特許拒絶査定不服審判
2023-021629
急速充電性能が向上された負極およびリチウム二次電池
- 審判番号
- 2023-021629
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-519034
- 請求日
- 2023年12月20日
- 審決日
- 2024年09月18日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
- 【請求人代理人】飯田 雅人
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 須原 宏光
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P18 .113-Z (H01M) / P18 .121-Z (H01M) / P18 .572-Z (H01M) / P18 .575-Z (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-519034「急速充電性能が向上された負極およびリチウム二次電池」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月13日国際公開、WO2022/010121、令和 4年11月28日国内公表、特表2022-549673〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年6月15日(優先権主張2020年7月10日 韓国)を国際出願日とする出願であって、その手続の概略は以下のとおりである。
令和 5年 3月14日付け:拒絶理由通知
令和 5年 5月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 8月18日付け:拒絶査定
令和 5年12月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 6年 5月21日 :上申書の提出
第2 令和5年12月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年12月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正による特許請求の範囲の記載
本件補正による特許請求の範囲の請求項1(以下「本件補正発明」という。)の記載は、次のとおりである(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
集電体上に配置された第1負極活物質層、および前記第1負極活物質層上に配置された第2負極活物質層を含み、
前記第1負極活物質層は、未被覆人造黒鉛を含み、
前記第2負極活物質層は、被覆人造黒鉛を含み、
未被覆人造黒鉛と被覆人造黒鉛との重量比は、負極活物質の総重量を基準として4:6~6:4であり、
前記第1負極活物質層の負極活物質が未被覆人造黒鉛であり、前記第2負極活物質層の負極活物質が被覆人造黒鉛であり、
第1負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量が、第2負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量より大きい範囲で、0.5~5重量%である、リチウム二次電池用負極。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、令和5年5月19日にされた手続補正により補正された次のとおりである。
「【請求項1】
集電体上に配置された第1負極活物質層、および前記第1負極活物質層上に配置された第2負極活物質層を含み、
前記第1負極活物質層は、未被覆人造黒鉛を含み、
前記第2負極活物質層は、被覆人造黒鉛を含み、
未被覆人造黒鉛と被覆人造黒鉛との重量比は、負極活物質の総重量を基準として4:6~6:4であり、
前記第1負極活物質層の負極活物質が未被覆人造黒鉛であり、前記第2負極活物質層の負極活物質が被覆人造黒鉛である、リチウム二次電池用負極。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1負極活物質層」及び「第2負極活物質層」について、「第1負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量が、第2負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量より大きい範囲で、0.5~5重量%である」ことの限定を付加するものである。
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1(1)」に記載したとおりのものである。
(2)引用文献及びその記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由に引用された、韓国公開特許第10-2020-0073801号公報(以下、「引用文献1」という。)には以下の記載がある。(当審訳の下線は当審で付与した。以下同様。)
[図:0001418999000001.jpg]
[図:0001418999000002.jpg]
[図:0001418999000003.jpg]
[図:0001418999000004.jpg]
(当審訳:
「[0007]本発明の一実施形態によれば、集電体及び前記集電体上に配置された負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、前記集電体上に配置され、第2の負極活物質粒子を含む第2の負極活物質層と、前記集電体と前記第2負極活物質層の間に配置され、第1負極活物質粒子を含む第1負極活物質層を含み、前記第2負極活物質粒子は、コアと、前記コア上に配置された炭素コーティング層と、を含み、前記コアは1次粒子が凝集して形成された2次粒子であり、前記1次粒子としては人造黒鉛を含み、前記第1の負極活物質層の気孔度は25.5%~30%であり、下記式1を満たす、負極が提供される。」
