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特許拒絶査定不服審判

2023-018612

ディスプレイ用発光ダイオードおよびこれを有するディスプレイ装置

審判番号
2023-018612
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-529153
請求日
2023年11月02日
審決日
2025年02月03日
公報発行日
2025年07月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ソウル バイオシス カンパニー リミテッド
  • 【請求人代理人】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
審判長/審判官
  • 審判長 波多江 進
  • 審判官 芝沼 隆太
  • 審判官 吉野 三寛
分類
P18 .121-Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-529153「ディスプレイ用発光ダイオードおよびこれを有するディスプレイ装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年 5月31日国際公開、WO2019/103567、令和 3年 2月15日国内公表、特表2021-504959〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2018年(平成30年)11月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年(平成29年)11月27日 米国、2017年12月6日 米国、2017年12月12日 米国、2017年12月13日 米国、2018年1月24日 米国、2018年1月31日 米国(2件)、2018年11月26日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概略は次のとおりである。 令和 4年 7月27日付け:拒絶理由通知書 同年10月31日 :意見書、手続補正書の提出 令和 5年 1月 6日付け:拒絶理由通知書(最後) 同年 4月12日 :意見書、手続補正書の提出 同年 6月30日付け:補正の却下の決定、 拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年 7月 4日 :原査定の謄本の送達) 同年11月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出 同月28日 :手続補正書(方式)の提出 第2 令和5年11月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和5年11月2日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 本件補正の内容 令和5年11月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正であって、本件補正前(令和4年10月31日にされた手続補正後)の特許請求の範囲の請求項1及び本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ次の(1)及び(2)に示すとおりである。下線は補正箇所を示す。 (1) 本件補正前 「【請求項1】 第1LEDスタックと、 前記第1LEDスタック上で一部領域内に配置される第2LEDスタックと、 前記第2LEDスタック上で一部領域内に配置される第3LEDスタックと、 前記第1LEDスタックの下側に配置される反射電極と、 を備え、 前記第1~第3LEDスタックのそれぞれがn型半導体層およびp型半導体層、ならびにn型半導体層およびp型半導体層の間に活性層を備え、 第3LEDスタックの上部に粗面化された表面を有し、 前記第1~第3LEDスタックのすべての前記n型半導体層が前記反射電極に電気的に接続され、 前記第1LEDスタック、前記第2LEDスタックおよび前記第3LEDスタックが独立して駆動され、 第3LEDスタックにおいて発光された光は、活性層から粗面化された表面へ出射する、 ディスプレイ用発光ダイオードピクセル。」 (2) 本件補正後 「【請求項1】 第1LEDスタックと、 前記第1LEDスタック上で一部領域内に配置される第2LEDスタックと、 前記第2LEDスタック上で一部領域内に配置される第3LEDスタックと、 前記第1LEDスタックの下側に配置される反射電極と、 を備え、 前記第1~第3LEDスタックのそれぞれがn型半導体層およびp型半導体層、ならびにn型半導体層およびp型半導体層の間に活性層を備え、 前記第3LEDスタックの上部に粗面化された表面を有し、 前記第1~第3LEDスタックのすべての前記n型半導体層が前記反射電極に電気的に接続され、 前記第1LEDスタック、前記第2LEDスタックおよび前記第3LEDスタックが独立して駆動され、 前記第3LEDスタックにおいて発光された光は、活性層から前記粗面化された表面へ出射し、 前記第1~第3LEDスタックの側面は、光透過性材料を含む絶縁層で覆われる、 ディスプレイ用発光ダイオードピクセル。」 2 本件補正の適否についての当審の判断 (1) 本件補正の目的について 本件補正で請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に対し、「前記第1~第3LEDスタックの側面は、光透過性材料を含む絶縁層で覆われる」ことを限定する補正事項、並びに、2回目以降に記載される「第3LEDスタック」及び「粗面化された表面」を「前記第3LEDスタック」及び「前記粗面化された表面」とすることにより誤記を訂正する補正事項からなるものである。 そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 したがって、本件補正で請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号及び3号に規定する特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とする補正に該当する。 (2) 独立特許要件について 前記(1)のとおり、本件補正で請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下で検討する。 ア 本件補正発明 本件補正発明は、前記1(2)に記載した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 イ 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 (ア) 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定 a 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の最先の優先日前に発行された特開2003-197968号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したものであり、以降の他の文献に記載された事項についても同様である。 