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特許拒絶査定不服審判

2024-016935

地下壁杭構造

審判番号
2024-016935
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2021-111726
請求日
2024年10月24日
審決日
2026年02月02日
公報発行日
2026年04月24日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】大成建設株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 有家 秀郎
  • 審判官 澤田 真治
  • 審判官 岡崎 彦哉
分類
P18 .121-Z (E02D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2021-111726「地下壁杭構造」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 1月19日出願公開、特開2023- 8291〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和3年7月5日の出願であって、その手続の経緯は概略以下のとおりである。 令和6年 3月19日付け 拒絶理由通知 同年 5月17日提出 意見書及び手続補正書 同年 8月 5日付け 拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月20日 謄本の送達日) 同年10月24日提出 審判請求書及び手続補正書 第2 令和6年10月24日に提出された手続補正書による補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年10月24日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正は、令和6年5月17日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における (補正前) 「【請求項1】 壁状体の底部が壁厚方向に拡底された地下壁杭構造であって、 壁厚方向に一定の壁厚を有する壁状体本体と、 底部が壁厚方向に拡底された拡底部と、を備え、 拡底部は、底が壁厚方向にアーチ形状であり、拡底部の側面は表面に指状に曲面凸凹がある弧状を有する拡翼指に形成されており、設計精度を満足する形状を備えており、 拡翼指は、単独あるいは複数が連続して設けられていることを特徴とする地下壁杭構造。」を、 審判請求時に提出された手続補正書(令和6年10月24日提出)の特許請求の範囲の請求項1における (補正後) 「【請求項1】 壁状体の底部が壁厚方向に拡底された地下壁杭構造であって、 壁厚方向に一定の壁厚を有する壁状体本体と、 底部が壁厚方向に拡底された拡底部と、を備え、 拡底部は、地盤と密着させて摩擦抵抗を大きくし、安定性を向上させることで、設計精度を満足できるように、底面には壁厚方向に凸凹がアーチ形状に形成され、かつ当該拡底部の側面には表面に指状に曲面凸凹がある弧状を有する拡翼指が形成されており、 拡翼指は、単独あるいは複数が連続して設けられていることを特徴とする地下壁杭構造。」にする補正を含むものである(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。)。 2 本件補正の適否 (1)新規事項追加(特許法第17条の2第3項)の有無について 本件補正前の請求項1の「拡底部は、底が壁厚方向にアーチ形状であり、拡底部の側面は表面に指状に曲面凸凹がある弧状を有する拡翼指に形成されており、設計精度を満足する形状を備えており、」を、 本件補正後の請求項1の「拡底部は、地盤と密着させて摩擦抵抗を大きくし、安定性を向上させることで、設計精度を満足できるように、底面には壁厚方向に凸凹がアーチ形状に形成され、かつ当該拡底部の側面には表面に指状に曲面凸凹がある弧状を有する拡翼指が形成されており、」と変更する補正によって、「拡底部」の「底面には壁厚方向に凸凹がアーチ形状に形成され」ることとなった。 ここで、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の【0013】及び図3には、以下の事項が記載されている。 「【0013】 図3は、拡翼指の凸状底面の例を示す図である。 拡翼指31の底面側に凸型曲面36が形成されている例を示している。