特許拒絶査定不服審判
2023-019798
カテーテルハウジング
- 審判番号
- 2023-019798
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-095745外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年11月22日
- 審決日
- 2025年02月06日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヴァソニクス・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】村山 靖彦
- 【請求人代理人】実広 信哉
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 分類
- P18 .121-Z (A61M) / P18 .575-Z (A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022- 95745「カテーテルハウジング」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 9月 8日出願公開、特開2022-132279〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)12月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年12月27日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2019-555738号の一部を令和4年6月14日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年 4月12日付け:拒絶理由通知書
同年 7月24日 :意見書の提出
同年 同月28日付け:拒絶査定(送達日:令和5年8月7日)
同年11月22日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出
令和 6年 2月15日 :上申書の提出
第2 令和5年11月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年11月22日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
令和5年11月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてした補正であり、本件補正により、請求項13は、次のとおり補正された。
(1)本件補正後の請求項13
「【請求項13】
カテーテル挿入部位のところで対象上に位置決めされるよう構成されたカテーテルハウジングデバイスであって、
前記カテーテルハウジングデバイスは、
前記カテーテル挿入部位の周りで対象の皮膚に固定されるよう構成された膜を備えるハブコンポーネントであって、前記膜は、前記膜が前記カテーテル挿入部位の周りで前記皮膚に固定される際に前記カテーテル挿入部位にわたって位置決めされるよう構成された開口部を含む、ハブコンポーネントと、
前記カテーテルハウジングデバイスが使用される際に少なくとも部分的に前記カテーテル挿入部位を封止するよう構成されているカバーであって、内側表面と外側表面とを備える、カバーと、
前記カバーの前記外側表面の一部から外向きに延在する少なくとも1つのポートであって、少なくとも1つの前記ポートは、ガスが前記カバーの内部に流れ込むのを許すように構成されており、かつ前記カバーと一体的に構成されている、少なくとも1つのポートと、
を備えることを特徴とするカテーテルハウジングデバイス。」(下線部は、補正箇所を示す。)
(2)本件補正前の請求項13
「【請求項13】
カテーテル挿入部位のところで対象上に位置決めされるよう構成されたカテーテルハウジングデバイスであって、
前記カテーテルハウジングデバイスは、
前記カテーテル挿入部位の周りで対象の皮膚に固定されるよう構成された膜を備えるハブコンポーネントであって、前記膜は、前記膜が前記カテーテル挿入部位の周りで前記皮膚に固定される際に前記カテーテル挿入部位にわたって位置決めされるよう構成された開口部を含む、ハブコンポーネントと、
前記カテーテルハウジングデバイスが使用される際に少なくとも部分的に前記カテーテル挿入部位を封止するよう構成されているカバーと、
前記カバーの一部から外向きに延在する少なくとも1つのポートであって、ガスが前記カバーの内部に流れ込むのを許すように構成されている少なくとも1つのポートと、
