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商標取消審判

2023-300113

ラッシュ

審判番号
2023-300113
法域
商標
審判種別
取消審判(商標取消の審決)
出願番号
商願1999-115002
登録番号
4444646
請求日
2023年02月20日
審決日
2024年05月31日
公報発行日
2025年04月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ボレー・ブランズ・ジャパン 株式会社
  • 【請求人代理人】達野 大輔
  • 【請求人代理人】竹中 陽輔
  • 【請求人代理人】中山 真理子
  • 【請求人代理人】岡田 次弘
  • 【請求人代理人】山頭 めぐみ
  • 【被請求人】山本光学 株式会社
  • 【被請求人代理人】辻本 希世士
  • 【被請求人代理人】神吉 出
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 雅也
  • 審判官 大山 健
  • 審判官 渡邉 あおい
分類
T132 .1 -Y (Z09)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法50条
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第50条第2項、商標法第50条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第4444646号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第4444646号商標(以下「本件商標」という。)は、「RUSH」の欧文字を横書きしてなり、平成11年12月14日に登録出願、第9類「スキーゴーグル,サングラス,普通眼鏡,防じん眼鏡,眼鏡の部品及び附属品,スイミングゴーグル」を指定商品として、同13年1月12日に設定登録され、同23年1月18日及び令和3年1月18日にそれぞれ存続期間の更新登録がされたものである。 なお、本件審判請求の登録日は、令和5年3月6日である。 また、本件審判において、商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、令和2年(2020年)3月6日ないし令和5年(2023年)3月5日である(以下「要証期間」という。)。 第2 請求人の主張 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第9類「スキーゴーグル,サングラス,普通眼鏡,防じん眼鏡,スイミングゴーグル」(以下「取消請求商品」ということがある。)についての登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証(枝番号を含む。)を提出した。 なお、証拠の記載については、以下、「甲第1号証」を「甲1」のように省略して記載することがあり、枝番号の全てを示すときは枝番号を省略する場合がある(乙各号証についても以下同じ。)。 1 請求の理由 本件商標は、その取消請求商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)はじめに 以下に述べるとおり、被請求人によって提出された乙各号証によっては、本件商標の使用の事実は証明されていない。 (2)本件審判の背景及び経緯 ア 大阪地方裁判所 令和5年(ワ)第532号商標権侵害差止請求事件 請求人は、請求人が製造販売する製造業等における作業従事者、建設現場作業員、医療現場従事者、警察官、消防隊員、自衛隊員その他の現場作業員等が使用する「防じん眼鏡」について「RUSH」を使用していたところ、被請求人により、本件商標に係る商標権に基づいて、商標権侵害の訴の提起を受けた。 そこで、被請求人の商品を調査し、また、当該訴訟において被請求人が提出した訴状及び各証拠を精査したところ、要証期間において被請求人の使用している商品は「オフロードバイク用ゴーグル」であった。 よって、請求人は、被請求人に対して、本件審判を請求したものである。 イ 類似商品・役務審査基準(第7版) 「オフロードバイク用ゴーグル」は、本件商標が登録された時点の国際分類第7版において、包括表示である「眼鏡」の短冊の下には掲載されてない商品である(甲2)。 「オフロードバイク用ゴーグル」を使用するのであれば、出願時に積極的に「オフロードバイク用ゴーグル」の表示をして登録すべきものであった。 