特許拒絶査定不服審判
2025-002034
位置測位装置、速度計測装置、及び位置測位方法
- 審判番号
- 2025-002034
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-089886
- 請求日
- 2025年02月07日
- 審決日
- 2026年04月22日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社東芝
- 【請求人代理人】関根 毅
- 【請求人代理人】赤岡 明
- 【請求人代理人】新畠 弘之
- 審判長/審判官
- 審判長 後藤 亮治
- 審判官 谷垣 圭二
- 審判官 柳 重幸
- 分類
- P18 .121-Z (G01S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 89886「位置測位装置、速度計測装置、及び位置測位方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年12月 2日出願公開、特開2021-183955〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和2年5月22日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 3月 1日付け:拒絶理由通知書
同年 4月26日 :意見書、手続補正書の提出
同年 7月 8日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 9月 6日 :意見書、手続補正書の提出
同年12月10日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月20日 :原査定の謄本の送達)
令和7年 2月 7日 :審判請求書の提出
2 本願発明について
(1) 本願発明の認定
本願の請求項13に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年9月6日に提出された手続補正書により補正された請求項13に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項13】
人工衛星からの測位用信号を受信し、車両の第1位置を測位する第1測位部と、
自立測位用センサの出力に基づいて、前記車両の第1速度を計測する第1計測部と、
人工衛星からの信号を受信し、前記車両の第2速度を計測する第2計測部と、
前記第1位置と、前記第2速度との情報を用いて、前記測位用信号の受信障害が発生する不可視領域の開始点に前記車両の位置が一致する時点を算出して、前記車両が前記不可視領域に入る前に、前記時点に基づき前記第1計測部が計測した前記第1速度を前記車両の速度とする移行を開始する判別部と、
を備えた速度計測装置。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Dまでに分説する。
<本願明の分説>
A 人工衛星からの測位用信号を受信し、車両の第1位置を測位する第1測位部と、
B 自立測位用センサの出力に基づいて、前記車両の第1速度を計測する第1計測部と、
C 人工衛星からの信号を受信し、前記車両の第2速度を計測する第2計測部と、
D 前記第1位置と、前記第2速度との情報を用いて、前記測位用信号の受信障害が発生する不可視領域の開始点に前記車両の位置が一致する時点を算出して、前記車両が前記不可視領域に入る前に、前記時点に基づき前記第1計測部が計測した前記第1速度を前記車両の速度とする移行を開始する判別部と、
X を備えた速度計測装置。
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、位置測位装置、速度計測装置、及び位置測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道向け自動運転に向けて、位置測位と速度計測を同時に行う装置及び高精度化が求められている。列車の位置測位には、地上子を通過したことによる信号区間内の在線検知が一般に行われている。また、速度計測では、速度発電機(タコジェネレータ、以下TGと記す)による周波数変換により速度を計測する方法が一般に用いられている。
【0003】
また、人工衛星から送信された測位用電波信号を用いて測位する方法もあるが、この場合、鉄道沿線環境ではマルチパス等の問題から計測精度が最大±10mとなっており、自動運転向けの位置測位としては計測精度が低くなってしまう。また、トンネル、橋上駅舎等の高架下や地下区間等の衛星受信不可領域においても走行位置を把握できない恐れがある。
…(中略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
計測精度をより向上可能な位置測位装置、速度計測装置、及び位置測位方法を提供する。」
「【0017】
自立計測切替判別部26は、測位用電波信号SX1~SX4の電波状態、及び鉄道車両11の位置の少なくともいずれかに応じて、測位信号演算処理部21の出力する位置座標及び車両位置補正部25の出力する位置座標のいずれを鉄道車両11の位置座標とするか判別する。例えば、自立計測切替判別部26は、測位データ群DGを用いて、鉄道車両11が人工衛星12-1~12-4を捕捉できない環境下に存在するか否かを判別し、人工衛星12-1~12-4を捕捉できない環境下に存在する場合に、車両位置補正部25の出力する位置座標を主として用いる自立計測処理に自動的に切り替える。
また、自立計測切替判別部26は、測位信号演算処理部21の出力する位置座標を主として用いる測位演算状態(State1)、車両位置補正部25の出力する位置座標を主として用いる自立計測処理状態(State2)のいずれであるかを示す情報を記憶装置に27に時刻とともに記憶する。」
「【0019】
測位信号速度演算部29は、測位用電波信号SX1~SX4の電波を用いて鉄道車両11の速度を演算する。鉄道車両11では、加速時、及び減速時に空転滑走する場合がある。このため、鉄道車両11の速度発電機(タコジェネレータ)による周波数変換に基づく速度よりも、電波を用いて演算した速度の方が、一般的に精度がより高くなる。
【0020】
測位信号速度演算部29は、例えば人工衛星12-1~12-4から出力されている搬送波のドップラー効果により道車両11の速度を演算する。人工衛星12-1~12-4の搬送波周波数(L1帯 fs=1.5754 GHz)は厳密に管理されているため、この周波数を測って式(1)により、速度Vを演算する。一方で、人工衛星12-1~12-4は高速で移動しているため、1個の人工衛星の搬送波周波数だけでは対地速度を求めることはできない。このため、複数(例えば4個以上)の人工衛星12-1~12-4からの搬送波周波数を測定し、対地速度が演算される。また、測位信号演算処理部21と同様に、不可視領域を鉄道車両11が通過すると、搬送波周波数を使用して速度を計測することは不可能となる。
