特許拒絶査定不服審判
2023-019613
透過材料照射
- 審判番号
- 2023-019613
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-244177
- 請求日
- 2023年11月20日
- 審決日
- 2024年12月13日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ハーマン ベッカー オートモーティブ システムズ ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】山本 秀策
- 【請求人代理人】森下 夏樹
- 審判長/審判官
- 審判長 中塚 直樹
- 審判官 濱野 隆
- 審判官 喜々津 徳胤
- 分類
- P18 .575-Z (G09F) / P18 .121-Z (G09F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-244177号「透過材料照射」拒絶査定不服審判事件〔令和元年7月25日出願公開、特開2019-124930号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年12月27日の特許出願であって(パリ条約による優先権主張 2018年1月4日 欧州特許庁)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。以下、2018年1月4日を「優先日」という。
令和4年 8月17日付け:拒絶理由通知書
同年 9月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 1月23日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年 4月25日 :意見書の提出
同年 7月13日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月18日 :原査定の謄本の送達)
同年11月20日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 1月26日付け:前置報告書
同年 4月22日 :上申書の提出
第2 令和5年11月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年11月20日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和5年11月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、後記の(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
車両の内部に関するディスプレイ及び照明システムであって、
光源と、
前記車両の前記内部の表面を形成するための可撓性材料と、を備え、
前記システムが第1の状態であるとき前記光源から伝達される光が前記可撓性材料を通るように可視であり、前記システムが第2の状態であるとき光は前記光源から前記可撓性材料を通るように可視ではなく、
前記光源からの前記光は、前記車両のオーディオシステムによって再生される音楽のグラフィカル可視化を含む、システム。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
車両の内部に関するディスプレイ及び照明システムであって、
光源と、
前記車両の前記内部の表面を形成するための可撓性材料と、を備え、
前記システムが第1の状態であるとき前記光源から伝達される光が前記可撓性材料を通るように可視であり、前記システムが第2の状態であるとき前記光源から伝達される光が前記可撓性材料を通るように可視であり、前記システムが第3の状態であるとき光は前記光源から前記可撓性材料を通るように可視ではなく、
前記システムが前記第1の状態であるときに、前記光源からの前記光は、前記車両のオーディオシステムによって再生される音楽のグラフィカル可視化を含み、
前記システムが前記第2の状態であるときに、前記光源の輝度は、前記光源からの光が前記車両の前記内部に周囲照明を提供するように、設定される、システム。」
2 本件補正の目的
(1) 本件補正のうち請求項1の補正は、「システム」のとり得る状態について、本件補正前は「第1の状態」又は「第2の状態」のいずれかであったものを、本件補正後は「第1の状態」、「第2の状態」又は「第3の状態」のいずれかであることに細分化し、また、本件補正前の「前記光源からの前記光は、前記車両のオーディオシステムによって再生される音楽のグラフィカル可視化を含む」ことを、前記細分化後の「第1の状態」であるときに限定することを含むものであり、要するに、「システム」が各状態にあるとき、それぞれ次のア~ウに示す特徴を備えることを限定するものである。
ア 「第1の状態であるとき」、「前記光源から伝達される光が前記可撓性材料を通るように可視であり」、「前記光源からの前記光は、前記車両のオーディオシステムによって再生される音楽のグラフィカル可視化を含[む]」こと
イ 「第2の状態であるとき」、「前記光源から伝達される光が前記可撓性材料を通るように可視であり」、「前記光源の輝度は、前記光源からの光が前記車両の前記内部に周囲照明を提供するように、設定される」こと
ウ 「第3の状態であるとき」、「光は前記光源から前記可撓性材料を通るように可視ではな[い]」こと
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) よって、本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
3 独立特許要件についての当審の判断
本件補正のうち請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討を行う。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Gまでに分説する。
<本件補正発明>
(構成X) 車両の内部に関するディスプレイ及び照明システムであって、
(構成A) 光源と、
(構成B) 前記車両の前記内部の表面を形成するための可撓性材料と、を備え、
(構成C) 前記システムが第1の状態であるとき前記光源から伝達される光が前記可撓性材料を通るように可視であり、
(構成D) 前記システムが第2の状態であるとき前記光源から伝達される光が前記可撓性材料を通るように可視であり、
(構成E) 前記システムが第3の状態であるとき光は前記光源から前記可撓性材料を通るように可視ではなく、
(構成F) 前記システムが前記第1の状態であるときに、前記光源からの前記光は、前記車両のオーディオシステムによって再生される音楽のグラフィカル可視化を含み、
(構成G) 前記システムが前記第2の状態であるときに、前記光源の輝度は、前記光源からの光が前記車両の前記内部に周囲照明を提供するように、設定される、
(構成X) システム。
