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商標無効審判

2023-890056

アンクルテツ、アンクル、テツ

審判番号
2023-890056
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2019-127446
登録番号
6325545
請求日
2023年07月06日
審決日
2024年12月02日
公報発行日
2025年03月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】有限会社 バランス
  • 【請求人代理人】有吉 修一朗
  • 【被請求人】TETSU GLOBAL 株式会社
  • 【被請求人代理人】高橋 伸也
審判長/審判官
  • 審判長 大森 友子
  • 審判官 豊瀬 京太郎
  • 審判官 小俣 克巳
分類
T111 .261-ZC (W30) / T111 .262-ZC (W30) / T111 .263-ZC (W30) / T111 .271-ZC (W30) / T111 .22 -ZC (W30) / T111 .222-ZC (W30)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第15号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6325545号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 登録第6325545号商標の指定商品中、「洋菓子,チーズケーキ,クレープ菓子,プディング,クッキー,アップルパイ,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,アイスクリーム」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。

理由

理 由 1 本件商標 本件登録第6325545号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和元年9月30日に登録出願、第30類に属する別掲2に記載のとおりの商品を指定商品として、同2年11月25日に登録査定、同年12月7日に設定登録されたものである。 2 引用商標 請求人が、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第7号及び同項第19号に該当するとして引用する登録第5443659号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成23年7月7日に登録出願、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、同年10月7日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。 3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び令和6年10月11日付け審判事件上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第27号証(枝番号を含む。以下、枝番号を全て指すときは枝番号を省略する。)を提出した。 (1)請求の理由 本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第7号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効にすべきものである。 (2)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標について 本件商標の上段に配された図形部分を「本件図形」という。 イ 引用商標について 引用商標の下段に配された図形部分を「引用図形」という。 (ア)引用図形の使用について 1980年、請求人代表者であるK氏は、T氏が代表を務める株式会社てっしい村(以下「てっしい村社」という。)に入社した。 1983年、K氏は、てっしい村社のケーキ部門であるハナジャムの運営管理責任者を任されるようになった。 以後、K氏は、てっしい村社を退社する1995年まで、ハナジャムの運営管理責任者として、パティシエの管理、新商品の開発、新店舗の出店、マーケティングなどを行った。 K氏は、1989年末頃から新商品開発を始め、1990年春頃に、後にハナジャムの名物となるチーズケーキを完成させ、T氏のニックネームである「てつ」を冠した「てつおじさんのチーズケーキ」とネーミングを行った。また、同時期に「てつおじさんのロゴ(引用図形)」を完成させた。 なお、てっしい村社は、「てつおじさん」という名称と、引用図形を保護すべく、「てつおじさん」の文字を上段に配し、引用図形を下段に配した商標(甲3。以下「旧商標」という。)の商標登録を行った。引用商標と旧商標とは、実質的に同一であることは明らかである。 1991年、K氏は、ハナジャム公園通り店で「てつおじさんのチーズケーキ」の販売を開始し、一大ブームを巻き起こし、1994年には北海道から宮崎まで43店舗を展開するに至った(甲4)。 「てつおじさんのチーズケーキ」の販売にあたっては、旧商標を使用しており、「てつおじさんのスイートファクトリー」の全国展開に伴って、旧商標は日本全国で大々的に使用され、旧商標は取引者、需要者間で広く認識されるに至った。 また、「てつおじさんのチーズケーキ」には、焼印として引用図形が表示されており(甲5)、旧商標と共に、引用図形についても取引者、需要者間で広く認識されるに至った。 1995年、K氏は、てっしい村社を退社し、独立してサンドイッチ事業を始め、神戸サンド屋次郎丸店(以下「神戸サンド屋」という。)を開店した。 なお、K氏は、てっしい村社の退社後も、T氏やT氏の実妹や実弟との個人的な付き合いは続けており、特に、T氏の実妹や実弟とは、互いに経営の相談やアドバイスをする関係であった。 2000年、K氏は、有限会社バランス(請求人)を設立した。一方、「てつおじさんのチーズケーキ」の一大ブームは去り、「てつおじさんのスイートファクトリー」は全国で4店舗にまで縮小した。 てっしい村社の専務取締役でもあったT氏の実弟の提案で、請求人がてっしい村社から2店舗を有償で譲り受けた(甲6)。また、他の2店舗は、T氏の実弟が譲り受けた。 2004年、請求人は、神戸サンド屋で「てつおじさんのチーズケーキ」の販売を開始した。T氏の実弟が経営していた店舗が閉店し、2004年1月時点で、「てつおじさんのチーズケーキ」を販売しているのは、請求人の経営する店舗のみとなった。 請求人は、2010年頃から全国の百貨店やショッピングモールなどの商業施設で催事販売の展開を始めた(甲7の1~7)。その頃、商業施設のバイヤーから商標についての質問がきっかけで、旧商標の商標登録が2005年で失効していることが分かったものの、旧商標が請求人の商品を示すものとして広く知られていると考えていたこと(甲7の8)、2004年以降に旧商標を使用しているのは請求人のみであること、から再度の商標登録は行わなかった。 2011年1月頃、T氏より持ちかけられた台湾台北駅の出店の話しを請求人が断ったところ、T氏自身が出店したいとの申し出があり、T氏は請求人に対して技術指導を求めてきた。そのため、請求人は、T氏の実妹の長男を含む3人に対して、神戸サンド屋で2011年4月から3ヶ月ほど、チーズケーキの製造方法等の指導を行った。 なお、台北への出店の話や、T氏の実妹の長男への技術指導の話しの中で、K氏とT氏は、旧商標が失効しているために請求人が再登録すること、T氏は日本では出店を行わないこと、の約束を行った(甲8)。こうした約束に基づき、請求人は、2011年7月に引用商標の登録出願を行った(甲2)。 台北でのT氏の出店が成功だったこともあり、2012年6月に、T氏から請求人に対して「日本でも出店したい」との申し出があった。請求人は「T氏は日本では出店を行わない」との約束でT氏の実妹の長男らに技術指導を行っており、T氏の日本での出店を認めることは不本意であったが、K氏とT氏との個人的な関係も考慮して、請求人は、株式会社浪漫座(以下「浪漫座社」という。)に、引用商標の使用許諾を行った。商標の使用許諾を得た浪漫座社は、2012年にソラリア店ほか1店を開店したが、2017年に閉店した。 (イ)引用図形の周知性について 上記(ア)のとおり、「てつおじさんのチーズケーキ」の一大ブームによって、旧商標や引用図形は日本全国で使用され、1995年時点において周知性を獲得していた。 