ウ 被請求人の不当な権利行使と損害賠償の請求 被請求人は、「オフロードバイク用ゴーグル」を使用することによって、商標権の権利を主張し、請求人を被告として商標権侵害を訴え、同時に1億1千万円にわたる損害賠償の請求も行っている。 エ 本件商標の使用の不存在 請求人は調査を行ったが、本件商標の使用の事実を客観的に裏付けるものは見つからなかった。 (3)弁駁の概要 被請求人が提出する乙各号証は、いずれも「オフロードバイク用ゴーグル」の証拠であって、「スキーゴーグル,サングラス,防じん眼鏡」についての本件商標の使用ではない。 また、要証期間についての証拠であると解される「納品書兼請求書」(乙11)に掲載されている商品名である「RUSH-XED BKBL」の現在の販売実績をインターネット上にて調査したところ、「販売中止」となっている第三者による販売サイトがあるほか(甲3の1)、被請求人自身が運営するオンラインショップにおいて「RUSH」で商品を検索しても、バイク用ゴーグル以外の製品はヒットしないなど(甲3の2)、バイク用ゴーグル以外に「RUSH」を使用している形跡は見当たらない。 以下に、被請求人から提出された証拠を検証する。 ア 乙第2号証ないし乙第5号証 乙第2号証ないし乙第5号証は、いずれも要証期間外の証拠である。 イ 乙第6号証 (ア)乙第6号証の2頁、4頁及び最終頁には全面にオフロードバイクの写真の掲載がある。これらの写真から、このカタログに掲載されている商品は全て、オフロードバイク用ゴーグル又はオフロードバイク用ゴーグルの部品及び附属品であり、「スキーゴーグル,サングラス,防じん眼鏡」のいずれにも該当しない。 (イ)「防じん眼鏡」について述べると、「防じん眼鏡」とは、工事現場等における業務用の作業時に発生する飛来物や浮遊粉じん、薬液の飛沫などから眼を守るメガネを指す語として用いられているところ(甲5)、オフロードバイク用ゴーグルはこれに含まれない。オフロードバイク用ゴーグルにより、泥や砂に混じって飛んでくる石などから眼を護ることができる場合があるとしても、それはあくまでオフロードバイク乗車時に限った使用を想定したものであり、用途の点で明確に区別される。 オフロードバイク用ゴーグルは、防じん眼鏡やそれと同義で使われることのある「保護めがね」等とは異なるものとして分類されるのが一般的である。例えば、被請求人も保護めがねを製造販売しているが、保護めがねについてはオフロードバイク用ゴーグルを展開するSWANSブランドの事業の中では販売しておらず、被請求人自らが運営するインターネット上の商品販売サイトも、オフロードバイク用ゴーグルを販売するサイト(甲6の1)と、防じん眼鏡を販売するサイト(甲6の2)とを分けて展開している。 (ウ)「サングラス」について述べると、「サングラス」とは、日光の直射を防ぐことを目的とした色ガラスの眼鏡を指し(甲7)、仮にオフロードバイク用ゴーグルに「紫外線カットレンズ」が採用されているとしても、オフロードバイクの乗用時という限定された場面での着用を目的として作成されるオフロードバイク用ゴーグルは、汎用的に使用できるものを指すと解されるサングラスに該当しない。 (エ)オフロードバイク用ゴーグルは「スキーゴーグル」にも該当しない。 ウ 乙第7号証 乙第7号証には、本件商標の使用は認められない。 エ 乙第8号証 乙第8号証は、オフロードバイク用ゴーグル又はオフロードバイク用ゴーグルの部品及び附属品のためのカタログであると解するのが自然である。 オ 乙第9号証 乙第9号証は、オフロードバイク用ゴーグル又はオフロードバイク用ゴーグルの部品及び附属品のための商品説明であると解するのが自然である。 カ 乙第10号証 乙第10号証は、要証期間外の証拠である。 キ 乙第11号証 乙第11号証は、本件商標の取消請求商品のいずれの使用とも認められない。 (ア)納品先の記載について 乙第10号証及び乙第11号証においてのみ、納品先の記載がないことは極めて不自然である。 (イ)社会通念上同一の商標について 本件商標と、納品書兼請求書(乙11)の商品コード一覧に記載されている「RUSH-XED BKBL」は、社会通念上同一の商標ではない。「RUSH」と3文字からなる「XED」は、ハイフン(「-」)で繋がれており一体的に看取できる。また「RUSH-XED」の後ろにある「BKBL」も、商標の一部とみることができる。「RUSH-XED BKBL」と一体に把握されるからこそ、2014年2月発行のカタログ(乙3)に掲載されているフレームがブラックとブルーの「RUSH-XED BKBL」の商品名に該当すると推察できる。また、「RUSH」の部分のみを抽出すべき特段の理由も見当たらない。 (ウ)納品書兼請求書(乙11)に掲載された商品について 2021年1月29日発行の納品書兼請求書(乙11)に掲載された商品は、本来ならば2020年2月以降のデジタルカタログの中の商品であるべきところ、被請求人は、2014年2月発行のカタログ(乙3)に掲載されているフレームカラーがブラックとブルーの「RUSH-XED」に該当すると述べているが、当該カタログ(乙3)は要証期間外である。 (エ)「納品書兼請求書」が原本のコピーではない点について 納品書兼請求書(乙11)は、原本のコピーではなく、データベース管理システムに構築されたデータをPDFに打ち出したものであるものにすぎない。データ入力に誤りがあれば、実際にそのような取引がないにも関わらず、PDF化により資料ができてしまうということになる。2014年のカタログに掲載された商品が2021年に数量1個で計上されること自体が取引として不自然である。 ク 乙第12号証 乙第12号証は、要証期間外の証拠である。また、「MX-RUSH-SP」は、本件商標と社会通念上同一の商標ではないし、乙第12号証で説明されている商品は、オフロードバイク用ゴーグル又はその部品及び附属品である。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 本件商標は、被請求人が、「スキーゴーグル」、「サングラス」及び「防じん眼鏡」について継続して使用している。 2 被請求人による使用 被請求人は、遅くとも、2002年(平成14年)以降、現在まで継続して、「RUSH」の商品名で、「スキーゴーグル」、「サングラス」及び「防じん眼鏡」を製造販売している。 3 カタログヘの使用 (1)乙第2号証は、被請求人が2011年2月に発行した「2011-12 SNOW GOGGLES&HELMETS COLLECTION」と題するカタログである。同カタログの裏表紙に「2011年2月発行」と記載されていることからすれば、同カタログは2011年2月に発行されたことが理解できる。そして、スキーゴーグル(10、17頁)に関する広告に「RUSH」の標章を付している。なお、10頁の商品は「PR-RUSH-MPDH-C」と記載されているが、「PR」は9頁冒頭の説明にあるとおり、ハイエンドモデルを示すレンズ、フレームなどに高機能な仕様を採用し、フレームカラーにも流行のデザインを採用した、シリーズ名「PROMINENT PLUS+」の略称であり、「MPDH-C」はレンズの仕様(M(ミラー)P(偏光)D(ダブルレンズ)H(曇り止め)-C(撥水加工))を表しているため、「RUSH」がブランド名である。また、17頁の商品は、「RUSH-XED」と記載されているが、この「XED」はレンズが発熱し、くもりや凍結を除去する機能を有するスキーゴーグルの機能のシリーズを示すものである(乙4の8頁)。 乙第3号証は、被請求人が2014年2月に発行した「SWANS JAPANESE QUALITY 2014-15 SNOW GOGGLES&HELMETS COLLECTION」と題するカタログである。同カタログの裏表紙に「2014年2月発行」と記載されていることからすれば、2014年2月に発行されたことが理解できる。そして、スキーゴーグル(19頁)に関する広告に「RUSH」の標章を付している。 乙第4号証は、被請求人が2017年2月に発行した「SWANS JAPANESE QUALITY SNOW GOGGLES&HELMETS COLLECTION 2017-2018」と題するカタログである。カタログの裏表紙に「2017年2月発行」と記載されていることからすれば、2017年2月に発行されたことが理解できる。そして、スキーゴーグル(8頁)に関する広告に「RUSH」の標章を付している。 以上のカタログは、スキーショップ等に配布、頒布している。 (2)乙第5号証の1は、被請求人が2020年2月に発行した「SWANS 2020 MX GOGGLES&ACCESSORIES Collection」と題するカタログである。「MX」はモトクロスバイクの略字であり、モトクロスバイク用の商品が掲載されたカタログである。カタログの裏表紙に「2020.02」と記載されていること、納品期日を7営業日としてカタログ印刷を2020年2月7日に印刷業者である株式会社プリントパックに発注していること(乙5の2)からすれば、2020年2月に発行されたことが理解できる。そして、カタログ2頁の「SWANS TECHNOLOGY 基本技術 TALON、RUSH、797、CHAMBO、No.914に共通の機能」に「高性能安全レンズ「ペトロイド」」を採用し、「泥や砂に混じって飛んでくる石などから眼をしっかりと護れます」と説明されているとおり、防じん眼鏡の機能を有し、また「紫外線カットレンズ」を採用し、「有害な紫外線から眼を護る」と説明されているとおり、サングラスの機能も併せて有するため、「防じん眼鏡」及び「サングラス」に関する広告(5、6頁)に「RUSH」の標章を付している。