特許異議申立
2023-700237
研磨パッド、研磨パッドの製造方法、光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法、及び研磨パッドの評価方法
- 審判番号
- 2023-700237
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-060231
- 登録番号
- 7137505
- 請求日
- 2023年03月01日
- 審決日
- 2024年09月19日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】富士紡ホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】山本 修
- 【権利者代理人】宮前 徹
- 【権利者代理人】松尾 淳一
- 【権利者代理人】松田 豊治
- 【権利者代理人】横田 晃一
- 【異議申立人】芳野 理之
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 菊地 牧子
- 分類
- P1651.537-YAA(B24B) / P1651.536-YAA(B24B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第7項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7137505号発明「研磨パッド、研磨パッドの製造方法、光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法、及び研磨パッドの評価方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7137505号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~6〕について訂正することを認める。
特許第7137505号の請求項5~6に係る特許を維持する。
特許第7137505号の請求項1~4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7137505号の請求項1~6に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成31年3月27日に出願され、令和4年9月6日にその特許権の設定登録がされ、令和4年9月14日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。
・令和5年3月1日
特許異議申立人芳野理之(以下「申立人」という。)による請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て
・令和5年6月27日付け
取消理由を通知
・令和5年8月10~21日
特許権者富士紡ホールディングス株式会社(以下「特許権者」という。)との電話及び電子メールでの応対
・令和5年8月28日
特許権者による訂正請求(以下「先にした訂正請求」という。)と意見書の提出
・令和5年11月14日
申立人による意見書の提出
・令和6年1月11日
特許権者との面接審理を実施
・令和6年2月28日付け
取消理由を通知(決定の予告)
・令和6年4月5~11日
特許権者との電話及び電子メールでの応対
・令和6年4月17日
特許権者による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)と意見書の提出
・令和6年5月10日
特許権者による本件訂正請求の訂正請求書を補正する手続補正書の提出
本件訂正請求がされたため、先にした訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
なお、本件訂正請求については、先にした訂正請求の際に、申立人に意見書の提出の機会が与えられており、かつ特許請求の範囲が相当程度減縮され、これまでに提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したため、申立人に意見書を提出する機会は与えなかった。(審判便覧67-05.5「取消理由通知(決定の予告)」の4(1))
第2 本件訂正請求による訂正の適否
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否について検討する。
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものである。
2 一群の請求項についての説明
(1)請求項1~4
本件訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項1~4に対応する本件訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)請求項5~6
本件訂正前の請求項5~6について、請求項6は、請求項5を引用しているものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項5~6に対応する本件訂正後の請求項5~6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 独立特許要件
本件特許異議申立てにおいては、本件訂正前の全ての請求項1~6について特許異議申立てがされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 明細書に係る訂正
