特許拒絶査定不服審判
2023-017533
パウチ
- 審判番号
- 2023-017533
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-086438外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年10月17日
- 審決日
- 2025年12月16日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (B65D) / P18 .537-WZ (B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第44条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-86438「パウチ」拒絶査定不服審判事件〔令和4年7月14日出願公開、特開2022-105732〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 出願分割の経緯の概略
本願は、令和4年5月26日にされた特許法第44条第1項の規定による特許出願であって、平成29年8月31日に出願した特願2017-166916号をもとの出願とする、いわゆる分割出願であるところ、出願の分割の経緯は次のとおりである。なお、括弧内は当該出願の出願日を示す。
最先の出願:特願2017-166916号(平成29年 8月31日)
本願 :特願2022- 86438号(令和 4年 5月26日)
2 本願の手続の経緯の概略
本願の出願後の手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 2月 1日付け:拒絶理由通知書
令和5年 4月 6日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 7月 4日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和5年 7月18日 :原査定の謄本の送達)
令和5年10月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 1月30日 :上申書の提出
令和7年 8月22日付け:拒絶理由通知
令和7年10月24日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1、2に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)は、それぞれ令和7年10月24日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
表面フィルムと、前記表面フィルムと対向する裏面フィルムと、前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの間に配置された底面フィルムとを備え、内容物を収容する収容空間を有する自立可能な電子レンジ用パウチであって、
前記表面フィルムの第1の側部と前記裏面フィルムにおける前記表面フィルムの前記第1の側部と対向する第1の側部との間をシールする第1の側部シール部と、
前記表面フィルムにおける前記第1の側部とは反対側の第2の側部と前記裏面フィルムにおける前記表面フィルムの前記第2の側部と対向する第2の側部の間をシールする第2の側部シールと、
加熱時に前記収容空間内の蒸気を自動的に抜く蒸気抜き機構と、を備え、
前記蒸気抜き機構が、前記収容空間から隔離された未シール部と、前記未シール部を前記収容空間から隔離し、かつ前記第1の側部シール部より前記収容空間側に突出した突出シール部とを備え、
前記突出シール部が、前記第1の側部シール部に連設されており、
前記パウチの高さが145mm以上149mm以下であり、
前記パウチの幅が150mm以上165mm以下であり、
前記パウチの高さをHとし、前記パウチの幅をWとしたとき、W/Hが1.01以上1.11以下であり、
前記突出シール部から前記第2の側部シール部の内縁までの距離をD3としたとき、D3/Wが0.80以上である、パウチ。」
第3 拒絶理由の概要
令和7年8月22日付けで当審において通知した拒絶理由は、概ね、次の理由を含むものである。
本願の請求項1、2に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1~3に記載された事項に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 特開2007-137478号公報
引用文献2 特開2006-248576号公報
引用文献3 特開2017-145057号公報
第4 引用文献の記載
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
引用文献1には以下の記載がある。下線は当審において付した。また、「・・・」は省略を示す。以下同様。
「【0014】