(2) 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用され、優先日前に発行された特開2009-96380号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。下線は合議体が付した。以下同様である。
a 段落【0009】~【0016】、【図1】~【図3】
「【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は本発明に係る車両用表示装置の一実施形態の作動状態を模式的に示す外観図、図2は図1の2-2断面図、図3は図1の3-3断面図である。この車両用表示装置は、構造材としてのインストルメントパネル10(以下、単にインパネ10という)の内部にて液晶表示器21および複数の発光素子22を備え、インパネ10の外部にて透過性ウレタン合皮31およびスモークアクリル32を備えている。
【0010】
インパネ10は、その表面がフラット面あるいは緩やかな湾曲面に形成されている。インパネ10の運転席に対向した部位の上部位置には、開口部11が形成され、開口部11の下部位置には、開口部11よりも小さな複数の開口部12が形成されている。なお、図3では、開口部12が3つの場合を例示してある。
【0011】
液晶表示器21(光源)は、開口部11の所定の組み付け部に組み付けられている。液晶表示器21は、例えば透過型の液晶パネルを用いた液晶ディスプレイ21aと、LEDや冷陰極管などを用いたバックライト21bを備えており、バックライト21bから照射された光が液晶ディスプレイ21aを透過し、開口部11を通してインパネ10の外側へ照射される。
【0012】
この液晶表示器21は、イグニッションスイッチのオンにより図示を省略する制御部からの制御信号に応じて、スピードメータ、タコメータ、燃料残量表示メータ、水温表示メータ、オド/トリップメータ、シフトポジションなどエンジン作動中の車両状態を表す画像を表示可能とされている。なお、図1では、車両状態を表す画像のうち、スピードメータ(数字とバーグラフで表示したもの)を例示してある。
【0013】
複数の発光素子22(光源)は、例えばLEDで構成されており、通電のための回路が形成された光源基板23(光源)に実装されている。光源基板23は、インパネ10の裏面側の所定の組み付け部に組み付けられている。光源基板23がインパネ10に組み付けられた状態では、各発光素子22が対応する開口部12内に収容され、発光素子22の光が開口部12を通してインパネ10の外側へ照射される。なお、各開口部12には、発光素子22の輝度ムラを抑制して発光素子22による発光を均一にするための光拡散板24が組み付けられている。
【0014】
透過性ウレタン合皮31は、天然皮の外観を呈するように透過性のスモークウレタン樹脂を注型成形したものであり、例えば成形工程時にスモークアクリル32と密着に張り合わされる。スモークアクリル32(板材)の裏面には、液晶パネル21aに対向する部位に透過部32aが形成され、発光素子22に対向する部位に透過部32bが形成され、透過部32a,32b以外の部位に遮光部32cが形成されるようにマスク印刷が施されている。
【0015】
透過部32bは、エンジン作動中の各種警告インジケータ(例えば、リヤライト警告、エンジンチェック警告、シートベルト警告、ハイビーム警告、ドア警告、ブレーキ警告、排気音警告、オイル警告、チャージ警告、ターン方向)を表す画像が表示されるように透明の絵柄模様に形成されている。なお、図1では、各種警告を表す画像のうち、ブレーキ警告、ドア警告およびシートベルト警告を例示してある。
【0016】
遮光部32cは、透過部32a,32b以外の部分から光が外側へ漏れ出すことを抑制する。これにより、スモークアクリル32の透過部32a,32bに対向する透過性ウレタン合皮31の部位が、各種画像を表示するための表示領域Dとして機能するようになっている。また、遮光部32cは、透過性ウレタン合皮31およびスモークアクリル32が有するスモーク機能との重畳作用によって、透過性ウレタン合皮31側から見たインパネ10側への視認性を妨げる機能(特に、液晶表示器21の外枠を見えなくする)も果たす。」
「【図1】
[図:0001422004000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001422004000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001422004000003.jpg]
」
b 段落【0017】~【0018】、【図4】
「【0017】
次に、上記のように構成した本実施形態の作動について説明する。イグニッションスイッチのオフ時、液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射されない状態では、透過性ウレタン合皮31、スモークアクリル32自体およびスモークアクリル32の遮光部32cによって透過性ウレタン合皮31側からインパネ10側への視認性が妨げられている。このため、図4に示すように、乗員はステアリングホイールS越しに、透過性ウレタン合皮31の皮模様のみを視認することができる。
【0018】
一方、イグニッションスイッチのオンにより、液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射された状態では、図1に示すように、乗員はステアリングホイールS越しに、透過性ウレタン合皮31の表示領域Dに表示される車両状態および乗員に対する各種警告を表すメータ画像を視認できるようになる。」
「【図4】
[図:0001422004000004.jpg]
」
c 段落【0019】~【0023】
「【0019】
したがって、この実施形態によれば、インパネ10内に同インパネ10とは明らかに別素材の物体が組み込まれているとは認識されなくなるので、あたかも一素材のみで構成されているかのような一体感のあるインパネ表面を構成することが可能である。すなわち、インパネ10の外観上、メータ画像の表示領域Dと非表示領域間の見切り線が存在しないように構成することができるので、インパネ10を見たときに一体感を感じさせることができる。また、インパネ10の内部に、バックライト21bを有する液晶表示器21および光源基板23を有する発光素子22を組み込むようにしたので、従来技術の表示装置とは異なり、液晶表示器等を乗員に直接的に視認させることを前提としてインパネの外形を設計する必要がなくなる。その結果、例えば液晶表示器等に表示されるメータ画像のフロントウィンドウへの映り込みを防止する等のためのフードを小さく形成することが可能になる等、インパネ10のデザイン的な自由度を向上させることができる。
【0020】