[図:0001436932000001.jpg]
以上が走行位置検知システム10の構成の説明であるが、次に各構成部の動作を説明する。」
「【0032】
図4は、不可視領域B1~B2が設定されている場合の処理環境を模式的に示す図である。鉄道車両11は、実空間の線路L1の軌道上を走行する。また、鉄道車両11は、地図上の線路L2の軌道情報と不可視領域B1~B2の情報を予め記憶している。また、図4では、不可視領域B1~B2以外の領域であるGNSS(全球測位衛星システム:Global Navigation Satellite System)区画S1、S3
と、不可視領域B1~B2に対応する自立計測区画S2が図示されている。なお、本実施形態では、不可視領域B1~B2は、測位用電波信号SX1~SX4の受信障害が発生する領域を意味する。」
「【図4】
[図:0001436932000002.jpg]
」
「【0059】
例えば従来のように、電波の受信強度の低下を検知して、切り換える場合には、低下が生じる位置が不可視領域B1~B2内に入った後である場合もあり、切替が遅れてしまう恐れがある。これに対して、鉄道車両11の現在位置が不可視領域B1~B2の開始点B1又はB2に対応するか否かを判定する場合には、鉄道車両11の速度情報も用いて、不可視領域B1~B2の開始点B1又はB2に到達する時点を算出して、開始点B1又はB2に到達する時点に合わせて、自立計測処理に移行することも可能である。これにより、自立計測処理への移行が遅れることが抑制される。例えば、鉄道車両11が時速200キロメートルなどで上り方向に高速走行中には、開始点B1に到達する前に自立計測処理への移行を開始し、切替点P1を開始点B1に一致させることも可能であり、従来では切替が遅れてしまう場合にも、より安定して位置測位を継続して行うことができる。また、開始点B1又はB2の位置を鉄道車両11の規定速度に合わせて不可視領域B1~B2の手前に設置してもよい。この場合、速度情報を用いなくとも自立計測処理に移行することが可能である。」
3 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由4(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由4(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.国際公開第2019/244683号(主たる引用文献)
引用文献4.韓国公開特許第10-2018-0054290号公報
引用文献5.特開2004-182006号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6.特開2008-126905号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7.国際公開第2017/145015号(周知技術を示す文献)
引用文献8.特開2019-131124号公報(周知技術を示す文献)
引用文献9.特開2019-131125号公報(周知技術を示す文献)
4 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である国際公開第2019/244683号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(2)の引用発明の認定に用いる記載に下線を付した。)。
ア 段落[0001]~[0005]
「[0001] 実施形態は、計測装置に関する。
背景技術
[0002] 鉄道車両の速度を算出する計測装置が知られている。計測装置は、例えば、鉄道車両に設置された速度発電機からの速度パルス信号及び車輪の半径等に基づいて速度を算出している。
先行技術文献
特許文献
[0003]特許文献1:特開2000-168552号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0004] しかしながら、鉄道車両の車輪の空転及び滑走等の影響によって、速度パルス信号と速度との関係に誤差が生じるため速度発電機からの速度パルス信号に基づいて計測装置が算出する速度の精度は十分ではなかった。
課題を解決するための手段
[0005] 上述した課題を解決し、実施形態の計測装置は、第1速度算出部と、第2速度算出部と、判定部と、を備える。第1速度算出部は、衛星測位システムの衛星からの衛星電波に基づいて鉄道車両の第1速度を算出する。第2速度算出部は、前記鉄道車両に設置されたセンサの検出値から前記鉄道車両の第2速度を算出する。判定部は、予め定められた条件に基づいて、前記第1速度及び前記第2速度のいずれかを採用するかを判定する。」
イ 段落[0008]、[図1]
「[0008] <第1実施形態>
図1は、第1実施形態の制御システム10が搭載される鉄道車両90の平面図である。図1に示すように、鉄道車両90に搭載された制御システム10は、GNSS(Global Navigation Satellite System:衛星測位システム)92の衛星94から衛星電波を受信する。制御システム10は、受信した衛星電波によって鉄道車両90の速度及び位置を算出して、鉄道車両90を制御する。」
「[図1]
[図:0001436932000003.jpg]
」
ウ 段落[0009]、[図2]
「[0009] 図2は、第1実施形態の制御システム10の全体構成を示すブロック図である。制御システム10は、鉄道車両90に搭載されて、鉄道車両90の制御全般を司る。図2に示すように、制御システム10は、主制御装置12と、計測装置14とを備える。」
「[図2]
[図:0001436932000004.jpg]
」
エ 段落[0013]~[0019]
「[0013] 計測装置14は、GNSS92の衛星94から受信した衛星電波から鉄道車両90の位置及び速度を示すGNSS位置及びGNSS速度を算出する。計測装置14は、後述するセンサにより検出されたデータから鉄道車両90の位置及び速度を示す自立位置及び自立速度を算出する。計測装置14は、GNSS位置及び自立位置のいずれかの位置を採用位置として採用し、採用位置を示す採用位置データ26を主制御装置12へ送信する。計測装置14は、GNSS速度及び自立速度のいずれかの速度を採用速度として採用し、採用速度を示す採用速度データ28を主制御装置12へ送信する。
[0014] 計測装置14は、センサ部30と、受信アンテナ32と、GNSS計測処理部34と、自立計測処理部36と、判定装置38とを備える。
[0015] センサ部30は、1または複数のセンサを有する。センサ部30は、例えば、地磁気センサ40と、加速度センサ42、及び、ジャイロセンサ44を有する。地磁気センサ40は、鉄道車両90の方位を検出して、方位データをGNSS計測処理部34へ出力する。加速度センサ42は、鉄道車両90の加速度を検出して、加速度データを自立計測処理部36へ出力する。ジャイロセンサ44は、鉄道車両90の角速度を検出して、角速度データを自立計測処理部36へ出力する。