その後、2000年に「てつおじさんのチーズケーキファクトリー」の店舗を、請求人とT氏の実弟が譲り受けるが、2004年にT氏の実弟の店舗が閉店したことから、「てつおじさんのチーズケーキ」の一大ブームによって獲得した周知性は請求人が引き継いでおり、引用商標や引用図形は、請求人の業務に係る商品を指し示すものとして、取引者、需要者間で広く認識された商標であると認めることができる。 なお、請求人は、2000年以降現在に至るまで、譲り受けた2店舗に限らず、複数の店舗において継続的に引用商標や引用図形の使用を行っており、こうした永年の継続使用によっても、引用商標や引用図形が請求人の業務に係る商品を指し示すものとして、取引者、需要者間で広く認識された商標であると認めることができる。 (ウ)引用商標の使用許諾について 2012年7月に、K氏とT氏は、浪漫座社が2店舗を出店するにあたって、引用商標の使用許諾について話し合いの場を設け、使用料の支払いを条件として、請求人は浪漫座社に対して、引用商標の使用許諾を行った。 ここで、引用商標の使用許諾に関して、契約金として100万円、毎月の使用料として10万円と定め、支払がなされている。なお、備品の購入分を加算したり、減算したり、銀行支払い手数料を加算したり、減算したり、といった事情があり、毎月の支払い額は、必ずしも10万円とはなっていない。 また、使用料は、2012年9月分から2017年8月分までが支払われたが、2014年4月分までは浪漫座社から支払いがなされ、2014年5月分からはT氏が代表を務めるハナジャムから支払いがなされた(甲13)。 (エ)小括 旧商標と引用商標は実質的に同一であることからも、引用商標及び引用図形は、請求人の業務に係る商品を指し示すものとして、取引者、需要者間で広く認識された商標になっていたものと認められる。 また、浪漫座社が使用許諾を受けていたという事実から、浪漫座社としても、引用商標や引用図形は、請求人の業務に係る商品を指し示すものであると認めていたと考えるのが自然である。 ウ 本件図形について (ア)アサインバックについて 上記イ(ウ)のとおり、引用商標の使用許諾と共に、請求人は浪漫座社が本件図形を使用することについても承諾した。換言すると、請求人は、引用商標についての使用料を支払うことを条件として、浪漫座社が本件図形を使用したとしても、引用商標に基づく権利行使を行わないことを約束した。 また、引用商標についての使用料を支払うことを条件として、浪漫座社が本件図形の商標権を取得することを承諾し、登録第5597358号(以下「別登録」という。)のアサインバックに協力した(甲14)。 (イ)本件商標について 上記イ(ウ)のとおり、浪漫座社からは、2017年9月分以降の使用料の支払いがなされることはなく、2019年9月30日に、請求人に無断で浪漫座社は本件商標の出願を行った。 (ウ)被請求人への譲渡 本件商標及び別登録は、請求人に無断で浪漫座社から被請求人に譲渡された。 請求人としては、K氏とT氏との個人的な関係性を考慮して浪漫座社ヘの使用許諾を行うと共に、アサインバックに協力していたが、浪漫座社から被請求人への譲渡がなされた。 そのため、請求人のブランドを守るために、別登録に対して不使用取消審判を請求すると共に、本件商標に対して本件審判を請求するに至った。 (エ)小括 以上のとおり、浪漫座社が請求人から本件図形の使用についての承諾を得ていたという事実から、浪漫座社としては、引用商標や引用図形のみならず本件図形についても、請求人の業務に係る商品を指し示すものであると認めていたと考えるのが自然である。 エ 本件商標と引用商標の類否について (ア)外観について 引用図形の顔部分と本件図形とは、色彩の有無を除くと完全に一致しており、引用図形と本件図形とは外観において類似している。そのため、本件商標と引用商標とは外観類似である。 (イ)称呼について 引用図形が「てつおじさんのチーズケーキ」のロゴマークとして周知であり、かつ、本件図形が引用図形の顔部分と共通していることから、取引者、需要者が、引用図形及び本件図形を「てつおじさん」と認識する結果、引用図形及び本件図形からは「テツオジサン」の称呼が生じる。また、引用商標中の「てつおじさん」の文字部分からも「テツオジサン」の称呼が生じる。そのため、本件商標と引用商標は称呼が共通している。 (ウ)観念について 引用図形が「てつおじさんのチーズケーキ」のロゴマークとして周知であり、かつ、本件図形が引用図形の顔部分と共通していることから、取引者、需要者が、引用図形及び本件図形を「てつおじさん」と認識する結果、引用図形及び本件図形からは「テツという名前のおじさん」との観念が生じる。また、本件商標中の「Uncle Tetsu」の文字部分や引用商標中の「てつおじさん」の文字部分からも「テツという名前のおじさん」との観念が生じる。そのため、本件商標と引用商標は観念が共通している。 (エ)過去の事例 人等の全身図形と頭部(顔)のみの図形を比較した過去の事例では、商標同士は類似であるとの判断がなされている。そうとすると、公平性の観点からも、本件商標と引用商標とは類似であるとの判断がなされてしかるべきである(甲14の2、3、甲15の3~5、甲16の3~5、甲17の1、2、甲18の3、4、甲19の3~7、甲20の3~9、甲21の3~7)。 (オ)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観が類似し、称呼及び観念が共通している。 また、本件商標の指定商品のうち「洋菓子,チーズケーキ,クレープ菓子,プディング,クッキー,アップルパイ,菓子,パン」は、引用商標の指定商品「菓子及びパン」と同一又は類似である。 したがって、本件商標と引用商標は商標が類似すると共に、指定商品が同一又は類似するため、全体として類似することから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について 上記のとおり、引用商標及び引用図形は、本件商標の登録出願時において、少なくとも商品「チーズケーキ」について、請求人が使用する商標として広く取引者、需要者に認知されていたものである。 そのため、本件商標を使用したチーズケーキを含む菓子が請求人以外から提供される場合には、請求人が提供する商品と誤認混同するおそれがある。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第7号該当性について 浪漫座社は請求人と引用商標の使用許諾を締結していた経緯から、本件図形が請求人の業務に係る商品を指し示すものであることにつき熟知しているのであるから、本件商標は、請求人が永らく使用し信用を築いてきた「てつおじさんのチーズケーキ」のブランドに便乗し、利益の独占を図るために出願された剽窃的なものであることは疑う余地がなく、これが社会の一般道徳観念や公正な取引秩序を害し、公序良俗に反する商標に該当するものであることは明らかである。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第19号該当性について 上記のとおり、引用商標及び引用図形は、本件商標の登録出願時において、少なくとも商品「チーズケーキ」について、請求人が使用する商標として広く取引者、需要者に認知されていたものである。 そして、引用図形の顔部分と本件図形とは、色彩の有無を除くと完全に一致しており、本件商標は引用商標や引用図形と明らかに類似の商標である。 さらに、引用商標や引用図形は周知・著名な商標であったこと、及び上記(3)のとおり、浪漫座社は、本件図形が請求人の業務に係る商品を指し示すものであることにつき熟知しているのであるから、本件商標の出願時に、当然に引用商標や引用図形について知っていたといえる。 そうすると、浪漫座社が請求人の高い名声、グッドウィルにフリーライドする意思があることは明らかであるから、浪漫座社が本件商標の登録出願に際して、不正の目的があったことは容易に推認できる。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。 (6)令和6年10月11日付け上申書 ア 外国語で作成された乙号証について 商標法施行規則第22条第6項で準用する特許法施行規則第61条第1項に規定されているように、外国語で作成された文書を提出して書証の申出をするときは、取調べを求める部分についてその文書の訳文を添付しなければならないところ、乙第10号証、乙第11号証、乙第12号証の4、乙第14号証の4、乙第20号証、乙第21号証の3、及び、乙第38号証の1が外国語で作成され、かつ、訳文が添付されていないため、内容が不明であるため、何ら証明がなされていない。 イ 乙第6号証について 被請求人は、登録第3064039号(甲3号証)の権利者であった、てっしい村社の履歴事項全部証明書として、乙第1号証を提出している。また、てっしい村社が商標登録出願を行っていると主張し、乙第6号証を提出している。 