特許訂正審判
2023-390126
補体活性の変調
- 審判番号
- 2023-390126
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2018-204571
- 登録番号
- 6770043
- 請求日
- 2023年11月08日
- 審決日
- 2024年02月27日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】ラ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】恩田 誠
- 【請求人代理人】恩田 博宣
- 【請求人代理人】本田 淳
- 【請求人代理人】中村 美樹
- 審判長/審判官
- 審判長 長井 啓子
- 審判官 鶴 剛史
- 審判官 高堀 栄二
- 分類
- P141 .832-Y (C07K) / P141 .841-Y (C07K) / P141 .853-Y (C07K) / P141 .854-Y (C07K) / P141 .855-Y (C07K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第3項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6770043号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6770043号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判に係る特許第6770043号(以下「本件特許」という。)についての出願は、2015年(平成27年)6月12日(パリ条約による優先権主張 2014年6月12日 (US)アメリカ合衆国 2014年11月10日 (US)アメリカ合衆国 2015年1月28日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2017-517219号の一部を平成30年10月31日に新たな特許出願としたものであって、令和2年9月28日にその特許権の設定登録がされ、令和5年11月8日に訂正2023-390126号とする訂正審判が請求されたものである。
第2 請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、
「特許第6770043号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求める。」
というものである。
本件訂正審判の請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許法第126条第3項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1~21を訂正単位とするものであって、その内容は下記1のとおりである。
1 訂正事項1
本件訂正前の請求項1に「Xaa12は、Trpであり」と記載されているのを、「Xaa12は、Tyrであり」と訂正する。(下線は訂正箇所を示す。)
第3 当審の判断
1 訂正の目的
(1)特許請求の範囲の記載について
本件訂正前の請求項1の記載は、次のとおりである。
「式R1-Xaa0-Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8-Xaa9-Xaa10-Xaa11-Xaa12-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-R2(式中、
R1は、アセチル基、H、アシル基、ヘプタノイル基、アミド、カルバメート、ウレア、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシアルキルデンプン、およびクロロ酢酸からなる群から選択されるか、または不在であり、
Xaa0は、不在であるか、またはMetであり、
Xaa1は、Cys、Lys、(S)-2-アミノ-5-アジドペンタン酸、および3-チオプロピオン酸からなる群から選択されるか、または不在であり、
Xaa2は、Val、Ala、およびD-Alaからなる群から選択されるか、または不在であり、
Xaa3は、Glu、ノルバリン、およびAlaからなる群から選択されるか、または不在であり、
Xaa4は、Arg、Cys、Ala、Ser、およびノルバリンからなる群から選択されるか、または不在であり、
Xaa5は、Phe、Tyr、N-メチル-チロシン、およびAlaからなる群から選択されるか、または不在であり、
Xaa6は、Cys、Glu、N-メチル-グルタミン酸、Asp、(S)-2-アミノペント-4-イン酸、およびAlaからなる群から選択され、
Xaa7は、Asp、Asn、N-メチル-アスパラギン、α-メチルL-アスパラギン酸、(S)-2-アミノ-3-(1H-テトラゾール-5-イル)プロパン酸、N-メチル-アスパラギン酸、シクロロイシン、4-アミノ-テトラヒドロ-ピラン-4-カルボン酸、およびAlaからなる群から選択され、