(1)訂正事項1
明細書の段落【0067】の表2について、「実施例1」の行における「40℃ 非晶相/(界面相+結晶相)」の列に対応する欄に記載の「2.0」を「2.1」に訂正し、「実施例1」の行における「40℃非晶相成分/20℃非晶相成分」の列に対応する欄に記載の「2.5」を「2.0」に訂正し、「実施例2」の行における「40℃非晶相成分/20℃非晶相成分」の列に対応する欄に記載の「2.0」を「2.2」に訂正する。
(2)明細書の訂正と関係する請求項
訂正事項1が訂正する本件明細書の段落【0067】の表2には、請求項1~4、及び請求項5~6に対応する実施例1~2の内容が記載されている。そして、訂正事項1は、以下の(3)に説示するとおり、表2の誤記を訂正するものであって、これらの請求項を含む上記2(1)~(2)の一群の請求項である請求項1~4、及び請求項5~6、すなわち、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定における明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて訂正をするものである。
(3)訂正事項1の訂正要件の検討
ア 訂正の目的
訂正事項1は、段落【0067】の表2において、実施例1の40℃における界面相の成分の含有割合(Ai40)と40℃における結晶相の成分の含有割合(Ac40)との合計に対する、40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/(Ai40+Ac40))の数値が「2.0」と記載されているところ、図6の記載に照らして計算すると「2.1」(=67.6/(14.9+17.5))の誤記であることが明らかであることから、これを訂正するものである。
加えて、上記表2において、実施例1、及び実施例2の20℃における非晶相の成分の含有割合(Aa20)に対する40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/Aa20)の数値が、「2.5」、及び「2.0」と記載されているところ、図6の記載に照らして計算すると、それぞれ「2.0」(=67.6/34)、及び「2.2」(=89.5/40)の誤記であることが明らかであることから、これを訂正するものである。
したがって、訂正事項1の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1の訂正は、上記アのとおり誤記の訂正をするものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件当初明細書等の図6には、実施例1の40℃における界面相の成分の含有割合(Ai40)、結晶相の成分の含有割合(Ac40)、及び非晶相の成分の含有割合(Aa40)が、それぞれ14.9、17.5、67.6であることが記載されており、これらの数値に基づいて、40℃における界面相の成分の含有割合(Ai40)と40℃における結晶相の成分の含有割合(Ac40)との合計に対する、40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/(Ai40+Ac40))を計算すると、「2.1」になる。
同様に、本件当初明細書等の図6には、実施例1及び実施例2の20℃における非晶相の成分の含有割合(Aa20)がそれぞれ34及び40であり、実施例1及び実施例2の40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)がそれぞれ67.6及び89.5であることが記載されている。これらの数値に基づいて、実施例1及び実施例2の20℃における非晶相の成分の含有割合(Aa20)に対する40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/Aa20)を計算すると、それぞれ「2.0」及び「2.2」になる。
したがって、訂正事項1によって訂正された表2の数値は、いずれも本件当初明細書等の図6に基づいて計算されるものであって、本件当初明細書等に記載されていたといえるから、訂正事項1の訂正は本件当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
5 請求項1~4に係る訂正
(1)訂正事項
ア 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
イ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
エ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(2)一群の請求項の訂正事項であること
訂正事項2~5は、上記2(1)の一群の請求項である請求項1~4を訂正するものである。
(3)訂正事項2~5の訂正要件の検討
ア 訂正の目的
訂正事項2~5の訂正は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1~4を削除するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2~5の訂正は、特許請求の範囲の請求項1~4を削除するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2~5の訂正は、特許請求の範囲の請求項1~4を削除するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
