について請求されたものである。
2 本件補正の内容
本件補正は、訂正請求書の訂正事項9を削除するものである。
3 補正の適否
本件補正は、訂正事項9を削除するものであるから、本件補正は、訂正事項を削除するものに該当し、訂正請求書の要旨を変更しないものと認められる。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定により、本件補正を認める。
なお、申立人は、意見書(2~3ページ)において、本件訂正によって訂正された明細書の【0055】の記載に不備がある旨主張するが、本件補正により、明細書の【0055】についての訂正事項9は削除されたので、申立人の上記主張は、当を得たものとはいえなくなったので、採用できない。
4 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「ブレーキ解除時であって前記車輪が前後方向を向いた状態」における「前記操作部」との事項について、「前記台車本体の周囲から顕出して」との限定を付加し、訂正前の請求項1の「ブレーキ解除時であって前記車輪が前後方向を向いた状態」における「前記一対の金属板部および前記操作部」との事項について、「前記一対の金属板部および前記操作部により形成される中央の隙間の一部は、平面視で見たとき、前記台車本体から顕出し」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
訂正事項1のうち、上記操作部についての訂正は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の請求項4に記載されており、上記一対の金属板部及び上記操作部についての訂正は、本件明細書等の図2から看取できると認められるから、訂正事項1は新規事項を追加するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項を追加するものではない。
(3)訂正事項3~6について
訂正事項3~6は、それぞれ、訂正事項2により請求項4を削除するのに伴って、引用する請求項から請求項3を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項を追加するものではない。
(4)訂正事項7、8について
訂正事項7、8は、訂正事項1による請求項1の訂正に合わせて明細書を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、新規事項を追加するものではない。
5 小括
以上によれば、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
前後方向に長い略矩形状の台車本体と前記台車本体のコーナー部の裏側に取付けられた旋回キャスターとを有する運搬台車であって、
前記台車本体は、前記台車本体の4隅の角部でフレーム同士を、上側から手押し棒が挿入されるコーナー部材を介して接合することで構成され、
前記旋回キャスターは、ヨークと、前記ヨークによって回転可能に把持される車輪と、前記車輪の回転を固定するためのブレーキペダルとを有し、
前記ブレーキペダルは、一対の金属板部と、前記一対の金属板部の一端にそれぞれ連結されブレーキ時に足で踏みこみブレーキ解除時に足で押し上げる操作部とを有し、
ブレーキ解除時であって前記車輪が前後方向を向いた状態では、前記操作部は、前記車輪よりも後側であって、前記台車本体の周囲から顕出して位置すると共に、前記コーナー部材のうち前記フレームよりも低く位置する下端よりもさらに低く位置し、前記車輪は、平面視で見たとき、前記台車本体から顕出せず前記台車本体と重なり合い、前記一対の金属板部および前記操作部により形成される中央の隙間の一部は、平面視で見たとき、前記台車本体から顕出し、
前記操作部が足で踏みこまれたブレーキ時には、前記一対の金属板部および前記操作部により形成される中央の隙間に前記車輪が位置することを特徴とする運搬台車。
【請求項2】
前記操作部が足で踏みこまれたブレーキ時であって前記車輪が前後方向を向いた状態を側面視で見たとき、前記操作部はブレーキ解除時よりも前記車輪に近接して位置するとともに、前記中央の隙間から後側に顕出した前記車輪が視認されることを特徴とする請求項1に記載の運搬台車。
【請求項3】
ブレーキ解除時であって前記車輪が前後方向を向いた状態を側面視で見たとき、前記金属板部は上面の一部に凹みを有し、前記凹みと前記台車本体の後端とは上下に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の運搬台車。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記ブレーキペダルは、揺動可能であって、足で踏みこまれたブレーキ時であって前記車輪が前後方向を向いた状態を平面視で見たとき、前記操作部の外側縁がブレーキ解除時よりも前記台車本体の周囲に近接して位置することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の運搬台車。
【請求項6】
前記ブレーキペダルは、揺動可能であって、足で踏みこまれたブレーキ時であって前記車輪が前後方向を向いた状態を平面視で見たとき、前記操作部は、前記台車本体の周囲から顕出せず前記台車本体と重なり合うように位置することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに、または請求項5に記載の運搬台車。