「【0009】 【発明実施の形態】本発明で使用する発光ダイオードの材料には制限がなく、赤,緑,青の三原色及び黄色の光を発光することができる発光ダイオードであればよく、公知の方法によって生産されたものであり、所定の規格(サイズ,バイアス値,明るさ,色,金属接触材料である等)によって製造されたものであればよく、本発明の構造をパッケージングする前に、予め測定してレベル分けや分類をし、相同のレベル或いは同類のもの(バイアス値,明るさ,色等)を同一にパッケージングする。また本発明にはプリント回路板を含み、該プリント回路板上にはダイボンディングに必要な金属反射層のパターンが設けられ、第一チップを結合した後、第二チップを該第一チップの上に重ねて結合させるが、その結合方法は熱による溶接や超音波による接合、或いは透明接着剤による貼合等による。更に第三チップを第二チップ上に結合させ、最後にワイヤーボンディングを行ってプラス極を電源に連結させ、マイナス極を共用のアース端にまで連結させる。 【0010】本発明は近距離用に適した三原色のカラー発光ダイオードの構造であり、図7に示すのはその第一実施例の平面図である。また図8は図7におけるA‐A線における断面図であり、PC板405上表面にてスパッタリング,或いはエバポレーションする,或いは電気メッキで一層の金属反射層801を形成し、スパッタリングによる層は厚さが約1000Å(オングストローム)から20000Åであり、2000Åから5000Åの銅(Cu)や金(Au)で形成されるのが最も理想的である。 【0011】先ず第一赤色発光ダイオードチップ401においては、P型 InGaAlP/n型GaAs或いはその他の材料によって公知の技術で製造されており、底部には金属反射層801が1000Åから20000Åスパッタリング或いはエバポレーションされており、2000Åから50000Åの銅(Cu)或いは金(Au)が最も理想的であり、また上層には電極802が200から10000Åがスパッタリング或いはエバポレーションされ、これは500Åから10000Åの透明導電層が理想であり、片側には金属反射層406が幅が約50μmから200μmのスパッタリングがされており、100μmの帯状で赤い光を反射して赤色発光ダイオードの+極とし、一方では赤い光が単独で前向きに発射して妨害しないようにし、もう一方では赤い光が反射によってPC板上の反射層801を経て上向きに反射してその他の光と混合されて十分に赤い光のエネルギが利用されるようにする。この赤色発光ダイオードチップ401の大小は約400μmから1000μmであり、底部に熱を加えて金属の共晶ポイント(例えば450から550℃)にまで至らせる、或いは超音波による接合、或いは透明接着剤によって接着する等し、赤色発光ダイオードチップ401及びPC板を結合させ、底部の反射層801をPC板のアース共用電極701即ち赤色のアース電極にまで連結させる。 【0012】第二青色発光ダイオードチップ403においては、n型InGaNを光を通すサファイア805上にてエピ成長し、更にP型InGaNがその上にエピ成長され、また底部及び上層は透明導電層802及び803が皆200Å~10000Åの厚さでスパッタリング或いはエバポレーションされ、これは500Å~1000Åが最も理想であり、片側には幅μmの銅や金などによる金属反射層804がスパッタリングされており、青色の光及び赤色の光が反射して帰ってくるようにし、並びに青色のプラス極とし、一方では青色と赤色の光が混合した光が前向きに発射されて妨害されるのを防止しており、またもう一方では青色の光及び赤色の光が反射してPC板上の金属反射層を経て上向きに反射し、緑色の光と混合して充分に青色と赤色の光のエネルギを利用できるようにする。またエッチングによって約100μm×100μmのp型InGaNを除去してその上に一層の銅或いは金の金属反射層をメッキして赤色の光を反射させ、並びに図7及び図9に示すように青色のマイナス極901とする。該青色チップの大きさは約300μmから900μmであり、基板に加熱して金属の共晶ポイント(例えば450℃から550℃等)にまで至らせる、或いは超音波を利用して接合させたり、透明接着剤を用いたりして、該青色チップ403及び該赤色チップ401を結合させる。第三緑色チップ402は光を通すサファイア805上に公知の技術によってn型InGaN及びp型InGaNをエピ成長させて得られ、更に底部及び上層には透明導電層803及び802が皆200Å~10000Åの厚さでスパッタリング或いはエバポレーションされており、これは500Å~1000Åの透明導電層が最も理想であり、上層の透明導電層は緑色のプラス極となり、またエッチングによって約100μm×100μmのp型InGaNを除去してその上に銅或いは金の反射層902をメッキして赤色及び青色の光を反射し、前向きに発射して妨害することを防止し、並びに反射する赤色及び青色の光がPC板上の金属反射層を経て上向きに反射して緑色の光と混合され、充分に赤色及び青色の光のエネルギが利用されるようにし、また該金属反射層902は図7及び図9に示すように、緑色のマイナス極となる。また該緑色チップの大きさは約200μmから800μmであり、基板に加熱して金属の共晶ポイント(例えば450~500℃)にまで至らせる、或いは超音波によって接合させる、或いは透明の接着剤等を用いて該緑色チップ402及び青色チップ403を結合させる。 【0013】図8,9,10に示すように、金属によるワイヤーボンディングでチップ上の赤,緑,青色のプラス極をそれぞれPC板上の赤,緑,青色のプラス極に連結させ、並びに青,緑色のマイナス極をそれぞれPC板上のアース電極701にまで連結させ、図7,10に示すように更に透明のプラスティック材質で密封して本発明の第一実施例が完成する。また図11に示すものはその等価回路である。本発明では各色のチップのバイアスを調整して電流を変え、異なる光の強度を得て、更に混合されて異なる色の光(図3参照)を得るものであり、エネルギ節約の効果だけでなくて分解能が高く、色彩の品質がアップされ、小さな電流で発光するために熱量が低く放熱性に優れ、こうすることでチップの寿命を伸ばす目的を達成する。」 「【図7】 [図:0001424107000001.jpg] 【図8】 [図:0001424107000002.jpg] 【図9】 [図:0001424107000003.jpg] 【図10】 [図:0001424107000004.jpg] 【図11】 [図:0001424107000005.jpg] 」 b 引用文献1に記載された事項から当業者が把握できる事項 (a) 【0009】には、「本発明にはプリント回路板を含み、該プリント回路板上にはダイボンディングに必要な金属反射層のパターンが設けられ、第一チップを結合した後、第二チップを該第一チップの上に重ねて結合させる」こと及び「第三チップを第二チップ上に結合させ」ることが記載されているところ、ここでいう「プリント回路板」、「金属反射層」、「第一チップ」、「第二チップ」及び「第三チップ」が、図7~11に示される第一実施例に係る三原色のカラー発光ダイオードにおける「PC板405」、「金属反射層801」、「第一赤色発光ダイオードチップ401」、「第二青色発光ダイオードチップ403」及び「第三緑色チップ402」に対応していることを勘案すれば、第一実施例に係る三原色のカラー発光ダイオードでは、PC板405上には金属反射層801のパターンが設けられ、第一赤色発光ダイオードチップ401を結合した後、第二青色発光ダイオードチップ403を該第一赤色発光ダイオードチップ401の上に重ねて結合させ、第三緑色チップ402を第二青色発光ダイオードチップ403上に結合させていることを、当業者は把握できる。 (b) 図8~10から、P型InGaAlPとn型GaAsとでは、n型GaAsが底部側に配置されていることを、当業者は把握できる。 (c) 【0011】の「赤色発光ダイオードチップ401の大小は約400μmから1000μmであ」るという記載、【0012】の「青色チップの大きさは約300μmから900μmであ」るという記載、及び、【0012】の「緑色チップの大きさは約200μmから800μmであ」るという記載を参照しつつ、図8~10を見ると、第二青色発光ダイオードチップ403は第一赤色発光ダイオードチップ401よりも面積が小さいこと、及び、第三緑色チップ402は第二青色発光ダイオードチップ403よりも面積が小さいことを、当業者は把握できる。 (d) 図8~10から、第三緑色チップ402は上面を有し、その上面の一部にのみ透明導電層802が形成されていることを、当業者は把握できる。 c 引用発明の認定 前記aに摘記した引用文献1に記載された事項及び前記bに記載した引用文献1に記載された事項から当業者が把握できる事項を総合すると、引用文献1には、図7~11に示される第一実施例に係る三原色のカラー発光ダイオードに関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。以下同じ。)。 <引用発明> 「三原色のカラー発光ダイオードであって、(【0010】) PC板405上には金属反射層801のパターンが設けられ、第一赤色発光ダイオードチップ401を結合した後、第二青色発光ダイオードチップ403を該第一赤色発光ダイオードチップ401の上に重ねて結合させ、第三緑色チップ402を第二青色発光ダイオードチップ403上に結合させており、(前記b(a)) PC板405上表面にて一層の金属反射層801を形成し、(【0010】) 第一赤色発光ダイオードチップ401においては、P型InGaAlP/n型GaAs或いはその他の材料によって公知の技術で製造されており、(【0011】) P型InGaAlPとn型GaAsとでは、n型GaAsが底部側に配置されており、(前記b(b)) 底部には金属反射層801がスパッタリング或いはエバポレーションされており、(【0011】) 上層には電極802がスパッタリング或いはエバポレーションされ、これは透明導電層が理想であり、(【0011】) 片側には金属反射層406がスパッタリングされており、赤い光を反射して赤色発光ダイオードの+極とし、一方では赤い光が単独で前向きに発射して妨害しないようにし、もう一方では赤い光が反射によってPC板上の反射層801を経て上向きに反射してその他の光と混合されて十分に赤い光のエネルギが利用されるようにし、(【0011】) 赤色発光ダイオードチップ401及びPC板を結合させ、(【0011】) 底部の反射層801をPC板のアース共用電極701即ち赤色のアース電極にまで連結させ、(【0011】) 第二青色発光ダイオードチップ403においては、n型InGaNを光を通すサファイア805上にてエピ成長し、更にP型InGaNがその上にエピ成長され、(【0012】) 底部及び上層は透明導電層802及び803がスパッタリング或いはエバポレーションされ、(【0012】) 片側には金属反射層804がスパッタリングされており、青色の光及び赤色の光が反射して帰ってくるようにし、青色のプラス極とし、一方では青色と赤色の光が混合した光が前向きに発射されて妨害されるのを防止しており、またもう一方では青色の光及び赤色の光が反射してPC板上の金属反射層を経て上向きに反射し、緑色の光と混合して充分に青色と赤色の光のエネルギを利用できるようにし、(【0012】) エッチングによってp型InGaNを除去してその上に一層の金属反射層をメッキして、青色のマイナス極901とし、(【0012】) 該青色チップ403及び該赤色チップ401を結合させ、(【0012】) 第二青色発光ダイオードチップ403は第一赤色発光ダイオードチップ401よりも面積が小さく、(前記b(c)) 第三緑色チップ402は光を通すサファイア805上に公知の技術によってn型InGaN及びp型InGaNをエピ成長させて得られ、(【0012】) 底部及び上層には透明導電層803及び802がスパッタリング或いはエバポレーションされており、(【0012】) 第三緑色チップ402は上面を有し、その上面の一部にのみ透明導電層802が形成されており、(前記b(d)) 上層の透明導電層は緑色のプラス極となり、(【0012】) エッチングによってp型InGaNを除去してその上に反射層902をメッキして赤色及び青色の光を反射し、前向きに発射して妨害することを防止し、並びに反射する赤色及び青色の光がPC板上の金属反射層を経て上向きに反射して緑色の光と混合され、充分に赤色及び青色の光のエネルギが利用されるようにし、該金属反射層902は緑色のマイナス極となり、(【0012】) 該緑色チップ402及び青色チップ403を結合させ、(【0012】) 第三緑色チップ402は第二青色発光ダイオードチップ403よりも面積が小さく、(前記b(c)) 赤,緑,青色のプラス極をそれぞれPC板上の赤,緑,青色のプラス極に連結させ、(【0013】) 青,緑色のマイナス極をそれぞれPC板上のアース電極701にまで連結させ、(【0013】) 各色のチップのバイアスを調整して電流を変え、異なる光の強度を得て、更に混合されて異なる色の光を得るものである、(【0013】) 三原色のカラー発光ダイオード」 (イ) 引用文献2、3に記載された事項及び周知技術の認定 a 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の最先の優先日前に発行された特開2014-120774号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0025】 図2及び図3は、本発明の一実施例に係る発光ダイオードを説明するための断面図及び斜視図である。 【0026】 図2及び図3を参照すると、発光ダイオードは、支持基板21、ボンディング金属23、反射金属層31、障壁金属層33、半導体積層構造体30、第1の電極60、及びグラフェン―メタ物質積層構造50を含む。 …(中略)… 【0029】 半導体積層構造体30は、支持基板21の上に位置し、p型化合物半導体層29、活性層27及びn型化合物半導体層25を含む。ここで、半導体積層構造体30は、一般的な垂直型発光ダイオードと同様に、p型化合物半導体層29がn型化合物半導体層25に比べて支持基板21側の近くに位置する。 【0030】 n型化合物半導体層25、活性層27及びp型化合物半導体層29は、III―N系の化合物半導体、例えば(Al,Ga,In)N半導体で形成されてもよい。n型化合物半導体層25及びp型化合物半導体層29は、それぞれ単一層又は多重層であってもよい。例えば、n型化合物半導体層25及び/又はp型化合物半導体層29は、コンタクト層及びクラッド層を含んでもよく、また、超格子層を含んでもよい。