拡翼指31の底面に凸型曲面36が形成されることにより、拡底部3の底面にも凸凹が形成されることとなり、地盤との摩擦を増加させることができる。」と、図3には、 「 [図:0001433745000001.jpg] 」(図3の「(b)正面」の上の「←→ 壁の短手方向」は当審において付した。) 上記記載によれば、当初明細書等には、拡翼指31の底面側に凸型曲面36が形成されており、拡翼指31の底面に凸型曲面36が形成されることにより、拡底部3の底面にも凸凹が形成されることは記載されている。 しかしながら、当初明細書等によれば、拡底部3の底面には、壁厚方向と直角の方向(壁の短手方向)に凸凹が形成されてはいるものの、壁厚方向に凸凹が形成されていることは記載も示唆もされていない。 図3の(a)の側面図からは、拡底部3の底面が壁厚方向にアーチ状であり、凸状であることは看取できるが、拡底部3の底面に、壁厚方向に凹状の構造を有するものを看取できないことから、凸凹がアーチ状に形成されていることは看取できず、示唆もされていない。 さらに、上記以外の当初明細書等にも、拡底部3の底面に、壁厚方向に凸凹をアーチ状に形成することは、記載も示唆もされていない。 そうすると、本件補正後の請求項1の「拡底部は、・・・底面には壁厚方向に凸凹がアーチ形状に形成され、・・・」という事項については、当初明細書等に記載も示唆もなく、また、自明な事項や技術常識から導かれる事項でもないため、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。 したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 (2)審判請求人の主張について 審判請求人は、審判請求書の「3.補正について」の「(3)補正の適法性について」において次の主張をしている。 「(c) 請求項1の補正「底面には壁厚方向に凸凹がアーチ形状に形成され、かつ当該拡底部の側面には表面に指状に曲面凸凹がある弧状を有する拡翼指が形成されており、」は、「底面には壁厚方向に凸凹がアーチ形状に形成され、」は段落[0013]の記載「 拡翼指31の底面側に凸型曲面36が形成されている例を示している。拡翼指31の底面に凸型曲面36が形成されることにより、拡底部3の底面にも凸凹が形成されることとなり、地盤との摩擦を増加させることができる。」に基づく限定的補正であり、また、「底面には」は後段の「当該拡底部の側面には」と表現を合わせるものであり、「当該拡底部」は、この段落の文頭の「拡底部」と同一であることを明確に表現したものであって、不明瞭な記載の釈明に当る補正である。」 しかしながら、上記(1)で検討したとおり、審判請求人が補正の根拠とする段落【0013】の記載を考慮しても、当初明細書等には、拡底部3の底面に、壁厚方向に凸凹をアーチ状に形成することは記載も示唆もなく、また、自明な事項や技術常識から導かれる事項でもないため、上記審判請求人の主張は採用できない。 (3)新規事項追加(特許法第17条の2第3項)の有無についてのまとめ 以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、上記において検討したように、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記第2のとおり却下された。 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、令和6年5月17日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される。すなわち、上記「第2 1(補正前)」の請求項1に記載された事項により特定されたとおりのものと認める。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の理由は、次の理由を含むものである。 ・進歩性欠如 本願発明1は、その出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2019-100124号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3 引用文献1の記載事項及び引用発明 (1)記載事項 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2019-100124号公報(令和元年6月24日公開)(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審にて付した。)。 