また、上記実施形態では、液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射されない状態にて、透過性ウレタン合皮31、スモークアクリル32自体およびスモークアクリル32の遮光部32cによって透過性ウレタン合皮31側からインパネ10側への視認性が妨げられる。これにより、透過性ウレタン合皮31しか見えない状態から、透過性ウレタン合皮31の表面(表示領域D)にメータ画像が浮き出すような演出を効果的に高めることができる。また、透過性ウレタン合皮31とスモークアクリル32を貼り合わせることによって、透過性ウレタン合皮31を補強する効果も得ることができる。
【0021】
なお、上記実施形態では、透過性ウレタン合皮31、スモークアクリル32自体およびスモークアクリル32の遮光部32cを重ね合わせることによって、液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射されない状態でのブラックアウト効果をより一層高めることができた。しかし、これに限らず、例えば透過性ウレタン合皮31およびスモークアクリル32のうちの少なくとも一方のスモーク濃度を高めるようにすれば、透過性ウレタン合皮31およびスモークアクリル32の両部材にスモーク機能を持たせる必要はなく、あるいはスモークアクリル32の遮光部32cを省略することもできる。
【0022】
また、上記実施形態では、構造材としてのインパネ10の内部に、光源としての液晶表示器21および発光素子22を組み込むように構成したが、これに加えてまたは代えて、例えばドアなどに上記した各種警告インジケータを表示する発光素子を組み込んで、透過性ウレタン合皮31で覆うように構成してもよい。また、後部座席の乗員から視認できるように、前席シートバックに上記した各種警告インジケータや時刻を表示する発光素子を組み込んで、透過性ウレタン合皮で覆うように構成してもよい。
【0023】
また、光源としてタッチ操作パネルを有するエアコンコントロールパネルやナビゲーション装置を採用し、タッチ操作パネルにおける操作スイッチの位置が点灯表示されるように設定すれば、液晶表示器21の場合と同様、これらをインパネ10の内部に組み込んで、透過性ウレタン合皮31で覆うように構成することも可能である。」
(イ) 引用発明の認定
前記(ア)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「構造材としてのインストルメントパネル10(以下、単にインパネ10という)の内部にて液晶表示器21および複数の発光素子22を備え、インパネ10の外部にて透過性ウレタン合皮31およびスモークアクリル32を備えている車両用表示装置であって、(【0009】)
インパネ10は、その表面がフラット面あるいは緩やかな湾曲面に形成されており、インパネ10の運転席に対向した部位の上部位置には、開口部11が形成され、開口部11の下部位置には、開口部11よりも小さな複数の開口部12が形成されており、(【0010】)
液晶表示器21は、開口部11の所定の組み付け部に組み付けられており、例えば透過型の液晶パネルを用いた液晶ディスプレイ21aと、LEDや冷陰極管などを用いたバックライト21bを備えており、バックライト21bから照射された光が液晶ディスプレイ21aを透過し、開口部11を通してインパネ10の外側へ照射され、(【0011】)
この液晶表示器21は、イグニッションスイッチのオンにより制御部からの制御信号に応じて、スピードメータ、タコメータ、燃料残量表示メータ、水温表示メータ、オド/トリップメータ、シフトポジションなどエンジン作動中の車両状態を表す画像を表示可能とされており、(【0012】)
複数の発光素子22は、例えばLEDで構成されており、通電のための回路が形成された光源基板23に実装されており、光源基板23は、インパネ10の裏面側の所定の組み付け部に組み付けられており、光源基板23がインパネ10に組み付けられた状態では、各発光素子22が対応する開口部12内に収容され、発光素子22の光が開口部12を通してインパネ10の外側へ照射され、(【0013】)
透過性ウレタン合皮31は、天然皮の外観を呈するように透過性のスモークウレタン樹脂を注型成形したものであり、例えば成形工程時にスモークアクリル32と密着に張り合わされており、スモークアクリル32(板材)の裏面には、液晶パネル21aに対向する部位に透過部32aが形成され、発光素子22に対向する部位に透過部32bが形成され、透過部32a,32b以外の部位に遮光部32cが形成されるようにマスク印刷が施されており、(【0014】)
透過部32bは、エンジン作動中の各種警告インジケータ(例えば、リヤライト警告、エンジンチェック警告、シートベルト警告、ハイビーム警告、ドア警告、ブレーキ警告、排気音警告、オイル警告、チャージ警告、ターン方向)を表す画像が表示されるように透明の絵柄模様に形成されており、(【0015】)
遮光部32cは、透過部32a,32b以外の部分から光が外側へ漏れ出すことを抑制するものであり、これにより、スモークアクリル32の透過部32a,32bに対向する透過性ウレタン合皮31の部位が、各種画像を表示するための表示領域Dとして機能するようになっており、遮光部32cは、透過性ウレタン合皮31およびスモークアクリル32が有するスモーク機能との重畳作用によって、透過性ウレタン合皮31側から見たインパネ10側への視認性を妨げる機能(特に、液晶表示器21の外枠を見えなくする)も果たすものであり、(【0016】)
イグニッションスイッチのオフ時、液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射されない状態では、透過性ウレタン合皮31、スモークアクリル32自体およびスモークアクリル32の遮光部32cによって透過性ウレタン合皮31側からインパネ10側への視認性が妨げられているため、乗員はステアリングホイールS越しに、透過性ウレタン合皮31の皮模様のみを視認することができ、(【0017】)
イグニッションスイッチのオンにより、液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射された状態では、乗員はステアリングホイールS越しに、透過性ウレタン合皮31の表示領域Dに表示される車両状態および乗員に対する各種警告を表すメータ画像を視認できるようになる、(【0018】)
車両用表示装置。」
イ 引用文献9に記載された事項と引用文献9技術事項の認定
(ア) 引用文献9に記載された事項
当審において新たに引用する文献であって、優先日前に発行された特開2016-1870号公報(以下「引用文献9」という。)には、次の事項が記載されている。
「【0024】
(実施の形態1)
<画像表示システムの全体構成>
図1は、本開示の一態様に係る画像表示システムの利用形態を示す図である。本図は、自動車の車室の右前方部を示している。車室の右前方部には、フロントピラー1、フロントピラー1に支持される天井部2、フロントピラー1の基部に設けられたダッシュボード3、およびドア5といった車体構造物が配されている。ドア5は、車体の側面に設けられた乗降口に、開閉自在に取り付けられている。助手席側においては、これらの車体構造物が本図と左右対称に配されている。」
「【図1】