また、活性層27は、単一量子井戸構造又は多重量子井戸構造であってもよい。抵抗が相対的に小さいn型化合物半導体層25が支持基板21の反対側に位置することによって、n型化合物半導体層25の上面に粗面Rを容易に形成することができ、粗面Rは、活性層27で生成された光の抽出効率を向上させる。」 「【図3】 [図:0001424107000006.jpg] 」 b 引用文献3に記載された事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の最先の優先日前に発行された特表2016-521004号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0044】 図1のBに関連して説明した実施形態に代えて、オプトエレクトロニクス半導体チップを図1のCに示されているように構成することもできる。この場合、三角形状の端子面13aは、オプトエレクトロニクス半導体チップ100のn導電型領域には配置されず、半導体層22,23,24に並んで配置される。 【0045】 この場合、オプトエレクトロニクス半導体チップ100は、活性領域21を貫通し、かつ、n導電型領域23と三角形状の端子面13aとの間を電気的に接続するスルーコンタクト25を含む。オプトエレクトロニクス半導体チップ100はさらに、活性領域21とp導電型領域22とn導電型領域23とを含む。 【0046】 図1のCに示されているように、放射出射面11は例えば粗面化され、これにより光出射の確率が増大される。オプトエレクトロニクス半導体チップ100は少なくとも側方縁部にパシベーション部26を有する。オプトエレクトロニクス半導体チップ100はさらに、p導電型領域22とp端子材料24との間に設けられる鏡29を有する。オプトエレクトロニクス半導体チップ100の下方には、支持体28が、接続手段27、例えばはんだ材料によって固定されている。」 「【図1C】 [図:0001424107000007.jpg] 」 c 活性層周知技術の認定 前記aに摘記した引用文献2の【0029】、図3、及び、前記bに摘記した引用文献3の【0045】、図1Cの記載からみて、次の事項(以下「活性層周知技術」という。)は本願の最先の優先日前の周知技術であると認められる。 <活性層周知技術> 「発光ダイオードにおいて、半導体構造を、p型半導体層、n型半導体層、及び、p型半導体層とn型半導体層との間に位置する活性層を含んで構成すること」 d 粗面化周知技術の認定 前記aに摘記した引用文献2の【0030】、図3、及び、前記bに摘記した引用文献3の【0046】、図1Cの記載からみて、次の事項(以下「粗面化周知技術」という。)は本願の最先の優先日前の周知技術であると認められる。 <粗面化周知技術> 「発光ダイオードにおいて、半導体構造における光が出射する側の面を粗面化することにより、光の抽出効率を向上させること」 (ウ) 引用文献5に記載された事項及び引用文献5技術的事項等の認定 a 引用文献5に記載された事項 原査定と同時になされた補正の却下の決定に引用され、本願の最先の優先日前に発行された特表平10-503878号公報(以下「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。 (37頁17行~40頁5行) 「本発明による積層オーガニックLED素子3色画素の製造方法は、シャドーマスク法及びドライエッチング法のいずれかにより実行できる。ここで説明を簡略化するため、いずれの方法の説明においても、底部ガラス基板から発光する各発光層は、オーガニック化合物層からなる2重ヘテロ構造LED体であると仮定する。当然ながら、各活性発光層が多層オーガニック化合物層であるような多層ヘテロ結合オーガニックLED構成、及び/又は、反転構成(積層の上部面から発光する場合)の場合も、本方法をわずかに変更することによって製造できることは当業者には理解できるであろう。 本発明によるシャドーマスク工程が、図12(A~E)に図示されている。この方法においては、まず最初に、ITO層52で被膜されたガラス基板50を、沸騰したトリクロロエチレン又は同様の塩素化炭化水素に約5分間浸積する。この後、アセトンで5分程度洗った後、更に約5分間だけメチルアルコール洗浄を行う。次に基板50を、超純度(UHP)窒素の噴流を用いて乾燥させる。ここで使う洗浄溶剤は、「電子グレード」であるのが望ましい。洗浄後に、周知のスパッター法や電子ビーム法を用いて、ITO層52を真空中で基板50上に形成する。 次に前記ITO層52上に、以下のようにして、青色発光LED55を形成する(図12B)。まず、ITO層52の所定の外側部にシャドーマスク73を載置する。このシャドーマスク工程で使うシャドーマスク73やその他のマスクは、素子の動作寿命を縮めるような湿気、酸素、その他の汚染物を素子に触れさせることがないようにしながら、処理工程中で導入し且つ除去しなければならない。この作業は、窒素ガス又は不活性ガスが充満した雰囲気中でマスク交換を行ったり、成いは、遠隔操作を使って真空環境で素子面にマスクを遠隔載置することにより実践できる。そして、マスク53の開孔を通じて、50~100オングストローム厚の正孔搬送層(HTL)54及び50~200オングストローム厚の青色発光層(EL)56を空気に触れない状態を保ちつつ真空中等で順番に積層する(図12B参照)。そして、このEL層56上に、好ましくは50~1000オングストロームの厚さの電子搬送層(ETL)58を形成する。更にこのETL層58上に、例えば、好ましくは10%Agと90%Mg層、又は低作用機能金属若しくは金属合金層からなるような半透明金属層60Mを作成する。金属層60Mの厚さは、100オングストローム以下の薄いものである。これら積層54、56、58、60Mは、気相蒸着、イオンビーム積層、電子ビーム積層、スパッタリング、レーザー融蝕法等のいずれかの周知方向性積層技術により作成することが可能である。 更に前記金属層60Mの上に、スパッタリング又は電子ビーム法を用いて、1000~4000オングストローム厚のITO接触層60Iを積層する。ここでも説明を簡略化するために、図2の層26と同様に、前記の両層60M及び60Iを単層60として説明する。各層60の低作用機能金属部分60Mは、その下側のETL層58と直接接触するが、ITO層60Iはそのすぐ上側のHTL層に接触する。ここで、どの素子製造工程でも、その工程間において真空環境を阻害しないよう真空を維持しつつ行われる必要があることに注意してほしい。 図12Cには、前記の青色発光LED55を製造したのと同じシャドーマスク及び積層技術によって、前記上端層60上面に作成された緑色発光LED65が図示されている。このLED65は、HTL層62、緑色発光層64、ETL層66とからなる(その厚さは、100オングストロームであり且つ半透明であるが、電気連続性を損なうほど薄くはない)。そして、第2の薄膜金像層60MがETL層66上に積層され、続いて1000~4000オングストローム厚の他のITO層60Iを第2の挟積層60として形成する。 図12Dでは、同様のシャドーマスク及び積層技術を用いて、前記層60の上面に赤色発光LED75を積層している。赤色発光LED75も、HTL層70、赤色発光EL層72及びETL層74とからなる。最後にLED75の上面に、緑色上記発光層の場合と同様に、60I及び60Mの両層からなる挟積層60を形成する。