このカタログは、南海部品株式会社等のオートバイ用専門店等に配布、頒布している。 乙第6号証は、「2023 MX GOGGLES&ACCESSORIES Collection」と題するカタログデータであるところ、「防じん眼鏡」及び「サングラス」に関する広告に「RUSH」の標章を付している。このカタログデータは、裏表紙に「2022.12」と記載されているとおり、2022年12月に作成され、被請求人が同月22日に自社のSWANS公式サイトにて公開したものである(乙7)。 そして、乙第8号証は、ウェイバックマシンにより保存された、2023MXゴーグルカタログ(乙6)のうち、必要箇所をスキャンしたものであるところ、右上に「DEC 27 2022」の記載があるとおり、被請求人は、2022年12月27日に、「防じん眼鏡」及び「サングラス」に「RUSH」の標章を付して広告を掲載した。 4 オンラインショップでの使用 乙第9号証は、1頁右上に「JUL 01 2022」の記載があるとおり、ウェイバックマシンにより保存された被請求人の公式オンラインショップSWANS STORE Webのサイトの2022年7月1日時点での表示を示したものであるところ、被請求人は、同時点にて、「防じん眼鏡」及び「サングラス」に「RUSH」の標章を付して広告を掲載した。 5 取引書類での使用 乙第10号証は、2020年2月5日付けの被請求人発行の納品書兼請求書であるところ、「商品コード 商品名」に「RUSH-XED BK/G」と記載されている。この商品は、カタログ(乙3)に掲載されているフレームカラーがブラックとグレイの「RUSH-XED」に該当する。 また、乙第11号証は、2021年1月29日付けの被請求人発行の納品書兼請求書であるところ、「商品コード 商品名」に「RUSH-XED BKBL」と記載されている。この商品は、カタログ(乙3)に掲載されているフレームカラーがブラックとブルーの「RUSH-XED」に該当する。 このように被請求人は取引先に対し、スキーゴーグルを納品する際に、その取引書類である納品書兼請求書に「RUSH」の標章を付して頒布した。 なお、納品書兼請求書(乙11)は、株式会社オービックの「OBIC7」を利用しており、Microsoftが開発したデータベース管理システム「SQL Server」にて構築されている。被請求人においては、基本的にはデータで保存をし、必要に応じてPDFデータやExcelデータなどに書き出しをしており、今回提出したものはPDFデータを出力したものである。 6 商品タグヘの使用 乙第12号証は、2020年2月6日に掲載の「SWANS RUSH ダートゴーグル レビュー」のタイトルのブログの出力物であるが、5頁上部の写真から「MX-RUSH-SP」の商品名が表示された商品タグが商品本体に付されていることが分かる。この「RUSH」の前に「MX」が付されているが、「MX」はモトクロスバイク用の略字であり、被請求人は、「防じん眼鏡」及び「サングラス」本体にも「RUSH」の標章を付している。 第4 審尋に対する被請求人の回答、及び回答に対する請求人の意見 1 審尋に対する被請求人の回答 令和5年8月24日付けで合議体が通知した審尋に対し、被請求人は令和5年9月25日に審尋回答書を提出し、要旨以下のように主張するとともに、証拠方法として、乙第13号証ないし乙第38号証(枝番号を含む。)を提出した。 (1)スノーゴーグルの納品書兼請求書への使用について ア 単価の差異について スノーゴーグルの納品書兼請求書(乙10、乙11)の「商品コード」欄に記載された「RUSH-XED BK/G」(乙10。以下「商品1」という場合がある。)、「RUSH-XED BKBL」(乙11。以下「商品2」という場合がある。)と、カタログに掲載された商品の金額が異なることについて、カタログでは、商品1及び2は「35,000円+税」と単価が記載されている一方(乙3、乙4)、納品書兼請求書に記載された単価は商品1が13,636円(乙10)、商品2が14,000円(乙11)である。この点、「RUSH」の標章を付した商品が掲載されているスノーゴーグル用カタログのうち最も新しいものは2017年シーズンのものであるが(乙4)、商品1が販売されたのは2020年2月5日、商品2が販売されたのは2021年1月29日であり、カタログ掲載から3年ないし4年が経過している上、販売時期が1月ないし2月とスノーシーズン終了前である。