【請求項7】
前記コーナー部材は、外周に前記フレームと異なる色の着色部が設けられ、ブレーキ解除時であって前記車輪が前後方向を向いた状態を平面視で見たとき、前記操作部と前記着色部とは前後に位置することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに、および、請求項5または請求項6に記載の運搬台車。
【請求項8】
前記コーナー部材は、外周に前記フレームと異なる色の着色部が設けられ、前記車輪が前後方向を向いた状態を側面視で見たとき、前記ブレーキペダルと前記着色部とは上下に位置することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに、および、請求項5または請求項6に記載の運搬台車。」
第4 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、令和5年6月8日付けで当審が通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
[取消理由1](サポート要件)
本件特許の下記請求項に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、下記請求項に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものである。
[取消理由2](進歩性)
本件特許の下記請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
以下、申立人提出の各甲号証は、「甲○」という。
記
甲1:登録実用新案第3141978号公報
甲2:米国特許第4559668号明細書
甲3:米国特許第3493085号明細書
甲4:意匠登録第1374049号公報
甲5:特開平3-178802号公報
甲6:特開2001-260827号公報
甲7:意匠登録第1072240号公報
【取消理由1】
・請求項 1~3、5~8
本件発明の解決しようとする課題は、発明の詳細な説明の【0011】に記載されているように、ブレーキの存在を迅速に把握できることであると認められる。
そして、ブレーキの存在を迅速に把握できる構成に関して、発明の詳細な説明には、「本発明は、前記キャスターを設ける台車本体の四隅のコーナー部のうち、ブレーキ付きキャスターを裏側に設けたコーナー部を着色(例えば、赤や緑)し、着色部1を設けた。」(【0038】。下線は当審が付与。以下同様。)、「ブレーキペダル17は、図1、図2に示すように、ブレーキ解除時に車輪2aが前後方向に向いた場合に、平面視して、前記操作部18が台車本体の後端から顕出するものとした。」(【0049】)と記載されている。そして、発明の詳細な説明には、課題解決手段として2つの具体例(上記下線部参照。なお、前者については、ブレーキ付きキャスターを設けていないコーナー部は着色されていないことの特定も必要。)が開示されていると認められるところ、本件発明1~3、5~8は、いずれも上記2つの具体例に関する事項を構成として有するものではない。
また、本件明細書等の全記載や技術常識を勘案しても、本件発明においてブレーキの存在を迅速に把握できる手段として、上記2つの具体例に関連する事項以外のものは想定し得ない。
そうすると、本件発明1~3、5~8は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、発明の詳細な説明に記載されたものであるとは認められない。
【取消理由2】
・請求項 1、2
・引用文献 甲1~3
・請求項 3
・引用文献 甲1~3、5
・請求項 4~6
・引用文献 甲1~3、5、6
・請求項 7、8
・引用文献 甲1~3、5~7
第5 当審の判断
1 取消理由1(サポート要件)について
本件訂正により訂正された本件発明1は、「ブレーキ解除時であって前記車輪が前後方向を向いた状態では、前記操作部は、前記車輪よりも後側であって、前記台車本体の周囲から顕出して位置する」との構成を有するものになった。
そして、上記構成は、上記「第4【取消理由1】」で示した課題解決手段の1つであるから、本件発明1及び従属する本件発明2、3、5~8は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであり、発明の詳細な説明に記載されたものであると認められる。
したがって、取消理由1は解消された。
2 取消理由2(進歩性)について
(1)甲1発明
甲1(【0022】~【0025】、図1~4等参照。)には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「台車本体と台車本体のコーナー部の裏面に取付けられたキャスター2とを有する運搬台車であって、
台車本体は、台車本体の四隅の角部でフレーム5同士を、上側から手押し棒3が挿着されるコーナー部材7
を介して接合することで構成され、
キャスター2は、ヨークと、ヨークによって回転可能に指示される車輪とを有し、