「【0008】 本発明は、壁状体の下部が広がった拡底部を有し、底面がアーチ状である拡底部を備えた地下壁杭構造である。拡底部の底面をアーチ状にすることにより、アーチ状の曲面に沿って地盤反力が作用するために、フラットな拡底部で生じる地盤反力等の偏在は見られることはなく、ひび割れなどの損傷が抑制された高支持力の地中連壁となる。壁状体の延伸方向に突起部を設けた地下壁杭は、地震等において作用する水平方向の応力を支持地盤に伝えて、抵抗力を高める。 拡底部の張り出しを左右非対称とした地下壁杭は、近接している隣接境界などでも拡底部を備えた地下壁杭を構築できる。この、左右非対称は、拡幅できない地中構造物を避けるなど部分的に設けることもできる。 長手方向に伸びる地下壁杭において、拡底部を設ける場所、大きさは一様である必要はなく、上部躯体の柱部分など高軸力が作用する集中場所などに、必要な耐力に応じて設定することができる。 更に、壁の中間に拡幅部を設けた地下壁杭にあっては、鉛直支持力、及び引き抜き抵抗力を増大させて、地震時の耐力を向上させる。この拡幅部も、建物の隅部など引き抜き力が大きくなる部分に集中して設けるなど部分的に設けることができる。 本発明の地下壁杭は、壁状に連続した杭であって、建物外周だけでなく、周回していない壁杭あるいは、格子状など内部側にも設けることによって、建物柱の配置に応じた連続壁として構成することもできる。または、壁杭は、連壁状でなくても良い(図9参照)。」 「【0010】 <地下壁杭> 本発明の地下壁杭構造である壁杭の例を図1に示す。 壁杭1は、建物の基礎などに沿って長く伸びる壁状体2とその下側に拡底部3を有し、その拡底部の底面がアーチ形底面34となっている。 拡底部の底面がアーチ形であることにより、上部構造の負荷(鉛直荷重、特に圧縮軸力)を安定して支持することができ、平らな底面に比べて、大きな鉛直荷重を負担でき、高い支持力を発揮することができる。あるいは、壁圧を薄くすることができる。また、拡底部において、壁状部よりも拡幅している部分は、配筋することが難しいので、無筋とすることにより、地震などで大きな負荷がかかると、ひび割れなどが入って損傷しやすく、拡底部を大きくすることが難しい。本発明は拡底部の底面をアーチ形とすることにより、拡底部が安定し、耐荷重が向上する。 鉄筋は、本地下壁杭構造の形に地盤を掘削した孔に壁状部の厚さに沿う組鉄筋を挿入する。壁状体から広がった部分には鉄筋を配筋することは難しく、無筋になることが多い。 この地下壁杭構造は、建物の壁状の基礎構造や山留め壁を兼用する壁杭などに適している。 【0011】 地下壁杭構造の形状の基本例を図2に示す。 図2(a)に示す地下壁杭構造は、下部側が壁状体2の延長に対して左右に同一形に拡幅した拡底部3を設けた同張り出し拡幅地下壁杭構造11の例である。拡底部の底面は左右同角のアーチ形底面34となる。 図2(b)に示す地下壁杭構造は、拡底部3の下方に突起部4を有する突起部付き拡底部32を備えた地下壁杭構造12の例である。 突起部4は、図示の例では壁状体2の直下に同幅で設けられている。この突起部4の取付け方向及び大きさは任意であり、地盤の特性などによる側圧などを考慮して取り付け角度を設定することができる。」 「【0014】 (アーチ形拡底部) 拡底壁杭の拡底部を形成する傾斜角度は、壁の外面から広がった角度であり拡底角度と称する。図4に示す例示は、回転中心をもつカッターを揺動して作成した例である。拡底角度をθで現すと、カッターの揺動角度は2θとなる。 拡底角度θについて、模式的に図4に示す。地下壁杭構造の拡底部3は、直線で現される壁状体と拡幅部の交差角度がθとして現され、カッターが左右に揺動するカッターの回動角度は2θとなる。 地下壁杭構造のアーチ形底面の大きさについて、検討した例を図5に示す。 回動するシャフトをもったカッターを利用して拡幅を形成した例であり、カッターの回動角度θとシャフト長さを設定してアーチ面の大きさを設定している。 図5(a)は、壁厚2.4m、カッター長6m、θ=20度の設定で拡幅量は5mとなり、壁厚に対する拡幅率は2.08倍である。 図5(b)は、壁厚2.0m、カッター長6m、θ=12度の設定で拡幅量は3.5mとなり、壁厚に対する拡幅率は1.75倍である。 図5(c)は、壁厚2.0m、カッター長4m、θ=20度の設定で拡幅量は3.7mとなり、壁厚に対する拡幅率は1.85倍である。 図5(d)は、壁厚1.5m、カッター長4m、θ=12度の設定で拡幅量は2.6mとなり、壁厚に対する拡幅率は1.73倍である。 図5に示す例では、壁厚に対する拡幅されているアーチ形底部の拡底部は、2θが12~20度に設定し、拡幅部の半径は4~6m、壁厚に対する拡幅率は1.73~2.08倍である。 