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特許拒絶査定不服審判

2023-020929

流動化処理土の製造方法

審判番号
2023-020929
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-071102外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年12月08日
審決日
2024年12月25日
公報発行日
2025年04月25日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (E02D) / P18 .575-Z (E02D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020- 71102「流動化処理土の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年10月21日出願公開、特開2021-167530〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、令和2年4月10日の出願であって、令和5年6月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月23日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月1日付けで拒絶査定(原査定)がなされた(原査定の謄本の送達日:同年同月12日)のに対し、同年12月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和5年12月8日に提出された手続補正書による補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和5年12月8日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正の内容

(1)補正の内容

本件補正は、特許請求の範囲についてする補正であって、令和5年8月23日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1~6に、

「 【請求項1】
石炭灰及びバインダを含む粒状の石炭灰固化物を準備する工程と、
前記石炭灰固化物、水及びセメントを混合する工程と、を備える、建設残土及び泥土を含まない地中充填材の製造方法。
【請求項2】
続きを表示(全18行)
請求項1に記載の建設残土及び泥土を含まない地中充填材の製造方法であって、
前記石炭灰固化物のバインダがセメントである、建設残土及び泥土を含まない地中充填材の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設残土及び泥土を含まない地中充填材の製造方法であって、
前記石炭灰固化物中の前記バインダの含有量が5~15質量%である、建設残土及び泥土を含まない地中充填材の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の建設残土及び泥土を含まない地中充填材の製造方法であって、
前記石炭灰固化物は、ふるい目寸法が75μmのときの通過重量百分率が30%以下である、建設残土及び泥土を含まない地中充填材の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の建設残土及び泥土を含まない地中充填材の製造方法であって、
前記混合する工程では、前記石炭灰固化物100質量部に対して前記水を15~35質量部の割合で混合する、建設残土及び泥土を含まない地中充填材の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の建設残土及び泥土を含まない地中充填材の製造方法であって、
混合直後の地中充填材のフロー値が180mm以上である、建設残土及び泥土を含まない地中充填材の製造方法。」

とあったものを、

「 【請求項1】
石炭灰及びバインダを含む粒状の石炭灰固化物を準備する工程と、
前記石炭灰固化物、水及びセメントを混合する工程と、を備える、前記石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる地中充填材の製造方法。
【請求項2】
続きを表示(全18行)
請求項1に記載の前記石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる地中充填材の製造方法の製造方法であって、
前記石炭灰固化物のバインダがセメントである、前記石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる地中充填材の製造方法の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の前記石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる地中充填材の製造方法であって、
前記石炭灰固化物中の前記バインダの含有量が5~15質量%である、前記石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる地中充填材の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の前記石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる地中充填材の製造方法の製造方法であって、
前記石炭灰固化物は、ふるい目寸法が75μmのときの通過重量百分率が30%以下である、前記石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる地中充填材の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の前記石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる地中充填材の製造方法であって、
前記混合する工程では、前記石炭灰固化物100質量部に対して前記水を15~35質量部の割合で混合する、前記石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる地中充填材の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の前記石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる地中充填材の製造方法であって、
混合直後の地中充填材のフロー値が180mm以上である、前記石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる地中充填材の製造方法。」

とする補正である(下線は、補正箇所を明示するために合議体で付した。)。

2 補正の適否について

(1)補正の目的について

本件補正における請求項1の補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「建設残土及び泥土を含まない地中充填材」に関し、「建設残土及び泥土を含まない」との事項を削除するとともに、「地中充填材」との事項に対して「石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる」との事項を付加するものである。

本件補正前の「地中充填材」が、「石炭灰固化物、水及びセメント」の他に、「「建設残土」あるいは「泥土」以外のもの」を含み得る「地中充填材」であったところ、本件補正により、当該「「建設残土」あるいは「泥土」以外のもの」を含むことを除外して、「石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる」ものとするように減縮がなされたと認められる。

そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項について

本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面における【0002】には、「流動化処理土は、建設残土等に水とセメントとを添加して流動性及び硬化性を持たせたものであり、埋設配管の埋戻し等に用いられる。」と記載されており、また、【0031】の「石炭灰固化物を使用した流動化処理土の配合」について【0032】に、石炭灰固化物、セメント、水のみが挙げられていること、及び【図1】には、流動化処理土の製造方法のフロー図として、(開始)・(石炭灰固化物を準備(S1))・(石炭灰固化物、水及びセメントを混合(S2))・(終了)のみが記載されていることから、「石炭灰固化物、セメント、水のみ」からなる「流動化処理土」は、埋設配管の埋戻し等において地中に充填する材料として用いられるものであると認められる。

