商標取消審判
2023-300371
- 審判番号
- 2023-300371
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2013-001430
- 登録番号
- 5597358
- 請求日
- 2023年06月06日
- 審決日
- 2025年05月01日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】有限会社 バランス
- 【請求人代理人】有吉 修一朗
- 【被請求人】TETSU GLOBAL 株式会社
- 【被請求人代理人】高橋 伸也
- 審判長/審判官
- 審判長 高橋 幸志
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 豊瀬 京太郎
- 分類
- T132 .1 -Z (W30)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第50条第2項、商標法第2条第3項第8号、商標法第4条第1項第7号、商標法第2条第3項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5597358号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第5597358号商標の指定商品中、第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5597358号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成25年1月11日に登録出願、第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,即席菓子のもと,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,茶,コーヒー,ココア,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆」を指定商品として、同年7月12日に設定登録され、その後、令和5年1月18日付けで存続期間の更新登録がなされたものである。
そして、その指定商品中、「即席菓子のもと,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,茶,コーヒー,ココア,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆」についての登録は、令和5年12月8日に、取消審判の確定登録により取り消され、その余の指定商品についての登録は、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判請求の登録日は、令和5年6月23日である。
また、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、令和2年(2020年)6月23日ないし同5年(2023年)6月22日である(以下「要証期間」という。)。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び弁駁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第21号証(枝番号を含む。枝番号をまとめて引用するときは枝番号を省略する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」(以下「請求に係る指定商品」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)はじめに
これまでの経緯について時系列に沿って記載する。以下、本件標章を「本件顔図形」といい、登録第5443659号商標(甲3)を「請求人商標」といい、請求人商標の図形部分(「てつおじさん」の文字部分を除く部分)を「請求人全身図形」という。
(2)請求人全身図形について
ア 1980年、請求人代表者であるK氏は、T氏が代表を務める株式会社てっしぃ村(以下「てっしぃ村社」という。)に入社し(甲21)、同社ケーキ部門である「ハナジャム」という屋号の店舗の運営管理責任者を任されるようになった。1990年春頃に、後にハナジャムの名物となるチーズケーキを完成させ、「てつおじさんのチーズケーキ」とネーミングを行った。また、同時期に請求人全身図形を完成させた。
他方、てっしぃ村社は、登録第3064039号商標(以下「旧商標」という。)の商標登録を行った(乙13)。
1991年、K氏はハナジャムで「てつおじさんのチーズケーキ」の販売を開始し、1994年には北海道から宮崎まで43店舗を展開した(甲4)。「てつおじさんのチーズケーキ」には旧商標及び請求人全身図形を使用した結果、取引者、需要者間で広く認識されるに至った(甲5)。
1995年、K氏は、てっしぃ村社を退社し(甲21)、サンドイッチ事業を始め、神戸サンド屋次郎丸店(以下「次郎丸店」という。)を開店した。
なお、K氏は、T氏の実弟や実妹とは、互いに経営の相談やアドバイスをする関係であった。
2000年、K氏は、有限会社バランス(請求人)を設立した。一方、「てつおじさんのチーズケーキ」の販売店舗は全国で4店舗となったが、そのうち2店舗を請求人が、他の2店舗をT氏の実弟が譲り受けた。
2004年1月時点では、「てつおじさんのチーズケーキ」を販売しているのは、請求人の経営する2店舗のみなったが、2006年にそのうち1店舗を閉店した。