6 請求項5~6に係る訂正
(1)訂正事項(下線は訂正箇所。)
ア 訂正事項6
訂正前の請求項5における
「40℃における界面相の成分の含有割合(Ai40)と40℃における結晶相の成分の含有割合(Ac40)との合計に対する、40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/(Ai40+Ac40))が2~10であり、40℃における非晶相の緩和時間が500~800μsであるか否かを確認する工程を含む、」
の記載を、
「40℃における界面相の成分の含有割合(Ai40)と40℃における結晶相の成分の含有割合(Ac40)との合計に対する、40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/(Ai40+Ac40))が2.1~8.5であり、40℃における非晶相の成分の緩和時間が580.1~712.0μsであるか否かを確認する工程を含む、」
に訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)
イ 訂正事項7
訂正前の請求項6における
「20℃における非晶相の成分の含有割合(Aa20)に対する40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/Aa20)が1.5~3であるか否かを確認する工程を更に含む、」
の記載を、
「20℃における非晶相の成分の含有割合(Aa20)に対する40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/Aa20)が2.0~2.2であるか否かを確認する工程を更に含む、」
に訂正する。
(2)一群の請求項の訂正であること
訂正事項6~7は、上記2(2)の一群の請求項である請求項5~6を訂正するものである。
(3)訂正要件の検討
ア 訂正事項6
(ア)訂正の目的
訂正事項6は、「40℃における界面相の成分の含有割合(Ai40)と40℃における結晶相の成分の含有割合(Ac40)との合計に対する、40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/(Ai40+Ac40))」について、訂正前の「2~10」の数値範囲を「2.1~8.5」に縮小し、「40℃における非晶相の成分の緩和時間」について、訂正前の「500~800μs」の数値範囲を「580.1~712.0μs」に縮小し、また、訂正前の「40℃における非晶相の緩和時間」が非晶相と緩和時間の関係が明瞭でないところ、「40℃における非晶相の成分の緩和時間」に訂正して明確化するものである。
よって、訂正事項6の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、及び同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6の訂正は、上記(ア)の数値範囲の縮小、及び非晶相と緩和時間の関係を明確化するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件明細書等の表2には、実施例1の40℃における界面相の成分の含有割合(Ai40)と40℃における結晶相の成分の含有割合(Ac40)との合計に対する、40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/(Ai40+Ac40))が「2.0」と記載されているが、上記4で訂正事項1について検討したとおり誤記であり、本件明細書等には、正しくは「2.1」の数値が記載されていると解される。
そうすると、訂正事項6における「40℃における界面相の成分の含有割合(Ai40)と40℃における結晶相の成分の含有割合(Ac40)との合計に対する、40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/(Ai40+Ac40))」の「2.1~8.5」の数値範囲、及び「40℃における非晶相の成分の緩和時間」の「580.1~712.0μs」の数値範囲は、いずれも本件明細書の段落【0055】~【0057】に記載された「実施例1」、及び「実施例2」に対して行われたパルスNMR測定の結果として段落【0067】(表2)及び図6に記載された数値から導き出されるものである。
また、「非晶相の成分の緩和時間」という用語について、本件の明細書においては「非晶相の緩和時間」という用語と混用されているところ、両者は同じ意味で用いられており、明細書に明記されたうち、より正確に非晶相と緩和時間の関係を表しているものに訂正したものといえる。
したがって、訂正事項6の訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項7
(ア)訂正の目的
訂正事項7は、「20℃における非晶相の成分の含有割合(Aa20)に対する40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/Aa20)」について、訂正前の「1.5~3」の数値範囲を、「2.0~2.2」と縮小するものである。
よって、訂正事項7の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7の訂正は、上記(ア)のとおり、数値範囲を縮小するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(ウ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