また、【0027】の「混合する工程では、石炭灰固化物に加えて、建設残土をさらに混合してもよい。」との記載からみて、「石炭灰固化物、セメント、水のみ」からなる「流動化処理土」は「処理土」ではないものの、(土中の)埋め戻される空間に充填されるものであることが明らかなので、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、「地中充填材」であって、「石炭灰固化物、セメント、水のみ」からなるものが記載されていると認められる。

よって、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす 。

3 独立特許要件について

そこで、本件補正後の請求項1~6に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、令和5年9月1日付け拒絶査定の「請求項1に係る発明は、引用発明3及び引用文献1に記載された事項を基にして、当業者が容易になし得ることである。」との説示をふまえて、以下、検討する。

(1)本願補正発明

本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)を再掲すると、令和5年12月8日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
石炭灰及びバインダを含む粒状の石炭灰固化物を準備する工程と、
前記石炭灰固化物、水及びセメントを混合する工程と、を備える、前記石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる地中充填材の製造方法。」

(2)引用文献、引用発明

ア 引用文献3に記載された事項

原査定で引用文献3として引用され、本願の出願前である平成20年2月14日に発行された特開2008-31638号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている(下線は合議体が付した。以下同じ。)。

(ア)「【0001】
本発明は、自然災害や経時劣化などによって土構造物に生じたクラックや空隙、あるいは地下構造物と土構造物の間に生じた空隙等を補修するのに適した地中充填材、およびそれを用いた土構造物の補修工法に関する。」
(イ)「【0011】
本発明は、流動性が良く、土構造物に生じた幅数mm程度というクラックにも、圧力を負荷させることなく充填可能な自硬性の充填材であって、充填後には、一般的なセメント硬化体とは異なり、土質材料に近い性質を呈するものを提供すること、およびそれを用いた土構造物の補修工法を提供することを目的とする。図3には一般的なセメント改良土、土質材料および本発明で目的とする充填材(図3中、開発材と記載)の応力~ひずみ曲線を模式的に示してある。
【0012】
前記目的は、非水硬性物質の粉体100質量部に対し、セメント0.5~40質量部を配合し、湿潤密度が1.6M(メガ)g/m3以上となるように水を加えて混練してなる混練物からなり、必要に応じて混和剤を10質量%以下の範囲で含有する自硬性の地中充填材によって達成される。
【0013】
ここで、「非水硬性物質」とは,単体では水和反応によって硬化する性質を有しない物質である。「粉体」は75μmの篩を通過する粒子を70質量%以上含有するものをいう。本発明に好適な非水硬性物質の粉体としては、例えばコンクリート用骨材として使用される砕石、砕砂(JIS A5002、JIS A5005)、およびスラグ(JIS A5011-1~4)に由来する粉体、並びに石炭灰および石灰石粉に由来する粉体の1種以上を主体とするものが挙げられる。「主体とする」とは、非水硬性物質の粉体のうち50質量%以上を占めることをいう。これらの物質のうちいずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。「湿潤密度」は、JIS A1225に従って測定される。」
(ウ)「【0022】
詳細な検討の結果、非水硬性物質の粉体とセメントとの配合比率を、非水硬性物質の粉体100質量部に対し、セメント0.5~40質量部とし、これに水を加えて湿潤密度が1.6Mg/m3以上となるように調整した混練物を作ったとき、その混練物は上記の優れた特性を発揮することがわかった。セメントの割合が少なすぎると混練物に自硬性を持たせることが難しくなるが、上記の配合範囲において、例えば材令28日で一軸圧縮強度が150~3000kPa、かつ破壊ひずみが2%超え、好ましくは3%以上さらに好ましくは4.5%以上という優れた変形性能を呈する固化体が得られる。土構造物の欠陥修復箇所でこのような特性を示す固化体は周囲の土質材料との特性バランスが良好であり、補修後の土構造物の耐久性向上につながる。非水硬性物質の粉末とセメントとの配合比率は、上述のように非水硬性物質の粉体100質量部に対し、セメント0.5~40質量部の範囲で調整するが、セメントの割合を1~10質量部とすることで、湿潤密度が1.6Mg/m3以上のものにおいて、材令28日の一軸圧縮強度が10~300kPaという低強度および3%以上の高い破壊ひずみを実現しやすい。
【0023】
地中充填材(混練物)の湿潤密度は、一般的な土構造物の湿潤密度に合わせて、1.6Mg/m3程度以上にすることが重要である。さらに、湿潤密度を大きくすることで、狭隘なクラック中においても、自然流下での充填性能の向上が期待できる。また、流動性に関しては「Pロート流下時間:15秒以下好ましくは12秒以下」、および「シリンダーフロー値:250mm以上好ましくは300mm以上」のうち、少なくとも一方の特性を満たすことが望ましい。混練物のこのような特性は非水硬性物質粉体とセメントの配合比および水の混合量,混和剤の混合量によってコントロールすることができる。材料分離抵抗性については、24時間のブリージング率が2%程度以下であることが望ましいが、これは上記の配合において実現できる。」
(エ)「【0026】
混和剤として、混練物の流動性を阻害しない限りコンクリートに使用される種々のものが使用できる。例えば、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、遅延剤等が挙げられる。これらの混和剤は、混練物中に占める質量割合が10%以下となる範囲で添加することができるが、1%以下の添加量(例えば0.3~1%)としても、通常、良好な結果が得られる。」
(オ)「【0032】
【表1】
[図:0001421065000001.jpg]
【0033】
表1からわかるように、本発明例のものは湿潤密度が1.6Mg/m3以上と高く、優れた流動性(Pロート流下時間、シリンダーフロー値)を呈した。これらは、別途行った1mmスリットにおける流下試験(スリット両側の物質はコンクリートブロック)において、深さ2m程度以上の深部まで自然流入が可能であり、狭隘な隙間に対して自己充填性を有することが確認された。また、これらの固化体はいずれも破壊ひずみが2%を超えて大きく、強度も3000kPa以下に抑えられた。一般的なセメント系の材料からなる固化体(例えば従来の流動化処理土)の破壊ひずみは2%以下であることから、本発明の地中充填材は変形性能が高い。特にNo.3~5は土質材料により近い特性を呈するものである。
【0034】
一方、比較例であるNo.1は、流動性を高めるために混練物中の水分量を多くしたことにより、湿潤密度が小さくなりすぎた。No.7はセメントの配合量が多すぎたことにより、自然流下に対応できる流動性を示さず、また、固化体の破壊ひずみは一般的なセメント系材料と同等の低い値であった。」