「[0011]本発明の別の実施形態によれば、前記負極を含む二次電池が提供される。
発明の効果
[0012]本発明によれば、第1負極活物質層が適度な空隙率を有しているので、負極の厚さ当たりの容量を確保することができる。同時に、第1負極活物質層と第2負極活物質層が適切な気孔度差異を有するため、リチウムイオンの拡散経路が確保され、電池の急速充電性能を改善することができる。」
「[0113]実施例1:負極の製造
[0114](1)第1負極スラリーの製造
[0115]平均粒径(D50)が16μmの天然黒鉛と天然黒鉛上に配置された厚さ100nmの非晶質の炭素質の被覆層からなる粒子を第1負極活物質粒子として使用した。前記第1の負極活物質粒子と、導電材としてSuper C65、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ96:1:2:1の重量比で混合し、水を加えて第1負極スラリーを製造した。
[0116](2)第2負極スラリーの製造
[0117]平均粒径(D50)が10μmの人造黒鉛を1次粒子とし、前記1次粒子が造粒化されて凝集した2次粒子(平均粒径(D50):20μm)及び前記2次粒子上に配置された厚さ100nmの非晶質炭素コーティング層からなる粒子を第2負極活物質粒子として使用した。前記第2の負極活物質粒子と、導電材としてSuper C65、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)をそれぞれ96:1:2:1の重量比で混合し、水を加えて第2負極スラリーを製造した。
[0118](3)負極の製造
[0119]前記第1負極スラリーを銅箔(集電体)に2.5mAh/cm2のローディング量で塗布した後、前記第2負極スラリーを前記塗布された第1負極スラリー上に2.5mAh/cm2のローディング量で塗布した。この後、前記スラリーが塗布された集電体を圧延した後、約130℃で8時間真空乾燥して、実施例1の負極を製造した。製造された負極における負極活物質層の厚み(第1負極活物質層と第2負極活物質層の厚さの合計)は、96.5μmであり、前記負極活物質層の気孔率は30%であった。
[0121]実施例2:負極の製造
[0122]平均粒径(D50)が10μmの人造黒鉛を1次粒子とし、前記1次粒子が造粒化されて凝集した2次粒子(平均粒径:20μm)を第1負極活物質粒子として使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で負極を製造した。」)
(イ)上記記載から、実施例2に着目すると、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a [0011]、[0012]によれば、引用文献1には、リチウム二次電池用負極について記載されている。
b [0007]によれば、負極は、集電体上に配置され、第2負極活物質粒子を含む第2負極活物質層と、集電体と第2負極活物質層の間に配置され、第1負極活物質粒子を含む第1負極活物質層を含む。
c [0121]、[0122]によれば、実施例2の第1負極活物質粒子は、人造黒鉛を1次粒子とし、1次粒子が造粒化されて凝集した2次粒子である。また、実施例2は上記第1負極活物質粒子を使用した以外は、実施例1と同じである。
d [0117]によれば、実施例1の第2負極活物質粒子は、人造黒鉛を1次粒子とし、1次粒子が造粒化されて凝集した2次粒子及び2次粒子上に配置された非晶質炭素コーティング層からなる粒子である。
e [0115]、[0117]、[0119]によれば、実施例1の第1負極活物質層と第2負極活物質層は、第1負極活物質粒子と、導電材と、バインダーと、増粘剤をそれぞれ96:1:2:1の重量比で混合して第1負極スラリーを製造し、第2負極活物質粒子と、導電材と、バインダーと、増粘剤をそれぞれ96:1:2:1の重量比で混合して第2負極スラリーを製造し、第1負極スラリーを集電体に2.5mAh/cm2のローディング量で塗布した後、第2負極スラリーを塗布された第1負極スラリー上に2.5mAh/cm2のローディング量で塗布し、圧延した後、乾燥して製造したものである。
(ウ)上記技術事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「集電体上に配置され、第2負極活物質粒子を含む第2負極活物質層と、集電体と第2負極活物質層の間に配置され、第1負極活物質粒子を含む第1負極活物質層を含み、
第1負極活物質粒子は、人造黒鉛を1次粒子とし、1次粒子が造粒化されて凝集した2次粒子であり、
第2負極活物質粒子は、人造黒鉛を1次粒子とし、1次粒子が造粒化されて凝集した2次粒子及び2次粒子上に配置された非晶質炭素コーティング層からなる粒子であり、
第1負極活物質層と第2負極活物質層は、
第1負極活物質粒子と、導電材と、バインダーと、増粘剤をそれぞれ96:1:2:1の重量比で混合して第1負極スラリーを製造し、
第2負極活物質粒子と、導電材と、バインダーと、増粘剤をそれぞれ96:1:2:1の重量比で混合して第2負極スラリーを製造し、
第1負極スラリーを集電体に2.5mAh/cm2のローディング量で塗布した後、第2負極スラリーを塗布された第1負極スラリー上に2.5mAh/cm2のローディング量で塗布し、圧延した後、乾燥して製造したものである、
リチウム二次電池用負極。」
イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2011-192539号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
「【0022】
以下、本発明の非水電解質二次電池用電極の一実施形態を、図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、電極40は、集電体41および集電体41の表面に形成された合剤層42からなる。合剤層42は、集電体41の表面に形成された第1合剤層42a、および第1合剤層42aの表面に形成された第2合剤層42bからなる。第1合剤層42aは、リチウムを可逆的に吸蔵および放出可能な第1活物質、およびバインダーを含む。第2合剤層42bは、リチウムを可逆的に吸蔵および放出可能な第2活物質、増粘剤を含む。第2合剤層42bは、さらにバインダーを少量含む、もしくはバインダーを実質的に含まない。第2活物質は、第1活物質よりも、活物質重量1gあたりの容量(容量密度)が高い。