[0016] 受信アンテナ32は、GNSS92の衛星94からの衛星電波を受信する。受信アンテナ32は、衛星電波をGNSS計測処理部34へ出力する。
[0017] GNSS計測処理部34は、CPU、GPU及びMPU等のハードウェアプロセッサであってよい。GNSS計測処理部34の一部または全部は、ASIC及びFPGA等の回路によって構成してもよい。GNSS計測処理部34は、地磁気センサ40から方位データを取得するとともに、受信アンテナ32から衛星電波を取得する。GNSS計測処理部34は、方位データ及び衛星電波に基づいて、GNSS位置及びGNSS速度を算出して、判定装置38へ出力する。
[0018] 自立計測処理部36は、CPU、GPU及びMPU等のハードウェアプロセッサであってよい。自立計測処理部36の一部または全部は、ASIC及びFPGA等の回路によって構成してもよい。自立計測処理部36は、加速度データを加速度センサ42から取得するとともに、角速度データをジャイロセンサ44から取得する。自立計測処理部36は、路線の状態を示す角度データ及び勾配データを主制御装置12から取得する。自立計測処理部36は、加速度データ、角速度データ、過去に算出した自立位置及び自立速度、角度データ、及び、勾配データに基づいて、自立的に自立位置及び自立速度を算出して、判定装置38へ出力する。
[0019] 判定装置38は、GNSS位置及び自立位置のうち、いずれか一方を採用位置として採用する。判定装置38は、GNSS速度及び自立速度のうち、いずれか一方を主採用速度として採用する。判定装置38は、採用位置データ26及び採用速度データ28を主制御装置12へ送信する。」
オ 段落[0020]~[0021]、[図3]
「[0020] 図3は、計測装置14の機能を説明するブロック図である。
[0021] 図3に示すように、GNSS計測処理部34は、位置用衛星選択部50と、速度用衛星選択部52と、GNSS位置算出部54と、GNSS速度算出部56とを有する。GNSS計測処理部34は、例えば、GNSS計測用プログラムを読み込むことによって、位置用衛星選択部50、速度用衛星選択部52、GNSS位置算出部54、及び、GNSS速度算出部56の機能を実現してもよい。位置用衛星選択部50、速度用衛星選択部52、GNSS位置算出部54、及び、GNSS速度算出部56の機能の一部または全部は、ASIC及びFPGA等の回路によって実現してもよい。」
「[図3]
[図:0001436932000005.jpg]
」
カ 段落[0029]~[0032]
「[0029] 判定装置38は、判定処理部62と、判定記憶部64とを有する。
[0030] 判定処理部62は、CPU、GPU及びMPU等のハードウェアプロセッサであってよい。判定処理部62は、ASIC及びFPGA等の回路によって構成してもよい。判定処理部62は、判定部66と、送信部68とを有する。判定処理部62は、判定部66及び送信部68の機能を実現してもよい。判定部66及び送信部68の機能の一部または全部は、ASIC及びFPGA等の回路によって実現してもよい。
[0031] 判定部66は、予め定められた条件に基づいて、GNSS位置及び自立位置のいずれを採用位置として採用するかを判定するとともに、予め定められた条件に基づいて、GNSS速度及び自立速度のいずれを採用速度として採用するかを判定する。具体的には、判定部66は、GNSS位置算出部54、GNSS速度算出部56、自立位置算出部58及び自立速度算出部60からGNSS位置データ、GNSS速度データ、自立位置データ、及び、自立速度データを取得する。判定部66は、取得したGNSS位置データ及び自立位置データを位置データ72として判定記憶部64に格納するとともに、GNSS速度データ及び自立速度データを速度データ74として判定記憶部64に格納する。
[0032] 判定部66は、位置用衛星選択部50の選択結果である位置用衛星有効フラグに基づいて、取得したGNSS位置データ及び自立位置データのいずれか一方を採用位置データ26として採用するかを判定する。具体的には、判定部66は、位置用衛星有効フラグが有効の場合、GNSS位置データを採用位置データ26として採用し、位置用衛星有効フラグが無効の場合、自立位置データを採用位置データ26として採用するかを判定する。判定部66は、速度用衛星選択部52の選択結果である選択結果としての速度用衛星有効フラグに基づいて、GNSS速度データ及び自立速度データのいずれか一方を採用速度データ28として採用するかを判定する。具体的には、判定部66は、速度用衛星有効フラグが有効の場合、GNSS速度データを採用速度データ28として採用し、速度用衛星有効フラグが無効の場合、自立速度データを採用速度データ28として採用する。判定部66は、算出した時刻または受信した時刻と関連付けて採用した採用位置データ26及び採用速度データ28を採用データ76として判定記憶部64に格納するとともに、送信部68に出力する。」
キ 段落[0057]~[0059]、[図11]
「[0057] <第3実施形態>
判定処理部62による採用する採用速度データ28の採用方法が異なる第3実施形態について説明する。第3実施形態において、GNSS位置算出部54は、第2位置算出部の例である。尚、自立位置算出部58が、第2位置算出部として機能してもよい。
[0058] 図11は、第3実施形態の制御システム10の全体構成図である。図11に示すように、第3実施形態の主制御装置12の主制御記憶部22は、地図データベース29を更に記憶する。地図データベース29は、鉄道車両90の路線上の駅及びトンネル等の対象物の位置に関する位置情報を含む。換言すれば、地図データベース29は、衛星電波を受信しにくい対象物の情報を含む。主制御装置12は、地図データベース29に含まれる対象物の位置情報を判定装置38へ出力する。
[0059] 判定装置38の判定部66は、鉄道車両90の位置と対象物の位置とに基づいて、GNSS速度及び自立速度のいずれを採用速度として採用するかを判定する。例えば、判定部66は、地図データベース29に含まれる対象物の位置情報を取得し、当該位置情報に基づいて、採用位置データ26が示す鉄道車両90の位置が自立採用領域か否かを判定する。自立採用領域は、駅及びトンネル等の対象物及び対象物の近傍を含む領域であって、衛星電波を受信しにくい領域である。判定部66は、鉄道車両90の位置が自立採用領域である場合、自立速度データを採用速度データ28として採用する。判定部66は、鉄道車両90の位置が自立採用領域となった後、速度用衛星有効フラグが有効になると、GNSS速度データを採用速度データ28として採用する。」
「[図11]
[図:0001436932000006.jpg]
」
(2) 引用発明の認定
