特許拒絶査定不服審判
2023-020988
ビタミンB12類含有組成物
- 審判番号
- 2023-020988
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-102033
- 請求日
- 2023年12月08日
- 審決日
- 2025年07月02日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】小林製薬株式会社
- 【請求人代理人】田中 順也
- 【請求人代理人】水谷 馨也
- 【請求人代理人】迫田 恭子
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 松本 陶子
- 審判官 柴田 昌弘
- 分類
- P18 .113-Z (A61K) / P18 .121-Z (A61K) / P18 .57 -Z (A61K) / P18 .575-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第5項第3号、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第17条の2第5号、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-102033「ビタミンB12類含有組成物」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年12月10日出願公開、特開2020-196672〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和1年5月31日を出願日とする特許出願であって、令和5年4月10日付けで拒絶理由が通知され、同年6月12日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月8日付けで拒絶査定がされ、同年12月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出されたものである。
第2 令和5年12月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年12月8日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
令和5年12月8日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の記載を、下記(1)に示すものから下記(2)に示すものに補正するものである。
(1)本件補正前(すなわち、令和5年6月12日にされた手続補正後)の特許請求の範囲
「 【請求項1】
ビタミンB12類及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有し、且つビタミンB12類1重量部当たりポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが10重量部以下であり、
ビタミンB12類は、シアノコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミン、アクアコバラミン、並びにそれらのカルボン酸塩、有機スルホン酸塩、無機酸塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である、ビタミンB12類含有組成物(ただし、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容されたもの、トラニラスト又はその塩を含有するもの、ケトチフェン又はその塩を含有するもの、プラノプロフェンを含有するもの、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するもの、セルロース系高分子化合物、ポリビニル系高分子化合物、ヒアルロン酸及びその塩、並びにカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを除く)。
【請求項2】
更にトコフェロール、トコトリエノール、及びトコフェロール有機酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種のビタミンE類を含有する、請求項1に記載のビタミンB12類含有組成物。
【請求項3】
ビタミンB12類1重量部当たりビタミンE類が0.00125~1000重量部である、請求項2に記載のビタミンB12類含有組成物。
【請求項4】
水性組成物である、請求項1~3のいずれかに記載のビタミンB12類含有組成物。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「 【請求項1】
ビタミンB12類及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有し、且つビタミンB12類1重量部当たりポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが10重量部以下であり、
ビタミンB12類は、シアノコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミン、アクアコバラミン、並びにそれらのカルボン酸塩、有機スルホン酸塩、無機酸塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である、ビタミンB12類含有組成物(ただし、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容されたもの、トラニラスト又はその塩を含有するもの、ケトチフェン又はその塩を含有するもの、プラノプロフェンを含有するもの、眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物を含有するものを除く)。
【請求項2】
更にトコフェロール、トコトリエノール、及びトコフェロール有機酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種のビタミンE類を含有する、請求項1に記載のビタミンB12類含有組成物。
【請求項3】
ビタミンB12類1重量部当たりビタミンE類が0.00125~1000重量部である、請求項2に記載のビタミンB12類含有組成物。
【請求項4】
水性組成物である、請求項1~3のいずれかに記載のビタミンB12類含有組成物。」
2 本件補正の適否
(1)本件補正の目的(特許法第17条の2第5項)についての検討
本件補正は、請求項1に係る
「ビタミンB12類及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有し、且つビタミンB12類1重量部当たりポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが10重量部以下であり、
ビタミンB12類は、シアノコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミン、アクアコバラミン、並びにそれらのカルボン酸塩、有機スルホン酸塩、無機酸塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である、ビタミンB12類含有組成物。」において、
本件補正前は、「(ただし、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容されたもの、トラニラスト又はその塩を含有するもの、ケトチフェン又はその塩を含有するもの、プラノプロフェンを含有するもの、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するもの、セルロース系高分子化合物、ポリビニル系高分子化合物、ヒアルロン酸及びその塩、並びにカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを除く)」としていたものを、
本件補正後は、「(ただし、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容されたもの、トラニラスト又はその塩を含有するもの、ケトチフェン又はその塩を含有するもの、プラノプロフェンを含有するもの、眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物を含有するものを除く)」とするものに変更するものである(下線は、変更箇所を示すためのものである)。
本件補正後の請求項1における「眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物」という用語は、当該高分子化合物のうち増粘性を付与するために眼科用組成物に用いられているものを指すものと解されるが、本件補正前の請求項1における「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」、「セルロース系高分子化合物」、「ポリビニル系高分子化合物」、「ヒアルロン酸及びその塩」、「カルボキシビニルポリマー」はいずれも、用途が特定されていない高分子化合物であって、補正前の明細書及び請求項1の記載並びに技術常識を考慮しても、それらが、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」、「セルロース系高分子化合物」、「ポリビニル系高分子化合物」、「ヒアルロン酸及びその塩」、「カルボキシビニルポリマー」のうち、用途が特定された「眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物」のみに限られると解することはできない。特に、「セルロース系高分子化合物」及び「ポリビニル系高分子化合物」は、極めて広範な高分子化合物を含むものであり、その全てが「眼科用組成物」に用いられるものであるとはいえないことは明らかである。