請求人は、2010年頃から全国の百貨店やショッピングモールなどの商業施設で催事販売の展開を始めた(甲7の1~7)。
2011年1月頃、T氏より台湾台北駅の出店の話しを持ちかけられたが、請求人は断ったところ、T氏自身が出店したいとの申し出があり、請求人に対して技術指導を求めてきた。そのため、請求人は、T氏の実妹等に対して、2011年4月から3か月ほど、チーズケーキの製造方法等の指導を行った。
なお、K氏とT氏は、(1)旧商標については請求人が再登録すること、(2)T氏は日本では出店を行わないこと、の約束を行い(甲8)、請求人は、2011年7月に請求人商標の出願を行った(甲3)。
2012年6月、T氏から請求人に対して「日本でも出店したい」との申し出があった。
上記約束のため、T氏の日本での出店を認めることは不本意であったが、個人的な関係も考慮して、請求人は、有限会社浪漫座(以下「浪漫座社」という。)に、請求人商標の使用許諾を行い、浪漫座社は、同年に2店舗を開店した。
請求人は、2013年に「博多大丸店」を開店、2015年に「博多マイング店」及び「博多大丸店」を閉店、2016年に「博多マルイ店」及び「姪浜店」を開店(甲10、甲11)、2017年に「バスターミナル店」及び「乙金店」を開店(甲12)、2020年に「バスターミナル店」を閉店した。
また、浪漫座社は、2017年に「ソラリア店」及び「薬院店」を閉店した。
イ 請求人全身図形の周知性について
2004年にT氏の実弟の店舗が閉店したことから、「てつおじさんのチーズケーキ」の周知性は請求人が引き継いでおり、請求人商標や請求人全身図形は、請求人の業務に係る商品を指し示すものとして、取引者、需要者間で広く認識されている。
なお、請求人が2000年以降、現在に至るまで、譲り受けた2店舗に限らず、複数の店舗において継続的に請求人商標や請求人全身図形の使用を行っており、こうした永年の継続使用によっても、請求人商標や請求人全身図形が請求人の業務に係る商品を指し示すものとして、取引者、需要者間で広く認識された商標である。
ウ 請求人商標の使用許諾について
2012年7月に、浪漫座社が2店舗を出店するにあたって、請求人商標の使用許諾を行った(甲13)。
エ 小括
旧商標と請求人商標は実質的に同一であることからも、請求人商標及び請求人全身図形は、請求人の業務に係る商品を指し示すものとして、取引者、需要者間で広く認識されている。
また、浪漫座社が使用許諾を受けていたという事実から、浪漫座社としても、請求人商標や請求人全身図形は、請求人の業務に係る商品を指し示すものであると認めていたと考えるのが自然である。
(3)本件顔図形について
ア 請求人は、2012年11月頃に完成させた「てつおじさんのマドレーヌ」の販売にあたって、本件顔図形を使用することにした。
イ 請求人は、請求人商標の浪漫座社への使用許諾と共に、本件顔図形についても使用を承諾した。また、浪漫座社が本件顔図形の商標権を取得することを承諾し、本件商標のアサインバックに協力した(甲14)。
ウ 被請求人への譲渡
請求人商標について、浪漫座社からの使用料の支払いを条件として、本件商標の取得を承諾していたにも拘わらず、2017年9月分以降支払がなかった。
請求人としては、K氏とT氏との個人的な関係性を考慮して浪漫座社ヘの使用許諾を行うと共に、本件商標のアサインバックに協力したが、本件商標は、2022年2月17日に請求人に無断で浪漫座社から被請求人に譲渡された。そのため、請求人は本件審判を請求したものである。
エ 小括
以上のとおり、浪漫座社が請求人から本件顔図形の使用についての承諾を得ていたという事実から、浪漫座社としては、本件顔図形についても、請求人の業務に係る商品を指し示すものであると認めていたと考えるのが自然である。
(4)本件商標を使用している者について
準用する特許法施行規則第61条第1項に規定されているように、外国語で作成された文書を提出して書証の申出をするときは、取調べを求める部分についてその文書の訳文を添付しなければならないところ、乙第3号証は外国語で作成され、かつ、訳文が添付されていないため、内容が不明である。
したがって、浪漫座社、被請求人、及び、香港法人であるTetsu Global Limited(以下「Tetsu Global」という。)が実質的に同じ経営支配状況にあることは、何ら証明がなされていない。
また、T氏の住所が、乙第3号証と乙第1号証とで異なっており、同様に、M氏の住所が、乙第3号証と乙第2号証とで異なっている点について、被請求人は一切の説明を行っていない。
したがって、浪漫座社の代表者とTetsu GlobalのDirector、被請求人の代表者とTetsu GlobalのDirectorは、住所が不一致であり、同一人物であることなど分かるはずもなく、浪漫座社、被請求人、及び、Tetsu Globalが実質的に同じ経営支配状況にあることは、何ら証明がなされていない。
さらに、被請求人は、本件商標についてTetsu Globalに対して通常使用権を許諾することを示す証拠として、乙第1号証ないし乙第3号証のみを提出していることから、同許諾に関する契約書は存在しないものと推測される。
会社間で通常使用権の許諾を行う場合、適切な会計処理、税務処理を行うために、金銭の流れの根拠となる契約書、取引書類等が存在しないことは考え難い。
したがって、被請求人は、Tetsu Globalに対して通常使用権を許諾していることを示す証拠を提出していない。
そうとすると、被請求人は、本件商標権について、Tetsu Globalに対して通常使用権を許諾し、Tetsu Globalが本件商標を使用している旨を主張しているのみであって、商標権者である被請求人が本件商標を使用していることは一切主張していない。