本件明細書等の表2には、実施例1及び実施例2の20℃における非晶相の成分の含有割合(Aa20)に対する40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/Aa20)が、それぞれ「2.5」及び「2.0」と記載されているが、上記4で訂正事項1について検討したとおり誤記であり、本件明細書等には、正しくはそれぞれ「2.0」及び「2.2」の数値が記載されていると解される。
そうすると、訂正事項7における「20℃における非晶相の成分の含有割合(Aa20)に対する40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/Aa20)の「2.0~2.2」の数値範囲は、本件明細書の段落【0055】~【0057】に記載された「実施例1」及び「実施例2」に対して行われたパルスNMR測定の結果として段落【0067】(表2)及び図6に記載された数値から導き出されるものである。
したがって、訂正事項7の訂正は本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
7 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、同第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」、又は、同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5~6項の規定に適合するものである。
したがって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5~6〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められたから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、請求項1の特許に係る発明を「本件特許発明1」、他の請求項○に係る発明を同様に「本件特許発明○」といい、まとめて「本件特許発明」ということがある。)は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載した以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する研磨パッドの評価方法であって、
前記研磨層について、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン-スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン-スピン緩和時間T2の長い方から順に非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合に、40℃における界面相の成分の含有割合(Ai40)と40℃における結晶相の成分の含有割合(Ac40)との合計に対する、40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/(Ai40+Ac40))が2.1~8.5であり、40℃における非晶相の成分の緩和時間が580.1~712.0μsであるか否かを確認する工程を含む、前記評価方法。
【請求項6】
20℃における非晶相の成分の含有割合(Aa20)に対する40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/Aa20)が2.0~2.2であるか否かを確認する工程を更に含む、請求項5に記載の評価方法。」
第4 特許権者に通知した取消理由(決定の予告)
当審が令和6年2月28日付けで特許権者に決定の予告として通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
1 当審が令和5年6月27日付けで、特許権者に通知し、依然として解消していない取消理由
理由A.(実施可能要件)本件訂正前の請求項1~4に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 新たに通知した取消理由
理由B.(簡潔性要件)本件訂正前の請求項5~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が簡潔でないから、特許法第36条第6項第3号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 通知した取消理由についての当審の判断
1 理由A(実施可能要件)
理由Aは、物のカテゴリーである研磨パッドの発明が記載された請求項1~4を対象として、本件の発明の詳細な説明は、当業者が先にした訂正請求で訂正した請求項1~4に係る研磨パッドの発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないというものであったところ、上記第2のとおり、本件請求項1~4は削除された。
2 理由B(簡潔性要件)
理由Bは、先にした訂正請求で訂正した請求項5に、「評価方法」の発明として不要な事項が記載されて冗長であるから、請求項5~6の記載が簡潔でないというものであった。
これに対して、本件請求項5には、上記の不要な事項が記載されていないから、本件請求項5の記載は簡潔である。