しかしながら、乙第1号証によると、会社設立年月日が「昭和57年4月1日」であり、乙第6号証の出願日(昭和54年9月7日)よりも後に設立されている点を指摘しておく。 ウ K氏とT氏夫人の関係性について 被請求人は、「これは、当然ながらK氏との間で個人的な信頼関係があるためである」などと主張しているが、否定する。T氏夫人は、餃子チェーン店等を運営していた有限会社を倒産させており、こうした経緯を踏まえると、住み分けの約束を信じることなどできない。 なお、K氏は、T氏とT氏夫人が1995年頃までは夫婦であると認識していたものの、てっしい村社が倒産した際に離婚したという噂を聞いており、戸籍上の婚姻関係にあるかどうかは知らない。 いずれにしても、K氏とT氏夫人とは個人的な付き合いは一切無く、信頼関係など存在しない。 エ 陳述書について (ア)T氏の実弟の陳述書(甲26の1)から、以下が明らかである。 a 溝上製菓が洋菓子の製造を行っていなかったこと b てっしい村社がK氏にケーキ部門の全てを任せていたこと c てつおじさんのチーズケーキをK氏が中心となり完成させたこと d T氏はチーズケーキの開発を行っていなかったこと e T氏はチーズケーキの製造に携わっていなかったこと (イ)T氏の実妹の長男の陳述書(甲26の2)から、以下が明らかである。 a 台湾出店の話しはT氏にあっていたこと b T氏は、ケーキ製造開発の技術がなかったこと オ 後記4(1)「本件商標の背景事情について」について (ア)パブ「花じゃむ」のメニューの1つとして、「ばくだんおにぎり(おにぎりの中身がかやくご飯で、外側を黒い海苔で全て包み、まんまるく握ったもの)」があり、こうした商品の宣伝広告に使用されていたのが、乙第6号証に記載のイラストである。なお、パブ「花じゃむ」は、アルコールの提供を前提とした飲食店であり、ケーキ部門「ハナジャム」とは、全く別物である。 また、K氏が、1990年頃に「てつおじさんのロゴ(全身ロゴ)」を完成させたことは、上記(2)イ(ア)のとおりであるが、詳しくは、乙第6号証のイラストを元に、K氏が、てっしい村社の企画室に所属していたM氏に依頼をして、具体的には、乙第6号証のイラストにコック帽とコックコートを着用させ、おにぎりをチーズケーキに持ち替えるように依頼をして、完成させたのである。 なお、「てつおじさんのチーズケーキ」という名称、及び、全身ロゴの完成後は、T氏の承認を得た上で、販売を開始した。 (イ)被請求人は、「K氏は店舗運営側の一スタッフの位置づけにすぎなかった」などと主張するが、T氏の実弟の陳述書(甲26の1)からも、こうした主張が誤りであることが分かる。 てっしい村社取締役兼営業部長は、主に居酒屋部門の責任者として尽力され、居酒屋の展開に大きく貢献された人物である。しかしながら、居酒屋部門とケーキ部門とは全くの別物であり、ケーキ部門にはほとんど関係していない。 また、てっしい村社社員は、ケーキ部門の配送のアルバイトとして採用された人物である。勤務態度が真面目であったので、数ヶ月後に社員採用となり、K氏の部下として、チーズケーキの製造を担当していたものの、企画やマーケティングを担当したことはない。 (ウ)被請求人は、「K氏がチーズケーキを完成させた点については否認する。主として開発に携わったのはT氏である」などと主張するが、両者の陳述書(甲26の1、甲26の2)からも、こうした主張が誤りであることが分かる。 当初(チーズケーキを提供する前)のケーキ部門「ハナジャム」は、東京都渋谷区にあった「プラステンシー」という洋菓子店から技術指導を受けたケーキ類を販売していたにすぎなかった。つまり、プラステンシーで開発されたケーキ類(ストロベリーショートケーキ、チョコレートケーキ、抹茶ケーキが代表であった)を、販売店の名称を「ハナジャム」として販売しているにすぎなかった。なお、プラステンシーの技術指導を受けたのは、ケーキ部門に所属していた者であり、T氏ではない。 1989年頃、新聞記者の紹介で、天文館(鹿児島)の「モンハイム」というケーキ屋から、K氏らが技術指導を受けた。こうした技術指導で得た技術をヒントにして、K氏は試行錯誤を繰り返してチーズケーキを完成させたのである。 T氏は、代表者としてケーキ部門に顔を出すことはあったが、チーズケーキの開発には一度も携わったことがなく、メニュー開発の全てをK氏が担当していた。また、T氏は、チーズケーキの製造にも一度も携わったことがなく、チーズケーキの製造は、K氏の監督下において行っていた。 (エ)被請求人は、「当初請求人のところに台湾出店の話が来たところ、請求人は出さないがどうするかという形でT氏のもとに話をもってきたもので、主客逆転している」などと主張するが、T氏の実妹の長男の陳述書(甲26の2)からも、こうした主張が誤りであることが分かる。 仮に、K氏に持ちかけられた話しであれば、そもそもT氏が台湾まで断りに行く理由が存在しない。 (オ)被請求人は、「T氏が請求人との間で約束した内容としては、請求人の営業地域たる福岡市で出店を行わないというものであった」などと主張するが、否定する。 福岡市内に限って出店を行わない、ということであれば、引用商標(甲2)を請求人が登録することをT氏が認めるのは不自然であり、また、その登録に関して、アサインバック時に指摘がなかったことも不自然である。 (カ)被請求人は、「当時K氏の認識としては、自身の出店している福岡市では「てつおじさんのチーズケーキ」と全身図形、それ以外ではT氏の「UncleTetsu」と本件図形という住み分けがなされており」などと主張しているが、否定する。K氏の認識は、上記(2)イのとおりである。 (キ)被請求人は、「あくまでT氏を中心とする浪漫座社・被請求人側の事情によるアクションであり、それが被請求人に対して特段影響を与えることはない」などと主張しているが、上記ウのとおり、T氏夫人とは信頼関係がなく、住み分けの約束など信じることができず、請求人のブランドを守る必要が生じたので、審判請求を行ったのである。 カ 後記4(2)「本件商標が外国において周知・著名である点について」につき、以下のとおり、反論する。 被請求人は、「本件商標が外国において周知・著名な商標である」と主張し、その裏付けとして、乙第10号証ないし乙第43号証を提出している。 しかしながら、以下のとおり、その大半は周知性の裏付けにはなり得ない。 乙第10号証は浪漫座社が作成し、乙第11号証は被請求人が作成したリストであり、客観性が全くない。 乙第12号証、乙第13号証、乙第15号証、乙第16号証、乙第18号証、乙第19号証、乙第21号証、乙第22号証、乙第24号証、乙第25号証、乙第27号証、乙第28号証、乙第30号証、乙第31号証、乙第33号証、乙第34号証、乙第36号証、乙第37号証、乙第39号証、及び乙第40号証は、被請求人自身のSNS又は被請求人自身のウェブサイトであり、周知性の裏付けとなるものではない。 乙第14号証の7、乙第17号証の1、乙第23号証、乙第26号証、乙第29号証の3、乙第35号証の2、及び乙第35号証の3は、日本人向けに日本語で掲載されたウェブサイトであって、外国における周知性の裏付けとなるものではない。 乙第42号証、及び乙第43号証は、各国の登録情報にすぎず、周知性の裏付けとなるものではない。 そうとすると、被請求人が出店していると主張している国(地域 ※審決注:職権により追記、以下同じ。)における使用事実として、検討に値するのは、台湾(乙20)、カナダ(乙14の1~乙14の6、乙14の8)、アメリカ(乙17の2)、インドネシア(乙35の1)、ニュージーランド(乙38)、パキスタン(乙41)、ベトナム(乙29の1、乙29の2)のみであり、最も使用事実が多いカナダについても、わずか7件にすぎない。 結局、被請求人は、自身のSNS、ウェブサイトを中心として使用事実を提出したにすぎず、「被請求人製品の宣伝広告費」「各国における同業者中の売上ランキング」「第三者が関わった資料(広告を掲載した雑誌社の証明など)」「被請求人製品の市場規模」「被請求人製品の市場シェアに関する資料」「各国の消費者のアンケート調査」等は何ら提出されておらず、全ての国における周知性の立証が何らできていない。 なお、被請求人が主張する2019年の売上についても、客観的な証拠資料は何ら提出されておらず、一切の立証がなされていない。 また、被請求人は、異議2023-900282号においても、本件商標について、本件審判における主張とほとんど同じ主張を行っている。これに対して、異議の決定において、「引用商標が、申立人及び浪漫座社の業務に係る商標として、我が国及び外国の需要者の間に広く認識さえているものと認めることはできない」旨の判断が示されている(甲27)。 キ 商標法第4条第1項第11号該当性について 上記(2)のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。 被請求人は、「アサインバックでの解決が図られていた」などと主張しているが、請求人が協力することはあり得ないため、被請求人の願望にすぎない。 