図1は、本発明の電子レンジ用包装袋1の実施例を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明にかかる電子レンジ用包装袋1は、胴部を構成する四角形からなる前面2と後面3の底部に、底面4を逆V字状に折り畳んで挿入し、前面2と後面3と底面4の周縁部をそれぞれヒートシールして、胴部シール部5、および、底部シール部6を形成し、内容物を充填後、天部シール部7をヒートシールして密封され、充填した内容物により底面4が前後に拡張して自立できる形態の自立性包装袋である。
更に、本発明にかかる電子レンジ用包装袋1は、コの字状シール部9を胴部シール部6と連結して設け、コの字状シール部9に囲まれた未シール部19に蒸通口17を少なくとも一つ設け、当該蒸通口17から当該コの字状シール部の未シール部初期到達点までの長さが、10mm以上、25mm以下となる位置に形成する構成からなる包装袋である。・・・。」
「【0019】・・・また、本発明の電子レンジ用包装袋1において、周縁シール部、すなわち、胴部シール部5、底部シール部6および天部シール部7のシール幅としては、5mm~20mm程度であると、輸送や保管をするときに加わる圧力や衝撃によって破袋することがないため好ましいものである。」
「【0036】
なお、本発明の電子レンジ用包装袋1には、図示しないが、コの字状シール部の下側の胴部シール部5に、広幅のシール部を形成して、保持手段21とすることができる。
このことによって、電子レンジで加熱後に包装袋を取出す際、コの字状シール部9内の蒸通口17、18から放出される蒸気で消費者が火傷することなく、また、広幅シール部は、内容物に接する袋のフィルムの表面部分と比べて熱くならないため、安全かつ確実に取り出すことができる。
なお、広幅シール部のシール幅としては、10mm~20mm程度が、消費者が電子レンジで加熱後に包装袋を取出す際、安全かつ確実に取り出すことができるため好ましいものである。」
「【実施例1】
【0038】
以下に実施例および比較例をあげて本発明を更に説明する。
基材層11として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、中間層14として、15μmの延伸ナイロンフィルムを使用し、シーラント層13として、60μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを使用し、層間をウレタン系接着剤でドライラミネートして、順次積層し、層構成、ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/延伸ナイロンフィルム(15μm)/無延伸ポリプロピレンフィルム(60μm)からなる積層フィルム10を作製した。
上記で得られた積層フィルム10を用いて、胴部が前面2と後面3の2枚の壁面フィルムの両側端縁部を胴部シール部5でヒートシールして形成し、胴部シール部5と連結してコの字状シール部9と内容物が吹き出すことを防止するためのシール部16とを一体で形成し、更に、コの字状シール部9に囲まれた未シール部19に切欠17を一つ設けた後、底面4のフィルムを内側に折り返してなるガセット形式で形成され、底部シール部6が舟底形のシールパターンでヒートシールされ、図4に示すような本発明にかかる形態の自立性電子レンジ用包装袋1を製造した。(外寸法、高さb:145mm、巾a:155mm、c:15mm、d:35mm、g:17mm、切欠の直径:5mm、コの字シール部のシール幅:3mm、周縁シール部のシール幅:10mm)
上記で得られた包装袋1を用いて、内容物を充填し、天部シール部7をシールして密封後、121℃で30分レトルト処理した。
上記で得られたレトルト処理後の包装体を自立させた状態で入れ、700Wの家庭用電子レンジで加熱した。
その結果、本発明に係る電子レンジ用包装袋1は、電子レンジ内の回転したトレーの上で転倒することなく、周縁シール部が破袋して内容物が吹きこぼれることなく、電子レンジ用包装袋1の蒸気口から速やかに蒸気が抜け、包装袋の蒸気口から内容物の液垂れもなく、内容物の液の吹き出しもなく、消費者が恐怖感を感じることなく、安全に加熱調理することができ、包装体の外観、衛生性にも優れる包装袋であった。」
「【図1】
[図:0001432377000001.jpg]
」
「【図4】
[図:0001432377000002.jpg]
」
(2)引用文献1に記載されていると認められる事項
ア 蒸通機構について
上記(1)に示した【0014】の「本発明にかかる電子レンジ用包装袋1は、コの字状シール部9を胴部シール部6と連結して設け、コの字状シール部9に囲まれた未シール部19に蒸通口17を少なくとも一つ設け」という記載と、同【0038】の「本発明に係る電子レンジ用包装袋1は、電子レンジ内の回転したトレーの上で転倒することなく、周縁シール部が破袋して内容物が吹きこぼれることなく、電子レンジ用包装袋1の蒸気口から速やかに蒸気が抜け・・・安全に加熱調理することができ」という記載を踏まえれば、「コの字状シール部9」及び「切欠17」が加熱調理時に蒸気が抜ける蒸気抜き機構を構成していることは明らかである。
イ コの字状シール部9の幅について