を備えることを特徴とするカテーテルハウジングデバイス。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項13に係る発明を特定するために必要な事項である「カバー」について、「内側表面と外側表面とを備える」ことを限定するとともに、同じく「少なくとも1つのポート」について、「前記外側表面」の一部から延在すること及び「前記カバーと一体的に構成されている」ことを限定する補正を含むものである。
そして、補正前の請求項13に記載された発明と補正後の請求項13に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正により追加された前記限定事項は、願書に最初に添付した明細書の段落【0096】に記載され、図13B、Dから看取できる事項であるから、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面とみなされた外国語書面の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものである。
そこで、本件補正後の請求項13に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、前記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項及び引用発明
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2006-520628号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線部は、当審で付与したものである(以下同様)。
(ア)引用文献1の記載事項
「【請求項1】
蓋(6)で閉鎖できるケース(5)と、
同ケースを囲繞し、同ケース(5)を患者の皮膚に固定することを可能にする、同ケース(5)と合体している台座(7)とを含み、
同ケース(5)が、相互に繋がっている2つの室(8,9)すなわち
カテーテルまたは針(1)の穿刺区域の上方に位置し、静脈または動脈(2)に設置してあるカテーテルの外方部分(1a)または患者の身体に埋め込まれている、ユベール針(1)が横断している第一室(8)および
カテーテルまたはユベール針(1)の台座(3)の格納を可能にする第二室(9)を含み、
上記台座(3)が第二室(9)内に係留されており、
台座(3)が液体をカテーテルまたはユベール針に台座(3)を介して通す、少なくとも1つの外方管(4)に連結されていることを特徴とする、
末梢静脈カテーテル、中心静脈カテーテルまたは中心動脈カテーテルの如きカテーテル(1)、または直角肘型ユベール針の如き穿刺針の患者の身体への固定用装置。」
「【0001】
本発明は、末梢静脈カテーテル、中心静脈カテーテル、中心動脈カテーテルの如きカテーテル、または直角肘型ユベール針(aiguille d'Hubert coudee a angle droit)の如き穿刺針を患者の身体に固定する装置に関する。」
「【0008】
中心静脈カテーテルまたは中心動脈カテーテルでは、カテーテルは、太い静脈内に挿入された部分の反対側の端部に、すなわち、皮膚のレベルで出て直ぐのところに支承部に連結されているが、同支承部は、通常、硬質プラスチック製であり、上記カテーテルと、1または複数のカテーテルまたは5本までの数の外部管との接続部になり、同時に投与できる、異なる複数の製剤は、ケースの形態の上記支承部について、上記諸カテーテルまたは外部管の内を流動することができ、次いで太い静脈内に設置されているカテーテル内に導入される。上記支承部は、全体の形状が、通常、三角形で、ときには円形であり、縫合糸を介して、支承部を患者の皮膚に固定させるための2枚の外部小翼部を備えている。」
「【0009】
しかしながら、上記諸カテーテルを皮膚に固定させる手段は、穿刺点および静脈カテーテルまたは動脈カテーテルの進入箇所のレベルで汚染物質の溜まり場になる大きな欠点があり、従って、敗血症を引き起こすこともあり得る汚染を阻止するために、日常的に包帯を巻く必要がある。
また、上記包帯が大腿静脈または頸静脈のレベルで設置されているとき、施術区域(zone anatomique)で実に大きくかさ張り、中心静脈カテーテルを保持している患者にとり、動作が制限され、困難になる。」
「【0035】
図1から図4までに示した本装置は、皮下経路により患者の身体の太い静脈2内に、前記の技術に従って患者の身体への中心静脈カテーテル1を固定するために適用され、同カテーテル1は、支承用台座3に接続されている、皮膚Pから出ている外方部分1aを有し、気密性で小型タンクを構成する支承用台座3は、同カテーテル1の反対側の端部で、医薬品をタンク1内に投与するために、同カテーテル1に流体を通す、少なくとも1つのカテーテルまたは外方管4に接続されている。複数の医薬品を同タンク3および静脈カテーテル1を通して静脈2内に投与するために、1つないし5つの外方カテーテル4をタンク1に接続できる。もちろん、各外方カテーテル4を既知の薬剤の持続的投与手段に連結できる。