イ 引用文献3の記載より認定できる事項

(ア)認定事項1

上記ア(イ)及び(ウ)の記載から、地中充填材を作成する方法が記載されていると認められる。

(イ)認定事項2

上記ア(ア)、及び上記ア(イ)【0011】の「流動性が良く、土構造物に生じた幅数mm程度というクラックにも、圧力を負荷させることなく充填可能な自硬性の充填材であって、充填後には、一般的なセメント硬化体とは異なり、土質材料に近い性質を呈するものを提供する」との記載から、充填材は、土構造物に生じたクラックや空隙あるいは地下構造物と土構造物の間に生じた空隙に加え、土構造物に生じたクラックや空隙、地下構造物と土構造物の間に生じた空隙以外にも充填され得る「地中充填材」であると認められる。

(ウ)認定事項3

a 上記ア(イ)【0012】の「必要に応じて混和剤を10質量%以下の範囲で含有する」との記載は、混和剤が「必要」ではない場合には、これを含まないことを意味すると解することができる。

b 他方、上記ア(エ)【0026】の「これらの混和剤は、混練物中に占める質量割合が10%以下となる範囲で添加することができるが、1%以下の添加量(例えば0.3~1%)としても、通常、良好な結果が得られる。」との記載があり、「1%以下の添加量」の例として「0.3~1%」との、混和剤の添加量として0%のものを含まない場合が挙げられてはいるが、上記「a」で示したことからみて、上記混和剤に係る「混練物中に占める質量割合が10%以下となる範囲」及び「1%以下の添加量」とのいずれの記載においても、混和剤の添加量が0%、すなわち、地中充填材に混和剤を用いないことが含まれると解することができる。

c 上記a、b、及び上記ア(ウ)【0023】の「地中充填材(混練物)の湿潤密度は、一般的な土構造物の湿潤密度に合わせて、1.6Mg/m3程度以上にすることが重要である。」、「混練物のこのような特性は非水硬性物質粉体とセメントの配合比および水の混合量,混和剤の混合量によってコントロールすることができる。」との記載をふまえると、非水硬性物質粉体、セメント、水のみを混練することによって作成される地中充填材が記載されていると認められる。