上記(1)に示した【0038】の「外寸法、高さb:145mm、巾a:155mm、c:15mm」という記載における「c」は、【図4】から、コの字状シール部9の幅であることが看取される。そうすると、上記「c:15mm」の記載から、コの字状シール部9の突出幅cが15mmであるといえる。
ウ 胴シール部5のシール幅について
上記(1)に示した【0038】の「周縁シール部のシール幅:10mm」という記載と、同【0019】の「周縁シール部、すなわち、胴部シール部5、底部シール部6および天部シール部7」という記載を踏まえれば、【0038】に記載の実施例1における「胴部シール部5」及び「底部シール部6」のシール幅は10mmであるといえる。
(3)引用文献1に記載の発明
上記(1)及び(2)を踏まえ、【0038】及び【図4】に記載された実施例1に着目すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「胴部が前面2と後面3の2枚の壁面フィルムの両側端縁部を胴部シール部5でヒートシールして形成し、胴部シール部5と連結してコの字状シール部9と内容物が吹き出すことを防止するためのシール部16とを一体で形成し、更に、コの字状シール部9に囲まれた未シール部19に切欠17を一つ設けた後、底面4のフィルムを内側に折り返してなるガセット形式で形成され、底部シール部6が舟底形のシールパターンでヒートシールされた、自立性電子レンジ用包装袋1であって、
コの字状シール部9及び切欠17が加熱調理時に蒸気が抜ける蒸気抜き機構を構成し、
自立性電子レンジ用包装袋1は、高さbが145mm、巾aが155mmであり、
コの字状シール部9の突出幅cが15mm、胴部シール部5のシール幅が10mm、底部シール部6のシール幅が10mmである、自立性電子レンジ用包装袋1。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
引用文献2には、以下の記載がある。
「【0029】・・・本発明において、電子レンジ用包装袋の形状は、スリーブ状の厚紙に収納された状態で扁平状であれば特に限定されず、例えば、平底シール型の袋形状に限定されず、ガセット型やスタンディンク型(当審注:「スタンディング型」の誤記と認める。)の袋形状であっても、折りひだ部を折り畳んだ状態で扁平状となる形状であれば好適に使用することができる。本発明にかかる電子レンジ用包装袋が、扁平状であることによって、電子レンジ内で、袋内の内容物を均一に加熱調理できるので好ましい。
また、電子レンジ用扁平状軟包装袋10、10´は、底部から上部までの高さが、160mm以下であることが、電子レンジ庫内のトレイにスリーブ内に収納した状態で出し入れしやすく、また、トレイの天井に、接触しないので転倒を防止できる点で好ましく、更に、高さが、140mm~150mmの範囲内にあることがより好ましい。
また、電子レンジ用扁平状軟包装袋10、10´の高さと幅との長さの比率が1:0.7~1:1.4であることが、電子レンジ庫内のトレイで、安定して起立させた状態で回転できるので好ましい。」
(2)引用文献2に記載の事項
上記(1)を踏まえると、引用文献2には以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
「ガセット型やスタンディング型の電子レンジ用包装袋において、高さを140mm~150mmの範囲内として、電子レンジ庫内のトレイの天井に接触することによる転倒を防止し、高さと幅との長さの比率を1:0.7~1:1.4として、安定して起立させた状態とすること。」
第5 本願発明1について
1 対比
引用発明の「前面2と後面3の2枚の壁面フィルム」は、前面2側及び後面3側が、それぞれ本願発明1の「表面フィルム」及び「前記表面フィルムと対向する裏面フィルム」に相当する。
引用発明の「底面4のフィルム」は、引用文献1の図1も踏まえると、本願発明1の「前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの間に配置された底面フィルム」に相当する。
引用発明の「自立性電子レンジ用包装袋1」は、内容物を収容する収容空間を有していることは明らかであるから、本願発明1の「内容物を収容する収容空間を有する自立可能な電子レンジ用パウチ」に相当する。
引用発明の「前面2と後面3の2枚の壁面フィルムの両側端縁部を」「ヒートシールして形成し」た「胴部シール部5」は、本願発明1の「前記表面フィルムの第1の側部と前記裏面フィルムにおける前記表面フィルムの前記第1の側部と対向する第1の側部との間をシールする第1の側部シール部と、前記表面フィルムにおける前記第1の側部とは反対側の第2の側部と前記裏面フィルムにおける前記表面フィルムの前記第2の側部と対向する第2の側部の間をシールする第2の側部シール」に相当する。
引用発明の「コの字状シール部9及び切欠17が」「構成」する「加熱調理時に蒸気が抜ける蒸気抜き機構」は、本願発明1の「加熱時に前記収容空間内の蒸気を自動的に抜く蒸気抜き機構」に相当する。