【0036】
本発明によれば、本装置は、平らであり、従って、例えば、約8ないし10mmで、比較的薄いケースの一方の側壁にヒンジ連結されている蓋6で閉鎖されることができるケース5からなる。
【0037】
本装置は更に、コロイドで、ケースを患者の皮膚Pに固定できるために、同ケースを囲繞する、ケース5に固定されている台座7を含む。
【0038】
ケース5は、相互に通じる2つの室、すなわち、カテーテル1の外方部分1aが通過し、同カテーテル1の穿刺箇所の真上に位置している、ケースの底部を横断する第一室8および外方カテーテル4と静脈カテーテル1との間を接続するタンク3が格納されている第二室9を含んでいる。」
「【0045】
上記蓋6は、蓋6の閉鎖状態では、第一室8を部分的に封鎖するように、同蓋6の内面に固定されている他の2の盛り上がり部14を含む。同2つの盛り上がり部14は、蓋6の閉鎖状態では、通路10のほぼ延長になるように相互に間隔が開けてあり、静脈カテーテル1の外方部分の左右に配置されている。更に、盛り上がり部14の平坦表面部14aは、蓋6の閉鎖状態では、皮膚に支承され、好ましくは、コロイドを含む消毒性または抗菌性物質を含有し得る。もちろん、盛り上がり部14の外方周縁壁部は、蓋6の閉鎖状態では、第一室8を画定する周縁壁部と共働する形状を有する。」
「【0048】
ケース5の固定用台座7は、患者の皮膚上のケース5と台座7の支承用下面が、第一室8に通じている箇所を除いて、平坦かつ充実しており、本装置が固定されるべき患者の体形に合わさることができるように、同蓋6と共に、例えば、成形による柔軟性材料製シートからなる。
【0049】
蓋6は、成形で、単一部材からなることができ、ケース5と台座7と同じく、プラスチック製であり得る。」
「【0054】
図5に示した本発明の装置の第2の実施態様は、2つの盛り上がり部14が無く、静脈カテーテル1が配置された後、同カテーテル1の外方部分1aおよび小翼部3bを有するタンク3を通すことを可能にする孔部18を含む、第一室8の底部になる、比較的薄い柔軟性膜17を有することだけが第1の実施態様と異なる。膜17は、円形孔部の場合、放射状に延びている諸スリット19の間に限定されている小舌状部の弾性変形で、タンク3およびタンク3の小翼部3bの通過が可能である孔部18の縁部から始まるスリット19を含むことができる。更に、台座7の内面と同一平面に位置しており、台座7とケース5と共に成形で製作できる膜19の内面は、同膜17を患者の皮膚に接着できるコロイドで被覆されることができ、同コロイドは、消毒性または抗菌性物質を含有することができる。」
「【図1】
[図:0001425185000001.jpg]
」
「【図4】
[図:0001425185000002.jpg]
」
「【図5】
[図:0001425185000003.jpg]
」
前記「台座7の支承用下面」の「第一室8に通じている箇所」(段落【0048】)は、段落【0054】並びに図1及び5の記載を踏まえると、図5の実施態様における孔部18と同様に、「カテーテル1の外方部分1aを通すことを可能にする孔部」(図4において看取できる。)である。
前記「蓋6」は、「内面」を備えるところ(段落【0045】)、技術常識に照らせば「外面」も備えることは明らかである。
(イ)引用文献1に記載された発明
前記(ア)の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「蓋6で閉鎖できるケース5と、
蓋6と、
ケース5を囲繞し、ケース5を患者の皮膚に固定することを可能にする、ケース5と合体している台座7とを含む、カテーテル1を患者の身体に固定する装置であって、
ケース5は、カテーテル1の穿刺区域の上方に位置し、静脈又は動脈2に設置してあるカテーテル1の外方部分1aが横断している第一室8を含み、
台座7は、その支承用下面が、第一室8に通じている箇所である、カテーテル1の外方部分1aを通すことを可能にする孔部を除いて、平坦かつ充実しており、成形による柔軟性材料製シートからなり、
蓋6は、蓋6の閉鎖状態では、第一室8を部分的に封鎖するように構成されており、かつ、内面と外面を備える、
中心静脈カテーテル又は中心動脈カテーテルの如きカテーテル1を患者の身体に固定する装置。」
イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2012-152552号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)引用文献2の記載事項
