特許訂正審判
2023-390107
アミロイドβに対する抗体
- 審判番号
- 2023-390107
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2018-096788
- 登録番号
- 6669805
- 請求日
- 2023年08月18日
- 審決日
- 2023年10月25日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】メディミューン リミテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人平木国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 上條 肇
- 審判官 田中 耕一郎
- 審判官 天野 貴子
- 分類
- P141 .852-Y (C07K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6669805号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6669805号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判に係る特許第6669805号(以下「本件特許」という。)についての出願は、2013年10月15日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2012年10月15日 米国(US))を国際出願日とする特願2015-536189号の一部を、2018年5月21日に新たに外国語書面出願した特願2018-96788号であって、その請求項1~11に係る発明について令和2年3月2日に特許権の設定登録がされ、その後、令和5年8月18日に本件の訂正審判が請求されたものである。
第2 請求の趣旨及び訂正の内容
1.請求の趣旨
本件審判の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。
2.訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「配列番号29の81位」とあるのを「配列番号29の80位」に訂正する。請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~11も同様に訂正する。
第3 当審の判断
1 訂正事項1についての判断
(1)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「配列番号29の81位」という記載を「配列番号29の80位」に訂正するものである。
願書に添付された特許請求の範囲の請求項1には、
「 【請求項1】
ヒトアミロイドβ1-40ペプチド(Aβ1-40)に比べて、ヒトアミロイドβ1-42ペプチド(Aβ1-42)との結合について選択的である単離抗体分子であって、
(i)以下のHCDR:
HCDR1配列番号525、
HCDR2配列番号526、および
HCDR3配列番号527を含むVH領域、
(ii)以下のLCDR:
LCDR1配列番号534、
LCDR2配列番号535、および
LCDR3配列番号536を含むVL領域
を含み、VL領域が配列番号29の81位に対応するアミノ酸位置にトレオニンを有する、単離抗体分子。」と記載されている。
ここで、LCDR1配列番号534、LCDR2配列番号535及びLCDR3配列番号536を含むVL領域を有する抗体について、発明の詳細な説明には、
「 【0029】
本発明による抗体分子は、
(i)Abet0380のHCDRのアミノ酸配列が、
HCDR1配列番号525、
HCDR2配列番号526、および
HCDR3配列番号527である、Abet0380またはAbet0380 GLのHCDRセットを含んでなり、
または1つまたは2つのアミノ酸変異があるAbet0380またはAbet0380 GLのHCDセットを含んでなってもよい、VH領域、および
(ii)Abet0380のLCDRのアミノ酸配列が、
LCDR1配列番号534
LCDR2配列番号535、および
LCDR3配列番号536である、Abet0380またはAbet0380 GLのLCDRセットを含んでなり、
または1つまたは2つのアミノ酸変異があるAbet0380またはAbet0380 GLのLCDRセットを含んでなってもよい、VL領域
を含んでなってもよい。」、
「 【0064】
例えば表5および6は、Abet0380が、その中でHCDR1が配列番号525(Kabat残基31~35)であり、HCDR2が配列番号526(Kabat残基50~65)であり、HCDR3が配列番号527(Kabat残基95~102)であり、LCDR1が配列番号534(Kabat残基24~34)であり、LCDR2が配列番号535(Kabat残基50~56)であり、LCDR3が配列番号536(Kabat残基89~97)である、CDRセットを有することを示す。その他の最適化抗体クローンは、表5および6に同様に示され、本発明の態様としてもまた提供される。」、
「 【0069】
例えば結合メンバーは、
Abet0380またはAbet0380GLのHCDRのアミノ酸配列が、
HCDR1配列番号525、
HCDR2配列番号526、および
HCDR3配列番号527である、
Abet0380またはAbet0380GLのHCDRセットを含んでなり、
または1つまたは2つのアミノ酸変異があるAbet0380のHCDRセットを含んでなる、VH領域、および
(ii)Abet0380またはAbet0380GLのLCDRのアミノ酸配列が、
LCDR1配列番号534、
LCDR2配列番号535、および
LCDR3配列番号536である、
Abet0380またはAbet0380GLのLCDRセットを含んでなり、
または1つまたは2つのアミノ酸変異がある、Abet0380またはAbet0380GLのLCDRセットを含んでなる、VL領域
を含んでなってもよい。」と記載されている。