したがって、本件補正は、本件補正前の請求項1においては、除くものとされていた「ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するもの」又は「セルロース系高分子化合物、ポリビニル系高分子化合物、ヒアルロン酸及びその塩、並びにカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有するもの」のうち、「眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物を含有するもの」以外のものを、本件補正後の請求項1においては、除かないものにする補正であって、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものとはいえない。
また、本件補正による請求項1の補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる「請求項の削除」、特許法第17条の2第5項第3号に掲げる「誤記の訂正」、又は特許法第17条の2第5項第4号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものでないことは明らかである。
なお、審判請求人は本件補正について、審判請求書[請求の理由](3)において、
「本願発明では、ビタミンB12類含有組成物において、ビタミンB12類及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有し、且つビタミンB12類1重量部当たりポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが10重量部以下であることに技術的特徴があります。そのため、ビタミンB12類含有組成物から「眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物を含有するもの」を除くことによって、補正後の請求項1に係る発明に関する技術的事項に何ら変更を生じさせていません。
以上のとおり、当該除くクレームとする補正は、出願当初の明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではありませんので、新規事項を追加するものではありません。」
と主張しているものの、本件補正が特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とする補正であるかについては何らの説明もしておらず、審判請求人の主張を検討しても、本件補正による請求項1の補正が、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれかの事項を目的とするものとすることはできない。
したがって、本件補正による請求項1の補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないから、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反する補正である。
(2)独立特許要件(特許法第17条の2第6項)についての検討
上記(1)のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないが、念のため、仮に、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる限定的減縮を目的とする補正であるとして、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。
ア 本件補正後の請求項1の記載及び請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1の記載は、上記1(2)に示したとおりであり、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記1(2)に示した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
イ 明確性(特許法第36条第6項第2号)について
本件補正後の請求項1には、「(ただし、……、眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物を含有するものを除く)」とあるが、当該記載は、
・増粘性を付与するために用いた眼科用組成物における水溶性高分子化合物を除くことを意図したもの(すなわち、目的、用途が異なる、水溶性高分子化合物(水溶性高分子化合物としては同じもの)は除かれない)か、
・眼科用組成物において増粘性付与剤として用いることができる水溶性高分子化合物を、その用途を問わず除くことを意図したものか、
補正前の明細書及び特許請求の範囲の記載並びに技術常識を考慮しても明らかではない。これに加え、何をもって「増粘性を付与するための」化合物であると判断するのか、その基準が補正前の明細書及び特許請求の範囲の記載並びに技術常識を考慮しても明らかではない(例えば、眼科用組成物に用いられる水溶性高分子化合物が、水分を保持するためのものや、角膜上皮細胞の損傷を修復させるためのものである場合なども、増粘することによって点眼液が留まることに起因すると考えれば、増粘性を付与するためのものとも解し得る。)。
このため「眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物」の示すものの範囲は明確でなく、「眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物を含有するもの」の示すものの範囲も明確であるとはいえない。
したがって、本件補正後の請求項1において、「(ただし、……、眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物を含有するものを除く)」との記載によって除かれるものの範囲は明確でなく、本件補正発明は、その範囲が明確でないものである。
以上のとおりであるから、本件補正後の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
ウ 引用文献1(特開2019-65003号公報)を主たる証拠とする新規性・進歩性(特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項)について
(ア)引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用された特開2019-65003号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
記載(1-1)
「【0063】
以下に製剤例、およびシアノコバラミンを含有する水性組成物であって、TINUVIN(登録商標) 326を配合したプラスチック製容器に収容された水性組成物の光安定化試験の結果を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0064】
<製剤例>
以下に本発明の製剤例を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。なお、下記製剤例において各成分の配合量は製剤100mL中の含量である。
……
【0066】
製剤例2
塩酸テトラヒドロゾリン 0.01g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.03g
シアノコバラミン 0.02g
L-アスパラギン酸カリウム 0.5g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.5g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.1g
プロピレングリコール 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.01g
ポリソルベート80 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
フェネチルアルコール 0.02g
l-メントール 0.15g
d-カンフル 0.001g
ゲラニオール 0.001g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0067】
製剤例3
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.002g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.03g