[図:0001422004000005.jpg]
」
「【0025】
フロントピラー1、天井部2、およびダッシュボード3に囲繞される空間には、フロントガラス4が取り付けられている。ドア5には、サイドガラス6が設けられている。車室の右前方部は、これら車体構造物およびガラスによって、車室と車両の外部とが隔てられている。
車室内におけるフロントピラー1はエアーバックを内包するため膨らみが設けられ、その結果フロントピラー1の表面は、湾曲した曲面形状をなす(以下、フロントピラー1の車室側の表面を、単に「フロントピラー1の表面」と表記する)。フロントピラー1の表面には、ディスプレイ10が設けられている。ディスプレイ10は、画像の表示および照明に兼用される有機EL表示パネルであり、フロントピラー1の表面の形状に沿って湾曲された形状で設置されている。
【0026】
フロントピラー1の内部には、カメラ20が設けられている。カメラ20のレンズは、車両から右斜め前方を撮影する向きで、フロントピラー1の車外側に設けられている。そのため、カメラ20において撮影される撮影画像は、運転席に座った姿勢(以下、「運転姿勢」と表記する)で運転者がフロントピラー1方向へ向けた視線の延長線上の光景に近いものになる。
【0027】
このような車室において運転者は、フロントガラス4、サイドガラス6を通して車両の外部の状況を視認することができる。しかし、フロントピラー1、天井部2、ダッシュボード3、およびドア5といった車体構造物により、車両の外部に死角が形成される。
そこで、本態様に係る画像表示システムは、カメラ20で撮像された撮影画像に基づいて、死角の領域の状況を示す画像を、ディスプレイ10に表示する(以下、撮影画像に基づいて生成された死角の領域の状況を示す画像を、「死角状況画像」と表記する)。ディスプレイ10における死角状況画像の表示により、運転者は、フロントピラー1によって形成された死角の領域の状況の視認することができる(以下、フロントピラー1によって形成された死角の領域を単に「死角領域」と表記する)。
【0028】
さらに、本態様に係る画像表示システムは、ドア5が開かれるとディスプレイ10における死角状況画像の表示を中止し、照明モードでディスプレイ10を駆動させる。照明モードでは、ドア5の開放時にカメラ20によって撮影されている撮影画像に基づかずに、固定のパターンの画像(以下、「照明用画像」と表記する)をディスプレイ10に表示させる。」
「【0038】
表示・照明制御部32は、本態様に係る画像表示システムにおける制御部であって、ドア5の開閉状態に応じて、ディスプレイ10を画像表示モードと照明モードとに切り替えて駆動させる切替制御を行う。
ドア5の閉状態である場合、表示・照明制御部32は、ディスプレイ10を画像表示モードで駆動させる。画像表示モードでディスプレイ10を駆動させる場合、表示・照明制御部32は、画像生成部31で生成された死角状況画像の画像データを逐次取得する。表示・照明制御部32は、取得した死角状況画像の画像データに基づいて、データ信号線およびスキャン信号線を介して画素毎にR、G、Bの各色の発光素子の輝度を指示する信号を生成する。表示・照明制御部32は、生成した信号をディスプレイ10のデータ信号線102およびスキャン信号線110へ出力する。以下、ディスプレイ10に死角状況画像を表示させる信号を「画像信号」と表現する。
【0039】
ドア5の開状態である場合、表示・照明制御部32は、ディスプレイ10を照明モードで駆動させる。照明モードでディスプレイ10を駆動させる場合、表示・照明制御部32は、照明パターン記憶部33に記憶された照明用画像の画像データを逐次取得する。表示・照明制御部32は、取得した照明用画像の画像データに基づいて、データ信号線およびスキャン信号線を介して画素毎にR、G、Bの各色の発光素子の輝度を指示する信号を生成する。表示・照明制御部32は、生成した信号をディスプレイ10のデータ信号線102およびスキャン信号線110へ出力する。以下、ディスプレイ10に照明用画像を表示させる信号を「照明信号」と表現する。
【0040】
照明パターン記憶部33は、照明用画像を保持する。本実施の形態において照明用画像は、ディスプレイ10の表示面を短手方向に2分した場合に、ドア5よりの領域で全ての画素に最大輝度の白を表示させ、フロントガラス4よりの領域で全ての画素に輝度0の黒を表示させる画像である。そのため、ディスプレイ10で照明用画像を表示した場合、ドア5よりの領域の発光素子は最大輝度で発光する。これによりドア5よりの領域からの出射光は、照明として十分な光量となる。
【0041】
ここでディスプレイ10は、フロントピラー1の表面の形状に沿って設置されているが、自動車ではフロントピラー1の車室側の表面は、ドア5よりの位置をおおよそ乗降口方向に向けて形成されることが多い。その場合、ディスプレイ10の表示面のうちドア5よりの領域から出射される光はおおよそ乗降口方向へ向かう。
なお、照明パターン記憶部33おいて、照明用画像はディスプレイ10の画素毎にR、G、Bの各サブ画素の輝度値を示す画像データとして保持することができる。あるいは、発光させる領域の座標と、発光させる領域における輝度とをオペランドとした描画命令として、照明用画像を保持してもよい。」
「【0066】
なお、ディスプレイ10および延伸ディスプレイ11の表示面を一体に形成した非矩形形状のディスプレイを用いてもよい。
[ディスプレイ10の位置1]
実施の形態1乃至3では、ディスプレイ10をフロントピラー1の表面に設けたが、他の位置にディスプレイを設置してもよい。例えば、車室内側の車体構造物のうち、センターピラー、ダッシュボード、ドア等の室内部位に、ディスプレイを設けてもよい。」
(イ) 引用文献9技術事項の認定
前記(ア)に摘記した事項から、引用文献9には、次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献9技術事項」という)。
<引用文献9技術事項>
「画像表示システムであって、(【0024】)
フロントピラー1の表面にディスプレイ10が設けられており、
ディスプレイ10は、画像の表示および照明に兼用される有機EL表示パネルであり、フロントピラー1の表面の形状に沿って湾曲された形状で設置されており、(【0025】)
フロントピラー1の内部には、カメラ20が設けられており、(【0026】)
カメラ20で撮像された撮影画像に基づいて、死角の領域の状況を示す画像を、ディスプレイ10に表示し(以下、撮影画像に基づいて生成された死角の領域の状況を示す画像を、「死角状況画像」と表記する)、ディスプレイ10における死角状況画像の表示により、運転者は、フロントピラー1によって形成された死角の領域の状況の視認することができ、(【0027】)
ドア5が開かれるとディスプレイ10における死角状況画像の表示を中止し、照明モードでディスプレイ10を駆動させ、照明モードでは、ドア5の開放時にカメラ20によって撮影されている撮影画像に基づかずに、固定のパターンの画像(以下、「照明用画像」と表記する)をディスプレイ10に表示させ、(【0028】)