引用発明の「コの字状シール部9」が「胴部シール部5と連結して」いること、及び「未シール部19」が「コの字状シール部9に囲まれ」ていることを踏まえれば、引用発明の「未シール部19」及び「コの字状シール部9」は、それぞれ本願発明1の「前記収容空間から隔離された未シール部」及び「前記未シール部を前記収容空間から隔離し、かつ前記第1の側部シール部より前記収容空間側に突出した突出シール部」に相当する。また、引用発明の「コの字状シール部9」が「胴部シール部5と連結して」いる構成は、本願発明1の「前記突出シール部が、前記第1の側部シール部に連設され」た構成に相当する。
引用発明の「自立性電子レンジ用包装袋1は、高さbが145mm、巾aが155mmであ」る構成は、幅a/高さbが1.07(=155/145)と計算できるから、本願発明1の「前記パウチの高さが145mm以上149mm以下であり、前記パウチの幅が150mm以上165mm以下であり、前記パウチの高さをHとし、前記パウチの幅をWとしたとき、W/Hが1.01以上1.11以下であ」る構成と、「前記パウチの高さが145mmであり、前記パウチの幅が155mmであり、前記パウチの高さをHとし、前記パウチの幅をWとしたとき、W/Hが1.07である」限りにおいて一致する。
2 一致点及び相違点
上記1より、本願発明1と引用発明は次の点で一致し、相違する。
(1)一致点
「表面フィルムと、前記表面フィルムと対向する裏面フィルムと、前記表面フィルムと前記裏面フィルムとの間に配置された底面フィルムとを備え、内容物を収容する収容空間を有する自立可能な電子レンジ用パウチであって、
前記表面フィルムの第1の側部と前記裏面フィルムにおける前記表面フィルムの前記第1の側部と対向する第1の側部との間をシールする第1の側部シール部と、
前記表面フィルムにおける前記第1の側部とは反対側の第2の側部と前記裏面フィルムにおける前記表面フィルムの前記第2の側部と対向する第2の側部の間をシールする第2の側部シールと、
加熱時に前記収容空間内の蒸気を自動的に抜く蒸気抜き機構と、を備え、
前記蒸気抜き機構が、前記収容空間から隔離された未シール部と、前記未シール部を前記収容空間から隔離し、かつ前記第1の側部シール部より前記収容空間側に突出した突出シール部とを備え、
前記突出シール部が、前記第1の側部シール部に連設されており、
前記パウチの高さが145mmであり、
前記パウチの幅が155mmであり、
前記パウチの高さをHとし、前記パウチの幅をWとしたとき、W/Hが1.07である、パウチ。」
(2)相違点
[相違点1]
パウチについて、本願発明1は「前記パウチの高さが145mm以上149mm以下であり、前記パウチの幅が150mm以上165mm以下であり、前記パウチの高さをHとし、前記パウチの幅をWとしたとき、W/Hが1.01以上1.11以下であ」るのに対して、引用発明は「高さbが145mm、巾aが155mmであ」り、幅a/高さbが1.07である点。
[相違点2]
パウチについて、本願発明1は「前記突出シール部から前記第2の側部シール部の内縁までの距離をD3としたとき、D3/Wが0.80以上である」のに対して、引用発明において、本願発明1の「D3」に相当する部分の寸法(巾aから、コの字状シール部9の突出幅c、及び両側端縁部の胴部シール部5のシール幅を引いたもの)は120mm(=155-15-10×2)であり、D3/Wは0.77(=120/155)と計算できる点。
3 判断
(1)相違点1について
引用発明の自立性電子レンジ用包装袋1の高さ及び幅の寸法は、本願発明1の数値範囲内の一点において一致するから、相違点1は実質的な相違点でない。
また、念のために前記数値範囲内のその他の数値について検討するに、上記第4の1(1)に示したように、引用文献1の【0038】には「本発明に係る電子レンジ用包装袋1は、電子レンジ内の回転したトレーの上で転倒することなく」と記載されているように、引用発明は電子レンジの庫内での転倒防止という課題を有するものである。そうすると、引用文献2記載事項を参酌することで、自立性電子レンジ用包装袋1が転倒しないよう、その高さ及び幅の寸法の比を適宜調整し、本願発明1の高さH、幅W、及びW/Hの数値範囲のものとすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。
(2)相違点2について
上記第4の1(1)に示したように、引用文献1の【0019】には「本発明の電子レンジ用包装袋1において、周縁シール部、すなわち、胴部シール部5、底部シール部6および天部シール部7のシール幅としては、5mm~20mm程度であると、輸送や保管をするときに加わる圧力や衝撃によって破袋することがないため好ましいものである」と記載されている。
そして、当該記載の示唆からみて、輸送や保管の際に、その程度のシール幅があれば足りるものと理解される上、引用発明のようなスタンディングパウチにおいて、シール部の幅を小さくすることで所定の内容量に対してパウチを小さくしたり、所定のパウチの大きさに対して内容量を大きくすることは当業者が通常検討することであるから、引用発明において、上記【0019】の記載を参酌することで、胴部シール部5のシール幅を、「5mm~20mm程度」の範囲内において例えば5mm以上8mm以下とすることは、当業者が適宜なし得たことである。その結果として、引用発明における「D3/W」は0.80~0.84と計算できるから、相違点2に係る本願発明1の構成を満たすこととなる。