そのため、いずれの商品も数年間在庫として店舗に保有されていた商品が店舗在庫処分セール販売によって販売されたものであって(乙13、乙14)、価格が低く設定されたのである。特に、商品1に関しては、展示品で小傷などがあったため、通常セール以上の値引きをして販売されたのである。このことは、SWANS STORE東京店頭販売月次報告の販売明細のファイルの備考欄に「SALE」と記載されていることからも明らかである(乙13、乙14)。 イ 納品先が空欄であることについて 納品書兼請求書(乙10、乙11)はいずれも納品先が空欄であるが、これは、担当者が「SS東京」となっているとおり、被請求人の直営店であるSWANS STORE東京にて販売された商品である。各種小売店舗において、現金で商品を購入する消費者の氏名や住所等を逐一確認するような取引の実情がないことは、社会通念上明らかである。 そして、各店舗の従業員によってエクセルで作成された販売明細に基づき、本社業務担当者が経理ソフト「OBIC7」に入力している(乙15~乙17)。この経理ソフトにて、「RUSH」の商標が付されたスキーゴーグルが要証期間に販売されたかを検索し、挙がってきた2件の取引の納品書兼請求書が乙第10号証及び乙第11号証であるが、クレジットカードを利用せず、かつ加工不要な商品を購入した者については、購入者が特定できないため、納品書兼請求書の納品先が空欄となっているのである。 ウ 商品コード欄の記載について 画面キャプチャーのうち、乙第15号証の2及び乙第16号証の2において、「商品コード」欄には数字が、「商品名」欄には「RUSH-XED・・・」がそれぞれ記載されていることからも「RUSH-XED・・・」は商品コードではなく、商品名であることが明らかである。そして、納品書兼請求書は取引書類であるため、納品書兼請求書に「RUSH」と記載したことは、取引書類に標章を付して使用する行為といえる(商標法第2条第3項第8号)。 (2)モトクロス用ゴーグルについて 「モトクロス用ゴーグル」として取引されるものであれば「サングラス」や「防じん眼鏡」として取引される商品であると認められないわけではなく、「モトクロス用ゴーグル」として取引され、かつ「サングラス」や「防じん眼鏡」として取引される商品でもあるといえる。 裁判例(東京高等裁判所 昭和60年5月14日判決、同平成13年7月12日判決)等から、商品の機能に着目するなどにより、商品の二面性が肯定されることは十分にあり得るところ、被請求人の商品がサングラスの機能を有することは明らかであるため、商品の機能に着目して、モトクロス用ゴーグルに加え、サングラスないし防じん眼鏡といった多面性を有する商品であると解すべきである。したがって、被請求人は、サングラスないし防じん眼鏡として取引される商品の広告に商標を付したといえる。 商品大辞典の説明(乙18)によれば、「防じん眼鏡」とは、塵埃や風よけなどに用いるものであり、「サングラス」とは、太陽の紫外線から眼を保護するために用いるものであると定義される。モトクロス用ゴーグル(少なくとも、塵埃、風よけ、及び太陽の紫外線から眼を保護するために用いられることが明らかな被請求人の商品)は、防じん眼鏡、サングラス又は防じん眼鏡兼用サングラスに該当することが明らかである。 また、被請求人は、現実に、被請求人の商品を保護めがねとして取引した(乙19)。 被請求人は、令和4年3月15日に、セフティ&レーザーオプト営業部にて、消防、レスキュー隊を顧客に持つ代理店の株式会社赤尾より、SWANS SAFETYの保護めがね(保護ゴーグル)とともに、RUSHのゴーグルの見積り依頼を受け(乙25)、同月22日に株式会社土浦消防センターを納品先として、RUSHのゴーグルを保護めがねとして受注し、同月24日に納品した(乙26)。このように、被請求人が被請求人の商品を「保護めがね」として取引した実績があるところ、商品大辞典(乙18)の定義や、インターネットショッピングサイト上での「防じんめがね」の検索結果、「防じんメガネランキング」を見ると、「セーフティゴーグル」(保護ゴーグル)や「保護めがね」が挙がってくることからすれば(乙27、乙28)、保護めがねと防じん眼鏡は市場で同義として扱われていることも明らかである。 さらに、この取引は、発注書(乙28)及び納品書(乙29)の取引書類に「RUSH」の標章を付した使用実績としても機能する。 加えて、「バイク用ゴーグル」として取引されている商品であっても、バイク用にとどまらず、DIY作業、電動工具を使用する作業、塗装作業及び清掃作業用にも使用できることが各種取引において明記されている。 (3)使用証拠の追加 被請求人は、商品本体に商品名・色・価格・レンズスペック・機能・バーコード・生産国等を記載した商品タグを付して販売しているが、そのタグに「RUSH」の標章を付している(乙33~乙35)。 