シアノコバラミン 0.02g
タウリン 0.5g
L-アスパラギン酸カリウム 1.0g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.1g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.1g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.01g
ポリソルベート80 0.05g
ソルビン酸 0.1g
フェネチルアルコール 0.02g
l-メントール 0.15g
d-カンフル 0.001g
ゲラニオール 0.002g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0068】
製剤例4
塩酸テトラヒドロゾリン 0.05
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.002g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.01g
シアノコバラミン 0.02g
L-アスパラギン酸カリウム 1.0g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.2g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.01g
ポリソルベート80 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
フェネチルアルコール 0.01g
l-メントール 0.15g
d-カンフル 0.001g
ゲラニオール 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0069】
製剤例5
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.002g
シアノコバラミン 0.02g
タウリン 0.5g
L-アスパラギン酸カリウム 1.0g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.5g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.01g
ポリソルベート80 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.002g
クロロブタノール 0.15g
フェネチルアルコール 0.01g
l-メントール 0.15g
ゲラニオール 0.005g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0070】
製剤例6
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.002g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.03g
シアノコバラミン 0.02g
L-アスパラギン酸カリウム 1.0g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.5g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
ポリソルベート80 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.002g
クロロブタノール 0.1g
l-メントール 0.15g
d-カンフル 0.005g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.02g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0071】
製剤例7
塩酸テトラヒドロゾリン 0.05g
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.005g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.03g
シアノコバラミン 0.02g
タウリン 1.0g
L-アスパラギン酸カリウム 1.0g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
ポリソルベート80 0.1g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.1g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
クロロブタノール 0.15g
フェネチルアルコール 0.01g
d-カンフル 0.005g
ゲラニオール 0.002g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
……
【0073】
製剤例9
塩酸テトラヒドロゾリン 0.01g
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.005g
シアノコバラミン 0.01g
タウリン 0.5g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.5g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
ポリソルベート80 0.05g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.01g
クロルヘキシジングルコン酸塩 0.005g
クロロブタノール 0.15g
l-メントール 0.01g
d-カンフル 0.005g
ゲラニオール 0.002g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.02g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0074】
製剤例10
塩酸テトラヒドロゾリン 0.01g
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.005g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.01g
シアノコバラミン 0.01g
タウリン 0.5g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.5g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.4g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
ポリソルベート80 0.05g
ソルビン酸 0.2g
l-メントール 0.005g
d-カンフル 0.005g
ゲラニオール 0.002g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.02g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0075】
なお、前記製剤例1~10における薬理活性成分および添加剤の種類や配合量を適宜調製し、所望の組成の製剤を得ることができる。」
記載(1-2)
「【0076】
<実施例>
以下にシアノコバラミンを含有する水性組成物を、TINUVIN(登録商標) 326を配合したポリエチレンテレフタレート製容器に収容した場合の光安定化試験の結果を示すが、これは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0077】
1.被験製剤の調製
表1に示す配合比の被験製剤1を調製し、パイレックス(登録商標)瓶に入れて、遮光冷所保存した。
【0078】
【表1】
[図:0001426367000001.jpg]
【0079】
2.試験方法
1)ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物を含まないポリエチレンテレフタレート製の本体の点眼容器(容量12mL:以下、点眼容器Aともいう)、およびTINUVIN(登録商標) 326を配合したポリエチレンテレフタレート製の本体の点眼容器(容量12mL:以下、点眼容器Bともいう)を用意した。
2)被験製剤1を点眼容器Aと点眼容器Bにそれぞれ12mLを充填した。
3)点眼容器Aに収容された被験製剤1(比較例1)と点眼容器Bに収容された被験製剤1(実施例1)を、それぞれ、点眼容器を横向きとし、1000lx・hの光量に暴露し、300時間後に暴露を終了した。」
記載(1-3)
「【0027】
本発明の水性組成物は、本発明の効果を妨げない限り、シアノコバラミンの他、種々の薬理活性成分(生理活性成分または有効成分)を適当量含有することができ、薬理活性成分(生理活性成分または有効成分)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。薬理活性成分(生理活性成分または有効成分)としては、例えば、……、ビタミンE(酢酸トコフェロール、酢酸-d-αトコフェロール)等のビタミン類、……が好ましい。」