3 小括
当審が令和6年2月28日付けで特許権者に決定の予告として通知した取消理由によっては、請求項5~6に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由で引用された甲号証(以下、甲第○号証を「甲○」という。)
(1)甲1:特開2018-89749号公報
(2)甲2:特開2010-240777号公報
(3)甲3:特開2010-82719号公報
(4)甲4:特開2006-235585号公報
(5)甲5:特開2010-85630号公報
(6)甲6:特開2020-157429号公報
(7)甲7:特開2020-157431号公報
(8)甲8:特開2020-157435号公報
2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の整理
(1)特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書において主張する特許異議申立理由(以下「申立理由」という。)の概要は、次のとおりである。
ア 本件訂正前の本件請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定(新規性)に違反してされたものである。
イ 本件訂正前の本件請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定(進歩性)に違反してされたものである。
ウ 本件訂正前の本件請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである。
エ 本件訂正前の本件請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)検討を要する採用しなかった申立理由
上記(1)の申立理由の対象である本件の特許請求の範囲の請求項1~4は、上記第2のとおり、本件訂正請求により削除されたので、以下では、取消理由通知において採用しなかった申立理由として、本件請求項5~6に係る特許に対する特許法第29条第2項、同法第36条第4項第1号及び同法第36条第6項第1号に係る申立理由を検討する。
3 本件請求項5~6に係る特許に対する特許法第29条第2項(進歩性)違反の申立理由について
(1)理由の概要
本件訂正前の本件特許発明5~6は、甲2に記載された甲2第1~2発明(特許異議申立書の第22~23ページ)、及び甲1、3~5記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件請求項5~6に係る特許は、特許法第29条第2項に違反してされたものである。
(2)理由に対する判断
ア 甲2について
(ア)甲2の記載事項(下線は当審で付した。)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッドに関し、更に詳しくは、シリコンウェハなどの半導体ウェハの研磨に好適なポリウレタン系の研磨パッドに関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、シリコンウェハ等の被研磨物の平坦度の要求が益々厳しくなっており、かかる平坦度を向上させるには、高硬度の研磨パッドを用いるのが有効である。
【0008】
研磨パッドでは、研磨工程に先立って、あるいは、研磨工程中に、ダイヤモンドドレッサーによって、その表面のドレッシングを行なうのであるが、高硬度の研磨パッドを使用すると、硬いために、ドレスがかかりにくく、ドッシングに長時間を要し、あるいは、局所的にドレッシングされてむらが生じ、研磨レートが安定しないといった難点がある。
【0009】
本発明は、上述のような点に鑑みて為されたものであって、高硬度であって、しかも、ドレス性が良好な研磨パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の研磨パッドは、ハードセグメントとソフトセグメントとを含む発泡ポリウレタンからなる研磨層を有する研磨パッドであって、パルスNMR測定による前記発泡ポリウレタン中の前記ハードセグメントの存在比が、55%以上70%以下である。
・・・
【0014】
本発明の研磨パッドでは、発泡ポリウレタン中のハードセグメントの存在比を、55%以上70%以下と高くしているので、発泡ポリウレタンの硬度を高く維持したままで、モジュラスを低減させることができ、これは、発泡ポリウレタンの伸び率が低下し、引っ張り破断しやすくなることを意味し、発泡ポリウレタンの磨耗量を増やすことができることを意味する。
【0015】
したがって、本発明の研磨パッドによると、高硬度を維持しながら、ドレッシングの際の当該研磨パッドの単位時間当たりの磨耗量、すなわち、カットレートを増やしてドレス性を高めることが可能となり、これによって、ドレッシングに長時間を要することなく、また、ドレッシングが局所的に行われてむらが生じることがなく、研磨レートが安定する。
・・・
【実施例】
・・・
【0040】
各種特性を評価するために、表1に示す配合で、実施例1,2および従来例の発泡ポリウレタンの成型品を製造した。・・・
・・・
【0050】
実施例1,2は、従来例に比べて研磨レートが向上しており、また、従来例では、研磨レートのばらつきが大きいことが分かる。
【0051】
以上のように実施例では、従来例に比べてカットレートが高く、ドレス性が向上するので、従来例のように局所的にドレッシングされることなく、全面に均一にドレッシングされ、これによって、研磨レートが安定する。