このように、商標権者又は通常使用権者によって本件商標が使用されていることが立証されていない。
(5)要証期間内の使用について
乙第4号証、乙第5号証が示すウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)が出力されたのは2023年9月7日であり、要証期間内の使用であることは証明されていない。
インターネットのホームページを裁判の証拠として提出する場合には,欄外のURLがそのホームページの特定事項として重要な記載であることは訴訟実務関係者にとって常識的な事項であるから,原告の前記主張は,不自然であり,たやすく採用することができない(知財高裁平成22年(行ケ)第10082号審決取消請求事件)。
乙第6号証、乙第7号証のURLは黒塗りされているから、その内容が正確なものか明らかではなく、乙第6号証で示すページがどのようなページなのかについては、客観的な証拠の提出もなく不明である。
なお、乙第5号証(2枚目)には、著作権表示として「Copyright(C)2014Tetsu Global Limited[UncleTetsu 徹思叔叔]All Rights Reserved.」との表示が確認できる。すなわち、乙第6号証の公開日である平成29年(2017年)と、乙第5号証の著作権表示である2014年が合致せず、極めて不自然である。
さらに、乙第7号証で示すページがどのようなページなのかについては、客観的な証拠の提出もなく不明であるから、これをもって、令和2年9月15日以降Tetsu Globalが運営するウェブサイトが公開され続けていた、とはいえない。
なお、編集履歴のバージョン名(乙7の「2020年9月15日午後10:48」という文字情報)は、利用者が自由に変更でき、バージョン名が編集の最終日を示す客観的な証拠にはなり得ない(甲15、甲16)し、また、編集履歴には、公開した履歴のみが残るため、非公開であった期間については判断することができない(甲16)。
また、本件使用商標を表示した本件ウェブサイト(乙4)は、要証期間に公開(電磁的方法により提供)されていた状態を示しているとはいえない。そして、乙第5号証のTopicsは、2017年10月が最新である。そうとすると、本件ウェブサイトは、要証期間より相当以前にアップロードされた状態のままであると理解でき、本件ウェブサイトは、要証期間に公開(電磁的方法により提供)されていた状態を示しているとはいえない(取消2020-300375)。
乙第8号証が出力されたのは2023年9月7日であり、同号証のみでは要証期間内の使用であることは証明されておらず(住所を更新したのみである。)、また、投稿日について、何ら客観的な証拠の提出がなされていない。
そうとすると、facebook(乙8)は、要証期間内に公開されていたとはいえない(取消2018-300879)。
(6)日本国内での使用について
被請求人の提出した証拠からは、被請求人やTetsu Globalが日本国内において商品「菓子」の提供を行っているとはいえない。
なお、浪漫座社は2017年に2店舗を閉店しており(甲17)、それ以降、同社の店舗は日本には存在しておらず、日本において、被請求人やTetsu Globalによって商品「菓子」が提供されたと認められる客観的な事実は存在しない。
乙第4号証、乙第5号証、乙第8号証には、Tetsu Globalが日本国内の店舗で商品「菓子」を販売等していることを示す情報(例えば、店舗の住所、店舗の連絡先情報、販売の様子を示す画像など)が見られず、日本国内における店舗に顧客を吸引しようとするものでないことは明らかである。
Tetsu Globalが日本国内で商品「菓子」を販売等したことが証明できていない以上、日本の需要者がTetsu Globalの菓子の提供を受けることができたことを証明していない(知財高裁平成17年(行ケ)第10095号審決取消請求事件(乙11)、取消2021-300254、取消2018-300156)(※審決注:「取消2021-300254」の「4」は脱字のため職権により追記)。
乙第4号証、乙第5号証、乙第8号証には、商品の注文に関する事項である商品価格、送料、支払い方法等についての記載は見当たらない。また、Tetsu Globalの商品をインターネットで注文できるように設定されておらず、日本の需要者から直接注文を受けることを目的としていないことは明らかである。
つまり、乙第4号証、乙第5号証、乙第8号証で示されるウェブサイトにおいては、日本の需要者を対象とした注文サイトとして機能していない。
さらに、乙第4号証、乙第5号証のウェブサイトは、外国法人であるWix.comLtd.(イスラエルが本社であり、被請求人がウェブサイトを設置したと主張している平成29年12月28日には、日本法人も設立されていない。日本法人である「Wix.comJapan株式会社」が設立されたのは2019年である。)が運営するサーバに開設したものである。また、乙第8号証のウェブサイトは、外国法人であるMetaPlatforms,Inc.(米国)が運営するサーバに開設したものである。
つまり、被請求人が主張する「使用事実」は、外国法人であるTetsu Globalが、外国法人(イスラエルや米国の法人)が運営するサーバに開設したものであり、その掲載内容についても、外国(例えば、台湾)における商取引に関するものである。
そのため、乙第4号証、乙第5号証のウェブサイトや、乙第8号証のウェブサイトに掲載されている商品が、日本国の領域内において商取引されるという事実が客観的に認められるなどの格別な事情が存在しない限り、その商品の商標は、日本国においてはその機能を発揮し得ず、その商標権の効力も及ばないと解さざるを得ない。