後に提案する拡底部を掘削する掘削機は、機械装置の構造上はカッターを左右にθが90度以上回動することができるので、論理的にθは、90度以上設定でき、拡幅量は、カッター長の2倍まで可能である。この間で、必要な設計強度に応じて拡幅量を設定する。また、コンクリートの強度などを勘案し、壁杭の配置の設計に反映する。 好ましい、アーチ角度(θ)は壁厚+0度以上90度以下であり、好ましくは、壁厚+10~60度、左右で異なる拡底角度の場合もこの角度範囲で調整される。なお、アーチ面にすると、平坦面よりも支配角度が広がるので、壁杭の耐力が向上する。なお、一般的な基礎底辺部分(フーチング)が拡幅された独立フーチング基礎においては、フーチング基礎とフーチング基礎なしが区別されるフーチング幅の長さは、柱中心軸に対するフーチン基礎の広がり角度(片側)で表すと、約3.6度である。したがって、一般的な柱に限定した場合、柱外周面から外側にはね出す基部の長さは柱中心軸からの広がり角度(片側)で表すと3.6度程度の拡幅まで拡幅なしの独立柱と評価されている。本発明は、アーチ型の拡底部を備えている点で、通常の柱材とは異なるが、より拡底作用効果を奏する角度は片側5度以上(すなわち両側に拡底部を設ける場合は10度以上)が適切である。 また、施工上の管理単位は10cmなので、拡底部の片側張り出し長は、実務上10cmが最小である。」 「【0018】 <拡底部掘削装置> 図7に全体図を示す。図8に拡底部掘削装置の要部を示す。 拡底部掘削は、垂直方向に掘削した孔に回動してスイングできるシャフトを備えたカッターを用いて行われる。 図7には、クローラクレーンで吊って掘削孔8に拡底掘削機5を挿入した状態が図示されている。 拡底掘削機5は、ビット62を周囲に取り付けたシャフト61を備えたカッター6を備えている。シャフト61は、軸回転とスイング状に回動して拡幅掘削を行う。 【0019】 図8(a)には、掘削孔8内に吊り込まれて挿入された状態にある拡底掘削機5の要部が示されている。 フレーム7の下段に設けられた支軸64に回転自在にカッター6が取り付けられている。 フレーム7は、上下の横フレーム71、71と左右の縦フレームである固定ガイド72、72及び支軸64を備えている。固定ガイド72には旋回シリンダ65が設置されており、カッターが回動される。支軸には油圧モータ63が取り付けられており、油圧モータによってカッター6が回転駆動される。フレームは、カッターが回動して拡幅掘削する際に掘削孔に圧接して反力を取る。 カッター6は、第1カッター6a、第2カッター6b、第3カッター6cの3本が設置されている。各カッターは、軸となるシャフト61に周囲に多数のビット62が取り付けられている。図8(b)に図示されるようにビット62は三角形をしており、切削する地盤の抵抗できるように安定した形となっている。このビットはシャフトに螺旋状に取り付けられている。シャフトは回転して掘削する。なお、拡底掘削機を構成するカッターの本数は、本実施例では3本組について記載しているが、カッター本体のビット形状等により2本、または1本で構成されるものであっても良い。 シャフトは回転と回動によって、円弧状に拡幅掘削する。 【0020】 <地下壁杭の施工例> 本発明のアーチ状の底部を有する拡底部を備えた地下壁杭構造の施工においては、本発明者等が先に特願2016-139669号に提案した先行エレメントを使用した施工方法を使用することができる。 すなわち、先願発明は図11及び12に示すように、籠鉄筋を用いた先行エレメント100と籠鉄筋を用いた後行エレメント200との境界部に配設される仕切板110と、仕切板110の後行エレメント200側の側面に突設された接続部材120と、接続部材120の周囲に空間を形成する空間形成部材150と、仕切板110と空間形成部材150との間に形成された空間内に充填された粒状体170とを備える先行エレメントの端部構造100Bを備えており、空間形成部材は、地盤掘削機により切削可能となっている。 本発明は、先行掘削において、垂直掘削孔部82に拡底形掘削孔部81を設けた先行掘削を行った掘削溝に先願発明の先行エレメントを敷設して、コンクリートを打設する。打設されたコンクリートは、粒状物が充填された空間内には流入せずに、プラスチックなどで形成する空間部の外壁板は切削しやすい状態を維持している。そして、後行掘削を行って形成した拡底掘削孔部を備えた掘削溝に後行エレメントを敷設する。後行掘削では、先行エレメント100の端部に設けられた空間形成部材150が切削され、空間形成部材150が切削されることで、先行エレメント100の端部に凹部100Aが形成される。