Xaa8は、tert-ブチルグリシン、Val、およびAlaからなる群から選択され、
Xaa9は、Tyrであり、
Xaa10は、7-アザトリプトファン、Trp、3-アミノメチル-L-フェニアラニン、N-メチル-トリプトファン、および1-メチル-トリプトファンからなる群から選択され、
Xaa11は、Gluであり、
Xaa12は、Trpであり、
Xaa13は、Proであり、
Xaa14は、シクロヘキシルグリシン、フェニルグリシン、D-フェニルグリシン、N-メチル-フェニルグリシン、アミノイソ酪酸、およびAlaからなる群から選択されるか、または不在であり、
Xaa15は、ノルバリン、Lys、およびProからなる群から選択されるか、または不在であり、
Xaa16は、不在であるか、またはN-ε-パルミトイルリシン、N-ε-ラウリルリシン、N-ε-カプリルリシン、N-ε-カプリル酸リシン、B20、B28、K14、Cys、およびLysからなる群から選択され、かつ
R2は、-NH2であるか、または不在である)
で示される、補体成分であるC5のアンタゴニストとしての機能を保持するポリペプチド。」(以下、「式R1-Xaa0-Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5-Xaa6-Xaa7-Xaa8-Xaa9-Xaa10-Xaa11-Xaa12-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-R2」を「本件式」という。また、本件式のR1、Xaa0~Xaa16、R2についての定義である「(式中、R1は、アセチル基、・・・)」を「訂正前本件定義」、訂正後の当該定義を「訂正後本件定義」といい、これらをまとめて「本件定義」ということがある。)
本件訂正前の請求項1に係る発明は、本件式において訂正前本件定義を充足する構造のポリペプチドであって、かつ、補体成分であるC5のアンタゴニストとしての機能を保持するものである。
そして、本件訂正は、上記第2の1のとおり、本件定義中のR1、Xaa0~16、R2のうちのXaa12に係る選択肢を訂正するものであって、本件訂正後の請求項1に係る発明は、本件式において訂正後本件定義を充足する構造のポリペプチドであって、かつ、補体成分であるC5のアンタゴニストとしての機能を保持するものである。
(2)明細書の記載について
本件特許の明細書(以下、「本件明細書」という。)には、ポリペプチドとC5のアンタゴニストとしての機能との関係について、大要、次の記載がある。
ア 【表1】(【0174】~【0184】)には、「本発明のC5阻害剤」が含みうるポリペプチドとして、配列番号1~201及び211に示されるポリペプチドが記載されている。
イ 実施例9(【0276】~【0286】)には、その【表4】(【0277】~【0285】)に、「本発明に係る化合物」として配列番号1~201に示されるポリペプチドを合成したことが記載されている。
ウ 実施例10(【0287】~【0288】)には、「C5阻害剤の最適化および試験」として、その【表5】(【0289】~【0293】)に、配列番号1~47、49~89、91~115、117~171及び173に示されるポリペプチドについて、ヒト溶血アッセイ(完全ヒト血清を用いたRBC溶解アッセイ)における平均IC50が記載されている。
エ 実施例11(【0294】~【0295】)には、「C5枯渇血清を用いた代替ヒト溶血アッセイ」として、その【表6】(【0295】)に、配列番号172、174~175、177~178、180~185、187及び189~201に示される化合物について、当該ヒト溶血アッセイにおける平均IC50が記載されている。
オ 実施例20(【0327】~【0330】)には、その【表18】(【0328】)に、配列番号211で示されるポリペプチドについて、平均IC50が記載されている。
カ 【0335】には、「好ましい実施形態」として、「配列番号2~55,57~59,139~156,158~175,177,178,180~185,187,189~201および211からなる群から選択されるポリペプチド。」が記載されている。
上記ア~カの事項を総合すると、本件明細書には、合成して試験を行った本件特許に係る具体的なポリペプチドとして、配列番号1~201及び211に示され、表1に記載された合計202個のポリペプチド(以下、「表1の202個のポリペプチド」という。)が記載され、特に、C5の阻害アッセイに係る平均IC50の値に基づき、「好ましい実施形態」として、配列番号2~55、57~59、139~156、158~175、177、178、180~185、187、189~201及び211に示される合計116個のポリペプチド(以下、「「好ましい実施形態」の116個のポリペプチド」という。)が記載されていると認められる。
(3)特許請求の範囲の記載と明細書の記載の対応について