そうとすると、乙第4号証、乙第5号証、乙第8号証のウェブサイトに本件商標が掲載されたとしても、日本国において商標が使用されたことにはならない(取消2004-30952)。
まず、Tetsu Globalが運営する諸外国の店舗においては、日本語表記が用いられているが(甲18)、当該日本語表記は、日本国内の需要者向けでないことは明らかであり、その店舗が存在する国の需要者に向けたものである。また、乙第8号証においても、海外在住の需要者と日本語でのやり取りを行っている。
そうとすると、乙第4号証、乙第5号証が「日本語で記載されている」としても、そのことから直ちに、日本国内の需要者に向けたものであるということはできない。
次に、乙第5号証中の「JAPAN」の記載がなされた「日本の国旗(日の丸)」はリンクが機能していないのに対して、一部の国(例えば、台湾)の国旗はリンクが機能している。
つまり、日本国内の情報について、何らの開示もなされていないから、同号証に「JAPAN」の記載があるとしても、そのことから直ちに、日本国内の需要者に向けたものであるということはできない。
被請求人やTetsu Globalの店舗が日本国内に存在せず、ウェブサイトを介した通信販売等においても商品「菓子」を購入することができないことから、日本在住の顧客は、商品「菓子」の提供を日本国内で受けることができないことは明らかである。
換言すると、乙第4号証、乙第5号証、乙第8号証における使用商標に係る商品が、日本国内において、商業的効果を有するものとはいい難い。
そして、世界知的所有権機関(WIPO)が採択した「インターネット上の商標及びその他の標識に係る工業所有権の保護に関する共同勧告」(甲19)の要件に照らせば、乙第4号証、乙第5号証、乙第8号証の使用については、「日本国における使用を構成しない」というべきである。
(7)権利の濫用に該当しないこと
ア 不使用取消審判の請求が権利濫用になるかについては、知財高裁令和2年(行ケ)第10120号審決取消請求事件における「特段の事情」とは、知財高裁令和2年(行ケ)第10113号審決取消請求事件(乙15)における「商標権を妨害しない旨の合意」や知財高裁令和2年(行ケ)第10114号審決取消請求事件における「商標権についての不争義務」を意味するものである。
そして、請求人は被請求人との関係において、「本件商標権を妨害してはならない義務」や「本件商標権の有効性を争わない義務」を負うものではない。
そうとすると、請求人が、被請求人の本件商標の使用をあえて妨害するなどの特段の事情があるとは認められないから、請求人の審判請求が信義則に反するとか権利濫用になるということはあり得ない。
さらに、被請求人が日本国内で商品「菓子」を生産・販売していたことが証明できていない以上、本件商標が日本国内において被請求人のブランドとして周知・著名となっていることなど認められるものではない(乙11)。
そうとすると、請求人の審判請求が権利濫用に該当することはあり得ない。
イ 被請求人が主張する「背景事情」について
(ア)被請求人は、被請求人は本件商標、請求人は全身図形を主として使用している状況については、K氏とT氏は義理の従兄弟の関係であり、もともとはてっしぃ村社で働いていたことなどから、商標について平和的に住み分けてきたものであると主張するが、使用料を支払うことを条件として、浪漫座社が本件顔図形を使用しても、請求人商標に基づく権利行使を行わないことを約束し、本件商標の取得を承諾したのみである。
なお、請求人は、被請求人が本件顔図形を使用することについては、何らの約束も行っておらず、被請求人との関係において、平和的に住み分けなどという事情は一切存在しない。
(イ)被請求人は、請求人に義理を通すべく相談をもちかけたところ、突如として音信不通の状態となったと主張するが、請求人の審判請求の事実を被請求人が知った後においても、K氏と被請求人の代表者M氏とは電子メールのやり取りを行っており、2023年8月中旬に、K氏はT氏と電話でのやり取りを行っている。
(ウ)被請求人は、被請求人が外国の店舗で商品「タルト」に使用し周知となっている図形(以下、「シルエット図形」という。)について、請求人は、商願2023-075171(乙17)の出願を行ったと主張するが、被請求人が外国で使用したという証拠は提出されていない。
また、シルエット図形については、「てつおじさんのチーズケーキファクトリー」が、1994年のバレンタインデーに向けて、トリュフチョコレートを新発売するときに作成したものであり(甲5)、請求人は、2店舗を譲り受けたときから使用していたことから(甲20)、出願を行ったに過ぎない。
(エ)被請求人は、被請求人の本件商標及び「Uncle Tetsu」からなるブランドが、外国において周知・著名となっていると主張するが、本件商標の周知・著名性を裏付ける証拠は提出されていない。
また、「Uncle Tetsu」からなるブランドが、何を意図しているのか不明であるが、「Uncle Tetsu」の文字を有する商標登録出願を請求人が行った事実はなく、本件審判請求との関係性が不明である。
(8)まとめ
以上のとおり、被請求人の提出する証拠によっても、Tetsu Globalが通常使用権者であること、また、同人が要証期間内に日本国内において本件商標を商品「菓子」について使用していたことは立証されておらず、被請求人の答弁には理由がない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書及び上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第55号証(枝番号を含む。枝番号をまとめて引用するときは枝番号を省略する。)を提出した。