車輪は、平面視で見たとき、台車本体からは顕出せず台車本体と重なり合う、搬送台車。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「台車本体」は、前者の「前後方向に長い略矩形状の台車本体」に相当し、以下同様に、「キャスター2」は「旋回キャスター」に、「搬送台車」は「搬送台車」に、「台車本体の四隅の角部」は「台車本体の4隅の角部」に、「フレーム5」は「フレーム」に、「手押し棒3」は「手押し棒」に、「挿着される」ことは「挿入される」ことに、「コーナー部材7」は「コーナー部材」に、「ヨーク」は「ヨーク」に、「車輪」は「車輪」に、それぞれ相当し、後者の「キャスター2」は、前者の「旋回キャスター」と、「ヨークと、前記ヨークによって回転可能に把持される車輪と」「を有し」、「前記車輪は、平面視で見たとき、前記台車本体から顕出せず前記台車本体と重なり合」う点で共通する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点>
本件発明1では、前記旋回キャスターは、「前記車輪の回転を固定するためのブレーキペダルを有し、前記ブレーキペダルは、一対の金属板部と、前記一対の金属板部の一端にそれぞれ連結されブレーキ時に足で踏みこみブレーキ解除時に足で押し上げる操作部とを有し、
ブレーキ解除時であって前記車輪が前後方向を向いた状態では、前記操作部は、前記車輪よりも後側あって、前記台車本体の周囲から顕出して位置すると共に、前記コーナー部材のうち前記フレームよりも低く位置する下端よりもさらに低く位置し、前記一対の金属板部および前記操作部により形成される中央の隙間の一部は、平面視で見たとき、前記台車本体から顕出し、前記操作部が足で踏みこまれたブレーキ時には、前記一対の金属板部および前記操作部により形成される中央の隙間に前記車輪が位置する」のに対し、
甲1発明では、キャスター2について、そのような構成は特定されていない点。
イ 相違点についての判断
キャスターにおいて、一対の金属板と、一対の金属板の一端のそれぞれと連結する操作部とを備えたブレーキペダルを有し、操作部が足で踏み込まれたブレーキ時には、一対の金属板及び操作部により形成される空間に車輪が位置することは、周知技術(例えば、甲2のFIG.1~3、甲3のFIG.1~3等参照。)であると認められるが、ブレーキ解除時において、上記一対の金属板と上記ブレーキペダルにより形成される中央の隙間の一部が、平面視で見たときに、台車本体から顕出すること(以下「技術事項1」という。)については、甲2~7には、記載も示唆も見いだせないから、甲1発明において、上記周知技術を適用する際に、併せて技術事項1とすることで、相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、意見書(特に、13~15ページ)において、下記の参考資料1~4を参照すれば、甲1発明において、甲2、3に記載された事項を適用する際、技術事項1とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるから、本件発明1等は、甲1発明、甲2、3に記載された事項及び参考資料1~4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
しかしながら、参考資料1~4に記載された台車は、いずれも、ブレーキ解除時であって車輪が前後方向を向いた状態では、車輪は、平面視で見たとき、台車本体から顕出するものであり、甲1発明とは基本的な構造が異なるものであるから、甲1発明において、参考資料1~4に記載された事項を適用することに動機付けがあるとはいえない。
そして、参考資料1~4には、台車において、ブレーキ解除時であって車輪が前後方向を向いた状態では、車輪は、平面視で見たとき、台車本体から顕出せず台車本体と重なり合い、かつ、一対の金属板とブレーキペダルにより形成される中央の隙間の一部が、平面視で見たときに、台車本体から顕出することには、記載も示唆もないことから、仮に甲1発明に参考資料1~4に記載された事項を適用しても、相違点に係る本件発明1の構成とならないことは明らかである。
したがって、申立人の上記主張は、当を得たものとはいえず、採用できない。
記
参考資料1:実願昭61-56095号(実開昭62-167771号)のマイクロフィルム
参考資料2:特開2002-2487号公報
参考資料3:特表2008-532580号公報
参考資料4:韓国公開特許第10-2010-0028430号公報
エ 小括
以上によれば、本件発明1は、甲1発明及び甲2~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明2、3、5~8について
本件発明2、3、5~8は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加したものであるから、上記(2)イで説示したのと同様の理由により、甲1発明及び甲2~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によって、請求項1~3、5~8に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~3、5~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4は、本件訂正により削除されたため、申立人による特許異議の申立てにおける請求項4に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700266