前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、第3実施形態([図11])に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「受信した衛星電波によって鉄道車両90の速度及び位置を算出して、鉄道車両90を制御する制御システム10であって、([0008])
制御システム10は、主制御装置12と、計測装置14とを備え、([0009])
計測装置14は、センサ部30と、受信アンテナ32と、GNSS計測処理部34と、自立計測処理部36と、判定装置38とを備え、([0014])
センサ部30は、地磁気センサ40と、加速度センサ42、及び、ジャイロセンサ44を有し、([0015])
受信アンテナ32は、GNSS92の衛星94からの衛星電波を受信して、衛星電波をGNSS計測処理部34へ出力し、([0016])
GNSS計測処理部34は、方位データ及び衛星電波に基づいて、GNSS位置及びGNSS速度を算出して、判定装置38へ出力し、([0017])
自立計測処理部36は、加速度データを加速度センサ42から取得するとともに、角速度データをジャイロセンサ44から取得し、加速度データ、角速度データ、過去に算出した自立位置及び自立速度、角度データ、及び、勾配データに基づいて、自立的に自立位置及び自立速度を算出して、判定装置38へ出力し、([0018])
判定装置38の判定部66は、地図データベース29に含まれる対象物の位置情報を取得し、当該位置情報に基づいて、採用位置データ26が示す鉄道車両90の位置が自立採用領域か否かを判定するものであって、自立採用領域は、駅及びトンネル等の対象物及び対象物の近傍を含む領域であって、衛星電波を受信しにくい領域であり、([0059])
判定部66は、鉄道車両90の位置が自立採用領域である場合、自立速度データを採用速度データ28として採用する、([0059])
制御システム10。」
5 引用文献4の記載事項及び引用文献4技術事項の認定
(1) 引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である韓国公開特許第10-2018-0054290号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。続く括弧内に当合議体による日本語訳を示している。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
ア 段落[0001]~[0004]
「
[図:0001436932000007.jpg]
[図:0001436932000008.jpg]
」
([0001] 本発明は、陰影区間誤差改善装置、それを含むシステム及びその方法に関するものであり、より詳細には、他車から受信されるV2Xデータ、ナビゲーション装置のマップデータ、カメラ、車両センサなどの情報を利用して陰影区間誤差を改善する技術に関するものである。
[0002] 現在、自律走行/V2Xなどにおいて、陰影区間のGNSS(Global Navigation Satellite System)測位補正のために、推測航法(Dead Reckoning: DR)が適用されている。こうした推測航法の実施時、車両システムはGNSS信号と車両内のセンサー情報を利用するが、特に陰影区間ではGNSSよりもセンサー値の比重を高く設定して使用する。
[0003] 陰影区間において初期基準となるGNSS値が重要であるが、従来の推測航法は最初のGNSSの品質に対する考慮が不十分である。すなわち、車両がトンネルに進入する場合、周囲の山によって遮断されたり、マルチパスによって良好でない状態のGNSSを推測航法の基準点として利用することで、センサーによる補正が行われても、最初のGNSSの誤差値が大きいため補正がうまく行われないという問題がある。
[0004] 本発明の実施形態は、走行中の車両の走行経路の前方に位置する電波陰影区間を事前に認識し、当該電波陰影区間に進入する前に、車両が予備陰影区間に進入した場合、GNSS信号の代わりにセンサーのみを用いて推定航法を実行することにより、推定航法の誤差を改善して信頼性を高めることができる電波陰影区間誤差改善装置、これを含むシステム及びその方法を提供することを目的とする。
)
イ 段落[0028]~[0030]、[図1]
「
[図:0001436932000009.jpg]
」
([0028] 図1は本発明の実施例に係る陰影区間誤差改善システムの構成図である。
[0029] 図1を参照すると、本発明の実施例に係る陰影区間誤差改善システムは、陰影区間誤差改善装置(100)、ナビゲーション装置(200)、GNSSアンテナ(300)、カメラ(400)、オドメーター(odometer500)、センサモジュール(600)を含む。
[0030] 陰影区間誤差改善装置(100)は、V2Xデータ、マップ(MAP)データ、交通標識などの通知情報等を利用して陰影区間をあらかじめ認識し、車両が陰影区間直前の一定区間である予備陰影区間に進入する場合、GNSS(global navigation satellite system)よりもセンサモジュール(600)を通じて推測航法を提供し、陰影区間を通過した後は再びGNSSを利用して推測航法を提供することにより、陰影区間での推測航法誤差を改善する。このとき、V2Xデータは前方の他車から受信する走行経路を含むデータであり、マップデータはナビゲーション装置(200)から受信した道路マップデータであり、交通標識などの通知情報はカメラ(400)を通じて取得された情報である。)
「[図1]
[図:0001436932000010.jpg]
」
ウ 段落[0041]
「
[図:0001436932000011.jpg]
」
([0041] すなわち、制御部(160)は、予備陰影区間に進入する前は、GNSS情報とセンサーモジュール(600)の情報を用いて推測航法を提供するように制御し、予備陰影区間に進入すると、センサーモジュール (600)の情報のみを利用して推測航法を提供するように制御し、陰影区間を通過すると再びGNSS情報とセンサーモジュール(600)の情報を利用して推測航法を提供するように制御することで、陰影区間におけるGNSS情報の誤差を最小限に抑えることができる。)
エ 段落[0056]~[0059]、[図3a]
「
[図:0001436932000012.jpg]
[図:0001436932000013.jpg]
」
([0056] 図3aは、本発明の実施例に係るマップデータ又はV2Xデータを利用した陰影区間誤差改善時における車両の移動に伴う測位方法の変化を説明するための図である。
[0057] 以下、図3aおよび下記の表1を参照して、車両の位置変化(501、502、503、504、505)に応じた測位方法について説明する。