ウ 引用発明3

上記ア及びイから、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。

「石炭灰に由来する粉体を主体とする粉体に対し、セメントを配合し、水を加えて混練して、石炭灰に由来する粉体を主体とする粉体、セメント、水のみからなる地中充填材を作成する方法。」

エ 引用文献1に記載された事項

原査定で引用文献1として引用され、本願の出願前である令和2年1月30日に発行された特開2020-15850号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図1は、本発明の一実施形態によるカルシア改質土の製造方法を示すフロー図である。本実施形態によるカルシア改質土の製造方法は、石炭灰固化物を準備する工程(ステップS1)と、スラグ、浚渫土、及び石炭灰固化物を混合する工程(ステップS2)とを備えている。
【0015】
[準備工程]
続きを表示(全11行)
石炭灰固化物を準備する(ステップS1)。石炭灰固化物は、石炭灰とバインダとを含んでいる。石炭灰固化物は、粉体状の石炭灰(「フライアッシュ」と呼ばれる。)にバインダを混合して粒状にしたものである。石炭灰は、例えば火力発電で生成されるものを用いることができる。
・・・
【0017】
石炭灰固化物は、例えば、次のように製造することができる。石炭灰とバインダとを混合し、必要に応じて水を加え、造粒機で粒状する。造粒物を乾燥させた後、必要に応じて粉砕や分級を実施して粒度分布を調整する。バインダは、これらに限定されないが、セメント、石膏、高炉スラグ微粉末等を用いることができ、特にセメントが好ましい。バインダの量は、これに限定されないが、例えば石炭灰100重量部に対して1~20重量部である。
【0018】
[混合工程]
次に、スラグ、浚渫土、及び石炭灰固化物を混合する(ステップS2)。」
(イ)「【0036】
本実施形態では、石炭灰に予めバインダを加えて石炭灰固化物にしてから浚渫土と混合する。この方法によれば、粉体の石炭灰を直接浚渫土と混合する場合と比較して、取り扱いが容易になる。また、石炭灰固化物にすることによって、石炭灰中の有害元素が固定される。そのため、水面埋戻し用に使用しても、有害元素の水中への溶出を抑制することができる。」

オ 引用発明1

上記アから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「粉体状の石炭灰にセメントのバインダを混合して粒状にした石炭固化物を準備する工程と、スラグ、浚渫土、及び石炭灰固化物を混合する工程とを備えたカルシア改質土の製造方法であって、粉体状の石炭灰にセメントのバインダを加えて石炭灰固化物にしてから混合する方法によって、有害元素の溶出を抑制する製造方法。」

(3)対比

本願補正発明と引用発明3を対比する。

ア 後者の「セメント」、「水」、及び「地中充填材」は、前者の「セメント」、「水」、及び「地中充填材」に相当する。

イ 後者の「地中充填材を作成する方法」は、石炭灰に由来する粉体を主体とする粉体に対し、セメントを配合し、水を加えて混練するものであるから、前者の「地中充填材の製造方法」と、後者の「地中充填材を作成する方法」とは、石炭灰由来の材料、水及びセメントを混合する工程を備える方法である点で一致する。

ウ 後者の「地中充填材」は、「石炭灰に由来する粉体を主体とする粉体、セメント、水のみからなる」ものであるから、前者の「地中充填材」と、後者の「地中充填材」とは、石炭灰由来の材料、水及びセメントのみからなるものである点で一致する。

エ そうすると、本願補正発明と引用発明3とは、以下の点で一致し、

[一致点]

「水及びセメントを混合する工程と、を備える、石炭灰由来の材料、水及びセメントのみからなる 地中充填材の製造方法。」

以下の点で相違する。

[相違点1]