【0052】
また、実施例1,2および従来例の研磨パッドについては、パルスNMR(核磁気共鳴)測定法を用いて、次の条件でハードセグメントの存在比を求めた。
【0053】
測定方法:パルスNMR測定によりSolid Echo法
測定装置:JEOL社製 JNM-MU25
測定条件:
1H90 Pulse:3.5μs
繰り返し時間:4s
積算回数:16回
測定温度:室温(24℃)、40℃
24℃および40℃の測定よって求めたハードセグメント、ソフトセグメントおよび中間層の存在比(%)並びに緩和時間T2(μs)を、表2および表3にそれぞれ示す。
【0054】
【表2】
[図:0001417598000001.jpg]
【0055】
【表3】
[図:0001417598000002.jpg]
」
(イ)甲2の記載事項の整理
段落【0001】、【0010】、【0052】~【0054】の記載からみて、甲2には、ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する研磨パッドのハードセグメント、ソフトセグメント、及び中間層の存在比を測定する方法について、記載されている。
そして、段落【0052】~【0055】の記載からみて、甲2の実施例においては、
パルスNMR(核磁気共鳴)測定法を用いた40℃における中間層の存在比と、40℃におけるハードセグメントの存在比との合計に対する、40℃におけるソフトセグメントの存在比が、
2.9/(39.2+57.9)=0.030(実施例1)
2.1/(33.5+64.4)=0.021(実施例2)
であり、
40℃におけるソフトセグメントの成分の緩和時間が、
2288μs(実施例1)
1467μs(実施例2)
であることが、記載されている。
(ウ)甲2発明
上記(ア)及び(イ)より甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する研磨パッドのハードセグメント、ソフトセグメント、及び中間層の存在比を測定する方法であって、パルスNMR(核磁気共鳴)測定法を用いて、40℃における中間層の存在比と、40℃におけるハードセグメントの存在比との合計に対する、40℃におけるソフトセグメントの存在比が、0.030(実施例1)、0.021(実施例2)であり、40℃におけるソフトセグメントの成分の緩和時間が、2288μs(実施例1)、1467μs(実施例2)であることを測定する方法。」
イ 本件特許発明5と甲2発明の対比
甲2発明における「パルスNMR(核磁気共鳴)測定法」は本件特許発明5における「パルスNMR」と同じ測定法である。そして、甲2発明の「ハードセグメント」、「ソフトセグメント」、及び「中間層」は、本件特許発明5の「結晶相」、「非晶相」、及び「界面相」にそれぞれ相当し、甲2発明の「存在比」は本件特許発明5の「成分の含有割合」に相当する。
また、甲2発明は、ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する研磨パッドのハードセグメント、ソフトセグメント、及び中間層の存在比を測定するのに、本件特許発明5と同じパルスNMRの測定法を用いているから、甲2発明において「パルスNMR(核磁気共鳴)測定法を用い」ることは、本件特許発明5において「研磨層について、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン-スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン-スピン緩和時間T2の長い方から順に非晶相、界面相、結晶相の3成分に分け」ることに相当する。そして、甲2発明において「測定する」ことは、本件特許発明5において「ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する研磨パッドの評価」をすることに相当する。
また、甲2発明の「40℃における中間層の存在比と、40℃におけるハードセグメントの存在比との合計に対する、40℃におけるソフトセグメントの存在比」は、本件特許発明5の「40℃における界面相の成分の含有割合(Ai40)と40℃における結晶相の成分の含有割合(Ac40)との合計に対する、40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/(Ai40+Ac40))」に相当し、同様に、「40℃におけるソフトセグメントの成分の緩和時間」は、「40℃における非晶相の成分の緩和時間」に相当する。
ウ 本件特許発明5と甲2発明の一致点及び相違点
上記ア~イより、本件特許発明5と甲2発明は、以下の一致点で一致し、相違点で相違する
<一致点>
両発明は、
「ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する研磨パッドの評価方法であって、
前記研磨層について、パルスNMRで得られる自由誘導減衰信号(FID)を最小二乗法によってスピン-スピン緩和時間T2の長い成分から順に差し引き、波形分離することにより、スピン-スピン緩和時間T2の長い方から順に非晶相、界面相、結晶相の3成分に分けた場合に、40℃における界面相の成分の含有割合(Ai40)と40℃における結晶相の成分の含有割合(Ac40)との合計に対する、40℃における非晶相の成分の含有割合(Aa40)の比(Aa40/(Ai40+Ac40))と、40℃における非晶相の成分の緩和時間を確認する工程を含む、前記評価方法。」
である点。