また、外国周知を前提とした被請求人の主張は、全て失当であり、検討する価値すらない。 4 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第47号証(枝番号を含む。以下、枝番号を全て指すときは枝番号を省略する。)を提出した。 (1)本件商標の背景事情について 本件図形のもととなる旧商標の図形部分(以下「全身図形」という。)は、旧商標の権利者であったてっしい村社の代表取締役であり(乙1)、本件商標の出願・登録時の権利者である浪漫座社の単独の取締役であり(乙2)、被請求人の取締役でもあるT氏の顔をモチーフとして(乙3)、てっしい村社の事業への活用のため、同社により1970年代に作成されたものである。 T氏は、1972年に福岡県福岡市博多区にパブ「花じゃむ」を開店して以降、同中央区にある親不孝通りを中心として店舗を拡大していき、そのチェーン店は「てつしー村」と呼ばれた(乙4、乙5の1)。1979年に親不孝通りのプレイマップを発行しているが、そこで本件商標のもととなるキャラクターが使用されている(乙5の2)。 このT氏をモチーフとしたキャラクターは、てっしい村社が、同社企画部所属社員の協力を得ながら開発したものであり、1979年に商標登録出願もされている(乙6)。 1980年に、K氏がてっしい村社に入社した事実は認めるが、同氏の入社前に、このキャラクターが誕生していたこととなる。なお、K氏はT氏とは義理の従兄弟にあたる関係性であり、その縁で入社することになったものである。 K氏が、1983年から1995年まで「ハナジャム」という屋号の店舗の運営管理責任者としてパティシエ管理、新商品開発、新店舗の出店、マーケティングなどを行ったとの記載については、ニュアンスが異なるため否認する。 同氏が「ハナジャム」の運営管理を行っていたのはそのとおりであるが、特に、「新店舗の出店、マーケティング」など実質的な経営活動については当時てっしい村社取締役兼営業部長、同社企画部員及び同社社員を中心として行っていたものであり、K氏は店舗運営側の一スタッフの位置づけにすぎなかった。 K氏がチーズケーキを完成させた点については否認する。主として開発に携わったのはT氏である。 T氏は製菓店の生まれであり、幼少の頃から父親を手伝ってお菓子を作っており(乙7)、洋菓子に慣れ親しんでいたこともあり、ハナジャムにおいて洋菓子販売事業を行っていた。 この当時、生ケーキといえば濃厚なフランスタイプのものが主流であったところ、軽くフワっとした食感のアメリカンタイプのケーキに着目し、東京のケーキブランドの技術ライセンスを受けてハナジャムのケーキのテコ入れをした。これは一時的には成功したものの、やがてそのケーキの人気が下火になってきたため、着手したのがてつおじさんのチーズケーキである。具体的には、当時人気のあった他社チーズケーキの味の研究を行い、原材料の工夫など試行錯誤を行い、完成させ、自身の名前から「てつおじさんのチーズケーキ」とネーミングしたといった事情である。このようなT氏の背景・苦労がある中で、あたかもK氏が完成させたかのように主張することは不当である。 K氏が全身図形を完成させた点についても否認する。全身図形は、T氏をモチーフとしたキャラクターを元に、T氏監修の下、てっしい村社の企画部所属社員の協力を得ながら、てっしい村社として開発したものである。 全身図形は、先述のT氏をモチーフとしたキャラクターの派生版であり、このロゴ開発に当たっては、てっしい村社の代表取締役であるT氏の意向が大きく関わっているものであった。T氏自身がモチーフとなっていて、自身が代表取締役の地位にいたわけであるから、開発に大きく関わっていると考えるのが自然であるし、一店舗の運営に関わっているだけのK氏が完成させたというのは極めて不自然である。 てっしい村社が「てつおじさん」の語を上段に、全身ロゴを下段に配置した商標の商標登録を行った点は事実であり、認める。 K氏が、ハナジャム公園通り店で「てつおじさんのチーズケーキ」の販売を開始した点は否認する。なぜならば、「てつおじさんのチーズケーキ」の販売を開始したのはてっしい村社であり、K氏ではないためである。通常、法人がその活動の一環として商品を販売開始した際には、当該法人が商品販売を開始した、と表現するのが通常で、本件実態でもあるにも関わらず、主語をK氏としたのは極めて不自然である。 1994年には北海道から宮崎まで43店舗を展開するに至った点は認めるが、上記の点同様、その展開主体はてっしい村社であり、東京所在の広告代理店と組んで展開していた。先述のように、新店舗の出店・マーケティングについては同社社員を中心として行われていたものであり、K氏は同社の1スタッフにすぎなかった。同氏が中心的に活躍していたのだとすれば、その翌年に退社するような事態は考えにくい。 「てつおじさんのチーズケーキ」の販売に当たっては、旧商標が使用されており、「てつおじさんのチーズケーキ」には焼き印として全身図形が表示されていた点は認める。 一方、「てつおじさんのスイートファクトリー」の全国展開に伴い、取引者、需要者間で広く認識されるに至った点については、てっしい村社の出所を指し示す出所識別標識として、1994年当時、取引者、需要者間で広く認識されていた点は認めるが、あくまでてっしい村社の出所識別標識としてであり、かつ、1994年当時という留保付きとなる。 1995年にK氏がてっしい村社を退社し、独立して神戸サンド屋を開店した事実は認める。なお、神戸サンド屋はフランチャイズチェーンであり、その1フランチャイジーとなったという整理になる。 てっしい村社退社後、K氏がT氏と個人的な付き合いがあった事実は認める。前述のように二人は義理の従兄弟の関係性にあり、てっしい村社で代表取締役と社員の関係性でもあったから、個人間の信頼関係があったということがいえる。 一方、T氏の実弟及び実妹が、K氏と個人的な付き合いがあったかどうかは、不知である。 2000年にK氏が有限会社バランス(請求人)を設立した事実、また、同年「てつおじさんのスイートファクトリー」が全国で4店舗にまで縮小していた事実は認める。 一方、請求人がてっしい村社から2店舗を譲り受けた点については、てっしい村社の展開する「てつおじさんのスイートファクトリー」のうち2店の経営権を譲り受けたものであり、ブランド自体や全身図形の著作権を譲り受けたものでないことは明白である(甲6)。 2000年以降の店舗開店・閉店に関する情報については認める。 2010年頃から請求人が催事販売展開を開始したことは、甲第7号証にて立証されている範囲で認める。 一方、旧商標の失効を知り、請求人が再登録しなかった理由については請求人の思考の内容であるので不知であるが、2000年に4店舗にまで減っており、2006年からこの時点までは1店舗しかなかった店舗のブランドについて、広く知られているという記載は不自然である。 もし本当に周知性を維持しているブランドだったとすれば、速やかに再度保護しようとするのが通常の考え方であり、そうしなかった理由としては、てっしい村社及びT氏のブランドであるため、自身で登録するのは不自然と考えていたか、あるいは、周知性がすっかり失われており保護の必要性を感じなかったと考えるのが合理的である。後述のように、再登録に際しT氏の許諾を得ている点を考慮すると、少なくとも前者が理由の一つであったことは合理的に推定できる。 2011年にT氏が台湾台北駅での出店の話を持ち掛けたが請求人は断ったという点については、否認する。これは、当初請求人のところに台湾出店の話が来たところ、請求人は出さないがどうするかという形でT氏のもとに話をもってきたもので、主客逆転している。 前述のように、K氏とT氏は個人的な付き合いを続けていたほか、そもそも全身図形をはじめとする一連のキャラクターはT氏がモチーフで、T氏が代表取締役を務めるてっしい村社で使用してきたものなので、K氏も「てつおじさんのチーズケーキ」ブランドがてっしい村社及びT氏のものだと理解しており、同氏がT氏に話をもちかけたことは自然である。 なお、T氏は当初台湾へ断りに行ったのであるが、出店候補地がとても良い場所で、出店の話を受けることとしたものである。 この台湾出店に伴い、T氏が技術指導を請求人に求め、2011年4月から3か月ほど、技術指導を受けた事実は認める。 また、旧商標が失効しているため、請求人が再登録することをT氏が認めたこと及びその約束に基づいて請求人が全身図形の出願を行ったことは認める。これはK氏との個人的関係を考慮し、実際に店舗で使用している点などおもんぱかって文字どおり再登録について承諾したものであり、いうまでもなく、ブランド自体の譲渡や、著作権の譲渡について承諾したわけではない。 一方、T氏が日本で出店を行わない旨の約束をしたことは否認する。なぜならば、T氏が請求人との間で約束した内容としては、請求人の営業地域たる福岡市で出店を行わないというものであった。