【0023】
第1合剤層42a中のバインダーの含有量B1は、第1活物質100重量部あたり1.0重量部以上である。このため、集電体41と合剤層42との間にて良好な密着性が得られる。充放電反応は、合剤層42の集電体近傍から合剤層42の表面側に向かって順に進行するため、集電体41と第1合剤層42aとの間の密着強度を十分に確保しておく必要がある。
これにより、第1合剤層42aを介して、第2合剤層42bを集電体42の表面に強固に保持することができる。充放電の繰り返し時において、集電体41と合剤層42との間の良好な密着性を維持することができ、充放電サイクル特性が向上する。
【0024】
第2合剤層42bは、容量密度の高い第2活物質を含み、第1合剤層よりも少量のバインダーを含む。すなわち、第2合剤層42b中のバインダーの含有量B2は、第2活物質100重量部あたり0.5重量部以下であり、第2合剤層42b中のバインダー含有量B2と第1合剤層42a中のバインダー含有量B1との比:B2/B1は、0.1~0.5である。
【0025】
第2合剤層42bは、第1合剤層42aを介して集電体41の表面に配されており、集電体41の表面に直接密着していない。このため、第2合剤層42bでは、集電体との良好な密着性を得るためにバインダー量を多くする必要がない。よって、第2合剤層42bでは、第1合剤層42aよりも、バインダー量を大幅に減らすことにより、電極の表面抵抗を低減することができる。その結果、活物質と非水電解質との間をリチウムイオンがスムーズに移動することができ、レート特性を改善することができる。充電時の電極表面でのリチウムの析出が抑制される。
また、第2合剤層42bでは、高容量の活物質を多く含ませることができ、電極の高容量化が可能である。」
(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「集電体上に配置され、第2負極活物質粒子を含む第2負極活物質層と、集電体と第2負極活物質層の間に配置され、第1負極活物質粒子を含む第1負極活物質層を含」むことは、本件補正発明の「集電体上に配置された第1負極活物質層、および前記第1負極活物質層上に配置された第2負極活物質層を含」むことに相当する。
イ 引用発明の「第1負極活物質粒子」は、「人造黒鉛を1次粒子とし、1次粒子が造粒化されて凝集した2次粒子」であり、コーティング層を有する旨の特定はないから、未被覆人造黒鉛である。
したがって、引用発明の「第1負極活物質層」は「第1負極活物質粒子を含む」ことは、本件補正発明の「前記第1負極活物質層は、未被覆人造黒鉛を含」むことに相当する。
ウ 引用発明の「第2負極活物質粒子」は、「人造黒鉛を1次粒子とし、1次粒子が造粒化されて凝集した2次粒子及び2次粒子上に配置された非晶質炭素コーティング層からなる粒子」であるから、被覆人造黒鉛である。
したがって、引用発明の「第2負極活物質層」は「第2負極活物質粒子を含む」ことは、本件補正発明の「前記第2負極活物質層は、被覆人造黒鉛を含」むことに相当する。
エ 引用発明の「第1負極活物質粒子」及び「第2の負極活物質粒子」は、共に人造黒鉛であり、集電体に同じ量(2.5mAh/cm2のローディング量)だけ塗布してるので、「第1負極活物質粒子」と「第2の負極活物質粒子」の重量比は、負極活物質の総重量を基準として略5:5であるといえる。
したがって、引用発明の「第1負極活物質粒子」及び「第2の負極活物質粒子」の重量比は、本件補正発明の「未被覆人造黒鉛と被覆人造黒鉛との重量比は、負極活物質の総重量を基準として4:6~6:4であ」ることに含まれる。
オ 引用発明の「第1負極活物質粒子は、人造黒鉛を1次粒子とし、1次粒子が造粒化されて凝集した2次粒子であ」ることは、本件補正発明の「前記第1負極活物質層の負極活物質が未被覆人造黒鉛であ」ることに相当する。
引用発明の「第2負極活物質粒子は、人造黒鉛を1次粒子とし、1次粒子が造粒化されて凝集した2次粒子及び2次粒子上に配置された非晶質炭素コーティング層からなる粒子であ」ることは、本件補正発明の「前記第2負極活物質層の負極活物質が被覆人造黒鉛であ」ることに相当する。
カ 引用発明は「第1負極活物質粒子と、導電材と、バインダーと、増粘剤をそれぞれ96:1:2:1の重量比で混合して第1負極スラリーを製造し、第2負極活物質粒子と、導電材と、バインダーと、増粘剤をそれぞれ96:1:2:1の重量比で混合して第2負極スラリーを製造し」ているので、第1負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量と、第2負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量は、共に2質量%である。
そうすると、引用発明の第1負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量が2質量%であることは、本件補正発明の「第1負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量が、」「0.5~5重量%である」ことに含まれる。
但し、本件補正発明は「第1負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量が、第2負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量より大きい範囲で」あるのに対して、引用発明は,第1負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量と、第2負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量は、同量である点で相違する。
キ 引用発明の「リチウム二次電池用負極」は、本件補正発明の「リチウム二次電池用負極」に相当する。