本件訂正前の請求項1に係るポリペプチドの構造は、上記(1)のとおり、本件式において訂正前本件定義を充足するものであるところ、特にXaa11~Xaa13は選択肢が1つしかなく、Glu-Trp-Proという固定された構造である。また、Xaa9も選択肢が1つしかないので、Xaa9~Xaa13はTyr-Xaa10-Glu-Trp-Proという相当程度固定された構造である。
一方、本件訂正は、Xaa12をTrpからTyrへと訂正するものであって、本件訂正後の請求項1に係るポリペプチドは、Xaa11~Xaa13としてGlu-Tyr-Proという固定された構造を、Xaa9~Xaa13としてTyr-Xaa10-Glu-Tyr-Proという相当程度固定された構造を有する。
そこで、Xaa12のみならず、Xaa11~Xaa13又はXaa9~Xaa13にも着目して、上記(2)の本件明細書の記載を検討する。
まず、表1の202個のポリペプチドのうち、訂正前Xaa9~Xaa13を有するものは「R3177」に示されるポリペプチド1個だけであり、訂正前Xaa11~Xaa13を有するものも、同じく「R3177」の1個のみである。そればかりか、Xaa12に限ってみても、訂正前Xaa12を有するのは、同じく「R3177」のみである。この「R3177」は、本件訂正前定義の全体(R1、Xaa0~Xaa16、R2)も充足するが、表1によれば、Xaa12を別のアミノ酸に置換した一群のバリアント(「R3177」~「R3180」)の一つにすぎないと見て取れる。
これに対し、表1の202個のポリペプチドのうち、訂正後Xaa9~Xaa13を有するものは82個あり、訂正後Xaa11~Xaa13を有するものまで範囲を広げると上記82個以外に18個もある(合計で100個)。
また、「好ましい実施形態」の116個のポリペプチドについてみても、訂正前Xaa9~Xaa13を有するものも、訂正前Xaa11~Xaa13を有するものも、さらに訂正前Xaa12のみを有するものさえ、唯一、「R3177」のみであるのに対し、訂正後Xaa9~Xaa13、訂正後Xaa11~Xaa13を有するものはそれぞれ81個、86個あり、その大部分である80個が本件訂正前定義の全体(R1、Xaa0~Xaa16、R2)も満たす。
これらの関係をまとめると、次の表のようになる。
[図:0001411201000001.jpg]
以上述べた、本件式における訂正前後の本件定義を充足するポリペプチドと、本件明細書に記載された具体的なポリペプチドとの関係について検討したところによれば、本件明細書は、実質的に訂正後発明(訂正特許請求の範囲に記載された発明)を開示するものと理解するのが妥当である。また、このことは、TyrとTrpは外観が類似していることや、出願経過において、出願人/請求人は一貫してXaa12がTyrであることを前提とした主張を行っていることとも矛盾しない。
(4)まとめ
したがって、訂正前特許請求の範囲の記載と本件明細書の記載には不合理が生じており、明細書に実質的に開示された発明に相当しない特許請求の範囲の記載は不明りょうであるといえるところ、訂正事項1は当該不合理が生じている明りょうでない記載を正すものであると認められる。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正後の請求項1に係る発明のポリペプチドは、上記1(3)で検討したところによれば、本件明細書に実質的に開示された発明に相当するものであり、また、審判請求書に添付された甲2号証によれば、訂正後の請求項1に係る発明のポリペプチドは、そのR1、Xaa1~Xaa16、R2の全ての選択肢が、「好ましい実施形態」の116個のポリペプチドのうちの80個のポリペプチドによって明細書に記載されているものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合する。
3 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記1で検討したとおり、本件特許の訂正前の特許請求の範囲の請求項1の記載内容は、本件明細書の記載との関係において不合理を生じていたものであり、訂正事項1は、特許請求の範囲の記載を本件明細書に実質的に開示された発明に相当するものとし、当該不合理を解消するものである。
したがって、その実質を捉えて考察すると、第三者に不足の不利益を及ぼすものとはいえないから、特許請求の範囲の拡張や変更はされていないということができ、特許法第126条第6項に適合するものである。
第4 むすび
以上より、本件審判請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書3号に規定する事項を目的とし、かつ、同条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおりに審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-390126