「【0002】
留置カテーテルに起因する感染症は医療現場において治療経過中多くの合併症の原因となり、時によって死因にさえなり得る。実際の臨床現場で特に近年、留置カテーテルの使用頻度が著しく増大している現状が事態の重大さを増幅している。通常カテーテル感染はカテーテル挿入部への、主として表皮表在性の病原微生物の播種に起因し、その病原体はカテーテルの外側表面あるいは内腔を伝播して循環血液中に到達し、ついには病原微生物が全身に散布される事態に至る。カテーテル関連感染症(以下「CRI」と称す)を予防する手段としては、清潔手技を徹底すること、カテーテルを含む挿入に必要な器具を滅菌すること、カテーテル挿入部に抗生物質入りの軟膏を塗布する、または挿入部をクロロヘキシディンなどの滅菌剤を浸透させたスポンジ状の物体で被覆する、などの方法がある。」
「【0004】
故にCRIの発症頻度を著しく減少させるためにはより改良された器具および方法の開発が期待される。とりわけカテーテルの挿入部だけではなく挿入部およびその周囲部位と共に、医療現場で必要とされるカテーテルの全ての部位、場合によってはカテーテルの全長に渡ってさえも無菌性を保持し、さらにはカテーテルの種類を問わずに感染を徹底して防御するしくみが望ましい。MRSAなどの耐性菌を含む病原体がカテーテル挿入部に派生するのを防止するだけではなく、医療従事者が必要と判断する場合には、カテーテル先の位置を適正部位に合わせるなどのためにカテーテルの留置位置を再調整したり、清潔保持に疑いがもたれた場合などに器具を除去する方が望ましいと判断された場合などには、器具を容易に除去し得る機能や、消毒液などを灌流したり不活性ガスを封入したりして器具の無菌性をさらに高める機能も、備えていることが理想的である。」
「【0006】
ここに提示する発明は、一般的に言って以前の技法に比べて、体内留置カテーテルに、より根源的で、カテーテル全長にさえも応用することができる、感染に対しての防御機構を寄与するものである。この発明は留置カテーテルを、その種類に関わらず、CRIの主たる原因であるMRSAなどの薬剤耐性菌を含む病原体によるカテーテル挿入部への播種から防御し、かつ、その方法実施後に必要と判断される場合には現場の医療従事者によって容易に除去できる特質を有し、さらに、カテーテル挿入部位およびカテーテル自体に、灌流もしくは不活性ガスを封入することによっても病原体に対する防御機能を付加補強し得る機構を有することを特徴とする。」
「【0014】
以降、図案を番号で呼称する。図1(a)(b)、図2(a)(b)(c)に示される通り、この発明の具現例である、改良されたカテーテルの装着器具は番号10で示される。どちらの場合も柔軟で透明なプラスチックのような材質で構築され、細長く円筒状で、基端部のフランジ状の基部とカテーテルを内包しかつ器具の内腔の気密を達成し得る構造を有する封入体から構成される。」
「【0017】
図3(a)(b)において見られるように、上記の、カテーテルをねじ状に締め付けて気密を保つタイプの具現例を用いれば、食品の真空パックのように、空気、酸素を閉鎖腔から抜き出す、消毒液で灌流する、二酸化炭素(ガス栓塞を起こし難いと考えられるので、一般的に窒素やヘリウムよりも望ましいとされる。)などの生物学的に不活性なガスを封入する、などのより積極的な抗菌のための手段を提供することが可能となる。そのためには、三方活栓や、液体灌流のためのチューブ状入口部と出口部3などの、細長い円筒状構造18の気密を保ちつつ、その導管部の内腔19と、穴または開口部をもって、交通する機構が、ガスを封入したり、気体を抜き出したりする既存の技術を応用するために、必要となる。上記の具現例の、内腔19の気密性を保つ、という特性を利用すれば、密封性ガス封入器や、気体を抜き出すための付属装置、あるいは灌流を実現するための付属装置は、導管部の内腔19で、病原微生物が繁殖する可能性を減少させるのに寄与する。」
「【0024】
この発明技術は、実質的に、動脈留置カテーテル、単腔型留置カテーテル、あるいは中心静脈カテーテル(二腔型、三腔型のものを含めて)などの、全ての形式の留置式カテーテルに応用できる。」
(イ)引用文献2に記載された技術的事項
前記(ア)の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
「中心静脈カテーテル等の留置式カテーテルに応用できる、カテーテルの装着器具において、カテーテル感染症による病原体に対する防御機能を付加補強するために、カテーテル挿入部位及びカテーテル自体に不活性なガスを封入すること。」
(ウ)留置カテーテルに関する技術常識
前記(ア)の記載事項のうち、特に、段落【0002】、【0004】及び【0024】によれば、留置カテーテルに関する次の技術常識を認定できる。