記載(1-4)
「【請求項1】
シアノコバラミンを含有する水性組成物であって、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容された、水性組成物。
【請求項2】
プラスチック製容器がベンゾトリアゾール系化合物を配合したプラスチック製容器である、請求項1記載の水性組成物。
【請求項3】
ベンゾトリアゾール系化合物の最大吸収波長が400-315nmである、請求項1または2記載の水性組成物。
【請求項4】
プラスチック製容器の材質がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項5】
シアノコバラミンの濃度が0.001%~0.1%(w/v)である、請求項1~4記載の水性組成物。
【請求項6】
pHが4.0~8.0である、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項7】
点眼液または洗眼液である、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性組成物。
【請求項8】
シアノコバラミンの安定化方法であって、
前記シアノコバラミンを含有する水性組成物を、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容することを含む安定化方法。
【請求項9】
光に対する安定化方法である、請求項8記載の安定化方法。」
記載(1-5)
「【0001】
本発明は、シアノコバラミンを含有する水性組成物であって、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容された、水性組成物、およびシアノコバラミンを含有する水性組成物を、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容することによるシアノコバラミンの安定化方法に関する。」
記載(1-6)
「【0008】
本発明者は、前記課題を解決する為に鋭意研究した結果、シアノコバラミンを含有する水性組成物を、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容することで、好ましくは、シアノコバラミンを含有する水性組成物を、最大吸収波長が400-315nmのベンゾトリアゾール系化合物を配合したプラスチック製容器に収容することで、当該水性組成物中のシアノコバラミンの安定性が、向上することを見出した。」
記載(1-7)
「 【0030】
本発明の水性組成物に使用できる界面活性剤(可溶剤)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されず、例えば、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤等が使用できる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル、POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)およびPOE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油、POE(10)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油10)、POE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)等のPOEヒマシ油、POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル、POE(54)POP(39)グリコール、POE(120)POP(40)グリコール、POE(160)POP(30)グリコール、POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられ、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)が特に好ましい。」
上記記載(1-1)には、「以下に製剤例、およびシアノコバラミンを含有する水性組成物であって、TINUVIN(登録商標) 326を配合したプラスチック製容器に収容された水性組成物の光安定化試験の結果を示す……。」(段落0063)との記載があって、「製剤例」と並列的に記載される「シアノコバラミンを含有する水性組成物であって、TINUVIN(登録商標) 326を配合したプラスチック製容器に収容された水性組成物の光安定化試験の結果」については、「シアノコバラミンを含有する水性組成物」が「TINUVIN(登録商標) 326を配合したプラスチック製容器」に収容されたものであることが明記されている。
一方、上記記載(1-1)の、「なお、下記製剤例において各成分の配合量は製剤100mL中の含量である。」(段落0064)との記載によって、上記記載(1-1)に記載された製剤例2~7、製剤例9~10が液状組成物であることが示されているものの、上記記載(1-1)にはその収容容器についての記載はない。
また、上記記載(1-2)には、
「シアノコバラミンを含有する水性組成物を、TINUVIN(登録商標) 326を配合したポリエチレンテレフタレート製容器に収容した場合の光安定化試験」(段落0076)に関して、
「1.被験製剤の調製
表1に示す配合比の被験製剤1を調製し、パイレックス(登録商標)瓶に入れて、遮光冷所保存した。」(段落0077)との記載、及び
「2.試験方法
1)ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物を含まないポリエチレンテレフタレート製の本体の点眼容器(容量12mL:以下、点眼容器Aともいう)、およびTINUVIN(登録商標) 326を配合したポリエチレンテレフタレート製の本体の点眼容器(容量12mL:以下、点眼容器Bともいう)を用意した。
2)被験製剤1を点眼容器Aと点眼容器Bにそれぞれ12mLを充填した。」(段落0079)との記載があって、
「パイレックス(登録商標)瓶」(「パイレックス(登録商標)」はホウケイ酸ガラス)に入れた被験製剤1、及び「ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物を含まないポリエチレンテレフタレート製の本体の点眼容器」に充填した被験製剤1が記載されていることも考慮すると、上記記載(1-1)に記載された製剤例2~7、製剤例9~10は、収容容器が特定されない組成物であると認められる。
したがって、上記記載(1-1)及び記載(1-2)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1A」という。)が記載されていると認められる。
引用発明1A
「以下の製剤例2、製剤例3、製剤例4、製剤例5、製剤例6、製剤例7、製剤例9、又は製剤例10の組成を有する組成物。
製剤例2
塩酸テトラヒドロゾリン 0.01g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.03g
シアノコバラミン 0.02g
L-アスパラギン酸カリウム 0.5g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.5g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.1g
プロピレングリコール 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.01g
ポリソルベート80 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
フェネチルアルコール 0.02g
l-メントール 0.15g
d-カンフル 0.001g
ゲラニオール 0.001g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
製剤例3
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.002g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.03g
シアノコバラミン 0.02g
タウリン 0.5g
L-アスパラギン酸カリウム 1.0g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.1g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.1g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.01g
ポリソルベート80 0.05g
ソルビン酸 0.1g
フェネチルアルコール 0.02g
l-メントール 0.15g
d-カンフル 0.001g
ゲラニオール 0.002g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
製剤例4
塩酸テトラヒドロゾリン 0.05