また、本願明細書等を参酌しても、本願発明1において、当該数値範囲によって格別な効果があることは確認できない。
4 効果について
本願発明の奏する充填口を広く保つことができる(【0053】)、ターンテーブルが回転した場合、パウチが転倒しにくい(【0085】)及び加熱時に正常に蒸気を抜くことができる(【0086】)といった効果は、引用発明及び引用文献1に記載の事項、又は引用発明、引用文献1に記載の事項及び引用文献2記載事項から当業者が予測可能な範囲内のものである。
5 令和7年10月24日提出の意見書における審判請求人の主張について
(1)審判請求人の主張の概要
審判請求人は、令和7年10月24日提出の意見書において、次のように主張をしている。なお下線は当審において付した。
(主張1)「しかしながら、引用文献1の【0019】には、胴部シール部、底部シール部、および天部シール部のシール幅を5mm~20mm程度にしてもよいことが開示されていますが、コ字状のシール部を有し、高さbが145mm、巾aが155mm、cが15mm、周縁シール部のシール幅が10mmである包装袋において、周縁シール部のシール幅を5~8mmに変更してもよいことは開示されていません。
この点に関して、審判官の認定は、本願発明に係る知識を踏まえた上で、本願発明で規定されているD3/Wの範囲に合致するようにシール幅の数値を適宜選択した結果であると考えます。また、引用文献1には、突出シール部を設けた場合であっても、充填口を広く保つことができ、内容物の充填が容易である点に対する言及が見受けられません。このため、審判官の認定は、後知恵であるものと思料します。」
(主張2)「また、引用文献1の図1、図4においては、明らかに胴部シール部より天部シール部のシール幅が小さくなっていますので、引用文献1の【0019】に記載の5mm~20mmのシール幅のうち比較的小さい5mm~8mmのシール幅は、天部シール部のシール幅に対するものであります。したがって、胴部シール部のシール幅としては、広幅10mm~20mm程度を前提としたもので、胴部シール部のシール幅を5mm以上8mm以下とすることはないものと思料します。このため、引用文献1には、胴部シール部のシール幅を5mm以上8mm以下とすることに対して阻害要因を有するものと思料します。
この点に関して、引用文献1の【0036】には、「なお、本発明の電子レンジ用包装袋1には、図示しないが、コの字状シール部の下側の胴部シール部5に、広幅のシール部を形成して、保持手段21とすることができる。このことによって、電子レンジで加熱後に包装袋を取出す際、コの字状シール部9内の蒸通口17、18から放出される蒸気で消費者が火傷することなく、また、広幅シール部は、内容物に接する袋のフィルムの表面部分と比べて熱くならないため、安全かつ確実に取り出すことができる。」という記載があり、電子レンジで加熱後の包装袋の取出時の課題を挙げています。そして同段落には、「広幅シール部のシール幅としては、10mm~20mm程度が、消費者が電子レンジで加熱後に包装袋を取出す際、安全かつ確実に取り出すことができるため好ましい。」と記載されています。そのため、引用文献1において、胴部シール部のシール幅を5mm以上8mm以下とすることはあり得ないものと思料します。」
(2)主張1について
上記3(2)相違点2に対する検討のとおり、引用文献1には胴部シール部5、底部シール部6および天部シール部7のシール幅を5mm~20mm程度とすることが記載されているところ、その範囲内でどの程度の幅とするかは、当業者が適宜設定すべき事項である。そして、これは、本願発明の存否に左右されない。また、効果の主張についても、上記4のとおりである。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
(3)主張2について
上記(2)に関連して、引用文献1には、胴部シール部5、底部シール部6および天部シール部7のシール幅を5mm~20mm程度とすることが記載されている。そうすると、引用文献1に記載の【図1】、【図4】において、一見、天部シール7のシール幅が狭く見えるからといって、胴部シール部5の幅は当該範囲に調整し得ないという主張は根拠がない。
また、引用文献1に記載の広幅のシール部は、上記【0036】に記載のとおり任意選択的な事項に過ぎず、引用発明においてこれを必須のものであるとした審判請求人の上記主張は、前提において成立しない。
6 小括
よって、本願発明1は、引用発明及び引用文献1、2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明及び引用文献1、2に記載されたの事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示)
この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
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2023-017533