上記アないしキによれば、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。
(一致点)
「集電体上に配置された第1負極活物質層、および前記第1負極活物質層上に配置された第2負極活物質層を含み、
前記第1負極活物質層は、未被覆人造黒鉛を含み、
前記第2負極活物質層は、被覆人造黒鉛を含み、
未被覆人造黒鉛と被覆人造黒鉛との重量比は、負極活物質の総重量を基準として4:6~6:4であり、
前記第1負極活物質層の負極活物質が未被覆人造黒鉛であり、前記第2負極活物質層の負極活物質が被覆人造黒鉛であり、
第1負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量が、0.5~5重量%である、リチウム二次電池用負極。」
(相違点)
本件補正発明は「第1負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量が、第2負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量より大きい範囲で」あるのに対して、引用発明は,第1負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量と、第2負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量は、同量である点。
(4)相違点についての判断
リチウム二次電池用負極において負極活物質層を複数の層で構成し、集電体に接して配置された負極活物質層のバインダーの含有量を、他の負極活物質層のバインダーの含有量より大きくして、集電体と負極活物質層との間の接着力を向上させる技術は周知である(例えば、引用文献2(上記「(2)イ」)、特開2008-258055号公報(【0025】、【0026】)、特開平10-270013号公報(【請求項1】、【請求項4】、【0009】)、特開平9-147834号公報(【0007】、【0008】)等参照)。
ここで、リチウム二次電池用負極において、集電体と負極活物質層との間の接着力を向上させることは一般的な課題であるから、引用発明の「リチウム二次電池用負極」においても上記周知技術を適用し、第1負極活物質層に含まれるバインダーの含量を第2負極活物質層より大きくすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、引用発明に周知技術を適用し、上記相違点に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)請求人の主張について
請求人は審判請求書において、引用文献1に記載の発明においては、第1負極活物質粒子として、天然黒鉛及び天然黒鉛上に配置された被覆層を含む粒子を使用することによって、接着力を既に向上させています(引用文献1の段落0038の記載参照)、従いまして、当業者が、引用文献1に記載の発明から出発した場合、集電体と負極活物質層との間の接着力を向上させるために、バインダーの含量を第1活物質と第2活物質とで異ならせて、「第1負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量が、第2負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量より大きい範囲で、0.5~5重量%である」とする構成を採用する必要性はなく、そのような構成をあえて採用する動機が当業者には全く存在していない旨を主張している。(審判請求書7頁5~16行)
しかしながら、上記「(2)ア(イ)」で指摘したように、引用文献1には実施例2において、第1負極活物質粒子として人造黒鉛を用いた発明が記載されているので、天然黒鉛を前提とする上記主張は的を得ないものである。
したがって、上記主張を採用できない。
(6)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和5年5月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(2)」に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
請求項1に係る発明に対する原査定の拒絶の理由1(特許法第29条第1項第3号)の概略は次のとおりである。
この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
1.韓国公開特許第10-2020-0073801号公報
3 引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記「第2[理由]2(2)ア」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記「第2の[理由]2」で検討した本件補正発明から、「第1負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量が、第2負極活物質層の中に含まれるバインダーの含量より大きい範囲で、0.5~5重量%である」に係る限定事項が削除されたものである。
本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2[理由]2(3)」「ア」~「オ」、「キ」に記載したとおり、本願発明と引用発明は、
「集電体上に配置された第1負極活物質層、および前記第1負極活物質層上に配置された第2負極活物質層を含み、
前記第1負極活物質層は、未被覆人造黒鉛を含み、
前記第2負極活物質層は、被覆人造黒鉛を含み、
未被覆人造黒鉛と被覆人造黒鉛との重量比は、負極活物質の総重量を基準として4:6~6:4であり、
前記第1負極活物質層の負極活物質が未被覆人造黒鉛であり、前記第2負極活物質層の負極活物質が被覆人造黒鉛である、リチウム二次電池用負極。」の点で一致する。
したがって、本願発明は引用文献1に記載された発明である。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-021629