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.002g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.01g
シアノコバラミン 0.02g
L-アスパラギン酸カリウム 1.0g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.2g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.01g
ポリソルベート80 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
フェネチルアルコール 0.01g
l-メントール 0.15g
d-カンフル 0.001g
ゲラニオール 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
製剤例5
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.002g
シアノコバラミン 0.02g
タウリン 0.5g
L-アスパラギン酸カリウム 1.0g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.5g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.01g
ポリソルベート80 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.002g
クロロブタノール 0.15g
フェネチルアルコール 0.01g
l-メントール 0.15g
ゲラニオール 0.005g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
製剤例6
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.002g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.03g
シアノコバラミン 0.02g
L-アスパラギン酸カリウム 1.0g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.5g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
ポリソルベート80 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.002g
クロロブタノール 0.1g
l-メントール 0.15g
d-カンフル 0.005g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.02g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
製剤例7
塩酸テトラヒドロゾリン 0.05g
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.005g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.03g
シアノコバラミン 0.02g
タウリン 1.0g
L-アスパラギン酸カリウム 1.0g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
ポリソルベート80 0.1g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.1g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
クロロブタノール 0.15g
フェネチルアルコール 0.01g
d-カンフル 0.005g
ゲラニオール 0.002g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
製剤例9
塩酸テトラヒドロゾリン 0.01g
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.005g
シアノコバラミン 0.01g
タウリン 0.5g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.5g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
ポリソルベート80 0.05g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.01g
クロルヘキシジングルコン酸塩 0.005g
クロロブタノール 0.15g
l-メントール 0.01g
d-カンフル 0.005g
ゲラニオール 0.002g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.02g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
製剤例10
塩酸テトラヒドロゾリン 0.01g
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.005g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.01g
シアノコバラミン 0.01g
タウリン 0.5g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.5g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.4g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.1g
ポリソルベート80 0.05g
ソルビン酸 0.2g
l-メントール 0.005g
d-カンフル 0.005g
ゲラニオール 0.002g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.02g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量」
(イ)対比・判断
本件補正発明と引用発明1Aとを対比する。
引用発明1Aにおける「シアノコバラミン」は本件補正発明における「ビタミンB12類」及び「シアノコバラミン」に該当し、引用発明1Aにおける「ポリソルベート80」は、引用文献1の段落0030(上記記載(1-7))に記載されているとおり、モノオレイン酸POE(20)ソルビタンであるから、本件補正発明における「ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル」に相当する。そして、製剤例2、製剤例3、製剤例4、製剤例5、製剤例6、製剤例7、製剤例9及び製剤例10におけるシアノコバラミンの含有量は0.01g又は0.02gであり、ポリソルベート80の含有量は0.05g又は0.1gであるから、引用発明1Aは、本件補正発明の「ビタミンB12類1重量部当たりポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが10重量部以下」であるという発明特定事項を満たす。
すると、両者は、
「ビタミンB12類及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有し、且つビタミンB12類1重量部当たりポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが10重量部以下であり、
ビタミンB12類は、シアノコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミン、アクアコバラミン、並びにそれらのカルボン酸塩、有機スルホン酸塩、無機酸塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である、ビタミンB12類含有組成物。」である点で一致し、
本件補正発明においては、「(ただし、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容されたもの、トラニラスト又はその塩を含有するもの、ケトチフェン又はその塩を含有するもの、プラノプロフェンを含有するもの、眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物を含有するものを除く)」とされているのに対し、
引用発明1Aでは、その事項に対応する事項がない点で、文言上相違する(以下、「文言上相違点1A」という。)。
文言上相違点1Aについて検討する。
引用発明1Aは、収容容器が特定されない組成物であるから、本件補正発明において除くとされる「ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容されたもの」には該当しない。
また、引用発明1Aが、本件補正発明において除くとされる「トラニラスト又はその塩を含有するもの」、「ケトチフェン又はその塩を含有するもの」、又は「プラノプロフェンを含有するもの」に該当しないことは明らかである。