1 本件商標について
本件商標は、平成25年1月11日に浪漫座社により登録出願され、同年7月12日に設定登録されたものであるが、その後、令和4年2月17日に被請求人へ譲渡されたものである。
2 被請求人等について
被請求人は、令和3年4月21日に設立された法人であり、本件商標の出願人・前権利者であった浪漫座社より本件商標をはじめとした商標潅・洋菓子ビジネスの管理を引き継いでいるものである。なお、浪漫座社の取締役であるT氏は、被請求人の取締役も務めている(乙1、乙2)。
また、浪漫座社及び被請求人の関連会社として、Tetsu Globalがあり、T氏がDirectorを務めているほか、被請求人の代表取締役であるM氏もDirectorを務めている(乙3)。
浪漫座社、被請求人及びTetsu Globalは、いずれの会社もT氏・M氏のどちらかによって株式が保有されており、かつ、両者の他に取締役等は存しないため、浪漫座社、被請求人及びTetsu Globalは実質的に同じ経営支配状況にあるといえる。
このような中、浪漫座社は、Tetsu Globalに対して本件商標の使用について黙示の許諾を与え、使用を継続させていたものであり、本件登録の権利移転後は、被請求人が同様にTetsu Globalに対して本件商標の使用について黙示の許諾を与え、使用を継続させているものである。
3 本件商標の使用について
本件商標の通常使用権者、Tetsu Globalは、本件ウェブサイトにおいて、要証期間に、日本国内において、本件商標の指定商品である「菓子」に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供していた(商標法第2条第3項第8号、同法第50条第2項 乙4、乙5)。
4 証拠資料の詳細説明
本件ウェブサイトは平成29年12月28日より設置された(乙6)。なお、同ウェブサイトの編集履歴について、いつ時点での最終日かがわかるよう、首相官邸ウェブサイトの令和5年9月7日付の「首相の一日」ページと合わせてスクリーンショットを撮影した。これにより、令和5年9月7日時点における同ウェブサイトの編集履歴の最終日が令和2年9月15日であることがわかる(乙7)。
外部の無料ウェブサイト作成サービス・WIXを用いて作成されていることを考慮すると、レンタルサーバーの更新忘れでサイトがアクセス不可になるなどのトラブルも生じ得ない。また、通常使用権者において、編集履歴の最終日である令和2年9月15日以降にアップロードを一時的に中止するなどの恣意的な行為を行うインセンティブもない。したがって、少なくとも最終の編集履歴が残っている令和2年9月15日以降は、本件ウェブサイトの写しを取得した令和5年9月7日まで同じ内容で電磁的方法により提供され続けてきたと考えるのが自然であり、事実である。
次に、日本国内における使用である点であるが、乙第4号証及び同5号証は日本語で記載されている。また、乙第5号証には「JAPAN」の記載もあり、日本国を本ウェブサイトの対象としていることがわかる。
続いて、主体的要件についてであるが、上記2のとおり、本件ウェブサイトの使用主体であるTetsu Globalは、浪漫座社及び被請求人と役員をはじめとした経営支配状況を同一とする関連会社であり、当然ながら、商標権者であった浪漫座社の許諾を得て本件商標を使用していたものである。また、本件登録移転後は現権利者である被請求人の許諾を得て本件商標の使用行為を行っている。
そして、登録商標の指定商品についての使用については、乙第4号証に掲示されているチーズタルトに、焼き印の形で、本件商標が使用されている。また、プリンについても、スカーフの色彩のみ異なる色違い類似かつ社会通念上同一といえる本件商標が使用されている。チーズタルト及びプリンが本件登録の指定商品「菓子」に含まれることは立証を要さない顕著な事実である。
また、チーズタルトについて「オーストラリア産のクリームチーズをふんだんに使用し、じっくりと焼き上げたこだわりのタルト。なめらかな口どけ、ミルクの豊かな風味とコク、まろやかな味わいと爽やかなレモンの酸味をお楽しみ下さい」、プリンについて「新鮮な卵をふんだんに使ったとろ~り、ほろ苦いキャラメルソースと甘いカスタードプリンがよく合います」といったように、それぞれの商品には、指定商品「菓子」についての広告的な宣伝文句が並記されている。
さらに、乙第4号証及び乙第5号証のそれぞれの冒頭にも、本件商標と、スカーフの色彩及び帽子のしわの数のみ異なる社会通念上同一視できる商標が使用されている。すなわち、本件商標の指定商品である「菓子」に関する広告を内容とする情報に本件商標を付して電磁的方法により提供している。
加えて、補足的に、乙第5号証に係るウェブページにおいて、最新情報が確認できる形式のバナーリンクが貼られているfacebookページも提出する(乙8)。少なくとも冒頭の画像が差し替えられた平成28年6月28日以降は、本件商標を冒頭に掲げる形で「菓子」についての情報発信が行われており、バナーリンクが張られていた本件ウェブサイトと使用状況が整合する。
5 補足的主張
(1)通常使用権者の認定について
商標権者と通常使用権者の役員関係を共通としている場合に、使用許諾を示す契約書等の提出がないとしても、黙示の許諾を与えていたものとして認定した審決例を挙げる(乙9、乙10)。
(2)ウェブサイトにおける広告的使用について
「上記ウェプページは、米国サーバーに設けられたものである上、その内容もすべて英語で表示されたものであって、日本の需要者を対象としたものとは認められない。」として、日本国内における使用とはいえないという根拠により使用証拠として認めなかった裁判例がある(乙11 知財高裁平成17年(行ケ)第10095号)。