そうすると、発明の詳細な説明には、LCDR1配列番号534、LCDR2配列番号535及びLCDR3配列番号536を含むVL領域を有する抗体は「Abet0380」であると一貫して記載されているといえる。
そして、「Abet0380」については、発明の詳細な説明には、
「 【0332】
3.9 生殖系列化
それらの対応するscFvの実験的特性評価に基づいて、生殖系列化のために、最も強力なIgGの内5つを選択した。クローンAbet0343、Abet0369、Abet0377、Abet0380、およびAbet0382の精製scFvは全て、エピトープ競合アッセイによる測定で、750pM未満のIC50値を示し(表4)、全て、表面プラズモン共鳴による測定で250pM未満の実験的解離定数を有した、表7。
【0333】
生殖系列化過程は、VHおよびVL領域内のフレームワーク残基を最も近い生殖細胞系配列に復帰させて、ヒト抗体に完全に同じように一致させることからなった。最適化抗体系統のVH領域では、これはVh3-23(DP-47)であり、VL領域では、これはVλ3-3r(DPL-23)であった。Abet0380では、Kabat位置43において、VH領域内の1つの残基の変更が必要であり(表8)、Kabat位置81において、VL領域内の1つの残基の変更が必要であった(表9)。残りの4つの配列では、2~5個の変更が必要であった(表8および9)。側面に位置する残基1および3と同時に生殖系列化されたAbet0343の軽鎖配列中の残基2を除いて、ベルニエ残基(Foote et al.,1992)は生殖系列化されなかった。これらのアミノ酸残基の生殖系列化は、Clackson and Lowman(Clackson et al.,2004)によって記載されるような適切な変異原性プライマーを用いて、標準部位特異的変異誘発技術を使用して実施された。
【0334】
【表8】
・・・
【0335】
【表9】
[図:0001405761000001.jpg]
」と記載されており、「Abet0380」は「Abet0144-GL」のVL領域におけるKabat位置81のメチオニン(M)をトレオニン(T)に変更したものであることが記載されている。
一方、「Abet0144-GL」については、発明の詳細な説明において、
「 【0057】
結合メンバーは、Abet0144-GLおよびAβ1-42を用いたHTRF(商標)エピトープ競合アッセイ中で、例えば2nM以下、例えば1nM以下などの5nM以下のIC50を有してもよい。Abet0144-GLは、VH領域配列番号20およびVL領域配列番号29を有する抗体分子である。それは、例えばscFvまたはIgG、例えばIgG1形態などの試験される抗体分子と同一形態で、アッセイ中で使用してもよい。したがって本発明によるIgG抗体分子は、HTRFエピトープ競合アッセイ中で、ヒトAβ1-42との結合についてAbet0144-GL IgGと競合してもよい。このようなアッセイにおける効力は、1nM未満であってもよい。」と記載され、配列表の配列番号29において、
「
[図:0001405761000002.jpg]
」と記載されている。
そうすると、配列表の配列番号29は、表9の「Abet0144-GL」の行に記載されているとおり、Kabat位置10に相当するアミノ酸残基を欠失しているため、同表9において「Abet0144-GL」と同様に記載されている「Abet0380」についても、Kabat位置10に相当するアミノ酸残基が欠失し、Kabat位置81のメチオニン(M)は、配列表29の80位に対応することは明らかである。
そして、発明の詳細な説明には、「Abet0380」のVL領域について、配列番号29の81位の残基に変異を導入することや当該位置に対応するKabat位置82の残基に変異を導入することについては何ら記載されていない。
したがって、訂正前の請求項1における「VL領域が配列番号29の81位に対応するアミノ酸位置にトレオニンを有する」という記載は、「VL領域が配列番号29の80位に対応するアミノ酸位置にトレオニンを有する」の誤りであることは明らかである。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
(2)外国語書面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記(1)で説示したとおりの記載が、本件外国語書面にも記載されており(6頁24行~7頁2行、18頁9~15行、19頁28~33行、20頁27行~21頁3行、84頁7行~86頁最終行、配列表の配列番号29)、訂正事項1は、HCDR:HCDR1配列番号525、HCDR2配列番号526、およびHCDR3配列番号527を含むVH領域、及び、LCDR:LCDR1配列番号534、LCDR2配列番号535、およびLCDR3配列番号536を含むVL領域、を含む抗体分子について、誤りである「VL領域が配列番号29の81位に対応するアミノ酸位置にトレオニンを有する」という記載を、正しい記載である「VL領域が配列番号29の80位に対応するアミノ酸位置にトレオニンを有する」に訂正するものであるから、外国語書面に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかである。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記(1)で説示したとおり、訂正事項1は、誤記を訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件について
訂正後の特許請求の範囲の請求項1~11に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせないから、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第5項ないし第7項に規定される要件に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
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