また、引用発明1Aの各配合成分についてはその用途が特定されていない上に、上記(2)アに示したとおり、本件補正発明において除くとされる「眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物を含有するもの」の示すものの範囲は明確であるとはいえないので、引用発明1Aが、本件補正発明において除くとされる「眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物を含有するもの」に該当するとはいえない。
したがって、上記文言上相違点1Aは実質的な相違点ではなく、本件補正発明は引用発明1Aである。
よって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明であり、また、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
(ウ)審判請求人の主張について
審判請求人は、引用文献1を主たる証拠とする新規性・進歩性について、審判請求書[請求の理由](3-3)において、
「……、引用文献1の明細書段落[0064]には、「以下に本発明の製剤例を示すが、・・・・」と記載されており、当該本発明とは、「シアノコバラミンを含有する水性組成物であって、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容された、水性組成物」(請求項1、段落0001及び0008)を意味していることからすれば、製剤例2~7、9~10に記載の水性組成物は、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容することを前提として調製されたものであり、比較例に当たる水性組成物(つまり、前記プラスチック製容器に収容されない水性組成物)として記載されたものではないことは明らかです。
よって、引用文献1において、製剤例2~7、9~10に記載の水性組成物を前記プラスチック製容器に収容されたことが特段記載されていないとしても、単にその記載が省略されているだけであり、引用文献1に記載された発明を完成させるために、製剤例2~7、9~10に記載の水性組成物を調製後に前記プラスチック製容器に収容したことは容易に推認されます。」
などと主張しているので、検討する。
上記記載(1-4)(特に、請求項8)、上記記載(1-5)及び上記記載(1-6)には、「シアノコバラミンを含有する水性組成物であって、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容された、水性組成物。」を得るためには、シアノコバラミンを含有する水性組成物を、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器への収容に先立ち、当該シアノコバラミンを含有する水性組成物を調製することが示されている。
また、上記記載(1-1)には、「なお、下記製剤例において各成分の配合量は製剤100mL中の含量である。」(段落0064)との記載があることから、上記記載(1-1)の製剤例2~7、製剤例9~10は液状組成物であって、その調製時点において何らかの容器に収容されていたものと認められるが、その調製時点において「ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器」に収容されていたものであることは記載されていない。
また、上記記載(1-2)には、
「表1に示す配合比の被験製剤1を調製し、パイレックス(登録商標)瓶に入れて、遮光冷所保存した。」(段落0077)
との記載があって、被験製剤1の調製時点においては、「ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器」とは異なる「パイレックス(登録商標)瓶」に入れて遮光冷所保存したことが示されている。
したがって、上記記載(1-4)及び上記記載(1-5)の「シアノコバラミンを含有する水性組成物であって、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容された、水性組成物」との記載を参酌しても、「ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器」への収容に先立ち調製される「シアノコバラミンを含有する水性組成物」を、その調製時点においても「ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器」に収容されていたものであるとすることはできず、上記記載(1-1)の「以下に本発明の製剤例を示すが、これらは本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。」(段落0064)との記載を参酌しても、上記記載(1-1)の製剤例2~7及び製剤例9~10を、「ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器」に収容されたものであるとすることはできない。
したがって、審判請求人の主張は受け入れられず、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないとの判断を覆すことはできない。
エ 独立特許要件についてのまとめ
本件補正発明は、上記イに示したとおり、また、上記ウ(ア)~(ウ)に示したとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
よって、本件補正発明は、補正の目的が仮に特許法第17条の2第5号第2号に掲げる限定的減縮を目的とする補正であるとしても、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、特許法第17条の2第6項に違反するものである。
(3)補正の適否についてのむすび
したがって、本件補正は、上記(1)に示したとおり、特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反する補正であり、仮にそうでないとしても、上記(2)に示したとおり、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2 1(1)に示した本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、令和5年4月10日付け拒絶理由通知により通知された次の理由を含むものである。
・本願発明1は、引用文献1(特開2019-65003号公報)に記載された発明であるか、同発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当し、又は同条第2項の規定により、特許を受けることができない(以下、「引用文献1を主たる証拠とする新規性・進歩性」という。)。
・本願発明1は、引用文献6(国際公開第2018/066651号)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許を受けることができない(以下、「引用文献6を主たる証拠とする進歩性」という。)。
(1)引用文献1(特開2019-65003号公報)を主たる証拠とする新規性・進歩性(特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項)について
ア 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用された特開2019-65003号公報には、上記第2 2(2)ウ(ア)に示したとおりの記載がある。
上記記載(1-1)及び記載(1-2)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1B」という。)が記載されていると認められる。
引用発明1B
「以下の製剤例2、又は製剤例4の組成を有する組成物。
製剤例2
塩酸テトラヒドロゾリン 0.01g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.03g
シアノコバラミン 0.02g
L-アスパラギン酸カリウム 0.5g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.5g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.1g
プロピレングリコール 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.01g
ポリソルベート80 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
フェネチルアルコール 0.02g
l-メントール 0.15g
d-カンフル 0.001g
ゲラニオール 0.001g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
製剤例4
塩酸テトラヒドロゾリン 0.05
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.002g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.01g
シアノコバラミン 0.02g
L-アスパラギン酸カリウム 1.0g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.2g