このことは、甲第8号証においても「「福岡ではやらない」という約束」という形で明示されています。K氏とT氏との間では個人的な付き合いがあり、もともとはてっしい村社から始まっている、T氏のブランドという背景があるため、K氏としても自身の営業に影響のない範囲であれば、その使用を問題と思わなかったことは想像に難くないし、T氏としても、「てつおじさんのチーズケーキ」を細々と継続していたK氏の意思を尊重したのは自然である。 2012年6月に、T氏が請求人に対して日本での出店の話をもちかけた点は認める。これは、浪漫座社の台湾出店が大成功し、フランチャイズ加盟の話も多数押し寄せてくる中で、日本に「Uncle Tetsu」の店舗が無かったため、T氏の開発したチーズケーキの出発点である福岡市にそのシンボルとしての店舗を置く案が出た次第である。 また、請求人が、浪漫座社に、引用商標の使用許諾を行った点も認めるが、ニュアンスは補足する。浪漫座社及びT氏が代表を務める有限会社ハナジャムが、請求人に甲第13号証にあるような金員を支払っていた事実は認めるが、これは、上述の福岡市を除いては出店しない旨の約束があったがゆえ、あくまでK氏との個人的な関係性を考慮した義理立てとして支払っていたものである。 それを裏付けるものとして、乙第8号証にて日本出店当時の利用状況を示す。もちろん全身図形も使用しているものの、浪漫座社としては、あくまで外国で周知となった「Uncle Tetsu」ブランドと「本件図形」を前面に出したブランディング・マーケティングを行っていることがわかる。 2012年に浪漫座社がソラリア店、薬院店を開店した事実は乙第8号証のとおりであり、認める。 請求人が、本件図形の使用を承諾した点についてはニュアンスが異なり否認する。浪漫座社が外国で「Uncle Tetsu」商標と共に使用を開始し、周知なものとしたのが本件図形である。これは全身図形とはその外親が大きく異なるものであり、請求人の用いる全身図形との差別化のために、浪漫座社が、同社取締役夫人の実妹にデザイン委託し、作成したものである。 請求人がアサインバックに協力した点は認める。しかしながら、これはT氏との個人的な関係性、そもそもT氏がモチーフであり、T氏のキャラクターであるという認識などがあってのことであり、アサインバックの額面どおりの意味合いとはニュアンスが異なる。すなわち、当時K氏の認識としては、自身の出店している福岡市では「てつおじさんのチーズケーキ」と全身図形、それ以外ではT氏の「Uncle Tetsu」と本件図形という住み分けがなされており、特許庁の判断としてアサインバックを要するようになった際に、その住み分けどおりに協力することは自然なことであったものと思料する。上記使用料の話については、福岡市内での出店というテリトリー上の問題があったために生じたものにすぎない。 2019年に浪漫座社が本件商標を無断で出願した点については否認する。電話で、T氏がK氏に対して連絡を入れている。これも、両者の関係性を考えれば当然のことである。 浪漫座社から被請求人へ譲渡がなされたため、請求人ブランドを守るために別登録及び登録第5790283号に対して不使用取消審判を請求し、本件登録に対して本件審判を請求した点についても、客観的事実からすると極めて不自然な主張であるので、否認する。 実体面としては、浪漫座社は、T氏のチーズケーキ事業を取り扱ってきたのであるが、外国のフランチャイジーとの契約関係見直しの一環で、同事業の運営を段階的に被請求人に移行している状況にある。このことは、後述の両者保有の本件図形、Uncle Tetsu関連商標の保有状況とも整合するものである。すなわち、あくまでT氏を中心とする浪漫座社、被請求人側の事情によるアクションであり、それが請求人に対して特段影響を与えることはない。また、そのことは請求人も理解しているものと推察される。前述のように、T氏は、被請求人の取締役に名を連ねているし、K氏はT氏と縁戚関係にあり、T氏夫人がT氏の配偶者であることも当然に理解している(乙9)。 乙第9号証の1は、2023年6月12日付の、T氏夫人からK氏へのメールの写しである。このメールヘの添付物には被請求人の詳細な出店計画が記載されており(乙9の2)、これは、当然ながらK氏との間で個人的な信頼関係があるためである。また、その商標の住み分けについて誠実に話し合う姿勢も見られる内容であり、浪漫座社から被請求人への移転が本件審判のきっかけであったとの記載が詭弁であるということが理解できるものと思料する。 仮に浪漫座社と被請求人の関係性について不知であったための審判請求であったのだとすれば、上述のような事情であるから、個人的な付き合いのあるT氏との関係性は何ら変わるところがないので、速やかに本件審判請求を取り下げていただくよう、請求人に要請する。取り下げせず本件審判を継続するのであれば、浪漫座社から被請求人へ譲渡がなされたため、請求人ブランドを守るために本件審判請求を行ったとの主張が虚偽であることを自認することとなる。 浪漫座社が、本件図形について、請求人の業務に係る商品を指し示すものであると認めていたと考えるのが自然、との主張については否認する。 本件図形は、T氏をモチーフとしたキャラクターをもとに、浪漫座社が最初に採択したデザインであり、むしろ「てつおじさんのチーズケーキ」の全身図形と住み分ける意図もあり「Uncle Tetsu」という文字と共に採択したものである。 したがって、請求人の主張とは逆に、請求人の業務に係る商品と出所を区別するために採択したものである。請求人側としては、全身図形及び「てつおじさんのチーズケーキ」を福岡市において使用継続したいという動機があり、浪漫座社としては、外国周知となった本件図形及び「Uncle Tetsu」を使用したいという動機があったわけであるから、両社の認識として、それぞれは区別されるものであり、本件商標が請求人の業務に係る商品を指し示すものであるとは請求人も含め誰もが理解していなかったものと思料する。すなわち、請求人による主張は本件審判のための後付けの理屈である。 (2)本件商標が外国において周知・著名である点について 浪漫座社及び被請求人は「Uncle Tetsu」及び「本件図形」からなるブランド(以下「本件ブランド」という。)についての管理業務を段階的に移行している状況である。 ア 本件ブランド展開の沿革について 本件ブランドは、台湾出店がきっかけとなって開発されたものである。2011年11月の台湾出店を皮切りに、中国、タイ、マレーシア、フィリピン、カナダ、香港、アメリカ、韓国、オーストラリア、ミャンマー、インドネシア、サウジアラビア、ニュージーランド、パキスタン及びベトナムに出店している。 イ 店舗数について 本件登録出願時である2019年9月当時で、世界に53店舗存在した(乙10)。現在は、世界的なコロナ禍の影響もあり、2023年5月時点で乙第11号証のとおりである。 ウ 売上について 2020年以降は世界的にコロナウイルスが蔓延した年という特殊事情があるので、本件商標の登録出願の年である2019年時点での代表的な国々の売上は以下のとおりである。 カナダ:1,340万7,207.17カナダドル(11億2,338万9,888.77円) サウジアラビア:547万6,111.79米ドル(5億9,996万2,807.71円) アメリカ:509万9,438.12米ドル(5億5,869万4,440.43円) オーストラリア:390万4,074.16豪ドル(2億9,873万9,754.72円) エ 使用状況について 各国(地域)における、商品、店舗、ウェブサイト、ロケーション、宣伝広告及び報道についての使用状況は、以下の書証のとおりである。 カナダ(乙12~乙14)、米国(乙15~乙17)、台湾(乙18~乙20)、サウジアラビア(乙21~乙23)、ミャンマー(乙24~乙26)、ベトナム(乙27~乙29)、オーストラリア(乙30~乙32)、インドネシア(乙33~乙35)、ニュージーランド(乙36~乙38)、パキスタン(乙39~乙41) オ 浪漫座社及び被請求人は、本件ブランドを保護すべく、乙第42号証及び乙第43号証に示す国々(地域)で商標登録を行っている。実際に使用している国はもちろんのこと、冒認登録を防ぐべく、引き合いがあった国については積極的に出願・登録を進めている。 このように、本件ブランドはカナダをはじめとした諸外国において本件商標の登録査定時から現在に至るまで周知な商標であり、引用商標とは明確に区別される。また、請求人の一連のアクションも、このような外国周知の状況を知り、それを自社のものにしようとした不正の目的によるものであるものと考えられる。 (3)請求人の主張に対する反論 ア 商標法第4条第1項第11号該当性について 本件商標は、もともとT氏をモチーフとして作成され、てっしい村社が著作権を保有し、同社名義で登録していた旧商標の全身図形の顔部分をもとにアレンジされた本件図形と、その下に配置された「Uncle Tetsu」の文字からなるものである。 