ドア5の閉状態である場合、表示・照明制御部32は、ディスプレイ10を画像表示モードで駆動させ、画像表示モードでディスプレイ10を駆動させる場合、表示・照明制御部32は、画像生成部31で生成された死角状況画像の画像データを逐次取得し、(【0038】)
ドア5の開状態である場合、表示・照明制御部32は、ディスプレイ10を照明モードで駆動させ、照明モードでディスプレイ10を駆動させる場合、表示・照明制御部32は、照明パターン記憶部33に記憶された照明用画像の画像データを逐次取得し、(【0039】)
照明パターン記憶部33は、照明用画像を保持し、ディスプレイ10で照明用画像を表示した場合、ドア5よりの領域の発光素子は最大輝度で発光することにより、ドア5よりの領域からの出射光は、照明として十分な光量となり、(【0040】)
ディスプレイ10の表示面のうちドア5よりの領域から出射される光はおおよそ乗降口方向へ向かい、(【0041】)
ディスプレイ10は、車室内側の車体構造物のうち、センターピラー、ダッシュボード、ドア等の室内部位に設けてもよい、(【0066】)
画像表示システム。」
ウ 引用文献7に記載された事項と周知技術1の認定
(ア) 引用文献7に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用され、優先日前に発行された特開2005-112255号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の事項が記載されている。
「【実施例1】
【0012】
(1)実施例の構成
図1は、本発明の実施例に係る車載装置であるカーオーディオ装置を示すブロック図である。このカーオーディオ装置1において、ソース部2は、中央処理ユニット3の制御により動作を切り換え、各種音楽ソースからオーディオ信号を出力する。この実施例では、この音楽ソースに、放送波を受信してオーディオ信号を出力するチューナ、記録媒体に記録されたオーディオ信号を再生して出力する記録再生装置が適用され、これによりFM放送等により提供されるオーディオ信号、コンパクトディスク等の光ディスクにより提供されるオーディオ信号を出力するようになされている。」
「【図1】
[図:0001422004000006.jpg]
」
「【0014】
さらに信号処理回路4は、このように音量、周波数特性を補正してなるオーディオ信号について、信号レベル、周波数スペクトラムを検出し、検出結果を中央処理ユニット3に出力し、これによりこのカーオーディオ装置1では、ユーザーによる設定に従って、ユーザーに提供しているオーディオ信号に係る音量又は周波数スペクトラムをグラフィック表示し、音楽に係るエンターテイメント性を確保するようになされている。これにより信号処理回路4は、音楽に係るエンターテイメント性を確保する本来の表示機能に係る主の情報を取得する主の情報取得手段を構成するようになされている。」
「【0019】
図2は、この周波数スペクトラムのグラフィック表示を示す正面図である。この実施例においては、これら4種類のグラフィック表示の何れかを選択できるようになされている。」
「【図2】
[図:0001422004000007.jpg]
」
「【0020】
ここで図2(A)に示すグラフィック表示は、それぞれ矢印Aにより示すように、複数の3次元物体形状であるオブジェクトOを回転させて周波数スペクトラムを表示するものであり、左側が周波数の低い側に割り当てられて、各オブジェクトOにそれぞれ周波数帯域が割り当てられ、各オブジェクトOの回転量がそれぞれ対応する周波数帯域の信号レベルに対応するように設定される。これにより重低音が豊富なオーディオ信号では、左側のオブジェクトOが高速度で回転し、高音が豊富なオーディオ信号では、右側のオブジェクトOが高速度で回転するようになされている。」
「【0022】
これに対して図2(B)に示すグラフィック表示は、オーディオ信号の信号波形を周波数スペクトラムに重畳させて表示するものである。すなわちこの表示における周波数スペクトラムにおいては、棒グラフ状に各周波数帯域の信号レベルが表示される。この図2(B)に示すグラフィック表示は、この棒グラフ状の0レベルが信号波形の0レベルと一致するようにしてオーディオ信号の信号波形が重ねて表示される。
【0023】
これに対して図2(C)に示すグラフィック表示は、いわゆるドットパターンの表示であり、周波数スペクトラムに係る各周波数帯域の信号レベル検出結果をドットにより、次の信号レベル検出結果を表示した後においても、一定時間継続して表示するものである。
【0024】
これに対して図2(D)に示すグラフィック表示は、折れ線グラフによる表示により各周波数帯域の信号レベルを示すものである。」
「【0026】
これに対してユーザーが音量のグラフィック表示を指示した場合、図3に示すように、左右チャンネルの音量に応じた大きさによりそれぞれ左右三角形形状の表示を形成し、これにより音量をグラフィック表示する。これらによりこのカーオーディオ装置1では、このようなグラフィック表示によっても音楽を楽しむことができるようになされ、このグラフィック表示により車内におけるエンターテイメント性を向上するようになされている。」
「【図3】
[図:0001422004000008.jpg]
」
「【0032】
(2)実施例の動作
以上の構成において、このカーオーディオ装置1では(図1)、ソース部2から出力されるオーディオ信号が信号処理回路4により処理された後、増幅回路5に出力され、スピーカ6の駆動に供される。これによりこのカーオーディオ装置1では種々のソースによる音楽を楽しむことができるようになされている。
【0033】
カーオーディオ装置1では、このようにしてユーザーに音楽を提供して、この音楽に係るオーディオ信号の音量、周波数スペクトラムが信号処理回路4で検出され、この検出結果が中央処理ユニット3に通知される。カーオーディオ装置1では、ユーザーが音量の表示を指示している場合、この音量による検出結果が液晶表示パネル8により表示される(図3)。またユーザーが周波数スペクトラムの表示を指示している場合、ユーザーの所望する表示形態により周波数スペクトラムのグラフィック表示が液晶表示パネル8より提供される(図2)。これによりカーオーディオ装置1では、エンターテイメント性が図られ、視覚を通じても音楽を楽しむことができる。
【0034】
しかしてこのようにして音楽に係る情報表示手段としての液晶表示パネル8により音量、周波数スペクトラムを表示することにより、カーオーディオ装置1では、音楽に係る本来の表示機能により表示手段に音量、周波数スペクトラムが表示されることになる。」
(イ) 周知技術1の認定
前記(ア)に摘記した事項から、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であると認められる(以下「周知技術1」という)。
<周知技術1>
「ユーザーに提供しているオーディオ信号に係る音量又は周波数スペクトラムをグラフィック表示する表示手段を有するカーオーディオ装置。」
(3) 対比・判断