イプシロン-アミノカプロン酸 0.2g
塩化ナトリウム 0.5g
エデト酸ナトリウム水和物 0.01g
ポリソルベート80 0.05g
ベンザルコニウム塩化物 0.005g
フェネチルアルコール 0.01g
l-メントール 0.15g
d-カンフル 0.001g
ゲラニオール 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量」
イ 対比・判断
本願発明と引用発明1Bとを対比する。
引用発明1Bにおける「シアノコバラミン」は本願発明における「ビタミンB12類」及び「シアノコバラミン」に該当し、引用発明1Bにおける「ポリソルベート80」は、引用文献1の段落0030(上記記載(1-7))の記載からみて、本願発明における「ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル」に相当する。そして、製剤例2及び製剤例4におけるシアノコバラミンの含有量は0.02gであり、ポリソルベート80の含有量は0.05gであるから、引用発明1Bは、本件補正発明の「ビタミンB12類1重量部当たりポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが10重量部以下」であるという発明特定事項を満たす。
すると、両者は、
「ビタミンB12類及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有し、且つビタミンB12類1重量部当たりポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが10重量部以下であり、
ビタミンB12類は、シアノコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミン、アクアコバラミン、並びにそれらのカルボン酸塩、有機スルホン酸塩、無機酸塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である、ビタミンB12類含有組成物。」である点で一致し、
本願発明においては、「(ただし、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容されたもの、トラニラスト又はその塩を含有するもの、ケトチフェン又はその塩を含有するもの、プラノプロフェンを含有するもの、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するもの、セルロース系高分子化合物、ポリビニル系高分子化合物、ヒアルロン酸及びその塩、並びにカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを除く)」とされているのに対し、
引用発明1Bでは、その事項に対応する事項がない点で、一見相違する(以下、「文言上相違点1B」という。)。
文言上相違点1Bについて検討する。
引用発明1Bは、収容容器が特定されない組成物であるから、本願発明において除くとされる「ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容されたもの」には該当しない。
また、引用発明1Bが、本願発明1において除くとされる「トラニラスト又はその塩を含有するもの」、「ケトチフェン又はその塩を含有するもの」、「プラノプロフェンを含有するもの」、「ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するもの」、「セルロース系高分子化合物」、「ポリビニル系高分子化合物」、「ヒアルロン酸及びその塩」又は「カルボキシビニルポリマー」に該当しないことは明らかである。
したがって、上記文言上相違点1Bは実質的な相違点ではなく、本願発明は引用発明1Bである。
ウ 審判請求人の主張について
審判請求人は、拒絶査定の拒絶の理由のうち、引用文献1を主たる証拠とする新規性・進歩性について、審判請求書[請求の理由](3-3)において、その主張を述べているが、上記第2 2(2)ウ(ウ)に示したとおり、審判請求人の主張は受け入れられない。
エ 引用文献1を主たる証拠とする新規性・進歩性についてのまとめ
上記ア~ウに示したとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であり、また、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(2)引用文献6(国際公開第2018/066651号)を主たる証拠とする進歩性(特許法第29条第2項)について
ア 原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2018/066651号(以下、「引用文献6」という。)には、次の記載がある。
記載(6-1)
「[請求項1] (A)水溶性高分子化合物、
(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油及びモノステアリン酸ポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤、
(C)ビタミンA、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン及び清涼化剤から選ばれる1種以上の成分、及び
(D)下記(D-1)及び(D-2)からなる群から選ばれる1種以上
(D-1)トロメタモール、プロピレングリコール
(D-2)エチレンジアミン酢酸誘導体、エチレンジアミン酢酸誘導体塩、塩酸テトラヒドロゾリン、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸塩、塩化ナトリウム、ネオスチグミンメチル硫酸塩、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、アミノエチルスルホン酸
を含有する眼科用組成物と、この眼科用組成物が充填された容器と、この容器を包装する包囲体とを有する眼科用製品であって、
(1)包囲体内への不活性ガス注入、(2)包囲体内への酸素吸収剤の同梱、(3)酸素吸収能を有する容器又は(4)酸素吸収能を有する包囲体のいずれか1以上の手段を用いた眼科用製品。」
記載(6-2)
「[0010] 以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
水溶性高分子化合物としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子化合物、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ポリビニルアルコール等のポリビニル系高分子化合物、ヒアルロン酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。このような成分を配合することで、組成物に粘度を付与し、配合された有効成分の眼表面での滞留性を向上し、眼表面に滞留することにより眼表面の乾燥を防止することができる。中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ヒアルロン酸及びその塩が好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがより好ましい。」
記載(6-3)
「[0070] [実施例、比較例]
下記表に示す組成の眼科用組成物を、脂溶性成分を(B)成分に溶解した後、他の水溶液成分を溶解した高温(70~95℃)の水溶液に投入することによって下記表に示す組成の眼科用組成物を製造した。
……
[0077]
[表7]
[図:0001426367000002.jpg]
[0078][表8]
[図:0001426367000003.jpg]
」
上記記載(6-3)の表7及び表8に実施例として示された組成物は、上記記載(6-1)(特に、請求項1の記載)に示されるように、上記記載(6-1)に記載された眼科用製品の構成の一つである眼科用組成物、すなわち、
「(A)水溶性高分子化合物、
(B)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油及びモノステアリン酸ポリエチレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤、
(C)ビタミンA、ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン及び清涼化剤から選ばれる1種以上の成分、及び
(D)下記(D-1)及び(D-2)からなる群から選ばれる1種以上
(D-1)トロメタモール、プロピレングリコール
(D-2)エチレンジアミン酢酸誘導体、エチレンジアミン酢酸誘導体塩、塩酸テトラヒドロゾリン、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸塩、塩化ナトリウム、ネオスチグミンメチル硫酸塩、硫酸亜鉛、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、アミノエチルスルホン酸