<相違点>
評価方法において、本件特許発明5においては、40℃における各成分の比が、「2.1~8.5」であり、40℃における非晶相の緩和時間が「580.1~712.0μs」であるか否かを確認するのに対して、甲2発明においては、40℃における上記の比が0.030(実施例1)、0.021(実施例2)であり、40℃における上記の緩和時間が2288μs(実施例1)、1467μs(実施例2)であることを確認する点。
エ 相違点の検討
本件特許発明5は、本件明細書の段落【0006】に記載のとおり、「ディッシングやエロージョンを抑制し、さらに研磨傷の発生を抑制できる研磨パッドを提供すること」を課題とし、また、本件明細書の段落【0013】~【0014】には以下の記載がある。
「【0013】
研磨パッドによる研磨について、研磨開始初期の研磨パッドの研磨面の温度は室温(約20℃)付近であるが、研磨中期から後期の研磨面の温度は摩擦熱等に起因して40℃付近にまで上昇する。
Aa40/(Ai40+Ac40)は、研磨中期から後期の研磨面の温度(約40℃)における非晶相の成分の割合に対応しており、非晶相の成分の割合はポリウレタン樹脂における分子鎖が拘束されず動きやすい領域(ソフトセグメント成分)の割合を意味していると考えられる。本発明の研磨パッドにおいては、界面相と結晶相とを合わせた含有割合に対し、非晶相の含有割合が2倍以上大きく、分子鎖が拘束されず動きやすい領域が多くを占めており、分子鎖が拘束されていて動きにくい領域(界面相と結晶相の合計)が全体の33%よりも小さい。そのため、本発明の研磨パッドは、研磨傷を与えることなく研磨が可能になると考えられる。
【0014】
また、非晶相の成分はソフトセグメント成分に対応するものと考えられ、非晶相の緩和時間が大きいと、緩和時間が小さいものに比べて、非晶相の運動性が大きいことを意味する。本発明の研磨パッドにおいては、非晶相の成分の緩和時間が500~800μsであることにより、凸部を選択的に研磨し、凹部の研磨を抑制することができ、例えば、酸化膜を研磨して窒化膜で止めなくてはならないSTI工程において、窒化膜に対して酸化膜の研磨選択性を高めることができる。一般的に、ディッシングやエロージョンはパッドの剛性と相関があり、パッドが硬いほどディッシングやエロージョン特性が向上する。緩和時間が500~800μsの範囲であると、本発明よりも剛性が大きいパッドの緩和時間と同程度の運動性を有しており、適度な伸長回復性を持つため、凹部凸部を有する研磨面の凹部に対する沈み込みが抑制されディッシングやエロージョンを抑制できるものと思われる。Aa40/(Ai40+Ac40)が1以上2未満であるような、本発明よりも剛性が大きいパッドでは、緩和時間が500~800μsであって凹部に対する沈み込みが抑制されていても凹部に接した際の研削力が勝りディッシングやエロージョンは悪化すると考えられる。」
上記段落【0013】~【0014】の記載からみて、本件特許発明5は、上記課題を解決するための技術的手段として、界面相と結晶相とを合わせた含有割合に対し、非晶相の成分の含有割合が大きく分子鎖が拘束されず動きやすい領域が多くを占めている一方で、界面相と結晶相の成分の合計の含有割合が小さく分子鎖が拘束されていて動きにくい領域が小さいこと、及び、非晶相の緩和時間が大きく、非晶相の運動性が大きいことが欠かせない要素であって、そのために、(Aa40/(Ai40+Ac40))が2.1~8.5であり、40℃における非晶相の緩和時間が580.1~712.0μsとするものと理解できる。
これに対して甲2発明は、「高硬度であって、しかも、ドレス性が良好な研磨パッドを提供すること」を課題とし(甲2の段落【0009】)、40℃における非晶相の緩和時間を2288μs(実施例1)、1467μs(実施例2)として、本件特許発明5の緩和時間と同様に比較的高い一方で、40℃におけるハードセグメントの成分の含有割合を57.9%(実施例1)、64.4%(実施例2)にしてハードセグメントの成分の含有割合を高めた結果として、40℃における各成分の比率(Aa40/(Ai40+Ac40))を0.030(実施例1)、0.021(実施例2)として、本件特許発明5の比率と比較して著しく小さな値としている。
そうすると、評価方法の発明としてみたときに、甲2発明は、評価方法の対象である研磨パッドに関して、本件特許発明5とは非晶相の成分の緩和時間が大きく、非晶相の運動性が大きい(研磨パッドの弾性が小さい)ことで研磨パッドの研磨面の凹部に対する沈み込みが抑制できる点で共通するとしても、本件特許発明5のように、研磨面の凹部に接した際の研削力を小さくしてディッシングやエロージョンを抑制するために40℃における各成分の比率(Aa40/(Ai40+Ac40))が大きい(研磨パッドの剛性が低い)か否かを評価するものではなく、各成分の比率が小さい(研磨パッドの剛性が高い)か否かを評価するものであるから、両発明の評価の観点は相互に反するものと言わざるを得ない。
そして、両発明の評価の観点が相互に反する以上、甲2の記載に接した当業者が、本件特許発明5のように「ディッシングやエロージョンを抑制し、さらに研磨傷の発生を抑制できる」研磨パッドを評価するために、上記相違点に係る本件特許発明5の(Aa40/(Ai40+Ac40))の値、及び非晶相の緩和時間の数値を選択する動機があるとはいえない。
したがって、甲2発明に基づいて、本件特許発明5の評価方法に想到することが容易であるとはいえない。