図2の実施形態と同様に他の構成として、上部透明ITO層60Iを、素子上部における光損失を削減するために、上方向への光を基板50へ向かって反射するミラーとして働く所定の金属電極層に代えることもできる。尚、各ETL層74、66、58の厚さは50~200オングストローム、各HTL層54、62、70の厚さは100~500オングストローム、各EL層56、64、72の厚さは50~1000オ ングストローム程度である。明度や効率を最もよくするためには、ITO/金属層を含む全層を、上記厚さ範囲内で、できるかぎり小さくする必要がある。 そして、ITO層52上面に電気接触端子51、59を、ITO/金属層60のITO部分60Iの上面に電気接触端子88、89、92、94、96をそれぞれ形成する。電気端子は、インジウム、プラチナム、金、銀等の金属か、Ti/Pt/Au、Cr/Au、Mg/Ag等の合金で形成するのが望ましい。この製造方法においても、素子の不要部分をマスクした後で適当な金属積層法或いは蒸着法を使って行うことができる。 シャドーマスク工程の最終工程では、図12Eに示されているように、マスクされた全金属接触端子51、59、88、89、92、94、96を除いた素子全域を、絶縁層97で被膜する。絶縁層97は、湿気、酸素、その他の汚染物に対して不浸透性であるため、LEDの汚染を防止できる。絶縁層97は、電子ビーム法、スパッタリング、又は高温プラズマで補完したCVD法により、SiO2、Si2N3等の窒化シリコン又はその他の絶縁材により形成できる。尚、この積層工程においては、LED特性を損ねるような120℃以上の温度にならないよう注意する必要がある。」 (当合議体注:37頁下から5行の「理解できできるであろう」は「理解できるであろう」の誤記であり、38頁下から9行~下から8行の「積層54、56、、58、60M」は「積層54、56、58、60M」の誤記であり、39頁9行の「ITO層601」は「ITO層60I」の誤記であり、39頁下から7行の「電気接触端子5L59」は「電気接触端子51、59」の誤記であり、39頁下から6行の「ITO部分601」は「ITO部分60I」の誤記であり、40頁4~5行の「SiO2、Si2N3等の窒化シリコン」は「SiO2、Si2N3等の窒化シリコン」の誤記であることは明らかであるから、誤記を正した上で摘記した。) 「【図12】 [図:0001424107000008.jpg] [図:0001424107000009.jpg] [図:0001424107000010.jpg] [図:0001424107000011.jpg] [図:0001424107000012.jpg] 」 b 引用文献5に記載された事項から当業者が把握できる事項 引用文献5に記載された積層オーガニックLED素子3色画素は、ITO層52を基板50上に形成し、前記ITO層52上に、正孔搬送層(HTL)54及び青色発光層(EL)56を順番に積層し、EL層56上に、電子搬送層(ETL)58を形成することにより、青色発光LED55を形成し、ETL層58上に、半透明金属層60Mを作成し、前記金属層60Mの上に、ITO接触層60Iを積層し、前記の両層60M及び60Iである上端層60上面に緑色発光LED65を作成し、LED65は、HTL層62、緑色発光層64、ETL層66とからなり、第2の薄膜金像層60MがETL層66上に積層され、続いて他のITO層60Iを第2の挟積層60として形成し、前記層60の上面に赤色発光LED75を積層し、赤色発光LED75も、HTL層70、赤色発光EL層72及びETL層74とからなり、LED75の上面に、60I及び60Mの両層からなる挟積層60を形成し、ITO層52上面に電気接触端子51、59を、ITO/金属層60のITO部分60Iの上面に電気接触端子88、89、92、94、96をそれぞれ形成し、マスクされた全金属接触端子51、59、88、89、92、94、96を除いた素子全域を、絶縁層97で被膜するものであるところ、絶縁層97により、全金属接触端子51、59、88、89、92、94、96を除いた素子全域、すなわち、図12Eも併せて見ると、青色発光LED55、緑色発光LED65及び赤色発光LED75の側面を含む素子全域を被覆することを、当業者は把握できる。 c 引用文献5技術的事項の認定 前記aに摘記した引用文献5に記載された事項及び前記bに記載した引用文献5に記載された事項から当業者が把握できる事項を総合すると、引用文献5には、図12に示された積層オーガニックLED素子3色画素に関して、次の事項(以下「引用文献5技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 <引用文献5技術的事項> 「積層オーガニックLED素子3色画素において、(37頁17行) 絶縁層97により、青色発光LED55、緑色発光LED65及び赤色発光LED75の側面を含む素子全域を被覆し、(前記b) 絶縁層97は、湿気、酸素、その他の汚染物に対して不浸透性であるため、LEDの汚染を防止でき、(40頁2~3行) 絶縁層97は、SiO2、Si2N3等の窒化シリコン又はその他の絶縁材により形成できること(40頁3~5行)」 ウ 対比 (ア) 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 a 本件補正発明の「第1LEDスタックと、前記第1LEDスタック上で一部領域内に配置される第2LEDスタックと、前記第2LEDスタック上で一部領域内に配置される第3LEDスタックと、前記第1LEDスタックの下側に配置される反射電極と、を備え、」という特定事項について (a) 引用発明は、「第一赤色発光ダイオードチップ401」、「第二青色発光ダイオードチップ403」、「第三緑色チップ402」、「金属反射層801」及び「アース共用電極701」を備えるものであるところ、引用発明の「第一赤色発光ダイオードチップ401」、「第二青色発光ダイオードチップ403」及び「第三緑色チップ402」は、それぞれ本件補正発明の「第1LEDスタック」、「第2LEDスタック」及び「第3LEDスタック」に相当するとともに、引用発明の「金属反射層801」は、本件補正発明の「反射電極」に相当する。 (b) 引用発明は、「第二青色発光ダイオードチップ403を該第一赤色発光ダイオードチップ401の上に重ねて結合させ」るものであるから、本件補正発明でいう「第2LEDスタック」が「前記第1LEDスタック上」「に配置される」という特定事項を満たしているといえる。そして、引用発明では、「第二青色発光ダイオードチップ403は第一赤色発光ダイオードチップ401よりも面積が小さ」いことを勘案すると、引用発明における「第二青色発光ダイオードチップ403」が配置される「第一赤色発光ダイオードチップ401」上の領域は、本件補正発明でいう「一部領域内」であるといえる。 (c) 引用発明は、「第三緑色チップ402を第二青色発光ダイオードチップ403上に結合させ」るものであるから、本件補正発明でいう「第3LEDスタック」が「前記第2LEDスタック上」「に配置される」という特定事項を満たしているといえる。そして、引用発明では、「第三緑色チップ402は第二青色発光ダイオードチップ403よりも面積が小さ」いことを勘案すると、引用発明における「第三緑色チップ402」が配置される「第二青色発光ダイオードチップ403」上の領域は、本件補正発明でいう「一部領域内」であるといえる。 (d) 引用発明は、「PC板405上には金属反射層801のパターンが設けられ、第一赤色発光ダイオードチップ401を結合」するものであり、「第一赤色発光ダイオードチップ401」の「底部には金属反射層801がスパッタリング或いはエバポレーションされて[いる]」から、「第一赤色発光ダイオードチップ401」の下側に「金属反射層801」が配置されているといえるところ、引用発明において、「金属反射層801」が「第一赤色発光ダイオードチップ401」の下側に配置されることは、本件補正発明において、「反射電極」が「前記第1LEDスタックの下側に配置される」ことに相当する。 (e) したがって、前記(a)~(d)の検討によれば、引用発明は上記特定事項を満たす。 b 本件補正発明の「前記第1~第3LEDスタックのそれぞれがn型半導体層およびp型半導体層、ならびにn型半導体層およびp型半導体層の間に活性層を備え、」という特定事項について (a) 引用発明では、「第一赤色発光ダイオードチップ401においては、P型InGaAlP/n型GaAs或いはその他の材料によって公知の技術で製造されて」いるところ、引用発明の「第一赤色発光ダイオードチップ401」における「P型InGaAlP」及び「n型GaAs」は、それぞれ本件補正発明の「第1LEDスタック」における「p型半導体層」及び「n型半導体層」に相当する。 (b) 引用発明では、「第二青色発光ダイオードチップ403においては、n型InGaNを光を通すサファイア805上にてエピ成長し、更にP型InGaNがその上にエピ成長され」るところ、引用発明の「第二青色発光ダイオードチップ403」における「P型InGaN」及び「n型InGaN」は、それぞれ本件補正発明の「第2LEDスタック」における「p型半導体層」及び「n型半導体層」に相当する。 (c) 引用発明では、「第三緑色チップ402は光を通すサファイア805上に公知の技術によってn型InGaN及びp型InGaNをエピ成長させて得られ」るところ、引用発明の「第三緑色チップ402」における「p型InGaN」及び「n型InGaN」は、それぞれ本件補正発明の「第3LEDスタック」における「p型半導体層」及び「n型半導体層」に相当する。 (d) したがって、前記(a)~(c)の検討によれば、本件補正発明と引用発明は、「前記第1~第3LEDスタックのそれぞれがn型半導体層およびp型半導体層を」「備え」る点で共通する。 (e) その一方で、「第1~第3LEDスタックのそれぞれ」について、本件補正発明では、「n型半導体層およびp型半導体層の間に活性層を備え」るのに対し、引用発明では、活性層を備えているのか不明である点で相違する。 c 本件補正発明の「前記第3LEDスタックの上部に粗面化された表面を有し、」という特定事項について (a) 引用発明において、「第三緑色チップ402」が「上面を有」することは、本件補正発明において、「第3LEDスタックの上部に」「表面を有」することに相当する。 (b) したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記第3LEDスタックの上部に」「表面を有」する点で共通する。 (c) その一方で、「第3LEDスタックの上部」の「表面」について、本件補正発明では、「粗面化された」ものであるのに対し、引用発明では、粗面化されたものではない点で相違する。 d 本件補正発明の「前記第1~第3LEDスタックのすべての前記n型半導体層が前記反射電極に電気的に接続され、」という特定事項について (a) 引用発明では、「第一赤色発光ダイオードチップ401」において、「P型InGaAlPとn型GaAsとでは、n型GaAsが底部側に配置されて[いる]」ことから、「金属反射層801」である「底部の反射層801」が「n型GaAs」に電気的に接続されているものと認められ、このことは、本件補正発明において、「第1LEDスタック」の「前記n型半導体層が前記反射電極に電気的に接続され」ることに相当する。 (b) 引用発明では、「第二青色発光ダイオードチップ403」において、「エッチングによってp型InGaNを除去してその上に一層の金属反射層をメッキして、青色のマイナス極901とし」ていることから、「青色のマイナス極901」が「n型InGaN」に電気的に接続されているものと認められる。また、引用発明では、「第三緑色チップ402」において、「エッチングによってp型InGaNを除去してその上に反射層902をメッキして」、「該金属反射層902は緑色のマイナス極とな」っていることから、「緑色のマイナス極」となっている「金属反射層902」が「n型InGaN」に電気的に接続されているものと認められる。そして、これらのことと、引用発明は、「第一赤色発光ダイオードチップ401」の「底部の反射層801をPC板のアース共用電極701即ち赤色のアース電極にまで連結させ」るものであること、すなわち、「アース共用電極701」と「底部の反射層801」が電気的に接続されていることも踏まえれば、引用発明において、「青,緑色のマイナス極をそれぞれPC板上のアース電極701にまで連結させ」ることは、本件補正発明において、「第2LEDスタック」及び「第3LEDスタック」の「前記n型半導体層が前記反射電極に電気的に接続され」ることに相当する。 (c) したがって、前記(a)及び(b)の検討によれば、引用発明は上記特定事項を満たす。 e 本件補正発明の「前記第1LEDスタック、前記第2LEDスタックおよび前記第3LEDスタックが独立して駆動され、」という特定事項について (a) 引用発明は、「赤,緑,青色のプラス極をそれぞれPC板上の赤,緑,青色のプラス極に連結させ」るものであり、「各色のチップのバイアスを調整して電流を変え、異なる光の強度を得て、更に混合されて異なる色の光を得るものである」ところ、引用発明における「第一赤色発光ダイオードチップ401」、「第二青色発光ダイオードチップ403」及び「第三緑色チップ402」が、本件補正発明でいう「独立して駆動され」るという構成を満たしていることは明らかである。 (b) したがって、引用発明は上記特定事項を満たす。 f 本件補正発明の「前記第3LEDスタックにおいて発光された光は、活性層から前記粗面化された表面へ出射し、」という特定事項について (a) 引用発明では、「反射する赤色及び青色の光がPC板上の金属反射層を経て上向きに反射して緑色の光と混合され、充分に赤色及び青色の光のエネルギが利用される」ことから、「第三緑色チップ402」で得られる「緑色の光」は「三原色のカラー発光ダイオード」から「上向き」に出射されるものと認められる。そうすると、前記cでの検討も踏まえれば、引用発明において、「第三緑色チップ402」で得られる「緑色の光」は、「第三緑色チップ402」の「上面」に向かって出射していることとなり、このことは、本件補正発明において、「前記第3LEDスタックにおいて発光された光は、」「前記」「表面へ出射」することに相当する。 (b) したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記第3LEDスタックにおいて発光された光は、」「前記」「表面へ出射」する点で共通する。 (c) その一方で、「第3LEDスタックにおいて発光された光」について、本件補正発明では、「活性層から」のものであるのに対し、引用発明では、活性層からのものであるのか不明である点で相違する。 (d) また、「第3LEDスタックにおいて発光された光」が「出射」される「表面」について、本件補正発明では、「粗面化された」ものであるのに対し、引用発明では、粗面化されたものではない点で相違する。 g 本件補正発明の「前記第1~第3LEDスタックの側面は、光透過性材料を含む絶縁層で覆われる、」という特定事項について 「前記第1~第3LEDスタックの側面」について、本件補正発明では、「光透過性材料を含む絶縁層で覆われる」のに対し、引用発明では、絶縁層で覆われていない点で相違する。 h 本件補正発明の「ディスプレイ用発光ダイオードピクセル。」という特定事項について (a) 引用発明の「カラー発光ダイオード」は、本件補正発明の「発光ダイオード」に相当する。 (b) その一方で、「発光ダイオード」について、本件補正発明では、「ディスプレイ用」の「ピクセル」であるのに対し、引用発明では、ディスプレイ用のものであるのか及びピクセルであるのかが不明である点で相違する。 (イ) 一致点及び相違点 前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のa及びbに示すとおりである。 a 一致点 「第1LEDスタックと、 前記第1LEDスタック上で一部領域内に配置される第2LEDスタックと、 前記第2LEDスタック上で一部領域内に配置される第3LEDスタックと、 前記第1LEDスタックの下側に配置される反射電極と、 を備え、 前記第1~第3LEDスタックのそれぞれがn型半導体層およびp型半導体層を備え、 前記第3LEDスタックの上部に表面を有し、 前記第1~第3LEDスタックのすべての前記n型半導体層が前記反射電極に電気的に接続され、 前記第1LEDスタック、前記第2LEDスタックおよび前記第3LEDスタックが独立して駆動され、 前記第3LEDスタックにおいて発光された光は、前記表面へ出射する、 発光ダイオード。」である点。 b 相違点 (a) 相違点1 本件補正発明では、「第1~第3LEDスタックのそれぞれ」が「n型半導体層およびp型半導体層の間に活性層を備え」ており、「第3LEDスタックにおいて発光された光」が「活性層から」のものであるのに対し、引用発明では、「赤色発光ダイオードチップ401」、「第二青色発光ダイオードチップ403」及び「第三緑色チップ402」が活性層を備えているのか不明であり、「第三緑色チップ402」の「緑色の光」が活性層からのものであるのか不明である点。 (b) 相違点2 「第3LEDスタックの上部」の「表面」であって、「第3LEDスタックにおいて発光された光」が「出射」される「表面」について、本件補正発明では、「粗面化された」ものであるのに対し、引用発明では、粗面化されたものではない点。 (c) 相違点3 「前記第1~第3LEDスタックの側面」について、本件補正発明では、「光透過性材料を含む絶縁層で覆われる」のに対し、引用発明では、光透過性材料を含む絶縁層で覆われていない点。 (d) 相違点4 「発光ダイオード」について、本件補正発明では、「ディスプレイ用」の「ピクセル」であるのに対し、引用発明では、ディスプレイ用のものであるのか及びピクセルであるのかが不明である点。 エ 判断 (ア) 相違点1についての判断 引用発明は、「P型InGaAlP」及び「n型GaAs」並びに「p型InGaN」及び「n型InGaN」の半導体構造を有する「発光ダイオード」に関するものであるところ、引用発明から出発した当業者は、発光ダイオードの半導体構造に関する周知技術である活性層周知技術(前記イ(イ)c参照。)に接することができる。 そうすると、引用発明において、活性層周知技術を適用し、「第一赤色発光ダイオードチップ401」における「P型InGaAlP」と「n型GaAs」との間、並びに、「第二青色発光ダイオードチップ403」及び「第三緑色チップ402」における「n型InGaN」と「p型InGaN」との間に活性層を設けて、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (イ) 相違点2についての判断 発光ダイオードの技術分野において、光の抽出効率を向上させることは、本願の最先の優先日時点における周知の課題であるところ、当業者は、引用発明においても同様の課題を有することを認識する。 そうすると、引用発明において、上記課題を解決するための周知技術である粗面化周知技術(前記イ(イ)d参照。)を適用し、光の出射面となる「第三緑色チップ402」の「上面」を粗面化して、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (ウ) 相違点3についての判断 発光ダイオードを周囲の環境から保護することは、有機発光ダイオードの技術分野(「オーガニックLED素子3色画素」に関する引用文献5技術的事項の「絶縁層97は、湿気、酸素、その他の汚染物に対して不浸透性であるため、LEDの汚染を防止でき」るという事項を参照。)に限らず、無機発光ダイオードの技術分野においても、本願の最先の優先日時点における周知の課題である(必要ならば、例えば、国際公開第2016/125344号の[0027]の「絶縁膜や樹脂等によるオーバーコート構造(具体的には、前述した絶縁層や、ポリイミド層、ポリアミド層、アクリル樹脂層といったオーバーコート層によって発光ダイオード全体を覆うことで、発光ダイオードの劣化を引き起こす水分や酸、アルカリ等の液体、蒸気と隔離する」という記載や特開2013-229598号公報の【0195】の「上記第2絶縁層190は少なくとも上記発光構造物135の側面と上面に形成されて、上記発光構造物135を外部の異質物から保護するようになる」という記載を参照。)ところ、当業者は、無機発光ダイオードに関する引用発明においても同様の課題を有することを認識する。 そうすると、引用発明において、上記課題を解決するために、引用文献5技術的事項(前記イ(ウ)c参照。)における「湿気、酸素、その他の汚染物に対して不浸透性であるため、LEDの汚染を防止でき」、「SiO2、Si2N3等の窒化シリコン又はその他の絶縁材により形成できる」「絶縁層97」を採用し、引用文献の「第一赤色発光ダイオードチップ401」、「第二青色発光ダイオードチップ403」及び「第三緑色チップ402」の側面を含む領域をSiO2、Si2N3等からなる絶縁層により被覆することは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、そのようにして容易に想到した構成(以下「相違点3容易想到構成」という。)における絶縁層は、SiO2、Si2N3が光透過性の材料であることが技術常識である(必要ならば、例えば、前出の国際公開第2016/125344号の[0027]の「絶縁層をSiO2やSiN等から成る屈折率制御性の高い透明層とし、…」という記載や前出の特開2013-229598号公報の【0114】の「上記第2保護層43は、透明性と絶縁性に優れる材質で形成できる。上記第2保護層43は、例えば、SiO2、SiOx、SiOxNy、Si3N4、…からなるグループから選択された1つを含むことができるが、…」という記載を参照。)