したがって、被請求人は、スキーゴーグル、防じん眼鏡及びサングラスである被請求人商品に、本件商標を付している。 (4)「納品書兼請求書」が、原本のコピーではない点について 納品書兼請求書は今や多くの企業が手書きではなくパソコンにて作成しているところ、パソコンで作成している以上、証拠としてはデータの出力物を提出する他ない。 さらに、2014年のカタログに掲載された商品が2021年に1個取引されることは、在庫処分セール等を開催していれば十分にあり得ることである。 2 被請求人の回答に対する請求人の意見 請求人は、被請求人の上記回答に対して、令和6年1月5日に意見書を提出し、要旨以下のように主張するとともに、証拠方法として、甲第11号証ないし甲第20号証を提出した。 (1)スノーゴーグルの納品書兼請求書における記載について ア 不合理な価格設定であること 乙第13号証及び乙第14号証の同日及び近日の日付において、他の商品がセール品価格となっていない。商品1及び2のみがセールにて販売されている点は、明らかに不自然である。 イ 納品先及び請求先が空欄の納品書兼請求書は不合理であること 一般に、納品書や請求書は、商品を買主に納品したことを確認し及び代金を買主に請求するための文書であり、税法上の保管義務もある書類であるから、買主を特定しなければ当該目的を達成する書類として機能しないから、氏名や住所等を記載しないのは不合理である。 各種小売店舗における現金での商品購入であって、消費者の氏名や住所等を確認しない取引は、そもそも納品書や請求書を発行しない取引であるから、被請求人の主張は、納品書や請求書の記載の不合理性を覆すものではない。 ウ 納品書兼請求書(乙10、乙11)の表記が商標としての使用ではないこと 納品書兼請求書(乙10、乙11)で用いられている「RUSH-XED・・・」の記載は、商品を特定するための社内識別目的の記載であり、商標ではない。 「XED」の表示は英語の辞書にも広辞苑にも掲載されていない表示であるから、「XED」を見てレンズが発熱する商品であると理解することは不可能であるし、「BKBL」の表示も英語の辞書にも広辞苑にも掲載されていない表示であるから、これを見て色彩のブラックとブルーを表すものと理解することは不可能である。 エ 社会通念上同一の商標の不使用 仮に「RUSH-XED・・・」が商標としての使用に該当するとしても、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。 (2)モトクロス用ゴーグルについて 商標法施行規則に基づく特許庁での出願手続においては、包括的見出し又は下位概念に記載されていない「モトクロス用ゴーグル」について独占的排他権を得るためには、商標登録の指定商品に「モトクロス用ゴーグル」と積極的に表示しなければならない。 インターネット上で容易に見つかる「防じん眼鏡」に関する情報からは、モトクロス用ゴーグルを含むとする説明は見られないし(甲15~甲17)、実際に、被請求人のウェブサイトにおいても、モトクロス用ゴーグルを含み得ることを示唆するような内容は見られない(乙21~乙24)。 また、被請求人は、株式会社土浦消防センターを納品先として、RUSHのゴーグルを保護めがねとして受注し、納品した旨を主張するが、納品先となる株式会社土浦消防センターがどういった理由や目的で製品を購入したかについての客観的、具体的な説明はなされていないから、仮にRUSHのゴーグルが「保護めがね」と表記されて販売されたとしても、当事者がそのゴーグルを実際に保護めがねとして認識していたかは疑わしい。 さらに、乙第25号証も乙第26号証も、被請求人ではない株式会社赤尾が作成した発注書であるから、被請求人による使用には該当しないし、それらにおける表記も、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標ではない。 加えて、被請求人が証拠として提出するインターネットショッピングサイト(乙30~乙32)の説明は、バイク用ゴーグル一般の説明ではなく、個別の商品についてバイク用以外の目的での使用が、本来の用途ではないが可能であることを説明しているにすぎない。 (3)乙第33号証ないし乙第35号証について 乙第33号証及び乙第34号証のタグについては、これらが要証期間に販売された商品に付されていたことを示す証拠がない。また、仮にこれらのタグが要証期間に販売された商品に使用されていたとしても、タグに記載されている「RUSH-XED」は本件商標と社会通念上同一の商標ではない。