[0058] まず、車両が移動した位置である501、502地点ではGNSS情報から陰影区間情報を認識することができる。車両が予備陰影区間の開始地点(403)を通過して503に到達すると、陰影区間誤差改善装置(100)は陰影区間モードに入り、センサモジュール(600)のみを利用して推測航法を行うようにし、車両が陰影区間(D1)に進入して504地点に位置する場合も、陰影区間誤差改善装置(100)はセンサモジュール(600)のみを利用して推測航法を行うようにする。その後、車両が陰影区間(D1)を通過して505地点に位置する場合、陰影区間誤差改善装置(100)は陰影区間モードを解除し、再びGNSS情報を受信して推測航法を行うようにする。
[0059] 表1
[図:0001436932000014.jpg]
)
「[図3a]
[図:0001436932000015.jpg]
」
(2) 引用文献4技術事項の認定
前記(1)に摘記した事項から、次の技術事項が引用文献4に記載されていると認められる。(以下「引用文献4技術事項」という。)
<引用文献4技術事項>
「車両の位置変化に応じた測位方法であって、([0057])
GNSS情報から事前にトンネルなど([0003])の陰影区間情報を認識し、車両が予備陰影区間の開始地点(403)を通過すると、陰影区間モードに入り、センサモジュール(600)のみを利用して推測航法を行うようにし、車両が陰影区間(D1)に位置する場合も、センサモジュール(600)のみを利用して推測航法を行うようにし、その後、車両が陰影区間(D1)を通過して陰影区間外に位置する場合、陰影区間モードを解除し、再びGNSS情報を受信して推測航法を行うことにより、([0058])
予備陰影区間に進入する前は、GNSS情報とセンサーモジュール(600)の情報を用いて推測航法を提供するように制御し、予備陰影区間に進入すると、センサーモジュール(600)の情報のみを利用して推測航法を提供するように制御し、陰影区間を通過すると再びGNSS情報とセンサーモジュール(600)の情報を利用して推測航法を提供するように制御する、([0041])
測位方法。」
6 引用文献5~9の記載事項及び周知技術の認定
(1) 引用文献5に記載された事項
拒絶査定において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2004-182006号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
車両の走行安全装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両がトンネルに進入した直後やトンネル内から脱出した直後は、運転者の視野環境の変化が大きく、運転者は明るさの変化に視覚が追従できずに心理的に不安な状況に陥りやすかった。」
「【0031】
制御回路29は、図5のS320に示すように、経路計算処理の結果として得られた現在位置から目的地までの経路上に存在するトンネルの開始位置と終了位置に至るまでのそれぞれの所要時間と距離を、地図データに記録されたトンネル位置座標と、現在位置検出処理によって求めた現在位置と、車速センサ13から検出された車速とに基づいて算出する。例えば、目的地に到着するまでの所要時間や距離を計算する従来から行われている処理を流用して、トンネルに至るまでの所要時間や距離を求めるようにしてもよい。
【0032】
そして、制御回路29は、算出したトンネル開始位置に至るまでの所要時間(予測されたトンネル進入までの所要時間)と距離、算出したトンネル終了位置に至るまでの所要時間(予測されたトンネル脱出までの所要時間)と距離に基づいて透過度可変窓ガラス15の透過度(透明度)を変化させる制御を行う。
【0033】
例えば、トンネルまでの所要時間が、所定の時間(図5のS500で求める進入所定時間)(例えば10分前)に達した時点から、トンネルまでの距離が小さくなればなる程、トンネル内の明るさに近くなるように、透過度可変窓ガラス15の透過度を徐々に低下させる。すなわち、透過度可変窓ガラス15は遮光幕で覆ったように徐々に暗くなっていく。そして、トンネルに進入したことを検知した時、透過度を向上させる。トンネルに進入したことは、例えば、トンネルまでの所要時間が0となったこと、現在位置算出処理によって算出した現在位置が地図データに記憶されたトンネル開始位置とが所定の範囲内となったこと(例えば一致した場合)、輝度算出処理によって算出された車載カメラ11から得られた画像の平均輝度が急激に低下したことなどのいずれか、またはこれらの組み合わせによって検知することができる。」
(2) 引用文献6に記載された事項
拒絶査定において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2008-126905号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、トンネルを通行する際の車窓の透過率を制御する、車窓透過率制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルへの車両の進入またはトンネルからの車両の脱出に応じて、車窓の透過度を変化させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された従来技術は、トンネルまでの所要時間が所定時間に達した地点から透過度をトンネルまでの距離に応じて徐々に下げていきトンネルまでの距離が零になる時点で透過度が約50%になるように制御し、トンネルに進入したことを検知した時、透過度を100%に戻すように制御する。一方、トンネルからの脱出を検知した場合に、透過度を約50%まで下げ、徐々に100%に戻すようにしている。
【特許文献1】特開2004-182006号公報」
「【0017】
ナビゲーション装置4は、GPS装置と地図DB(データベース)を有している。GPS装置は、GPS受信機によるGPS衛星からの受信情報に基づいて、自車の位置を2次元若しくは3次元の座標データによって特定する装置である。一方、地図DBは、高精度の地図情報を記憶している。高精度の地図情報には、直線路、カーブ、分岐路、路面傾斜及びカント等の道路形状や地形に関する情報や、トンネル、交差点、踏切、駐車場、有料道路の料金所(ETCレーン)などの構造物の存在地点の情報がその地点の座標データとともに含まれている。ナビゲーション装置4の地図情報には、特に各トンネルの入口地点や出口地点の座標データ等の位置情報が含まれ、更には各トンネルの総延長距離やその内部の照度情報が含まれてもよい。地図DB内の地図情報は、車車間通信や路車間通信や所定の管理センターなどの外部との通信を介してリアルタイムに更新可能にしてもよく、あるいは、CDやDVDなどの媒体を介して更新可能にしてもよい。したがって、ナビゲーション装置4は、GPS装置により検出された車両位置と地図DB内の地図情報に基づいて、自車が地図上のどのような地点に位置しているのかを把握することができる。また、ナビゲーション装置4は、GPS装置により検出された車両位置に基づいて車両の進行している方向に存在するトンネルの出入口に関する座標データ等の位置情報を地図DBから抽出し、現在地点からトンネルの入口地点又は出口地点までの到達距離を算出することができる。また、ナビゲーション装置4は、例えば車速センサからの車速信号と地図情報を用いることによってGPS装置が使用できないトンネル内の走行位置や、現在地点からトンネルの入口地点又は出口地点までの所要時間を算出することができる。