ア 対比
(ア) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
a 構成Xの観点
引用発明の「車両用表示装置」は、「インパネ10の運転席に対向した部位の上部位置」にある「開口部11を通して」光が照射され、「乗員」が「視認できる」ように構成されたものであるから、車両の内部に設置されたものであることは明らかといえる。
そして、引用発明の「液晶表示器21(光源)」は、「例えば透過型の液晶パネルを用いた液晶ディスプレイ21aと、LEDや冷陰極管などを用いたバックライト21bを備えて」いるから、車両の内部に設置されたディスプレイであるといえる。
そうすると、引用発明の「車両用表示装置」は、車両の内部に関して見れば、ディスプレイを含むシステムであるといえるから、本件補正発明の「車両の内部に関するディスプレイ及び照明システム」と、「車両の内部に関するディスプレイシステム」である点において共通する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「車両の内部に関するディスプレイシステム」の発明である点において共通する。
b 構成Aの観点
引用発明の「液晶表示器21」の「バックライト21b」は、本件補正発明の「光源」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「光源」を備える点において一致する。
c 構成Bの観点
引用発明の「車両用表示装置」は、「運転席に対向した部位」を含む「インパネ10の外部にて透過性ウレタン合皮31およびスモークアクリル32を備えている」ところ、「透過性ウレタン合皮31」は、「天然皮の外観を呈するように透過性のスモークウレタン樹脂を注型成形したもの」であるから、車両の内部の表面を形成するための部材であるといえる。
ここで、「透過性ウレタン合皮31」は、「成形工程時にスモークアクリル32と密着に張り合わされて」おり、「板材」の「スモークアクリル32」は、「透過性ウレタン合皮31」を支持する部材としての役割を果たしているものといえ、また技術常識を踏まえると「透過性ウレタン合皮31」単独では可撓性を有するものであると認められる。
そうすると、引用発明の「透過性ウレタン合皮31」は、本件補正発明の「前記車両の前記内部の表面を形成するための可撓性材料」に相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記車両の前記内部の表面を形成するための可撓性材料」を備える点において一致する。
d 構成Cの観点
引用発明においては、「イグニッションスイッチのオンにより、液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射された状態では、乗員はステアリングホイールS越しに、透過性ウレタン合皮31の表示領域Dに表示される車両状態および乗員に対する各種警告を表すメータ画像を視認できるようになる」ところ、引用発明の「液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射された状態」は、本件補正発明の「システム」の「第1の状態」に相当する。
また、引用発明の「液晶表示器21のバックライト21b」から「照射された」「光」は、本件補正発明の「前記光源から伝達される光」に相当する。
ここで、引用発明の「スモークアクリル32の透過部32a,32bに対向する透過性ウレタン合皮31の部位」は、「各種画像を表示するための表示領域Dとして機能するようになって」いるから、「透過性ウレタン合皮31の表示領域Dに表示される車両状態および乗員に対する各種警告を表すメータ画像を視認できる」ことは、「液晶表示器21のバックライト21b」から「照射された」「光」が「透過性ウレタン合皮31」を通り視認できることを意味する。
そうすると、引用発明の「液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射された状態」において、「透過性ウレタン合皮31の表示領域Dに表示される車両状態および乗員に対する各種警告を表すメータ画像を視認できる」ことは、本件補正発明の「前記システムが第1の状態であるとき前記光源から伝達される光が前記可撓性材料を通るように可視であ[る]」ことに相当する。
したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記システムが第1の状態であるとき前記光源から伝達される光が前記可撓性材料を通るように可視であ[る]」点において一致する。
e 構成Dの観点
引用発明においては、「イグニッションスイッチのオフ時、液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射されない状態では、透過性ウレタン合皮31、スモークアクリル32自体およびスモークアクリル32の遮光部32cによって透過性ウレタン合皮31側からインパネ10側への視認性が妨げられているため、乗員はステアリングホイールS越しに、透過性ウレタン合皮31の皮模様のみを視認することができ」るものである。
ここで、引用発明の「液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射されない状態」は、本件補正発明の「システム」の「第3の状態」に相当する。
また、引用発明において、「乗員はステアリングホイールS越しに、透過性ウレタン合皮31の皮模様のみを視認すること」は、液晶表示器21のバックライト21bからの光が透過性ウレタン合皮31を通らず視認できないことを意味するから、本件補正発明の「光は前記光源から前記可撓性材料を通るように可視ではな[い]」ことに相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明は、「前記システムが第3の状態であるとき光は前記光源から前記可撓性材料を通るように可視ではな[い]」点において一致する。
(イ) 一致点及び相違点の認定
前記(ア)の対比分析の検討結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。
a 一致点
「車両の内部に関するディスプレイシステムであって、
光源と、
前記車両の前記内部の表面を形成するための可撓性材料と、を備え、
前記システムが第1の状態であるとき前記光源から伝達される光が前記可撓性材料を通るように可視であり、
前記システムが第3の状態であるとき光は前記光源から前記可撓性材料を通るように可視ではない、
システム。」である点。
b 相違点
(a) 相違点1
本件補正発明においては、「前記システムが前記第1の状態であるときに、前記光源からの前記光は、前記車両のオーディオシステムによって再生される音楽のグラフィカル可視化を含[む]」(構成F)のに対して、
引用発明においては、「液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射された状態では、乗員はステアリングホイールS越しに、透過性ウレタン合皮31の表示領域Dに表示される車両状態および乗員に対する各種警告を表すメータ画像を視認できる」ものではあるが、「前記車両のオーディオシステムによって再生される音楽のグラフィカル可視化」を行うものではない点。