本願補正発明が、石炭灰及びバインダを含む粒状の石炭灰固化物を準備する工程を備え、この石炭灰固化物、水及びセメントを混合する工程を備えることで、地中充填材の製造する方法であるのに対し、引用発明3は、石炭灰に由来する粉体を主体とする粉体を固化物とせずに混練する点。

[相違点2]

本願補正発明の地中充填材が、石炭灰固化物、水及びセメントのみからなるのに対し、引用発明3の地中充填材は、石炭灰に由来する粉体を主体とする粉体、セメント、水のみからなる点。

(4)判断

ア 相違点1及び2について検討する。

引用発明1の「粉体状の石炭灰」、「セメントのバインダ」、「石炭灰固化物」は、本願補正発明の「石炭灰」、「バインダ」、「石炭灰固化物」に相当する。

イ 引用発明1の「石炭灰固化物」は、粉体状の石炭灰にセメントのバインダを混合して粒状にしたものであるから、引用発明1の「粉体状の石炭灰にセメントのバインダを混合して粒状にした石炭灰固化物を準備する工程」は、本願補正発明の「石炭灰及びバインダを含む粒状の石炭灰固化物を準備する工程」に相当する。

ウ 引用発明3と引用発明1は、地中充填材の製造方法に関する技術の点で技術分野が共通する。

また、石炭灰には有害元素が含まれていることは技術常識であるところ、石炭灰を用いた地中充填材から有害元素を地中に溶出させないようにすることは、当該技術分野においては自明の課題であると認められる。

そうすると、引用発明3の地中充填材を作成する方法を実施するにあたり、石炭灰の有害元素の溶出を抑制するために、引用発明1を採用する動機付けがあるといえる。

してみると、引用発明3において、石炭灰に由来する粉体を主体とする粉体を混練することに代えて、引用発明1の「「粉体状の石炭灰にセメントのバインダを加え」てなる「石炭灰固化物」を混合する」技術を採用し、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

エ そして、引用発明3の「地中充填材を作成する方法」は、石炭灰に由来する粉末を主体とする粉体、セメント、水のみを混連するものであることをふまえると、上記ウのとおり、引用発明3に引用発明1を採用し上記相違点1に係る構成とすると、「地中充填材」は、石炭灰固化物、水及びセメントのみからなるので、上記相違点2を充足することになる。

オ 本願補正発明の効果について、本願の【0037】には、「表1及び2、並びに図3に示すように、同程度の流動性で同一のセメント比率となるように調合した場合、石炭灰固化物を使用した流動化処理土の方が、石炭灰を使用した流動化処理土に比べて明らかに大きな一軸圧縮強度を示した。」と記載されているものの、表1の実施例と、表2の比較例とでは、セメント比率を計算する際の分母が、石炭灰固化物(表1)、石炭灰(表2)と異なっていることから、「同一のセメント比率」とはいえず、上記効果については、石炭灰固化物(表1)と石炭灰(表2)の違いによって奏するものであるとは認められない。

カ また、特開2005-263974号公報の【0037】~【0039】に示されているように、焼却灰にセメントを加えたものにおいて、セメント量が多くなるほど一軸圧縮強度が大きくなることは、周知の事項(以下「周知事項」という。)であるから、引用発明3の石炭灰に由来する粉体を主体とする粉体を使用するよりも、引用発明1の石炭灰固化物を使用する方がバインダとしてのセメント量の分、石炭灰に対するセメント量が多くなる結果、地中充填材の一軸圧縮強度が大きくなるといえる。

また、上記周知事項によれば、焼却灰にセメントを加えたものにおいて、セメント量が多くなるほど一軸圧縮強度が大きくなるのであるから、本願の【0032】【表1】で示される実施例の一軸圧縮強度が【0035】【表2】で示される比較例のそれよりも大きくなっているのは、単に本願の実施例がバインダとしてセメントを用いた(【0029】)ためである蓋然性、すなわち、本願の【0037】の「同程度の流動性で同一のセメント比率となるように調合した場合、石炭灰固化物を使用した流動化処理土の方が、石炭灰を使用した流動化処理土に比べて明らかに大きな一軸圧縮強度を示した。」との効果は、「同程度の流動性で同一のセメント比率」により発揮され、かつバインダとしてセメントを用いた場合に生じる蓋然性が高い。そうすると、セメント比率、及びバインダの材料について何ら特定されていない本願補正発明は、必ずしも上記の効果を奏するものとは認められない。