さらに、これらのタグが要証期間に販売された商品にどのように付されているかについて主張立証もない。 乙第35号証に表示されている商品にはタグが付いているものの、タグの表記は「MX-RUSH-SP」であるところ、むしろ、乙第35号証に係る商品の商標は、商品に直接付されている「SWANS」である。 第5 当審の判断 1 被請求人提出の乙各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (1)「2023 MX GOGGLES&ACCESSORIES Collection」と題するカタログについて ア カタログ(乙6) 乙第6号証は、「2023 MX GOGGLES&ACCESSORIES Collection」と題するカタログであるところ、その1葉目には、「SWANS/JAPANESE QUALITY」「2023 MX GOGGLES&ACCESSORIES Collection」の記載がある。 また、4葉目には、ヘルメットとゴーグルを装着したライダーが、モトクロス用バイクに乗って走行している画像とともに、「RUSH」の文字の表示及び「10年以上にわたってライダーの目を護り続ける定番モデル。ヘルメットのサイズ、種類を問わずフィットするその高い汎用性は、初めてのゴーグルとしても上級者の選択としても間違いないチョイスとなる。」の記載がある。また、4葉目の下部には、ゴーグルの正面画像に対して、「Lens/豊富なレンズのラインナップを用意。」の記載がある。 さらに、5葉目には、「MX-RUSH-PET/ベーシック仕様。カスタムベースにも最適。¥8,030(税込)」の記載の下に、商品の画像とともに、「R/R」、「フレーム/レッド×レッド」及び「レンズ/スモーク(48%)」の記載がある。 また、6葉目には、「山本光学株式会社 www.swans.co.jp」及び「2022.12」の記載がある。 イ ウェブサイト(乙7) 乙第7号証は、2023年3月29日に出力されたウェブサイトの出力物であり、1葉目には、「2023 MX GOGGLES カタログPDFデータを公開いたしました|スポーツアイウェアならSWANS(スワンズ)」、「2022.12.22」、「2023 MX GOGGLES カタログPDFデータを公開いたしました/・・・下記URLより閲覧・ダウンロードいただけます。」及び「https://swans.co.jp/assets・・・/(5.7MB)」の記載がある。 (2)商品「MX-RUSH-PET R/R」の株式会社土浦消防センターとの取引(乙25~乙26)について 乙第25号証は、株式会社赤尾が、被請求人に宛てた、2022年3月15日付けFAX送付状であり、被請求人担当者による同日付け受領印が確認できる。 また、FAX送付状(乙25)には、「さっそくですが、下記商品のお見積りをお願いします。定価と仕切り価格、注文後の納期、送料(茨城県土浦市送りの場合)をご連絡ください。」、「ゴーグル SS-7000CLオレンジ クイックベルトタイプ 1個」、「ゴーグルMX―RUSH PET レッド(2022年新色)/↑スモークレンズが標準ですが、クリアレンズに変更して注文可能でしょうか。」及び「MX-RUSHは別途Sよりご案内いたします。(本日休みのため明日以降ご連絡となります)」の記載がある。 乙第26号証は、株式会社赤尾が被請求人に宛てて送付した、2022年3月22日付け発注書であり、その「発送先」欄には「株式会社 土浦消防センター殿」の記載があり、「有難うございます/ご注文の商品の出荷日は/04/03/24/となります/山本光学(株)」の表示のある受領印が確認できる。 また、発注書(乙26)には、「行」「商品コード 商品名 摘要」「数量」「単価」「金額」を項目とする一覧表に、「行 01」「商品コード 商品名 摘要 465113 ゴーグル MX-RUSH PET R/R 保護めがね」「数量 1.00」「単価 4,380.00」「金額 4,380」、及び「行 02」「商品コード 商品名 摘要 465119 クリアレンズに交換 L-RUSH-PET CLA 保護めがね 部品」「数量 1.00」「単価 1,020.00」「金額 1,020」、並びに「お世話になります。S様よりお見積り頂いた件です。/スモークレンズからクリアレンズに交換して出荷お願いします。元々付いていたクリアレンズは同送してください。茨城県稲敷市消防団様向けです。よろしくお願いします。」の記載がある。 (3)上記(1)及び(2)から以下の事実が認められる。 ア 被請求人は、2022年12月に「2023 MX GOGGLES&ACCESSORIES Collection」と題するカタログを発行し(乙6)、同月22日に自社が運営するウェブサイト(www.swans.co.jp)において、同カタログのPDFデータをダウンロード・閲覧できるようにして公開した(乙7)。 