一方、引用商標は、てっしい村社が著作権を保有する全身図形に微細な調整を行った全身図形の上に、「てつおじさん」の文字を配したものである。 本件商標は、前述のとおり、外国において周知となっている商標である。特許庁商標審査便覧42.119.02(乙44)を念頭に、具体的な類否判断を行う。 外観について、本件商標と引用商標の文字部分は全く異なるし、図形部分も、顔が全面に印象付けられる本件商標と、チーズケーキのようなものを手にした全身のイメージが印象付けられる引用商標とでは需要者・取引者に与える印象が大きく異なる。 請求人の主張においては、全身図形の顔部分と本件図形が「色彩の有無を除くと完全に一致」としているが、本件図形の印象形成に大きく影響を与えているスカーフの有無といった差異もある。これに加え、文字や構図の相違など考慮すると、全体の印象が大きく異なり、類否判断の大原則である離隔観察を行った場合には非類似と判断するのが相当である。 なお、請求人が挙げている過去事例は、事例1においては本件図形の方に「Uncle Tetsu」との文字が配されていないもので否が応でも本件図形がその要部となるものであるので、本件商標を離隔観察した場合と同列に論じることはできない。 また、その他の事例は外国周知である本件商標とは事例を異にするため、本件を同列に論じることはできない。 仮に類似だとした場合でも、拒絶理由通知にその旨の指摘が入っていたとすれば、その当時のK氏とT氏の個人的な関係性を考慮すると、別登録の登録時と同様、アサインバックでの解決が図られていたものと思料する。 本件商標は、国際登録の基礎とすることを目的として出願されたものであり、福岡市と外国との住み分けの約束にも触れるものでないため、請求人側があえてアサインバックの申し出を断る理由もないためである。被請求人としては、本件商標は外国周知であるほか、引用商標との間での文字や構成の相違が大きいため、全体の印象も大きく異なる非類似の商標との認識であるが、仮に審査時に引用されていたらアサインバックで解決していたところ、それが看過され、請求人側が敵対的アクションを取っているこのタイミングで指摘されるのは、今や外国周知となり、国際登録の基礎としても活用されている本件商標についての現状を踏まえるとあまりに酷である。 アサインバックにより、登録査定時に名義が一致していれば、その後移転が行われたとしても問題がない。もちろん、商標法第4条第1項第11号違反を理由とする無効理由になることもない。この点、コンセント制度未導入の本件の登録査定時である2020年において、実質的にアサインバックが可能だった状況であったにも関わらず、後に指摘されたがために無効理由を抱えてしまうとすれば不条理である。 称呼について、請求人は、全身図形の周知性から本件図形からも「テツオジサン」との称呼が生じるとしているが、請求人が「図形部分から特定の称呼や観念が生じる」事例として挙げている知財高裁平成20年(行ケ)第10139号判決及び無効2010-890040審決は、周知・著名なキャラクター「キューピー」の事例であり、その周知性について丁寧に証明された上での認定である。 全身図形を付したチーズケーキについては、請求人の主張のとおり、本件商標の登録査定時である2020年の20年前である2000年の時点で全国に4店、2006年から2010年までは全国に1店のみといった状況で、2020年時点でも4店とのことである。このような使用状況で、周知性は生じない。 なお、仮に1994年のような全国43店舗における使用が継続的に行われていれば周知性を有するかもしれないが、それは継続されることなく、2000年時点では4店にまで縮小していたから、1994年の時点ではてっしい村社の商標として周知性が生じていたとしても、そこから20年を経過した本件商標の登録査定時においてはその周知性は失われていたと考えるのが自然である。 したがって、周知性のない全身図形からはもちろんのこと、本件図形からも「テツオジサン」との称呼は出ない。本件商標の本件図形からは特段称呼は生じない。一方、文字部分からは、「アンクルテツ」との称呼のみが生じる。 引用商標の全身図形からは特段称呼は生じない。一方、文字部分からは「テツオジサン」との称呼のみが生じる。 したがって、本件商標と引用商標の称呼は明確に非類似である。 観念について、請求人は、全身図形の周知性から観念の共通を謳っているが、上述のとおり、本件商標の登録査定時、全身図形は周知性を有していない。 したがって、周知性のない全身図形からはもちろんのこと、本件図形からも特定の確定的な観念は生じない。 「Uncle Tetsu」の語については、「Uncle」が「叔父」との意味を有しているので(乙45)、「叔父のテツ」「テツ叔父さん」といった意味合いとなるが、需要者・取引者にとって周知・著名な特定のそのような呼び名の人物がいるわけではないから、そこから特定の人物を観念するわけではない。 引用商標中「てつおじさん」の語についても、同様の事情であるので、そこから特定の人物を観念するわけではない。 したがって、本件商標と引用商標の観念は明確に非類似である。 このように、外観、称呼及び親念すべてが明確に非類似であるので、本件商標と引用商標は非類似の商標であり、商標法第4条第1項第11号には該当しない。 イ 商標法第4条第1項第15号該当性について 上記アのとおり、引用商標は請求人が使用する商標として周知であった事実はないから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号には該当しない。 ウ 商標法第4条第1項第7号該当性について 以上のとおり、全身図形はそもそもT氏をモチーフとして作成された、てっしい村社が創作した図形であり、当該図形の著作権の保有者もてっしい村社である。また、本件図形に関しては、全身図形をもとに浪漫座社取締役夫人の実妹が作成した著作物であり、浪漫座社又は被請求人を指し示す出所識別標識として登録査定時に外国で周知となっており、今現在もその状況が続いている。 このような状況下で、数あるてっしい村社の店舗のうちの2店舗についてその運営権を譲渡されただけで、全身図形に係る知的財産権については一切譲渡を受けていた事実のない請求人が、全身図形とは非類似で、査定当時浪漫座社の出所を指し示す外国周知商標であった本件図形について、あたかも自身の出所識別標識であるかのように主張しているのはまったく理のない話である。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しない。 なお、被請求人の外国周知商標である本件図形等について不正な目的で出願・登録を試みているのはむしろ請求人であり、請求人のそのような行為こそ社会の一般道徳観念や公正な取引秩序を害し、公序良俗に反するものと考える。 エ 商標法第4条第1項第19号該当性について アのとおり、そもそも引用商標は請求人が使用する商標として周知であった事実はない。また、ウのとおり、浪漫座社に不正の目的がなかったことも明らかであるので、本件商標は、商標法第4条第1項第19号には該当しない。 (4)請求人の不正の目的について 請求人は、別件の不使用取消審判(商標登録第5597358号取消審判事件、取消2023-300371)や本件審判と軌を一にして、商願2023-61795及び同2023-75171の出願を行っている(乙46、乙47)。 前者は、浪漫座社の創作・採択に係る外国周知の商標であり、後者も本件図形同様、浪漫座社の制作依頼によって同社取締役夫人の実妹が創作し、著作権を浪漫座社に譲渡した図形であり、カナダをはじめ諸外国のUncle Tetsu店舗でタルトに使用されている外国周知の図形である。 浪漫座社の開発に係る本件図形及び上記図形を、このタイミングで、請求人名義の下、出願したのは極めて不自然である。 また、請求人のこれらアクションは、時系列的には、被請求人が令和5年5月に電話にて請求人に日本(大分県、福岡県、滋賀県など)でのUncle Tetsu店舗の出店の話及び相互の商標の住み分けについて相談を行った直後のことであった。 なお、当該電話に基づいて送付したメールについては、乙第9号証として挙げたとおりである。 事実関係を総合すると、請求人の一連のアクションは、本件商標を使用した日本での出店の話が来ているということを知り、それについてのライセンス料などを得ようという不正の目的で、また、本件商標が外国において周知となっており、ブランド価値が高まっていることを奇貨として、これまでの平和的な住み分け関係を破壊し、外国において築き上げた本件商標についての信用ヘフリーライド・盗み取りしようとする試みであるものと思料される。 