「留置カテーテルに起因する感染症(カテーテル関連感染症)は、主として、カテーテル挿入部における表皮表在性の病原微生物が、カテーテルの外側表面又は内腔を伝播して循環血液中に到達して、最終的にその病原微生物が全身に散布されることを機序とするものであり、これを予防する手段としては、清潔手技を徹底すること、カテーテル挿入部に抗生物質入りの軟膏を塗布すること、及び、滅菌剤を浸透させたスポンジでカテーテル挿入部を被覆することのほか、カテーテルの挿入に必要な器具を滅菌する方法があること。」(以下「本件技術常識」という。)
なお、本件技術常識については、引用文献2のほかに、特開2005-334216号公報(段落【0002】及び【0004】参照)、及び、特表2013-509256号公報(段落【0003】~【0005】)からも裏付けられる点を付記する。
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の各事項は、それぞれ、次の本件補正発明の事項に相当する。
<引用発明> <本件補正発明>
カテーテル1の穿刺区域又は第一室8 カテーテル挿入部位
患者の皮膚又は患者の身体 対象又は対象の皮膚
カテーテル1を患者の身体に固定する装置 カテーテルハウジングデバイス
成形による柔軟性材料製シートの台座7 膜
ケース5と台座7 ハブコンポーネント
孔部 開口部
蓋6 カバー
内面 内側表面
外面 外側表面
イ 引用発明の「カテーテル1を患者の身体に固定する装置」は、「カテーテル1の穿刺区域の上方に位置し、静脈又は動脈2に設置してあるカテーテル1の外方部分1aが横断している第一室8」を含む「ケース5」を含むから、本件補正発明の「カテーテル挿入部位のところで対象上に位置決めされるよう構成されたカテーテルハウジングデバイス」に相当する。
ウ 引用発明の「カテーテル1を患者の身体に固定する装置」が「蓋6で閉鎖できるケース5と、」「ケース5と合体している台座7とを含む」構成は、本件補正発明の「前記カテーテルハウジングデバイスは、」「ハブコンポーネントと、」「カバーと、」を備える構成に相当する。
エ 引用発明の「ケース5を囲繞し、ケース5を患者の皮膚に固定することを可能に」し、「その支承用下面が、第一室8に通じている箇所」「を除いて」「成形による柔軟性材料製シートからな」る「ケース5と合体している台座7」は、本件補正発明の「前記カテーテル挿入部位の周りで対象の皮膚に固定されるよう構成された膜を備えるハブコンポーネント」に相当する。
オ 引用発明の「成形による柔軟性材料製シートからな」る「台座7」が「その支承用下面が、第一室8に通じている箇所である、カテーテル1の外方部分1aを通すことを可能にする孔部を除いて、平坦かつ充実して」いる構成は、本件補正発明の「前記膜は、前記膜が前記カテーテル挿入部位の周りで前記皮膚に固定される際に前記カテーテル挿入部位にわたって位置決めされるよう構成された開口部を含む」構成に相当する。
カ 引用発明の「蓋6の閉鎖状態では、第一室8を部分的に封鎖するように構成されており、かつ、内面と外面を備える」「蓋6」は、本件補正発明の「前記カテーテルハウジングデバイスが使用される際に少なくとも部分的に前記カテーテル挿入部位を封止するよう構成されているカバーであって、内側表面と外側表面とを備える、カバー」に相当する。
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「カテーテル挿入部位のところで対象上に位置決めされるよう構成されたカテーテルハウジングデバイスであって、
前記カテーテルハウジングデバイスは、
前記カテーテル挿入部位の周りで対象の皮膚に固定されるよう構成された膜を備えるハブコンポーネントであって、前記膜は、前記膜が前記カテーテル挿入部位の周りで前記皮膚に固定される際に前記カテーテル挿入部位にわたって位置決めされるよう構成された開口部を含む、ハブコンポーネントと、
前記カテーテルハウジングデバイスが使用される際に少なくとも部分的に前記カテーテル挿入部位を封止するよう構成されているカバーであって、内側表面と外側表面とを備える、カバーと、
を備えるカテーテルハウジングデバイス。」
(相違点)
本件補正発明は、「前記カバーの前記外側表面の一部から外向きに延在する少なくとも1つのポートであって、少なくとも1つの前記ポートは、ガスが前記カバーの内部に流れ込むのを許すように構成されており、かつ前記カバーと一体的に構成されている、少なくとも1つのポート」を備えるのに対して、引用発明は、ガスを用いていない点。
(4)相違点についての検討
ア 引用発明は、「中心静脈カテーテル又は中心動脈カテーテルの如きカテーテル1を患者の身体に固定する装置」であるところ、引用文献2記載事項は、「中心静脈カテーテル等の留置式カテーテルに応用できる、カテーテルの装着器具」に係るものであり、両者は、中心静脈カテーテルを患者のカテーテル挿入部位に固定ないし装着する装置である点で、その技術分野を共通にする。