【0018】
調光ECU5は、車載LAN3を介して、照度センサ1又はボデーECU2から照度検出値を取得したり、ナビゲーション装置4から到達距離や所要時間や地図情報を取得したりすることによって、調光ガラス6の透過率を変化させる調光制御を実行する。調光ECU5は、所定の周期で照度センサ1又はボデーECU2から照度検出値をサンプリングする。また、調光ECU5は、例えばナビゲーション装置4からの到達距離や所要時間並びに照度センサ1又はボデーECU2からの照度検出値に基づいて、調光ガラス6の目標透過率を算出するとともに、調光ガラス6の透過率の変更速度(目標透過率まで変化させる制御時間)を算出する。」
(3) 引用文献7に記載された事項
拒絶査定において引用された、本願の出願前に発行された文献である国際公開第2017/145015号(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。
「[0007]
人間の目は、明暗の差に慣れるのに時間がかかる。例えば、トンネル内への進入直後、あるいはトンネル外への脱出直後では明暗の差が大きく、乗員が眩しさを感じやすい。」
「[0037]
判定回路111は、例えば、イメージセンサで移動体100の前方を撮像し、撮像された画像を画像処理することで明暗の変化による眩しさを生じさせる対象物を検出し、情報を信号SFLAGとして出力する。または、判定回路111は、衛星測位システム(Global Position System;以下GPS)および地図情報を組み合わせることで、明暗の変化による眩しさを乗員が感じる地点を予測し、情報を信号SFLAGとして出力する。
[0038]
明暗の変化による眩しさを乗員が感じる地点は、例えば、トンネルの入り口、または出口である。または、屋外から建物へ移動する際の出入り口、または地下駐車場から屋外へ移動する際の出入り口等である。」
「[0053]
移動体100の制御回路101において、演算回路114は検出回路113から移動体100の移動する速度(移動速度)に関する情報を取得し、眩しさを感じる地点と現在の地点との距離、および移動体100の移動速度から眩しさを感じる地点までにかかる時間(tFLAG)を算出する(ステップS103)。移動体100の移動速度に関する情報は、上述したように信号VMOVとして演算回路114に出力される。現在の地点の情報は、GPS等によって取得すればよい。」
「[0058]
明暗の変化に順応する時間tTHと、明暗の変化による眩しさを乗員が感じる地点までにかかる時間tFLAGとを比較し、時間tFLAGがtTHも短ければ窓部102の光の透過率を段階的に変化させる構成とすることで、不必要に移動体100内の照度を低下させることを防ぐことができる。加えて、眩しさの低減に必要な時間のみ光の透過率を段階的に変化させる構成とできる。」
(4) 引用文献8に記載された事項
拒絶査定において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2019-131124号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、車両窓制御システムおよび車両窓制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両がトンネル入口に到達したことを判定すると、ウィンドを上昇させるように制御信号を出力する技術が知られている(特許文献1、参照。)。特許文献1によれば、ウィンドが閉じた状態でトンネルを走行するため、トンネル内に立ち込めている排気ガスが車両内に入ること防止できる。」
「【0004】
しかしながら、特許文献1において、車両がトンネル入口に到達した段階でウィンドを閉じ始めても、ウィンドが閉じ切らない間にトンネルに進入してしまうという問題があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、窓が全閉状態になる前に車両がトンネルに進入する可能性を低減できる技術を提供することを目的とする。」
「【0028】
図2Eは、トンネルHの手前の道路の模式図である。処理タイミング設定モジュール21bの機能により制御部20は、現在時刻と、現在地からトンネルHの入口までの走行距離と、車速とに基づいて、トンネルHの入口への到達予定時刻TZを取得する。具体的に、制御部20は、現在地からトンネルHの入口までの走行距離を車速で除算して得られた期間を、現在時刻に加算することにより、トンネルHの入口への到達予定時刻TZを取得する。到達予定時刻TZの算出に使用する車速は、測位部51の車速センサによって計測された車速であってもよいし、トンネルHの手前のリンクの制限速度であってもよい。また、車速は、車両Aが自動運転されている場合、到達予定時刻TZの算出に使用する車速は、自動運転で計画された車速であってもよい。
【0029】
処理タイミング設定モジュール21bの機能により制御部20は、車両情報30bに基づいて車両Aが備えるすべての窓FL,FR,BL,BRが全閉状態となるのに要する所要期間Tを取得し、車両AがトンネルHの入口に到達するタイミング(到達予定時刻TZ)から当該所要期間T以上前のタイミングを処理タイミングTXとして設定する。
本実施形態において、制御部20は、到達予定時刻TZから所要期間Tを減算した時刻を処理タイミングTXとして設定する。なお、制御部20は、所要期間Tに安全期間TYを加算した期間を減算した時刻を到達予定時刻TZから処理タイミングTXとして設定してもよい。安全期間TYは、所要期間Tの予測誤差を考慮して処理タイミングTXを早めのタイミングに補正するための期間であり、例えば5秒であってもよい。」
「
[図:0001436932000016.jpg]
」
(5) 引用文献9に記載された事項
拒絶査定において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2019-131125号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、車両窓制御システムおよび車両窓制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両がトンネル入口に到達したことを判定すると、ウィンドを上昇させるように制御信号を出力する技術が知られている(特許文献1、参照。)。特許文献1によれば、ウィンドが閉じた状態でトンネルを走行するため、トンネル内に立ち込めている排気ガスが車両内に入ること防止できる。」