以上のように、本件無効審判の請求の動機は、不正の目的に基づくものであり、このような不正の目的に基づく本件審判請求については、専ら外国周知・著名商標の商標権者である被請求人を害する目的でしたものと認められるので、権利の濫用(民法第1条第3項)に当たるというべきであり、本件審判請求は成り立たないとされるべきものである。 5 当審の判断 請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認めるものであるので、本案に入って審理する。 (1)引用商標の周知性について ア 請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (ア)1980年(昭和55年)に、てっしい村社に入社したK氏は、1983年(昭和58年)には同社のケーキ部門であるハナジャムの運営管理責任者を任されるようになった。 以後、K氏は、てっしい村社を退社する1995年(平成7年)まで、ハナジャムの運営管理責任者として、新商品の開発等に携わった。 (イ)1991年(平成3年)に、ハナジャムにおいて「てつおじさんのチーズケーキ」と名付けたチーズケーキ(以下「使用商品」という。)の販売が開始され、使用商品を販売する店舗は、1994年(平成6年)には北海道から宮崎まで43店舗となった(甲4)。 (ウ)使用商品の販売に当たっては、引用商標と酷似する旧商標及び引用図形を使用している(甲5)。 (エ)2000年(平成12年)、K氏は有限会社バランス(請求人)を設立した。一方、使用商品の販売店は全国で4店舗となったが、以後、請求人は、複数店舗において、引用商標及び引用図形を使用している(請求人の主張)。 (オ)2004年(平成16年)、請求人は、神戸サンド屋で使用商品の販売を開始し、2010年(平成22年)頃からは百貨店やショッピングモールなどの商業施設で催事販売の展開を始めた(甲7の1~7)。 (カ)請求人は、2011年(平成23年)7月に引用商標の登録出願を行った(甲2)。 イ 判断 上記アによれば、以下の事実が認められる。 請求人が、我が国において1991年(平成3年)からK氏により販売が開始されたと主張する使用商品は、1994年(平成6年)には北海道から宮崎まで43店舗において販売されるに至ったこと、使用商品の販売に当たっては、引用商標とほぼ同じ構成からなる旧商標が使用されていること等が認められる。 しかしながら、使用商品の販売店舗は、1994年(平成6年)には、全国に拡大していたとしても、2000年(平成12年)には4店舗となり、その規模は徐々に縮小しているといわざるを得ない。 また、引用商標又は旧商標を使用した商品(使用商品)の販売額、広告宣伝費等についての主張及び証拠(市場におけるシェア、売上げランキング、需要者の評価)等の提出がなく、我が国における客観的な使用事実に基づいて、その使用状況を把握することができない。 以上からすると、引用商標について、本件商標の登録出願時及び登録査定時における客観的な需要者の認識を推し量ることができないことから、引用商標が、我が国及び外国において、請求人の出所を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認められない。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、本件図形を上段に配し、下段に「Uncle Tetsu」の欧文字を配した構成からなるものである。 そして、本件商標の全体を観察すると、本件図形は、人物の頭部を描いた図形からなるところ、丸眼鏡をかけコック帽をかぶり、顔の形状が真円に近く、短い頭髪が3本頭頂部から生えており、目、鼻及び口が顔の中心部にまとまっており、向かって右端の口唇から舌を出しほほえんでいる点を特徴とするものである。 他方、「Uncle Tetsu」の文字部分は、各語の語頭が大文字であること及び間にスペースを介してなることから、「おじさん」を意味する平易な英単語である「Uncle」と「Tetsu」の文字とを結合してなるものと容易に看取し得るものであり、当該文字部分全体からは「アンクルテツ」の称呼を生じ、「てつおじさん」の観念を生じるものといえる。 また、「Uncle Tetsu」の文字は、本件図形とは空間を介して配されているものの、本件図形と中心をそろえて真下にやや小さめの文字で表されている構成から、本件図形が表す人物の愛称を表したものと見るのが自然である。 以上を総合すると、本件商標は、本件図形と「Uncle Tetsu」の文字からなる結合商標であるところ、本件商標全体からは、「アンクルテツ」の称呼を生じ、愛称としての「てつおじさん」の観念を生じるものである。 イ 引用商標について 引用商標は、別掲3のとおり、上段に中抜き文字で「てつおじさん」の平仮名を配し、下段に引用図形を配した構成からなるものである。 そして、引用商標の全体を観察すると、引用図形は、直立した人物の全身を描いた図形からなるところ、丸眼鏡をかけコック帽をかぶり、顔の形状が真円に近く、短い頭髪が3本頭頂部から生えており、目、鼻及び口が顔の中心部にまとまっており、向かって右端の口唇から舌を出しほほえんでいる点を特徴とするものであり、当該特徴に加え、コックコートを身につけ、両手に持ったケーキが表されている。 他方、「てつおじさん」の文字部分は、「おじさん」が親しまれた平易な語であることから、「てつ」と「おじさん」の文字とを結合してなるものと容易に看取し得るものであり、当該文字部分全体からは「テツオジサン」の称呼を生じ、「てつおじさん」の観念を生じるものといえる。 また、「てつおじさん」の文字は、引用図形とは空間を介して配されているものの、引用図形と中心をそろえて真上にやや小さめの文字で表されている構成から、引用図形が表す人物の愛称を表したものと見るのが自然である。 以上を総合すると、引用商標は、引用図形と「てつおじさん」の文字からなる結合商標であるところ、引用商標全体からは、「テツオジサン」の称呼を生じ、愛称としての「てつおじさん」の観念を生じるものである。 ウ 本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標とを比較すると、両者は別掲1及び3のとおりの構成からなるところ、人物を描いた図形を構成中に有する標章にあって、看者の注意を惹き、強い印象を与える部分ということができる頭部の外観において、丸眼鏡をかけコック帽をかぶり、顔の形状が真円に近く、短い頭髪が3本頭頂部から生えており、目、鼻及び口が顔の中心部にまとまっており、向かって右端の口唇から舌を出しほほえんでいる点に特徴を有する点で共通していることから、商標全体としても互いに近似した印象を与えるものである。 次に、称呼において、本件商標から生じる「アンクルテツ」と引用商標から生じる「テツオジサン」の音構成から、明瞭に聴別し得るものである。 そして、観念において、両者からは、いずれも、「てつおじさん」の観念が生じることから、観念を共通にするものである。 してみれば、本件商標は、引用商標と、称呼においては明瞭に聴別し得るものの、外観において近似した印象を与え、観念において共通するものであるから、これらを総合的に勘案すれば、本件商標と引用商標を同一又は類似の商品に使用した場合は、需要者がその出所について混同を生ずるおそれがあるというのが相当である。 したがって、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのある類似の商標である。 エ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について 本件商標の指定商品中、「洋菓子,チーズケーキ,クレープ菓子,プディング,クッキー,アップルパイ,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,アイスクリーム」は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。 しかしながら、本件商標の指定商品中、「茶,コーヒー,コーヒー豆,ココア,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,パンケーキのもと,調味料及び香辛料,チョコレートを主原料としたスプレッド,弁当,すし,米,めん類,穀物の加工品,パスタソース」は、引用商標の指定商品とは非類似の商品である。 オ 小括 上記アないしエのとおり、本件商標は、引用商標と類似する商標であって、引用商標の指定商品と同一又は類似する「洋菓子,チーズケーキ,クレープ菓子,プディング,クッキー,アップルパイ,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,アイスクリーム」について使用するものである。 したがって、本件商標は、その指定商品中、「洋菓子,チーズケーキ,クレープ菓子,プディング,クッキー,アップルパイ,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,アイスクリーム」について、商標法第4条第1項第11号に該当する。 