この点、本件商標については、一部英語での記載もあるものの、広告・宣伝文句をはじめとしてそのほとんどが日本語による記載となっており、日本の需要者を対象としたものであることは明らかである。
6 本件審判に関する背景事情について
本件商標のもととなる旧商標(乙13)の図形部分(以下「被請求人全身図形」という。)は、同商標の権利者であったてっしぃ村社の代表取締役であり(乙12)、本件商標の出願人であり登録時の権利者である浪漫座社の単独の取締役であり(乙1)、被請求人の取締役でもあるT氏の顔をモチーフとして(乙2)、てっしぃ村社の事業への活用のため、同社により1970年代に作成されたものであり、自身の名前から「てつおじさんのチーズケーキ」とネーミングしたチーズケーキについて使用したのがその始まりである。
具体的には、T氏をモチーフとしたキャラクターを元に、てっしぃ村社として開発したものである。「てつおじさんのスイートファクトリー」という屋号のもとで行われた「てつおじさんのチーズケーキ」の販売にあたっては、旧商標が使用されており、「てつおじさんのチーズケーキ」には焼き印として被請求人全身図形が表示されていた。
T氏は、1972年に福岡県福岡市博多区にパブ「花じゃむ」を開店して以降、同中央区にある親不孝通りを中心として店舗を拡大していき、そのチェーン店は「てっしー村」と呼ばれた(乙18、乙19の1)。
1979年に親不孝通りのプレイマップを発行しているが、そこで本件商標のもととなるキャラクターが使用されている(乙19の2)。このキャラクターは、てっしぃ村社が、同社社員などの協力を得ながら開発したものであり、1979年に商標登録出願もしている(乙20)。
K氏は、T氏と義理の従兄弟であった縁で1980年にてっしぃ村社に入社、1995年に同社を退社し、2000年に請求人である法人を設立し、てっしぃ村社から当時4店舗あった「てつおじさんのスイートファクトリー」のうち 2店舗の経営権を譲り受けたものである。
てっしぃ村社発行の当時の領収証は、その但書に「てつおじさんのスイートファクトリー加盟金として」との記載があり(乙21)、これがブランド自体や被請求人全身図形の著作権を譲り渡したものでないことは明白である。
その後、2011年に台湾台北駅での出店の話を皮切りに、浪漫座社が「Uncle Tetsu」という商標と共に使用を開始したのが本件商標である。具体的には、浪漫座社が、被請求人全身図形をベースに、同社取締役夫人の実妹にデザイン委託し、用い始めたものである。さまざまな経緯があり、被請求人は本件商標、請求人は全身図形を主として使用している状況ではあったが、これは、K氏がT氏と従兄弟の関係であり、もともとはてっしぃ村社で働いていたことなどから、平和的に住み分けてきたものである。
7 本件商標の外国における周知、著名性について
浪漫座社及び被請求人は「Uncle Tetsu」及び本件商標からなるプランド(以下、「本件ブランド」という。)についての管理業務を段階的に移行している状況である。
本件ブランドは、2011年11月の台湾出店を皮切りに、中国、タイ、マレーシア、フィリピン、カナダ、香港、アメリカ、韓国、オーストラリア、ミャンマー、インドネシア、サウジアラビア、ニュージーランド、パキスタン及びベトナムに出店している。
店舗数については、2023年5月時点で、乙第22号証のとおりであり、特に、カナダ及びアメリカといった北米圏での認知が高い。コロナ禍が一段落したこともあり、現状フランチャイズ加盟の引き合いも再加熱しており、今後はさらに出店ペースが上がっていく見込みである。
売上について、2020年以降は世界的にコロナウイルスが蔓延した年という特殊事情があるため、その直前の年である2019年時点での代表的な国々の売上は以下のとおりである。
カナダ:1,340万7,207.17カナダドル(11億2,338万9,888.77円)
サウジアラビア:547万6,111.79米ドル(5億9,996万2,807.71円)
アメリカ:509万9,438.12米ドル(5億5,869万4,440.43円)
オーストラリア:390万4,074.16豪ドル(2億9,873万9,754.72円)
各国(地域 ※審決注:職権により追記。)における、商品、店舗、ウェブサイト、ロケーション、宣伝広告及び報道についての使用状況は、以下のとおりである。
カナダ(乙23~乙25)、米国(乙26~乙28)、台湾(乙29~乙31)、アラブ各国(乙32~乙34)、ミャンマー(乙35~乙37)、ベトナム(乙38~乙40)、オーストラリア(乙41~乙43)、インドネシア(乙44~乙46)、ニュージーランド(乙47~乙49)、パキスタン(乙50~乙52)
また、浪漫座社及び被請求人は、本件ブランドを保護すべく、乙第53号証及び乙第54号証に示す国々(地域 ※審決注:職権により追記。)で商標登録を行っている。実際に使用している国はもちろんのこと、冒認登録を防ぐべく、引き合いがあった国については積極的に出願・登録を進めている。
このように、本件プランドはカナダをはじめとした諸外国において本件審判請求時から現在に至るまでを含む期間において、浪漫座社・被請求人の出所識別標識として周知な商標である。
8 請求人の不正の目的について
請求人が本件審判を請求したこと、そして、請求人名義で本件商標の色違い商標である商願2023-061795の出願を行った背景には(乙16)、このような外国周知の状況を知り、それを自社のものにしようとした不正の目的が存在するものと考えられる。