一方で、バインダとしてセメントを用いた場合には、石炭灰に対するセメント量が多くなるのであるから、上記周知事項からみて、本願の【0037】に記載された効果は、当業者が予測し得る程度のものといえる。いずれせよ、当該効果を進歩性の根拠とすることができないことは明らかである。

そうすると、本願補正発明の効果は、引用発明3及び引用発明1から、当業者が予測し得る程度のものといえる。

(5)令和5年12月8日に提出された審判請求書の主張について

ア 請求人は、審判請求書において以下のように主張している。

(ア)「石炭灰固化物にすることで粉体よりも取り扱いが容易になることや、有害元素の水中への溶出が抑制されることが引用文献1に記載されているとしても、これらの記載のみからでは、引用文献1に記載された発明と引用文献3に記載された発明との前提事項の違い等を捨象して両者を組み合わせる強い動機づけがあったということはできないと思料いたします。」

(イ)「本願の明細書には、同程度の流動性で同一のセメント比率となるように調合した場合、石炭灰固化物を使用した地中充填材の方が、石炭灰を使用した地中充填材に比べて大きな一軸圧縮強度を示したことが記載されています(段落[0038])。引用文献1-3には、石炭灰固化物を用いることで作業時の流動性と硬化後の強度とを両立しやすくできるという効果は、記載も示唆もされていません。そのため、引用文献3の地中充填材において、作業時の流動性と硬化後の強度とを両立しやすくするという課題に直面した当業者に対して、石炭灰等に代えて石炭灰固化物を用いることの動機付けとなり得るものはありません。また、石炭灰固化物を用いることで作業時の流動性と硬化後の強度とを両立しやすくできるという効果は、引用文献1-3から予測できない顕著な効果であると思料いたします。」

イ 請求人の主張についての検討

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上記(4)ウのとおりであるから、令和5年9月1日付け拒絶査定で説示されているとおり、引用発明3に、石炭灰及びバインダを含む粒状の石炭灰固化物を準備する工程(引用文献1)を採用することは、当業者が適宜なし得ることである。

そうすると、上記主張(ア)は上記(4)の判断を左右するものでなく、採用できない。

また、上記(4)オ及びカのとおりであるから、上記主張(イ)は上記(4)の判断を左右するものでなく、採用できない。

(6)むすび

以上のとおり、本願補正発明は、当業者が、引用発明3及び引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものである。

したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括

本願補正発明は、上記3のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、再掲すると、令和5年8月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
石炭灰及びバインダを含む粒状の石炭灰固化物を準備する工程と、
前記石炭灰固化物、水及びセメントを混合する工程と、を備える、建設残土及び泥土を含まない地中充填材の製造方法。」

2 原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由は、以下の拒絶理由を含むものである。

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1:特開2020-15850号公報
引用文献3:特開2008-31638号公報

3 引用文献

原査定の拒絶の理由における引用文献1、及び引用文献3は、上記第2[理由]3における「引用文献1」、及び「引用文献3」に相当する。

したがって、引用文献1、及び引用文献3に記載された内容は、上記第2[理由]3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、本願補正発明の「前記石炭灰固化物、水及びセメントのみからなる地中充填材」という本件補正後の発明特定事項を、「建設残土及び泥土を含まない地中充填材」に置き換えたものである。

(1)対比

本願発明と引用発明3とを対比すると、上記第2[理由]3(3)に加え、

ア 後者の「地中充填材」は、「石炭灰に由来する粉体を主体とする粉体、セメント、水のみからなる」ものであるから、前者の「地中充填材」と、後者の「地中充填材」とは、「建設残土及び泥土を含まない」ものである点で一致する。

イ そうすると、両者は以下の点で相違する。

[相違点1]

本願発明が、石炭灰及びバインダを含む粒状の石炭灰固化物を準備する工程を備え、この石炭灰固化物、水及びセメントを混合する工程を備えることで、地中充填材の製造する方法であるのに対し、引用発明3は、石炭灰に由来する粉体を主体とする粉体を固化物とせずに混練する点。

(2)判断

上記(1)イの[相違点1]は、上記第2[理由]3(3)の[相違点1]と同一であるので、上記第2[理由]3(4)における検討内容をふまえれば、本願発明は、引用発明3及び引用発明1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2023-020929

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