また、引用文献1には、中心静脈カテーテルを皮膚に固定させる手段は、穿刺点及びカテーテルの進入箇所が汚染物質の溜まり場になり、敗血症を引き起こすこともあり得るために、日常的に包帯を巻く必要がある旨記載(前記(2)ア(ア)の段落【0008】及び【0009】)されており、いわゆるカテーテル感染症を予防する必要性について示唆されている。
そして、引用文献1の前記示唆、及び本件技術常識に照らせば、中心静脈カテーテルを患者の身体に固定する装置である引用発明について、カテーテルの穿刺区域において、カテーテル感染症の予防を行うことには動機があって、そのために引用文献2記載事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
イ 次に、引用発明に引用文献2記載事項を適用した構成について、検討する。
引用文献2記載事項の「カテーテル挿入部位及びカテーテル自体に不活性なガスを封入すること」を引用発明に適用するに当たっては、引用発明の蓋6が「蓋6の閉鎖状態では、第一室8を部分的に封鎖するように構成されて」いることに照らすと、カテーテル穿刺区域に対応する、蓋6の第一室8を封鎖する部分(カテーテル1の外方部分1aに面する部分)に、「不活性なガスを封入する」手段を設けることは、通常のことである。
また、各種流体を取り扱う医療用装置において、内部に流体を導入するポート(流体導入ポート)を装置から外向きに延在するように設けることは、例を挙げるまでもなく、周知慣用手段にすぎない(このような外向きに延在する流体導入ポートは、引用文献1及び2に開示された患者へのカテーテル固定装置に限らず、薬剤を保存する医療用容器など、様々な医療用装置で用いられている。)。そして、引用発明の蓋6がプラスチック製の成形品であること(前記(2)ア(ア)の段落【0049】)に照らすと、蓋6に外向きに延在する流体導入ポートを形成するに当たって、蓋6と一体的に構成することは、当業者が当然に採り得る構成にすぎない。
したがって、引用発明に引用文献2記載事項を適用して、引用発明の蓋6(第一室8を封鎖する部分)に、不活性なガスを封入する、外向きに延在する流体導入ポートを設けて、蓋6と一体的に構成し、もって、相違点の本件補正発明に係る構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。
ウ また、本件補正発明の効果は、引用発明及び引用文献2記載事項から当業者が予測できる範囲のものにすぎず、格別顕著なものとはいえない。
(5)小括
以上のとおり、本件補正発明は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 補正却下の決定におけるむすび
本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~20に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、請求項13に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の[理由]1(2)のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次のとおりである。
(進歩性)本願の請求項1~20に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2006-520628号公報
引用文献2:特開2012-152552号公報
3 引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載事項、引用発明並びに引用文献2記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「カバー」について、「内側表面と外側表面とを備える」との限定事項、及び、「少なくとも1つのポート」について、「前記外側表面」の一部から延在すること及び「前記カバーと一体的に構成されている」との限定事項を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2に示したとおり、引用発明、引用文献2記載事項及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同じ理由で、引用発明、引用文献2記載事項及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
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2023-019798