(b) 相違点2
本件補正発明においては、「システム」が「車両の内部に関するディスプレイ及び照明システム」であり、
「前記システムが第2の状態であるとき前記光源から伝達される光が前記可撓性材料を通るように可視であり」(構成D)、
「前記システムが前記第2の状態であるときに、前記光源の輝度は、前記光源からの光が前記車両の前記内部に周囲照明を提供するように、設定される」(構成G)のに対して、
引用発明においては、「システム」が「車両用表示装置」であり、構成Dや構成Gのような構成を備えていない点。
イ 判断
(ア) 相違点1について
a 「ユーザーに提供しているオーディオ信号に係る音量又は周波数スペクトラムをグラフィック表示する表示手段を有するカーオーディオ装置」は、当業者にとって周知技術である(前記周知技術1を参照)。
b 引用発明において、「液晶表示器21」を、カーオーディオ装置の表示手段としても利用することは、表示内容の切替え設定が通常可能であることを考慮すれば格別困難なことではなく、前記周知技術1を適用する際に、「液晶表示器21」において、車両のカーオーディオ装置によって再生される音楽のグラフィック表示を行うようにして(その場合、液晶表示器21のバックライト21bから光が照射され、透過性ウレタン合皮31を通して視認できる状態となることは当然である。)、前記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。
(イ) 相違点2について
a 引用文献9技術事項の「ディスプレイ10」は、「画像の表示および照明に兼用される」ものであり、「画像表示モード」では「死角状況画像」を表示し、「照明モード」では「照明用画像」を表示するものである。
b 引用発明においては、「イグニッションスイッチのオンにより、液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射された状態」になるから、車両のエンジンを起動させた後は、「透過性ウレタン合皮31の皮模様」によって「液晶表示器21」の表示の視認性が妨害されることはない。
c また、引用発明の「液晶表示器21」に乗員にとって死角となる領域の状況を示す画像を表示することも、車両の安全な運転を行う上で好ましいことは明らかである。
d そうすると、引用発明の「液晶表示器21」において、引用文献9技術事項の「画像の表示および照明に兼用される」という技術を採用する契機はあるというべきであり、引用文献9技術事項の「照明モード」に倣って、「液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射された状態」にあるときに、「液晶表示器21のバックライト21b」から「照射された」「光」が「透過性ウレタン合皮31」を通ることにより、「透過性ウレタン合皮31の表示領域D」に「照明用画像」が表示されるような「車両の内部に関するディスプレイ及び照明システム」として構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
e そして、本件補正発明の「周囲照明」は、本願明細書の段落【0039】にある「低強度白色光等の周囲照明」という記載を踏まえると、車両の室内照明(通常は白色光)と同程度以下の明るさを有するものを想定していると解するのが相当であるから、「透過性ウレタン合皮31の表示領域D」に表示される「照明用画像」の輝度を、車両の内部に周囲照明を提供するように設定することは、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。
f したがって、引用発明において、前記相違点2に係る構成とすることは、格別困難なことではない。
(ウ) 総合評価
前記(ア)及び(イ)の検討結果を総合的に勘案しても、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件補正発明の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献9技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 請求人の主張について
ア 審判請求書の主張
(ア) 審判請求書の主張の概要
引用文献1の段落0015は、せいぜい、光が「情報」を含むことを反映しているものと考えることができるものにすぎず、「周囲照明」については何ら記載されていない。
さらに、引用文献1~8のいずれも、1つの状態において「前記車両のオーディオシステムによって再生される音楽のグラフィカル可視化」等の情報を表示すること、及び、別の状態において「前記車両の前記内部に周囲照明」を提供するように「設定」できる「輝度」を有することの両方が可能な光源を伴うシステムを教示していない。
(イ) 審判請求書の主張に対する当審の判断
請求人の主張は、要するに前記相違点に係る構成についてのものであるところ、前記相違点については、前記(3)イにおいて説示したとおり、引用発明、引用文献9技術事項及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。
ア 上申書の主張
(ア) 上申書の主張の概要
以下のa~cに示すとおり、当業者が引用文献1及び9に鑑みて本件補正発明に容易に想到し得たとはいえない。
a 第1に、引用文献9は、単に、ディスプレイ10が、ドアが開状態であるときにユーザが車両に乗降するために足元のための照明を提供するために使用され得るものにすぎない。当該照明は、ユーザが地面で足元を見ることができるようにドアが開状態であるときに光を地面に指向させるパターンを有すると理解される事前設定された照明用画像を表示することによって提供される。したがって、引用文献9は、ディスプレイ10が「前記車両の前記内部に周囲照明を」提供するために使用されることを記載していない。
b 第2に、引用文献1は、車両状態を示すためのドライバの前方のディスプレイを有するダッシュパネルの外観の課題を解決することに関するもの(すなわち、引用文献1では、ディスプレイがダッシュパネルと外観が一体感を有するようにすることを望んでいる)にすぎない。当業者は、引用文献9で引用文献1を改変しようとしないはずである。なぜなら、そのようにすることは、せいぜい、引用文献1のディスプレイを、ドアが開状態であるときに照明を提供するための事前設定された照明用画像を表示するように改変することを示唆するものにすぎないからである。しかしながら、ダッシュパネル上のドライバの前方のディスプレイに明るい画像を表示することは、ドライバの眼にとって不快感を生じさせてしまう可能性があるだけであり、ドアが開状態であるときに車両に乗降するためにドライバが足元を見るための照明の提供に有効ではないはずである。