を含有する眼科用組成物」に対応するものであると認められ、そのうち、表7に実施例3-11として示された組成物及び表8に実施例4-4として示された組成物は、(B)としてモレオレイン酸POE(20)ソルビタンを含むとともに、(D)としてシアノコバラミンを含むものである。
したがって、上記記載(6-1)及び記載(6-3)より、引用文献6には、次の発明(以下、「引用発明6」という。)が記載されていると認められる。
引用発明6
「以下の実施例3-11、又は実施例4-4の組成を有する眼科用組成物。
実施例3-11
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.3 W/V%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.1 W/V%
モノオレイン酸POE(20)ソルビタン 0.1 W/V%
レチノールパルミチン酸エステル 50,000 IU
酢酸d-α-トコフェロール 0.05 W/V%
ジブチルヒドロキシトルエン 0.005 W/V%
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.005 W/V%
シアノコバラミン 0.02 W/V%
精製水 残部
実施例4-4
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.3 W/V%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60 0.1 W/V%
モノオレイン酸POE(20)ソルビタン 0.1 W/V%
レチノールパルミチン酸エステル 50,000 IU
酢酸d-α-トコフェロール 0.05 W/V%
l-メントール 0.05 W/V%
プロピレングリコール 0.2 W/V%
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.005 W/V%
シアノコバラミン 0.02 W/V%
精製水 残部」
イ 対比・判断
本願発明と引用発明6とを対比する。
引用発明6における「シアノコバラミン」は本願発明における「ビタミンB12類」及び「シアノコバラミン」に該当し、引用発明6における「モノオレイン酸POE(20)ソルビタン」は本願発明における「ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル」に相当する。そして、実施例3-11及び実施例4-4におけるシアノコバラミンの含有割合は0.02W/V%であり、モノオレイン酸POE(20)ソルビタンの含有割合は0.1W/V%であるから、引用発明6は、本件補正発明の「ビタミンB12類1重量部当たりポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが10重量部以下」であるという発明特定事項を満たす。
すると、両者は、
「ビタミンB12類及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有し、且つビタミンB12類1重量部当たりポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが10重量部以下であり、
ビタミンB12類は、シアノコバラミン、メチルコバラミン、ヒドロキソコバラミン、アデノシルコバラミン、アクアコバラミン、並びにそれらのカルボン酸塩、有機スルホン酸塩、無機酸塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種である、ビタミンB12類含有組成物。」である点で一致し、
本願発明においては、「(ただし、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物およびヒンダードアミン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物を配合したプラスチック製容器に収容されたもの、トラニラスト又はその塩を含有するもの、ケトチフェン又はその塩を含有するもの、プラノプロフェンを含有するもの、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するもの、セルロース系高分子化合物、ポリビニル系高分子化合物、ヒアルロン酸及びその塩、並びにカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを除く)」として、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」を含有するものが除かれているのに対し、
引用発明6では、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」を含有する点で、相違する(以下、「相違点6」という。)。
相違点6について検討する。
記載事項(6-2)には、引用発明6における(A)水溶性高分子化合物により、組成物に粘度を付与し、配合された有効成分の眼表面での滞留性を向上し、眼表面に滞留することにより眼表面の乾燥を防止することができる旨記載されている。
眼科用組成物には、デキストラン類やアルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、アラビアゴムといった種々の水溶性多糖類が慣用されており、それにより配合された有効成分の眼表面での滞留性を向上し、眼表面に滞留することにより眼表面の乾燥を防止することがおこなわれているから(原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開2019-065003号公報)の段落0036、同引用文献2(特開2005-154437号公報)の段落0090、同引用文献5(特開2012-031184号公報)の0050参照)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースに代えて、これらの水溶性多糖類を選択することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本願発明において、「ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するもの」、「セルロース系高分子化合物、ポリビニル系高分子化合物、ヒアルロン酸及びその塩、並びにカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有するもの」を除くことにより、当業者の予想し得ない顕著な効果が奏されるとも認められない。
したがって、本願発明は、引用発明6及び引用文献1,2,5,6に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
ウ 審判請求人の主張について
(ア)令和5年6月12日に提出した意見書における主張
審判請求人は、引用文献6を主たる証拠とする新規性・進歩性について、令和5年6月12日に提出した意見書[意見の内容]4(6)において、
「……、補正後の請求項1に係る発明は、「セルロース系高分子化合物、ポリビニル系高分子化合物、ヒアルロン酸及びその塩、並びにカルボキシビニルポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有するもの」、つまり引用文献6に記載の「(A)水溶性高分子化合物」が除外されている点で、引用文献6に記載された発明とは相違しています。なお、眼科用組成物に粘度を付与するために用いられる水溶性高分子化合物として、上記で挙げられた以外のものは想定されません。」
などと主張しているので、検討する。
審判請求人の主張は、実質的には引用文献6を主たる証拠とする新規性についてのものにとどまるものであって、審判請求人の主張を検討しても、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとの判断を覆すことはできない。
(イ)審判請求書における主張
審判請求人は、引用文献6を主たる証拠とする新規性・進歩性について、審判請求書[請求の理由](3-4)において、
「……、補正後の請求項1に係る発明は、「眼科用組成物に用いられる増粘性を付与するための水溶性高分子化合物を含有するもの」、つまり引用文献6に記載の「(A)水溶性高分子化合物」が除外されている点で、引用文献6に記載された発明とは相違しています。」
などと主張しているので、検討する。
審判請求人の主張は、本件補正(審判請求時の補正)後の請求項1に係る発明についてのものであって、本件補正は上記第2のとおり却下されているので、審判請求人の主張を検討しても、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとの判断を覆すことはできない。
エ 引用文献6を主たる証拠とする進歩性についてのまとめ
上記ア~ウに示したとおり、本願発明は、引用文献6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(3)原査定の拒絶の理由についてのまとめ
上記(1)及び(2)に示したとおり、本願発明は、原査定の拒絶の理由のうち、引用文献1を主たる証拠とする新規性・進歩性、及び、引用文献6を主たる証拠とする進歩性により、特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-020988