「【0004】
しかしながら、特許文献1において、車両がトンネル入口に到達した段階でウィンドを閉じ始めても、ウィンドが閉じ切らない間にトンネルに進入してしまうという問題があった。特に、窓が大きく開いている場合には、窓が閉まるまでに要する期間が長くなるため、窓が閉じ切る前に車両がトンネルに進入する可能性が高くなる。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、窓が全閉状態になる前に車両がトンネルに進入する可能性を低減できる技術を提供することを目的とする。」
「【0028】
図2Eは、トンネルHの手前の道路の模式図である。処理タイミング設定モジュール21bの機能により制御部20は、現在時刻と、現在地からトンネルHの入口までの走行距離と、車速とに基づいて、トンネルHの入口への到達予定時刻TZを取得する。具体的に、制御部20は、現在地からトンネルHの入口までの走行距離を車速で除算して得られた期間を、現在時刻に加算することにより、トンネルHの入口への到達予定時刻TZを取得する。到達予定時刻TZの算出に使用する車速は、測位部51の車速センサによって計測された車速であってもよいし、トンネルHの手前のリンクの制限速度であってもよい。また、車速は、車両Aが自動運転されている場合、到達予定時刻TZの算出に使用する車速は、自動運転で計画された車速であってもよい。
【0029】
処理タイミング設定モジュール21bの機能により制御部20は、車両情報30bに基づいて車両Aが備えるすべての窓FL,FR,BL,BRが全閉状態となるのに要する所要期間Tを取得し、車両AがトンネルHの入口に到達するタイミング(到達予定時刻TZ)から当該所要期間T以上前のタイミングを処理タイミングTXとして設定する。
本実施形態において、制御部20は、到達予定時刻TZから所要期間Tを減算した時刻を処理タイミングTXとして設定する。なお、制御部20は、所要期間Tに安全期間TYを加算した期間を減算した時刻を到達予定時刻TZから処理タイミングTXとして設定してもよい。安全期間TYは、所要期間Tの予測誤差を考慮して処理タイミングTXを早めのタイミングに補正するための期間であり、例えば5秒であってもよい。」
「
[図:0001436932000017.jpg]
」
(6) 周知技術の認定
前記(1)~(5)に摘記した引用文献5~9の記載事項に例示されているように、「車載装置」の技術分野において、次の技術事項は周知技術である。(以下「周知技術」という。)
<周知技術>
「所定の位置において処理状態を切り替えるために、切り替えるタイミングを、位置情報と速度に基づいて決定すること。」
7 本願発明と引用発明の対比
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成Xの観点(速度計測装置について)
(ア) 構成Xは、「速度計測装置」の発明であることである。
(イ) 引用発明における「制御システム10」は、「鉄道車両90の速度」「を算出[する]」ものであるから、本願発明にいうところの「速度計測装置」に相当するといえる。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、次の点において一致する。
「速度計測装置」の発明である点。
イ 構成Aの観点(第1測位部について)
(ア) 構成Aは、「人工衛星からの測位用信号を受信し、車両の第1位置を測位する第1測位部」を備えることである。
(イ) 引用発明における「受信アンテナ32」は、「GNSS92の衛星94からの衛星電波を受信[する]」ものであるから、本願発明にいうところの「人工衛星からの測位用信号を受信[する]」構成に相当するといえる。
(ウ) 引用発明が「鉄道車両90の速度及び位置を算出[する]」ものであることを踏まえると、引用発明における「方位データ及び衛星電波に基づいて、GNSS位置」「を算出[する]」「GNSS計測処理部34」は、本願発明にいうところの「車両の第1位置を測位する」構成に相当するといえる。
(エ) そうすると、本願発明と、「GNSS92の衛星94からの衛星電波を受信して、衛星電波をGNSS計測処理部34へ出力[する]」「受信アンテナ32」及び、「方位データ及び衛星電波に基づいて、GNSS位置」「を算出[する]」「GNSS計測処理部34」を備える引用発明は、次の点において一致する。
「人工衛星からの測位用信号を受信し、車両の第1位置を測位する第1測位部」を備える点。
ウ 構成Bの観点(第1計測部について)
(ア) 構成Bは、「自立測位用センサの出力に基づいて、前記車両の第1速度を計測する第1計測部」を備えることである。
(イ) 引用発明における「加速度センサ42」及び「ジャイロセンサ44」は、本願発明にいうところの「自立測位用センサ」に相当するといえる。
(ウ) 引用発明が「鉄道車両90の速度及び位置を算出[する]」ものであることを踏まえると、引用発明における「自立的に」「自立速度を算出[する]」「自立計測処理部36」は、本願発明にいうところの「車両の第1速度を計測する」構成に相当するといえる。
(エ) そうすると、本願発明と、「加速度データを加速度センサ42から取得するとともに、角速度データをジャイロセンサ44から取得し、加速度データ、角速度データ、過去に算出した自立位置及び自立速度、角度データ、及び、勾配データに基づいて、自立的に」「自立速度を算出[する]」「自立計測処理部36」を備える引用発明は、次の点において一致する。
「自立測位用センサの出力に基づいて、前記車両の第1速度を計測する第1計測部」を備える点。
エ 構成Cの観点(第2計測部について)
(ア) 構成Cは、「人工衛星からの信号を受信し、前記車両の第2速度を計測する第2計測部」を備えることである。
(イ) 前記イ(イ)及び(ウ)を踏まえると、引用発明における「方位データ及び衛星電波に基づいて、」「GNSS速度を算出[する]」「GNSS計測処理部34」は、本願発明にいうところの「車両の第2速度を計測する」構成に相当するといえる。
(ウ) そうすると、本願発明と、「GNSS92の衛星94からの衛星電波を受信して、衛星電波をGNSS計測処理部34へ出力[する]」「受信アンテナ32」及び、「方位データ及び衛星電波に基づいて、」「GNSS速度を算出[する]」「GNSS計測処理部34」を備える引用発明は、次の点において一致する。
「人工衛星からの信号を受信し、前記車両の第2速度を計測する第2計測部」を備える点。
オ 構成Dの観点(判別部について)
(ア) 構成Dは、「前記第1位置と、前記第2速度との情報を用いて、前記測位用信号の受信障害が発生する不可視領域の開始点に前記車両の位置が一致する時点を算出して、前記車両が前記不可視領域に入る前に、前記時点に基づき前記第1計測部が計測した前記第1速度を前記車両の速度とする移行を開始する判別部」を備えることである。