c 第3に、もし仮に、当業者が引用文献9のディスプレイ10全体を引用文献1にコピーするようなことを考えたと仮定しても、依然として、本件補正発明に到達することにはならない。特に、ディスプレイ10は、ビデオカメラからの撮影画像を表示することによって、車体構造物により形成された死角のビューを提供するために、カメラによって撮影された画像を表示することが意図されたものである。死角のビューを明らかに見ることができるように引用文献9のディスプレイ10が明らかに視認可能であることを確実にすることが望まれることが当然に理解されるところ、安全性を考慮すると、引用文献9のディスプレイ10の前方に何らかの障害物(例えば、「前記車両の前記内部の表面を形成するための可撓性材料」)を置くようにするのは直観に反するはずである。したがって、もし仮に引用文献9のディスプレイ10全体を引用文献1に適用したとしても、いずれかの状態において「前記光源から伝達される光が前記可撓性材料を通るように可視であ」るシステムに到達することにはならないはずである。
(イ) 上申書の主張に対する当審の判断
以下のa~cにおいて述べるとおり、上申書の主張を採用することはできない。
a 引用文献9技術事項の「ディスプレイ10」は、「車室内側の車体構造物のうち、センターピラー、ダッシュボード、ドア等の室内部位に設けてもよい」(【0066】)としているから、引用文献9技術事項は、「ディスプレイ10」を引用発明と同様にダッシュボード(ダッシュパネル)内に設置したものを包含している。そして、ダッシュボードに設置された「ディスプレイ10」が乗降する足元を照明できる程度の明るさで発光する場合、車両内部も通常照明されるのであって、引用発明の「液晶表示器21」を引用文献9に開示された上記設置形態に倣って設置した場合には、これを車両内部に周囲照明を提供するものではないとはいえない。
b 引用文献9技術事項の「ディスプレイ10」の照明モードは、ドアが開状態であるときのモードであって、そのとき車両は通常停止しているから、「透過性ウレタン合皮31の表示領域D」に「照明用画像」を表示しても、それが安全な運転の妨げになるとはいえない。
ドライバの眼にとって不快感を生じさせるか否かは、「照明用画像」の明るさをどの程度に設定するかに依存し、不快感を生じさせることなく、乗降する足元を照明できる程度の明るさに設定することは可能である。
またそもそも、引用発明においては、「液晶表示器21」により画像として全て表示してしまえば、あえて「発光素子22」により警告の表示をしなくても済むにもかかわらず、「バックライト21b」の他に「発光素子22」が別途用意されているような光源の配置形態が採用されていることを踏まえると、引用発明において採用される光源については、乗員の利用状況に応じて様々な設置形態が許容されていると考えることができる。
すなわち、引用発明において、引用文献9技術事項に倣って照明を採用しようとした場合に、足下照明のための光源を「ドライバの前方のディスプレイ」に限定する必要はなく、例えばダッシュパネルのうちドア寄りの下方に別途足下照明のための光源を配置する程度のことは引用文献9技術事項を引用発明に採用する際に当業者が通常配慮すべき範囲内のものであって、上申書の主張bの事項は、引用発明において引用文献9技術事項を採用することを妨げる理由とはならない。
c 引用発明においては、「イグニッションスイッチのオンにより、液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射された状態」になるから、車両のエンジンを起動させた後は、「透過性ウレタン合皮31の皮模様」によって「液晶表示器21」の表示の視認性が妨害されることはない。
むしろ、「透過性ウレタン合皮31の表示領域Dに表示される車両状態および乗員に対する各種警告を表すメータ画像を視認できる」としており、「警告」という車両の安全性に関する重要な情報を表示しているから、車両のエンジンを起動させた後の「液晶表示器21」の表示の視認性は確実なものであると考えるべきである。
したがって、引用発明において、車両のエンジンを起動させた後、「透過性ウレタン合皮31の表示領域D」に「死角状況画像」を表示しても、「透過性ウレタン合皮31」は表示の障害物とはならない。
(5) 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~15に係る発明は、令和4年9月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は前記第2の1(1)に摘記した事項により特定されるとおりである。
2 拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。
本願発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特開2009-96380号公報
引用文献7:特開2005-112255号公報
3 引用文献に記載された事項及び周知技術
前記引用文献1には、前記第2の3(2)ア(イ)において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる。
また、前記周知技術1は、前記第2の3(2)ウ(イ)において認定したとおりである。
4 対比・判断
(1) 対比
ア 車両の内部に照明があることは自明であるから、引用発明においても、車両の内部に照明が設置されていることを前提としている。
イ そうすると、車両の内部に「液晶表示器21」を備えており、かつ、車両の内部に照明が設置されていることを前提とする引用発明の「車両用表示装置」は、車両の内部全体に関して見れば、ディスプレイ及び照明を含むシステムであるといえるから、本願発明の「車両の内部に関するディスプレイ及び照明システム」に相当する。
ウ したがって、本願発明と引用発明は、「車両の内部に関するディスプレイ及び照明システム」の発明である点において一致する。
エ さらに、前記第2の3(3)ア(ア)の対比分析における検討結果も踏まえると、本願発明と引用発明の相違点は、次のとおりであり、両者はその余の点で一致する。
<本願発明と引用発明の相違点>
本願発明においては、「前記光源からの前記光は、前記車両のオーディオシステムによって再生される音楽のグラフィカル可視化を含[む]」のに対して、
引用発明においては、「液晶表示器21のバックライト21bおよび発光素子22から光が照射された状態では、乗員はステアリングホイールS越しに、透過性ウレタン合皮31の表示領域Dに表示される車両状態および乗員に対する各種警告を表すメータ画像を視認できる」ものではあるが、「前記車両のオーディオシステムによって再生される音楽のグラフィカル可視化」を行うものではない点。
(2) 判断
前記第2の3(3)イにおいて説示した判断を踏まえると、前記相違点に係る本願発明の構成は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本願発明の奏する作用効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-019613