しかしながら、本件商標は、その指定商品中、「茶,コーヒー,コーヒー豆,ココア,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,パンケーキのもと,調味料及び香辛料,チョコレートを主原料としたスプレッド,弁当,すし,米,めん類,穀物の加工品,パスタソース」については、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品について使用するものではないから、商標法第4条第1項第11号には該当しない。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について 本件商標の指定商品中、「洋菓子,チーズケーキ,クレープ菓子,プディング,クッキー,アップルパイ,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,アイスクリーム」については上記のとおり、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同項第15号かっこ書き「第十号から前号までに掲げるものを除く。」の規定により同号には該当しない。 そこで、商標法第4条第1項第11号には該当しないとした、本件商標の指定商品中、「茶,コーヒー,コーヒー豆,ココア,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,パンケーキのもと,調味料及び香辛料,チョコレートを主原料としたスプレッド,弁当,すし,米,めん類,穀物の加工品,パスタソース」の同項第15号該当性について検討する。 ア 引用商標の周知性について 上記(1)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとは認められない。 イ 本件商標と引用商標の類似性の程度について 上記(2)ウのとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのある類似の商標であるから、両者の類似性の程度は高いといえる。 ウ 出所の混同のおそれについて 上記イのとおり、本件商標と引用商標の類似性の程度は高いといえるものであるとしても、上記アのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとは認められず、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品との関連性及び需要者の共通性を考慮したとしても、本件商標は、これを商標権者がその指定商品中、「茶,コーヒー,コーヒー豆,ココア,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,パンケーキのもと,調味料及び香辛料,チョコレートを主原料としたスプレッド,弁当,すし,米,めん類,穀物の加工品,パスタソース」に使用しても、取引者、需要者が引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じるおそれはないというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、その指定商品中、「茶,コーヒー,コーヒー豆,ココア,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,パンケーキのもと,調味料及び香辛料,チョコレートを主原料としたスプレッド,弁当,すし,米,めん類,穀物の加工品,パスタソース」についても商法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第19号該当性について 上記(1)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているとは認められない。 そうすると、引用商標が我が国の需要者の間に広く認識されていた商標であることを前提に、本件商標の登録出願は、浪漫座社が引用商標や引用図形について知った上で、請求人の高い名声、グッドウィルにフリーライドする意思があり、不正の目的をもって行われたとする請求人の主張は、その前提を欠くものである。 また、請求人が提出した証拠からは、本件商標の商標権者が、引用商標の信用にただ乗りし、引用商標の出所表示機能を希釈化し又は名声を毀損させるものというべき事実は見いだせないし、他に、本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実も見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (5)商標法第4条第1項第7号該当性について ア 商標法第4条第1項第7号の趣旨 商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(ア)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(イ)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(ウ)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(エ)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(オ)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(平成18年9月20日知的財産高等裁判所判決、平成17年(行ケ)第10349号参照)。 イ 本件商標の出願が剽窃的であるとする請求人の主張について (ア)本件商標の構成態様は、別掲1のとおりであり、その構成自体が非道徳的というものではなく、他の法律によってその使用が禁止されているものでもなく、国際信義に反するものともいえない。また、これを本件指定商品に使用することが社会公共の利益に反するというべき事情も見当たらない。 (イ)請求人は、本件商標は、請求人が永らく使用し信用を築いてきた「てつおじさんのチーズケーキ」のブランドに便乗し、利益の独占を図るために出願された剽窃的なものであることは疑う余地がなく、これが社会の一般道徳観念や公正な取引秩序を害し、公序良俗に反する商標に該当するものであることは明らかであると主張する。 そこで、旧商標について検討するに、構成中の全身図形は、本件図形との比較において、丸眼鏡をかけコック帽をかぶり、顔の形状が真円に近く、短い頭髪が3本頭頂部から生えており、目、鼻及び口が顔の中心部にまとまっており、向かって右端の口唇から舌を出しほほえんでいる点に特徴を有する人物(あるいはその頭部)を描いた図形である点において共通していることから、当該人物を描いた全身図形は、元来、旧商標の商標権者であったてっしい村社が作成し、商標登録を受けたものとみるのが自然である。 他方、全身図形と酷似する図形(引用図形)を構成中に有する引用商標については、旧商標の存続期間満了(平成17年7月31日)から約6年後に請求人が商標登録を受けており、その後、上記の特徴を有する頭部を描いた図形を構成中に有する商標である別登録及び本件商標については、浪漫座社が商標登録を受けている。なお、別登録については、請求人と浪漫座社間において、いわゆるアサインバックを行うことにより商標登録を受けている(甲14)。 上記の商標登録出願に関する事実関係も踏まえると、全身図形(酷似の図形を含む。)を構成中に有する商標については請求人が、全身図形の頭部(酷似の図形を含む。)を有する商標については浪漫座社が、それぞれ登録を受けることについて、両者が住み分けを図っていたことが推察し得ることから、本件商標の出願が剽窃的であるとの請求人の主張は採用できない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (6)まとめ 以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、「結論掲記の指定商品」について、商標法第4条第1項第11号に該当するから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とし、その余の指定商品についての登録は、同法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当しないものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-890056

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