このとき、空間形成部材150が切削されると、粒状体170が後行掘削溝D2側に崩れるため、仕切板110、接続部材120および止水板が露出する。粒状体170は、後行掘削溝D2の掘削により発生した土砂とともに回収する。その後、コンクリートを打設することにより、連続した拡底部を備えた地下壁杭構造が形成される。」 「 [図:0001433745000002.jpg] 」 【図5】「 [図:0001433745000003.jpg] 」(当審において90度右に回転させた。) 「 [図:0001433745000004.jpg] 」 「 [図:0001433745000005.jpg] 」 (2)認定事項 ア 上記図1から、拡底部で壁状体1の底面は壁厚方向に拡底されている(以下「認定事項1」という。)ことが看取できる。 イ 上記図1から、拡底部以外の壁状体1の壁厚が一定である(以下「認定事項2」という。)ことが看取でき、それは、上記【0014】及び図5で、拡底壁杭の拡底部以外の壁状体部分が直線で現され、その壁厚が一定の値である記載とも整合している。 ウ 上記【0019】には、拡底掘削機5には、第1カッター6a、第2カッター6b、第3カッター6cの3本のカッター6が設置され、各カッターは、軸となるシャフト61に周囲に多数のビット62が取り付けられており、シャフトは回転と回動によって、円弧状に拡幅掘削することが記載されている。そして、図8のシャフト及びカッターの配置を踏まえると、図7のように、シャフト61を、軸回転とスイング状に回動して拡幅掘削を行った際に、3本のカッターにより拡幅掘削された孔の形状は、各カッターによる孔が3つ連なったものとなり、3つの孔が連なった拡底部の側面は、3つのカッターの軸に対応する3つの箇所が凸となり、3つのカッターの回転に対応した円弧状の曲面が、3つのカッターの間の箇所の凹部でつながった形状となることは明らかであるといえる。 ウ 上記イの形状の拡幅掘削された孔に、上記【0020】のとおりコンクリートが打設されると、拡底部3の側面は、指状に凸凹がある曲面となる(以下「認定事項3」という。)と認められる。 (3)引用発明 上記(1)及び(2)より、引用文献1には次の事項が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。 「壁状体の下部が広がった拡底部を有し、底面がアーチ状である拡底部を備えた地下壁杭構造であって(【0008】)、 拡底部で壁状体の底面は壁厚方向に拡底されており(認定事項1)、 拡底部以外の壁状体の壁厚が一定であり(認定事項2)、 拡底部の側面は、3つのカッターの軸に対応する3つの箇所が凸となり、3つのカッターの回転に対応した円弧状の曲面が、3つのカッターの間の箇所の凹部でつながった形状となる(認定事項3) 地下壁杭構造(【0010】)。」 4 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「壁状体の底面」が「壁厚方向に拡底されて」いること、及び「地下壁杭構造」は、それぞれ本願発明1の「壁状体の底部が壁厚方向に拡底され」ていること、及び「地下壁杭構造」に相当する。 (2)引用発明の「拡底部以外の壁状体の壁厚が一定であ」ることは、本願発明1の「壁厚方向に一定の壁厚を有する壁状体本体」を備えることに相当する。 (3)引用発明の「壁状体の底面」が「壁厚方向に拡底されて」いる「拡底部」は、本願発明1の「底部が壁厚方向に拡底された拡底部」に相当する。 (4)引用発明の「拡底部」で「壁状体の底面は壁厚方向に拡底されており」「底面がアーチ状である」ことは、本願発明1の「拡底部は、底が壁厚方向にアーチ形状であ」ることに相当する。 (5)引用発明で、「拡底部の側面は、3つのカッターの軸に対応する3つの箇所が凸となり、3つのカッターの回転に対応した円弧状の曲面が、3つのカッターの間の箇所の凹部でつながった形状」であることは、「3つのカッターの回転に対応した円弧状の曲面」のそれぞれを指状ということができることから、本願発明1において、「拡底部の側面は表面に指状に曲面凸凹がある弧状を有する拡翼指に形成されて」いること、及び「拡翼指は」「複数が連続して設けられていること」に相当する。 上記(1)~(5)によれば、本願発明1と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 <一致点> 「壁状体の底部が壁厚方向に拡底された地下壁杭構造であって、 壁厚方向に一定の壁厚を有する壁状体本体と、 底部が壁厚方向に拡底された拡底部と、を備え、 拡底部は、底が壁厚方向にアーチ形状であり、拡底部の側面は表面に指状に曲面凸凹がある弧状を有する拡翼指に形成されており、 拡翼指は、複数が連続して設けられている地下壁杭構造。」 <相違点> 「拡底部」に関して、 本願発明1では、「設計精度を満足する形状を備えて」いると特定されているのに対して、 引用発明では、そのように特定されていない点。 5 当審の判断 (1)相違点について 上記相違点について検討すると、一般的に、工具を用いて所定の形状の土木構造物をつくるときに、該所定の形状が所望の設計精度を満足するようにすることは、例をあげるまでもなく周知の技術である。 そして、上記相違点に関して、「地下壁杭構造」の「拡底部」について、本願発明1が「設計精度を満足する形状を備え」るという特定を有することで、引用発明の「拡底部」が上記周知の技術を踏まえて適宜に所望の設計精度を満足するように形成されている場合に比較して、「地下壁杭構造」の構造として、具体的に相違する構造を特定しているとはいえない。 したがって、上記相違点は、引用発明に係る「拡底部」が、あえて所望の設計精度を満足しないように作られている場合を別とすれば、実質的な相違点とはいえず、また上記相違点は、上述した周知の技術を踏まえて、引用発明に係る「拡底部」を、何らかの所望の設計精度を満足するよう形成することにより、当業者が容易になし得たことである。 また、本願発明1の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び上記周知の技術の奏する効果から、当業者が予測することができる程度のものである。 (2)審判請求人の主張について ア 審判請求人の主張 審判請求人は、令和6年10月24日提出の審判請求書において、次の点について主に主張をしている(以下、それぞれの項目名に応じて「(ア)の主張」等という。)。 (ア)「4.進歩性について」「(1)本願発明について」「3)本願請求項1記載の発明の構成について」において、「(a)本発明は、前記「1)課題について」において説明した通り、本出願人が保有する従来の特許文献4(引用文献1)などに例示される掘削装置では、本体部分をしっかり固定することができないので、カッターの掘削軌跡を正確に制御することができず、想定したような正確な地下壁杭構造を実現できず、精度の高い設計をすることができないという事情を踏まえて、認識された課題を解決するものである。 引用文献2をはじめ、このアーチ型の拡底部を形成する掘削装置は本出願人が独自開発したものであって、この課題は本出願人が独自に知見できるものであって、他の当業者が容易に認識できないものである。 (b)そして、この拡底部を地下に正確に掘削する装置(本願図10参照)として、請求項7に記載する構成 「フレーム躯体の上部に地盤に圧接する上部スタビライザー、下部に地盤に圧接する下部スタビライザー」を開発することにより、あらかじめ掘削された立坑の壁面に拡翼掘削装置の本体部をしっかりと安定して固定することができるようになったものである。その結果、正確なカッターの掘削軌跡を持った拡底部に相当する空間を実現でき、そこにコンクリートを打設して、地盤と密着させて摩擦抵抗を大きくし、安定性を向上させることで、設計精度を満足できるように、底面は壁厚方向に凸凹がアーチ形状に形成され、かつ当該拡底部の側面には表面に指状に曲面凸凹がある弧状を有する拡翼指が形成されている拡底部を構築できたものである。この拡翼指が形成された拡底部は設計精度を十分充足できるものである。 ・・・ (c)その出来形は、段落[0028]、図9に示す掘り出した拡底部を備えた地下壁杭の実例に示されるとおりに、掘削痕がきれいに現れた、正確な形状に実現されている。 さらに拡翼指の出来形の施工例として参考図を示す。 図9及び参考図に示されるように、拡翼指の曲面の表面にビットの掘削痕まで鮮明に表れていることがわかる。」 (イ)「4.進歩性について」「(5)各引用文献の組み合わせについて」において、「各引用文献に記載された事項を組み合わせても、本発明で規定する「拡底部は、地盤と密着させて摩擦抵抗を大きくし、安定性を向上させることで、設計精度を満足できるように、底面には壁厚方向に凸凹がアーチ形状に形成され、かつ当該拡底部の側面には表面に指状に曲面凸凹がある弧状を有する拡翼指が形成されており」を構成することはできず、特に、地盤と密着させて摩擦抵抗を大きくし、安定性を向上させることで、設計精度を満足する形状を備えた、底面は壁厚方向に凸凹がアーチ形状に形成され、かつ当該拡底部の側面には表面に指状に曲面凸凹がある弧状を有する拡翼指を引用文献1~3に開示された技術で構築することはできない。 