ことを考慮すれば、本件補正発明における「光透過性材料を含む絶縁層」に相当するから、相違点3容易想到構成は、相違点3に係る本件補正発明の構成を満たす。 (エ) 相違点4についての判断 ディスプレイのピクセルに三原色の発光ダイオードを用いることは、文献を提示するまでもなく、本願の最先の優先日時点における周知技術である。 そこで、引用発明における「カラー発光ダイオード」は「三原色」のものであるところ、当該「カラー発光ダイオード」の具体的な用途を検討するに当たってディスプレイを選択して、相違点4に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 オ 本件補正発明の効果について 前記相違点1~4を総合的に勘案しても、本件補正発明の効果は、本件補正発明の構成が奏するものとして、当業者が引用発明、引用文献5技術的事項、活性層周知技術及び粗面化周知技術から見て、予測困難な効果であるとはいえないし、格別顕著な効果であるともいえない。 カ 請求人の主張について (ア) 請求人の主張の内容 請求人は、以下の2つの根拠を挙げ、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない旨を主張している。 (根拠1)引用文献1には、p型化合物の半導体やn型化合物の半導体を用いる発光層において、有機化合物を用いることの記載はなく、また、発光ダイオードないしLEDの上面出射の発光を下面出射の発光にすることの示唆もないから、引用発明の発光ダイオードに、発光層に有機物を用い、下面出射で発光するオーガニック発光素子に関する引用文献5技術的事項を適用するには、発光層に用いるp型化合物の半導体やn型化合物の半導体を有機物にし、さらに上面出射の発光を下面出射の発光にする必要がある。 (根拠2)引用文献5には、本件補正発明の第1~第3LEDスタックの側面が光透過性材料を含む絶縁層で覆われることにより、第1~第3LEDスタックの側面に向かって進行する光を透過させ、第1~第3LEDスタックの光取り出し効率を向上させることの示唆はない。 (イ) 請求人の主張に関する検討 請求人の主張について、以下で検討する。 (根拠1について) 引用文献5技術的事項における「絶縁層97」は、「湿気、酸素、その他の汚染物に対して不浸透性であるため、LEDの汚染を防止」するという課題を解決するものであるが、当該課題は、前記エ(ウ)で説示したとおり、「オーガニック発光素子」であることに特有の課題ではなく、引用発明のような無機材料の発光ダイオードにおいても生じる課題である。したがって、引用発明に引用文献5技術的事項を適用するに当たって、引用発明において、発光層に用いるp型化合物の半導体やn型化合物の半導体を有機物にする必要はない。また、引用文献5には、「図2Aの素子と反対つまり逆向きに素子を構成して、積層の底部からではなく積層の上部から光を出力させることもできる」(28頁下から6~5行)や「反転構成(積層の上部面から発光する場合)の場合も、本方法をわずかに変更することによって製造できる」(37頁下から6~5行)と記載されているように、引用文献5技術的事項は下面出射の発光素子に限ったものではないし、上記課題が「下面出射の発光」に特有の課題であるともいえないことを考慮すれば、引用発明に引用文献5技術的事項を適用するに当たって、上面出射の発光を下面出射の発光にする必要もない。 したがって、根拠1に基づく請求人の主張は採用できない。 (根拠2について) 請求人が根拠2として挙げる、「絶縁層」により「第1~第3LEDスタックの光取り出し効率を向上させる」という効果は、本願の明細書に記載されたものではない。また、本願の明細書の記載には、側面を覆う絶縁層が透明であることが記載されている(【0262】等)ところ、絶縁層が透明であれば、側面から光が取り出せることは推論できるとしても、そのことと光取り出し効率を向上させることとの関係は不明であるから、上記効果が本願の明細書の記載から推論できるともいえない。 したがって、根拠2に基づく請求人の主張は採用できない。 なお、仮に本件補正発明の「光透過性材料を含む絶縁層」について、そのような効果が認められたとしても、「絶縁層」が透明であることにより側面から光が取り出せることは、当業者にとって自明な効果であるといえる。 以上のとおり、根拠1及び2に基づく請求人の主張はいずれも採用できない。 キ 小括 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明、引用文献5技術的事項、活性層周知技術及び粗面化周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ク 独立特許要件についての当審の判断のまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明、引用文献5技術的事項、活性層周知技術及び粗面化周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (3) 本件補正の適否についての当審の判断のまとめ 前記(2)に示したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法17条の2第6項で準用する同法126条7項の規定に違反するものであり、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照。)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由1(進歩性欠如)の概要は、次のとおりである。 理由1(進歩性欠如)本願発明は、その最先の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて、その最先の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開2003-197968号公報 2.特開2014-120774号公報 3.特表2016-521004号公報 3 引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定 引用文献1~3に記載された事項並びに引用発明、活性層周知技術及び粗面化周知技術の認定は、前記第2の2(2)イ(ア)及び(イ)において示したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、実質的に、本件補正発明に対して、「前記第1~第3LEDスタックの側面は、光透過性材料を含む絶縁層で覆われる」という限定を省いたものである。 そして、本願発明の発明特定事項を全て含み、当該発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2(2)において説示したとおり、引用発明、引用文献5技術的事項、活性層周知技術及び粗面化周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、上記の限定を省くことによって相違点3が相違点ではなくなった本願発明についても、同様にして、引用発明、活性層周知技術及び粗面化周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-018612

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