なお、被請求人は、同出願が不正の目的に基づくものであり、商標法第4条第1項第7号、同項第11号又は同項第19号を根拠として拒絶されるべきである旨主張する刊行物等提出書を提出した。
請求人は、答弁書に記載のとおり、被請求人保有の本件商標及び本件商標と同一の図形を含む登録第5790283号及び同6325545号に対して一斉に不使用取消審判や無効審判などの取消のアクションを仕掛けているが、これらのアクションは、時系列的には、被請求人が本年5月に電話にて請求人に日本(大分県、福岡県、滋賀県など)でのUncle Tetsu店舗の出店の話及び相互の商標の住み分けについて相談を行った直後のことであった。
当該電話に基づいて、2023年6月12日付にて被請求人代表者よりK氏に送付したメールの写しが乙第55号証の1である。このメールヘの添付物には被請求人の詳細な出店計画が記載されており(乙55の2)、これは、K氏との間で平和的な住み分け関係と個人的な信頼関係があったためである。
ところが、請求人は、上述の取消のアクションと軌を一にして、前述の商願2023-061795のみならず商願2023-075171の出願を行っている(乙17)。後者の出願に係る商標はシルエット図形であり、本件商標同様、浪漫座社の制作依頼によって創作し、著作権を浪漫座社に譲渡し、カナダをはじめ諸外国のUncle Tetsu店舗でタルトに使用されている外国周知の図形である。浪漫座社の開発に係る本件商標(の色違い商標)及びシルエット図形をこのタイミングで、請求人名義の下、出願したのは極めて不自然である。
事実関係を総合すると、請求人の一連のアクションは、本件商標を使用した日本での出店の話が来ているということを知り、それについてのライセンス料などを得ようという不正の目的、又は、本件商標が外国において周知となっており、ブランド価値が高まっていることを奇貨として、外国において築き上げた本件商標についての信用ヘフリーライド・盗み取りしようとする不正の目的に基づくものであるものと思料される。
以上のように、本件審判請求の動機は不正の目的に基づくものであると思料する。そして、そのような本件審判請求は、取消審判制度が何人も申し立てることができることに藉口して、専ら外国周知、著名商標の商標権者である被請求人を害する目的でしたものであるから、権利の濫用にあたるというべきであり、本件審判請求は却下されるべきである。
第4 当審の判断
1 被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
(1)乙第1号証は、浪漫座社の履歴事項全部証明書であるところ、浪漫座社は本店を福岡市におき、その取締役は福岡市在のT氏である。
(2)乙第2号証は、TETSU GLOBAL株式会社の履歴事項全部証明書であるところ、TETSU GLOBAL株式会社は本店を福岡市におき、その取締役は福岡市在のT氏である。
(3)乙第3号証は、香港の会社登記所に提出したTETSU GLOBAL LIMITEDのAnnual Returnと主張する書類であるところ、「Tetsu Global Limited」「徹思叔叔國際有限公司」等の文字が記載されているが、当該書証は、外国語で作成された文書と認められるところ、商標法施行規則第22条第6項で準用する特許法施行規則第61条第1項で規定する訳文が添付されていないことから、正確な内容を把握することができない。
(4)乙第4号証及び乙第5号証は、印刷日を「2023/09/07」とする本件ウェブサイトであるところ、丸眼鏡をかけ、コック帽をかぶり、顔の形状が真円に近く、短い頭髪が3本頭頂部から生えており、目、鼻及び口が顔の中心部にまとまっており、向かって右端の口唇から舌を出しほほえんでいる点を特徴とする人間の顔を表した標章(以下「使用商標」という。別掲2)が中央上部に表示されている。
また、同ウェブサイトにおいて、「てつおじさんの焼きたてチーズケーキ」とされる菓子の写真には「ふわふわあつあつのチーズケーキです」との説明が記載されており、「Cheese tarte」とされる菓子の写真には「オーストラリア産のクリームチーズをふんだんに使用し、じっくりと焼き上げたこだわりのタルト。」との説明が記載されており、また、「Pudding」とされる菓子の写真には「新鮮な卵をふんだんに使ったとろ~り、ほろ苦いキャラメルソースと甘いカスタードプリンがよく合います。」との説明が記載されている(乙4)。
さらに、「徹思叔叔國際有限公司」「Tetsu Global Limited」「このホームページは徹思叔叔國際有限公司が運営するUncle Tetsuの公式ページです。」等の記載があり、加えて、「各国のお問合せは下記をクリックしてください」の文字の直下には、日本国国旗を背景として、「JAPAN」及び「日本」と記載されている(乙5)。
(5)乙第6号証は、タイトルを「ウェブサイト」とする書面であるところ、「uncle-tetsu」「公開日2017年12月28日」の記載がある。
(6)乙第7号証には、更新日を「令和5年9月7日」とする「首相官邸」のウェブサイトが左側に表示され、その右側に最終更新日を「2020年9月15日」とし、使用商標が表示され、その直下に「UNCLE TETSU/WORLD」と記載されたウェブサイトが表示されている。
(7)乙第8号証は、印刷日を「2023/09/07」とするfacebookのページであるところ、第1葉に表示された菓子の写真上には「Tetsu Global.,Ltd./www.uncletetsu.com」の文字が記載されており、その下方には、使用商標が表示され、その直下に「Uncle Tetsu」と記載されている。