そして、本発明は、大型化する建築現場で構築される杭基礎構造や地下壁基礎構造を設計精度が満足する程度に構築できるので、不安定な地盤が多い湾岸部などの大型建築物の基礎として重要な技術であるという建築技術分野に対して顕著な貢献を果たす発明である。」 (ウ)「5.拒絶査定について」「(1)請求項1に係る発明について」において、「(b)拒絶査定では、「また、工具を用いて所定の形状の土木構造物をつくるときに、該所定の形状が所望の設計精度を満足するようにすることは文献をあげるまでもなく周知の技術である。」と判断しているが、設計精度を満足することは、一般論としては周知技術であったとしても、本発明に適用できる周知技術は開示されていない。当業者である本出願人は不知であり、承服できない。 請求項7~11に係る拡底掘削機は、上記4.(1)3)本願請求項1記載の発明の構成について、に記載するように、本出願人が独自に開発した拡底掘削機に属するものであって、自社使用しているものであり、他社には開放していない。他社は別の手法を用いて杭、あるいは地下壁杭の拡底部を構築しているので、本出願で課題としている拡底掘削機を安定化させる問題点は把握する必要もなく、ましてや、掘削孔の壁面に固定するための技術を開発することはない。」 (エ)「5.拒絶査定について」「(1)請求項1に係る発明について」において、「(c)拒絶査定において、「出願人は、令和6年 5月17日付け意見書において、『・・・(2)引用文献1に記載された発明について・・・・・・・・拡底部を構築できないことは明らかである。』と主張しているが、採用できない」と、判断されている。 これに対し、上記4.(1)1)(c)掘削時の姿勢について、に記載するように、杭穴の掘削は、掘削機による掘削、掘削機を外して土砂搬出、再度掘削機による掘削と、を繰り返して深く掘り進めることとなる。機器の出し入れのたびに掘削壁間は広がるとともに壁面の形状も変わることとなる。そして、拡底部の掘削も、カッターで掘削した土砂を搬出しないと詰まってしまい、回動させることができなくなるので、土砂の搬出作業が伴うことは同様である。 拒絶査定の備考には、設計精度を満足するようにすることは、文献をあげるまでもなく周知技術であると判断しているが、実現手段を伴わなければ、単なる希望に過ぎない。周知技術は開示されておらず、不明である。そして、拡底部を掘削する装置の姿勢を安定させることは、本出願人が独自に知見したものであるから、これに適用できる周知技術は開示される必要がある。 したがって、本出願で提案した安定手段を講じた拡底部の掘削機を用いることが、明確な掘削軌跡を持った拡底部用の空間を形成するために必要なことであるので、設計精度を実現する掘削手段が示されていない拒絶理由は成立しない。」 イ 審判請求人の主張についての検討 (ア)「(ア)の主張」について 当該主張は、請求項1において特定されていない請求項7の拡翼掘削装置の構成で形成した「拡底部」を前提としたものである。すなわち、当該主張は、物の発明について、請求項1で特定されていない請求項7の拡翼掘削装置を用いた製造方法により製造される旨の主張を、「拡底部は、」「設計精度を満足する形状を備えており」との抽象的な特定によって行っており、本願発明1の発明特定事項に基づかないものであるため失当であり採用することができない。 (イ)「(イ)の主張」、「(ウ)の主張」及び「(エ)の主張」について 上記(ア)のとおり、本願発明1では「拡底部は、」「設計精度を満足する形状を備えており」と特定されているのみであり、何らか所望の設計精度を満たす形状にする、という一般論について、個別具体的な周知技術を示す必要はないし、個別具体的な証拠を示すまでもなく、上記(1)で説示したとおり、引用発明において、拡底部を、上記周知の技術のように土木構造物の所定の形状が所望の設計精度を満足するように構成することは、当業者における設計的事項に過ぎない。 そして、本願発明1における「拡底部は、」「設計精度を満足する形状を備えており」の特定により、本願発明1に係る「地下壁杭構造」が物として引用発明から容易に発明できる「地下壁杭構造」に対して具体的に相違することが特定されるものではない。 よって、上記審判請求人の主張は、上記(1)の判断を左右するものではなく、採用できない。 (3)まとめ 上記(1)及び(2)より、本願発明1は、当業者が、引用発明及び上記周知の技術から容易に発明できたものである。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-016935

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