(イ) 引用発明における「判定装置38の判定部66」は、「地図データベース29に含まれる対象物の位置情報を取得し、当該位置情報に基づいて、採用位置データ26が示す鉄道車両90の位置が自立採用領域か否かを判定し、」「鉄道車両90の位置が自立採用領域である場合、自立速度データを採用速度データ28として採用する」ものである。
ここで、「自立速度データを採用速度データ28として採用する」前には、「GNSS速度」と共に「GNSS位置」が採用されている状態であることは明らかであるから、引用発明においては、「GNSS位置」と「地図データベース29に含まれる対象物の位置情報」の比較によって「鉄道車両90の位置が自立採用領域か否かを判定し、」「鉄道車両90の位置が自立採用領域である場合、自立速度データを採用速度データ28として採用する」ものであるといえる。
そうすると、前記イ、ウを踏まえると、引用発明が前記「判定装置38の判定部66」を備えることは、本願発明において「前記第1位置」「の情報を用いて、」「前記第1計測部が計測した前記第1速度を前記車両の速度とする移行を開始する判別部」を備えることに相当する。
(ウ) 以上の検討結果を踏まえると、本願発明と引用発明の構成Dの観点における一致点及び相違点は、次のa及びbのとおりである。
a 構成Dの観点における一致点
「前記第1位置」「の情報を用いて、」「前記第1計測部が計測した前記第1速度を前記車両の速度とする移行を開始する判別部」を備える点。
b 構成Dの観点における相違点
本願発明においては、
「判別部」が「前記第1位置と、前記第2速度との情報を用いて、前記測位用信号の受信障害が発生する不可視領域の開始点に前記車両の位置が一致する時点を算出して、前記車両が前記不可視領域に入る前に、前記時点に基づき」前記第1速度への移行を開始するのに対して、
引用発明においては、「鉄道車両90」が「自立採用領域」に入る前に「自立速度データ」への移行が開始されることが特定されていない点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「人工衛星からの測位用信号を受信し、車両の第1位置を測位する第1測位部と、
自立測位用センサの出力に基づいて、前記車両の第1速度を計測する第1計測部と、
人工衛星からの信号を受信し、前記車両の第2速度を計測する第2計測部と、
前記第1位置の情報を用いて、前記第1計測部が計測した前記第1速度を前記車両の速度とする移行を開始する判別部と、
を備えた速度計測装置。」
である点。
イ 相違点
本願発明においては、
「判別部」が「前記第1位置と、前記第2速度との情報を用いて、前記測位用信号の受信障害が発生する不可視領域の開始点に前記車両の位置が一致する時点を算出して、前記車両が前記不可視領域に入る前に、前記時点に基づき」前記第1速度への移行を開始するのに対して、
引用発明においては、「鉄道車両90」が「自立採用領域」に入る前に「自立速度データ」への移行が開始されることが特定されていない点。
8 判断
前記相違点について検討する。
(1) 前記5(2)で認定したとおり、引用文献4には「車両の位置変化に応じた測位方法であって、GNSS情報から事前にトンネルなどの陰影区間情報を認識し、車両が予備陰影区間の開始地点(403)を通過すると、陰影区間モードに入り、センサモジュール(600)のみを利用して推測航法を行うようにし、車両が陰影区間(D1)に位置する場合も、センサモジュール(600)のみを利用して推測航法を行うようにし、その後、車両が陰影区間(D1)を通過して陰影区間外に位置する場合、陰影区間モードを解除し、再びGNSS情報を受信して推測航法を行うことにより、予備陰影区間に進入する前は、GNSS情報とセンサーモジュール(600)の情報を用いて推測航法を提供するように制御し、予備陰影区間に進入すると、センサーモジュール(600)の情報のみを利用して推測航法を提供するように制御し、陰影区間を通過すると再びGNSS情報とセンサーモジュール(600)の情報を利用して推測航法を提供するように制御する、測位方法。」(引用文献4技術事項)が開示されている。
したがって、同様にトンネルなどの自立採用領域においてセンサによる自立速度データを採用する引用発明において、引用文献4技術事項を勘案して、「GNSS速度」ではなく「自立速度データ」を採用する区間として、トンネルなどの「自立採用領域」のみでなく、それ以前の「領域」(予備陰影区間に対応する)を含めることは、当業者が容易に想到し得たものである。
(2) ここで、前記6(6)で認定したとおり、「車載装置」の技術分野において、「所定の位置において処理状態を切り替えるために、切り替えるタイミングを、位置情報と速度に基づいて決定すること。」は周知技術である。
そして、引用発明において引用文献4技術事項を適用する際に、トンネルなどの「自立採用領域」以前の「領域」の開始地点において、「自立速度データ」による処理が円滑に行われることを担保すべく、前記周知技術を知悉する当業者であれば、車両の現在位置(本願発明の「第1位置」に対応する。以下同様。)と速度(第2速度)の情報を用いて、当該開始地点(不可視領域の開始点)に車両が到達する時点(車両の位置が一致する時点)を算出し、当該時点で「自立速度データ」による処理が間に合うように、当該時点の前から(前記車両が前記不可視領域に入る前に、前記時点に基づき)「自立速度データ」による処理への移行を開始する(第1速度を前記車両の速度とする移行を開始する)ことは、当然になし得た事項にすぎない。
(3) そうすると、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、引用文献4技術事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献4技術事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
9 請求人の主張について
(1) 請求人の主張内容
請求人は審判請求書3.1(b)において、「第1位置」と「第2速度」との「情報を用いて」「測位用信号の受信障害が発生する不可視領域の開始点」に「車両の位置が一致する」「時点」を「算出して」「前記車両が前記不可視領域に入る前」に「前記」「時点」に「基づき」「前記車両の位置を前記第1位置から前記第2位置とする移行を開始する」点について、引用文献4に記載されておらず、また引用文献5~9についても、本願発明の特徴部について開示も示唆もない旨を主張している。
(2) 請求人の主張についての検討
請求人の主張は、前記7(2)イにおいて認定した相違点に係る構成についてのものであるところ、前記8において説示したとおり、引用発明において前記相違点に係る構成を備えるようにすることは、引用発明、引用文献4技術事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるから、請求人の主張は採用できない。
10 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2025-002034