また、同ページ第2葉には、「Uncle Tetsuが住所を更新しました。」の記載の下方に、「Uncle Tetsu/2020年12月24日」の記載がある。
2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。
(1)本件商標及び使用商標について
本件商標は、別掲1のとおり、丸眼鏡をかけ、コック帽をかぶり、顔の形状が真円に近く、短い頭髪が3本頭頂部から生えており、目、鼻及び口が顔の中心部にまとまっており、向かって右端の口唇から舌を出しほほえんでいる点を特徴とする人間の顔を表した標章からなるものである。
他方、被請求人が本件ウェブサイトに表示して使用すると主張する商標は、別掲2のとおり丸眼鏡をかけ、コック帽をかぶり、顔の形状が真円に近く、短い頭髪が3本頭頂部から生えており、目、鼻及び口が顔の中心部にまとまっており、向かって右端の口唇から舌を出しほほえんでいる点を特徴とする人間の顔を表した標章からなるものである。
そうすると、使用商標は、本件商標とは全ての特徴が共通しており、構成の軌を一にする酷似する図形といい得るものであるから、両者は社会通念上同一の商標といえる。
(2)使用商品について
本件ウェブサイトの記載によれば、使用商品は、「チーズケーキ」「チーズタルト」及び「プリン」であるところ、いずれも「菓子」の範ちゅうに属する商品である。
したがって、使用商品は請求に係る指定商品に含まれる。
(3)使用者について
被請求人は、浪漫座社及び被請求人は、Tetsu Globalに対して本件商標の使用について黙示の許諾を与え、使用を継続させていた旨主張するが、乙第3号証に示された「MIZOKAMI Tetsushi」及び「MIZOKAMI Kimiyo」なる人物が乙第1号証及び乙第2号証に示されたT氏及びM氏とそれぞれ同一人物であることが証明されていない。
したがって、Tetsu Globalが本件商標権者より本件商標の使用を許諾された者(本件商標の使用権者)とは認められない。
(4)使用時期及び使用行為について
乙第4号証、乙第5号証及び乙第8号証の印刷日は、要証期間外であるため、要証期間においてこれらの書証に係るウェブサイト等が電磁的方法によって提供されていた(閲覧することでできた)事実が確認できない。また、これらの書証に係るウェブページ等に日本語で商品説明等が記載されているとしても、日本の需要者がどの程度閲覧していたのかも不明である。
なお、乙第8号証には、更新日と考えられる「2020年12月24日」の記載があるが、その近傍に「Uncle Tetsuが住所を更新しました。」の記載があることから、当該日付においては、登録されている住所が更新されたことを示すのみであり、当該日において同号証に係るFacebookが閲覧されたものとは認められない。
その他、被請求人の主張及び同人が提出した全証拠をみても、要証期間に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が、使用商標について請求に係る指定商品に使用した事実を確認することができない。
上記のとおり、被請求人である商標権者はもとより、本件商標の商標権に係る専用使用権者又は通常使用権者が、要証期間に本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標を請求に係る指定商品に使用した事実を確認できないことから、商標法第2条第3項各号における本件商標の使用の行為を認めることができない。
3 被請求人の主張について
被請求人は、請求人が被請求人保有の商標権について取消審判請求等を行ったこと、シルエット図形に係る商標について請求人が出願したことなどを挙げ、本件審判請求は、本件商標を使用した日本での出店の話が来ているということを知り、それについてのライセンス料などを得ようという不正の目的、又は、本件商標が外国において周知となっており、ブランド価値が高まっていることを奇貨として、外国において築き上げた本件商標についての信用ヘフリーライド・盗み取りしようとする不正の目的に基づくものであるから、権利の濫用として認められるものではない旨を主張している。
しかしながら、商標法第50条第1項は、「継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定しているところ、登録商標の不使用による取消審判の請求は、専ら被請求人を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情がない限り、当該請求が権利の濫用となることはないと解するのが相当である(知財3判平成20年6月26日、平成20年(行ケ)第10025号)。
この点、被請求人は、請求人の行為は、請求人と被請求人が電話で店舗出店の件及び商標の住み分けについて相談を行った直後であったため不自然である等と主張するが、請求人が被請求人に対し、例えば、法外なライセンス料を得ようとした事実等も見当たらず、また、「何人も」取消審判を請求することができることに照らせば、これらの点は、本件審判の請求が権利の濫用となるような具体的な事情に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を使用していた事実を証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、請求に係る指定商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の請求に係る指定商品についての登録は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-300371