さらに、他の甲1、3~5についてみても、「研磨傷を抑制し、研磨中の研磨レートの変動が少なく、研磨安定性に優れた」研磨パッドを評価するために、上記相違点に係る本件特許発明5の(Aa40/(Ai40+Ac40))の値、及び非晶相の緩和時間とすることが記載あるいは示唆されているものではない。
よって、甲1、3~5は、いずれも上記相違点に係る本件特許発明5の構成について記載あるいは示唆するものではなく、甲2発明に甲1、3~5記載の技術的事項を適用して、本件特許発明5に容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、本件特許発明5は、甲2発明に基づいて、又は甲2発明、及び甲1、3~5記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明6
本件特許発明6は、本件特許発明5に対して、さらに技術的事項を追加したものである。
したがって、本件特許発明6は、本件特許発明5と同様に、甲2発明に基づいて、又は甲2発明、及び甲1、3~5記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)甲6~8
なお、甲6~8は、実施可能要件の申立理由に関する文献であって、これらについて一応検討しても、いずれも本件特許の出願日以降に公開された特許公報であって、本件特許発明5~6の進歩性を否定する根拠を見出すことはできない。
(5)小括
したがって、取消理由通知において採用しなかった特許法第29条第2項(進歩性)に係る特許異議申立理由により、本件請求項5~6に係る特許を取り消すことはできない。
4 本件請求項5~6に係る特許に対する特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)違反の申立理由について
(1)理由の要旨
特許異議申立書に記載された上記2(1)ウの申立理由は、本件の発明の詳細な説明には、物の発明(研磨パッド)に関し、請求項に記載した数値範囲を満たす研磨パッドを作ることができるように記載されていないことを要旨とする(特許異議申立書第59~75ページ)。
(2)理由に対する判断
しかしながら、本件請求項5~6に係る発明は、物の発明や製造方法の発明ではなく、研磨パッドの評価方法の発明であって、パルスNMRを用いた解析で得られる数値が特定の範囲であるか否かを確認する工程を含むものであるから、請求項5~6に係る発明に関する実施可能要件は、研磨パッドを作ることができるように記載することを課すものではない。そして、パルスNMRを用いた解析については、発明の詳細な説明の段落【0061】~【0064】において十分に開示されているから、当業者が請求項5~6に係る評価方法を過度の試行錯誤を要することなく実施できるといえる。
したがって、本件請求項5~6に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
(3)小括
よって、取消理由通知において採用しなかった特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に係る特許異議申立理由により、本件請求項5~6に係る特許を取り消すことはできない。
5 本件請求項5~6に係る特許に対する特許法第36条第6項第1号(サポート要件)違反の申立理由について
(1)理由の要旨
本件訂正前の本件請求項5~6は、発明を特定するための事項に数値範囲を含むところ、発明の詳細な説明には、実施例1及び実施例2に当該数値範囲の一部分に対応する数値が具体的に記載されているのみであって、出願時の技術常識に照らしても、本件訂正前の本件請求項5~6に係る発明は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。
よって、本件訂正前の本件請求項5~6に係る特許は、特許請求の範囲が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)理由に対する判断
ア 本件請求項5
上記第3のとおり、本件請求項5は、(Aa40/(Ai40+Ac40))が2.1~8.5であり、40℃における非晶相の成分の緩和時間が580.1~712.0μsであることが記載されており、課題を解決するものとして示されている実施例1及び2に合わせた数値範囲となっているから、本件特許発明5は、発明の詳細な説明に記載したものである。
イ 本件請求項6
上記第3のとおり、本件請求項6は、(Aa40/Aa20)が2.1~8.5であることが記載されており、課題を解決するものとして示されている実施例1及び2に合わせた数値範囲となっているから、本件特許発明6は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(3)小括
よって、取消理由通知において採用しなかった特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に係る特許異議申立理由により、本件請求項5~6に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項5~6に係る特許を取り消すことができない。そして、他に本件請求項5~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項1~4は、上記第2のとおり削除された。これにより、本件特許異議の申立てについて、請求項1~4に係る特許に対する申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700237