そして、カタログ(乙6)には、「RUSH」の文字の表示(以下「使用商標」という。)を付して、モトクロス用ゴーグルとして商品「MX-RUSH-PET R/R」(以下「使用商品」という。)を掲載した。 イ 被請求人は、2022年3月頃に、株式会社赤尾を介して、株式会社土浦消防センターに、使用商品1個について、「保護めがね」の用途での使用のために、標準のスモークレンズをクリアレンズに変更して販売した(乙25、乙26)。 2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。 (1)使用商標について 商標権者が製造販売する使用商品を掲載した、「2023 MX GOGGLES&ACCESSORIES Collection」と題するカタログ(乙6)には、使用商標(RUSH)が表示されている(乙6の4葉目)。 そして、上記第1のとおり、本件商標は、「RUSH」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、使用商標は本件商標と文字構成を同じくするものであるから、本件商標と社会通念上同一であると認められる。 (2)使用商品について 使用商品はモトクロス用ゴーグルであり、ライダーの眼を護る機能、用途を有するものであるところ、要証期間である2022年3月頃に、被請求人は株式会社赤尾を介して、株式会社土浦消防センターに、使用商品1個について、「保護めがね」の用途での使用のために、標準のスモークレンズをクリアレンズに変更して販売したと認められる(乙25、乙26)。 そして、使用商品は、塵埃、風よけ及び太陽の紫外線等から眼を保護する機能、用途を有するゴーグルであって、当該機能、用途に照らせば、塵埃や風よけなどに用いる「防じん眼鏡」(乙18等)の範ちゅうに属するものといえる。 そうすると、被請求人は、顧客に対し、使用商品を「防じん眼鏡」の範ちゅうに属する「保護めがね」として取引したものと認められるから、使用商品は「防じん眼鏡」の範ちゅうに属する商品とみて差し支えない。 なお、請求人は、使用商品が保護めがねとして取引されたことに関して、納品先となる株式会社土浦消防センターがどういった理由や目的で製品を購入したかについての客観的、具体的な説明はなされていないから、仮に保護めがねと表記されて販売されたとしても、当事者がそのゴーグルを実際に保護めがねとして認識していたか疑わしい旨を主張しているが、発注書(乙26)の「商品コード 商品名 摘要」欄に「ゴーグル MX-RUSH PET R/R 保護めがね」の記載があることに鑑みれば、株式会社土浦消防センターが、使用商品を塵埃等から眼を保護する「保護めがね」と認識した上で、株式会社赤尾を介して被請求人に使用商品を注文したことは明らかである。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (3)使用行為、使用時期、使用者について 被請求人が、要証期間である2022年12月に、使用商標を付した使用商品に関するカタログ(乙6)のPDFデータを、同人のウェブサイトで閲覧・ダウンロードできるようにして公開した(乙7)こと、すなわち、商標権者が要証期間に商標法第2条第3項第8号に規定する使用行為(商品の広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為)を行ったと認められる。 (4)小括 上記(1)ないし(3)からすれば、本件商標の商標権者は、要証期間に、日本国内において取消請求商品中、「防じん眼鏡」の範ちゅうに属する商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用した(商標法第2条第3項第8号に該当。)と認めることができる。 3 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の商標権者が、その審判の請求に係る指定商品について本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したといわなければならない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべき限りでない。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-300113

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